特許拒絶査定不服審判
2017-018560
画像形成装置及び動作制御プログラム並びに動作制御方法
- 審判番号
- 2017-018560
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-189168外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月14日
- 審決日
- 2019年04月01日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】宮本 恵司
- 分類
- P18 .121-WY (B41J) / P18 .537-WY (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-189168「画像形成装置及び動作制御プログラム並びに動作制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 64915、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月28日の出願であって、平成29年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達日 同月15日)、これに対し、同年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、当審において、平成30年6月25日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年8月23日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
ローカルエリアネットワーク内において、クライアント端末と複数の他の画像形成装置とに相互にデータ通信可能に接続される画像形成装置であって、
印刷ジョブに基づいて、画像形成処理を行う画像形成部と、
前記クライアント端末から要求されたデータを、当該クライアント端末に送信するサーバ処理を行うサーバ処理部と、
前記複数の他の画像形成装置のうち、サーバ処理部を有する1以上の画像形成装置を第1のグループとして管理すると共に、予め定めた基準で選択された1以上の画像形成装置を第2のグループとして管理するグループ管理部と、
前記クライアント端末から受信したパケットデータを解析し、前記パケットデータで指示される処理要求が、前記サーバ処理部に対するデータ要求であるか前記画像形成部に対する画像形成要求であるかを判別し、前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行可能か否かを判定する判定部と、
前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行できないと判定した場合、前記処理要求が前記サーバ処理部に対するデータ要求であれば、前記第1のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置にサーバ処理の代理実行を依頼し、前記処理要求が前記画像形成部に対する画像形成要求であれば、前記第2のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼する代理実行制御部と、を備え、
前記代理実行制御部は、前記画像形成処理の代理実行を依頼した場合は、前記画像形成要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知し、前記サーバ処理の代理実行を依頼した場合は、前記データ要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知しない、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能か否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記処理要求に基づく処理を実行した場合の処理負荷を推定すると共に、現在実行中の処理の処理負荷を推定し、前記推定した処理負荷の合算値が予め定めた閾値を超えるか否かに基づいて、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能か否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記画像形成処理におけるリアルタイム性を確保できる場合に、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能と判定する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記処理要求に基づく処理を実行した場合の処理負荷のピークと現在実行中の処理の処理負荷のピークとが重畳する際に、前記画像形成処理におけるリアルタイム性を確保できる場合に、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能と判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記グループ管理部は、自装置との物理的距離が所定範囲内の画像形成装置を、前記第2のグループに所属する画像形成装置として選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記グループ管理部は、自装置と同一のサブネットワークに属する画像形成装置を、前記第2のグループに所属する画像形成装置として選択する、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項8】
ローカルエリアネットワーク内において、クライアント端末と複数の他の画像形成装置とに相互にデータ通信可能に接続される画像形成装置で動作する動作制御プログラムであって、
前記画像形成装置は、印刷ジョブに基づいて、画像形成処理を行う画像形成部と、前記クライアント端末から要求されたデータを、当該クライアント端末に送信するサーバ処理を行うサーバ処理部と、を備え、
前記画像形成装置の制御部に、
前記複数の他の画像形成装置のうち、サーバ処理部を有する1以上の画像形成装置を第1のグループとして管理すると共に、予め定めた基準で選択された1以上の画像形成装置を第2のグループとして管理するグループ管理処理、
前記クライアント端末から受信したパケットデータを解析し、前記パケットデータで指示される処理要求が、前記サーバ処理部に対するデータ要求であるか前記画像形成部に対する画像形成要求であるかを判別し、前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行可能か否かを判定する判定処理、
前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行できないと判定した場合、前記処理要求が前記サーバ処理部に対するデータ要求であれば、前記第1のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置にサーバ処理の代理実行を依頼し、前記処理要求が前記画像形成部に対する画像形成要求であれば、前記第2のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼する代理実行制御処理、を実行させ、
前記代理実行制御処理では、前記画像形成処理の代理実行を依頼した場合は、前記画像形成要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知し、前記サーバ処理の代理実行を依頼した場合は、前記データ要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知しない、
ことを特徴とする動作制御プログラム。
【請求項9】
前記判定処理では、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能か否かを判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の動作制御プログラム。
【請求項10】
前記判定処理では、前記処理要求に基づく処理を実行した場合の処理負荷を推定すると共に、現在実行中の処理の処理負荷を推定し、前記推定した処理負荷の合算値が予め定めた閾値を超えるか否かに基づいて、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能か否かを判定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の動作制御プログラム。
【請求項11】
前記判定処理では、前記画像形成処理におけるリアルタイム性を確保できる場合に、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能と判定する、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の動作制御プログラム。
【請求項12】
前記判定処理では、前記処理要求に基づく処理を実行した場合の処理負荷のピークと現在実行中の処理の処理負荷のピークとが重畳する際に、前記画像形成処理におけるリアルタイム性を確保できる場合に、前記処理要求に基づく処理が現在実行中の処理と並列で実行可能と判定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の動作制御プログラム。
【請求項13】
前記グループ管理処理では、自装置との物理的距離が所定範囲内の画像形成装置を、前記第2のグループに所属する画像形成装置として選択する、
ことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一に記載の動作制御プログラム。
【請求項14】
前記グループ管理処理では、自装置と同一のサブネットワークに属する画像形成装置を、前記第2のグループに所属する画像形成装置として選択する、
ことを特徴とする、請求項8乃至13のいずれか一に記載の動作制御プログラム。
【請求項15】
ローカルエリアネットワーク内において、クライアント端末と複数の他の画像形成装置とに相互にデータ通信可能に接続される画像形成装置における動作制御方法であって、
前記画像形成装置は、印刷ジョブに基づいて、画像形成処理を行う画像形成部と、前記クライアント端末から要求されたデータを、当該クライアント端末に送信するサーバ処理を行うサーバ処理部と、を備え、
前記複数の他の画像形成装置のうち、サーバ処理部を有する1以上の画像形成装置を第1のグループとして管理すると共に、予め定めた基準で選択された1以上の画像形成装置を第2のグループとして管理するグループ管理処理と、
前記クライアント端末から受信したパケットデータを解析し、前記パケットデータで指示される処理要求が、前記サーバ処理部に対するデータ要求であるか前記画像形成部に対する画像形成要求であるかを判別し、前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行可能か否かを判定する判定処理と、
前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行できないと判定した場合、前記処理要求が前記サーバ処理部に対するデータ要求であれば、前記第1のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置にサーバ処理の代理実行を依頼し、前記処理要求が前記画像形成部に対する画像形成要求であれば、前記第2のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼する代理実行制御処理と、を実行し、
前記代理実行制御処理では、前記画像形成処理の代理実行を依頼した場合は、前記画像形成要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知し、前記サーバ処理の代理実行を依頼した場合は、前記データ要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知しない、
ことを特徴とする動作制御方法。」
第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
原査定に係る拒絶理由の概要は以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-19
・引用文献等 1-5
<引用文献等一覧>
1.特開2000-181653号公報
2.特開2004-102333号公報
3.特開2011-170412号公報
4.特開2000-10741号公報
5.特開2003-271354号公報
2.原査定の理由の判断
(1)引用例
ア.引用例1
原査定に係る拒絶理由で引用された特開2000-181653号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「【請求項1】 印刷データを生成すると共に印刷処理の内容を表し且つ前記印刷データよりもデータ量が少ない印刷処理内容情報を生成する端末装置と、印刷データに基づいて印刷処理を実行するプリンタと、前記プリンタを管理するサーバと、を含んで構成されたネットワークシステムであって、
前記サーバは、
前記端末装置から前記印刷データの印刷処理要求として送られてきた前記印刷処理内容情報に基づいて、該印刷処理を実行させるプリンタ及び該プリンタへの印刷データの転送経路を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する転送制御手段と、
前記端末装置からの印刷処理要求の処理を代替させる代替サーバを選択する選択手段と、
前記選択手段により代替サーバに選択されたサーバに、前記端末装置から受けた印刷処理要求の代替を要求する要求手段と、
他のサーバによって代替サーバに選択された場合に、前記端末装置からの印刷処理要求を代替して処理するように制御する代替処理制御手段と、
を有することを特徴とするネットワークシステム。」
(イ)「【0033】決定手段では、端末装置から受信した印刷処理内容情報に基づいて該印刷データの印刷処理に適したプリンタと、該プリンタへの印刷データの転送経路とを決定する。転送制御手段では、決定手段により決定された転送経路に従って印刷データがプリンタへ転送されるように制御している。すなわち、サーバは、端末装置から受けた印刷処理要求を処理して、印刷データをプリンタに転送させるプリントサーバとして稼動している。」
(ウ)「【0040】図1に示されるように、ネットワークシステム100は、第1のネットワークN1及び第2のネットワークN2を含んで構成されている。
【0041】このうち第1のネットワークN1では、複数(本実施形態では4つ)の端末装置(以下、ワークステーションという)12W1、12W2、12W3、12W4、1台のサーバ(以下では、単にサーバと称する)14、及び複数(本実施形態では4つ)のプリンタ16P1、16P2、16P3、16P4がローカルエリアネットワーク(LAN)10を介して相互に接続されている。なお、プリンタ16P1、16P2、16P3、16P4はサーバ14により管理されている。
【0042】また、第2のネットワークN2では、複数(本実施形態では4つ)のワークステーション22W1、22W2、22W3、22W4、1台のサーバ24、及び複数(本実施形態では4つ)のプリンタ26P1、26P2、26P3、26P4がLAN20を介して相互に接続されている。なお、プリンタ26P1、26P2、26P3、26P4はサーバ24により管理されている。
【0043】なお、第1のネットワークN1はルータ18を介して、第2のネットワークN2はルータ28を介して、それぞれLAN(FDDI/ISDN/X.25)30に接続されている。」
(エ)「【0067】次に、図10、図11で示す各種のデータ転送経路パターンを説明する。
【0068】ルート1(図10のルート)は、サーバ14からの指示に従いプリンタ16P1が、蓄積した印刷データD1をワークステーション12W1から直接獲得するデータ転送経路であり、ルート2(図10のルート)は、サーバ14からの指示に従いワークステーション12W1が印刷データD1をプリンタ16P1に直接送信するデータ転送経路である。
【0069】ルート3(図10のルート)は、サーバ14が、蓄積した印刷データD1をワークステーション12W1から獲得し、この印刷データD1をプリンタ16P1がサーバ14から獲得するデータ転送経路であり、ルート4(図10のルート)は、サーバ14が印刷データD1をワークステーション12W1から獲得し、プリンタ16P1へ転送するデータ転送経路である。
【0070】ルート5(図10のルート)は、サーバ14からの指示に従いワークステーション12W1が印刷データD1をサーバ14へ送信し、プリンタ16P1がサーバ14からの指示に従い印刷データD1をサーバ14から獲得するデータ転送経路であり、ルート6(図10のルート)は、サーバ14からの指示に従いワークステーション12W1が印刷データD1をサーバ14へ送信し、サーバ14が受信した印刷データD1をプリンタ16P1へ転送する従来と同様のルートである。」
(オ)「【0083】図13には、装置情報テーブル290で管理している装置タイプ、通信機能の組合せを表しており、図14には、図13の各組合せ毎に実現可能なデータ転送経路を示している。
【0084】なお、通信機能はクライアント機能(他の装置へのデータの送信及び他の装置からのデータの獲得を実行する通信機能)とサーバ機能(他の装置からのデータの受信及び他の装置からのデータ獲得要求に対するデータの提供を実行する通信機能)とに分類している。本実施形態におけるサーバ14はクライアント機能・サーバ機能の両機能を所有している。
【0085】図13に示すM01はワークステーションとプリンタが共にクライアント機能、サーバ機能を所有している場合の組合せであり、図14に示すように、図11のデータ転送経路パターンの全てのルート1~6での印刷データの通信を行なうことができる。」
(カ)「【0125】サーバ14は、図22のS200で、ネットワークN1を介して接続された装置(ワークステーション12W1、12W2、12W3、12W4又はプリンタ16P1、16P2、16P3、16P4)からのデータの受信有無を監視している。S200でデータの受信を検知した場合は、次のS201へ進み、データを受信し、受信したデータ(受信データ)を図3のスプール280へ保管する。
【0126】S201でスプール280への受信データの保管が完了すると、次のS220で、サーバ14において代替サーバを選択する状態が発生しているか否かをチェックする。ここでサーバ14が正常に機能する場合には、S202に進み、サーバ14に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合、又は、スプール280がフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合はS221に進む。ステップ221では、詳しくは後述する代替要求処理のサブルーチンを実行する。」
(キ)「【0162】サーバ14に障害が発生し、全ての機能を代替サーバに代替させる場合(S705で肯定判定)は、S706で性能情報テーブル292、S707で装置情報テーブル290をサーバ14から代替サーバに送信する。またS708ではサーバ14に蓄積されている印刷データD1、S709では処理中及び未処理の全ての印刷要求(リファレンスD2)を代替サーバに送信する。これらの情報の送信により、サーバ14は代替サーバに全ての機能の代替を要求する。これにより、プリンタがプリントサーバに印刷データD1を獲得しに来るルート(ルート3、5)及びプリントサーバがプリンタに印刷データD1を送信するルートが選択され、スプール280に格納されている印刷途中の印刷データD1、あるいは未処理の印刷データD1の印刷処理を代替サーバに代行させることができる。
【0163】一方、サーバ14の機能が停滞しており、一部の機能を代替サーバに代替させる(迂回する)場合(S705で否定判定)は、S709に進み、新規にワークステーション12W1から送られてきた未処理の印刷要求(リファレンスD2)のみを代替サーバに転送する。これにより、プリンタがプリントサーバに印刷データD1を獲得しに来るルート(ルート3、5)及びプリントサーバがプリンタに印刷データD1を送信するルートが選択され、スプール280に大量に蓄積された場合や、大量のデータの転送中によりサーバ14の処理が滞っているときに、代替サーバにサーバ14の処理の一部(未処理の印刷要求の処理)を代行させることができる。すなわち、如何なるときでも、リファレンスD2を用いたことによる利点(ネットワークシステム全体のスループットの低下の防止)を享受することができる。」
(ク)上記「(ア)」の「……端末装置と、……プリンタと、……サーバと、を含んで構成されたネットワークシステム」との記載から、「プリンタ」は「ネットワークシステムに接続される」といえる。
また、上記「(ウ)」の「第1のネットワークN1では、複数(本実施形態では4つ)の端末装置(以下、ワークステーションという)……、1台のサーバ……、及び複数(本実施形態では4つ)のプリンタ……がローカルエリアネットワーク(LAN)10を介して相互に接続されている。」、「第2のネットワークN2では、複数(本実施形態では4つ)のワークステーション……、1台のサーバ24、及び複数(本実施形態では4つ)のプリンタ……がLAN20を介して相互に接続されている。」及び「第1のネットワークN1はルータ18を介して、第2のネットワークN2はルータ28を介して、それぞれLAN……に接続されている。」との記載から、「ネットワークシステム100」は、「端末装置、サーバ及び複数のプリンタがローカルエリアネットワーク(LAN)を介して相互に接続された」ものであるといえる。
さらに、上記「(ウ)」の「端末装置(以下、ワークステーションという)」との記載から、「ワークステーション」は「端末装置」であるといえる。
(ケ)引用文献1には上記「(エ)」のとおり、「サーバ14は……サーバ機能……を所有している」こと(段落【0084】)、「サーバ機能」は「他の装置からのデータの受信及び他の装置からのデータ獲得要求に対するデータの提供を実行する通信機能」であること(段落【0084】)、及び、「プリンタが……サーバ機能を所有している」こと(段落【0085】)が記載されているから、引用文献1には「他の装置からのデータの受信及び他の装置からのデータ獲得要求に対するデータの提供を実行する通信機能」である「サーバ機能」を「サーバ」と同様に所有する「プリンタ」(以下「サーバ機能を有するプリンタ」という。)が記載されているといえる。
引用文献1には、「サーバ」を構成する各手段と「サーバ機能」との対応関係は明示されていないものの、請求項1(上記「(ア)」参照)において「サーバ」が有する手段として記載された「前記端末装置から前記印刷データの印刷処理要求として送られてきた前記印刷処理内容情報に基づいて、該印刷処理を実行させるプリンタ及び該プリンタへの印刷データの転送経路を決定する決定手段」、「前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する転送制御手段」、「前記端末装置からの印刷処理要求の処理を代替させる代替サーバを選択する選択手段」及び「前記選択手段により代替サーバに選択されたサーバに、前記端末装置から受けた印刷処理要求の代替を要求する要求手段」はいずれも、「ネットワークシステム」における「サーバ」以外の装置である「端末装置」及び「プリンタ」との間での「印刷処理要求」及び「印刷データ」の通信に係る手段であるから、「他の装置からのデータの受信及び他の装置からのデータ獲得要求に対するデータの提供を実行する通信機能」である「サーバ機能」を実行するものといえる。
また、上記「(イ)、(オ)及び(カ)」の下線部の事項も同様に、「他の装置からのデータの受信及び他の装置からのデータ獲得要求に対するデータの提供を実行する通信機能」である「サーバ機能」を実行するものといえる。
そして、引用文献1に記載された「サーバ機能を有するプリンタ」は、「サーバ機能」を有する以上、上記請求項1(上記「(ア)」参照)の「サーバ」と同様の各手段を有し、上記「(イ)、(カ)及び(キ)」の下線部のサーバに係る事項と同様の事項を備えると解するのが自然である。そして、「サーバ」及び「サーバ機能を有するプリンタ」は、「サーバ機能を有する装置」と総称することができる。
また、上記「(ウ)」によれば、「ネットワークシステム」には「複数のプリンタ」が含まれるところ、「サーバ機能を有するプリンタ」が1台に限られると解すべき事情はなく、上記「(ウ)」によれば「ネットワークシステム」には複数(第1のネットワークN1及び第2のネットワークN2にそれぞれ1台)の「サーバ」が存しており、サーバ機能を有する装置が「サーバ」と同様に複数であってもよいことも明らかであるから、「サーバ機能を有するプリンタ」は複数であってよいことは明らかである。
さらに、以上の検討を踏まえると、上記「(カ)及び(キ)」の「代替サーバ」は「サーバ」を代替するものであって、「サーバ機能を有するプリンタ」についても同様にこれを代替する「サーバ機能を有するプリンタ」が存し得るものと認められる。そして、「代替サーバ」及び代替の「サーバ機能を有するプリンタ」は、ともにサーバ機能を有する「サーバ」又は「プリンタ」を代替するものであるから、「代替のサーバ機能を有する装置」(以下「代替装置」ということがある。)と総称することができる。
(コ)上記「(カ)」の記載のとおり、「サーバ14」は「サーバ14において代替サーバを選択する状態が発生しているか否かをチェックする」から、「サーバ14」は当該チェックを行うための手段を有しているといえる。また、「ステップ221」で「代替要求処理のサブルーチンを実行する」ことから見て、「代替サーバを選択する状態」とは、「S221に進む」場合、すなわち、「サーバ14に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合、又は、スプール280がフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合」であるといえる。
(サ)上記「(ウ)」によると「ネットワークシステム100」には「サーバ14」及び「サーバ24」の複数の「サーバ」が存するところ、上記「(カ)及び(キ)」における「サーバ14」はこのうちのひとつの「サーバ」に着目したものであって、「ネットワークシステム100」における「サーバ」は「サーバ14」と、上記「(カ)及び(キ)」における「代替サーバ」になり得るその他の「サーバ」とに区分することができる。
また、上記「(ケ)」のとおり、引用文献1には「サーバ」と同様にサーバ機能を有する「サーバ機能を有するプリンタ」が記載されており、これを考慮すると、引用文献1記載の「ネットワークシステム」には複数の「サーバ」及び「サーバ機能を有するプリンタ」が存するといえるから、上記「(カ)及び(キ)」における「サーバ14」に代えて「サーバ機能を有するプリンタ」のひとつに着目すると、「ネットワークシステム」に存する複数の「サーバ」及び「サーバ機能を有するプリンタ」は、当該ひとつの「サーバ機能を有するプリンタ」と、その代替となり得るその他の「サーバ」及び「サーバ機能を有するプリンタ」とに区分することができる。
そこで、以下では、当該ひとつの「サーバ機能を有するプリンタ」を、他の「サーバ」及び「サーバ機能を有するプリンタ」と区別して、「自装置」と呼ぶ。
上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ネットワークシステムに接続されるプリンタであって、
ネットワークシステムは、端末装置、サーバ及び複数のプリンタがローカルエリアネットワーク(LAN)を介して相互に接続されたものであり、
印刷データに基づいて印刷処理を実行し、
他の装置からのデータの受信及び他の装置からのデータ獲得要求に対するデータの提供を実行する通信機能であるサーバ機能を所有しており、
端末装置から受けた印刷処理要求を処理して、印刷データをプリンタに転送させるプリントサーバとして稼動しており、
前記端末装置から前記印刷データの印刷処理要求として送られてきた前記印刷処理内容情報に基づいて、該印刷処理を実行させるプリンタ及び該プリンタへの印刷データの転送経路を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する転送制御手段と、
自装置において代替のサーバ機能を有する装置(代替装置)を選択する状態が発生しているか否か、すなわち、自装置に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合、又は、スプールがフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合であるかをチェックする手段と、
自装置に何らかの障害が発生して、正常にプリンタサーバとしての機能を遂行できなくなった場合に、前記端末装置からの印刷処理要求の処理を代替させる代替装置を選択する選択手段と、
前記選択手段により代替装置に選択されたサーバ機能を有する装置に、前記端末装置から受けた印刷処理要求の代替を要求する要求手段と、を有し、
自装置に障害が発生し、全ての機能を代替装置に代替させる場合は、自装置に蓄積されている印刷データ、処理中及び未処理の全ての印刷要求を代替装置に送信し、スプールに格納されている印刷途中の印刷データ、あるいは未処理の印刷データの印刷処理を代替装置に代行させることができ、
自装置の機能が停滞しており、一部の機能を代替装置に代替させる(迂回する)場合は、新規に端末装置から送られてきた未処理の印刷要求のみを代替装置に転送し、代替装置に自装置の処理の一部(未処理の印刷要求の処理)を代行させることができる、
プリンタ。」
イ.引用例2
原査定に係る拒絶理由で引用された特開2004-102333号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0055】
また本実施形態においては、プリンタ30、32はいわゆるネットワークプリンタである。本実施形態においては、特にプリンタ30、32は、印刷送信用データを印刷クライアント20から受信したときには、この印刷送信用データを復号できた場合にのみ、復号されることにより取得された印刷データに基づく印刷を行う。また、本実施形態においては、プリンタ30、32は、紙詰まり等の理由により印刷を実行できない場合には、復号された印刷データを代わりに印刷する代替プリンタを選定する。この選定した代替プリンタが所定範囲内に位置している場合には、受信した印刷送信用データをそのまま代替プリンタにネットワーク10を介して転送する。一方、この選定した代替プリンタが所定範囲内に位置していない場合には、この代替プリンタの公開鍵を用いて印刷データを再び暗号化した印刷送信用データを生成する。そして、この代替プリンタにネットワーク10を介して、生成した印刷送信用データを送信する。この印刷送信用データを受信した代替プリンタは、この印刷送信用データを復号し、復号できた場合には印刷を実行する。」
(イ)「【0118】
印刷結果情報が代替印刷通知である場合(ステップS258:Yes)には、代替印刷であることをユーザに通知するとともに、代替印刷通知に含まれている代替プリンタを特定する情報もユーザに通知する(ステップS260)。一方、印刷結果情報が代替印刷通知でない場合(ステップS258:No)には、その他の何らかのエラーであると考えられるので、ユーザに、そのエラーの種類に応じた通知を行う(ステップS262)。」
(ウ)「【0134】
これに対して、上述したステップS286で、プリンタ30が印刷実行可能な状態にないと判断した場合(ステップS286:No)には、図15に示すように、プリンタ30は、代替印刷を行わせる代替プリンタを選択する(ステップS310)。具体的には、プリンタ30は、代替プリンタリストテーブルTB40を検索し、相対距離D42が最も近いプリンタを選択する。ここでは、プリンタ32が代替プリンタとして選択されたとする。」
上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「ネットワークプリンタであって、
紙詰まり等の理由により印刷を実行できない場合には、代替プリンタリストテーブルを検索し、相対距離が最も近いプリンタを、復号された印刷データを代わりに印刷する代替プリンタに選定し、
この選定した代替プリンタが所定範囲内に位置している場合には、受信した印刷送信用データをそのまま代替プリンタにネットワークを介して転送し、
印刷結果情報が代替印刷通知である場合には、代替印刷であることをユーザに通知するとともに、代替印刷通知に含まれている代替プリンタを特定する情報もユーザに通知する、
プリンタ。」
ウ.引用例3
原査定に係る拒絶理由で引用された特開2011-170412号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0015】
機器112a、112b、124a、124bは、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能、ストレージ機能、ネットワーク接続機能などを含む多機能周辺機器(Multi-Function Peripheral)、コピー機、ファクシミリ装置、ページプリンタとして実装されており、LAN116、LAN126にネットワークインタフェースカード(NIC)を介してピア接続され、クライアント装置114a~114d、122a~122cの設定に対応して、出力サービスを提供する。なお、特定の実施形態および用途に応じて、図1に示したネットワークプリントシステム100には、プリンタサーバ(図示せず)を接続し、プリンタサーバに対してプリントジョブの管理を委任するように実装することができる。プリンタサーバを採用する場合、出力管理装置110は、プリンタサーバが管理するポートモニタ情報の更新を、機器の状態変化に対応して実行する。」
(イ)「【0017】
図2は、本実施形態の出力管理装置110の機能ブロック図である。出力管理装置110は、アプリケーション実行部200と、出力管理処理部210、および各種インタフェースとして例示的に示したネットワークI/F220、ストレージI/F230を含んでいる。アプリケーション実行部200は、出力管理アプリケーションやウェブアプリケーションといったプログラムを実行し、出力管理およびそのためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供する。ウェブアプリケーションは、ネットワークを介してHTML、XMLなどの構造化文書、Java Script(登録商標)Java Applet(登録商標)などで記述されたプログラムをLAN116を介して送出し、クライアント装置114a~114d、122a~122cに対してウェブブラウザなどを介したGUI表示を提供する。なお、以下説明する各機能ブロックは、CPUが実行可能なプログラムを実行することによりコンピュータを当該機能手段として機能させることによりコンピュータ上に実現される。
【0018】
出力管理処理部210は、プラグインプログラムなどとして実装することができ、状態管理処理部212、DBサーバ処理部214、ログサーバ処理部216およびクライアント装置管理部218を、その処理モジュールとして含んでいる。状態管理処理部212は、LAN116などを介して取得した機器の能力状態を、SNMPプロトコルを使用し、例えば機器112a、112b、124a、124bなどが開示しているMIBを参照して取得することができる。本実施形態では、用語「取得」とは、状態管理処理部212が能動的にポーリングする処理および機器の状態変化に対応して発行されるTrapメッセージを取得する処理のいずれかまたはその両方を含む処理を意味する。
【0019】
DBサーバ処理部214は、出力管理処理に必要なデータを、データベースとして管理し、ネットワークアドレス、ポート番号、プリンタドライババージョン、制御言語などのポートモニタ情報、リソース情報、代替機検索条件データ機器の形成するドメイン情報などを管理している。ログサーバ処理部216は、ネットワークプリントシステム100を介して送受信された印刷ジョブの履歴を管理し、事後的なネットワークプリントシステム100の保守をサポートする。
DBサーバ処理部214およびログサーバ処理部216が生成した各データベースデータは、ATA、Serial ATA、Ultra ATAなどの規格のストレージI/Fを介してHDD装置といった記憶装置240に格納される。格納された各データは、読取/書込指令に対応し出力管理処理部210によりアクセスされる。なお、DBサーバ処理部214は、その他クライアント装置のポートモニタを遠隔的に制御するためのIPアドレス、MACアドレスといった情報も管理することができる。」
(ウ)「【0022】
図3は、図2に示したクライアント装置管理部218のさらに詳細な機能ブロック図である。クライアント装置管理部218は、状態監視部218a、代替機決定部218bおよびクライアント情報管理部218cを含んで構成されている。状態監視部218aは、本実施形態ではSNMPマネージャの機能として実装され、ポーリングによりアクティブに状態を取得する場合には、「get-request」メッセージをタイマ起動するように実装することができる。また、パッシブに状態を取得する実施形態では、エージェントとして登録される機器からの「Trap」メッセージの受領を待機し、「Trap」メッセージが出力不可条件管理部218dが登録する印刷不可条件に適合した場合に、代替機決定部218bおよびクライアント情報管理部218cを呼出して代替装置を決定し、クライアント装置の設定に反映させる。
【0023】
代替機決定部218bは、障害が発生した機器に代替できる機器を評価し、代替機を決定する。評価にあたっては、機器のプリンタドライバの共用性、リソースオプションおよび機器へのアクセス性を考慮する。このため、代替機決定部218bは、代替候補リストを管理し、代替リストに登録された機器の中から代替候補を評価し、代替候補を決定する。決定された機器のネットワークデータは、ポート情報設定部218eに送付され、障害を発生した機器を登録するクライアント装置に送付される。」
(エ)「【0032】
図6は、本実施形態の代替機決定部218bが利用する代替リスト600の実施形態を示す。図6に示した実施形態では、代替リスト600は、オフィス内における機器の空間的近接度に基づいてドメインを割り当て、当該ドメイン毎に代替評価の対象とする機器を集約したサブテーブル610、620、630などとして構成することができる。ドメインの設定は、出力を指令したユーザのアクセス性を、本来のネットワークにプリンタへのアクセス性と比較して過度に低下させることがないように、例えばネットワーク管理者が設定することもできるし、VLANをアクセス性を考慮して設定する場合、ドメインを特定のVLAN単位で設定することができる。また、ネットワークプリントシステム100がアドホック型のワイヤレスネットワークを含む場合、同一のアクセスポイントによって管理される機器の単位をドメインとして割り当てることもできる。VLANまたはアクセスポイント単位でドメインを割り当てる場合、アドレステーブルを使用して代替リスト600を自動構成することができる。」
(オ)「【0041】
出力管理装置110は、ステップS6で印刷不能状態の機器を登録するクライアント装置を調査するために、ポートモニタ情報を要求し、ステップS7で、ポートモニタ情報を収集する。問い合わせを行ったクライアント装置が当該機器を指定していない場合(no)、再度処理をステップS6に処理を戻し、次のクライアント装置からのポートモニタ情報を取得し、ネットワークプリントシステム100に参加しているクライアント装置全体にわたり、印刷不能となった機器を設定するクライアント装置を抽出する。
【0042】
一方、ステップS7で取得したポートモニタ情報が印刷不能となった機器を含む場合、出力管理装置110は、ステップS8で代替器を評価して検索を実行する。評価の結果、代替機が見出された場合、ステップS9で代替機情報を取得し、ステップS10で代替機のポートモニタ情報を、クライアント装置に送付し、対応する機器のポートモニタ情報を変更する。なお、ステップS9で代替機が見出されなかった場合の処理については後述する。
【0043】
ステップS10でのポートモニタ情報の変更は、クライアント装置が代替機情報を受領し、出力管理アプリケーションが例えばPrint Monitor Function APIを呼び出し、代替機情報で印刷不能となった機器のポートモニタ情報を上書きすることにより行うことができる。この際、後の時点で印刷不能となった機器の再度の利用を可能とするため、オリジナルのポートモニタ情報をバッファメモリなどに退避させておくことができる。上書きされたポートモニタ情報は、出力管理装置110が後の時点で対応する機器が印刷不能から復帰したことを検出した場合にバッファメモリから読み出され、本来のポートモニタ情報で書き換えることができる。また、ステップS10の指令は、ステップS6、S7で取得されたクライアント装置に対しユニキャストを使用して個別的に送付することができるが、処理の高速化・効率化のため、マルチキャストによって発行することが好ましい。」
(カ)「【0051】
本実施例では、プリントモニタAPI、例えばWIN32_Printerクラスなどを利用し、新規に設定したポートに割り当てた機器がデフォルト設定の機器となるように設定することにより、ユーザがスムースなプリント指令を行うことができる。なお、この際、クライアント装置に実装されるプリント管理アプリケーションは、出力先の機器が障害により変更されたことを通知するGUI(Graphical User Interface)を表示し、同時に出力先の機器のオフィス内での位置を示すマップなどを表示させることで、印刷物へのアクセス性を向上させることができる。」
(キ)上記「(イ)」によれば、「出力管理装置110」は「出力管理処理部210」を含んでおり、「出力管理処理部210」は「クライアント装置管理部218」を含んでいるから、「出力管理装置110」は「クライアント装置管理部218」を含んでいるといえる。
上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「プリンタサーバが管理するポートモニタ情報の更新を、機器の状態変化に対応して実行する出力管理装置であって、
状態監視部、代替機決定部およびクライアント情報管理部を含んで構成されているクライアント装置管理部を含んで構成されており、
代替機決定部は、障害が発生した機器に代替できる機器を評価し、代替機を決定し、評価にあたっては、機器のプリンタドライバの共用性、リソースオプションおよび機器へのアクセス性を考慮し、このため、代替機決定部は、代替候補リストを管理し、代替リストに登録された機器の中から代替候補を評価し、代替候補を決定し、
代替リストは、オフィス内における機器の空間的近接度に基づいてドメインを割り当て、当該ドメイン毎に代替評価の対象とする機器を集約したサブテーブルなどとして構成することができ、
ポートモニタ情報はネットワークアドレス、ポート番号、プリンタドライババージョン、制御言語などであり、
出力管理装置は、印刷不能状態の機器を登録するクライアント装置を調査するために、ポートモニタ情報を要求し、ポートモニタ情報を収集し、
取得したポートモニタ情報が印刷不能となった機器を含む場合、出力管理装置は、代替器を評価して検索を実行し、評価の結果、代替機が見出された場合、代替機情報を取得し、代替機のポートモニタ情報を、クライアント装置に送付し、
ポートモニタ情報の変更は、クライアント装置が代替機情報を受領し、代替機情報で印刷不能となった機器のポートモニタ情報を上書きすることにより行うことができる、
出力管理装置。」
エ.引用例4
原査定に係る拒絶理由で引用された特開2000-10741号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0033】図1は、ホストマシン1に搭載された制御プログラムの動作を示す。今、ユーザがホストマシン1上でアプリケーション等から対象となるプリンタBに対して印刷を実行すると、ホストマシン1上の描画系システムによってプリンタドライバが起動される。プリンタドライバが起動されると、図1のアルゴリズムの実行を開始する。
【0034】ステップS101では、警告通知機能を使用するか否かの設定情報を、設定ファイル、データベース等から取得する。
【0035】ステップS102では、取得した情報を確認する。
【0036】警告通知機能を使用しない設定の場合には、そのままプリンタドライバに制御を返して本処理を終了し、通常の印刷処理に移行する。警告通知機能を使用する設定の場合には、ステップS103に進む。
【0037】ステップS103では、図6に示すように、ユーザが印刷しようとしているプリンタBの障害状況の情報を取得する。
【0038】ステップS104では、取得した障害状況の情報を確認する。そして、何らかの障害が発生していれば、ステップS201に進み、警告通知の処理を開始する。
【0039】障害が発生していなければ、ステップS105に進む。
【0040】ステップS105では、警告通知/プリンタリスト表示に関する設定情報を設定ファイル、データベース等から取得する。
【0041】ステップS106では、取得した条件設定の情報を確認する。
【0042】警告通知を行う警告条件として、印刷待ちジョブの合計数を使うように設定されていない場合は、ステップS109へ進む。使うよう設定されていた場合は、ステップS107へ進む。
【0043】ステップS107では、ユーザが印刷しようとしているプリンタの印刷待ちジョブの合計数を取得する。
【0044】ステップS108では、取得した印刷待ちジョブの合計数を確認する。
【0045】印刷待ちジョブの合計数が、ステップS105で取得したユーザ設定情報で設定されている警告通知の警告条件の印刷待ちジョブの数よりも多い、若しくは、同数であった場合には、ステップS201に進み、警告通知の処理を開始する。
【0046】印刷待ちジョブの合計数が、警告条件の印刷待ちジョブの数よりも少なかった場合には、ステップS109へ進む。
【0047】ステップS109では、ステップS105で取得したユーザ設定情報を確認し、警告通知を行う警告条件として印刷待ちジョブの合計サイズを使用するか否かを調べる。
【0048】合計サイズを使用するように設定されていない場合は、プリンタドライバに制御を返し、処理を終了する。
【0049】合計サイズを使用するように設定されていた場合は、ステップS110へ進む。
【0050】ステップS110では、ユーザが印刷しようとしているプリンタの印刷待ちジョブの合計サイズを取得する。
【0051】ステップS111では、取得した印刷待ちジョブの合計サイズを確認する。
【0052】印刷待ちジョブの合計サイズが、ステップS105で取得したユーザ設定情報で設定されている警告通知の警告条件の印刷待ちジョブの数よりも多い、若しくは、同数であった場合には、ステップS201に進み、警告通知の処理を開始する。
【0053】印刷待ちジョブの合計サイズが、警告条件の印刷待ちジョブの数よりも少なかった場合には、プリンタドライバに制御を返し、処理を終了する。
【0054】図2~図4は、設定画面20における警告条件の設定内容を示す。
【0055】警告表示における警告条件の設定は、ダイアログボックスをプリンタドライバの設定画面の一部として、若しくは、プリンタドライバの設定画面からボタンなどを押すことにより、ダイアログボックスを随時ユーザが呼び出すことによって行うことが可能である。
【0056】図2は、警告条件の設定を行うためのダイアログボックス20の1例を示す。警告条件の設定は、以下の手順で行う。
【0057】図3に示すダイアログボックス20において、「警告・代替プリンタリスト表示機能を使用する」のボタン21をオンにすると、警告・代替プリンタリスト表示機能を使用することが可能となり、警告条件の設定を行うことができる。」
(イ)「【0074】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ユーザが印刷を指示した段階で、指示されたプリンタの状態を自動的に判断し、即時の印刷が不可能である場合はユーザに警告を通知し、印刷を指定したプリンタに対して印刷ジョブが溜まっている場合は警告条件(印刷ジョブの総数および合計サイズ)に基づいて待機中か否かを判断し、また、ユーザに警告を通知する場合は、他のプリンタの状態リストをユーザに表示提供するようにしたので、ユーザが印刷を行うとする度にプリンタの状態を確認する必要がなくなり、印刷不可能若しくは印刷待ちが長くなるときのみ警告を行い、印刷可能な代替プリンタリストを提示することが可能となり、これにより、自分の印刷ジョブの即時実行が不可能な場合における、印刷ジョブ取り消し、代替プリンタの検索を面倒な手続きを無くし、ひいてはユーザの印刷作業における負荷の軽減を図り、利便性を向上させることができる。」
上記の記載事項を総合すると、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。
「ユーザがホストマシン上でアプリケーション等から対象となるプリンタに対して印刷を実行すると、アルゴリズムの実行を開始し、
ユーザが印刷しようとしているプリンタの障害状況の情報を取得し、取得した障害状況の情報を確認して、何らかの障害が発生していれば、警告通知の処理を開始し、
ユーザが印刷しようとしているプリンタの印刷待ちジョブの合計数を取得し、取得した印刷待ちジョブの合計数を確認し、印刷待ちジョブの合計数が、ユーザ設定情報で設定されている警告通知の警告条件の印刷待ちジョブの数よりも多い、若しくは、同数であった場合には、警告通知の処理を開始し、
ユーザ設定情報を確認し、警告通知を行う警告条件として印刷待ちジョブの合計サイズを使用するか否かを調べ、合計サイズを使用するように設定されていた場合は、ユーザが印刷しようとしているプリンタの印刷待ちジョブの合計サイズを取得し、取得した印刷待ちジョブの合計サイズを確認し、印刷待ちジョブの合計サイズが、ユーザ設定情報で設定されている警告通知の警告条件の印刷待ちジョブの数よりも多い、若しくは、同数であった場合には、警告通知の処理を開始し、
警告表示における警告条件の設定は、ダイアログボックスを随時ユーザが呼び出すことによって行うことが可能であり、ダイアログボックスにおいて、「警告・代替プリンタリスト表示機能を使用する」のボタンをオンにすると、警告・代替プリンタリスト表示機能を使用することが可能となり、
ユーザが印刷を指示した段階で、指示されたプリンタの状態を自動的に判断し、即時の印刷が不可能である場合はユーザに警告を通知し、印刷を指定したプリンタに対して印刷ジョブが溜まっている場合は警告条件(印刷ジョブの総数および合計サイズ)に基づいて待機中か否かを判断し、また、ユーザに警告を通知する場合は、他のプリンタの状態リストをユーザに表示提供する、
ホストマシンに搭載された制御プログラム。」
オ.引用例5
原査定に係る拒絶理由で引用された特開2003-271354号公報(以下「引用例5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 自動代行印刷の設定が行われているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により自動代行印刷の設定が行われていると判別された場合、自動代行印刷を行わせ、前記判別手段により自動代行印刷の設定が行われていないと判別された場合、手動代行印刷を行わせる処理手段とを有することを特徴とする代行印刷処理装置。」
(イ)「【0055】以下の条件に該当した場合、当該ジョブがオリジナルジョブであり出力方法が自動代行に設定されている時には自動代行に移行し、それ以外の場合はダイアログを表示してユーザに手動代行を行う機会を与える。ただし、ユーザはこれらのうちどの条件で実際に代行印刷が行われるかを個々に選択することができる。
【0056】(エラー発生時)印刷ジョブが印刷システム内部で送信待ち状態にあるときに、印刷予定のデバイスで印刷不可能なエラーが発生していることが検出された場合。デバイスにジョブデータを送信中に何らかの原因で(例えばデバイスの電源断により)送信が不能になり、デバイスとの通信エラーが検出された場合。デバイスにジョブデータを送信中に、デバイスで印刷不可能なエラーが発生していることが検知された場合。デバイスに印刷ジョブデータを送信した後、印刷終了通知が来ないうちにデバイスで印刷不可能なエラーが発生した場合。
【0057】(デバイスにおける警告発生時)印刷ジョブが印刷システム内部で送信待ち状態にあるときに、印刷予定のデバイスで警告が発生していることが検出された場合。デバイスにジョブデータを送信中に、デバイスで警告が発生していることが検知された場合。デバイスに印刷ジョブデータを送信した後、印刷終了通知が来ないうちにデバイスで警告が発生した場合。
【0058】(デバイスの印刷負荷の高い時)デバイスが印刷ジョブを正常に処理中であっても、デバイスの印刷負荷の高い場合代行印刷を行う。すなわち、印刷を行おうとしているプリンタについてあらかじめ設定されたしきい値以上のジョブが印刷待ちになっている場合。しきい値は、印刷待ちジョブの数と印刷待ちジョブサイズの合計の一方または両方を指定できる。印刷待ちジョブを調べる範囲は、対象プリンタに関連付けられた出力ポート内である。」
上記の記載事項を総合すると、引用例5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。
「自動代行印刷の設定が行われているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により自動代行印刷の設定が行われていると判別された場合、自動代行印刷を行わせ、前記判別手段により自動代行印刷の設定が行われていないと判別された場合、手動代行印刷を行わせる処理手段とを有し、
デバイスが印刷ジョブを正常に処理中であっても、デバイスの印刷負荷の高い場合であって、印刷を行おうとしているプリンタについてあらかじめ設定されたしきい値以上のジョブが印刷待ちになっている場合、当該ジョブがオリジナルジョブであり出力方法が自動代行に設定されている時には自動代行に移行し、
しきい値は、印刷待ちジョブの数と印刷待ちジョブサイズの合計の一方または両方を指定できる、
代行印刷処理装置。」
(2)本願発明1についての判断
ア.対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)後者の「端末装置」は、前者の「クライアント端末」に相当する。
(イ)後者の「ネットワークシステム」は「ローカルエリアネットワーク(LAN)を介して相互に接続された」ものであるから、前者の「ローカルエリアネットワーク」に相当する。
(ウ)後者の「プリンタ」は、「端末装置、サーバ及び複数のプリンタがローカルエリアネットワーク(LAN)を介して相互に接続されたもの」である「ネットワークシステムに接続され」、「印刷データに基づいて印刷処理を実行」するから、前者の「ローカルエリアネットワーク内において、クライアント端末と複数の他の画像形成装置とに相互にデータ通信可能に接続される画像形成装置」に相当する。
(エ)後者の「プリンタ」は「印刷データに基づいて印刷処理を実行する」から、「印刷データに基づいて印刷処理を実行する」手段を有することは明らかであって、後者の当該手段は前者の「印刷ジョブに基づいて、画像形成処理を行う画像形成部」に相当する。
(オ)後者は「前記端末装置から前記印刷データの印刷処理要求として送られてきた前記印刷処理内容情報に基づいて、該印刷処理を実行させるプリンタ及び該プリンタへの印刷データの転送経路を決定する決定手段」及び「前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する転送制御手段」を有するから、後者においては端末装置からの「印刷データの印刷処理要求」である「印刷処理内容情報」に基づいて印刷データが前記プリンタへ転送されるのであって、「印刷データ」は「端末装置」から要求されたデータであるといえる。
後者の「決定手段」の「前記端末装置から前記印刷データの印刷処理要求として送られてきた前記印刷処理内容情報に基づいて、該印刷処理を実行させるプリンタ及び該プリンタへの印刷データの転送経路を決定する」処理、及び、「転送制御手段」の「前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する」処理は、「プリントサーバ」の「端末装置から受けた印刷処理要求を処理して、印刷データをプリンタに転送させる」処理に対応するから、「プリントサーバ」としての処理であるといえる。
引用例1の上記「(1)ア.(エ)」の記載によれば「データ転送経路パターン」には「ルート1」ないし「ルート6」があるものの、いずれも印刷データが端末装置へ送信されるものではない。すなわち、後者の「前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する転送制御手段」は、印刷データを端末装置へ送信するものではない。
そして、以上を踏まえると、後者の「前記決定手段により決定された転送経路に従って印刷データが前記プリンタへ転送されるよう制御する転送制御手段」と前者の「クライアント端末から要求されたデータを、クライアント端末に送信するサーバ処理を行うサーバ処理部」とは「クライアント端末から要求されたデータを、送信するサーバ処理を行うサーバ処理部」との概念で共通する。
(カ)後者の「プリンタ」は「端末装置から受けた印刷処理要求を処理して、印刷データをプリンタに転送させるプリントサーバとして稼動」するものであるから、後者の「自装置において代替のサーバ機能を有する装置(代替装置)を選択する状態が発生しているか否か、すなわち、自装置に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合、又は、スプールがフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合であるかをチェックする手段」における「プリントサーバとしての機能」は、「端末装置から受けた印刷処理要求を処理して、印刷データをプリンタに転送させる」ことであり、また、「チェックする手段」における「プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている」か否かや「プリントサーバの機能停滞中である」か否かのチェックが「端末装置から受けた印刷処理要求」に基づくものであることは明らかである。
一方、後者の「チェックする手段」は、「自装置において代替のサーバ機能を有する装置(代替装置)を選択する状態が発生しているか否か、すなわち、自装置に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合、又は、スプールがフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合であるかをチェックする」ものであるが、このうち「自装置に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合」には、自装置ではサーバに係るいかなる処理も行うことができないから、実行中の処理と印刷処理要求に基づく処理とが並列して処理されるものではない。また、「スプールがフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合」についても、技術常識を踏まえると、スプールに蓄積可能なデータや、データの送受信の帯域には上限があって、いずれも上限を上回る場合には処理待ちが生じるものであるから、「スプールがフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中であ」る場合は処理待ちが生じている状態であると認められる。そうすると、この場合には実行中の処理と印刷処理要求に基づく処理とは時系列上で前後する関係にあって、並列して処理されるものではない。してみると、後者の「チェックする手段」は、印刷処理要求に基づく処理を「自装置で実行中の処理と並列して」自装置で実行可能か否かを判定するものではない。
以上の点を踏まえると、後者の「自装置において代替のサーバ機能を有する装置(代替装置)を選択する状態が発生しているか否か、すなわち、自装置に何らかの障害が発生し、プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合、又は、スプールがフル状態であったり、大量の印刷データを送受信中でありプリントサーバの機能停滞中である場合であるかをチェックする手段」と、前者の「前記クライアント端末から受信したパケットデータを解析し、前記パケットデータで指示される処理要求が、前記サーバ処理部に対するデータ要求であるか前記画像形成部に対する画像形成要求であるかを判別し、前記処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行可能か否かを判定する判定部」とは、「処理要求に基づく処理を自装置で実行可能か否かを判定する判定部」との概念で共通する。
(キ)前者の「他の画像形成装置」は「クライアント端末から要求されたデータを、当該クライアント端末に送信するサーバ処理を行うサーバ処理部」を有するから、後者の「サーバ機能を有する装置(代替装置)」は前者の「他の画像形成装置」に相当する。
このことを踏まえると、後者の「自装置に何らかの障害が発生して、正常にプリンタサーバとしての機能を遂行できなくなった場合に、前記端末装置からの印刷処理要求の処理を代替させる代替装置を選択する選択手段」及び「前記選択手段により代替装置に選択されたサーバ機能を有する装置に、前記端末装置から受けた印刷処理要求の代替を要求する要求手段」と、前者の「処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行できないと判定した場合、前記処理要求がサーバ処理部に対するデータ要求であれば、第1のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置にサーバ処理の代理実行を依頼し、前記処理要求が画像形成部に対する画像形成要求であれば、第2のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼する代理実行制御部」とは、「いずれかの他のサーバ機能を有する装置にサーバ処理の代理実行を依頼する代理実行制御部」との概念で共通する。
(ク)後者の「選択手段」及び「要求手段」は印刷処理要求の代替に際して何ら通知を行うものではないから、後者のこの点と、前者の「代理実行制御部は、画像形成処理の代理実行を依頼した場合は、画像形成要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知し、サーバ処理の代理実行を依頼した場合は、データ要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知しない」点とは、サーバ処理の代理実行を依頼した場合は、データ要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知しない」との概念で共通する。
そうすると、両者は、
「ローカルエリアネットワーク内において、クライアント端末と複数の他の画像形成装置とに相互にデータ通信可能に接続される画像形成装置であって、
印刷ジョブに基づいて、画像形成処理を行う画像形成部と、
前記クライアント端末から要求されたデータを、送信するサーバ処理を行うサーバ処理部と、
処理要求に基づく処理を自装置で実行可能か否かを判定する判定部と、
前記処理要求に基づく処理を自装置で実行できないと判定した場合、いずれかの他のサーバ機能を有する装置にサーバ処理の代理実行を依頼する代理実行制御部と、を備え、
前記代理実行制御部は、前記サーバ処理の代理実行を依頼した場合は、前記データ要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知しない、
画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者のサーバ処理部におけるサーバ処理が、クライアント端末から要求されたデータを「クライアント端末に送信する」ものであるのに対して、後者はクライアント端末に送信しない点。
[相違点2]
前者が「複数の他の画像形成装置のうち、サーバ処理部を有する1以上の画像形成装置を第1のグループとして管理すると共に、予め定めた基準で選択された1以上の画像形成装置を第2のグループとして管理するグループ管理部」を有するのに対して、後者はそのような手段を有さない点。
[相違点3]
前者では、判定部がクライアント端末から受信した「パケットデータ」を解析するのに対して、後者では、端末装置から受けた印刷処理要求を処理するものの当該印刷処理要求がどのようなデータであるか明らかでない点。
[相違点4]
前者の判定部が、パケットデータで指示される処理要求が、「サーバ処理部に対するデータ要求であるか前記画像形成部に対する画像形成要求であるかを判別する」のに対して、後者ではそのような判別をするか明らかでない点。
[相違点5]
前者の判定部が、処理要求に基づく処理を「自装置で実行中の処理と並列して」自装置で実行可能か否かを判定するのに対して、後者ではそのような条件で実行可能か否かを判定するものではない点。
[相違点6]
前者の代理実行制御部が、「処理要求に基づく処理を自装置で実行中の処理と並列して自装置で実行できないと判定した場合」に代理実行を依頼するのに対して、後者ではそのような場合に代理実行を依頼するものではない点。
[相違点7]
前者の代理実行制御部が、処理要求がサーバ処理部に対するデータ要求であれば、「第1のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置」にサーバ処理の代理実行を依頼するのに対して、後者では画像形成装置を「第1のグループ」として管理するものではなく、画像形成装置に限らないサーバ機能を有する装置にサーバ処理の代理実行を依頼する点。
[相違点8]
前者の代理実行制御部が、「処理要求が画像形成部に対する画像形成要求であれば、第2のグループに所属するいずれかの他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼する」のに対して、後者では画像形成装置を「第2のグループ」として管理するものではなく、他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼するものではない点。
[相違点9]
前者の代理実行制御部が、「画像形成処理の代理実行を依頼した場合は、画像形成要求の送信元のクライアント端末に対して、代理実行を依頼した旨を通知」するのに対して、後者では代理実行を依頼した旨を通知しない点。
イ.判断
上記相違点5について検討する。
引用発明1の「チェックする手段」は、上記「ア.(キ)」のとおり、処理要求に基づく処理を「自装置で実行中の処理と並列して」自装置で実行可能か否かを判定するものではない。
引用発明2及び3は上記「(1)イ.及びウ.」のとおりであって、引用発明2及び3のように、機器の障害のために印刷処理を実行できない場合に、他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼することは、本願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術1」という。)であるといえる。
しかしながら、周知技術1は機器の障害のために印刷処理を実行できない場合に代理実行を依頼するものであり、上記「ア.(キ)」での「プリントサーバとしての機能を果たせなくなっている場合」についての検討と同様に、そのような場合には自装置ではいかなる処理も行うことができないのだから、実行中の処理と代理実行に係る処理とが並列して処理されるものではない。
引用発明4及び5は上記「(1)エ.及びオ.」のとおりであって、引用発明4及び5のように、印刷待ちジョブの数量がしきい値以上の場合に、他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼することは、本願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術2」という。)であるといえる。
しかしながら、周知技術2は印刷待ちジョブの数量がしきい値以上の場合に、他の画像形成装置に画像形成処理の代理実行を依頼するものであり、上記「ア.(キ)」での「プリントサーバの機能停滞中である場合」についての検討と同様に、実行中の処理と代理実行に係る処理とは時系列上で前後する関係にあって、並列して処理されるものではない。
そうすると、周知技術1及び2は、いずれも相違点5に係る本願発明1の発明特定事項にを備えるものではない。
そして、引用発明1に周知技術1及び2を適用したとしても、サーバ処理及び画像形成処理のそれぞれについて、処理を実行できない場合に代理実行が行われたり、処理待ちが生じた場合に代理実行に係る判定がされるに止まり、上記相違点5に係る本願発明1の「処理要求に基づく処理を「自装置で実行中の処理と並列して」自装置で実行可能か否かを判定する」との発明特定事項を備えるものにはならない。
また、上記相違点5に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は、上記相違点5に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「サーバ機能を備える画像形成装置における、印刷ジョブ実行時のパフォーマンス及び信頼性の低下を抑制することができる」(段落【0011】)という効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本願発明2ないし15についての判断
本願発明2ないし7は、本願発明1をさらに限定したものである。
また、本願発明8は、本願発明1の「画像形成装置」に対応する「動作制御プログラム」の発明であって、上記相違点5に係る本願発明1の発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものであり、本願発明9ないし14は、本願発明8をさらに限定したものである。
また、本願発明15は、本願発明1の「画像形成装置」に対応する「動作制御方法」の発明であって、上記相違点5に係る本願発明1の発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本願発明1については上記「(2)」のとおりであるから、本願発明2ないし15は、本願発明1と同様に引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)小括
よって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
平成30年6月25日付けの当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・請求項 6~8、14~16
請求項6の「前記判定部は、自装置のジャム又は故障を検知した場合、前記処理要求に基づく処理を自装置で実行できないと判定する」との記載について、「自装置のジャム又は故障を検知した場合」の判定がどのように行われるのかが明確でない。
よって、請求項6並びに同項を引用する請求項7及び8に係る発明は明確でない。
また、請求項14並びに同項を引用する請求項15及び16に係る発明も同様に明確でない。
2.当審拒絶理由の判断
平成30年8月23日付け手続補正書による手続補正により、特許請求の範囲は上記「第2 本願発明」において摘示した請求項1ないし15のとおりに補正された。
当該手続補正によって、補正前の請求項6及び14は削除されるとともに、補正前の請求項7、8、15及び16に対応する補正後の請求項6、7、13及び14は補正前の請求項6及び14の事項を有さないものとされた。
そうすると、補正後の特許請求の範囲の記載は、当審拒絶理由で明確でないとした補正前の請求項6及び14の事項を含むものではなくなったから、当審拒絶理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-018560