特許訂正審判
2017-390088
第IX因子/第IXa因子の抗体および抗体誘導体
- 審判番号
- 2017-390088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2001-523763外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月04日
- 審決日
- 2017年10月31日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P141 .832-Y (C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第3項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第4313531号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4313531号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第4313531号に係る出願は、平成12年9月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年9月14日、オーストリア)を国際出願日とする出願であり、平成21年5月22日に設定登録され、以降の経緯は概ね以下のとおりである。
平成29年4月28日 訂正審判の請求
(訂正2017-390031)
平成29年8月21日付け 審決(訂正を認める。)
平成29年9月 4日 訂正審判の請求
(訂正2017-390088;本件訂正審判)
第2 請求の要旨
本件訂正審判は、本件特許の特許請求の範囲を、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は、下記のとおりである。
訂正事項
請求項1における「抗体または抗体誘導体(ただし、抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、および抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製を除く)」を「抗体または抗体誘導体(ただし、抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製、抗体クローンESN-2:American Diagnostica社製、および抗体クローンESN-3:American Diagnostica社製、ならびにそれらの抗体誘導体を除く)」と訂正する。
第3 当審の判断
1.一群の請求項について
上記訂正事項に係る訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、上記訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法126条第3項に規定する一群の請求項である。
2.訂正事項について
(1)訂正の目的の適否について
上記訂正事項は、請求項1から「抗体クローンESN-2:American Diagnostica社製、および抗体クローンESN-3:American Diagnostica社製」、ならびに「抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製、抗体クローンESN-2:American Diagnostica社製、および抗体クローンESN-3:American Diagnostica社製」の「抗体誘導体」を除くものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
審判請求書に添付された甲第1号証の1および2(抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製の製品説明書および全訳文)、甲第2号証の1および2(抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製の製品説明書および全訳文)、甲第3号証の1および2(抗体クローンESN-2、ESN-3:American Diagnostica社製の添付文書および全訳文)、ならびに甲第4号証の1および2(甲3号証の1で引用された、クローン番号を命名した論文および部分訳)の記載から、上記訂正事項において「除く」とされる4つの抗体クローン(抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製、抗体クローンESN-2:American Diagnostica社製、および抗体クローンESN-3:American Diagnostica社製)は、いずれも抗第IX因子抗体であると認められる。
そして、審判請求書に添付された甲3号証の1および2、甲4号証の1および2、甲5号証の1および2(国際公開第96/39510号及び部分訳)、甲6号証の1および2(国際公開第97/10851号および部分訳)、甲8号証の1および2(免疫学および生物学試薬のリンスコトットのディレクトリ 第10版 1998-1999 および部分訳)、ならびに甲14号証(証拠説明書)の記載から、上記訂正事項において「除く」とされる上記4つの抗体クローンは、少なくとも公然知られていたもの、または公然実施をされたものであると一応認められる。
また、審判請求書に添付された証拠であって、審判請求人を原告とする、本件特許権に基づく特許権侵害差止等請求事件(平成28年(ワ)第11475号)において、被告である中外製薬株式会社が作成して提出した「試験報告書(平成29年02月10日作成)」(甲11)には、抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製の2つの抗体が「第VIII因子補因子活性を示す」こと、すなわち、本件の請求項1に記載される「凝血促進活性を増大させる」ことを示す実験結果が記載され、「試験報告書(平成28年11月15日作成)」(甲12)には、抗体クローンESN-2:American Diagnostica社製、抗体クローンESN-3:American Diagnostica社製の2つの抗体が「第VIII因子補因子活性を示す」こと、すなわち、本件の請求項1に記載される「凝血促進活性を増大させる」ことを示す実験結果が記載されていると認められる。
そうすると、この4つの抗体クローンは、訂正前の請求項1に特定される要件を満足する、公然知られた発明または公然実施された発明に該当するものと一応認めることができる。また、通常、当技術分野において、ある抗体クローンが公知である場合には、該抗体クローンの抗体誘導体も同様に公知であると認められるから、この4つの抗体クローンの抗体誘導体についても、公然知られた発明または公然実施された発明に該当するおそれがあるものということができる。
したがって、上記訂正事項は、請求項に係る発明が、先行技術と重なるために新規性等を失う恐れがある場合に、訂正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該重なりのみを除く訂正に該当すると認められるから、訂正事項は、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記(1)に記載したとおり、上記訂正事項は、請求項1を減縮するものであり、上記(2)に記載したとおり、新規事項を追加するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)独立特許要件について
上記(2)に記載したとおり、訂正前の請求項1に特定される要件を満足する抗体または抗体誘導体として、4つの抗体クローン(抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製、抗体クローンESN-2:American Diagnostica社製、抗体クローンESN-3:American Diagnostica社製)、およびそれらの抗体誘導体が公然知られていた又は公然実施をされていたとしても、上記訂正事項により、これら4つの抗体クローンおよびそれらの抗体誘導体が除かれることとなる訂正後の請求項1は新規性を有するものである。
また、本件審判請求書に添付された、抗体クローンAHIX - 5041(Haematologic Technologies社製)に関する甲1号証の2の「用途」の項には、「ウエスタンブロット-可、ELISA-可、放射免疫測定(RIR)-可、精製のための使用-可」と記載され、抗体クローンHIX - 1(SIGMA - ALDRICH社製)に関する甲2号証の2の「用法注意および免責」の項には、「本製品は研究開発の用途のみに使用されるものであり、治療薬、家庭用、その他用途での使用は不可。」と記載され、抗体クローンESN-2(American Diagnostica社製)および抗体クローンESN-3(American Diagnostica社製)に関する甲3号証の2の「抗体の特異性」の項には、「・ESN2及び3はある程度の交差反応を示すため、密接に関連するエピトープを認識する。その一方、その他2つの抗体は第IX因子上の別々のエピトープに結合する。従って、第IX因子に対するイムノアッセイは可能である。
・各抗体は不溶性ゲルに共有結合した後も活性を保持し、この形態で各抗体を第IX因子(特に#5990)の免疫除去及び免疫精製において用いてもよい。」と記載されている。
そうすると、抗体クローンAHIX - 5041、抗体クローンHIX - 1、抗体クローンESN-2、および抗体クローンESN-3は、いずれも試験・研究用の試薬として公然知られていた又は公然実施をされていたと認められるとしても、これら4つの抗体クローンが「凝血促進活性を増大させる」ことまでが知られていたと認めるに足る証拠は示されていない。
さらに、本件の優先日当時に、「第IX因子または第IXa因子に対する抗体または抗体誘導体」が「凝血促進活性を増大させる」ことが知られていたことを示す証拠もない。
なお、審判請求書に添付された甲第16号証の1および2には、ESN-2およびESN-3の凝固阻害について記載されており、これらの抗体に凝固阻害活性があることが示されていると認められる。
したがって、これら4つの抗体クローンおよびそれらの抗体誘導体に基づいて「凝血促進活性を増大させる」抗体または抗体誘導体を作成することは、当業者にとって容易想到ではなく、訂正後の請求項1に係る発明は進歩性を有するものである。
また、訂正後の請求項1に係る発明に、他に特許を受けることができない理由があるとは認められない。
よって、訂正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、特許法第126条第7項に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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