特許拒絶査定不服審判
2023-022316
自律車両に遠隔操作命令を提供するためのシステム及び方法
- 審判番号
- 2023-022316
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-505373外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年12月28日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ズークス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-Z (G08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-505373「自律車両に遠隔操作命令を提供するためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月 4日国際公開、WO2021/021680、令和 4年 9月22日国内公表、特表2022-541343〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年(令和元年)7月26日、米国、2019年(令和元年)7月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和 5年 3月15日付け:拒絶理由通知書
同年 6月21日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月18日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年12月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年 2月 6日付け:前置報告書
同年 5月 1日 :上申書の提出
第2 令和 5年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年12月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
システムであって、
1つ以上のプロセッサと、
実行可能命令が内部に記憶された1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、
を備え、
前記実行可能命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行された結果として、コンピュータシステムに、少なくとも、
目的地にナビゲートする自律車両のセンサからセンサデータを受信することと、
前記センサデータに少なくとも部分的に基づいて、前記自律車両が走行中の環境に、前記自律車両が前記目的地まで進むことを妨げる条件が存在するか否かを判断することと、
前記センサデータの少なくとも一部分を、ガイダンスの要求とともに第2のシステムに送信することと、
前記自律車両の現在位置のある半径内にある中間目的地まで前記自律車両をナビゲートする命令を含む前記要求に対する応答を受信することであって、前記命令はさらに、前記中間目的地における前記自律車両に関連する方位を示すことと、
前記自律車両に前記中間目的地まで前記環境を通行させ、前記中間目的地で前記方位に整列させるように前記命令を処理することと、
を行わせる、システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和 5年 6月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
システムであって、
1つ以上のプロセッサと、
実行可能命令が内部に記憶された1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体と
を備え、
前記実行可能命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行された結果として、コンピュータシステムに、少なくとも、
デバイスに関連付けられたセンサからセンサデータを受信することと、
前記センサデータに少なくとも部分的に基づいて、ガイダンスを取得するための条件のセットの成立を判定することと、
前記条件のセットの成立を検出した結果として、中間位置にナビゲートするための命令を取得することであって、前記命令が、前記デバイスに対する所望の方位または所望の位置のうちの1つ以上の指示を含む、前記取得することと、
前記デバイスに前記命令を実行させることと、
を行わせる、システム。」
2 補正の適否
上記補正に含まれる補正事項について検討する。
(1)「前記センサデータの少なくとも一部分を、ガイダンスの要求とともに第2のシステムに送信することと、」との補正事項(以下「補正事項1」という。)について
上記補正事項1は、コンピュータシステムに行わせる事項を特定するものであるが、補正前の請求項1で特定されている「デバイスに関連付けられたセンサからセンサデータを受信すること」、「前記センサデータに少なくとも部分的に基づいて、ガイダンスを取得するための条件のセットの成立を判定すること」、「前記条件のセットの成立を検出した結果として、中間位置にナビゲートするための命令を取得することであって、前記命令が、前記デバイスに対する所望の方位または所望の位置のうちの1つ以上の指示を含む、前記取得すること」、及び、「前記デバイスに前記命令を実行させること」という発明特定事項のいずれをも限定して減縮するものではない。つまり、上記補正事項1は、コンピュータシステムに行わせる事項を追加するものであって、特許法17条の2第5項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものでない。
また、上記補正事項1は、特許法17条の2第5項第1号(請求項の削除)、同項第3号(誤記の訂正)、同項第4号(明りょうでない記載の釈明)を目的とするものでないことは明らかである。
したがって、上記補正事項1を含む本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものではない。
(2)「前記自律車両に前記中間目的地まで前記環境を通行させ、前記中間目的地で前記方位に整列させるように前記命令を処理することと、」との補正事項(以下「補正事項2」という。)について
上記補正事項2についての補正の根拠として審判請求人が示している本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0023】、【0024】、【0026】、【0037】、【0042】-【0044】、【0053】、【0129】-【0168】には、上記補正事項2の「前記中間目的地で前記方位に整列させるように」との事項は記載されておらず、上記段落以外の段落や図面にも当該事項は記載されていない。
そして、上記補正事項2により追加された「前記中間目的地で前記方位に整列させるように」との事項は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等)という。)には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、上記補正事項2を含む本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件、及び、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-15に係る発明は、令和 5年 6月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は概略、以下のとおりである。
●理由2(特許法第36条第6項第1号)について
請求項1-15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
●理由4(特許法第29条第1項第3号)について
請求項1、2、3、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由5(特許法第29条第2項)について
この出願の請求項3-6及び8-15に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1-3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2017/022417号
引用文献2:特開2019-067200号公報
引用文献3:特開2002-245588号公報
第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された国際公開第2017/022417号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(なお、下線は当審にて付与した。)
「[0013] [車両走行制御システムの構成の説明]
本実施形態の車両走行制御システム1の構成について、図1を参照しながら説明する。この車両走行制御システム1は、本開示における運転支援の一例として、自車両の加速・操舵・制動等の運転操作を自動的に行う自動運転を制御するシステムである。図1に例示されるとおり、車両走行制御システム1は、走行制御部10と、この走行制御部10に接続される各部によって構成されている。走行制御部10には、カメラ(前方・後方)11、レーダ(前方・後方)12、車車間通信機13、路車間通信機14、位置検出部15、車両状態入力部16、地図データベース17、緊急度データベース18、ドライバステータスモニタ19、駆動制御部20、制動制御部21、操舵制御部22、ペダル駆動部23、ステアリングホイール駆動部24、シート駆動部25、エアコン制御部26、音響映像制御部27、報知部28が接続される。
[0014] 走行制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等(何れも不図示)を中心に構成された情報処理装置である。この走行制御部10は、自車両の加速・制動・操舵等の運転操作を自動的に行って自車両を走行させる自動運転機能を制御する。なお、ここでいう自動運転とは、指定された目的地まで自車両を完全に自動で走行させるものを含む。この他にも、例えば、車線逸脱防止支援機能(Lane Keeping Assist System)や、車間・車線制御機能(Adaptive Cruise Control)等のように、自車両の走行に係る運転操作の一部を担う運転支援を受ける走行も含む。なお、走行制御部10は、運転支援制御装置の制御部、取得部、判断部、緊急度設定部、制限設定部、報知部、及び緊急処置部に相当する。
[0015] 走行制御部10は、自車両の現在地と道路地図データとを比較しながら、目的地までの経路に従って自車両を走行させる。また、走行制御部10は、カメラ11やレーダ12、車車間通信機13、路車間通信機14により周辺車両等の他の交通や、信号、標識、道路形状、障害物といった周辺状況を把握し、安全な走行に必要な加速・制動・操舵の動作を決定する。そして、走行制御部10は、決定した動作に応じて、駆動制御部20や制動制御部21、操舵制御部22等の各種アクチュエータを作動させ、自車両を走行させる。なお、本実施形態では、走行制御部10が実現する機能として、走行予定のルート上において今後に遭遇すると予測される未来の状況を含む各種情報に基づいて自動運転の継続の可否を判断し、判断結果に応じた対処を行う制御内容について説明する。なお、ここでいう走行予定のルートとは、例えば、自車両に搭載されたナビゲーションシステム(不図示)によって設定された目的地までの経路や、自車両が現在走行している道路の延長上である。
[0016] カメラ11は、車両の前方及び後方それぞれに設置された撮像装置であり、自車両の前方領域及び後方領域を撮像し、撮像された画像のデータを走行制御部10に出力する。
[0017] レーダ12は、自車両の前方及び後方それぞれの検出対象範囲に向けて電波やレーザ光を発信し、その反射波を受信することにより対象物の有無や対象物までの距離を検出するセンサである。本実施形態では、カメラ11及びレーダ12を自車両の前方及び後方に存在する他車両や障害物、道路形状等を認識するための光学的あるいは電磁的なセンサとして用いることを想定している。
[0018] 車車間通信機13は、他の車両に搭載された通信装置との間で無線通信(車車間通信)を行う無線通信装置である。走行制御部10は、車車間通信機13の無線通信可能圏内に存在する周辺車両と車車間通信を行い、当該周辺車両が提供する各種情報を取得する。本実施形態では、車車間通信機13により他車両から取得した情報に基づき、周辺車両の位置や速度、加速度、進行方向等の挙動を把握する用途を想定している。また、車車間通信により、他車両が取得した遠方の環境状態(例えば、工事や事故に伴う臨時の交通規制、渋滞、天候、緊急車両の接近等)を表す情報を取得し、自車両が走行する予定のルート上において今後遭遇すると予測される未来の状況を把握する用途を想定している。これらの遠方の環境状態を表す情報には、事象の種類や位置、時間に関する情報が含まれるものとする。
[0019] 路車間通信機14は、路上に設置された情報提供装置(路側装置)から提供される情報を受信するための無線通信装置である。本実施形態では、路側装置によって周辺の監視対象範囲に存在する各車両の位置や速度、加速度、進行方向等の挙動が検出され、各車両に関する車両検出情報が無線通信によりに提供される用途を想定している。走行制御部10は、路車間通信機14により路側装置から受信した車両検出情報に基づき、周辺を走行する各車両の位置や挙動を把握する。また、路車間通信により、路側装置から遠方の環境状態(例えば、工事や事故に伴う臨時の交通規制、渋滞、天候、緊急車両の接近等)を表す情報を取得し、自車両が走行する予定のルート上において今後遭遇すると予測される未来の状況を把握する用途を想定している。これらの遠方の環境状態を表す情報には、事象の種類や位置、時間に関する情報が含まれるものとする。
[0020] 位置検出部15は、GPS(Global Positioning System)受信機や、ジャイロセンサ、車速センサ(何れも不図示)等による検出結果に基づいて自車両の現在地を検出し、検出した現在地情報を走行制御部10に出力する。
[0021] 車両状態入力部16は、車両状態を表す各種情報を走行制御部10に入力する。本実施形態では、車両状態を表す情報として、速度や加速度、角速度等の自車両の挙動を計測するセンサによる計測値や、車両システム(認知・判断系、走行制御系)の状態、運転者によるハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作等の操作信号等を想定している。
[0022] 地図データベース17は、経路案内用の地図データを記憶する記憶装置である。この地図データには、道路の結節点に対応するノードデータ、ノード間の道路区間に対応するリンクデータ、ノード及びリンクに対応する属性データ、施設データ等の各種データが含まれる。
[0023] 緊急度データベース18は、自動運転の継続が不可能になる事由に該当する複数の状況について、その緊急性の度合を表す緊急度と権限委譲制限とが定義された情報を記憶するデータベースである。図2に例示されるように、緊急度データベース18には、自動運転の継続が不可能になる状況と、その状況に対応する緊急度及び権限委譲制限(第1閾値・第2閾値)とが対応付けて記述されたテーブルが記憶されているものとする。自動運転の継続が不可能になる状況としては、道路工事や事故、臨時の交通規制、渋滞、悪天候、緊急車両の接近等が例示される。
[0024] 緊急度は、緊急性の度合を表す値であり、自動運転の継続が不可能になる状況に対して自動運転を解除して手動運転に切換えるまでの猶予が少ないほど大きな数値となるように設定された情報である。権限委譲制限は、自動運転の継続が不可能になる前の対策として、運転の権限を運転者に委譲するための準備を促す通知や、緊急退避走行を行うべき時間又は距離に関する制限を表す情報である。
[0025] この権限委譲制限には第1閾値と第2閾値とが含まれる。第1閾値は、自動運転を解除して手動運転に切換えることを運転者に対して勧告すべき時間又は距離の制限を表す値である。第2閾値は、第1閾値に基づく勧告した後に運転者が自動運転の解除を受入れないときに、緊急退避を行うべき時間又は距離の制限を表す値である。なお、時系列順に第1閾値が先、第2閾値が後になるように設定されるものとする。これらの第1閾値及び第2閾値は、例えば、対応する状況が把握された時点からの経過時間や、対応する状況が生じる地点からの距離を表す値として設定される。」
「[0036] [自動運転監視処理の説明]
走行制御部10が実行する自動運転監視処理の手順について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、走行制御部10によって自動運転の制御処理が行われているときに並行して実行される。
[0037] ステップS100では、走行制御部10は、自動運転の走行制御に伴い環境状態、システム状態、車両状態、及びドライバ状態に関する各種情報を取得する。具体的には、走行制御部10は、カメラ11、レーダ12、車車間通信機13、路車間通信機14によって得られた情報に基づき、周辺車両等の他の交通や、信号、標識、道路形状、障害物といった周辺状況を、現在の自車両近辺の環境状態に関する情報として取得する。また、走行制御部10は、車車間通信機13や路車間通信機14による通信によって得られた情報に基づき、自車両が走行する予定のルート上において今後遭遇すると予測される状況を、未来の環境状態に関する情報として取得する。
[0038] また、走行制御部10は、車両状態入力部16から入力される認知・判断系や走行制御系の車両システムの状態を表す情報を、システム状態に関する情報として取得する。ここでいう車両システムの状態とは、例えば、異常の有無を表す情報を含む。また、走行制御部10は、車両状態入力部16から入力される自車両の位置や挙動を表す情報や、運転者によるハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作等の操作情報を、車両状態に関する情報として取得する。また、走行制御部10は、ドライバステータスモニタ19から入力される情報に基づき、運転者の視線の動きや覚醒状態、姿勢、スイッチ類の操作状況等を表す情報をドライバ状態に関する情報として取得する。
[0039] ステップS102では、走行制御部10は、ステップS100で取得した各種情報から把握される状況が、自動運転の継続が不可能になる状況に該当するか否かを判定する。具体的には、走行制御部10は、自車両周辺の現在の状況、及び未来に遭遇すると予測される状況について、自動運転の継続が不可能になる異常を把握した場合、自動運転の継続が不可能になる状況と判断する。自動運転に継続が不可能になる状況としては、例えば、道路工事や事故、臨時の交通規制、渋滞、悪天候、緊急車両の接近が挙げられる。また、走行制御部10は、認知・判断系や走行制御系の車両システムに異常がある場合、自動運転の継続が不可能になる状況と判断する。自動運転の継続が不可能になる状況に該当しない場合(ステップS102:NO)、走行制御部10は、ステップS100に戻る。一方、自動運転の継続が不可能になる状況に該当する場合(ステップS102:YES)、走行制御部10は、ステップS104に進む。
[0040] ステップS104では、走行制御部10は、ステップS102において判定された状況について、緊急度を判定する。具体的には、走行制御部10は、緊急度データベース18のテーブル(図2参照)を参照し、ステップS102において該当すると判定された状況に対応する緊急度を判定する。ステップS106では、走行制御部10は、ステップS104で判定した緊急度に応じて、権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を設定する。具体的には、走行制御部10は、緊急度が大きいほど、権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を現時点又は現地点から近くなるように設定する。あるいは、緊急度データベース18のテーブル(図2参照)を参照し、ステップS102において、該当すると判定された状況及び緊急度に対応する権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を設定する。
[0041] また、自動運転の継続が不可能になる状況が複数ある場合、走行制御部10は、最も緊急度の高い状況を基準にして権限委譲制限を設定することが考えられる。また、緊急度に加えて、運転者の状態や車両システムの状態を権限委譲制限の設定に反映することが考えられる。例えば、運転者の状態や車両システムの状態が自動運転を解除して手動運転に切換えるにあたって不利となる特定条件に該当する場合、走行制御部10は、権限委譲制限の第1閾値又は第2閾値を現時点又は現地点からより近くなるように調整する。このようにすることで、自動運転の継続が不可能になる状況への対処を早めることができる。
[0042] あるいは、ステップS102で判定された状況に遭遇する手前で自車両を安全に退避させることができる退避可能場所を探索し、発見された退避可能場所に到達するまでにかかる時間又は距離を基準にして、権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を設定してもよい。例えば、権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を、自車両が退避可能場所に到達すると予測されるタイミングよりも手前に設定する。なお、走行制御部10は、地図データに記された道路形状や、車車間通信や路車間通信により取得された情報に基づいて退避可能場所を探索する。
[0043] ステップS108では、走行制御部10は、権限委譲制限の設定後における自車両の走行について第1閾値(時間又は距離)を経過したか否かを判定する。第1閾値を経過していない場合(ステップS108:NO)、走行制御部10は、ステップS108を繰返す。そして、第1閾値を経過した場合(ステップS108:YES)、走行制御部10は、ステップS110に進む。
[0044] ステップS110では、走行制御部10は、権限委譲制限の内容に基づき、自動運転を解除して手動運転に切換えることを勧告する通知を実行する。また、走行制御部10は、運転者の覚醒度に応じて覚醒動作を実行する。具体的には、走行制御部10は、権限委譲制限の内容に基づいて、何時までに自動運転が解除され手動運転に移行する必要があることを表すメッセージを、報知部28による表示又は音声出力により運転者に通知する。例えば、「あと○km以内に自動運転を解除して手動運転に切換できるように準備してください。」といったメッセージや、「あと10秒以内に自動運転を解除して手動運転に切換えてください。」といったメッセージを通知することが考えられる。
[0045] また、走行制御部10は、ステップS102で判定された状況に遭遇する手前で自車両を安全に退避させることができる退避可能場所を探索し、退避可能場所に関する情報を運転者に報知してもよい。例えば、退避可能場所を特定できた場合、「退避可能場所が見つかりました。○○までに自動運転が解除されない場合、自動的に退避可能場所に進入します。」といったメッセージを報知することが考えられる。また、退避可能場所を特定できなかった場合、例えば、「退避可能場所がありません。○○までに自動運転が解除されない場合、自動的に停止します。」といったメッセージを報知することが考えられる。
[0046] また、走行制御部10が運転者の覚醒度が低下(例えば眠気、居眠り)している状態を把握した場合、例えば、ステアリングホイールや運転座席を震動させて運転者を覚醒させる。それでも覚醒しない場合、走行制御部10は、瞬時のブレーキを一度又は複数回作動させて加振する。
[0047] ステップS112では、走行制御部10は、運転者について手動運転に移行するための受入条件が成立したか否かを判定する。具体的には、走行制御部10は、自動運転制御に基づく運転操作に対して運転者によるハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作等のオーバーライド操作が入力されたことを条件に、受入条件が成立したと判定する。あるいは、走行制御部10は、運転者から自動運転の解除指示を受付けたことを条件に、受入条件が成立したと判定する。手動運転に移行するための受入条件が成立していない場合(ステップS112:NO)、走行制御部10は、ステップS114に進む。
[0048] ステップS114では、走行制御部10は、権限委譲制限の設定後における自車両の走行について第2閾値(時間又は距離)を経過したか否かを判定する。第2閾値を経過していない場合(ステップS114:NO)、走行制御部10は、ステップS110に戻る。そして、ステップS112において手動運転に移行するための受入条件が成立したと判定された場合(ステップS112:YES)、走行制御部10は、ステップS116に進む。ステップS116では、走行制御部10は、自動運転を解除して手動運転に切換えることにより運転の権限を運転者に委譲する。ステップS116の後、走行制御部10は、本処理を終了する。
[0049] 一方、ステップS114において第2閾値を経過したと判定された場合(S114:YES)、走行制御部10は、ステップS118に進む。ステップS118では、退避可能場所が特定されている場合、走行制御部10は、自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する。または、退避可能場所が特定されなかった場合、走行制御部10は、自車両を停止させる車両停止を実施する。なお、走行制御部10は、自車両を緊急停止させる際、自車両の周囲に情報を提示する表示装置(不図示)やハザードランプを作動させ、自車両が停止することを周囲の車両に通知する。ステップS118の後、走行制御部10は、本処理を終了する。」
「[0057] 上記実施形態では、運転支援制御装置である車両走行制御システム1の走行制御部10において、非遷移的実体的記録媒体に相当するROMにプログラムが格納され、このプログラムをコンピュータのプロセッサに相当するCPUが実行することにより運転支援制御装置の各機能を実現しているが、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)にプログラムが格納され、このプログラムをCPU等のプロセッサが実行する構成でもよい。この場合、車両走行制御システム1の走行制御部10において、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムがプロセッサにより実行されることにより、このプログラムに対応する方法(例えば、運転支援制御方法)が実行される構成でもよい。
[0058] また、運転支援制御装置である車両走行制御システム1の各機能の一部又は全部を、一つあるいは複数の集積回路(すなわち、IC)等によりハードウェア的に構成してもよい。さらに、車両走行制御システム1の各部(例えば、運転支援制御装置の制御部、取得部、判断部、緊急度設定部、制限設定部、報知部、及び緊急処置部に相当する走行制御部10)は、不揮発性メモリ等の非遷移的実体的記録媒体に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、またはソフトウェアのみ、またはハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供してもよい。」
「【図1】
[図:0001419019000001.jpg]
【図2】
[図:0001419019000002.jpg]
【図3】
[図:0001419019000003.jpg]
」
2 引用文献1に記載されているといえる事項
ア 段落[0057]の「上記実施形態では、運転支援制御装置である車両走行制御システム1の走行制御部10において、非遷移的実体的記録媒体に相当するROMにプログラムが格納され、このプログラムをコンピュータのプロセッサに相当するCPUが実行することにより運転支援制御装置の各機能を実現しているが、・・・以下省略・・・」との記載によると、引用文献1には「ROMには、プログラムが格納され、このプログラムをコンピュータのプロセッサに相当するCPUが実行することにより車両走行制御システム1の各機能を実現する」との事項が記載されているといえる。
イ 段落[0048]、[0049]の「ステップS114では、走行制御部10は、権限委譲制限の設定後における自車両の走行について第2閾値(時間又は距離)を経過したか否かを判定する。第2閾値を経過していない場合(ステップS114:NO)、走行制御部10は、ステップS110に戻る。そして、ステップS112において手動運転に移行するための受入条件が成立したと判定された場合(ステップS112:YES)、走行制御部10は、ステップS116に進む。ステップS116では、走行制御部10は、自動運転を解除して手動運転に切換えることにより運転の権限を運転者に委譲する。ステップS116の後、走行制御部10は、本処理を終了する。
一方、ステップS114において第2閾値を経過したと判定された場合(S114:YES)、走行制御部10は、ステップS118に進む。ステップS118では、退避可能場所が特定されている場合、走行制御部10は、自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する。または、退避可能場所が特定されなかった場合、走行制御部10は、自車両を停止させる車両停止を実施する。なお、走行制御部10は、自車両を緊急停止させる際、自車両の周囲に情報を提示する表示装置(不図示)やハザードランプを作動させ、自車両が停止することを周囲の車両に通知する。ステップS118の後、走行制御部10は、本処理を終了する。」との記載によると、引用文献1には、「走行制御部10は、権限委譲制限の設定後における自車両の走行について第2閾値(時間又は距離)を経過したと判定され、退避可能場所が特定されている場合、自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する」との事項が記載されているといえる。
3 引用発明
上記「1 引用文献1の記載事項」で摘記した事項、及び、上記「2 引用文献1に記載されているといえる事項」から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「走行制御部10と、この走行制御部10に接続される各部によって構成されている車両走行制御システム1であって([0013])、
走行制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を中心に構成された情報処理装置であり([0014])、
走行制御部10には、カメラ(前方・後方)11、レーダ(前方・後方)12、車車間通信機13、路車間通信機14、位置検出部15、車両状態入力部16、地図データベース17、緊急度データベース18、ドライバステータスモニタ19、駆動制御部20、制動制御部21、操舵制御部22、ペダル駆動部23、ステアリングホイール駆動部24、シート駆動部25、エアコン制御部26、音響映像制御部27、報知部28が接続され([0013])、
前記ROMには、プログラムが格納され、このプログラムをコンピュータのプロセッサに相当するCPUが実行することにより車両走行制御システム1の各機能を実現しており(2 ア)、
走行制御部10は、カメラ11、レーダ12、車車間通信機13、路車間通信機14によって得られた情報に基づき、周辺車両等の他の交通や、信号、標識、道路形状、障害物といった周辺状況を、現在の自車両近辺の環境状態に関する情報として取得し、また、車車間通信機13や路車間通信機14による通信によって得られた情報に基づき、自車両が走行する予定のルート上において今後遭遇すると予測される状況を、未来の環境状態に関する情報として取得し([0037])、
走行制御部10は、自車両周辺の現在の状況、及び未来に遭遇すると予測される状況について、自動運転の継続が不可能になる異常を把握した場合、自動運転の継続が不可能になる状況と判断し、ここで、自動運転に継続が不可能になる状況としては、例えば、道路工事や事故、臨時の交通規制、渋滞、悪天候、緊急車両の接近が挙げられ([0039])、
走行制御部10は、自動運転の継続が不可能になる状況に遭遇する手前で自車両を安全に退避させることができる退避可能場所を探索し、発見された退避可能場所に到達するまでにかかる時間又は距離を基準にして、権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を設定してもよく([0042])、第1閾値は、自動運転を解除して手動運転に切換えることを運転者に対して勧告すべき時間又は距離の制限を表す値であり、第2閾値は、第1閾値に基づく勧告した後に運転者が自動運転の解除を受入れないときに、緊急退避を行うべき時間又は距離の制限を表す値であり([0025])、
上記退避可能場所の探索は、地図データに記された道路形状や、車車間通信や路車間通信により取得された情報に基づいて、走行制御部10が行うものであり([0042])、
走行制御部10は、権限委譲制限の設定後における自車両の走行について第2閾値(時間又は距離)を経過したと判定され、退避可能場所が特定されている場合、自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する(2 イ)、
車両走行制御システム1。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)「システムであって、1つ以上のプロセッサと、実行可能命令が内部に記憶された1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを備え、」について
ア 引用発明の車両走行制御システム1を構成している走行制御部10は「CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を中心に構成された情報処理装置であり」、「前記ROMには、プログラムが格納され、このプログラムをコンピュータのプロセッサに相当するCPUが実行することにより車両走行制御システム1の各機能を実現して」いるのであるから、引用発明の「CPU(Central Processing Unit)」、「プログラム」、「ROM」は、それぞれ本願発明の「1つ以上のプロセッサ」、「実行可能命令」、「実行可能命令が内部に記憶された1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体」に相当する。
イ 引用発明の「車両走行制御システム1」は、その表記とおり「システム」と称し得るものである。
(2)「前記実行可能命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行された結果として、コンピュータシステムに、少なくとも、」について
引用発明においては、「走行制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を中心に構成された情報処理装置」であるので、引用発明の「走行制御部10」は、本願発明の「コンピュータシステム」に相当する。
また、引用発明においては、「前記ROMには、プログラムが格納され、このプログラムをコンピュータのプロセッサに相当するCPUが実行することにより車両走行制御システム1の各機能を実現」しているのであるから、引用発明においても、本願発明と同様に「(本願発明の「実行可能命令」に相当する)プログラムは、コンピュータのプロセッサに相当するCPUによって実行される」ことにより、その結果として、後述する(3)から(6)の事項を行っているといえる。
(3)「デバイスに関連付けられたセンサからセンサデータを受信することと、」について
ア 本願明細書の段落【0052】の「プロセス800を実行するシステムは、動作802において、目的地までの環境を通行する自律車両のセンサからセンサデータの少なくとも一部分を受信し得る。すなわち、制限された速度で動作している間に、デバイス(たとえば、自律車両)からのデータ及び/またはそれに由来するデータを受信し、複数のセンサデータは、目的地に向かう途中のデバイスの環境の状態を反映する。さまざまな例では、デバイスは、図2に関連して説明された自律車両202などの、自律車両のような自律デバイスであり得る。・・・以下省略・・・」等の記載を参酌すると、本願発明の「デバイス」には「自律車両」が含まれている。
そうすると、引用発明の「自車両」は、本願発明の「デバイス」に相当する。
イ 本願明細書の段落【0065】の「カメラサブシステム906は、画像セグメント化及び/または分類のために視覚データを捕捉するための、1つ以上のカメラセンサを含むか、またはそれにインターフェースし得る。カメラサブシステム906は、任意の数及びタイプのカメラセンサを含み得る。・・・以下省略・・・」との記載、段落【0066】の「レーダーサブシステム908は、環境内のオブジェクトの範囲、角度、及び/または速度を捕捉するための1つ以上のレーダーセンサを含み得る。・・・以下省略・・・」との記載等によると、本願発明の「センサ」には「カメラセンサ」や「レーダーセンサ」が含まれている。
そうすると、引用発明の「カメラ(前方・後方)11、レーダ(前方・後方)12」は、本願発明の「センサ」に相当する。
ウ 引用発明においては、「走行制御部10は、カメラ11、レーダ12、車車間通信機13、路車間通信機14によって得られた情報に基づき、周辺車両等の他の交通や、信号、標識、道路形状、障害物といった周辺状況を、現在の自車両近辺の環境状態に関する情報として取得し、また、車車間通信機13や路車間通信機14による通信によって得られた情報に基づき、自車両が走行する予定のルート上において今後遭遇すると予測される状況を、未来の環境状態に関する情報として取得」しているのであるから、引用発明の「走行制御部10」は「カメラ11、レーダ12、・・・途中省略・・・によって得られた情報を受信」しているといえる。
エ 上記「ア」から「ウ」で言及した事項を踏まえると、引用発明の「走行制御部10」は、本願発明の「(コンピュータシステムが実行する)デバイスに関連付けられたセンサからセンサデータを受信すること」との事項を実行しているといえる。
(4)「前記センサデータに少なくとも部分的に基づいて、ガイダンスを取得するための条件のセットの成立を判定することと、」について
ア 本願明細書の【請求項3】の「前記条件のセットの前記成立を判定することが、前記デバイスが現在位置にある時間量が、閾値時間量を満たすかかまたは超えることを判定すること、または緊急車両の存在を判定することのうちの1つ以上を含む、請求項1または請求項2に記載のシステム。」との記載や段落【0042】の「・・・途中省略・・・別の例では、システムは、センサデータを通じて、自律車両が特定の時間量(または時間制限、閾値)を経過して移動せず、現在の位置に滞留していることを検出し、このように、自律車両が滞留している位置にいることを示し得る。例を続けると、システムは、自律車両が滞留していることを検出した結果として、1つ以上の条件の成立が識別され、その後、ガイダンスを求めるように制御センタに求めるか、または要求を行う。ガイダンスを取得することによって、自律車両は、そのガイダンスを使用してバレーボールの周りをナビゲートし得る。少なくともいくつかの例では、車両は、緊急車両、第一応答者車両などの存在を判定することに少なくとも部分的に基づいて、ガイダンス/命令を求めることを決定し得る。」との記載等によると、本願発明の「条件のセットの成立を判定すること」には「デバイスが現在位置にある時間量が、閾値時間量を満たすかかまたは超えること」(いわゆる、「渋滞」)や「緊急車両の存在」が含まれている。
そうすると、引用発明の「走行制御部10」が行う「自車両周辺の現在の状況、及び未来に遭遇すると予測される状況について、自動運転の継続が不可能になる異常を把握した場合、自動運転の継続が不可能になる状況と判断し、ここで、自動運転に継続が不可能になる状況としては、例えば、道路工事や事故、臨時の交通規制、渋滞、悪天候、緊急車両の接近が挙げられ」るところの「渋滞や緊急車両の接近が自動運転の継続が不可能になる状況と判断する」との事項は、本願発明の「条件のセットの前記成立を判定すること」に相当する。
また、上記「渋滞や緊急車両の接近が自動運転の継続が不可能になる状況と判断する」との事項は、「自車両周辺の現在の状況、及び未来に遭遇すると予測される状況について、自動運転の継続が不可能になる異常を把握した場合、自動運転の継続が不可能になる状況と判断」するのであり、当該「自車両周辺の現在の状況」は、上記「(3)イ、ウ」で言及したように「(本願発明の「センサ」に相当する)カメラ11、レーダ12、・・・途中省略・・・によって得られた情報」である。
そうすると、上記「渋滞や緊急車両の接近が自動運転の継続が不可能になる状況と判断する」との事項は、「カメラ11、レーダ12、・・・途中省略・・・によって得られた情報」に基づいて行われているといえる。
イ 本願明細書の段落【0015】の「・・・途中省略・・・例では、命令/ガイダンスは、低速または特定の速度で4輪ステアリングを使用して命令/ガイダンスを実行するために、自律車両106に提供される。言い換えれば、制御センタ102は、自律車両106が特定の速度以下で動作または実行するように、自律車両106の制限された制御を用いて命令/ガイダンスを発行する。一例では、自律車両106は、時速5マイル以下の速度で命令/ガイダンスを実行し、その後停止して、目的地に前進するか、または制御センタ102にさらなるガイダンスを求めるかのいずれかを行ってもよい。いくつかの例では、制御センタ102は、コマンドセンタ、遠隔操作センタ、または中央コマンドと呼ばれることがある。」との記載等を参酌すると、本願発明の「ガイダンス」とは、いわゆる“自律車両の動作を制御するための制御・指示情報”と解される。
ここで、引用発明においては、「走行制御部10」が「自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する」に際しての前提として、上記「渋滞や緊急車両の接近が自動運転の継続が不可能になる状況と判断する」のであるから、当該「判断」は「緊急退避走行を実施するための制御・指示情報を取得するために行われるもの」であることは自明である。
ウ 上記「ア」及び「イ」で言及した事項を踏まえると、引用発明の「走行制御部10」は、本願発明の「前記センサデータに少なくとも部分的に基づいて、ガイダンスを取得するための条件のセットの成立を判定すること」との事項を実行しているといえる。
(5)「前記条件のセットの成立を検出した結果として、中間位置にナビゲートするための命令を取得することであって、前記命令が、前記デバイスに対する所望の方位または所望の位置のうちの1つ以上の指示を含む、前記取得することと、」について
ア 引用発明の「走行制御部10」は「自車両周辺の現在の状況、及び未来に遭遇すると予測される状況について、自動運転の継続が不可能になる異常を把握した場合、自動運転の継続が不可能になる状況と判断し」、「自動運転の継続が不可能になる状況に遭遇する手前で自車両を安全に退避させることができる退避可能場所を探索し、発見された退避可能場所に到達するまでにかかる時間又は距離を基準にして、権限委譲制限の第1閾値及び第2閾値を設定」し、「権限委譲制限の設定後における自車両の走行について第2閾値(時間又は距離)を経過したと判定され、退避可能場所が特定されている場合、自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する」ものであり、上記「退避可能場所」は「自動運転の継続が不可能になる状況に遭遇する手前で自車両を安全に退避させることができる(場所)」であり、最終目的場所までの経路の途中に位置する場所であることは明らかであるから、本願発明の「中間位置」に相当する。
イ 上記「(4)イ」でも言及したように、引用発明の「走行制御部10」は、「自車両を退避可能場所に自動的に進入させる緊急退避走行を実施する」のであるから、そのために生成された「緊急退避走行を実施するための制御・指示情報」を緊急退避走行を実施する前に取得していることは明らかである。そして、当該「緊急退避走行を実施するための制御・指示情報」は、本願発明の「(中間位置に)ナビゲートするための命令」に相当する。
ウ 引用発明の「退避可能場所」は「地図データに記された道路形状や、車車間通信や路車間通信により取得された情報に基づいて、走行制御部10が探索を行う」ものであるから、自車両を退避可能場所へ自動的に進入させるためには、「退避可能場所に関する方位や位置の情報」は必要不可欠であり、当該「退避可能場所に関する方位や位置の情報」は、本願発明の「所望の方位または所望の位置」に相当する。
してみると、上記「イ」で言及した「緊急退避走行を実施するための制御・指示情報」には、「退避可能場所に関する方位や位置の情報」が含まれていることは明らかである。
エ 上記「ア」から「ウ」で言及した事項を踏まえると、引用発明の「走行制御部10」は、本願発明の「前記条件のセットの成立を検出した結果として、中間位置にナビゲートするための命令を取得することであって、前記命令が、前記デバイスに対する所望の方位または所望の位置のうちの1つ以上の指示を含む、前記取得すること」との事項を実行しているといえる。
(6)「前記デバイスに前記命令を実行させることと、」について
上記「(5)」で言及したように、引用発明において、「自車両」は「緊急退避走行を実施するための制御・指示情報」を実行して「緊急退避走行」を行っているのであるから、引用発明の「走行制御部10」は、本願発明の「前記デバイスに前記命令を実行させること」との事項を実行しているといえる。
(7)「システム」について
上記「(1)」から「(6)」で言及したとおり、引用発明の「車両走行制御システム1」は、本願発明を構成する全ての発明特定事項を備えているので、本願発明の「システム」に相当する。
2 判断
上記「1 対比」で言及したとおり、本願発明を構成している発明特定事項の全てを引用発明は備えているので、本願発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項との間に差異はない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 審判請求書での請求人の主張について
審判請求人は、令和5年12月28日に提出された審判請求書において、拒絶査定の理由である特許法第29条第1項第3号の拒絶理由について、「上記補正により、本願発明は、「前記自律車両の現在位置のある半径内にある中間目的地まで前記自律車両をナビゲートする命令を含む前記要求に対する応答を受信することであって、前記命令はさらに、前記中間目的地における前記自律車両に関連する方位を示すことと、前記自律車両に前記中間目的地まで前記環境を通行させ、前記中間目的地で前記方位に整列させるように前記命令を処理すること」を有する点で、引用発明と相違するものとなった。これにより、特許法第29条第1項第3号に係る拒絶理由は解消した。」と主張している。
しかしながら、上記主張は、令和5年12月28日に提出された手続補正書により補正された補正事項に基づく主張であり、当該補正事項を含む補正は、上記「第2 令和 5年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」で言及したとおり却下されたから、審判請求人の主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明や原査定の他の拒絶の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-022316