特許拒絶査定不服審判
2017-012308
建築パネルおよびその製造
- 審判番号
- 2017-012308
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-546490外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月31日
- 審決日
- 2018年07月24日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セント-ゴベイン プラコ エスエーエス
- 【請求人代理人】▲吉▼川 俊雄
- 分類
- P18 .121-Z (E04C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-546490「建築パネルおよびその製造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/087705、平成27年 1月19日国内公表、特表2015-501897〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月12日(パリ条約による優先権主張 平成23年12月12日、英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 8月19日:拒絶理由通知(起案日)
平成28年10月18日:意見書、手続補正書
平成29年 3月22日:拒絶査定(起案日)
平成29年 8月 2日:審判請求書、手続補正書
第2 平成29年8月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
平成29年8月2日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を補正することを含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。
(本件補正前)
「【請求項1】
建築構造で使用するパネルであって、2つの反対側の面を有する石膏プラスターボードを備え、固体で無孔の薄層が、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の、1つまたは複数の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の第1面に留められ、前記1つまたは複数の結合領域は、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲の20%未満の全範囲を覆い、
前記薄層が、前記薄層および前記石膏プラスタ―ボードの間の、複数の別個の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の前記第1面に留められており、最も近い、隣接する結合領域間の最大距離が80mmであり、前記薄層の厚さが前記石膏プラスターボードの厚さ以下であるパネル。」
(本件補正後)
「【請求項1】
建築構造で使用するパネルであって、2つの反対側の面を有する石膏プラスターボードを備え、固体で無孔の薄層が、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の、1つまたは複数の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の第1面に留められ、前記1つまたは複数の結合領域は、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲の20%未満の全範囲を覆い、
前記薄層が、前記薄層および前記石膏プラスタ―ボードの間の、複数の別個の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の前記第1面に留められており、最も近い、隣接する結合領域間の最大距離が80mmであり、前記薄層の厚さが前記石膏プラスターボードの厚さ以下であり、
前記薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる、パネル。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「薄層」について、上記のとおり「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1) 本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記1の「本件補正後」に記載したとおりのものである。
(2) 引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由において引用例1として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-218724号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(ア) 「【特許請求の範囲】【請求項1】石膏板の表面に板紙が積層された石膏ボードの表面に線状、点状、メッシュ状等の間欠状に塗布された接着剤により表面板が接着されている複合ボード。」
(イ) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は複合パネル、詳しくは鋼板、アルミ板等の金属板、メラミン樹脂化粧板等のプラスチック板等の表面板と石膏ボードとが積層されているパーテイション等に使用される複合ボードに関する。
【0002】【従来技術】従来、パーテイション等に使用するボード類は鋼板等の表面板と石膏ボード等の芯材を接着して仕上げられたものであつた。これらは表面板と芯材とが全面で接着されているため使用後に廃棄する場合、表面板と芯材の分離が不可能なため、そのまま廃棄されていたが資源的にも不経済であるばかりか、廃棄場所にも困る状態であつた。
【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のような従来の課題を解決すべく、検討した結果得られたものであつて、不要となつた複合パネルを簡便に表面板と芯材に分離してリサイクル利用できる複合ボードを提供するものである。
【0004】【課題を解決するための手段】本発明における複合ボードを製作するため、表面板と芯材の接着に従来にない接着方法を採用した。即ち、接着剤の塗布方法において従来は全面塗布が採用されていたが、本発明では接着剤を線状、点状、メッシュ状等に塗布する各種塗布パターンを採用する。」
(ウ) 「【0006】接着剤を間欠的に塗布する塗布方法としてロールコーター、ノズルコータ、スプレー等の間欠的に塗布できるものであればどんな方法であつても構わないが、塗布面積率は30%以下が好ましい。30%以上では剥離作業する際に剥離しにくく作業の効率が低下して好ましくない。」
(エ) 「【0008】本発明に係わる石膏ボードは、芯部に石膏層、表面に0.3~1.2mm程度の板紙が積層された建材として汎用されている通称「石膏ボード」と呼ばれるものである。」
(オ)「【0009】表面板にはアルミ、鋼板等の各種の金属系表面板、メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板ならびに合板等の木質系表面板等を使用できる。勿論これらは印刷或いは塗装等の化粧仕上の有無は問わない。」
(カ) 「【0010】【実施例1】アクリルエマルジョン系粘着剤(樹脂分60%、アイカ工業製、アイカアイボンRA-227)石膏ボード(1mm厚、吉野石膏製)に2mm、間隔5mmの線状にロールコーターにより塗布した後、エリオ鋼板(1mm厚、新日鉄製)を貼り合わせピンチロールで圧締して実施例1の複合ボードを調製した。
【0011】【実施例2】エチレン・酢酸ビニル系エマルジヨン接着剤(樹脂分55%、アイカ工業製、アイカアイボンAE-21)を石膏ボード(8mm厚、チヨダウーテ製)に1mm幅、間隔5mmのメッシュ状にロールコーターにて塗布しメラミン樹脂化粧板(1mm厚、アイカ工業(株)製)を貼り合わせプレスで30分間圧締して実施例2の複合ボードを調製した。
【0012】【実施例3】アクリルエマルジョン系粘接着剤(樹脂分50%、アイカ工業製、アイカアイボンRA-200A〈主剤〉RA-200B〈硬化剤〉)を石膏ボード(12mm厚、チヨダウーテ製)にタテ、ヨコ各間隔10mmに直径5mmの点状に吐出機にて塗布し、乾燥後、化粧合板(2.4mm厚、アイカ工業(株)製)を貼り合わせピンチロールで圧締して実施例3の複合ボードを調製した。」
(キ) 「【0017】【効果】本発明になる複合ボードは鋼板、化粧板等の表面板と石膏ボードとが点状、線状、メッシュ状等の間欠状に塗布された接着剤により接着されているため、ごく容易に両者を分離することができる。このためパーテション、壁材等の部材として使用された後、取り壊し又はリフォーム等で不要になった場合でも、容易に表面材と石膏ボードとを剥離して、表面材及び石膏としてリサイクル利用可能である。このため、従来このような場合、分離することなく複合ボードのまま廃棄処分され資源的なムダ、廃棄スペース問題等の課題が残されていたが、これらを解消することが出来た。」
(ク) 上記(ア)ないし(キ)からみて、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「パーテイション、壁材等の部材として使用される複合ボードであって、
石膏板の表面に板紙が積層された8mm厚等の石膏ボードの表面に、
線状、点状、メッシュ状等の間欠状に塗布された接着剤により1mm厚のメラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板が接着され、
容易に表面材と石膏ボードとを剥離できるように、前記接着剤の塗布面積率は30%以下である、
複合ボード。」
(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「パーテイション、壁材等の部材として使用される複合ボード」は、本願補正発明の「建築構造で使用するパネル」に相当する。
イ 本願明細書の「【0002】 軽量パネル、たとえばプラスターボード(たとえば、石膏ボード)」、「【0023】典型的には、基板ボードは、プラスターボード、すなわち、2つの紙またはガラス繊維のシート間に広がった石膏プラスターを備えるボードを備える。」という「石膏プラスターボード」の説明、および引用発明の「石膏板の表面に板紙が積層された8mm厚等の石膏ボード」が反対側を向く2つの面(表面と裏面)を有することは明らかであることから、
引用発明の「石膏板の表面に板紙が積層された8mm厚等の石膏ボード」は、本願補正発明の「2つの反対側の面を有する石膏プラスターボード」に相当する。
ウ 本願補正発明の「薄層」の厚さに関する本願明細書の説明(「【0028】 典型的には、薄層は、少なくとも0.25mm、好ましくは少なくとも0.5mm、より好ましくは少なくとも1mmの厚さを有する。・・・【0029】典型的には、薄層の厚さは、4mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは2.5mm未満である。・・・」)を参照すると、
引用発明の「1mm厚のメラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板」は、本願補正発明の「薄層」に相当する。
また、本願明細書の「【0032】・・・「固体であり、無孔である」という表現は、3次元の多孔性アレイを備える薄層を除外するものである。」という説明を参照すると、引用発明の「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板」は、3次元の多孔性アレイとされるものではないから、本願補正発明の「固体で無孔」の薄層に相当する。
よって、引用発明の「1mm厚のメラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板」は、本願補正発明の「固体で無孔の薄層」に相当する。
エ 引用発明の「1mm厚のメラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板」が「8mm厚等の石膏ボード」より薄いことは、本願補正発明で「薄層の厚さが石膏プラスターボードの厚さ以下」であることに相当する。
オ 本願補正発明では「薄層」が「留められ」る「石膏プラスターボード」の「第1面」が該ボードの表側裏側どちらの面なのかは特定されておらず、また本願明細書を参照しても、「裏張り薄層」という表現もあるが(段落【0009】、【0012】、【0013】。)、他方「【0009】・・・薄層は、基板ボードの表面に逆にできるように留められる・・・」と、ボードへの留めが「逆にできる」と説明されているから、「裏張り」すなわちボードへの留めが裏側に限定されるものではないと解される。
よって、引用発明の「化粧板の表面板が接着」される「石膏ボードの表面」は、本願補正発明の「薄層」が留められる「石膏プラスターボード」の「第1面」に相当する。
カ 引用発明の「線状、点状、メッシュ状等の間欠状に塗布された接着剤により」「表面板が接着」される構成について、接着剤が塗布されるその領域は、「石膏ボード」と「表面板」を結合する領域であり、また「石膏ボード」と「表面板」の間に位置することは明らかである。さらに該領域の数が1つまたは複数のいずれかに当てはまることも明らかである。
よって、引用発明の「石膏ボードの表面に、線状、点状、メッシュ状等の間欠状に塗布された接着剤により」「表面板が接着され、容易に表面材と石膏ボードとを剥離できるように、前記接着剤の塗布面積率は30%以下である」ことと、
本願補正発明の「薄層が、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の、1つまたは複数の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の第1面に留められ、前記1つまたは複数の結合領域は、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲の20%未満の全範囲を覆い、前記薄層が、前記薄層および前記石膏プラスタ―ボードの間の、複数の別個の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の前記第1面に留められており、最も近い、隣接する結合領域間の最大距離が80mm」であることとは、
「薄層が、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の、1つまたは複数の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の第1面に留められ、前記1つまたは複数の結合領域は、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲の一定割合未満の全範囲を覆」う点で共通する。
キ 本願補正発明の「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」とは、その文言のとおり、「熱可塑性ポリマー」自体が単一のポリマーからなると解される。
すると、引用発明の「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板」は複数種の樹脂からなるとされるものではないから、
引用発明の「化粧板の表面板」が「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系」であることと、
本願補正発明の「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」こととは、
「薄層は、単一の樹脂からなる」点で共通する。
(なお、本願明細書の「【0033】一般に、薄層はポリマー材料を備える。このような場合、薄層は、積層ポリマー(すなわち、単一の非複合材料)を備えてもよい。あるいは、薄層は、複合材料、たとえば繊維強化複合材料であってもよい。」という記載を参照して、本願補正発明の「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」とは、ポリマー以外の材料が複合された複合材料(たとえば繊維強化複合材料)ではない、非複合材料であることも意味すると解しても、引用発明の「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板の表面板」は複合材料とされるものではないから、やはり、引用発明の「化粧板の表面板」が「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系」であることと、本願補正発明の「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」こととは、「薄層は、単一の樹脂からなる」点で共通する。)
以上アないしキより、本願補正発明と引用発明は、下記の点で一致している。
[一致点]
「建築構造で使用するパネルであって、2つの反対側の面を有する石膏プラスターボードを備え、固体で無孔の薄層が、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の、1つまたは複数の結合領域を用いて、前記石膏プラスターボードの前記面の第1面に留められ、前記1つまたは複数の結合領域は、前記薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲の一定割合未満の全範囲を覆い、
前記薄層の厚さが前記石膏プラスターボードの厚さ以下であり、
前記薄層は、単一の各種樹脂からなる、パネル。」
他方、本願補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。
[相違点1]
「薄層」と「石膏プラスターボート」間の結合について、
本願補正発明では、「薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲の20%未満の全範囲を覆」う「結合領域」で留められているのに対し、
引用発明では、「接着剤の塗布面積率は30%以下」であり、
また、本願補正発明では、「複数の別個の結合領域」を用いて留められ、「最も近い、隣接する結合領域間の最大距離が80mm」であるのに対し、
引用発明ではその限定がない点。
[相違点2]
本願補正発明では、「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された」「熱可塑性ポリマーからなる」のに対し、
引用発明では、「化粧板の表面板」は「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系」である点。
(4) 判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア) 結合領域が覆う範囲の割合について
a 技術的意義
本願補正発明の「薄層および前記石膏プラスターボードの間の全界面範囲」に対する「結合領域」の割合を「20%未満」とするのは、「基板ボードおよび薄層が・・・パネルの寿命の終わりに容易に切り離されることができる」(本願明細書の段落【0010】)ようにするためである。
これに対して、引用発明の「接着剤の塗布面積率は30%以下」とするのは、上記(2)ア(イ)に摘記したとおり(段落【0003】)「不要となつた複合パネルを簡便に表面板と芯材に分離」できるようにするためである。
そうすると、引用発明の「接着剤の塗布面積率は30%以下」とすることは、本願補正発明の「結合領域」の割合を「20%未満」とすることと、同様の機能、作用効果を奏するものであって、技術的意義が共通するといえる。
b 数値範囲
引用発明の「接着剤の塗布面積率は30%以下」とすることは、接着剤の塗布面積率を「20%未満」とすることを含むものである。
そうすると、引用発明の「接着剤の塗布面積率は30%以下」とすることと、本願補正発明の「結合領域」の割合を「20%未満」とすることとは、「結合領域」の割合を「20%未満」とする点で共通する(すなわち、数値範囲の一部が共通する)といえる。
c 上限値について
引用例1には、上記(2)ア(ウ)に摘記したとおり(段落【0006】)「接着剤を間欠的に塗布する塗布方法としてロールコーター、ノズルコータ、スプレー等の間欠的に塗布できるものであればどんな方法であつても構わないが、塗布面積率は30%以下が好ましい。30%以上では剥離作業する際に剥離しにくく作業の効率が低下して好ましくない。」と記載されているように、接着面積が少ないほど、剥離し易くなることは、技術常識である。
また、引用例1には、上記(2)ア(カ)に摘記したとおり、
「【0010】【実施例1】アクリルエマルジョン系粘着剤(・・・)石膏ボード(・・・)に2mm、間隔5mmの線状にロールコーターにより塗布・・・。
【0011】【実施例2】エチレン・酢酸ビニル系エマルジヨン接着剤(・・・)を石膏ボード(・・・)に1mm幅、間隔5mmのメッシュ状にロールコーターにて塗布・・・。
【0012】【実施例3】アクリルエマルジョン系粘接着剤(・・・)を石膏ボード(・・・)にタテ、ヨコ各間隔10mmに直径5mmの点状に吐出機にて塗布・・・。」と記載されているように、塗布面積率が約28.6%(【実施例1】)や約30.6%(【実施例2】)や約19.6%(【実施例3】)と種々のものが開示されており、20%未満としたものも開示されている(【実施例1】は塗布領域が幅2mm、その間の非塗布領域が幅5mmとして、【実施例2】は幅1mmの塗布領域が縦横直交してメッシュを成し、その間の非塗布領域が幅5mm(5mm角)の正方形状として、【実施例3】は直径5mmの塗布領域の中心同士の間隔がタテ、ヨコ10mmとして計算。)。
そうすると、引用発明において、「接着剤の塗布面積率」を「20%未満」とすることは、当業者が適宜に決定し得る程度の事項であるといえる。
(イ) 結合領域が「複数の別個」であり、「最も近い、隣接する結合領域間の最大距離が80mm」である点について
引用例1には、上記(ア)で検討した塗布面積率が20%未満となる例(【実施例3】)を含め、塗布領域が複数の別個の領域に分かれ、その最も近い、隣接する塗布領域間の距離が明らかに80mmに達しない、線状あるいは点状の塗布パターン(【実施例1】の各「線」の「間隔5mm」、【実施例3】の各「点」の「タテ、ヨコ各間隔10mm」。)が開示されていることをみても、結合領域について、「複数の別個」であり、「最も近い、隣接する結合領域間の最大距離が80mm」という構成を採用することは、当業者が適宜に決定し得る程度の事項であるといえる(なお、本願明細書で例示されている結合領域も、線状と点状のものである(「【0017】・・・たとえば、結合領域は、ボードの長手方向と整列する、またはボードの長手方向を横断して整列するストライプとして構成されてもよい。一代替形態では、結合領域は、2次元のドットのアレイを提供してもよい。」)。)。
(ウ) まとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
(ア) 周知技術
a 実願昭53-055297号(実開昭54-157949号)のマイクロフィルムには、「従来一般に行なわれているプラスチツクシートをラミネートする化粧ボードは、表面に任意の意匠・図柄・模様・文字などの印刷を施した上層シートを直接石膏ボード表面側に積層接着して化粧シート張り石膏ボードを製造していた。
すなわち、化粧塩化ビニールシート、ポリエチレンシートなどの化粧シートを接着剤を用いて石膏ボード表面に接着一体化するという方法がとられて来た。」(明細書1頁下から8行-2頁1行、等参照)と記載されている。
b 特開平5-18162号公報には、「【0007】この発明に用いられる基板1は、・・・石膏ボード・・・が使用可能である。
【0008】基板1の上面を被覆する表面用化粧材2は、・・・厚さが0.1~1.0mm程度の範囲にある塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂などの合成樹脂フィルム・・・などで、それらの表面用化粧材2は基板1上に接着剤を介して貼着したり、含浸された自己の樹脂により熱圧接着する。」(段落【0007】-【0008】等参照)と記載されている。
c 特開平9-109300号公報には、「【0007】・・・前記基材と前記表面板が接着積層されていることを特徴とする前記積層板が提供され・・・。
【0009】・・・本発明による積層板1の表面板2として用いられる材料は特に限定されず、例えばアクリル樹脂板、塩化ビニル樹脂板、ポリカーボネート板、ポリエチレン板、ポリプロピレン板、ポリスチレン板、フェノール樹脂板、メラミン樹脂板、アクリル系樹脂からなる人工大理石板、不飽和ポリエステル系樹脂からなる人工大理石板等が挙げられる・・・。
【0012】基材4としては、例えば・・・石膏板等の無機板・・・が挙げられる・・・。」(段落【0007】-【0012】等参照)と記載されている。、
d 特開平11-129385号公報には、「【0005】・・・窯業系サイデング基材、架橋型接着剤層及びプラスチックフィルム層が順次積層されてなる・・・。
【0006】・・・該基材は・・・石膏等の無機質材料を主成分とする基材であり、具体例としては・・・石膏ボード等の建築工業材料として使用されているものが挙げられる。
【0010】プラスチックフィルム層としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、弗素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカ-ボネ-ト樹脂、ポリブチレンテレフタレ-ト樹脂等のプラスチック類等が挙げられる。・・・」(段落【0005】-【0010】等参照)と記載されている。
e 特開2000-186266号公報には、「【0002】・・・従来より、硬質もしくは半硬質の塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等のようなプラスチック材料シート、・・・のいわゆる表面化粧シートを、・・・石膏ボード・・・等の無機材料等からなる基材の表面に接着し、意匠性を付与したいわゆる表面化粧材が建築部材や家具部材等として広く使用されている。」(段落【0002】等参照。)と記載されている。
f 上記aないしeから、石膏ボードの表面に接着する化粧材の材質(素材)としてポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂を採用することは、本願優先日前から周知の技術(以下「周知技術」という。)であるといえる。
(イ) 適用について
引用発明の「石膏ボードの表面に」「接着され」る「化粧板」は、「メラミン樹脂化粧板等の各種樹脂系化粧板」であるから、「メラミン樹脂」の他に各種の樹脂を用いることが予定されているものである。
そして、石膏ボードの表面に接着する化粧材の材質(素材)としてポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂を採用することは、上記したように本願優先日前から周知技術である。
そうすると、引用発明の石膏ボードの表面に接着する「化粧板」として上記周知技術を採用して相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到できることである。
(ウ) まとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書(「(3)本願発明が特許されるべき理由」「(d)本願発明と引用文献との比較」)において、本願補正発明の「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」構成、すなわち上記相違点2に係る構成に関し、パネルの固定強度の増大、優れたリサイクル性という、引用文献に記載の無い優れた効果を奏するものである旨を主張している。
しかしながら、引用発明も、上記(2)ア(イ)、(キ)で摘記したようにパネルのリサイクル性を向上させるものであり、また本願補正発明と同様に樹脂からなる薄層を石膏プラスターボードに結合したものであるから同様にパネルの固定強度は増大するといえるものであって、薄層の樹脂の材質(素材)について相違があるとしても(上記相違点2)、引用発明の樹脂と、上記周知技術の樹脂それぞれが有する性質による差異にとどまり、その相違により顕著な効果を奏するものとは認められない。
そして本願の発明の詳細な説明を参照しても、
「【0033】一般に、薄層はポリマー材料を備える。このような場合、薄層は、積層ポリマー(すなわち、単一の非複合材料)を備えてもよい。あるいは、薄層は、複合材料、たとえば繊維強化複合材料であってもよい。
【0034】薄層が積層ポリマーである場合、薄層は、熱可塑性ポリマー、たとえば、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート、またはナイロンを備えてもよい。あるいは、薄層は、熱硬化性ポリマー、たとえばベークライトを備えてもよい。」という程度の記載にとどまり、「薄層は、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびナイロンからなる群から選択された単一の熱可塑性ポリマーからなる」ことで優れた固定強度、リサイクル性が得られる旨の説明はない。薄層が繊維複合材料である場合のマトリックス樹脂についての記載(段落【0035】~【0038】)や、「実施例」(1~9)及び「比較実施例」(10~30)についての記載まで参照しても、同様である。
以上より、請求人の主張は採用できない。
エ また、相違点1、2を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5) 本件補正の適否についてのむすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1「本件補正前」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1及び2に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明に基づいて、また請求項3ないし7に係る発明は、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及びその記載事項は、前記第2の2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
上記第2の1に記載したように、本願発明は、上記第2の2で検討した本願補正発明から、「薄層」の材質に係る限定事項を削除したものであり、また上記第2の2(3)の相違点2の内容は該限定事項に対応するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2の2(4)で説示したとおり、「薄層」の材質に係る限定事項すなわち相違点2を除くと、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が本願優先日前に頒布された引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-012308