特許拒絶査定不服審判
2017-015344
車両用占有グリッドマップ、当該車両用占有グリッドマップを供給する方法、当該方法を実行させるためのコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み出し可能データ担体
- 審判番号
- 2017-015344
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-517196外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月16日
- 審決日
- 2019年03月28日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】二宮 浩康
- 【請求人代理人】上島 類
- 分類
- P18 .113-WZ (G08G) / P18 .121-WZ (G08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-517196「車両用占有グリッドマップ、当該車両用占有グリッドマップを供給する方法、当該方法を実行させるためのコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み出し可能データ担体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日国際公開、WO2014/195047、平成28年 7月28日国内公表、特表2016-522508〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年6月3日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年12月22日付け:拒絶理由通知
平成29年 7月 7日 :意見書、手続補正
平成29年 7月21日付け:拒絶査定
平成29年10月16日 :審判請求、手続補正
平成30年 8月24日付け:拒絶理由通知
平成30年11月26日 :意見書、手続補正(以下、「本件補正」という。)
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同請求項に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「グリッド状に配置された複数のセル(Z)を有する車両(F)用占有グリッドマップ(100)において、
前記車両(F)の算出装置(200)が、前記占有グリッドマップ(100)の前記セル(Z)を、前記車両(F)の走行状況に依存して当該走行状況に適合し、
前記占有グリッドマップ(100)の幾何学的モデリングを求めるため、前記車両(F)が走行した経路又は前記車両(F)が走行する予定の経路、あるいは、前記車両(F)が走行する予定の経路に基づいて計画される前記車両(F)の操作を取り入れ、
前記車両(F)の前記算出装置(200)は、前記車両(F)が走行する予定の領域における前記セル(Z)の密度が、他の領域よりも高くなるように、前記占有グリッドマップの幾何学モデリングを求める、
ことを特徴とする占有グリッドマップ(100)。」
第3 拒絶の理由
平成30年8月24日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由3及び4は、次のとおりのものである。
理由3
(新規性)本願発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由4
(進歩性)本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2011/101988号
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(1)「[請求項1] 自車の周辺に設定された複数の地点における危険度を算出する危険度算出ユニットを備え、前記危険度算出ユニットは、前記自車の環境及び状態の少なくともいずれかに応じて、前記地点が設定された領域全体として算出する前記危険度に関する情報量を変化させる、危険度算出装置。」
(2)「[請求項3] 前記危険度算出ユニットは、前記自車の環境及び状態の少なくともいずれかに応じて、前記地点同士の間隔を変化させることにより、前記地点が設定された領域全体として算出する前記危険度に関する情報量を変化させる、請求項1又は2に記載の危険度算出装置。」
(3)「[請求項5] 前記危険度算出ユニットは、前記自車の進行方向以外において算出する前記危険度に関する情報量よりも前記自車の進行方向において算出する前記危険度に関する情報量を多くする、請求項1~4のいずれか1項に記載の危険度算出装置。
[請求項6] 前記危険度算出ユニットは、前記自車の操舵方向以外において算出する前記危険度に関する情報量よりも前記自車の操舵方向において算出する前記危険度に関する情報量を多くする、請求項5に記載の危険度算出装置。」
(4)「[請求項10] 前記危険度算出ユニットは、前記自車の方向指示器が操作されているときには、前記自車の方向指示器の指示方向と反対方向において算出する前記危険度に関する情報量よりも前記自車の方向指示器の指示方向において算出する前記危険度に関する情報量を多くする、請求項1~9のいずれか1項に記載の危険度算出装置。」
(5)「[0002] 走行の安全性を高めるため、車両の周辺の潜在的な危険度を算出する装置が提案されている。例えば、特許文献1には、道路形状、障害物を検出し、リスク最小走行軌跡を算出するリスク最小軌跡生成装置およびそれを用いた危険状況警報装置が開示されている。
[0003] この特許文献1の危険状況警報装置は、障害物検出レーダ、白線検出カメラ、走行状態検出センサ、CPUを備える。CPUは、障害物検出レーダから障害物の情報を取得し、白線検出カメラから道路形状と自車両の走行位置を取得する。さらに、CPUは、走行状態検出センサから、車速データ、方向指示器の操作状況を取得し、ナビゲーション装置から道路情報を取得する。
[0004] CPUは、取得した情報に基づき、走行経路推定部において走行経路を推定し、危険度場設定部において道路上の各地点の危険度の値を設定する。この場合、車両の周囲が仮想のメッシュ(格子状領域)に分割され、各々の格子内ごとの危険度の値が算出される。CPUは、リスク最小軌跡算出部において危険度の総和が最小となるリスク最小走行軌跡を算出する。CPUの判定部は、リスク最小走行軌跡上の危険度が警報閾値を超えた時、表示装置と音声装置に警報を出力する。」
(6)「[0006] しかしながら、上記の技術では、危険度の算出のために設定されるメッシュの格子間隔は常に一定である。そのため、危険度が局所的に高まる状況において、潜在的危険度を適切に把握できない可能性がある。
[0007] 例えば、カーブを走行するときのように道路形状が変化する場合には、カーブの方向によって危険度は異なる。そのため、均等な格子間隔のメッシュにより危険度を算出したのでは、自車の走行経路内の潜在的危険度を適切に算出できない場合が生じる。
[0008] 危険度の算出の精度を上げるには、全体的にメッシュの格子間隔を小さくしていく必要があるが、装置の演算の負荷が大きくなる可能性がある。さらに、メッシュの格子状領域によっては、自車の目標経路の算出等とは無関係な格子状領域があったり、逆に必要な位置に格子状領域が無い場合も考えられ、自車周辺の障害物の位置や道路形状等に応じて適切に潜在的危険度を算出することができない。
[0009] 本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、より状況に応じて自車の周辺の危険度を算出することが可能な危険度算出装置を提供することにある。」
(7)「[0010] 本発明は、自車の周辺に設定された複数の地点における危険度を算出する危険度算出ユニットを備え、危険度算出ユニットは、自車の環境及び状態の少なくともいずれかに応じて、地点が設定された領域全体として算出する危険度に関する情報量を変化させる危険度算出装置である。」
(8)「[0014] また、危険度算出ユニットは、自車の環境及び状態の少なくともいずれかに応じて、地点同士の間隔を変化させることにより、地点が設定された領域全体として算出する危険度に関する情報量を変化させることができる。
[0015] この構成によれば、危険度算出ユニットは、自車の環境及び状態の少なくともいずれかに応じて、地点同士の間隔を変化させることにより、地点が設定された領域全体として算出する危険度に関する情報量を変化させるため、より状況に応じた危険度を算出する地点の密度で自車の周辺の危険度を算出することが可能となる。」
(9)「[0041] 以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明の潜在的危険度算出装置を運転支援装置に適用したものである。図1に示すように、運転支援装置10は、障害物検出装置11、白線検出装置12、道路形状検出装置13、ドライバ状態検出装置14、自車走行状況検出装置15、自車位置検出装置16、周辺環境データベース17、ドライバ操作状態検出装置18、制御モード切替SW19、危険度推定装置20、目標経路生成装置30、運転支援方法判断装置40、表示装置51、音声装置52及び支援装置53を備えている。
[0042] 障害物検出装置11は、具体的にはミリ波レーダ、レーザレーダ及びステレオカメラ等であり、自車周囲の障害物を検出するためのものである。白線検出装置12は、道路の車線を規定する道路上の白線を認識するカメラ等のセンサである。白線検出装置12は、自車が走行する車線を認識するために用いられる。道路形状検出装置13は、具体的にはレーザレーダ等であり、自車が走行する道路の形状を検出するためのものである。」
(10)「[0044] 自車走行状況検出装置15は、自車の車速やヨーレートや方向指示器の指示方向を検出するためのものである。自車走行状況検出装置15は、自車の車軸の回転速を検出することにより自車の車速を検出する。また、自車走行状況検出装置15は、加速度検出センサは、圧電素子等により、自車に働くコリオリの力を検出することにより、自車のヨーレートを検出する。」
(11)「[0048] 危険度推定装置20は、障害物検出装置11~制御モード切替SW19からの情報に基づいて、自車の周辺に格子状領域であるメッシュの設定を変化させ、当該メッシュの各交点における潜在的危険度(Rish Potential)を算出するためのものである。」
(12)「[0054] 以下、本実施形態の運転支援装置10の動作について説明する。以下に説明する例では、自車のヨーレートの値に応じて、ヨーレートが大きくなるほど、ヨーイング方向のメッシュ生成領域を広く設定する。まず、全体的な動作について説明する。運転支援装置10の危険度推定装置20は、自車走行状況検出装置15が検出した自車のヨーレートに基づいて、メッシュを生成する(S101)。
[0055] 危険度推定装置20は、メッシュの交点それぞれにおける危険度を演算する(S102)。この危険度の演算は、メッシュの各交点において、障害物検出装置11~制御モード切替SW19により検出された各情報に所定の重み付け係数を乗じて加算することにより、危険度を算出することができる。
[0056] 目標経路生成装置30は、自車が到達可能なメッシュの交点それぞれを接続して、経路をマークする(S103)。目標経路生成装置30は、危険度推定装置20が演算したメッシュの交点それぞれにおける危険度に基づいて、マークした経路それぞれにおけるメッシュ交点の危険度の合計である通過コストを算出する(S104)。目標経路生成装置30は、算出した通過コストが最も小さい経路を目標経路として導出する(S105)。運転支援方法判断装置40は、目標経路生成装置30が導出した目標経路と、危険度推定装置20が演算した当該目標経路におけるメッシュの交点それぞれの危険度とに基づいて、表示装置51、音声装置52又は支援装置53を用いて、自車のドライバーに必要な運転支援を行なう。」
(13)「[0057] 以下、メッシュ生成の動作の詳細について説明する。図3に示すように、自車100の周囲に格子状の領域であるメッシュMが生成されるものと仮定する。図3中で、X0[m]はX軸方向(自車100の前後方向)のメッシュ生成領域の長さの初期値であり、Y0[m]はY軸方向(自車100の左右方向)のメッシュ生成領域の長さの初期値である。図3中で、XFRONT[m]はX軸正方向(自車100の前方)に最終的に生成されるメッシュ生成領域の長さである。YLEFT[m]及びYRIGHT[m]はそれぞれY軸左方向及びY軸右方向に最終的に生成されるメッシュ生成領域の長さであり、Y軸左方向を正とする。
[0058] ここで、T[s]はメッシュ生成時間である。v[m/s]は自車100の車速である。γ[rad/s]は自車100のヨーレートであり、左回りを正とする。X0=v×Tとされる。自車横方向加速度ayとするとay=v×γである。よって、T秒後の自車100の横変位量yは、下式(1)のようになる。
y=(1/2)ayT2
=(1/2)vγT2 (1)
[0059] 図4に示すように、メッシュ生成時において、運転支援装置10の危険度推定装置20は、自車走行状況検出装置15により、自車100の車速v及びヨーレートγを認識する(S201)。ヨーレートγ≧0のときは(S202)、YLEFT=Y0+y,YRIGHT=-Y0であるから、危険度推定装置20は、上式(1)を代入して、下式(2)のYLEFT及びYRIGHTを算出する(S203)。なお、ヨーレートγ=0であるときは、横変位量y=0であるから、YLEFT=Y0,YRIGHT=-Y0である
YLEFT=Y0+(1/2)vγT2
YRIGHT=-Y0 (2)
[0060] 一方、ヨーレートγ≧0でないときは(S202)、YLEFT=Y0,YRIGHT=-Y0+yであるから、危険度推定装置20は、上式(1)を代入して、下式(3)のYLEFT及びYRIGHTを算出する(S204)。以上により、自車100のヨーイング方向に広く、ヨーイング方向の反対側に狭いメッシュMの領域が設定される。
YLEFT=Y0
YRIGHT=-Y0+(1/2)vγT2 (3)
[0061] この例においては、危険度推定装置20は、XFRONTについては初期値のまま、XFRONT=X0とする(S205)。以上により、自車100の周囲にメッシュMを生成する領域が算出される。
[0062] 次に、危険度推定装置20は格子状に分割されるメッシュMの各交点の座標を算出する。メッシュMのX方向の分割数N、Y方向の分割数Mとする。図5に示すように、最も小さく分割された格子状領域のX方向の単位ベクトルi、Y方向の単位ベクトルjとする。ここで、図5中の原点Oについて、原点OからX方向にi番目でY方向にj番目のメッシュMの交点Pの座標を、P(xij,yij)とする。」
(14)「[0069] さらに、本実施形態では、図6に示すように、自車100の環境又は状態に応じて、上記図4の動作におけるメッシュMのX方向の分割数N、Y方向の分割数Mを変化させることにより、メッシュMの交点P同士のX方向の間隔SX及びY方向の間隔SYを変更しても良い。
[0070] この場合、危険度推定装置20は、自車走行状況検出装置15からの情報を用いてメッシュMの交点Pの間隔SX,SYを変化させることが可能である。例えば、自車100の車速が大きいほど、メッシュMの交点Pの間隔SX,SYが広くされる。車速の増加に比例してメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが広くされるように、メッシュMのX方向の分割数N、Y方向の分割数Mは下式(6)、メッシュMの交点Pの間隔SX,SYは下式(7)により求めることができる。なお、N0はメッシュMのX方向の分割数Nの最小値であり、M0はメッシュMのX方向の分割数Mの最小値であり、α、β、γ、δは任意の定数である。
N=N0+{(α/(v+β)}
M=M0+{(γ/(v+δ)} (6)
SX=XFRONT/[N0+{(α/(v+β)}]
SY=(YRIGHT+YLEFT)/[M0 +{(γ/(v+δ)}] (7)
[0071] 自車100にヨーレートが発生しているときは、自車100のヨーイング方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、自車100のヨーイング方向とは反対方向のメッシュMの交点の間隔SYが広くされる。メッシュMのY軸左方向の分割数をMLEFTとし、メッシュMのY軸右方向の分割数をMRIGHTとすると、自車100が左側に旋回しているときは(r≧0)、分割数MLEFT,MRIGHTはそれぞれ下式(8)により求めることができ、自車100が右側に旋回しているときは(r<0)、分割数MLEFT,MRIGHTはそれぞれ下式(9)により求めることができる。
MLEFT =vr+(M0/2)
MRIGHT=M0/2 (8)
MLEFT=M0/2
MRIGHT=-vr+(M0/2) (9)
[0072] メッシュMのY軸左方向の交点Pの間隔SYをSYLEFTとし、メッシュMのY軸右方向の交点Pの間隔SYをSYRIGHTとすると、自車100が左側に旋回しているときは(r≧0)、間隔SYLEFT,SYRIGHTはそれぞれ下式(10)により求めることができ、自車100が右側に旋回しているときは(r<0)、間隔SYLEFT,SYRIGHTはそれぞれ下式(11)により求めることができる。
SYLEFT=YLEFT/{vr+(M0/2)}
SYRIGHT=YRIGHT/(M0/2) (10)
SYLEFT=YLEFT/(M0/2)
SYRIGHT=YRIGHT/{-vr+(M0/2)} (11)
[0073] 同様に、自車100の加速度が大きいほど、自車100前方のメッシュMの交点Pの間隔SXが狭くされ、自車100後方のメッシュMの交点Pの間隔SXが広くされる。自車100の減速度が大きいほど、自車100後方のメッシュMの交点Pの間隔SXが狭くされ、自車100前方のメッシュMの交点の間隔SXが広くされる。方向指示器の指示方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、方向指示器の指示方向と反対方向のメッシュMの交点Pの間隔SY が広くされる。
[0074] また、危険度推定装置20は、障害物検出装置11、白線検出装置12、道路形状検出装置13、自車位置検出装置16及び周辺環境データベース17からの自車100の周辺に関する情報を用いてメッシュMの交点Pの間隔SX,SY を変化させることが可能である。例えば、自車100周囲を右前方、左前方、右後方及び左後方の4方向に分割し、障害物が存在する領域のメッシュMの交点Pの間隔SX,SY が狭くされる。また、白線により車線が認知されるときは、車線内のメッシュMの交点Pの間隔SX,SY を所定のオフセット値とし、検出される自車100のヨーレートに従って、自車100のヨーイング方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、自車100のヨーイング方向とは反対方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが広くされる。また、道路形状がカーブであるときは、カーブが曲がる方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされる。あるいは、交差点では、自車100左右方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされる。さらに、学校、老人ホームといった施設近辺でも、道路を横断する歩行者の安全のため自車100左右方向のメッシュMの間隔SYが狭くされる。また、自車100から見て死角となる方向については、当該方向へのメッシュMの間隔SYが狭くされる。
[0075] また、危険度推定装置20は、ドライバ状態検出装置14により検出されたドライバーの状態や、ドライバ操作状態検出装置18により検出されたドライバーの操作状態によって、メッシュMの交点Pの間隔SX,SYを変化させることが可能である。例えば、ドライバーの覚醒度が低いほど、メッシュMの交点Pの間隔SX,SYが狭くされ、ドライバーの覚醒度が高いほど、メッシュMの交点Pの間隔SX,SYが広くされる。また、操舵トルクが発生した側の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、操舵トルクが発生した側とは反対方向の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが広くされる。また、ブレーキペダルが踏まれたときは、前方向のメッシュMの交点Pの間隔SXが広くされ、後方向のメッシュMの交点Pの間隔SXが狭くされる。逆に、アクセルペダルが踏まれたときは、前方向のメッシュMの交点Pの間隔SXが狭くされ、後方向のメッシュMの交点Pの間隔SXが広くされる。また、ドライバーの顔向きが向いている方向のメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが狭くされ、ドライバーの顔向きが向いている方向とは反対方向のメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが狭くされる。さらに、ドライバーの視線方向のメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが狭くされ、ドライバーの視線方向とは反対方向のメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが広くされる。この場合、危険度が高い状況においては、逆に、ドライバーの顔向き又は視線方向のメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが広くされ、ドライバーの顔向き又は視線方向とは反対方向のメッシュMの交点Pの間隔SX,SYが狭くされても良い。」
(15)「[0092] また、危険度推定装置20は、自車100の環境及び状態の少なくともいずれかに応じて、メッシュMの交点P同士の間隔を変化させることにより、交点Pが設定されたメッシュMの領域全体として算出する潜在的危険度に関する情報量を変化させるため、より状況に応じた潜在的危険度を算出する交点Pの密度で自車100の周辺の潜在的危険度を算出することが可能となる。」
(16)上記(13)の記載(特に[0057]、[0062]の記載参照。)より、引用文献1には、格子状に分割されたメッシュMについて記載されている。メッシュMは、格子状に分割されていることから、複数の格子を有し、これらの格子が格子状に並んでいるといえ、これは、引用文献1の[図6]の記載とも整合する。すなわち、引用文献1には、格子状に並んだ複数の格子を有するメッシュMについて記載されている。
(17)自車の危険度推定装置20が、メッシュMを生成している(上記(12)の[0054]の記載参照。)。さらに、危険度推定装置20は、方向指示器の指示方向によりメッシュMの交点Pの間隔SYを変化させることが引用文献1には記載(上記(14)の[0073]の記載参照。)されているところ、この方向指示器の指示方向は、自車走行状況検出装置15により検出されるものであるから(上記(10)の記載参照)、引用文献1には、危険度推定装置20は、自車走行状況検出装置15により検出された状態を用いてメッシュMの交点Pの間隔SX,SYを変化させることが記載されているといえる。また、引用文献1には、危険度推定装置20は、道路形状検出装置13及びドライバ操作状態検出装置18により検出された状態を用いてメッシュMの交点Pの間隔SYを変化させることが記載(上記(14)の[0074]、[0075]の記載参照。)されている。この間隔SYは、メッシュMの交点Pの間隔であり、これは上記(16)でいう格子状に並んだ格子の大きさであるから、引用文献1には、自車の危険度推定装置20が、メッシュMの格子を、道路形状検出装置13及び自車走行状況検出装置15、ドライバ操作状態検出装置18により検出された状態を用いて変化させることが記載されているといえる。
(18)引用文献1には、「方向指示器の指示方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、方向指示器の指示方向と反対方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが広くされる」(上記(14)の[0073]の記載参照)ことが記載され、方向指示器の指示方向は、自車走行状況検出装置15により検出されている(上記(10)の記載参照。)。また、メッシュMの交点Pの間隔SYを狭くあるいは広くすることは、メッシュMの交点Pの格子の辺の長さを適切に定めていることといえる。
また、引用文献1には、道路形状がカーブであるときは、カーブが曲がる方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされることが記載(上記(14)の[0074]の記載参照)されている。この「カーブ」は、危険度推定装置20が搭載された自車が、これから走行する道路の形状であると解される。また、上記記載は、カーブが曲がる方向のメッシュMの交点Pの間隔SYを変えるために、道路の形状を検出しているといえ、この間隔SYを変えることは、メッシュMの格子の辺の長さを道路の形状に応じて適切に定めていることといえる。
さらに、引用文献1には、ドライバ操作状態検出装置18により検出されたドライバーの操作状態によって、メッシュMの交点Pの間隔SX,SYを変化させることが可能であり、操舵トルクが発生した側の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、操舵トルクが発生した側とは反対方向の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが広くされることが記載(上記(14)の[0075]の記載参照。)されている。操舵トルクが発生した側の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが狭くされ、操舵トルクが発生した側とは反対方向の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SYが広くされることは、操舵トルクにより、メッシュMの格子の辺の長さを操舵トルクに応じて適切に定めているといえる。
これらのことから、引用文献1には、メッシュMの格子の辺の長さを適切に定めるため、自車がこれから走行する道路の形状、あるいは、方向指示器の指示方向、操舵トルクを検出することが記載されている。
(19)上記(18)に示したように引用文献1には、危険度推定装置20は、格子の間隔である間隔SX,SYについて、方向指示器の指示方向のメッシュMの交点Pの間隔SY、すなわち、格子の辺の長さが狭くなり、カーブが曲がる方向のメッシュMの交点Pの間隔SY、すなわち、格子の辺の長さが狭くなり、また、操舵トルクが発生した側の横方向のメッシュMの交点Pの間隔SY、すなわち、格子の辺の長さが狭くなるようにメッシュMの格子の形状を定めることが記載されている。
2 引用発明
上記1からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「格子状に並んだ複数の格子を有するメッシュMにおいて、
自車の危険度推定装置20が、メッシュMの格子を、道路形状検出装置13及び自車走行状況検出装置15、ドライバ操作状態検出装置18により検出された状態を用いて変化させ、
メッシュMの格子の辺の長さを適切に定めるため、自車がこれから走行する道路の形状、あるいは、方向指示器の指示方向、操舵トルクを検出し、
前記自車の危険度推定装置20は、カーブが曲がる方向のメッシュMの格子の辺の長さが狭くなり、また、方向指示器の指示方向のメッシュMの格子の辺の長さが狭くなり、操舵トルクが発生した側のメッシュMの格子の辺の長さが狭くなるようにメッシュMの格子の辺の長さを定める、
メッシュM。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「格子状」は、本願発明の「グリッド状」に相当し、前者の「並んだ」、「格子」は、それぞれ、後者の「配置された」、「セル」に相当する。また、引用発明の「メッシュM」は、自車の周囲を仮想の格子状領域で分割したものであり(上記、「第4 引用文献の記載及び引用発明」、「1 引用文献1の記載」、「(5)」参照。)、本願発明の「車両用占有グリッドマップ」も車両の周囲を複数のセルで分割したものであり、このセル等は算出装置によって仮想的に生成されるものであると解されるから、引用発明の「メッシュM」は、本願発明の「車両用占有グリッドマップ」に相当する。したがって、引用発明の「格子状に並んだ複数の格子を有するメッシュM」は、本願発明の「グリッド状に配置された複数のセルを有する車両用占有グリッドマップ」に相当する。
(2)引用発明の「自車」は、本願発明の「車両」に相当し、前者の「危険度推定装置20」は、後者の「算出装置」に相当する。
また、引用発明の「道路形状検出装置13及び自車走行状況検出装置15、ドライバ操作状態検出装置18により検出された状態」は、車両の走行に伴って生じる車両の状態、あるいは、これらの検知装置により検知された車両が走行している状態であるから、本願発明の「車両の走行状況」に相当し、引用発明のこれらの「検出された状態を用いて」格子を「変化させ」ることは、本願発明の「走行状況に依存して」セルを「走行状況に適合」させることに相当する。したがって、引用発明の「自車の危険度推定装置20が、メッシュMの格子を、道路形状検出装置13及び自車走行状況検出装置15、ドライバ操作状態検出装置18により検出された状態を用いて変化させ」ることは、本願発明の「車両の算出装置が、前記占有グリッドマップの前記セルを、前記車両の走行状況に依存して当該走行状況に適合」させることに相当する。
(3)本願発明の占有グリッドマップの幾何学的モデリングとは、本願の明細書の段落【0033】及び【図6】等の記載からみて、占有グリッドマップに配置する複数のセルの形状や大きさを設定することを含むと解される。そして、引用発明の「メッシュMの格子の辺の長さを適切に定める」ことは、本願発明のセルに相当する「格子」の辺の長さを適切な長さに設定することであるから、引用発明の「メッシュMの格子の辺の長さを適切に定める」ことは、本願発明の「占有グリッドマップの幾何学的モデリングを求める」ことに相当する。
さらに、引用発明の「自車がこれから走行する道路の形状」は、走行する予定の道路の形状であって、これは、車両の走行が予定されている経路でもあるから、本願発明の「車両が走行する予定の経路」に相当する。また、引用発明の「方向指示器の指示方向」は、車両が進行する予定の経路を示すために行われる操作であるから、本願発明の「車両が走行する予定の経路に基づいて計画される前記車両の操作」に相当する。さらに、引用発明の検出された「操舵トルク」は、操舵トルクによって車両が操舵され、進む方向が決まるものであり、一般に、車両は予定されている経路に沿って走行するように操舵されるものであるから、引用発明の「操舵トルク」は、本願発明の「車両が走行する予定の経路に基づいて計画される前記車両の操作」に相当する。
また、引用発明の「検出し」は、本願発明の「取り入れ」に相当する。
そして、本願発明は、「車両が走行した経路」(以下、「走行経路」という。)又は「車両が走行する予定の経路」(以下、「走行予定経路」という。)あるいは、「車両が走行する予定の経路に基づいて計画される前記車両の操作」(以下、「車両操作」という。)を取り入れるものであり、走行予定経路のみを取り入れるものと、車両操作のみを取り入れるものと、走行予定経路と車両操作を取り入れるものの、いずれも含む発明であるから、引用発明の「自車がこれから走行する道路の形状、あるいは、方向指示器の指示方向、操舵トルクを検出」することは、本願発明の「前記車両が走行した経路又は前記車両が走行する予定の経路、あるいは、前記車両が走行する予定の経路に基づいて計画される前記車両の操作を取り入れ」ることに相当する。
(4)引用発明の「カーブが曲がる方向の」は、カーブが曲がる方向に自車が走行することが想定されるものであるから、本願発明の「車両が走行する予定の領域における」に相当する。また、引用発明の「方向指示器の指示方向の」は、車両が進行することを予定している方向を示しているから、本願発明の「車両が走行する予定の領域における」に相当し、また引用発明の「操舵トルクが発生した側の」は、操舵トルクが発生した側に自車が進行すると想定されるから、本願発明の「車両が走行する予定の領域における」に相当する。
引用発明の「メッシュMの格子の辺の長さが狭くなる」ことは、格子の辺の長さが狭くなることで、格子の数が増えるから、結局、格子の密度が、格子の辺の長さが狭くならない領域より高くなることとなる。したがって、引用発明の「メッシュMの格子の辺の長さが狭くなるようにメッシュMの格子の辺の長さを定める」ことは、本願発明の「セルの密度が、他の領域よりも高くなるように、前記占有グリッドマップの幾何学モデリングを求める」ことに相当する。
よって、引用発明の「自車の危険度推定装置20は、カーブが曲がる方向のメッシュMの格子の辺の長さが狭くなり、また、方向指示器の指示方向のメッシュMの格子の辺の長さが狭くなり、操舵トルクが発生した側のメッシュMの格子の辺の長さが狭くなるようにメッシュMの格子の辺の長さを定める」ことは、本願発明の「前記車両の前記算出装置は、前記車両が走行する予定の領域における前記セルの密度が、他の領域よりも高くなるように、前記占有グリッドマップの幾何学モデリングを求める」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違点は存在しない。
[一致点]
「グリッド状に配置された複数のセルを有する車両用占有グリッドマップにおいて、
前記車両の算出装置が、前記占有グリッドマップの前記セルを、前記車両の走行状況に依存して当該走行状況に適合し、
前記占有グリッドマップの幾何学的モデリングを求めるため、前記車両が走行した経路又は前記車両が走行する予定の経路、あるいは、前記車両が走行する予定の経路に基づいて計画される前記車両の操作を取り入れ、
前記車両の前記算出装置は、前記車両が走行する予定の領域における前記セルの密度が、他の領域よりも高くなるように、前記占有グリッドマップの幾何学モデリングを求める、
ことを特徴とする占有グリッドマップ。」
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-015344