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特許拒絶査定不服審判

2017-016979

電気自動車、充電装置及び制御方法

審判番号
2017-016979
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-076177外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年11月15日
審決日
2019年04月03日
公報発行日
2019年07月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H02J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016- 76177「電気自動車、充電装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日出願公開、特開2016-167975〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年7月29日に出願した特願2011-166275号の一部を平成28年4月5日に新たな特許出願としたものであって、平成28年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月20日付けで手続補正がなされ、同年4月24日付けで拒絶理由が通知され、同年7月10日付けで手続補正がなされ、同年8月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月15日に拒絶査定不服の審判が請求され、同時に、手続補正がなされた。 その後、当審において、平成30年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月18日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成31年2月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項2】 蓄電池と、 低圧受電設備と、 前記蓄電池及び前記低圧受電設備から供給される電力を管理する電力管理装置と、 を備えた充電システムの充電装置であって、 前記充電装置はコンピュータを搭載し、 前記コンピュータは、 前記蓄電池及び前記低圧受電設備から供給され得る電力の総和を示す電力データに基づき、前記電力管理装置により算出された前記充電装置の供給可能出力を示す電力値としての供給可能出力データを電気自動車へ送信し、 送信した前記供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す電流値データを前記電気自動車から受信し、 前記電流値データによって示される電流値による電力を、前記電気自動車に充電させる 充電装置。」 第3 当審において通知した拒絶の理由の概要 当審において平成30年12月18日付けで通知した拒絶の理由は、請求項2に係る発明についての理由を含むものであって、その概要は、次のとおりである。 本件出願の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項並びに周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2011-130646号公報 2.本田一晃,50kW大容量急速充電器の設計技術,グリーン・エレクトロニクスNo4(2011),CQ出版社(周知技術を示す文献) 3.特開2011-114961号公報 第4 引用文献 1.引用文献1 当審の拒絶理由に引用された特開2011-130646号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「給電装置及びそれを用いた給電システム」に関して、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0021】 給電装置1は、図1(a)に示すように電気自動車(機器)Cとの間で信号の授受を行う信号通信回路12と、信号通信回路12で取得した信号に含まれる情報に基づいて電気自動車Cへの供給電力を設定する電源制御回路11と、電源制御回路11で設定された供給電力を電気自動車Cに供給するDC/DCコンバータ13と、制御装置3と信号通信回路12との間に介装されて情報のやりとりを仲介するインターフェース回路14と、給電装置1から導出されたケーブルに設けられて、電気自動車Cの自動車側コネクタ85に接続するための給電用コネクタ15とを備えている。なお、DC/DCコンバータ13から出力される直流電圧値は、本実施形態ではDC300Vに設定されているものとして以下説明する。 【0022】 直流分電盤2は、図1(a)に示すように蓄電池7から供給される直流電力を所定の直流電力(例えばDC350V)に変換するDC/DCコンバータ21と、太陽光発電装置6から供給される直流電力を所定の直流電力(例えばDC350V)に変換するDC/DCコンバータ22と、商用交流電源ACから供給される交流電力を所定の直流電力(例えばDC350V)に変換するAC/DCコンバータ23と、各コンバータ21~23の出力を協調させて負荷に供給する協調制御部24と、複数(図1(a)では6個)の直流ブレーカ25とを備えており、各コンバータ21~23から供給される直流電力は、協調制御部24および直流ブレーカ25を介して給電装置1に供給される。 【0023】 制御装置3は、直流分電盤2から出力される直流電力量を制御するための装置であり、上述のDC/DCコンバータ21,22およびAC/DCコンバータ23それぞれの給電割合を設定する。また、制御装置3は、直流分電盤2の給電能力を給電装置1に送信する機能も備えており、給電装置1では制御装置3から送信される直流分電盤2の給電能力を超えないように、DC/DCコンバータ13を制御して電気自動車Cに直流電力を供給する。ここに、本実施形態では、制御装置3により送信器が構成されている。」 (2)「【0025】 給電対象である電気自動車Cは、図1(a)(b)に示すように給電装置1の給電用コネクタ15が接続される自動車側コネクタ85を備えるとともに、給電装置1の信号通信回路12との間で情報(例えば後述の電気自動車Cが対応する給電電圧および給電電流に関する給電情報など)のやりとりを行う信号通信回路82と、給電装置1から供給される直流電力(本実施形態ではDC300V)を蓄電するための蓄電池(蓄電部)84と、蓄電池84を充電するための充電回路83と、信号通信回路82から入力される情報に基づいて充電回路83を制御する充電制御回路81とを備えている。 【0026】 ここで、本実施形態の給電システムでは、電気自動車C側から当該電気自動車Cが対応する給電電圧および給電電流に関する給電情報が送信されるようになっており、給電装置1側では信号通信回路12によりこの給電情報を取得する。さらに、給電装置1では、信号通信回路12で取得した給電情報が電源制御回路11に入力され、電源制御回路11ではこの給電情報と、制御装置3から送信される直流分電盤2の給電能力とを比較して、電気自動車Cへの給電電圧および給電電流を設定する。そして、電源制御回路11は、設定した給電電圧および給電電流に基づいてDC/DCコンバータ13を制御し、所望の直流電力を電気自動車Cに供給するのである。例えば、電気自動車C側からDC300V、20Aの要求があった場合に、直流分電盤2の給電能力が3000VAの場合には、給電装置1は電気自動車Cに対してDC300V、10Aの給電を行うことになる。ここに、本実施形態では、信号通信回路12により給電情報取得部が構成され、また電源制御回路11により制御部が構成されている。」 (3)「【0028】 次に、本給電システムの動作について説明する。給電装置1の給電用コネクタ15を電気自動車Cの自動車側コネクタ85に接続すると、電気自動車Cから給電装置1に対して上記の給電情報が送信され、さらに制御装置3からは給電装置1に対して直流分電盤2の給電能力が送信される。上記の給電情報および直流分電盤2の給電能力を受け取った給電装置1では、電源制御回路11において両者が比較され、直流分電盤2の給電能力を超えない範囲で、供給する直流電力(給電電圧および給電電流)が設定される。そして、電源制御回路11は、DC/DCコンバータ13を制御して設定した給電電圧および給電電流の直流電力を電気自動車Cに供給する。なおこのとき、電源制御回路11は、電気自動車Cに対して上記のSAE信号を合わせて送信する。」 ア.上記(1)によれば、給電装置1は、電気自動車Cへの供給電力を設定する電源制御回路11と、電源制御回路11で設定された供給電力を電気自動車Cに供給するDC/DCコンバータ13を備えている。 また、上記(1)によれば、直流分電盤2は、蓄電池7から供給される直流電力を所定の直流電力に変換するDC/DCコンバータ21と、商用交流電源ACから供給される交流電力を所定の直流電力に変換するAC/DCコンバータ23とを備えており、各コンバータ21、23から供給される直流電力は、給電装置1に供給される。このことから、給電装置1は、直流分電盤2から供給された直流電力を電気自動車Cに供給するものである。 イ.上記(3)によれば、電気自動車Cから給電装置1に対して上記の給電情報が送信され、さらに制御装置3からは給電装置1に対して直流分電盤2の給電能力が送信され、上記の給電情報および直流分電盤2の給電能力を受け取った給電装置1では、電源制御回路11において両者が比較され、直流分電盤2の給電能力を超えない範囲で、供給する直流電力(給電電圧および給電電流)が設定される。また、電源制御回路11は、DC/DCコンバータ13を制御して設定した給電電圧および給電電流の直流電力を電気自動車Cに供給する。さらに、上記(2)によれば、電源制御回路11は、設定した給電電圧および給電電流に基づいてDC/DCコンバータ13を制御し、所望の直流電力を電気自動車Cに供給する。これらのことから、給電装置1は、電気自動車Cから送信された給電情報と、制御装置3から送信された直流分電盤2の給電能力とを、電源制御回路11において比較し、直流分電盤2の給電能力を超えない範囲で、給電電圧及び給電電流により直流電力を設定するものであって、電源制御回路11によって、設定した給電電圧及び給電電流に基づきDC/DCコンバータ13を制御し、直流電力を電気自動車Cへ供給するものである。 ウ.上記(1)によれば、直流分電盤2は、蓄電池7から供給される直流電力を所定の直流電力に変換するDC/DCコンバータ21と、商用交流電源ACから供給される交流電力を所定の直流電力に変換するAC/DCコンバータ23とを備えており、各コンバータ21、23から供給される直流電力は、給電装置1に供給される。このことから、直流分電盤2は、蓄電池7から供給される直流電力を、DC/DCコンバータ21によって所定の直流電力に変換し、商用交流の電源から供給される交流電力を、AC/DCコンバータ23によって所定の直流電力に変換し、各コンバータ21、23から供給される直流電力を給電装置1に供給するものである。 エ.上記(1)によれば、制御装置3は、直流分電盤2から出力される直流電力量を制御するための装置であり、DC/DCコンバータ21及びAC/DCコンバータ23それぞれの給電割合を設定するものである。 オ.上記(2)によれば、電気自動車Cは、給電装置1から直流電力が供給されて蓄電池84を充電するものである。 したがって、上記(1)ないし(3)の記載事項及び図面並びに上記ア.ないしオ.の事項を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「電気自動車Cへの供給電力を設定する電源制御回路11と、電源制御回路11で設定された供給電力を電気自動車Cに供給するDC/DCコンバータ13を備え、直流分電盤2から供給された直流電力を電気自動車Cに供給する給電装置1であって、 電気自動車Cから送信された給電情報と、制御装置3から送信された直流分電盤2の給電能力とを、電源制御回路11において比較し、直流分電盤2の給電能力を超えない範囲で、給電電圧及び給電電流により直流電力を設定するものであって、電源制御回路11によって、設定した給電電圧及び給電電流に基づきDC/DCコンバータ13を制御し、直流電力を電気自動車Cへ供給する ここで、直流分電盤2は、蓄電池7から供給される直流電力を、DC/DCコンバータ21によって所定の直流電力に変換し、商用交流の電源から供給される交流電力を、AC/DCコンバータ23によって所定の直流電力に変換し、各コンバータ21、23から供給される直流電力を給電装置1に供給するものであり、 制御装置3は、直流分電盤2から出力される直流電力量を制御するためものであり、DC/DCコンバータ21及びAC/DCコンバータ23それぞれの給電割合を設定するものであり、 電気自動車Cは、給電装置1から直流電力が供給されて蓄電池84を充電するものである 給電装置1。」 2.引用文献3 当審の拒絶理由に引用された特開2011-114961号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「充電システム」に関して、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0045】 このようにして充電器100側の充電条件が決定すると、制御部106は、充電停止電圧および充電停止時間と、充電器100が供給可能な最大出力電流値とを含む充電器情報を、通信用ライン1012を介して電気自動車200に送信し(S1029)、ネゴシエーション処理を終了する。なお、制御部106は、その後、図2のS104以降の処理を実行する。」 (2)「【0070】 その後、制御部205は、車載バッテリ203の電圧等を監視しながら、所定のインターバルで、通信部204および通信用ライン2012を介して充電器100に充電電流指示値を送信する(S208)。具体的には、制御部205は、まず、充電条件に含まれる充電電流上限値を初期値として充電器100に送信し、その後、逐次、車載バッテリ203の電圧値と予め定められた充電パターン等とに基づき、充電条件に含まれる充電電流上限値以下の電流値を充電電流指示値に決定し、この充電電流指示値を充電器100に送信する。これにより、車載バッテリ203の充電が行われる。」 (3)「【0080】 一方、制御部205が、フォトカプラ209からの事前準備開始合図信号がオンのまま(S2031でNO)、通信部204、通信用ライン2012を介して、充電器100から充電器情報を受信すると(S2033)、充電器情報に含まれる最大印加可能時間および最大印加可能電圧値が適正な値であるか否かをチェックする。その結果、最大印加可能時間および最大印加可能電圧値が適正な値であれば、制御部205は、車載バッテリ203が充電器100に適合すると判断する(S2034)。そして、充電器情報に含まれる最大出力電流値と、車載バッテリ203に印加可能な最大電流値(最大印加可能電流値)とを比較し(S2035)、これらのうち値の小さな電流値を充電電流上限値として設定する。具体的には、車載バッテリ203の最大印加可能電流値が充電情報の最大出力電流値未満である場合(S2035でYES)には、車載バッテリ203の最大印加可能電流値を充電電流上限値として設定し(S2036)、車載バッテリ203の最大印加可能電流値が充電情報の最大出力電流値以上である場合(S2035でNO)には、充電情報の最大出力電流値を、充電条件の充電電流上限値として設定する(S2037)。」 (4)「【0089】 車載バッテリ203の充電中、電気自動車200では、制御部205が、逐次、車載バッテリ203の状態および所定の充電パターン等に基づき、充電条件の充電電流上限値以下の充電電流指示値を決定し、この充電電流指示値を、通信部204および通信用ライン2012を介して充電器100に送信する。一方、充電器100では、制御部106が、通信用ライン1012および通信部105を介して逐次送られてくる充電電流指示値にしたがって、充電用ライン1011に流れる充電電流を制御する。これにより、車載バッテリ203の充電が行われる(S313)。」 ア.上記(1)によれば、充電器100側の充電条件が決定すると、制御部106は充電器情報を電気自動車200に送信している。また、上記(3)によれば、制御部205は、充電器100から充電器情報を受信している。これらのことから、充電器100の制御部106が、充電器情報を電気自動車200に送信している。 イ.上記(1)によれば、制御部106は、充電停止電圧および充電停止時間と、充電器100が供給可能な最大出力電流値とを含む充電器情報を、電気自動車200に送信している。また、上記(3)によれば、制御部205が、充電器100から充電器情報を受信すると、充電器情報に含まれる最大印加可能時間および最大印加可能電圧値が適正な値であるか否かをチェックする。さらに、充電器情報に含まれる最大出力電流値と、車載バッテリ203に印加可能な最大電流値(最大印加可能電流値)とを比較する。ここで、充電器100から送信される充電器情報には、「充電停止電圧」、「充電停止時間」、「最大出力電流値」が含まれ、一方、電気自動車200で受信する充電器情報には、「最大印加可能時間」、「最大印加可能電圧値」、「最大出力電流値」が含まれているが、同じ充電器情報が送受信されていることを考慮すると、送信される「充電停止電圧」、「充電停止時間」、と、受信される「最大印加可能電圧」、「最大印加可能時間」は、名称は異なるが両者は同じ情報であるといえる。これらのこと及び上記ア.も踏まえると、充電器100の制御部106が、最大印加可能電圧値及び供給可能な最大出力電流値が含まれる充電器情報を、電気自動車200に送信している。 ウ.上記(3)によれば、制御部205が、充電器情報に含まれる最大印加可能電圧値が適正な値であるか否かをチェックする。また、最大印加可能電圧値が適正な値であれば、制御部205は、車載バッテリ203が充電器100に適合すると判断する。これらのこと及び上記イ.から、電気自動車200の制御部205において、充電器情報に含まれる最大印加電圧値が適正な値であれば、車載バッテリ203が充電器100に適合すると判断している。 エ.上記(3)によれば、充電器情報に含まれる最大出力電流値と、車載バッテリ203に印加可能な最大電流値とを比較し、これらのうち値の小さな電流値を充電電流上限値として設定する。 オ.上記(2)によれば、制御部205は、車載バッテリ203の電圧値と予め定められた充電パターン等とに基づき、充電条件に含まれる充電電流上限値以下の電流値を充電電流指示値に決定し、この充電電流指示値を充電器100に送信する。 カ.上記(4)によれば、電気自動車200では、制御部205が充電電流指示値を充電器100に送信する。さらに、充電器100では、制御部106が送られてくる充電電流指示値にしたがって、充電用ライン1011に流れる充電電流を制御する。これらのことから、充電器100の制御部106は、充電電流指示値を電気自動車200から受信している。また、充電電流指示値は、充電電流を制御する値である。 したがって、上記(1)ないし(5)の記載事項及び図面並びに上記ア.ないしカ.の事項を総合勘案すると、引用文献3には、次の事項が記載されている。 「充電システムにおいて、充電器100の制御部106が、最大印加可能電圧値及び供給可能な最大出力電流値が含まれる充電器情報を電気自動車200に送信し、電気自動車200の制御部205において、充電器情報に含まれる最大印加電圧値が適正な値であれば、車載バッテリ203が充電器100に適合すると判断し、充電器情報に含まれる最大出力電流値と、車載バッテリ203に印加可能な最大電流値とを比較し、これらのうち値の小さな電流値を充電電流上限値として設定し、そして車載バッテリ203の電圧値と予め定められた充電パターン等に基づき、充電電流上限値以下の電流値を充電電流指示値に決定し、さらに、充電器100の制御部106が、充電電流を制御する充電電流指示値を電気自動車200から受信すること。」 第5 対比・判断 1.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「蓄電池7」は、本願発明の「蓄電池」に相当する。また、引用発明の「蓄電池7から供給される」「電力」は、本願発明の「蓄電池から供給される電力」に相当する。 (2)引用発明は、商用交流の電源から電力が供給されている。そのため、電力を供給している「電源」が、本願発明は「低圧受電設備」であるのに対し、引用発明は、その旨特定されていない点で相違する。 (3)引用発明の「制御装置3」は、「直流分電盤2から出力される電力」を制御するものである。そして、この「直流分電盤2から出力される電力」とは、蓄電池7から供給される電力及び電源から供給される電力のことであるから、引用発明の「制御装置3」は、本願発明の「電力管理装置」に相当する。 (4)引用発明の「電気自動車C」は、本願発明の「電気自動車」に相当する。 (5)引用発明の「給電装置1」は、電気自動車Cに直流電力を供給し、電気自動車Cの蓄電池84を充電させるものであるから、本願発明の「充電装置」と引用発明の「給電装置1」は、「電力」を「電気自動車に充電させる」点で共通する。 (6)引用発明は、蓄電池7から供給される電力を、DC/DCコンバータ21によって所定の直流電力に変換して電力を供給し、また、商用交流の電源から供給される電力を、AC/DCコンバータ23によって所定の直流電力に変換し電力を供給するものであるから、「DC/DCコンバータ21」から供給される電力及び「AC/DCコンバータ23」から供給される電力は、それぞれ本願発明の「蓄電池から供給され得る電力」及び電源から「供給され得る電力」に相当する。 (7)引用発明の「制御装置3」によって、直流分電盤2の「DC/DCコンバータ21」から供給される電力及び「AC/DCコンバータ23」から供給される電力のそれぞれの給電割合が設定され、直流分電盤2から出力される電力が制御される。このことから、直流分電盤2から出力される電力は、直流分電盤2の「DC/DCコンバータ21」から供給される電力及び「AC/DCコンバータ23」から供給される電力の総和である。 また、引用発明の「制御装置3」は、直流分電盤2の給電能力を給電装置1に送信していることから、上記電力の総和を示すデータに基づき給電能力を算出していることは明らかである。 さらに、引用発明は、「給電装置1」が直流分電盤2の「給電能力」を超えない範囲で直流電力を電気自動車Cに供給することから、引用発明の直流分電盤2の「給電能力」は、「給電装置1」が供給可能な電力としての出力であるともいえる。ここで、直流分電盤2の「給電能力」がデータであることは明らかであるから、引用発明の「給電能力」は、本願発明の「供給可能出力データ」に相当する。 してみれば、本願発明の「電力管理装置」と引用発明の「制御装置3」は、「蓄電池」及び「電源」から「供給され得る電力の総和を示すデータに基づき」、「充電装置の供給可能出力を示す電力値としての供給可能出力データ」を「算出」している点で共通する。 (8)引用発明の「給電装置1」は、電源制御回路11によって、給電情報と給電能力(上記「供給可能出力データ」)とを比較して、給電電圧及び「給電電流」により直流電力を設定し、電源制御回路11によって、設定した給電電圧及び「給電電流」に基づきDC/DCコンバータ13を制御しているから、DC/DCコンバータ13を制御する「給電電流」は、「供給可能出力内」の「電流値を示す電流値データ」である。また、「給電電流」は、電気自動車Cに供給する電流であるから、電気自動車Cの充電に必要な電流値を示す電流データでもある。 上記(5)も踏まえると、本願発明の「充電装置」と引用発明の「給電装置1」は、「供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す」「電流値データによって示される電流値による電力を、前記電気自動車に充電させる」点で共通する。 ただし、当該電流値データについて、本願発明は、充電装置に「コンピュータ」が「搭載」され、その「コンピュータ」が「供給可能出力データを電気自動車へ送信し、送信した前記供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す電流値データ」を「前記電気自動車から受信」しているのに対し、引用発明は、充電装置で電流値データを設定しているため、そのようなコンピュータによって電流値データを受信していない点で相違する。 (9)引用発明は「蓄電池7」、「電源」、「制御装置3」及び「給電装置1」を有しているから、本願発明の「充電システム」に相当する。そのため、引用発明の「給電装置1」は、本願発明の「充電システムの充電装置」に相当する。 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「蓄電池と、 電源と、 前記蓄電池及び前記電源から供給される電力を管理する電力管理装置と、 を備えた充電システムの充電装置であって、 ここで、前記電力管理装置は、前記蓄電池及び前記電源から供給され得る電力の総和を示す電力データに基づき、前記充電装置の供給可能出力を示す電力値としての供給可能出力データを算出しており、 前記供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す電流値データによって示される電流値による電力を、前記電気自動車に充電させる 充電装置。」 [相違点1] 電力を供給している「電源」が、本願発明は「低圧受電設備」であるのに対し、引用発明は、その旨特定されていない点。 [相違点2] 電流値データについて、本願発明は、充電装置に「コンピュータ」が「搭載」され、その「コンピュータ」が「供給可能出力データを電気自動車へ送信し、送信した前記供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す電流値データ」を「前記電気自動車から受信」しているのに対し、引用発明は、充電装置で電流値データを設定しているため、そのようなコンピュータによって電流値データを受信していない点。 2.判断 上記相違点1,2について検討する。 (1)相違点1について 電気自動車に電力を供給する電源として、低圧受電設備を用いることは周知である(例えば、本田一晃,50kW大容量急速充電器の設計技術,グリーン・エレクトロニクスNo4(2011),CQ出版社の第5頁左欄第2行-第23行を参照)。 してみれば、引用発明において、電力を供給する電源として、上記周知技術を採用して、商用交流の電源に代えて低圧受電設備にすることで、上記相違点の構成にすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 (2)相違点2について 引用文献3には、充電システムにおいて、充電器100の制御部106が、最大印加可能電圧値及び供給可能な最大出力電流値が含まれる充電器情報を電気自動車200に送信し、電気自動車200の制御部205において、充電器情報に含まれる最大印加電圧値が適正な値であれば、車載バッテリ203が充電器100に適合すると判断し、充電器情報に含まれる最大出力電流値と、車載バッテリ203に印加可能な最大電流値とを比較し、これらのうち値の小さな電流値を充電電流上限値として設定し、そして車載バッテリ203の電圧値と予め定められた充電パターン等に基づき、充電電流上限値以下の電流値を充電電流指示値に決定し、さらに、充電器100の制御部106が、充電器100の充電電流を制御する充電電流指示値を電気自動車200から受信することが記載(上記「第4」の「2.」を参照)されている。 ここで、引用文献3の「電気自動車200」は、本願発明でいう「電気自動車」のことであり、引用文献3の「充電器100の制御部106」は、充電器情報を電気自動車200へ送信し、充電電流指示値を電気自動車200から受信していることから、本願発明でいう充電装置に搭載された「コンピュータ」に相当する手段といえる。さらに、引用文献3の「充電器情報」は、充電器から供給できる最大印加可能電圧値及び最大出力電流値のことであるから、本願発明でいう「供給可能出力データ」である。 また、引用文献3の「充電電流指示値」は、充電器情報に含まれる最大出力電流値と、車載バッテリ203に印加可能な最大電流値とを比較し、これらのうち値の小さな電流値を充電電流上限値としているため、本願発明でいう「供給可能出力内」の「電流値データ」である。そして、引用文献3の「充電電流指示値」は、充電電流を指示するための値でもあるから、本願発明でいう「充電に必要な電流値を示す」「電流値データ」でもある。 なお、平成31年2月18日提出の意見書において、請求人は「引用文献には、供給可能な出力を電流値として電気自動車に送信することが開示されているものの、電力値として電気自動車に送信することは記載されておりません。」と主張している。 しかしながら、引用文献3の「充電器情報」は、充電器の供給可能出力を示す電力値の情報が含まれることについては記載されていないものの、当該電力値の情報を、充電器情報に含まれる「最大印加可能電圧値」と「最大出力電流値」の積によって示すことは普通のことであるから、充電器情報には、充電器からの供給可能出力を示す電力値の情報に相当する情報が含まれるいるといえる。してみれば、引用文献3は、供給可能な出力を電力値に相当する値(充電器情報)とし、その値を電気自動車に送信している。 そうすると、引用文献3は、充電装置に「コンピュータ」を「搭載」し、その「コンピュータ」によって、「供給可能出力データを電気自動車へ送信し、送信した前記供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す電流値データ」を「電気自動車から受信」するものといえる。 そして、電気自動車の充電においては、「電流値データ」の設定は、電気自動車側で行うか、充電装置側で行うかのいずれかが考えられるところ、引用発明において、「電流値データ」を設定するために、電気自動車の「給電情報」を充電装置に送信して充電装置側で設定する代わりに、引用文献3に記載のように、電気自動車側で設定するようにすること、具体的には、充電装置に「コンピュータ」を「搭載」し、その「コンピュータ」によって、「供給可能出力データを電気自動車へ送信し、送信した前記供給可能出力データによって示される前記充電装置の供給可能出力内であって、且つ、充電に必要な電流値を示す電流値データ」を「電気自動車から受信」することで、上記相違点の構成にすることも、当業者が適宜なし得るものである。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本願の請求項2に係る発明は、引用発明及び引用文献3に記載の技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、引用発明及び引用文献3に記載の技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

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2017-016979

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