特許拒絶査定不服審判
2017-016118
ナノ粒子状の形態における生物学的に活性な化合物の調製のための方法
- 審判番号
- 2017-016118
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-218166外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月31日
- 審決日
- 2019年07月16日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイスイティカ ピーティーワイ リミテッド
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-218166「ナノ粒子状の形態における生物学的に活性な化合物の調製のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月12日出願公開、特開2016- 26220〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成19年6月29日(パリ条約による優先権主張 2006年 6月30日 (AU)オーストラリア 2007年 5月4日 (AU)オーストラリア)を国際出願日とする特願2009-516825号の一部を、平成25年10月18日に新たな出願である特願2013-217782号とし、さらにその一部を、平成27年11月6日に新たな出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年 8月23日付け:拒絶理由通知
平成29年 2月27日受付:意見書
平成29年 2月27日受付:手続補正書
平成29年 6月30日付け:拒絶査定
平成29年10月31日受付:拒絶査定不服審判請求
平成30年 8月27日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月28日受付:意見書
平成31年 2月28日受付:手続補正書
第2 本願発明
本願の請求項1~31に係る発明は、平成31年2月28日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~31に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
生物学的に活性な化合物のナノ粒子を含む組成物を生産するための方法であって、
少なくとも部分的にミリングされたグラインディング化合物に分散させられた、生物学的に活性な化合物のナノ粒子を含む固体の分散物を生産することに十分な時間間隔で、ミルにおいて固体の生物学的に活性な化合物、表面安定化剤、及びミリング可能なグラインディング化合物をドライミリングすること
のステップを含み、
前記ミリング可能なグラインディング化合物の粒子のサイズは、前記ドライミリングによって低減され、
前記十分な時間間隔の合計は、連続的な及び/又は間欠的なドライミリングの合計の時間間隔であり、5分間~8時間であり、
前記表面安定化剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はセチルトリメチルアンモニウム=ブロミド(CTAB)のうちの少なくとも1つであり、
前記グラインディング化合物は、硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、塩化アンモニウム、メチルアミン塩酸塩、臭化アンモニウム、結晶質の水酸化物、炭酸水素塩、薬学的な許容可能なアルカリ金属の炭酸水素塩、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、グラウバー塩、炭酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、カリ石、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸カリウムからなる群から選択される、
方法。」
第3 拒絶の理由
平成30年 8月27日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、概略、次のとおりのものである。
本出願の請求項1~37に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明、引用文献2及び3に記載された事項、並びに周知技術(要すれば、引用文献4等参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献2:特開平03-66613号公報
引用文献3:特開平10-167968号公報
引用文献4:特表2005-508939号公報(周知技術を示すための 文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献2
平成30年8月27日付け拒絶理由において「引用文献2」として引用した、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平3-66613号公報(以下、「引用文献2」という)には、以下の事項が記載されている。
(i)「【特許請求の範囲】
1、難溶性薬物と糖または糖アルコールとの混合物を、高速撹拌粉砕または衝撃粉砕することを特徴とする難溶性薬物の超微粒子化法。
2、糖または糖アルコールが分子量500以下であることを特徴とする請求項1記載の超微粒子化法。
3、糖または糖アルコールが、キシリット、マンニット、ソルビトール等の糖アルコール、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、シュークロース、ラクトースからなる群から選択される1またはそれ以上の物質であることを特徴とする請求項1または2に記載の超微粒子化法。」
(ii)「粉砕助剤として用いられる糖類は糖および糖アルコールを含み、これら糖類は、それ自体無毒であって、主薬である活性成分の薬効になんら影響を及ぼさない、製剤上許容し得る物質から選択される。本発明方法にとっては、水溶性が高く、水に接触した際に優れた分散性を示し、その結果、薬物の溶出速度を高め得る分子量500以下の物質が好ましい。そのような物質としては、例えば、キシリット、マンニット、ソルビトール等の糖アルコール、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、シュークロース、ラクトース等の糖を挙げることができる。これらの粉砕助剤は単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。」(第3頁左上欄下から3行~右上欄第11行)
(iii)「粉砕装置としては、通常の乾式粉砕機のごとく、機械的に衝撃、摩砕して微粒子化する機能を有する高速撹拌粉砕または衝撃粉砕機を用いることができる。例えば、回転型ボールミル、振動ボールミル、チューブミル、ロッドミル等のシリンダー型粉砕機を用いて粉砕するのが好ましい。」(第3頁右上欄下から2行~左下欄第4行)
(iv)「本発明方法における混合粉砕時間は、難溶性薬物及び添加する糖類の種類、粉砕装置の機能、糖類の添加比率、および処理量にもよるが、通常、衝撃力の強い粉砕機では通常5~30分程度、弱い粉砕機では8~100時間程度で所望の微細化が達成される。混合粉砕に用いる難溶性薬物及び糖類は未粉砕のまま混合して粉砕してもよいが、予め粗粉砕したものを混合して本発明の超微粒子化法に適用してもよい。」(第3頁左下欄第5行~13行)
(v)「本発明で得られる混合粉砕物において、多くの場合、薬物は1ミクロン以下の粒子に超微細化されている。上記のごとく、本法に用いる糖類は水溶性が高いため、水に接触すると優れた分散性を有するので、薬物の溶出速度を高める効果をあらわす。本発明の混合粉砕物は、それ自体で倍散として用いるとことも出来るし、また水に分散させたのち限外濾過により糖類を除いて乾燥すれば純度の高い難溶性薬物の超微細粉末を得ることもできる。本発明方法で得られた超微粒子化薬物を、薬理学的に許容される一種または二種以上の適当な製剤添加物と混合して、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、エアゾール剤、懸濁剤、シロップ剤、軟膏剤または坐剤等に製剤化することができる。」(第3頁左下欄下から7行~右下欄第8行)
(vi)「実施例1 ナイキサンの超微粒子化
難溶性薬物であるナイキサン1gとD-マンニット(片山化学工業)9gを混合し、ステンレス製振動ボールミル(スペックス社製)に封入(内容積50ml,ステンレスボール2個,ボール直径9mm)して、60分間混合粉砕した。
このようにして得られた超微粒子化混合物の粒度分布を以下の方法で調べた。
上記超微粒子化混合物と、対照として、予め単独に粉砕しておいたナイキサンとD-マンニットとの単純混合物、及び未粉砕のナイキサン原末を、それぞれ水に分散させて粒度分布を測定した。粒度分布の測定には遠心式粒度分布測定装置(島津製作所,SA-CP2)を用い、50%平均径(体積基準)を求めた。その結果、平均粒子径はそれぞれ未粉砕物質の場合19ミクロン、単独粉砕混合物の場合4.4ミクロン、本実施例の混合粉砕物の場合0.32ミクロンであった。
また、本実施例方法における粉砕時間と粒子径の関係を調査した結果、粉砕処理の初期に粒子径は急速に小さくなり、30分間でほぼ平衡に達することが分かった。
実施例2 D-マンニットを用いる微粒子化
下記の難溶性薬物1gとD-マンニット(片山化学工業)9gを実施例1と同様の方法で混合粉砕し[混合比(1:9)、粉砕時間60分間]、各難溶性薬物の粒度分布を測定してそれぞれの場合の平均粒子径を求めた。結果を表1に示す。薬物単独で粉砕した場合の結果を比較のために示す。
表 1 D-マンニットとの混合粉砕後の薬物の粒子径
粒 子 径 (μm)
薬 物 粉砕前 単独粉砕 混合粉砕
インドメタシン 9 1.3 0.35
フェニトイン 32 2.7 0.27
ナイキサン 19 4.4 0.32
ベストン 12 2.6 0.42
クロラムフェニコール 67 22.0 0.53
グリセオフルビン 6 14.0 0.26
オキソリン酸 7 3.4 0.1
表1は、いずれの薬物の場合にも混合粉砕後の粒子径は1ミクロン以下であり、薬物単独粉砕の場合に比して明らかに超微細化されていることを示している。
実施例3 オキソリン酸の超微粒子化
極難水溶性薬物であるオキソリン酸1gと種々の低分子糖類9gを実施例1と同様の方法で混合粉砕し[混合比(1:9)、粉砕時間60分間]、薬物の粒度分布を測定してそれぞれの場合の平均粒子径を求めた。結果を表2に示す。オキソリン酸単独で粉砕した場合の結果を比較のために併せて示す。
表 2 各種糖類との混合粉砕後の薬物オキソリン酸の粒子径
リ ン 酸 の 粒 子 径
糖類 粒子径(μm)
無添加 3.4
ブドウ糖 0.22
乳糖 0.22
ショ糖 0.22
マルトース 0.19
キシリット 0.21
ソルビット 0.22
D-マンニット 0.15
表2は、いずれの低分子糖類との混合粉砕によっても、オキソリン酸は1ミクロン以下に微細化されることを示している。特に、D-マンニットを用いた場合、効果的に微細化される。
実施例4 超微粒子化オキソリン酸の精製
実施例3で製した極難水溶性薬物であるオキソリン酸とD-マンニットとの混合粉砕末10gを蒸留水100mlに加えて撹拌分散し、D-マンニットを溶解させ、薬物を懸濁させた。この分散液を限外濾過膜(東洋濾紙,UK-50,分画分子量5万)を装着した限外濾過器(東洋濾紙,Model UHP-62)に入れ、加圧濾過して溶解しているD-マンニットを除去した。引き続き、さらに蒸留水100mlを加えて撹拌しながら加圧濾過した。限外濾過膜上の固体(薬物)を乾燥(50℃,24hr,減圧,5酸化リン)した、こうして得た乾燥微粉末中のオキソリン酸の含量は98%と高く、高純度であった。また、この粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒子径0.1~0.4ミクロンの微細な柱状晶が観察され、分散、濾過、乾燥の操作をすることで純粋なオキソリン酸の超微細化粉末が得られていることが確認された。
(中略)
以下に製剤例を挙げ、本発明の超微粒子化難溶性薬物を含有する製剤の1例を示す。
製剤例1 懸濁シロップ剤
難水溶性薬物であるクロラムフェニコール10gとショ糖90gを用い、実施例4と同様の方法で製した混合粉末にメチルセルロースと蒸留水を加え、ホモミキサーで撹拌、分散することによりクロラムフェニコールの懸濁性シロップ剤を調製した。
製剤化に用いた混合粉砕末および懸濁性シロップ剤中のクロラムフェニコールの平均粒子径を実施例1の方法で求めた結果、粉砕前10ミクロン、混合粉砕後0.6ミクロン、シロップ剤作製直後及び室温保存後ともに0.7ミクロンであった。このことは、製剤操作によって薬物の粒子径は変化せず、安定なクロラムフェニコールの懸濁性シロップ剤が得られることを示している。」(第3頁右下欄第11行~第5頁右上欄第6行)
2.引用発明2の認定
上記(i)及び(iv)の記載からみて、引用文献2には、「難溶性薬物と、糖または糖アルコールとの混合物を、通常、衝撃力の強い粉砕機では通常5~30分程度、弱い粉砕機では8~100時間程度、高速撹拌粉砕または衝撃粉砕することを特徴とする、難溶性薬物の超微粒子化法。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
3.引用文献3
平成30年8月27日付け拒絶理由において「引用文献3」として引用した、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平10-167968号公報(以下、「引用文献3」という)には、以下の事項が記載されている。
(i)「【請求項1】一般式【化1】(略)で表される含硫複素環化合物またはその生理学的に許容し得る塩と生体内分解性α-ヒドロキシカルボン酸高分子重合体とを含有する固状物を粉砕補助剤の存在下粉砕することを特徴とするマイクロパーティクルの製造法。
(中略)
【請求項7】粉砕補助剤が糖類である請求項1記載のマイクロパーティクルの製造法。
【請求項8】粉砕補助剤が有機酸、その塩または無機塩である請求項1記載のマイクロパーティクルの製造法。
【請求項9】固状物をさらに水溶性高分子物質または/および界面活性剤と共に粉砕する請求項1記載のマイクロパーティクルの製造法。 」
(ii)「【0003】
【課題を解決するための手段】このような事情に鑑み、本発明者らは、マイクロカプセル等の微粒子製剤間の付着・凝集が少なく、分散性のよい徐放性製剤を得るため鋭意研究したところ、薬物と高分子とを同時に溶解し得る溶媒系で溶液状態とし、減圧下乾燥あるいはこれに準ずる方法により固溶体を調製し、得られた固溶体を粉砕補助剤の存在下に粉砕することにより、微粒子製剤間の付着・凝集が少なくかつ薬物の微粒子製剤中へのトラップ率が高く、放出試験において初期放出の少ない、優れた性質を有する微粒子製剤を効率よく大量に得ることができることを見いだした。また、マイクロパーティクルを水溶性高分子物質または/および非イオン性界面活性剤で被覆することにより、さらに良好な分散性を示す微粒子製剤を得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。」
(iii)「【0035】このようにして得られた固状物を、粉砕補助剤の存在下粉砕することによりマイクロパーティクルを製造するが、粉砕は自体公知の粉砕方法に従って行うことができる。例えばターボカウンタージェットミル粉砕機、超音速ジェット粉砕機など通常の粉砕機を用いて行われる。この工程において粉砕効率を高める為に通常固状物は粉砕機にかける前に乳針やパワーミル等の粉砕機で粗粉砕される。粗粉砕により調製する粒子のサイズは粉砕条件や最終産物であるマイクロパーティクルの品質(例えば粒径)により異なるが、粒子径が4mm以下、好ましくは2mm以下、とりわけ約1mmないし約2mmであるものが好ましい。粉砕の程度は、マイクロパーティクルの投与方法,最終製品の規格等に応じてその粒子径を選択すればよく、例えば注射用懸濁剤として使用する場合には、その分散性,通針性を満足させる粒子径範囲であればよく、好ましい平均粒子径としては約0.5~400μmの範囲が挙げられる。より好ましくは約2~200μmの範囲である。上記粉砕操作を行うとき、粉砕時及び貯蔵時のマイクロパーティクルの凝集防止のため、所望により凝集防止剤を添加してに粉砕操作を行うことも有効である。また凝集防止剤は、粉砕操作後、別途混合機で混合し添加してもかまわない。
【0036】粉砕補助剤としては、一般的には水溶性で、粉砕条件下で固体であり、かつ被粉砕物である前記固状物よりも硬度が高い物質が用いられる。被粉砕物との硬度差は大きいほど好ましく、また結晶あるいは結晶性の物質であることが好ましい。その具体例としては、例えば、(1)ハロゲン化アルカリ金属(例、塩化ナトリウム,塩化カリウム,臭化ナトリウム,臭化カリウムなど)、ハロゲン化アルカリ土類金属(例、塩化カルシウム,塩化マグネシウムなど)、アルカリ金属のリン酸塩類(例、リン酸3ナトリウム,リン酸3カリウム,リン酸水素2ナトリウム,リン酸水素2カリウム,リン酸2水素ナトリウム,リン酸2水素カリウムなど)、アルカリ土類金属の酸化物(例、酸化マグネシウム,酸化カルシウムなど)、アルカリ土類金属の水酸化物(例、水酸化マグネシウム,水酸化カルシウムなど)などの無機塩;(2)炭酸、クエン酸等の有機酸またはその塩、アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩(例、炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウムなど)、アルカリ土類金属の炭酸塩(例、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムなど)、クエン酸のアルカリ金属塩など;(3)マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、単糖(例、ブドウ糖、果糖など)、二糖(例、乳糖、ショ糖、麦芽糖など)、アミノ糖(例、グルコサミン、ガラクトサミン、コンドロイチン硫酸など)、多糖類(例、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)などの糖類が挙げられる。これらの中の一種類または二種類以上を適宜の割合で組み合わせ使用してもよい。これらのうちでも無機塩および水溶性糖類(例、糖アルコール、単糖、二糖、アミノ糖)が特に好ましい。(以下、略)」
(iv)「【0037】(略)所望により水溶性でかつ人体に投与できうる、室温(約15~25℃)で固体の水溶性高分子物質または/および界面活性剤でマイクロパーティクルの表面を被覆し、分散媒へのマイクロパーティクルの分散性を高めることができる。ここで言う被覆には、マイクロパーティクル表面の一部ないし全部の被覆が含まれる。また製剤として問題とならない程度の量の液状の水溶性高分子または/および界面活性剤をマイクロパーティクル表面に分散あるいは被覆することも有効である。
【0038】該界面活性剤の好ましい具体例としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例、ソルビタンモノパルミテート,ソルビタンセスキステアレートなど)、グリセリン脂肪酸エステル〔例、グリセリルモノステアレート(自己乳化型)など〕、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例、プロピレングリコールモノステアレートなど)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル〔例、POE(15)グリセリルモノステアレートなど〕、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル〔例、POE(10)モノステアレート,PEGジステアレートなど〕、ポリオキシエチレンアルキルエーテル〔例、POE(21)ラウリルエーテル,POE(20)ステアリルエーテルなど〕、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔例、POE(80)硬化ヒマシ油、HCO60,HCO50(日光ケミカルズ製)など〕、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ誘導体〔例、POE(20)ソルビットミツロウなど〕、ポリオキシエチレンラノリンアルコール〔例、POE(20)ラノリンアルコールなど〕、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル〔例、POE(6)ソルビットヘキサステアレートなど〕プルロニック系界面活性剤(例、プルロニックF68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール))などの非イオン性界面活性剤、ドデシル硫酸アルカリ金属(例、ドデシル硫酸ナトリウムなど)、ステアリン酸アルカリ金属(例、ステアリン酸ナトリウムなど)、パルミチン酸アルカリ金属(例、パルミチン酸ナトリウムなど)の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。液状界面活性剤としては、例えば、ツイーン(Tween)20,ツイーン(Tween)80(アストラパウダー社製、米国)などが挙げられる。これらの一種類あるいは二種類以上を適宜の割合で組み合わせて使用することができる。水溶性高分子物質の好ましい具体例としては、デキストリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール類(例、ポリエチレングリコール1000(PEG 1,000)、1500、4000、6000、20000)が挙げられる。これらの一種類あるいは二種類以上を適宜の割合で組み合わせて使用することができる。
【0039】水溶性高分子物質または/および界面活性剤のマイクロパーティクル表面への被覆手段は、特に限定されるものではない。例えば、上記固状物を粉砕するあるいはその粗粉砕物を微粉砕するとき、粉砕工程に同時に水溶性高分子物質または/および界面活性剤を添加する方法が挙げられる。この場合、固体の水溶性高分子物質または/および界面活性剤は被粉砕物と予め混和するか粉砕機に別々に供給してもよく、固体、液体に関わらず水溶性高分子物質あるいは界面活性剤を適当な溶媒に溶解後、粉砕工程に導入してもよい。また、凝集防止剤と水溶性高分子物質または/および界面活性剤とを適当な溶媒(例、水、メタノール,エタノールなどのアルコール等)に溶解あるいは分散後乾燥させたもの、あるいは凝集防止剤と水溶性高分子物質,界面活性剤をこの溶液から分離後、乾燥させたものを同時に粉砕してもよい。また、界面活性剤のマイクロパーティクル表面への分散あるいは被覆は前記固状物の粉砕後に、マイクロパーティクルと水溶性高分子物質または/および界面活性剤とを混合することによって行ってもよい。(以下、略)
【0040】また、固状物は、さらに凝集防止剤を加えて粉砕してもよい。凝集防止剤としては、一般的には水溶性の人体に投与可能な、常温(約15~25℃)固体の非付着性物質が用いられる。その具体例としては、例えば、無機塩(例、前記のハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物など);酢酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例、酢酸ナトリウム,酢酸カリウム,酢酸マグネシウム,酢酸カルシウムなど)、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ペクチン酸およびこれらの有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの有機酸およびその塩;マンニトール,ソルビトール,ラクトース,ブドウ糖,ショ糖,乳糖あるいはデンプン類(例、トウモロコシデンプン,バレイショデンプンなど)などの水溶性糖類;アミノ酸類(例、グリシン,フェニルアラニン,システイン,アルギニンなど好ましくはシステイン,アルギニン);蛋白質(例、ゼラチン,フィブリン,コラーゲン,アルブミンなど);水溶性セルロース類(例、結晶セルロース,カルボキシメチルセルロースなどあるいはこれらの塩など)などが挙げられる。これらの中の一種類または二種類以上を適宜の割合で組み合わせ使用してもよい。これらのうちでも無機塩,水溶性糖類およびアミノ酸が特に好ましい。凝集防止剤のマイクロパーティクルに対する配合比は、凝集防止効果が認められる範囲であればよく、具体的には重量比で約0.001~100倍、好ましくは約0.01~50倍、より好ましくは約0.1~10倍から選ばれる。
【0041】本発明により得られたマイクロパーティクルは、そのまま生体に投与することができるが、また、種々の製剤に成型して投与することもでき、そのような製剤を製造する際の原料物質としても使用され得る。上記製剤としては、注射剤(例、筋肉内、皮下、内蔵投与用など)、経口投与製剤(例、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤)、外用剤(例、経鼻投与製剤,経皮剤)、坐剤(例、直腸坐剤,膣坐剤)などが挙げられる。これらの製剤中含有させる薬物の量は、薬物の種類,投与剤型,対象とする疾患などにより変化し得るが、通常は、製剤1gにつき約1mgから約200mg、好ましくは約3mgから約150mg、特に好ましくは約5mgから約100mgである。これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる自体公知の方法により製造することができる。例えば、マイクロパーティクルを所望により分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国),HCO60,HCO50(日光ケミカルズ製),プルロニック系界面活性剤(例えば、プルロニックF68など)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)、保存剤(例、メチルパラベン,エチルパラベン,プロピルパラベン,エチルパラベン,ブチルパラベン,ベンジルアルコール,クロロブタノールなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム,グリセリン,ソルビトール,ブドウ糖,マンニトール,乳糖,ショ糖,リン酸ナトリウムなど)などを添加した水性溶媒に分散させて水性懸濁剤に、あるいはオリーブ油,ゴマ油,ラッカセイ油,綿実油,コーン油などの植物油、プロピレングリコールなどに分散して油性懸濁剤に成形し、注射剤とすることができる。」
(v)「【0046】
【実施例】次に、本発明をより具体的に説明するために、実施例を挙げるが、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。
実施例1:(2R,4S)-(-)-N-[4-(ジエトキシフォスフォリルメチル)フェニル]-1,2,4,5-テトラヒドロ-4-メチル-7,8-メチレンジオキシ-5-オキソ-3-ベンゾチエピン-2-カルボキサミド(特開平8-231569号公報に準じて調製した。以下、化合物Aと称する)10.0gと乳酸-グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸比(以下、L/G比と略称する。)=85/15、重量平均分子量14,000)90.0gをジクロロメタン(メチレンクロリド)160gに溶解し、フッ素樹脂コーティング容器に流し込んだ。これを減圧乾燥機に入れ、脱溶媒を行い、固溶体を得た。粗粉砕の後、マンニトール15g、プルロニックF68 2gと粗混合し、超音速ジェット粉砕機(PJM-100SP、日本ニューマチック工業製)を用い、供給圧空圧0.3MPaで粉砕した。得られた製剤を45℃に棚温制御した減圧乾燥機に入れ、0.1~0.05Torrの庫内圧力で3日間保持した。薬物取込み率100%、平均粒径32μm、分散媒への分散性の優れ、ラット筋肉中で約1カ月にわたり放出する製剤が得られた。」
第5 対比
本願発明1と、上記「第4 2.」に記載の引用発明2を対比する。
引用発明2の「薬物」は本願発明1の「生物学的に活性な化合物」に相当し、技術常識に照らして引用発明2の「難溶性」の化合物は固体であるといえる。引用発明2の「糖または糖アルコール」は、「第4 1.(ii)」の記載から「粉砕助剤」であるから、本願発明1の「グラインディング化合物」に相当する。
また、引用発明2の「高速撹拌粉砕または衝撃粉砕」は、「第4 1.(iii)」及び「第4 1.(vi)」の実施例の記載からみて、本願発明1の「ドライミリング」に相当し、引用発明2の「超微粒子」は、「第4 1.(v)」及び「第4 1.(vi)」の実施例の記載からみて、本願発明1の「ナノ粒子」に相当するものである。
加えて、引用発明2の「糖または糖アルコール」は、上記「第4 1.(v)」、「第4 1.(vi)」の実施例の記載及び本出願の優先日当時の技術常識に鑑みれば、「ミリング可能」で、粒子のサイズがドライミリングによって低減されるものであり、糖または糖アルコールを除去する前段階において、超微粒子は、少なくとも部分的にミリングされたグラインディング化合物である糖または糖アルコールに分散した状態であることは明らかである。
したがって、両者は、「生物学的に活性な化合物のナノ粒子を含む組成物を生産するための方法であって、少なくとも部分的にミリングされたグラインディング化合物に分散させられた、生物学的に活性な化合物のナノ粒子を含む固体の分散物を生産することに十分な時間間隔で、ミルにおいて固体の生物学的に活性な化合物及びミリング可能なグラインディング化合物をドライミリングすることのステップを含み、
前記ミリング可能なグラインディング化合物の粒子サイズは、前記ドライミリングによって低減され、
前記十分な時間の合計の間隔は、連続的な及び/又は間欠的なドライミリングの合計の時間間隔であり、5分間~8時間である、
方法。」である点で一致し、
(1)本願発明1は、ミリング可能なグラインディング化合物が、硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、塩化アンモニウム、メチルアミン塩酸塩、臭化アンモニウム、結晶質の水酸化物、炭酸水素塩、薬学的な許容可能なアルカリ金属の炭酸水素塩、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、グラウバー塩、炭酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、カリ石、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択されるものであるのに対して、引用発明2では、糖または糖アルコールである点、及び、
(2)本願発明1は、ドライミリングのステップが「ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はセチルトリメチルアンモニウム=ブロミド(CTAB)のうちの少なくとも1つである表面安定化剤」を含むのに対して、引用発明2は、「表面安定化剤」を含むことが特定されていない点
で相違するものである。
第6 当審の判断
1.相違点(1)について
上記「第4.3.(ii)」に記載のとおり、引用文献3は、付着、凝集が少なく、分散性のよい徐放性製剤の提供を解決しようとする課題とするものであり、「第4 3.(i)」、「第4 3.(iii)」及び「第4 3.(iv)」の記載からみて、引用文献3には、「一般式【化1】(略)で表される含硫複素環化合物またはその生理学的に許容し得る塩と生体内分解性α-ヒドロキシカルボン酸高分子重合体とを含有する固状物を、上記(iii)の段落【0036】に列挙される粉砕補助剤の存在下、上記(iv)の段落【0038】に記載の水溶性高分子物質、または/および、界面活性剤や、段落【0040】に記載の凝集防止剤の存在下で、粉砕することを特徴とするマイクロパーティクルを製造する方法。」が記載されている。また、「第4 3.(v)」には実施例として、粗粉砕した固溶体を、マンニトールと、界面活性剤であるプルロニックFと粗混合し、超音速ジェット粉砕機(PJM-100SP、日本ニューマチック工業製)を用いて粉砕して得られた製剤が、分散媒への分散性が優れていたことも記載されている。
「超音速ジェット粉砕機(PJM-100SP、日本ニューマチック工業製)」は、乾式超微粉砕機であると認められるから、引用文献3には、界面活性剤の存在下で乾式粉砕することも、その態様として記載されている。
引用文献3の「粉砕補助剤」は、「第4 3.(iii)」の記載及び本出願の優先日当時の技術常識からみて、本願発明1の「ミリング可能なグラインディング化合物」に相当するものであり、引用発明2及び引用文献3は、ミリング可能なグラインディング化合物を用いる乾式による薬物の微粒子化方法に係る発明であるという点で、共通の技術分野に属するものである。
引用文献3の「第4 3.(iii)」の段落【0036】には、粉砕補助剤の具体例として、(3)マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、単糖(例、ブドウ糖、果糖など)、二糖(例、乳糖、ショ糖、麦芽糖など)、アミノ糖(例、グルコサミン、ガラクトサミン、コンドロイチン硫酸など)、多糖類(例、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)などの糖類と並んで、1)ハロゲン化アルカリ金属(例、塩化ナトリウム,塩化カリウム,臭化ナトリウム,臭化カリウムなど)、ハロゲン化アルカリ土類金属(例、塩化カルシウム,塩化マグネシウムなど)、アルカリ金属のリン酸塩類(例、リン酸3ナトリウム,リン酸3カリウム,リン酸水素2ナトリウム,リン酸水素2カリウム,リン酸2水素ナトリウム,リン酸2水素カリウムなど)、アルカリ土類金属の酸化物(例、酸化マグネシウム,酸化カルシウムなど)、アルカリ土類金属の水酸化物(例、水酸化マグネシウム,水酸化カルシウムなど)などの無機塩;(2)炭酸、クエン酸等の有機酸またはその塩、アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩(例、炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウムなど)、アルカリ土類金属の炭酸塩(例、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムなど)、クエン酸のアルカリ金属塩が記載されている。
してみれば、引用発明2において、粉砕助剤として、糖または糖アルコールにかえて、水溶性糖類(例、糖アルコール、単糖、二糖、アミノ糖)と共に特に好ましいことが記載される塩化ナトリウム等の無機塩を含む、引用文献3に記載の各種粉砕補助剤を用いることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明には、グラインディング化合物として、平成31年2月28日受付手続補正により請求項1から削除されたラクトース、又は、塩化ナトリウムを用いた実施例が記載されるのみであり、塩化ナトリウムを含む請求項1に記載される種々の化合物を用いることにより、本願発明1が予測しえない有利な効果を奏するものとはいえない。
2.相違点(2)について
上記「第5 1.」で検討したとおり、引用発明2及び引用文献3に記載された発明は、ミリング可能なグラインディング化合物を用いる乾式粉砕による薬物の微粒子化方法に係る発明であるという点で、共通の技術分野に属するものである。
上記「第4 1.(vi)」の製造例1にあるように、引用文献2には、引用発明2の方法により得られる難溶性薬物の超微粒子に関して、「ショ糖を除去して乾燥微粉末」とし、「メチルセルロースと蒸留水を加え、ホモミキサーで撹拌、分散」させて、「懸濁性シロップ剤」を調製することも記載されている。
有効成分を微粒子として含む製剤において、凝集性、付着性、分散性等をより改善しようとすることは、当該分野における周知の課題であるところ、引用発明2において、凝集性や分散性を高めるために、引用文献3に記載される、凝集防止剤や、固体の水溶性高分子物質、または/および、ドデシル硫酸ナトリウム等の各種界面活性剤の存在下で、高速撹拌粉砕または衝撃粉砕を行い、粒子の表面を水溶性高分子物質または/および界面活性剤で被覆しようとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願の発明の詳細な説明には、請求項1において表面安定化剤として記載される「ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)」及び「セチルトリメチルアンモニウム=ブロミド(CTAB)」については、実施例として、いずれも固体の分散物から、グラインディング化合物である塩化ナトリウムを取り除くために添加することが記載されるのみであり、特定の生物学的に活性な化合物についてすら、「ミルにおいて固体の生物学的に活性な化合物、表面安定化剤、及びミリング可能なグラインディング化合物をドライミリング」することは具体的に記載されておらず、表面を被覆するための界面活性剤として、「ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはセチルトリメチルアンモニウム=ブロミド(CTAB)」を用いることにより、本願発明1が予測しえない有利な効果を奏することが、本願明細書の記載及び技術常識からみて明らかとはいえない。
3.請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は、平成29年2月27日受付の意見書において、引用文献3の記載について、(A)凝集防止剤が粉砕した固状物を水性分散媒に分散することを補助することが明らかであり、引用文献2に記載の高速撹拌粉砕または衝撃粉砕がドライミリングといえるものである以上、引用文献2および3の記載に接した当業者といえども、そもそも「水性」および「ドライ」という概念に夫々基づく、相反する技術分野に属する発明を記載する両文献を組み合わせる動機づけはないこと、及び、(B)引用文献3は特定のクラスに限定された化合物と生体内分解性α-ヒドロキシカルボン酸高分子重合体とを含有する固状物を粉砕補助剤の存在下粉砕する製造方法に係るものであり、それ以外の別異の化合物に引用文献3の記載を適用する動機付けはないと主張する。
また、請求人は審判請求書において、(C)薬物の溶解性を高めることを目的とする引用文献2の記載と、薬物の徐放性を高めることすなわち薬物の溶解性を低下させることを目的とする引用文献3の記載に接した当業者は、それらを組み合わせないものと主張する。
さらに、請求人は平成31年2月28日受付の意見書において、(D)補正後の請求項1に記載の「グラインディング化合物」は、ラクトースを含んでおらず、糖及び糖アルコールに化学的に関連しておらず、引用文献2は、補正後の請求項1に記載の「グラインディング化合物」を開示も示唆もしておらず、糖または糖アルコール以外のグラインディング化合物が有用な結果をもたらすことは教示されていないから、補正後の請求項1に係る発明に到達するために、引用文献2(引用文献3の誤記か?)に記載の発明の適用を試みる動機付けは存在しないと主張する。
また、引用文献3について、(E)マイクロパーティクルは、マイクロサイズの範囲内にある粒子であり、一方、請求項1に係る発明は、ナノ粒子、すなわち、ナノサイズの範囲内にある粒子を含む組成物を生産するための方法に関するものであるから、マイクロとナノとの差は103、すなわち、1マイクロメートルは、1ナノメートルの1000倍であって、実施例で製造できた最小の粒径は27μm(すなわち、27,000nm)であってナノ粒子とは桁が大きく異なるものである。本発明の目的の1つは、生物学的に活性な化合物のナノ粒子を提供することであるところ、生物学的に活性な化合物をナノ粒子のサイズ範囲までドライミリングすることは、粒子のサイズが小さくなるに従い発生する固化(ケーキング)及び凝集の現象のため、極めて困難であることを当業者は容易に理解しており、この固化及び凝集によって、粒子は、粘着性になって共に凝集し、ミリングの工程を妨げる恐れがあることから、上記の目的の達成を考える際に、マイクロパーティクルはナノ粒子よりもかなり大きいこと、及び、ナノ粒子の生産ははるかに困難で特殊な処理が要求されることを当業者は容易に理解するため、マイクロパーティクルの製造にのみ関する文献を当業者が考慮することはないとも主張する。加えて、引用文献2に「しかしながら、単独の医薬品を粉砕するのに用いられる上記の乾式粉砕機では数ミクロン程度にしか微粒子化できず、それ以上の超微粒子を得ることは困難である。特に、1ミクロン以下のサブミクロン粒子を得ることは極めて困難とされている。これは、薬物が一般的に、微粒子化(微粉砕)されるに伴って粒子の凝集性及び付着性を増したり、また固結したりする性質を有するということに関係している。従って、薬物を通常の機械的粉砕で一定レベル以上に微粉砕することは困難であり、難溶性薬物を超微粒子化する実用的な方法は未だ確立されていない。」と記載されるように、超微粒子を得ることは非常に困難なことを当業者は良く理解しているから、補正後の請求項1に係る発明に到達するために、引用文献2に記載の発明において引用文献3に記載の発明の適用を試みる動機付けは存在しないとも主張する。
(2)請求人の主張についての検討
主張(A)について、上記「(1)」で検討したとおり、引用文献3の「第4 3.(v)」の実施例の粉砕工程はドライミリングであると共に、引用文献2の「第4 1.(v)」には製剤として散剤の他、懸濁液、シロップ剤等が記載され、「第4 1.(vi)」のとおり、具体的な製剤例1としても懸濁シロップ剤が記載されており、これらの点において、引用文献2にも請求人のいうところの「水性」という概念は開示されているものである。
したがって、上記主張(A)は当を得たものとはいえない。
主張(B)について、界面活性剤や高分子で薬理活性を有する微粒子形態の化合物の表面を被覆して、粒径を維持しようとすること自体は、当該分野における周知技術であり(要すれば、平成30年8月27日付け拒絶理由通知において「引用文献4」として提示された特表2005-508939号公報の段落【0062】~【0065】等参照)、引用文献3に記載の、凝集防止剤や高分子や界面活性剤を添加する工程が、引用文献3に記載の特定の医薬の固状物にのみ適用可能な特有の処理であるとの事情を見いだすことはできない。
主張(C)について、請求人の主張するとおり、引用文献3は、分散性のみならず徐放性を有する製剤化技術のため、薬物と生体内分解し得る高分子物質の固溶体を形成した後に、固溶体を粉砕するというものである。引用文献3においては、徐放性を高めることは、固溶体の形成段階に委ねられているものである。しかも、徐放性を高めることと薬物の溶解性の低下が必ずしも関連するものではないことは、当該分野における技術常識からみて明らかである。
したがって、この点においても引用発明2に引用文献3に記載の事項を組み合わせることに何らかの阻害要因をみいだすことはできない。
主張(D)は、平成30年8月27日付拒絶理由通知において通知した「また、グラインディング化合物を用いて粉砕を行うことは当該分野における周知技術であるところ、引用発明2において、粉砕助剤として引用文献3の上記「ウ.(iii)」に記載の各種物質を用いることも当業者が適宜なしえる範囲内の事項であり」との指摘について何ら具体的な反論をするものではない。
そして、上述のとおり、引用発明2において、糖または糖アルコールにかえて、糖または糖アルコールと共にグラインディング化合物として用いられることが記載される引用文献3に記載の塩化ナトリウム等の無機塩を含む各種化合物を用いてみることは、当業者が容易に想到し得たものである。
請求人は、糖または糖アルコール以外のグラインディング化合物が有用な結果をもたらすことは教示されていないから、補正後の請求項1に係る発明に到達するために、引用文献2(引用文献3の誤記か?)に記載の発明の適用を試みる動機付けは存在しないとも主張する。
しかしながら、引用文献3において、糖または糖アルコールと共に列挙される各種物質は、水溶性等の同様の性質を有するものであり、中でも、水溶性糖類(例、糖アルコール、単糖、二糖、アミノ糖)と並んで特に好ましいことが記載される塩化ナトリウム等の無機塩に関しては、本出願の優先日当時の技術常識からみて、粉砕助剤として用いた場合においても糖または糖アルコールと同様の結果がもたらされるであろうことを当業者であれば想起するものである。そもそも本願明細書にミリング可能なグラインディング化合物として具体的な実施例を伴って記載されているものは、ラクトースと塩化ナトリウムのみであり、本願の請求項1に記載されるその他の多様な化合物をグラインディング化合物として用いた際に有用な結果がもたらされるということは、本願明細書においても教示されているものではない。
主張(E)について、本願発明1の従属形式で記載される請求項2には、「請求項1に記載の、組成物を生産するための方法であって、前記ナノ粒子は、5000nm未満の平均サイズを有する、方法」と記載されるように、本願明細書においても、ナノ粒子とは専ら直径が数~数十nm程度の粒子を意図するものではない。
引用文献3には「マイクロパーティクル」と記載されるものの、例えば段落【0035】には、「粉砕の程度は、~好ましい平均粒子径としては約0.5~400μmの範囲が挙げられる」と記載されており、引用文献2に記載の粒径と近いオーダーの粒子径もその範囲として挙げられている。
そもそも、引用文献2には、請求人が指摘する引用文献2に記載の課題をふまえて、本願発明1のナノ粒子に相当する超微粒子を乾式粉砕によって調製したことが記載されているのである。その上で、より凝集防止や分散性の向上をもたらすために、微粒子表面への処理工程等に関する引用文献3に記載の技術を適用することに阻害要因があったとはいえない。
4.小括
以上のとおりであるから、請求人の主張を検討しても、本願発明1は、引用発明2、引用文献2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 結び
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-016118