特許拒絶査定不服審判
2015-012555
タッチスクリーンパネル用導電粒子、およびこれを含む導電材料
- 審判番号
- 2015-012555
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-265643
- 請求日
- 2015年07月02日
- 審決日
- 2017年09月04日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ドクサンハイメタル
- 【請求人代理人】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 和田 志郎
- 審判官 山澤 宏
- 審判官 稲葉 和生
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-265643「タッチスクリーンパネル用導電粒子、およびこれを含む導電材料」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 46144、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月31日 大韓民国、優先権主張 2013年8月1日)の出願であって、平成26年3月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月6日付けで意見書が提出され、同年9月2日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月9日付けで意見書が提出され、平成27年2月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、平成28年6月20日付けで当審から拒絶理由通知がされ、同年11月21日付けで手続補正がされ、平成29年1月31日付けで当審から拒絶理由通知がされ、同年7月7日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成27年2月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1-10に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行がされた下記の特許出願Aの願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願Aに係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願Aの出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
A.特願2013-504044号(特許第5245021号公報)
第3 当審拒絶理由の概要
1.平成28年6月20日付けの拒絶理由の概要
本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献イ-ハに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ.J Y He、Fracture of micrometre-sized Ni/Au coated polymer particles、JOURNAL OF PHYSICS D:APPLIED PHYSICS、英国、2009.03.26発行、42(2009)085405、pp.1-5
ロ.国際公開第2012/020799号
ハ.特開2005-327510号公報
2.平成29年1月31日付けの拒絶理由の概要
本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2011-243456号公報
2.特開2012-185751号公報
3.国際公開第2012/020799号
4.特開2005-327510号公報
5.特開2000-243132号公報
第4 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年7月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-8は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
複数の電極を互いに電気的に接続するタッチパネル用の導電粒子であって、前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極であり、
樹脂微粒子、および前記樹脂微粒子の外面に形成される被覆層を有し、
前記導電粒子の平均直径は、4μm~16μmであり、
前記被覆層の厚さは、100nm~250nmであり、
下記式1によるV値が6≦V≦25であり、
前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)することを特徴とする、タッチスクリーンパネル用導電粒子。
(式1)
V(%)=Sv/D*100
(式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9~13.5mNである。)
【請求項2】
前記被覆層は表面に高さ50nm~500nmの突起を備えることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項3】
前記突起が前記被覆層と同一の物質からなることを特徴とする、請求項2に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項4】
前記被覆層は、Ni、Sn、Ag、Cu、Pd、Zn、W、P、BおよびAuよりなる群から選ばれる1種または2種以上の合金からなることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項5】
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdよりなる群から選ばれる1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項6】
前記導電粒子はTSP(Touch Screening Panel)用異方性導電フィルム(ACF)に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項のタッチスクリーンパネル用導電粒子を含む異方性導電材料。
【請求項8】
請求項7の異方性導電材料を含む電子装置。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成29年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線部は、当審において付加した。以下、同様。)
(a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子の表面に導電層が設けられている導電性粒子に関し、より詳細には、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体に関する。」(2頁38-42行)
(b)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の導電性粒子を用いて電極間を接続した場合には、電極間の接続抵抗が高くなることがある。
【0008】
さらに、特許文献1の実施例では、ニッケルとリンとを含む導電層が形成されている。導電性粒子により接続される電極、及び導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。ニッケルとリンとを含む導電層を有する導電性粒子を用いて電極間を接続した場合には、ニッケルとリンとを含む導電層が比較的柔らかいので、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなることがある。
【0009】
さらに、従来の導電性粒子では、電極間の接続時に導電性粒子を圧縮すると、導電性粒子により電極が損傷することがある。特に、従来の導電性粒子では、導電層の厚みが厚いと、導電性粒子の圧縮時に導電層が部分的に割れにくく、導電性粒子により電極が損傷することがある。
【0010】
本発明の目的は、電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0011】
本発明の限定的な目的は、導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が部分的に割れるので、導電性粒子により接続された電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0012】
本発明のさらに限定的な目的は、導電性粒子により接続された電極に適度な圧痕を形成できる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。」(3頁18-45行)
(c)「【0035】
図2は、本発明の他の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0036】
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに設けられたニッケル-ボロン導電層12とを有する。導電性粒子11は、芯物質4を有さない。導電性粒子11は表面11aに突起を有さない。導電性粒子11は、ニッケル-ボロン導電層12の外表面12aに突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子11は、絶縁性樹脂を有さない。
【0037】
本実施形態の第1の主な特徴は、導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の10~25%の圧縮変位したときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じることである(以下、このニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位1と記載することがある)。すなわち、導電性粒子1,11では、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.8X~0.9Xとなったときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる。例えば、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径が5μmである場合には、導電性粒子1,11を圧縮させて、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が4~4.5μmとなったときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる。
【0038】
なお、上記「割れ」は、ニッケル-ボロン導電層における初め(第1回目)の割れを示す。従って、本実施形態に係る導電性粒子1,11では、割れがないニッケル-ボロン導電層3,12を有する導電性粒子1,11を圧縮したときに、導電性粒子1,11が圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の10%~25%圧縮変位したときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる。
【0039】
ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる圧縮変位の測定は、具体的には、以下のようにして行われる。なお、図4では、導電性粒子11を用いている。
【0040】
図4に示すように、台51の上に導電性粒子11を置く。微小圧縮試験機(フィッシャー H-100)を用いて、圧縮速度0.33mN/秒及び最大試験荷重10mNの条件で、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱を圧縮部材52として、該圧縮部材52の平滑端面52aを導電性粒子11に向かって、矢印Aで示す方向に降下させる。平滑端面52aにより導電性粒子11を圧縮する。導電性粒子11のニッケル-ボロン導電層12に部分的に割れ12bが生じるまで圧縮は継続される。導電性粒子1の場合にも、同様にして測定される。
【0041】
上記のようにして導電性粒子を圧縮したときに、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の10%以上圧縮変位したときに、上記ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ、25%以下圧縮変位したとき、上記ニッケル-ボロン導電層に割れが生じる。
【0042】
電極の損傷を抑制し、更に電極に適度な圧痕を形成して、接続抵抗をより一層低くする観点からは、導電性粒子を圧縮してニッケル-ボロン導電層に割れを生じさせたときに、上記ニッケル-ボロン導電層の割れに伴って、導電性粒子が、圧縮方向における導電性粒子の粒子径の10~20%圧縮変位することが好ましい(以下、このニッケル-ボロン導電層の割れに伴う導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位2と記載することがある)。すなわち、導電性粒子を圧縮してニッケル-ボロン導電層に割れを生じさせたときに、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、ニッケルボロン導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.1X~0.2X小さくなることが好ましい。
【0043】
導電性粒子を圧縮しながら、圧縮荷重値及び圧縮変位を測定すると、圧縮荷重値と圧縮変位との関係は、例えば、図5に示すようになる。図5では、A0点から圧縮が開始されており、A1点においてニッケル-ボロン導電層に割れが生じている。ニッケル-ボロン導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位(粒子径)が変化し、圧縮変位がA1点からA2点に移動する。圧縮時には導電性粒子に圧縮荷重がかけられおり、ニッケル-ボロン導電層の割れが生じると比較的小さな圧縮荷重で導電性粒子が圧縮されるので、導電性粒子に圧縮荷重をかけている圧縮部材が移動し、圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位(粒子径)が変化する。
【0044】
A1点とA2点との圧縮変位の変化量Dが、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の10~20%であり、導電性粒子の圧縮変位(粒子径)の変化量である。導電性粒子の圧縮変位(粒子径)の変化量は、圧縮部材の移動量である。」(6頁9行-7頁23行)
(d)「【0099】
(実施例1)
(1)パラジウム付着工程
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを用意した。この樹脂粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に樹脂粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に樹脂粒子を添加し、パラジウムが付着された樹脂粒子を得た。
【0100】
(2)芯物質付着工程
パラジウムが付着された樹脂粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された樹脂粒子を得た。
【0101】
(3)無電解ニッケルめっき工程
硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。芯物質が付着された樹脂粒子にイオン交換水500mLを加え、得られた懸濁液を60℃(反応温度X)にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。樹脂粒子の表面に、厚み0.1μm程度の導電層(ニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層)が形成されたときに、無電解めっき液の滴下を終了した。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み96.4nm)が設けられており、ニッケル-ボロン導電層の表面に突起を有する導電性粒子を得た。
【0102】
(実施例2)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、粒子径が3.75μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み168.4nm)が設けられた導電性粒子を得た。
【0103】
(実施例3)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、粒子径が4.75μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Cに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み179.9nm)が設けられた導電性粒子を得た。」(14頁1-34行)
(e)「【0122】
【表1】
【0123】
また、実施例1及び比較例1の導電性粒子を圧縮させてニッケル-ボロン導電層に割れを生じさせたときの圧縮荷重値と圧縮変位との関係を、図6に示した。実施例2及び比較例2の導電性粒子を圧縮させてニッケル-ボロン導電層に割れを生じさせたときの圧縮荷重値と圧縮変位との関係を、図7に示した。さらに、実施例3及び比較例3の導電性粒子を圧縮させてニッケル-ボロン導電層に割れを生じさせたときの圧縮荷重値と圧縮変位との関係を、図8に示した。図6~8では、実施例を実線で示し、比較例を点線で示した。」
(16頁50行-17頁35行)
・上記(a)の記載によれば、引用文献1には、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子が記載されている。
・上記(c)の段落【0036】には、導電性粒子11は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに設けられたニッケル-ボロン導電層12とを有する、ことが記載されている。
・上記(c)の段落【0037】によれば、導電性粒子11を圧縮した場合に、導電性粒子11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子11の粒子径の10~25%の圧縮変位したときに、ニッケル-ボロン導電層12に割れが生じること(以下、このニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位1と記載する)が記載され、さらに、段落【0043】の記載、及び図5を参照すると、引用文献1には、導電性粒子11を圧縮すると、圧縮が開始されてからニッケル-ボロン導電層に割れが生じるまでは、圧縮荷重の増加に応じて略一定の割合で導電性粒子の圧縮変位(粒子径)が増加し、ニッケル-ボロン導電層の割れに伴って、比較的小さな圧縮荷重の増加で圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位(粒子径)が急激に変化することが記載されているといえる。
したがって、引用文献1には、 導電性粒子11を圧縮した場合には、圧縮が開始されてからニッケル-ボロン導電層に割れが生じるまでは、圧縮荷重の増加に応じて略一定の割合で導電性粒子の圧縮変位は増加し、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子11の粒子径の10~25%の圧縮変位(以下、このニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位1という。)が生じたときにニッケル-ボロン導電層に割れが生じ、ニッケル-ボロン導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位が急激に変化し、比較的小さな圧縮荷重の増加で圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位が急激に変化することが記載されているといえる。
・上記(d)の段落【0103】、上記(e)の段落【0122】の【表1】には、引用文献1における前記導電性粒子の「実施例3」として、基材粒子2がジビニルベンゼン共重合体樹脂の粒子径4.75μmであって、ニッケル-ボロン導電層の厚み179.9nmとしたものにおいて、ニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位1が粒子径の19.5%であることが、さらに、段落【0123】によれば、図8は実施例3の導電性粒子の圧縮荷重値と圧縮変位との関係を示したものであることが記載されており、そして、該図8では、実施例3のものは、略4mNにおいて、圧縮変位(粒子径)が急激に変化していることから、実施例3の導電性粒子においては、略4mNの圧縮荷重で導電層に割れが生じる、ことが記載されているといえる。
したがって、引用文献1には、導電性粒子11の実施例3として、前記基材粒子2をジビニルベンゼン共重合体樹脂の粒子径4.75μmであって、前記ニッケル-ボロン導電層の厚みを179.9nmとしたものにおいては、ニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位1が粒子径の19.5%であり、その際の圧縮荷重値は略4mNである、ことが記載されているといえる。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子11であって、
前記導電性粒子11は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに設けられたニッケル-ボロン導電層12とを有し、
前記導電性粒子11を圧縮した場合には、圧縮が開始されてからニッケル-ボロン導電層に割れが生じるまでは、圧縮荷重の増加に応じて略一定の割合で導電性粒子11の圧縮変位も増加し、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子11の粒子径の10~25%の圧縮変位(以下、このニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位1という。)が生じたときにニッケル-ボロン導電層に割れが生じ、ニッケル-ボロン導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位が急激に変化し、比較的小さな圧縮荷重の増加で圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位が急激に変化するものであって、
前記導電性粒子11の実施例3として、前記基材粒子2をジビニルベンゼン共重合体樹脂の粒子径4.75μmであって、前記ニッケル-ボロン導電層の厚みを179.9nmとしたものにおいては、ニッケル-ボロン導電層に割れが生じるのは、導電性粒子の圧縮変位1が粒子径の19.5%で、その際の圧縮荷重値は略4mNである、
導電性粒子11。」
2.引用文献2について
平成29年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【0015】
本実施例1のタッチパネル1のパネル構造は、図2の斜視図及び断面図に示す構成要素を含む。図2に示すように、タッチパネル1は、一対の長方形状の透明基材2、3と、一対の透明基材2、3の一方の透明基材2と他方の透明基材3とを隔てる粘着材4とを厚み方向に貼り合わせて有する。一対の透明基材の互いに対向する面には透明導電パターン5が印刷されている。透明基材2、3は例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等により構成される。なお、図1中においては、透明導電パターン5は一方の透明基材2に設置されたもののみを図示している。透明導電パターン5は、透明基材2、3上において縦横に延在されており、所謂ダイヤパターン形状を有している。
【0016】
透明導電パターン5は、透明基材2、3上にパターンニングされた銀ペーストパターン6に接続されており、透明基材3の銀ペーストパターン6は、フレキシブル基板7(例えばポリイミド材)の図2中左端部の端子に、直接的に接続される。透明基材2の銀ペーストパターン6は、フレキシブル基板7の端子に、例えば異方性導電体8(ACF及びACP:例えばタツタ電線(株)社製:熱可塑性異方導電性ボンディングペーストPCB-700)を介して接続される。なお、最表面側には予めHC層などをコーティングしたものを用いることも可能である。フレキシブル基板7の右方端は上述したコントローラ104に接続される。」
3.引用文献3について
平成29年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【要約】
小さな圧力で広い接続面積が得られる導電性微粒子を提供する。また、本発明は、上記のような導電性微粒子を含む異方性導電材料を提供することを目的とする。さらに、このような導電性微粒子の芯材として好適に使用し得る重合体微粒子を提供する。本発明の重合体微粒子は、破壊点荷重が9.8mN(1.0gf)以下であることを特徴とする。本発明の導電性微粒子は、上記重合体微粒子表面に導電性金属層を有することを特徴とする。本発明の異方性導電材料は、上記導電性微粒子を含むことを特徴とする。」
(b)「【0013】
1.重合体微粒子
1-1.機械的特性
本発明の重合体微粒子は、破壊点荷重が9.8mN(1.0gf)以下であることを特徴とする。重合体微粒子は圧縮荷重を負荷すると圧縮方向に縮小し、圧縮方向に対して直交する方向へと拡張することとなる。この時、重合体微粒子が破壊されることなく単に弾性変形する場合に比べて、重合体微粒子が破壊された方が圧縮方向に直交する方向への拡張がより大きくなる。すなわち、破壊点荷重が9.8mN以下である本発明の重合体微粒子を芯材とする導電性微粒子では、小さな圧力で芯材が破壊され圧縮方向に直交する方向に容易に拡張するため、小さな圧力で大きな接続面積を得ることができる。
【0014】
前記破壊点荷重は7.84mN(0.8gf)以下が好ましく、より好ましくは6.86mN(0.7gf)以下である。一方、前記破壊点荷重は0.98mN(0.1gf)以上が好ましく、より好ましくは1.96mN(0.2gf)以上、さらに好ましくは2.94mN(0.3gf)以上である。なお、破壊点荷重とは、重合体微粒子を圧縮変形させた時、重合体微粒子が破壊した時点での圧縮荷重値であり、測定方法は後述する。
【0015】
本発明の重合体微粒子は、破壊圧縮変位が25%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは30%超であり、50%以下が好ましく、より好ましくは48%以下、さらに好ましくは46%以下である。破壊圧縮変位が上記範囲内であれば、被着体に対して圧痕を形成する圧痕形成能と、加圧接続時の接続面積をバランスよく両立させることができる。なお、破壊圧縮変位とは、重合体微粒子を圧縮変形させた際に、重合体微粒子が破壊した時点での圧縮変位であり、測定方法は後述する。」
(c)「【0087】
本発明の導電性微粒子の個数平均粒子径は、1.1μm以上が好ましく、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上、特に好ましくは1.4μm以上であり、3.5μm以下が好ましく、より好ましくは3.3μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、特に好ましくは2.8μm以下である。個数平均粒子径がこの範囲内であれば、圧痕形成能に優れた導電性微粒子となる。」
4.引用文献4について
平成29年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【0039】
本発明の導電性微粒子は、導電性微粒子1及び導電性微粒子2のすくなくともいずれかの導電性微粒子が、表面に高さが0.04μm以上の突起を有することが好ましい。高さが0.04μm未満であるとバインダー樹脂を突き抜け難くなることがある。圧着時の圧着力が低いと導電性微粒子と電極端子とが離れ易く導電性微粒子と電極端子との接触面にバインダー樹脂が流入し易いが、導電性微粒子表面に突起を有すると、流入したバインダー樹脂を突き抜けて電極端子と接触できるため電極間隔の広い端子間であっても良好に接続できる。」
5.引用文献5について
平成29年1月31日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【請求項1】 平均粒径が1~20μmの球状芯材粒子表面上に無電解めっき法によりニッケル又はニッケル合金皮膜を形成した導電性無電解めっき粉体において、該皮膜最表層に0.05~4μmの微小突起を有し、且つ該皮膜と該微小突起とは実質的に連続皮膜であることを特徴とする導電性無電解めっき粉体。
【請求項2】 微小突起は、無電解めっき粉体粒子1個の表面上において、(D/2)2μm2(但し、Dは無電解めっき粉体粒子の平均直径)中に1個以上存在する請求項1記載の導電性無電解めっき粉体。
【請求項3】 請求項1記載の導電性無電解めっき粉体の上に、金めっき皮膜を形成した導電性無電解めっき粉体。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(a)引用発明の「導電性粒子11」は、「電極間の電気的な接続に用いる」ものであるから、引用発明の「導電性粒子11」と、本願発明1の「複数の電極を互いに電気的に接続するタッチパネル用の導電粒子」とは、「複数の電極を互いに電気的に接続する導電粒子」の点では共通する。
(b)引用発明の「ジビニルベンゼン共重合体樹脂」の「基材粒子2」は、本願発明1の「樹脂微粒子」に相当し、引用発明の「ニッケル-ボロン導電層」は、本願発明1の「樹脂微粒子の外面に形成される被覆層」に相当する。
そして、引用発明の「実施例3」の「基材粒子2をジビニルベンゼン共重合体樹脂の粒子径4.75μmとし、ニッケル-ボロン導電層の厚みを179.9nm」とした「導電性粒子11」は、本願発明1の「前記導電粒子の平均直径は、4μm~16μmであり、前記被覆層の厚さは、100nm~250nmであ」る「導電粒子」に含まれるものである。
さらに、引用発明の「圧縮変位」は、本願発明1の「圧縮変形量」に相当し、そして、引用発明においては「圧縮が開始されてからニッケル-ボロン導電層に割れが生じるまでは、圧縮荷重の増加に応じて略一定の割合で導電性粒子の圧縮変位も増加し」、「ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ」た時点で「圧縮方向における導電性粒子の粒子径が急激に変化し、比較的小さな圧縮荷重の増加で圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位が急激に変化する」ものであるから、引用発明においては、「ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ」た時点で、変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生しているものと認められる。
してみると、引用発明の「ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ」た時点が、本願発明1の「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点」に相当し、また、引用発明の「実施例3」の「圧縮変位1」が「粒子径の19.5%」であることは、「ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ」た時点における、粒子径に対する「圧縮変位」の割合が「19.5%」であり、その際の圧縮荷重が「4mN」であることから、引用発明の「実施例3」の「導電性粒子11」は、本願発明1の「下記式1によるV値が6≦V≦25であり、」「(式1)V(%)=Sv/D*100 (式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9~13.5mNである。)」である「導電粒子」に含まれるものである。
(c)引用発明では、「ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ」る時点の前後で、「導電性粒子11」は圧縮によって変形するが、該変形が「導電性粒子11」の弾性変形によるものか、塑性変形によるものかは不明であることから、引用発明の「実施例3」の「導電性粒子11」と、本願発明1の「前記導電粒子を圧縮変形合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)する」「タッチスクリーンパネル用導電粒子」とは、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点がある、導電粒子」の点では共通する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「複数の電極を互いに電気的に接続する導電粒子であって、
樹脂微粒子、および前記樹脂微粒子の外面に形成される被覆層を有し、
前記導電粒子の平均直径は、4μm~16μmであり、
前記被覆層の厚さは、100nm~250nmであり、
下記式1によるV値が6≦V≦25であり、
前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点がある、導電粒子。
(式1)
V(%)=Sv/D*100
(式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9~13.5mNである。)」
(相違点1)
本願発明1では、「導電粒子」が「タッチパネル用」のものであって、さらに、「前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極」であるのに対して、引用発明では、「導電性粒子」、及び「電極」に関してそのような特定がされていない点。
(相違点2)
本願発明1では、「前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)する」のに対して、引用発明では、導電性粒子を圧縮変形させる場合に、変形が、弾性変形であるか、塑性変形であるか特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案を鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
上記引用文献3には、粒子径が1.1~3.3μmの導電粒子において、圧縮荷重を負荷すると、導電粒子の樹脂粒子部分が破壊され、破壊されることなく弾性変形する場合に比べて、小さな圧力で圧縮方向に直交する方向に容易に拡張することが記載されているが、導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、導電粒子の導電層及び樹脂粒子部分が塑性変形(破壊を除く)することは記載されてなく、示唆されてもおらず、さらに、導電粒子の粒子径が本願発明1のものとは相違しており、また、引用文献2、4、5にも、導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、導電粒子に塑性変形(破壊を除く)が生じることは記載されていない。
したがって、他の相違点については判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-5の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1の「前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)する」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5の記載に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
平成29年7月7日付けの補正により、補正後の請求項1は、「前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献Aには記載されておらず、本願発明1-8は、原査定における引用文献Aと同一のものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-012555