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特許拒絶査定不服審判

2017-012647

米の精白

審判番号
2017-012647
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-134604外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年08月25日
審決日
2018年08月21日
公報発行日
2019年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-134604「米の精白」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月26日出願公開、特開2015-211971〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2010年9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年9月25日 (GB)英国)を国際出願日とする特願2012-530334号(以下「原出願」という。)の一部を、平成27年7月3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年5月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成28年11月30日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成29年4月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年8月25日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年8月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 (なお、平成29年8月25日の手続補正は、審判請求書でも「同時に提出した手続補正書による補正は、補正前の請求項21を削除するもの」と説明されているとおり、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし21のうちの請求項21を削除するものであり、請求項1ないし20は補正されていない。) 「 【請求項1】 米を精白するための方法であって: 玄米を、水と、糖または糖アルコールを包含するその誘導体、および塩化ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む添加物とを含む湿潤剤で湿潤させる工程;および 前記湿潤させた玄米を前記湿潤させる工程後に機械的に精白する工程 を含み、 前記湿潤剤は、前記玄米に2重量%未満の量で加えられる、方法。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下のとおりのものである。 1 この出願の請求項21に係る発明は、原出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1又は2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 この出願の請求項1ないし5、7ないし20に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2又は3に記載された発明に基づいて、また請求項6に係る発明は下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開昭58-175456号公報 引用文献2:特公昭46-13662号公報 引用文献3:特開2001-78687号公報 引用文献4:特公昭48-20308号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された、優先日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開昭58-175456号公報)には、以下の事項が記載されている(審決で下線を付した。)。 1 「2. 特許請求の範囲 (1) 米に水又は水溶液よりなる搗精液を噴霧散布し、攪拌して表面を均一に濡らし、糠層が高含水率に吸水して搗精の摩擦力で油脂が滲出しがたく、精白米となる澱粉層の表面が、水又は搗精液で湿潤して油脂が付着塗布しがたい状態中に、多量の空気の気流で搗精により発生した糠を発生と同時に除去する加湿搗精工程を複数回繰返して、極度に糠の残存量と表面の油脂の塗布量を少くなるようした精白米を、合成樹脂袋等通気性のない容器に密封することを特徴とする米の貯蔵方法。 (2) 溶質が葡萄糖、デキストリン等の糖類よりなる水溶液の搗精液で米の表面を湿潤して摩擦搗精し、搗精後の精白米の表層部に溶質が浸透し、且、表面を溶質が被覆することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載する米の貯蔵方法。」(1頁左下欄3行~右下欄5行) 2 「実施例 一次搗精 玄米に常温で水を重量比1.2%噴霧散布し攪拌して表面を均一に湿潤する。加湿後約1分を経過すると水は米粒内に吸収されて玄米の表面が濡れた状態ではなくなる。 通常の噴風式精米機で、吸入する空気を黴の胞子および菌糸を除去し得るフィルターで濾過した空気の気流中で、分銅圧は低圧で発生糠を発生と同時に除去しながら搗精する。 二次搗精 葡萄糖濃度40%水溶液を一次搗精米に噴霧散布して攪拌し均一に米粒の表面に塗布し、分銅圧を増加し加湿後直ちに搗精する他は一次搗精と同様にして葡萄糖水溶液を逓減し、分銅圧を逓増して5回搗精する。 合計6回の搗精により精白米の搗精度は極限状態となり、澱粉層の表面には凹部等に剥離されないで残存し、又米粒の間隙に遊離した糠は極めて微少となり、澱粉層の表面が常に濡れた状態で摩擦搗精するので表面に油脂の塗布は殆んどなく、葡萄糖の水溶液の1部は澱粉層内に滲透し、1部を表面を被覆した状態で微量の油脂の酸化を防止し黴の胞子、菌糸もない状態の精白米に仕上げる。」(2頁右下欄1行~3頁左上欄5行) 3 「一次搗精では、米粒は澱粉層の表面が僅かに濡れた水分の大部分が糠層中に吸収された状態で摩擦するので糠層が剥離しやすい状態であり、米粒の澱粉層の表面が濡れているので摩擦系数が大きく、小摩擦力で搗精し得られる。発生糠は含水率が大きく、空気の気流で除去しやすい状態で、遊離した糠の残存量は通常の加湿しない搗精より著しく少い。 二次搗精で加湿する葡萄糖水溶液は、水単体よりも摩擦系数が一層大きくなり、摩擦搗精は効果的になって小圧力で砕粒の発生を防止して著しく搗精度を高め精白米の凹部等に残存する糊粉層の微少片の糠も剥離除去し得られる。」(3頁左上欄12行~右上欄4行) 4 「実施例では、玄米に水を噴霧散布して一次の初期搗精をするものを示したが、葡萄糖水溶液等摩擦系数を増大させる搗精液を使用すると、一層低圧搗精が可能となる。 二次搗精の搗精液の溶質は葡萄糖に限定されることなく糖類はすべて使用可能であり、濃度は葡萄糖では10%~60%の範囲が適当であるが、溶質により適当な範囲を選択する。 又、二次搗精に水単体を使用すると、葡萄糖水溶液を使用するものより劣るものではあるがその効果は認められる。」(3頁右上欄11行~左下欄1行) 5 上記1ないし4からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「玄米に糖類の水溶液を噴霧散布し攪拌して表面を均一に湿潤させ、加湿後水が米粒内に吸収されて玄米の表面が濡れた状態ではなくなった後、通常の噴風式精米機で搗精する一次搗精と、糖類の水溶液を一次搗精米に噴霧散布して攪拌し均一に米粒の表面に塗布し湿潤させ、加湿後直ちに搗精する他は一次搗精と同様に行う二次搗精により、精白米に仕上げる方法。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 (1) 引用発明の「糖類」は、本願発明の「糖または糖アルコールを包含するその誘導体、および塩化ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む添加物」に相当し、引用発明の「糖類の水溶液」は、本願発明の「水と、糖または糖アルコールを包含するその誘導体、および塩化ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む添加物とを含む湿潤剤」に相当する。 (2) 引用発明の「一次搗精」において「玄米に糖類の水溶液を噴霧散布し攪拌して表面を均一に湿潤させ」る工程及び「二次搗精」において「糖類の水溶液を一次搗精米に噴霧散布して攪拌し均一に米粒の表面に塗布し湿潤させ」る工程は、本願発明の「湿潤剤で湿潤させる工程」に相当し、引用発明の「湿潤させ、加湿後水が米粒内に吸収されて玄米の表面が濡れた状態ではなくなった後、通常の噴風式精米機で搗精する一次搗精」及び「湿潤させ、加湿後直ちに搗精する他は一次搗精と同様に行う二次搗精」は、本願発明の「前記湿潤させた玄米を前記湿潤させる工程後に機械的に精白する工程」に相当する。 (3) 引用発明の「精白米に仕上げる方法」は、本願発明の「米を精白するための方法」に相当する。 以上(1)ないし(3)より、本願発明と、引用発明とは、 「米を精白するための方法であって: 玄米を、水と、糖または糖アルコールを包含するその誘導体、および塩化ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む添加物とを含む湿潤剤で湿潤させる工程;および 前記湿潤させた玄米を前記湿潤させる工程後に機械的に精白する工程 を含む、 方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 湿潤剤の量について、本願発明では「前記湿潤剤は、前記玄米に2重量%未満の量で加えられる」のに対し、引用発明では、そのような特定がされていない点。 2 判断 (1) 相違点1について 引用文献1には、上記第4の4に摘記したように、「実施例では、玄米に水を噴霧散布して一次の初期搗精をするものを示したが、葡萄糖水溶液等摩擦系数を増大させる搗精液を使用すると、一層低圧搗精が可能となる。」と記載されており、これは、より劣る水に代えて「摩擦系数を増大させる」葡萄糖水溶液等の糖類の水溶液を使用した場合、水の場合と同等程度(かそれ以下)の量で、「一層低圧搗精が可能となる」ということと解される。そして、引用文献1には、上記第4の2に摘記したように、一次搗精の搗精前に玄米に噴霧散布する水の量について「玄米に・・・水を重量比1.2%」と記載されているから、糖類の水溶液の場合「重量比1.2%」と同程度(かそれ以下)を玄米に加えるものであることが示唆されているといえる。 また、二次搗精における糖類の水溶液の量も一次搗精と同程度かそれ以下とすることは、容易に想到できる。 加えて、相違点1に係る本願発明の臨界値「2重量%」(未満)について本願の発明の詳細な説明の記載を参照しても、「2重量%」に関する記載は「【0027】1つの実施形態では、湿潤剤は、玄米に2重量%未満、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の量で加えられる。」のみであり、その臨界的意義等の説明はなく、また実施例(【実施例1】~【実施例5】)をみてもやはり臨界的意義が確認できるような記載はない。 したがって、引用発明の一次搗精あるいは二次搗精における搗精前の糖類の水溶液の噴霧散布の量を、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2) 請求人の主張について 審判請求書(「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(4)第1発明と引用文献1~4との対比検討」。)において、以下の主張がされている。 a 「引用文献1~3には、穀物が液体又は粘性媒質に浸されている間に、穀物から胚芽と糠層を機械的に除去することが開示されているに過ぎず、第1発明のように、湿潤工程の後に機械的な精白工程を行うことについては、一切記載も示唆もされていない。」 b 「引用文献1~3に記載の方法は、予め又は繰り返し機械的な精白が行われた玄米を湿潤させるものであり、第1発明とはその前提において異なると思料する。」 これら主張について検討する まず上記aの主張について検討する。 引用発明の一次搗精あるいは二次搗精は、上記1(2)で相当関係を示したように、それぞれ、本願発明と同じく、湿潤工程の後に機械的な精白工程を行うものに他ならない。 加えて、引用発明の一次搗精あるいは二次搗精は、「糖類の水溶液を噴霧散布し攪拌」するものであって、主張aでいう「浸されている」というものではない。 よって、請求人の主張は採用できない。 次に上記bの主張について検討する。 まず、請求人は、引用発明が「予め又は繰り返し機械的な精白が行われた玄米を湿潤させるもの」であり、本願発明とは「前提において異なる」と主張するが、引用発明の一次搗精は、玄米に対する一度目の湿潤及び搗精であって、「予め又は繰り返し機械的な精白が行われた玄米を湿潤させるもの」ではないから、引用発明が本願発明と「前提において異なる」ものとはいえない。 また、請求人は、本願発明が「予め又は繰り返し機械的な精白が行われた玄米を湿潤させるもの」ではないことを前提として主張するが、本願の発明の詳細な説明には、 「【実施例5】【0098】本実施例は、図11に示したように、予備精白する工程、中間湿潤させる工程および最終精白する工程を含んでいる。 【0099】・・・玄米・・・のサンプルは、・・・研磨式精米機で精米した。・・・ 【0102】この予備精白する工程後、・・・湿潤剤をそれにミストまたはスプレーとして適用し・・・ 【0105】・・・湿潤させた予備精白玄米のバッチをその後直ちに最終精白した。 【0106】湿潤させた予備精白玄米のバッチは、・・・摩擦式精米機内で精米した。」 と、予め機械的な精白が行われた「予備精白玄米」を湿潤させ精白する実施例が記載され(「【実施例2】」ないし「【実施例4】」についても同様の記載あり。)、そして請求項1にも文言上「予め又は繰り返し機械的な精白が行われた玄米を湿潤させるもの」を排除する記載はないから、本願発明が「予め又は繰り返し機械的な精白が行われた玄米を湿潤させるもの」を排除しているものとは解されない。 さらに、引用発明は一次搗精後に二次搗精を行う、すなわち複数段階(工程)で搗精を行うものであるが、上述のとおり、本願の発明の詳細な説明には予備精白する工程を含む実施例、すなわち複数段階(工程)で精白する例が説明されており、請求項1にも文言上複数段階(工程)で精白することを排除する記載はないから、本願発明も複数段階(工程)で精白することを排除しているものとは解されないので、この点で両者が異なるとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (3) 小括 したがって、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-012647

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