審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2017-014736

結腸内視鏡検査用圧縮装置

審判番号
2017-014736
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-551248外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年10月04日
審決日
2018年08月27日
公報発行日
2019年03月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-551248「結腸内視鏡検査用圧縮装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日国際公開、WO2013/103472、平成27年 2月 2日国内公表、特表2015-503419〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)12月7日(パリ条約による優先権主張 2012年1月6日  米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年10月26日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月1日付けで拒絶査定されたところ、同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 さらに、平成30年1月15日付けで前置報告がなされ、同年4月12日に上申書が提出されたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正後の請求項1に係る発明(下線は補正箇所を示す。) 本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、 「 【請求項1】 患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にするために患者の腹部に一定の圧力を加える、ネオプレン製の結腸内視鏡検査用圧縮装置であって、 張力の保持が可能で患者の尻部と臍部の間に延設され、ネオプレンから構成される弾性材料からなり、任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられる細長い帯具と、 前記細長い帯具の一端と該帯具の他の部分を所望の大きさの張力の下で結合するために、該帯具の少なくとも前記一端に接続し、該帯具を患者の腹部周りに配設するときに該帯具を結合させるように作用する締結具とを備え、 選択した大きさを有する一定の圧力および支持が前記細長い帯具の締め付けを通じて患者の腹部に加わることにより、患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にする、 ことを特徴とする結腸内視鏡検査用圧縮装置。」 と補正された。 なお、「ネオプレン」は登録商標であって、一般的には、クロロプレンゴムと称されるゴム材料を示すものと認める。 本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ネオプレンから構成される弾性材料からなる細長い帯具」について、「任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられ」るとの構成を付加して、「ネオプレンから構成される弾性材料からなる細長い帯具」を限定しものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物及びその記載事項 (1)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許第5685321号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1-ア)「FIELD OF THE INVENTION The present invention relates to an apparatus for facilitating colonoscopy procedures and, in particular, to a medical device for supporting the colon during a colonoscopy by compressing the patient's abdomen and, thus, the underlying colon, particularly the sigmoid colon. BACKGROUND OF THE INVENTION ・・・ Applying pressure to the abdomen helps advance the tip of the elongate member by discouraging the colon from distending as the scope is advanced, either due to direct pressure on the colon or indirect pressure from the organs surrounding the colon.」(第1欄4行~50行)「当審訳:発明の分野 本発明は、結腸内視鏡検査の処理を容易にするための装置であり、患者の腹部を圧迫することによって、結腸内視鏡検査中に下部結腸、特にS状結腸のような結腸を支持するための医療装置である。 発明の背景 ・・・ 腹部に圧力をかけることが、結腸にかかる直接的な圧力または結腸の周りの器官からの間接的な圧力で、結腸内視鏡が進むにつれ結腸が膨張するのを抑え、その長尺部分の先端を前進させるのを助ける。」 (1-イ)「Referring now to FIG. 2, a therapeutic device 100 for supporting and compressing a patient's colon during a colonoscopy includes a wrap 102 adapted for embracing the patient's abdomen, a closing mechanism 104 coupled to opposite ends of the wrap, and an inflatable bladder 106 associated with the wrap 102. The wrap 102 defines a palpation aperture 108.」(第3欄18行~24行)「当審訳:ここで図2を参照すると、結腸内視鏡検査の間に患者の結腸を支持し圧迫するための治療装置100は、患者の腹部を取り囲むために適合されたラップ102と、ラップの対向する端部に取り付けられた閉鎖機構104、およびラップ102に取り付けられた膨張可能な袋106を備えている。ラップ102は、触診アパーチャ108を規定する。」 (1-ウ)「Since the wrap 102 is intended to provide some degree of support to the patient's abdomen during the colonoscopy, it is preferred that the wrap 102 be constructed of somewhat inelastic material, such as nylon, cotton, or polyester. Alternatively, the wrap 102 may be constructed from a stiff elastomeric material, such as rubber.」(第3欄29行~34行)「当審訳:ラップ102は、結腸内視鏡検査の間、患者の腹部にある程度の支持を提供するように意図されているので、ラップ102はナイロン、綿、又はポリエステルのようなやや非弾性の材料で作られることが好ましい。代替的に、ラップ102は、ゴムのような硬いエラストマー材料から構成されてもよい。」 (1-エ)「A closing mechanism 104 is coupled to opposite ends 110, 112 of the wrap 102 in order to secure the wrap 102 around the patient's abdomen. Since the desired size of the wrap 102 will vary from patient to patient, it is preferred to provide a closing mechanism 104 which allows the length of the wrap 102 to be adjusted. For example, the closing mechanism 104 may include one or more buckles associated with one or more straps that allow the belt to be shortened or lengthened depending upon the circumference of the patient's abdomen. An acceptable closing mechanism 104 comprises a hook and loop closing mechanism, i.e. the VELCRO brand system. The hook-type fastening member may be coupled at one end 110 of the wrap 102, while the loop-type fastening members are coupled to the other end 112 of the wrap 102 on a side which is opposite the side of the wrap 102 to which the hook-type fasteners are coupled. Whatever closing mechanism 104 is provided, it should be strong enough to secure the opposite ends of the wrap 102 to each other when the wrap 102 is secured snugly around the patient's abdomen.」(第3欄41行~60行)「当審訳:患者の腹部の周りにラップ102を締め付けるために、閉鎖機構104は、ラップ102の対向する端部110、112に取り付けられている。ラップ102の所望の寸法は、患者ごとに変化するため、ラップ102の長さを調整することができる閉鎖機構104を設けることが好ましい。例えば、閉鎖機構104は、ベルトが患者の腹部周長に応じて短縮又は延長することができるようにする1つ以上のストラップに接続された一つ以上のバックルを含んでもよい。許容可能な閉鎖機構104は、フックおよびループ機構、すなわち、VELCROブランドのシステムを含む。フック型固定部材は、ラップ102の一方の端部110に取り付けられてもよく、一方、ループ型固定部材は、フック型固定部材が取り付けられたラップ102の面と反対側の面であるラップ102の他端112に取り付けられている。どのような閉鎖機構104も、ラップ102が、患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられている場合には、ラップ102の対向する端部を互いに固定するのに十分強力でなければならない。」 (1-オ)「The inflatable bladder 106 is coupled to the wrap 102 at a location which places the inflatable bladder 106 over the area of the patient's abdomen that is to be compressed. 」(第3欄61行~63行)「当審訳:膨張可能な袋106が、圧迫すべき患者の腹部の領域に亘って膨張可能な袋106を設置する位置でラップ102に取り付けられている。」 (1-カ)「Alternatively, bladder 106 may be coupled to the wrap 102 using a hook and loop fastening mechanism, which allows the bladder to be repositioned to accommodate the differing physiques of individual patients.」(第4欄11行~14行)「当審訳:あるいは、膨張可能な袋106は、フックおよびループ機構を用いてラップ102に取り付けることができ、それによって、袋を個々の患者の異なる体型に適合するように再配置することを許容する。」 (2)引用発明 上記(1-ア)~(1-カ)の記載を踏まえれば、上記引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「結腸内視鏡検査の処置を容易にするための装置であり、患者の腹部を圧迫することによって、結腸内視鏡検査中に下部結腸、特にS状結腸のような結腸を支持するための医療装置であって、 患者の腹部にかける圧力が、結腸内視鏡の長尺部分の先端を前進させるのを助けるもので、 患者の腹部を取り囲むために適合されたラップ102と、ラップの対向する端部に取り付けられた閉鎖機構104、およびラップ102に取り付けられた膨張可能な袋106を備えており、 ラップ102はゴムで作られ、 閉鎖機構104は、 ラップ102の長さを調整することができるフックおよびループ機構であって、ラップ102の対向する端部110、112に取り付けられており、 ラップ102が患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられている場合には、ラップ102の対向する端部を互いに固定するのに十分強力であり、 膨張可能な袋106は、圧迫すべき患者の腹部の領域に亘って、それを設置する位置でフックおよびループ機構を用いてラップ102に取り付けることができる、 医療装置 」(以下、「引用発明」という。) 3 対比・判断 (1)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 ア 補正発明の細長い帯具について ア-1 引用発明の「ラップ102」は、「患者の腹部を取り囲むために適合された」ものであるから、患者の尻部と臍部の間を取り囲むために適合された細長いものといえる。 そうすると、引用発明の「患者の腹部を取り囲むために適合されたラップ102」は、補正発明の「患者の尻部と臍部の間に延設され」る「細長い帯具」に相当する。 アー2 引用発明の「ラップ102はゴムで作られ」ており、「ゴム」は弾性材料であって、「ラップ102が患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられている」ので、「ラップ102」は張力の保持が可能なものである。 そして、補正発明の「ネオプレン」(クロロプレンゴム)はゴムの一種である。 そうすると、引用発明の「患者の腹部を取り囲むために適合され」「患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられている」「ゴムで作られ」た「ラップ102」と、 補正発明の「張力の保持が可能で患者の尻部と臍部の間に延設され、ネオプレンから構成される弾性材料からなり、任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられる細長い帯具」とは、 「張力の保持が可能で患者の尻部と臍部の間に延設され、ゴムから構成される弾性材料からなる細長い帯具」の点で共通する。 イ 補正発明の締結具について 引用発明の「閉鎖機構104」は、「ラップ102の長さを調整することができ」「ラップ102が患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられ」るように「ラップ102の対向する端部を互いに固定するのに十分強力」なものであることは、補正発明の「前記細長い帯具の一端と該帯具の他の部分を所望の大きさの張力の下で結合」していることに相当する。 してみれば、引用発明の「ラップ102の長さを調整することができるフックおよびループ機構であって、ラップ102の対向する端部110、112に取り付けられており、ラップ102が患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられている場合には、ラップ102の対向する端部を互いに固定するのに十分強力であ」る「閉鎖機構104」は、補正発明の「前記細長い帯具の一端と該帯具の他の部分を所望の大きさの張力の下で結合するために、該帯具の少なくとも前記一端に接続し、該帯具を患者の腹部周りに配設するときに該帯具を結合させるように作用する締結具」に相当する。 ウ 補正発明の結腸内視鏡検査用圧縮装置について ウ-1 引用発明の「結腸内視鏡検査の処置を容易にするための装置であり、患者の腹部を圧迫することによって、結腸内視鏡検査中に下部結腸、特にS状結腸のような結腸を支持するための医療装置」において、「S状結腸」とは患者の結腸における屈曲部があるところであり、それを「支持」して「結腸内視鏡の長尺部分の先端を前進させる」ことは、補正発明の「患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にする」ことに相当する。 してみれば、「結腸内視鏡検査の処置を容易にするための装置であり、患者の腹部を圧迫することによって、結腸内視鏡検査中に下部結腸、特にS状結腸のような結腸を支持するための医療装置」と、 補正発明の「患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にするために患者の腹部に一定の圧力を加える、ネオプレン製の結腸内視鏡検査用圧縮装置」とは、 「患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にするために患者の腹部に一定の圧力を加える、ゴム製の結腸内視鏡検査用圧縮装置」で共通する。 ウ-2 補正発明の「選択した大きさを有する・・・圧力」の原文は「a selected degree of pressure」であるので、「大きさ」は「圧力」の程度を意味すると認められる。 一方、引用発明の「医療装置」は、「ラップ102が患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられ」「患者の腹部を圧迫することによって、結腸内視鏡検査中に下部結腸、特にS状結腸のような結腸を支持する」ものであり、「閉鎖機構104」によって「ラップ102の長さを調整することができる」ものであるから、ラップ102の長さを調整することで、締め付ける際に選択した大きさを有する一定の圧力が加わっているといえる。 上記ウー1での対比も考慮すると、引用発明の「ラップ102が患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられ」「患者の腹部を圧迫することによって、結腸内視鏡検査中に下部結腸、特にS状結腸のような結腸を支持する」ものであり、「閉鎖機構104」によって「ラップ102の長さを調整することができる」「医療装置」は、補正発明の「選択した大きさを有する一定の圧力および支持が前記細長い帯具の締め付けを通じて患者の腹部に加わることにより、患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にする」「結腸内視鏡検査用圧縮装置」に相当する。 カ そうすると、両者は、 (一致点) 「患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にするために患者の腹部に一定の圧力を加える、ゴム製の結腸内視鏡検査用圧縮装置であって、 張力の保持が可能で患者の尻部と臍部の間に延設され、ゴムから構成される弾性材料からなる細長い帯具と 前記細長い帯具の一端と該帯具の他の部分を所望の大きさの張力の下で結合するために、該帯具の少なくとも前記一端に接続し、該帯具を患者の腹部周りに配設するときに該帯具を結合させるように作用する締結具とを備え、 選択した大きさを有する一定の圧力および支持が前記細長い帯具の締め付けを通じて患者の腹部に加わることにより、患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にする、 結腸内視鏡検査用圧縮装置。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) ゴムについて、補正発明は、「ネオプレン」(クロロプレンゴム)であるのに対して、引用発明は、そのような特定をしていない点。 (相違点2) 帯具について、補正発明は「任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられる」ものであるが、引用発明では、そのような特定がされていない点。 (2)判断 ア 相違点についての検討 (ア)相違点1について ネオプレン(クロロプレンゴム)は、本願優先日前にゴムとして幅広く用いられているものであり、例えばウェットスーツ等に用いられているように、人に接触する部分にも使用されていることから、「患者の腹部を取り囲むために適合されたラップ102」を「作」る「ゴム」として、ネオプレン(クロロプレンゴム)を適用することは当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点2について 補正発明の「任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられる」との事項は「帯具」が手で患者の腹部に圧力を加えられる程度の弾性を有することを特定したものである。 これに対して、引用発明の「ラップ102」が「患者の腹部のまわりにぴったりと締め付けられ」るような「ゴムで作られ」ている以上、その「任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられる」ものであるといえるから、相違点2は実質的な相違点とはならない。 イ 補正発明の効果について 本願明細書では、 「【発明の効果】 【0016】 この発明によれば、結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の進行を容易にすることができる。」と記載されているが、引用発明も摘記(1-ア)に記載されているとおり、結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の進行を容易にするものであるから、補正発明の効果は格別顕著なものとはいえない。 また、補正発明において、弾性材料からなる細長い帯具を「ネオプレン」で構成することについては、「一実施の形態では、前記材料は、伸縮性繊維と縫い合わせられた、薄手の、編組み式の弾性を有するナイロン製帯具によって形成される。また、代替の実施の形態では、前記材料は、軟質の気泡状ゴムもしくはネオプレン、弾性特性を有する既製品の生地、または、可撓性を有する合成プラスチックもしくはビニル樹脂であってもよい。」(【0012】)、「また、ナイロン製の代わりに、他の適切な弾性材料を使用して、上記巻付け具または帯具を形成してもよい。適切な代替材料は、軟質の気泡状ゴムもしくはネオプレン、弾性特性を有する既製品の生地、または、可撓性を有する合成プラスチックもしくはビニル樹脂を含む。」(【0028】)と記載されるのみであり、本願明細書からは他の弾性材料に比してネオプレン(クロロプレンゴム)を用いたことによる格別の効果があるとはいえない。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人の主張 請求人は、審判請求書の請求の理由で、 「このように、引用文献1に記載の発明から、ラップ102にネオプレンなどの弾性材料を適用する動機付けは得られません。」と主張し、そして、ネオプレン(クロロプレンゴム)を適用した場合の特徴を、 「(特徴1) まず、ネオプレンは低弾性率であるため、帯具を患者の腹部に巻き付ける際に、帯具を容易に伸ばすことできます。・・・。 (特徴2) ネオプレンの弾性率によれば、患者が動いた場合でも帯具によって加えられる圧力が著しく変化しません。・・・。 (特徴3) ネオプレンの弾性率によれば、帯具の厚みを厚くしても、医師や検査技師が手動で帯具を伸ばすことができる程度の収縮力を維持することができます。・・・。 具体的には、ネオプレンの弾性率は、約3.0mmの厚みで約0.4MPaですが、引用文献1に適用可能な「非弾性」かつ「剛性」を有するエラストマー材料、例えば、ポリエステル40%、天然ゴム60%の弾性材料では、1.13mmの厚みで約0.293MPaの弾性率となり、厚みを約3.0mmにするとその弾性率は約0.78MPaまで上昇します。・・・。 (特徴4) また、ネオプレンは、他の一般的な弾性材料に比べて保温性に優れています。・・・。 (特徴5) ネオプレンには、様々な機能を有する布や織物を積層することができます。・・・。」と説明している。 また、平成30年4月12日付け上申書では、 「すなわち、引用文献1に記載の発明は、非弾性で剛性を有するラップ102によって嚢106を保持することにより、ラップ102が嚢106の膨らみによって変形して患者の腹部への押圧力が弱くなるのを防いでいます。したがって、引用文献1の「ラップ102を、張力を保持できる程度の硬さを有するゴムなどの弾性材料とする」という記載は、あくまでも、嚢106の膨らみによって変形しない硬さの弾性材料を示すものであり、本願発明のように、細長い帯具の任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられるような、柔軟性を有する弾性材料を意図するものではありません。」 「このように、引用文献1に記載の発明は、ラップ102で患者の腹部を押圧するのではなく、予め位置が定められた嚢106によって腹部を局部的に押圧するものです。これに対して、本願発明は、細長い帯具全体を収縮させて患者の腹部を全周から押圧するとともに、必要時には、帯具の任意の部位を介してさらに強い力で患者の腹部を押圧できるようにするものです。このように、引用文献1に記載の発明と、本願発明とでは、技術的思想が全く異なります。」と主張している。 (イ)請求人の主張に対する当審の判断 上記主張に対する当審の判断を、以下の5点としてまとめて述べる。 a 「このように、引用文献1に記載の発明から、ラップ102にネオプレンなどの弾性材料を適用する動機付けは得られません。」との主張について 引用発明は「ラップ102はゴムで作られ」たものであって、ゴムは弾性材料であるから、引用発明に弾性材料を適用する必要はない。すると、「ラップ102にネオプレンなどの弾性材料を適用する動機付けは得られません。」という主張自体が失当である。 その結果、(特徴1~5)の主張については、ゴムを用いたことによる効果の主張ではなく、ゴムの中で特にネオプレン(クロロプレンゴム)を用いたことの効果の主張でないと、進歩性の存否の根拠となり得ないことは明らかである。 b (特徴1~3)について ネオプレン(クロロプレンゴム)を用いたことの効果の主張ではなく、弾性率による効果を主張するものである。すなわち、ネオプレン(クロロプレンゴム)でなくとも、同じあるいは類似の弾性率を有する他のゴムでも奏し得る効果を主張するものである。 すると、ネオプレン(クロロプレンゴム)の弾性率を示し、他のゴムの弾性率がネオプレン(クロロプレンゴム)の弾性率と明らかに異なることを示さなければ、ネオプレン(クロロプレンゴム)を用いたことによる効果が、他のゴムを用いた効果と相違することを示す根拠とならない。 しかしながら、他のゴムとして、上記(ア)で摘記した審判請求書の(特徴点3)として、「ポリエステル40%、天然ゴム60%」が一例として示されているものの、ゴム材料には多くの種類があるから、ネオプレン(クロロプレンゴム)の弾性率が他のゴムの弾性率とどのように異なり、それによりどのように作用が異なるかが具体的に説明されているとはいえないから、主張の根拠、理由が不明であって、採用できない。 特に(特徴3)の主張について、請求人は、引用文献1に適用可能なエラストマー材料として、ポリエステル40%、天然ゴム60%の弾性材料を例示しているが、そのようなものは引用文献1には記載されておらず、引用発明のゴムとして「ポリエステル40%、天然ゴム60%」のみが適用されるのではなく、ネオプレン(クロロプレンゴム)を含む他の各種のゴム材料が適用され得るものである。また、「ネオプレンの弾性率は、約3.0mmの厚みで約0.4MPa」、「ポリエステル40%、天然ゴム60%の弾性材料では、1.13mmの厚みで約0.293MPaの弾性率となり、厚みを約3.0mmにするとその弾性率は約0.78MPaまで上昇」との主張は、弾性率は物質固有の値であり、厚みによって変わるものではないから、当該主張は技術的に適切なものではない。 c (特徴4)について ネオプレンは、他の一般的な弾性材料に比べて保温性に優れているとの主張は、ネオプレン(クロロプレンゴム)の保温性を示すデータさえも示されていないので、主張の根拠がない。 さらに、結腸内視鏡検査は、患者の周囲温度が低い中で行われるものでもないから、仮に保温性に優れるとしても、格別顕著な効果であるとはいえない。 d (特徴5)について 他のゴム材料でも様々な機能を有する布や織物を積層できるから、ゴムの中で特にネオプレン(クロロプレンゴム)を用いたことの効果の主張とはいえない。 すると、他のゴムを用いた効果と相違するとの主張の根拠とならないから、格別顕著な効果であるとはいえない。 e 上申書での主張について 上申書での主張は「引用文献1に記載の発明は、非弾性で剛性を有するラップ102」を備えることを前提にした主張であるが、「非弾性で剛性を有するラップ102」が引用文献1の「ラップ102はナイロン、綿、又はポリエステルのようなやや非弾性の材料で作られることが好ましい。」に基づくものであれば、これに対して、「代替的に、ラップ102は、ゴムのような硬いエラストマー材料から構成されてもよい」のであるから、この主張は、引用文献1の誤認に基づくものであって、採用できない。 なお、引用文献1の記載は「somewhat elastic」(やや弾性である)ではなく、「somewhat inelastic」(やや非弾性である)であるから、「非弾性で」という主張も引用文献1の誤認に基づくものである。 f まとめ 以上のとおり、審判請求書の請求の理由、平成30年4月12日付け上申書の主張によっては、上記ア、イで述べた判断を覆すことはできない。 エ 小括 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 4 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、平成29年1月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。 「【請求項1】 患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にするために患者の腹部に一定の圧力を加える、ネオプレン製の結腸内視鏡検査用圧縮装置であって、 張力の保持が可能で患者の尻部と臍部の間に延設され、ネオプレンから構成される弾性材料からなる細長い帯具と、 前記細長い帯具の一端と該帯具の他の部分を所望の大きさの張力の下で結合するために、該帯具の少なくとも前記一端に接続し、該帯具を患者の腹部周りに配設するときに該帯具を結合させるように作用する締結具とを備え、 選択した大きさを有する一定の圧力および支持が前記細長い帯具の締め付けを通じて患者の腹部に加わることにより、患者の結腸における屈曲部を小さくして結腸内視鏡検査中の結腸内視鏡の通過を容易にする、ことを特徴とする結腸内視鏡検査用圧縮装置。」(以下、「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明については、本願の優先権主張日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 ・請求項1 ・引用文献等 1 引用文献1.米国特許第5685321号明細書 具体的には、請求項1に係る発明について、引用文献1に記載された発明とネオプレンが周知(周知技術)であることから、当業者が容易になし得たこととしている。 3 引用刊行物及びその記載事項 本願の優先権主張日前に頒布された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。 4 当審の判断 補正発明は、本願発明の「ネオプレンから構成される弾性材料からなる細長い帯具」について、「任意の部位を介して手で患者の腹部に圧力を加えられ」るとの構成を付加して、「ネオプレンから構成される弾性材料からなる細長い帯具」を限定しものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明が、上記「第2[理由] 3」において検討したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2017-014736

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2025-011631拒絶査定不服審判 / 2026-06-22 / 請求不成立超音波トランスデューサ、超音波探触子、超音波診断装置および超音波トランスデューサ…
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-013876拒絶査定不服審判 / 2026-05-19 / 請求不成立医用画像表示装置、医用画像表示方法および医用画像表示プログラム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-001681拒絶査定不服審判 / 2026-01-07 / 請求不成立移動型放射線撮影装置、プログラム、方法、制御装置及び放射線撮影システム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-002352拒絶査定不服審判 / 2025-12-03 / 請求不成立医療用レーザー装置及びシステム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-001781拒絶査定不服審判 / 2025-11-11 / 請求不成立咀嚼指導システム、咀嚼指導プログラム、及び咀嚼指導方法
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,964件(121・A61B、575・A61B)
  • 2025-012702拒絶査定不服審判 / 2026-07-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)眼科診断デバイスのための測定の患者誘導トリガ
    共通の審決分類: 121・A61B、575・A61B
  • 2024-018922拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 請求不成立推定装置、推定方法、プログラム
    共通の審決分類: 121・A61B、575・A61B
  • 2025-011631拒絶査定不服審判 / 2026-06-22 / 請求不成立超音波トランスデューサ、超音波探触子、超音波診断装置および超音波トランスデューサ…
    共通の審決分類: 121・A61B、575・A61B
  • 2025-013876拒絶査定不服審判 / 2026-05-19 / 請求不成立医用画像表示装置、医用画像表示方法および医用画像表示プログラム
    共通の審決分類: 121・A61B、575・A61B
  • 2025-003933拒絶査定不服審判 / 2026-02-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)超音波診断装置
    共通の審決分類: 121・A61B、575・A61B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存