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特許異議申立

2017-700027

多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池

審判番号
2017-700027
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-539904外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年01月12日
審決日
2017年04月27日
公報発行日
2017年06月30日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5952504号発明「多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5952504号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 特許第5952504号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、2015年7月31日(優先権主張2014年8月29日、日本(JP))を国際出願日とする出願であって、平成28年6月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人森本晋(以下「申立人」という。)により特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出されたものである。 2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下それぞれ「本件発明1~8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 樹脂およびフィラーを含み、 前記樹脂が、ポリオレフィン、含フッ素樹脂、含フッ素ゴム、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、ゴム類、融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂および水溶性ポリマーからなる群から選択される1種以上の樹脂であり、 前記フィラーは、体積基準の平均粒子径が、D10が0.005~0.4μm、D50が0.01~1.0μm、およびD90が0.5~5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下であるフィラーであり、 前記ゴム類が、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバーおよびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される一種以上のゴム類であり、 その表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下である、非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。 【請求項2】 上記フィラーの含有量が60質量%以上、100質量%未満である、請求項1に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。 【請求項3】 上記フィラーの含有量が70質量%以上、100質量%未満である、請求項1に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。 【請求項4】 上記フィラーの含有量が80質量%以上、100質量%未満である、請求項1に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。 【請求項5】 ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層を積層してなる、非水電解液二次電池用のセパレータ。 【請求項6】 正極、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層、および負極がこの順で配置されてなる、非水電解液二次電池用部材。 【請求項7】 正極、請求項5に記載の非水電解液二次電池用のセパレータ、および負極がこの順で配置されてなる、非水電解液二次電池用部材。 【請求項8】 請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層、または請求項5に記載の非水電解液二次電池用のセパレータを含む、非水電解液二次電池。」 3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、下記甲第1号証~甲第5号証を提出し、以下の申立理由1~申立理由2によって請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開2012-199253号公報 甲第2号証:特開2011-181459号公報 甲第3号証:特開2001-316006号公報 甲第4号証:特表2008-524824号公報 甲第5号証:特願2007-548077号(特表2008-524824号公報)の審査過程において、平成25年1月10日付提出の意見書中に示された図2、及びそこから空隙率の変動値を算出した結果を示す図 申立理由1 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第1~3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 申立理由2 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第4、5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 4 甲号証の記載 (1)甲第1号証について (1-1)甲第1号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された、上記甲第1号証には以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。 1ア「本発明は、負荷特性と安全性に優れた非水電解液電池を構成し得る電池用セパレータと、該セパレータを有する非水電解液電池に関するものである。」(【0001】) 1イ「【発明が解決しようとする課題】 ところで、現在の非水電解液電池に対する要求は更なる高まりを見せており、安全性を高めながらも、出力特性を高いレベルに維持することが求められる。前記の特許文献に開示の技術は、非水電解液電池の安全性向上において一定の効果を有するものであるが、このような要請への対応に関して、更なる改良の余地がある。 本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷特性および安全性に優れた非水電解液電池を構成し得るセパレータと、該セパレータを有する非水電解液電池を提供することにある。」(【0008】~【0009】) 1ウ「【課題を解決するための手段】 前記課題を解決し得た本発明の電池用セパレータは、熱可塑性樹脂を主体とする樹脂多孔質層と、耐熱性微粒子を主体として含む耐熱多孔質層とを少なくとも有する多層多孔質膜からなる電池用セパレータであって、前記耐熱多孔質層は、前記耐熱性微粒子同士を接着する樹脂バインダを含有しており、前記耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、70体積%以上であり、前記耐熱性微粒子は、平均粒子径が0.2~1μmであり、かつ粒子径が2μmよりも大きな粒子の割合が10体積%以下であり、かつアスペクト比が1~2の多面体形状であることを特徴とするものである。 また、本発明の電池は、Li(リチウム)イオンを吸蔵放出可能な活物質を有する正極と、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を有する負極と、有機電解液と、セパレータとを備えており、前記セパレータとして、本発明の電池用セパレータを有することを特徴とするものである。」(【0010】~【0011】) 1エ「【発明の効果】 本発明によれば、負荷特性および安全性に優れた非水電解液電池を構成し得るセパレータと、該セパレータを有する非水電解液電池を提供できる。すなわち、本発明の非水電解液電池は、負荷特性および安全性が優れている。」(【0013】) 1オ「なお、本明細書でいう耐熱性微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA-920」)を用い、微粒子を膨潤させたり溶解させたりしない媒体(例えば水)に分散させて測定した体積基準の積算分率における50%での粒径(D50)である。また、耐熱性微粒子中の粒子径が2μmよりも大きな粒子の割合、および粒子径が0.2μmよりも小さな粒子の割合も、前記の平均粒子径を求める際の粒度分布測定により求めることができる。」(【0020】) 1カ「耐熱多孔質層には、耐熱性微粒子同士を接着したり、耐熱性微粒子と樹脂多孔質層とを接着したりする目的で、樹脂バインダを用いることが好ましい。樹脂バインダとしては、耐熱多孔質層の構成成分同士を良好に接着でき、電気化学的に安定で、更に有機電解液に対して安定であれば特に制限はない。具体的には、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20~35モル%のもの)、アクリレート共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの樹脂が挙げられ、また、これらの樹脂の一部に、有機電解液への溶解を防止するために架橋構造を導入したものも用いることができる。これらの樹脂バインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、架橋構造を有するアクリレート共重合体が特に好ましい。」(【0030】) 1キ「実施例1 (セパレータの作成) 水:1000g中に、耐熱性微粒子である多面体形状のベーマイト合成品(アスペクト比1.4、平均粒子径:D50=0.63μm、D10=0.31μm、D90=0.92μm、粒子径が2μmよりも大きな粒子の割合:0.5体積%):1000gと、樹脂バインダであるアクリレート共重合体(モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とする市販のアクリレート共重合体;耐熱性微粒子100質量部に対して3質量部)、とを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌させて分散させ、均一なスラリー(耐熱多孔質層形成用組成物)を調製した。 樹脂多孔質層を構成するための微多孔膜として、片面にコロナ処理を施したポリエチレン製微多孔膜(厚み16μm、空孔率40%)を用意した。前記微多孔膜のコロナ処理を施した表面に、ダイコーターを用いて前記のスラリーを均一塗布し、乾燥して、厚みが2.5μmの耐熱多孔質層を樹脂多孔質層の片面に有する多層多孔質膜を得た。 ・・・ (負極の作製) 負極活物質である黒鉛:95質量部とバインダであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚さ:10μmの集電体の両面に、塗布長が表面:320mm、裏面:260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅:45mmになるように切断して、長さ:330mm、幅:45mmの負極を作製した。更にこの負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。 (正極の作製) 正極活物質であるLiCoO2:85質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部と、バインダであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して正極合剤含有ペーストを調製した。この正極合剤含有ペーストを、アルミニウム箔からなる厚さ:15μmの集電体の両面に、塗布長が表面:320mm、裏面:260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅:43mmになるように切断して、長さ:330mm、幅:43mmの正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。 (電池の組み立て) 前記のようにして得られた正極と負極とを、前記のセパレータを介して渦巻状に巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、厚み6mm、高さ50mm、幅34mmでのアルミニウム製外装缶に入れ、有機電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の体積比で混合した溶媒に、LiPF6を濃度1mol/lで溶解させた溶液)を2.4ml注入した後に封止を行って、図3に示す構造で、図4に示す外観の非水電解液電池を作製した。」(【0076】~【0080】) (1-2)甲第1号証に記載された発明 上記(1-1)の摘記事項について検討する。 ア 上記1イによれば、甲第1号証において解決しようとする課題(以下単に「課題」という。)は、負荷特性および安全性に優れた非水電解液電池を構成し得るセパレータを提供することである。 イ 甲第1号証において、上記課題を解決する手段は、上記1ウによれば、熱可塑性樹脂を主体とする樹脂多孔質層と、耐熱性微粒子を主体として含む耐熱多孔質層とを少なくとも有する多層多孔質膜からなる電池用セパレータであって、前記耐熱多孔質層は、前記耐熱性微粒子同士を接着する樹脂バインダを含有し、前記耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、70体積%以上であり、前記耐熱性微粒子は、平均粒子径が0.2~1μmであり、かつ粒子径が2μmよりも大きな粒子の割合が10体積%以下であり、かつアスペクト比が1~2の多面体形状であることを特徴とすることであり、上記1キに示される実施例1にて、その具体的態様が示されている。 ウ 上記1オによれば、甲第1号証における耐熱性微粒子の平均粒子径は、体積基準の積算分率における50%での粒径(D50)として求められたものであるから、上記1キにおけるD50、D10、D90も体積基準の積算分率における測定値であると認められる。 エ 実施例1では、負極活性物質として黒鉛を用い、正極活物質としてLiCoO2を用い、LiPF6を溶解した電解液を注入して非水電解液電池を作製しているから、技術常識によれば、この電池が非水電解液リチウム二次電池であることは明らかである。 オ 上記1ア~1キの記載事項を、上記ア~エの検討事項に基づいて、実施例1の耐熱性多孔質層形成用組成物から形成された耐熱多孔質層に注目して、本件発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「樹脂バインダおよび耐熱性微粒子を含み、 前記樹脂バインダが、モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とするアクリレート共重合体であり、 前記耐熱性微粒子は、体積基準の積算分率において、D10が0.31μm、D50が0.63μm、およびD90が0.92μmの多面体形状のベーマイト合成品である 非水電解液リチウム二次電池のセパレータ用の耐熱多孔質層。」(以下「甲1発明」という。) (2)甲第2号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された、上記甲第2号証には次の事項が記載されている。 2ア「【背景技術】 リチウムイオン二次電池等の非水電解質電池では、正極と負極との間にセパレータが介在している。セパレータとして、一般にポリオレフィン系の多孔質フィルムが用いられる。これに対して、異常発熱した際の安全性を向上させる等のために、樹脂多孔質膜に耐熱多孔質層を塗布形成した塗布型セパレータが提案されている(例えば特許文献1参照)。この塗布型セパレータは、塗工機を用いて、帯状の樹脂多孔質膜を走行させ、これに耐熱性微粒子を含有する塗液(スラリー)を塗布し乾燥させることで製造することができる。 ところが、塗布型セパレータの製造において、走行する樹脂多孔質膜にシワが発生するという問題がある。塗液の塗布前の樹脂多孔質膜にシワが発生すると、塗液が塗布されない未塗布部分が生じてしまう。また、塗液を塗布した後の樹脂多孔質膜をシワが発生したままロール状に巻き取ると、ロール状巻回体の外周面が局所的に突出し、塗膜が形成された樹脂多孔質膜(塗布型セパレータ原反)に局所的な伸び変形が生じる。更に、その後、この塗布型セパレータ原反を多条にスリットする工程では安定したスリットが困難となる。また、シワを有する塗布型セパレータを正極及び負極とともに巻回した巻回体は、その外径寸法が設計値より大きくなるので、電池缶に挿入することができない。」(【0002】~【0003】) 2イ「本発明は、上記の従来の特殊なシワ伸ばし装置を使用することなく、シワの発生を抑えながら塗布型セパレータを製造することができる方法を提供することを目的とする。」(【0012】) 2ウ「【課題を解決するための手段】 本発明の塗布型セパレータの製造方法は、帯状の多孔質膜を複数の搬送ロールを含む搬送系で搬送し、搬送の過程で前記多孔質膜に塗液を塗布する塗布型セパレータの製造方法であって、前記多孔質膜に、その長手方向に0.03N/mmより大きく0.1N/mm以下の張力を印加して前記多孔質膜を前記搬送系で搬送することを特徴とする。」(【0013】) 2エ「【発明の効果】 本発明によれば、搬送系で搬送される多孔質膜に印加される長手方向張力を適切に設定することにより、公知の特殊なシワ伸ばし装置を使用することなく、シワの発生を抑えながら塗布型セパレータを製造することができる。 また、本発明では、多孔質膜に印加される長手方向張力という多孔質膜の搬送条件を管理するだけでよいので、既存の塗工機の大幅な改造が不要である。」(【0014】~【0015】) 2オ「本発明において多孔質膜1は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質電池のセパレータとして使用することができるものであれば特に制限はない。好ましくは塗布型セパレータ(例えば特許文献1参照)用の多孔質膜を用いることができる。多孔質膜1の材料は、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、非水電解液や塗液に含まれる溶媒に対して安定であればよく、例えば熱可塑性樹脂、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などを好ましく用いることができる。多孔質膜1は、単層の多孔質膜であってもよいし、同一又は異種材料からなる複数の多孔質膜が積層された積層多孔質膜であってもよい。 多孔質膜1に塗布される塗液は、特に制限はないが、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質電池の塗布型セパレータ(例えば特許文献1参照)用の塗液を用いることができる。具体的には、塗液として、例えば耐熱性微粒子を有機溶剤または水に分散させた組成物(スラリーなど)を用いることができる。 耐熱性微粒子は電気絶縁性を有することが好ましく、無機微粒子及び/又は有機微粒子を用いることができる。耐熱性微粒子は、一種を単独で、又は、2種以上を併用して用いることができる。・・・ 耐熱性微粒子の粒径は、平均粒径で、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは1μm以下である。・・・ 塗液は、耐熱性微粒子同士を結着したり、塗膜と多孔質膜とを結着したりするために、有機バインダを含有していることが好ましい。有機バインダとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリル酸共重合体、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN-ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などを用いることができる。これらの有機バインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」(【0028】~【0034】) (3)甲第3号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された、上記甲第3号証には次の事項が記載されている。 3ア「本発明の目的は、基材へのシワの発生を防止すると共に、基材が受けるダメージの低減を図ることができる基材搬送装置および基材塗工体の製造方法を提供することである。」(【0003】) 3イ「【課題を解決するための手段】本発明に係る基材搬送装置は、基材を搬送するための少なくとも2つの搬送部材と、2つの搬送部材間に配置され、基材の両縁部をそれぞれ挟持する少なくとも1対の基材挟持部材とを備え、1対の基材挟持部材は、基材を押し付ける押付ローラをそれぞれ有し、各押付ローラが、それらの軸心を基材の搬送方向側で交差させるように基材の搬送方向に対して傾斜して配置されていると共に、1対の基材挟持部材は、基材の両縁部をそれぞれ挟持したときに、基材の幅方向における基材と各基材挟持部材との接触長さの合計が、基材の幅寸法の25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下となるように構成されていることを特徴とするものである。」(【0004】) 3ウ「好ましくは、基材として、その材質が熱可塑性ポリマー、ガラス繊維、アルミナ繊維のいずれであるものを使用し、塗工液として、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の耐熱性樹脂を1種または2種以上含むものを使用する。これにより、基材上には耐熱性を有する層が形成される。 この場合、基材として多孔質フィルムを使用することが好ましい。より好ましくは、基材として熱可塑性ポリマーからなる多孔質フィルムを用い、塗工液として、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミドのいずれかを含むものを用いる。このようにして得られた基材塗工体は、二次電池用セパレータとして好適に使用できる。」(【0016】~【0017】) 3エ「【発明の実施の形態】以下、本発明に係る基材搬送装置および基材塗工体の製造方法の好適な実施形態について図面を参照して説明する。 図1は、基材搬送装置の一実施形態の概略を示す概略構成図であり、図2はその平面図である。これらの図において、本実施形態の基材搬送装置1は、基材塗工体を製造(製膜ともいう)する製膜装置に備えられるものであり、この製膜装置は、織物、不織布、紙、樹脂フィルム(多孔質フィルムを含む)、金属フィルム等の基材2に塗工液(以下、ドープという)Dを塗工することで、基材2に樹脂膜を形成する。基材2としては、幅寸法が150~1000mm程度であり、厚さが通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下のものが用いられる。なお、本実施形態で使用する基材2及びドープDについては、後で詳述する。」(【0018】~【0019】) 3オ「耐熱樹脂を含むドープは、セラミック粉末を含んでしてもよい。このセラミック粉末は、耐熱樹脂と絡まって、塗工フィルム全体または部分的に分散して配置している。 セラミック粉末は、強度に与える影響、塗工面の平滑性の点より、一次粒子の平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡により得た写真を、粒子径計測器で解析する方法によって測定する。」(【0047】~【0048】) 3カ「【発明の効果】本発明によれば、1対の基材挟持部材の各押付ローラを、それらの軸心が基材の搬送方向側で交差するように基材の搬送方向に対して傾斜させたので、基材を搬送する時に、基材へのシワの発生を回避できる。 また、1対の基材挟持部材で基材の両縁部をそれぞれ挟持したときに、基材の幅方向における基材と各基材挟持部材との接触長さの合計が基材の幅寸法の25%以下となるようにしたので、基材においてダメージの受ける領域を低減できる。従って、基材において製品として使える領域を十分に確保できるので、生産性を大きく損なうことなく、高品質の製品を得ることができる。」(【0060】~【0061】) (4)甲第4号証について (4-1)甲第4号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された、上記甲第4号証には次の事項が記載されている。 4ア「【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するするために、本発明は、(a)ポリオレフィン系のセパレータ膜基材、及び(b)前記基材の表面及び前記基材に存在する気孔部の一部よりなる群から選ばれた1種以上の領域に無機物粒子及びバインダー高分子の混合物で塗布された活性層と、を含む有無機複合多孔性セパレータ膜であって、前記活性層が、バインダー高分子により無機物粒子同士が結び付き、無機物粒子同士の間隙により気孔構造が形成されたことを特徴とする有無機複合多孔性セパレータ膜及びこれを備える電気化学素子、好ましくは、リチウム二次電池を提供する。 ・・・ 【発明の効果】 以上で説明した本発明による有無機複合多孔性セパレータ膜は、気孔部を有するポリオレフィン系のセパレータ膜基材上にバインダー高分子により結び付いた無機物粒子が付着され、無機物粒子同士の隙間により耐熱性マイクロ単位の気孔構造が形成された活性層を導入することによって、電池の熱的、電気化学的安全性、及び性能の向上を同時に図ることができる。」(【0010】~【0012】) 4イ「これに対し、本発明による有無機複合多孔性セパレータ膜は、図2及び図3に示すように、活性層及びポリオレフィン系のセパレータ膜基材の両方ともに均一な気孔構造が多数形成されており、これらの気孔を通してリチウムイオンの円滑な移動が行われ、多量の電解液が入り込んで高い含浸率を示し得ることから、電池の性能向上をも図ることができる。」(【0018】) 4ウ「使用可能なバインダー高分子の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミドまたはこれらの混合体などが挙げられる。」(【0036】) 4エ「[実施例1~7] 実施例1 1-1.有無機複合多孔性セパレータ膜(PVdF-CTFE/BaTiO3)の製造 ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF-CTFE)高分子をアセトンに約5重量%加えた後、50℃の温度において約12時間以上溶解させて高分子溶液を得た。この高分子溶液にBaTiO3粉末をBaTiO3/PVdF-CTFE=90/10(重量%)になるように加え、12時間以上ボールミル法を用いてBaTiO3粉末を破砕及び分散させてスラリーを得た。このようにして得られたスラリーのBaTiO3粒径は、ボールミル法に用いられるビーズのサイズ(粒度)、及びボールミルの適用時間に応じて制御できるが、本実施例1では、約400nmにて粉砕してスラリーを得た。このようにして得られたスラリーをディップ・コート法を用いて厚さ18μmほどのポリエチレンセパレータ膜(気孔度45%)に約3μmの厚さにて塗布した。その後、気孔率測定装置を用いて測定したところ、ポリエチレンセパレータ膜基材に塗布された活性層中の気孔径及び気孔度はそれぞれ0.5μm及び58%であったし、その構造図は、図1に示すとおりである。 ・・・ (電池の製造) 前記正極、負極及び実施例1-1に従い製造された各有無機複合多孔性セパレータ膜をスタック/折り畳み方式により組み立てた。次いで、このようにして組み立てられた電池に1Mのリチウムヘキサフルオロフォスフェイト(LiPF6)が溶解されているエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/EMC=1:2、体積比)系の電解液を注入してリチウム二次電池を得た。」(【0070】~【0073】) 4オ「実験例6.リチウム二次電池の性能評価 本発明に従い製造された有無機複合多孔性セパレータ膜を備えたリチウム二次電池のC-rate特性を評価するために、下記の如き実験を行った。 実験には実施例1ないし7に従い製造されたリチウム二次電池を用い、対照群として商用レベルのPEセパレータ膜を備えた比較例1の電池、30:70重量比(%)の組成を有するPVdF-CTFE/BaTiO3フィルムを複合セパレータ膜として含む比較例2の電池を用いた。電池の容量が760mAhである各電池に対し、0.5C,1C,2Cの放電速度にてサイクリングを行った。これらの放電容量をC-rate特性別にまとめ、下記表1に示した。 実験の結果、本発明による有無機複合多孔性セパレータ膜を備えた実施例1ないし7のリチウム二次電池は、2Cの放電速度まで従来のポリオレフィン系のセパレータ膜と等しい高率放電(C-rate)特性を示していた。これに対し、高分子含量の多い複合セパレータ膜を備えた比較例2の電池は、放電速度の増加に伴い容量が著しく低下していき、電池の性能低下が招かれていることが確認できた(表1参照)。」(【0102】~【0104】) (4-2)甲第4号証に記載された発明 上記4ア~4オの記載に基づき、実施例1のポリエチレンセパレータ膜基材上にスラリーを塗布して形成される活性層に関する記載を、本件発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第4号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「バインダー高分子およびBaTiO3粒子を含み、 前記バインダー高分子が、ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体であり、 前記BaTiO3粒子の粒径は、ボールミル法で粉砕して得られた約400nmである エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート系の電解液を含むリチウム二次電池のセパレータ用の気孔構造が形成された活性層。」(以下「甲4発明」という。) (5) 甲第5号証の記載事項 甲第4号証の審査過程において、甲第4号証の出願人から、平成25年1月10日付提出の意見書中に示された「セパレータ膜層の活性層」の電子顕微鏡写真を基に、申請人が空隙率の変動率を求めた結果を示す上記甲第5号証には次の事項が記載されている。 「 」 5 判断 (1)申立理由1の検討 (1-1)本件発明1と甲1発明の対比 ア 甲1発明の「樹脂バインダ」、「耐熱性微粒子」は、本件発明1の「樹脂」、「フィラー」にそれぞれ相当する。 イ 甲1発明の「前記耐熱性微粒子は、体積基準の積算分率において、D10が0.31μm、D50が0.63μm、およびD90が0.92μmの多面体形状のベーマイト合成品である」は、本件発明1の「体積基準の平均粒子径が、D10が0.005~0.4μm、D50が0.01~1.0μm、およびD90が0.5~5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下であるフィラー」に相当するものである。 ウ また、甲1発明の「非水電解液リチウム二次電池のセパレータ用の耐熱多孔質層」は、本件発明1の「非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層」に相当する。 (1-2)本件発明1と甲1発明の一致点と相違点 上記(1-1)の検討から、本件発明1と甲1発明の一致点と相違点は次のとおりである。 <一致点> 樹脂およびフィラーを含み、 前記フィラーは、体積基準の平均粒子径が、D10が0.005~0.4μm、D50が0.01~1.0μm、およびD90が0.5~5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下であるフィラーである、非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。 <相違点> 相違点1:本件発明1では、多孔質層を形成する樹脂が、「ポリオレフィン、含フッ素樹脂、含フッ素ゴム、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、ゴム類、融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂および水溶性ポリマーからなる群から選択される1種以上の樹脂であ」り、「前記ゴム類が、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバーおよびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される一種以上のゴム類であ」るのに対し、甲1発明では「モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とするアクリレート共重合体であ」る点。 相違点2:本件発明1では、多孔質層の「その表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下である」のに対し、甲1発明では、そのような空隙率の変動率を有しているか明らかではない点。 (1-2-1)相違点についての判断 上記相違点のうち、まず、相違点1について検討する。 ア 甲1発明が記載された甲第1号証には、上記4(1-1)で摘記した1カによると、樹脂として例示されている中で「アクリレート共重合体が特に好ましい」と記載されていることから、甲1発明において多孔質層の樹脂を、「モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とするアクリレート共重合体」から、特に好ましいとされているわけではない他の樹脂に替えるという積極的な動機付けは、生じ得るものではない。 イ しかし、仮に、甲1発明において、多孔質層の樹脂である「モノマー成分としてブチルアクリレートを主成分とするアクリレート共重合体」を替えるという動機付けがあれば、上記4(1-1)で摘記した1カで「アクリレート共重合体」と並んで例示された樹脂バインダのうち、フッ素系ゴムやスチレンブタジエンゴム(SBR)を、合理的理由をもって選択できれば、上記相違点1は容易になし得たことといえる可能性がある。 ウ 続いて、相違点2について検討する。甲第2~3号証に開示されているのは、基材を複数のロール搬送しながら、搬送の過程で塗液を塗布すること(以下、「基材搬送塗工技術」という。)に関する発明であるのに対し、甲1発明は、基材搬送塗工技術に特に、着目した発明ではなく、甲第1号証に、この塗工技術に関する問題点も記載されていないことから、甲1発明において、基材搬送塗工技術に関する甲第2~3号証に記載の発明を組み合わせようとする積極的な動機付けは生じ得るものではない。 エ しかし、仮に、甲1発明において、基材搬送塗工技術に関する甲第2~3号証に記載された発明を組み合わせるという動機付けがあるとして検討すると、甲第2~3号証には、塗布または塗工により得られる層に対して、本件特許公報の発明の詳細な説明【0079】~【0083】に記載されている「先ず、積層体(セパレータ)の多孔質層にエポキシ樹脂を含浸させ、多孔質層の空隙部を埋めた後、エポキシ樹脂を硬化させて試料を作成する。硬化後、FIB-SEM(FEI製:HELIOS600)を用いて、多孔質層表面から深さ方向(試料の内部に向かう方向)にFIB加工することにより、加工面を作製する。・・・得られた多孔質層の加工面に対して、加速電圧;2.1kVでSEM観察(反射電子像)を行う。・・・画像解析には、定量解析ソフトTRI/3D-BON(ラトックシステムエンジニアリング製)を用いる。 具体的には、上記ソフトを開きAuto-LWで画像の2階調化を行い、一つの区画における多孔質層を構成する樹脂部と空隙部とを識別する。・・・これら処理を行うことによって計測された空隙部の面積を、解析領域の総面積(樹脂部と空隙部とを合わせた面積)で除した値を、空隙率として算出する。 以上の観察および解析を、同一試料の32区画に関して実施し、それぞれの区画の空隙率を算出する。そして、32区画から得られた空隙率の標準偏差を空隙率の平均値で除した値を、多孔質層における32区画間の空隙率の変動率として算出する。」といった、相違点2に係る本件発明1の特定事項に関する表面の空隙率の変動率を求めるために必須と認められるSEM測定、画像処理方法について記載も示唆もされていない。そして、申立書には、甲第2号証の上記4(2)で摘記した2イ、2ウまたは甲第3号証の上記4(3)で摘記した3ア、3イに示されるような、基材のシワを伸ばした状態で塗工して得られる層の表面の空隙率の変動率が、相違点2に係る本件発明の特定事項を満足することも本件特許の優先日前の技術的事項であるまでの立証は示されていない。 してみると、甲第2~3号証に記載の基材搬送塗工技術により得られる層が、相違点2に係る本件発明1の特定事項(多孔質層表面の空隙率の変動率)を満足するものか否か明らかでない。 なお、申立人は、申立書の第23頁第13行~第27頁第8行において、本件特許の審査過程で提出された、平成27年12月2日付け意見書に接すれば、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の特定事項が容易になし得る旨主張しているが、当該意見書は、本件特許の出願後に提出されたもので、本件特許の優先日前に相違点2に係る本件発明1の特定事項が容易になし得るとの根拠にはなり得ない。 オ また、フィラーを含む非水電解液二次電池のセパレータ用多孔質層において、「表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下とすること」が、本件特許の優先日当時の技術常識であるとも認められない。 カ よって、甲1発明において、「多孔質層」について、「表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下とすること」、すなわち、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 キ ここで、本件発明1が奏する効果について検討してみるに、本件発明1が奏する効果は、「充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を概ね維持することができる、サイクル特性に優れた非水電解液二次電池、非水電解液二次電池用部材として好適な多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ(積層体)を提供すること」、すなわち、非水電解液二次電池における長期的な物性維持・確保に関するものである。一方、甲1発明の効果は、上記4(1-1)で摘記した1エによると「負荷特性および安全性に優れた非水電解液電池を構成し得るセパレータ」を提供すること、甲第2号証に記載された発明の効果は、上記4(2)で摘記した2エによると「公知の特殊なシワ伸ばし装置を使用することなく、シワの発生を抑えながら塗布型セパレータを製造することができる」こと、また、甲第3号証に記載された発明の効果は、上記4(3)で摘記した3カによると「基材の搬送する時に、基材へのシワの発生を回避できる。」、「基材において製品として使える領域を十分に確保できるので、生産性を大きく損なうことなく、高品質の製品を得ることができる」ことであり、これらは非水電解液二次電池における長期的な物性維持・確保に関するものではないことを勘案すると、本件発明1が奏する効果は、甲第1~3号証の記載から予測することができるとはいえない。 ク 以上のように、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の特定事項を備えることは、当業者が容易になし得る可能性があるとしても、相違点2に係る本件発明1の特定事項とすることは当業者が容易になし得ることではないし、また、本件発明1は、甲第1~3号証から予測できない効果を奏するものであるので、本件発明1は、甲1発明、甲第2、3号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (1-3)本件発明2-8についての検討 本件発明2-8は、本件発明1の発明特定事項を有し、これをさらに限定したものであるから、上記(1-2)で検討したと同様に、少なくとも、甲1発明と相違点1及び相違点2の点で相違しており、上記(1-2-1)で検討したと同様の理由で、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 したがって、本件発明2-8についても、甲1発明、甲第2、3号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)申立理由2の検討 (2-1)本件発明1と甲4発明との対比 ア 甲4発明の「バインダー高分子」、「BaTiO3粒子」は、本件発明1の「樹脂」、「フィラー」にそれぞれ相当する。 イ また、甲4発明の「バインダー高分子」として用いられる「ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体」は、本件発明1の「前記樹脂が、含フッ素樹脂」に相当する。 ウ 甲4発明の「エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート系の電解液を含む二次電池のセパレータ用」は、本件発明1の「非水電解液二次電池のセパレータ用」に相当するものである。 エ さらに、甲4発明の「気孔構造が形成された活性層」は、上記4(4-1)の摘記4ア、イによれば、上記活性層が、無機物粒子同士の間隙により多数の気孔構造が形成され、これらの気孔を通じてリチウムイオンの円滑な移動が行われることから、本件発明1の「多孔質層」に相当する。 (2-2)本件発明1と甲4発明の一致点と相違点 上記(2-1)の検討から、本件発明1と甲4発明の一致点と相違点は次のとおりである。 <一致点> 樹脂およびフィラーを含み、 前記樹脂が、含フッ素樹脂である、 非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。 <相違点> 相違点3:本件発明1では、多孔質層を形成するフィラーが、「体積基準の平均粒子径が、D10が0.005~0.4μm、およびD90が0.5~5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下であるフィラーであ」るのに対し、甲4発明では「粒径は、ボールミル法で粉砕して得られた約400μm」である点。 相違点4:本件発明1では、多孔質層の「その表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下である」のに対し、甲4発明では、そのような空隙率の変動率を有しているか明らかではない点。 (2-2-1)相違点についての判断 上記相違点のうち、まず、相違点3について検討する。 ア 甲第1号証には、上記4(1-1)で摘記した1キもしくは、上記4(1-2)のオで検討したように、非水電解液二次電池のセパレータ用多孔質層を形成するフィラーとして、体積基準の積算分率において、D10=0.31μm、D50=0.63μm、D90=0.92μmの多面体形状のベーマイト合成品が記載されている(実施例1)。 イ そうすると、非水電解液リチウム二次電池のセパレータ用多孔質層という、技術分野で甲4発明と甲第1号証に記載の発明は共通しており、甲第1号証に記載の「多面体形状のベーマイト合成品」は、本件発明1の「フィラー」に相当するものであるから、甲4発明において、フィラーを、体積基準の積算分率において、D10=0.31μm、D50=0.63μm、D90=0.92μmとすること、すなわち、相違点1に係る本件発明1の特定事項を備えるものとすることは、一見、当業者が容易になし得ることであるかのようにみえる。 ウ しかしながら、甲第1号証には、上記D10=0.31μm、D50=0,63μm、D90=0.92μmのフィラー以外に、例えば、D10=0.47μm、D50=0.86μm、D90=1.18μmといった粒径特性を有し、相違点3に係る本件発明1の特定事項を満足しないフィラーも多く示されており(実施例2、実施例4~6)、甲第1号証に記載された範囲から、上記4(1-1)で摘記した1キの記載部分、すなわち、D10=0.31μm、D50=0.63μm、D90=0.92μmのフィラーのみを選択して採用することについて合理的理由が見出せない。また、甲4発明におけるフィラーは、「ボールミル法により粉砕して得られ」るものであるのに対して、甲第1号証に記載の「体積基準の積算分率において、D10=0.31μm、D50=0.63μm、D90=0.92μmの多面体形状のベーマイト合成品」は、これに相当するものではないことから、甲4発明において、「ボールミル法により粉砕して得られ」るフィラーを、甲第1号証に記載の上記粒径特性を有するフィラーとすることへの動機付けが見出せない。よって、甲4発明において、甲第1号証に記載された、フィラーの粒子径についての構成「体積基準の積算分率において、D10=0.31μm、D50=0.63μm、D90=0.92μm」を採用することは、たとえ当業者であって容易になし得ることであるとはいえない。 エ 続いて相違点4について検討する。 甲第5号証には、「A 特表2008-524824(甲第4号証)の審査過程における、H25.1.10付けで提出された意見書(図2)に示される活性層の電子顕微鏡写真」なる標題とともに、「[本願発明の実施例1の平面写真(図2(a))]」と記載されていることから、甲第4号証における実施例1で得られる多孔質層の電子顕微鏡写真に基いて、甲4発明が「その表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下である」蓋然性が高いこと、すなわち、相違点4が、実質的な相違点でないことを示そうとして提出された証拠と認められる。 オ しかしながら、甲第5号証における、粒子部分を示す白(色調255)と空隙部分を示す黒(色調0)の二値化処理した画像は、申立書の第21頁第13行~第22頁第11行によれば、上記(1-2-1)エの検討と同様、本件特許公報の発明の詳細な説明【0079】~【0083】に示されるSEM測定、画像処理方法とは、明らかに異なる手法により得られたものである。特に、電子顕微鏡観察を行う際の加速電圧について、甲第5号証は、「A 特表2008-524824(甲第4号証)の審査過程における、H25.1.10付けで提出された意見書(図2)に示される活性層の電子顕微鏡写真」で示される図の下部に配置されている黒塗り部分から、「10.0kV」であると認められるが、本件特許では、発明の詳細な説明【0080】に示されるように、「加速電圧;2.1kVでSEM観察(反射電子像)を行う。」と記載されているとおり、両者は電子顕微鏡による観察時に使用する加速電圧が異っている。そして、両者で加速電圧が異なる結果、大きい加速電圧を用いた電子顕微鏡による観察を行っている甲第5号証の「A 特表2008-524824(甲第4号証)の審査過程における、H25.1.10付けで提出された意見書(図2)に示される活性層の電子顕微鏡写真」に基づく申立人による画像処理では、本件特許公報に記載の測定法では表面にないと判定される粒子を、表面にある粒子と判定しているおそれがあるので、請求人の方法で算出された変動率が、たとえ数値としては、本件発明1の変動率の範囲に含まれるものであったとしても、変動率の測定方法が同じとはいえないから、本件発明1において特定された変動率になっていることが裏付けられているとはいえない。また、電子顕微鏡による観察画像を得る加速電圧の条件ならびに観察画像に対する二色化処理条件が異っていても、多孔質層の空隙率の変動率の数値が1.0%以上、28.0%以下であれば、相違点4に係る本件発明1の特定事項を満足するまでの立証が、申立書には示されていない。 カ したがって、甲第5号証を参照しても、本件発明1と甲4発明との間にある相違点4が実質的な相違点ではないとは認められない。また、他の甲号証、甲第1~3号証にも非水電解液二次電池のセパレータ用多孔質層に関する空隙率変動率については記載ないし示唆されていないことから、甲4発明に基づき、多孔質層の「その表面を1区画が縦2.3μm×横2.3μmの正方形に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が1.0%以上、28.0%以下である」とすることは当業者が容易になし得る事項ともいえない。 キ 次に、本件発明1が奏する効果についても検討してみるに、本件発明1の効果は、上記(1-2-1)キで検討したように、「充放電サイクルを繰り返した後においても初期の放電容量を概ね維持することができる、サイクル特性に優れた非水電解液二次電池、非水電解液二次電池用部材として好適な多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ(積層体)を提供すること」、すなわち、非水電解液二次電池における長期的な物性維持・確保に関するものである。一方、甲4発明の効果は、上記4(1-1)で摘記した4ア、4オによると「電池の熱的、電気化学的安全性」及び放電速度の増加によっても容量が低下しない「性能の向上を同時に図ること」であり、また、甲第5号証は、甲4発明を補足するものであるから、ここに記載される内容は、上記甲4発明の効果と同様であり、また、甲第1号証に記載の発明は、上記(1-2-1)キに示した甲1発明の効果と同様に「負荷特性および安全性に優れた非水電解液電池を構成し得るセパレータ」を提供することであることから、いずれも非水電解液二次電池における長期的な物性維持・確保に関するものではない。 よって、本件発明1の効果は、甲第1、4~5号証の記載から予測することができるとはいえない。 (2-2-2)相違点についての判断のまとめ 以上のとおり、甲4発明において、相違点3及び相違点4に係る本件発明1の特定事項とすることは、甲第1、5号証の記載事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではないし、また、本件発明1は、甲第1、4~5号証から予測できない効果を奏するものであるので、本件発明1は、甲4発明、甲第1、5号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700027

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