特許拒絶査定不服審判
2017-010818
量子ドット系照明
- 審判番号
- 2017-010818
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-524214外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月20日
- 審決日
- 2018年08月13日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三星電子株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人共生国際特許事務所
- 分類
- P18 .575-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-524214「量子ドット系照明」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日国際公開、WO2012/021643、平成25年10月24日国内公表、特表2013-539598〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年8月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 4月 5日:国際出願翻訳文提出書の提出
平成26年 8月 8日:出願審査請求書・手続補正書の提出
平成27年 4月30日:拒絶理由通知(5月12日発送)
同年11月12日:手続補正書・意見書の提出
平成28年 4月11日:最後の拒絶理由通知(4月19日発送)
同年10月19日:手続補正書・意見書の提出
平成29年 3月13日:補正却下の決定(3月21日送達)
同年 3月13日:拒絶査定(3月21日送達。以下「原査定」
という。)
同年 7月20日:審判請求書・手続補正書の提出
第2 平成29年7月20日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年7月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[補正却下の決定の理由]
1 補正内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成27年11月12日付け手続補正後のもの)について、
「三色白色光を発生するための装置であって、
ホスト材料並びに緑色光を放出することが可能な第1の量子ドットおよび赤色光を放出することが可能な第2の量子ドットを含む光学材料と共に青色光を放出することが可能な光源を含み、前記光学材料内の前記第2の量子ドットに対する前記第1の量子ドットの重量パーセント比は9:1~2:1の範囲にあり、
前記光学材料は、少なくとも70%のEQEを有し、前記光学材料は、ガスおよび水分を通さず、密封されている透明毛細管に含まれる、前記装置。」とあったものを、
本件補正後の請求項1の
「三色白色光を発生するための装置であって、
ホスト材料並びに緑色光を放出することが可能な第1の量子ドットおよび赤色光を放出することが可能な第2の量子ドットを含む光学材料と共に青色光を放出することが可能な光源を含み、前記光学材料内の前記第2の量子ドットの重量パーセントに対する前記光学材料内の前記第1の量子ドットの重量パーセントの比は9:1~2:1の範囲にあり、
前記光学材料は、少なくとも70%のEQEを有し、前記光学材料は、密封されている透明毛細管に含まれ、前記密封はガスおよび水分を通さず、前記毛細管の両端はガラスで密閉されており、
前記光学材料は、さらに、粘度および収縮を制御するために5~30重量パーセントの範囲の量のガラスビーズと、2~10重量パーセントの範囲の量のチキソトロピー剤を含み、前記チキソトロピー剤はヒュームド金属酸化物を含むことを特徴とする装置。」と補正する内容を含むものである(下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)。
2 補正目的
上記「1」の補正内容は、本件補正前の請求項1に係る発明の、
(1)「第1の量子ドット」と「第2の量子ドット」について、その配合割合の表現を適切なものとするとともに、
(2)「透明毛細管」について、密封はガスおよび水分を通さず、両端はガラスで密閉れていることを限定し、
(3)「光学材料」について、「粘度および収縮を制御するために5~30重量パーセントの範囲の量のガラスビーズと、2~10重量パーセントの範囲の量のチキソトロピー剤を含み、前記チキソトロピー剤はヒュームド金属酸化物を含む」ことを限定するものであり、
その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
よって、本件補正後の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むことから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。
3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「第2 1」に、本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。
(2)引用文献に記載の事項
ア 原査定の拒絶理由において引用文献1として引用された、米国特許出願公開第2010/0155749明細書(2010年6月24日公開。以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「(57)The present invention provides light-emitting diode (LED) devices comprises compositions and containers of hermetically sealed luminescent nanocrystals. The present invention also provides displays comprising the LED devices. Suitably, the LED devices are white light LED devices.」(フロントページ)
(日本語訳
本発明は、気密封止された発光ナノ結晶の組成物および容器を含む発光ダイオード(LED)デバイスを提供する。本発明はさらに、LEDデバイスを含むディスプレイを提供する。適当には、LEDデバイスは白色光LEDデバイスである。)
(イ)「[0087] In a further embodiment, the present invention comprises light-emitting diode (LED) devices. An exemplary LED device 700 is shown in FIG. 7A . LED device 700 suitably comprises an LED 702 . LED 702 is shown on substrate 706 for illustrative purposes only. It should be understood that any suitable configuration of an LED can be utilized in the practice of the present invention. In addition, multiple (i.e., more than one) LED can be utilized in LED device 700 . LED device 700 further comprises a hermetically sealed container 708 comprising a plurality of luminescent nanocrystals 710 . Container 708 is optically coupled to LED 702 . LED device 700 also comprises a light guide 712 optically coupled to hermetically sealed container 708 .
[0088] In embodiments of the present invention, a first portion of light emitted from the LED is down-converted by the luminescent nanocrystals 710 . A second portion of light emitted from the LED and the down-converted light from the luminescent nanocrystals are emitted from light guide 712 .
[0089] Any suitable LED can be utilized in the LED devices of the present invention, including various configurations of LEDs, and LEDs emitting light over the entire visible spectrum, as well as LEDs that emit ultraviolet light (light with a wavelength of 10 nm to about 380 nm). Suitably, LED 702 emits blue light. As described herein, the visible spectrum includes light having wavelengths between about 380 nm and about 780 nm that is visible to the human eye. Visible light can be separated into the various colors of the spectrum, such as red, orange, yellow, green, blue, indigo and violet. As used herein, blue light comprises light between about 435 nm and about 500 nm, green light comprises light between about 520 nm and 565 nm, more suitably about 525 nm to about 530 nm, and red light comprises light between about 625 nm and about 740 nm in wavelength, more suitably about 625 nm to about 640 nm.
[0090] Suitably, as shown in FIG. 7B , LED 702 emits blue light 716 . A first portion 718 of the blue light emitted from the LED is down-converted by luminescent nanocrystals 710 . As the nanocrystals absorb this portion of blue light and then emit light at a second wavelength 722 , 724 (see FIG. 7B ). Suitably, the light emitted from nanocrystals 710 comprises light having wavelengths primarily in the green (e.g, between about 520 nm and 565 nm, more suitably about 525 nm to about 530 nm) and red (e.g, between about 625 nm and about 740 nm in wavelength, more suitably about 625 nm to about 640 nm) ranges. Thus, suitably nanocrystals 710 comprise two populations of nanocrystals. One population of nanocrystals is designed to absorb blue light and emit red light, and a second population of nanocrystals is designed to absorb blue light and emit green light. The populations of nanocrystals suitably comprise a plurality (i.e., 2 or more, 10 or more, 100 or more 1000 or more, etc.) of nanocrystals. As described herein, the ability to tailor the composition and size of the nanocrystals allows for the design of nanocrystals having specific absorption and emission characteristics.」(第8頁右欄ないし9頁左欄)
(日本語訳
[0087] 追加の実施形態では、本発明は、発光ダイオード(LED)デバイスを含む。例示的なLEDデバイス700が図7Aに示されている。LEDデバイス700は、適当にはLED702を含む。LED702は、例示する目的でのみ基材706上に示されている。本発明の実施に際しては、LEDの適当な任意の構成を利用できることが理解されるべきである。さらに、複数の(すなわち2つ以上の)LEDをLEDデバイス700に利用することができる。LEDデバイス700は、複数の発光ナノ結晶710を含む気密封止された容器708をさらに含む。容器708は、LED702に光学的に結合される。LEDデバイス700はさらに、気密封止された容器708に光学的に結合される光ガイド712を含む。
[0088] 本発明の実施形態では、LEDから放出された光の第1の部分が発光ナノ結晶710によってダウンコンバートされる。LEDから放出された光の第2の部分と発光ナノ結晶からダウンコンバートされた光が光ガイド712から放出される。
[0089] LEDのさまざまな構成、および全可視スペクトルにわたる光を発光するLED、ならびに紫外光(10nm~約380nmの波長をもつ光)を発光するLEDを含む適当な任意のLEDを、本発明のLEDデバイスに利用することができる。適当には、LED702は青色光を発光する。本明細書に記載されたとおり、可視スペクトルは、人間の眼に見える約380nmから約780nmまでの波長を有する光を含む。可視光は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫など、スペクトルのさまざまな色に分離されうる。本明細書で使用されているとおり、青色光は、波長約435nmから約500nmまでの光を含み、緑色光は、約520nmから565nmまで、より適当には約525nmから約530nmまでの光を含み、赤色光は、約625nmから約740nmまで、より適当には約625nmから約640nmまでの光を含む。
[0090] 適当には、図7Bに示されているように、LED702が青色光716を発光する。LEDから放出された青色光の第1の部分718が発光ナノ結晶710によってダウンコンバートされる。ナノ結晶は、青色光のこの部分を吸収する際に、次いで第2の波長722、724(図7B参照)で光を放出する。適当には、ナノ結晶710から放出された光は、主として緑色(例えば約520nmから565nmまで、より適当には約525nmから約530nmまで)および赤色(例えば波長約625nmから約740nmまで、より適当には約625nmから約640nmまで)の範囲の波長を有する光を含む。したがって、適当には、ナノ結晶710は、ナノ結晶の2つの集団を含む。ナノ結晶の1つの集団は、青色光を吸収し且つ赤色光を放出するように設計され、ナノ結晶の第2の集団は、青色光を吸収し且つ緑色光を放出するように設計される。ナノ結晶の集団は、適当には、複数(すなわち2以上、10以上、100以上、1000以上など)のナノ結晶を含む。本明細書に記載されたとおり、ナノ結晶の組成物およびサイズを調整することができることは、特定の吸収特性および放出特性を有するナノ結晶の設計を可能にする。)
(ウ)「[0091] “A first portion”of blue light 718 refers to a percentage of the blue light 716 emitted from LED that is down-converted from blue to another wavelength(s) of light. A first portion can be any amount of the original blue light 716 emitted from LED 702 that is less than the total amount of blue light given off by the LED (e.g., about 99% to about 1% of the blue light emitted from LED 702 , suitably about 80% to about 30%, about 70% to about 40%, about 70% to about 50% or about 60%).
[0092] “A second portion” 720 of blue light emitted from LED 702 passes through hermetically sealed container 708 , emerging as blue light (suitably about 20% to about 50%, or about 20% to about 40%). This second portion of blue light 720 and the down-converted light 722 and 724 emitted from the nanocrystals (e.g., red light and green light) are then emitted 726 from the light guide 712 . The blue light emitted from the LED 720 , and the down-converted green light and red light ( 722 and 724 ) suitably combine to produce white light 726 when ultimately emitted from the light guide.」(第9頁左欄)
(日本語訳
[0091] 青色光718の「第1の部分」は、LEDから放出され、青色から別の波長(単数または複数)の光にダウンコンバートされる、或る割合の青色光716を指す。第1の部分は、LEDによって与えられる青色光の総量よりも少ない、LED702から放出される本来の青色光716のうちの任意の量(例えばLED702から放出される青色光の約99%~約1%、適当には約80%~約30%、約70%~約40%、約70%~約50%または約60%)とすることができる。
[0092] LED702から放出された青色光の第2の部分720は、気密封止された容器708を通過して、青色光として現れる(適当には約20%~約50%、または約20%~約40%)。この青色光の第2の部分720と、ナノ結晶から放出されるダウンコンバートされた光722および724(例えば赤色光および緑色光)が、次いで光ガイド712から放出726される。適当には、LEDから放出された青色光720と、ダウンコンバートされた緑色光および赤色光(722および724)とが組み合わされて、光ガイドから最終的に放出されたときに白色光726を生じる。)
(エ)「[0099] In suitable embodiments, the luminescent nanocrystals comprise CdSe or ZnS. Exemplary core/shell nanocrystals that can be utilized include CdSe/ZnS, InP/ZnS, PbSe/PbS, CdSe/CdS, CdTe/CdS and CdTe/ZnS, nanocrystals. In exemplary embodiments, as described herein, the nanocrystals are dispersed or embedded in a polymeric matrix. This matrix can then be drawn into, or otherwise disposed in, a capillary, prior to sealing the capillary.
[0100] In additional embodiments, a scattering material (e.g., particles of material that scatter light entering the hermetically sealed containers) can be added to the matrix. Suitably, the scattering media are metallic, polymeric, semiconductor, or other material particles on the order of 500 nm to microns to even millimeters in size. In other embodiments, a scattering material can be placed between the LED and the hermetically sealed container, or between the container and the light guide.」(第9頁右欄ないし第10頁左欄)
(日本語訳
[0099] 適当な実施形態では、発光ナノ結晶はCdSeまたはZnSを含む。利用することができる例示的なコア/シェルナノ結晶は、CdSe/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、CdSe/CdS、CdTe/CdSおよびCdTe/ZnSナノ結晶を含む。例示的な実施形態では、本明細書に記載されたとおり、ナノ結晶は、ポリマーマトリックス中に分散されまたは埋め込まれる。このマトリックスは、次いで、毛管を封止する前に毛管の中へ吸い込むまたは他の方法で配置することができる。
[0100] 追加の実施形態では、散乱材料(例えば気密封止された容器に入る光を散乱させる材料の粒子)をマトリックスに加えることができる。適当には、散乱媒体は、500nmからミクロン、さらにはミリメートル程度のサイズの金属、ポリマー、半導体、または他の材料の粒子である。他の実施形態では、散乱材料は、LEDと気密封止された容器との間、または容器と光ガイドとの間に入れることができる。)
(オ)「[0152] A rectangular tube of approximate dimensions 3 mm×0.5 mm with a 2 mm×0.5 mm cavity is prepared by extrusion of PMMA. The length of tubing is then filled with a solution comprising fluorescent luminescent nanocrystals. The luminescent nanocrystal solution is then cured. Segments of the tubing are then heat sealed to trap the nanocrystals in the tubing. Suitably the filling and sealing are performed in an inert atmosphere. A barrier layer (e.g., SiO2, TiO2 or AlO2) can then be disposed on the outer surface of the tubing.
[0153] A drawn glass capillary can also be used to prepare a hermetically sealed container comprising nanocrystals. The end of the capillary is sealed either via melt sealing or plugging with a solder or adhesive or similar structure. The capillary can be filled with a solution of luminescent nanocrystals such that the entire volume of the capillary is filled with the same nanocrystal solution, or the capillary can be filled in stages, such that different nanocrystals are separated along the length of the capillary. For example, a first luminescent nanocrystal solution can be introduced into the capillary, and then a seal placed adjacent to the solution (for example, but melt sealing or plugging the capillary). A second luminescent nanocrystal solution can then be added to the capillary, and again, a seal placed adjacent to the solution. This process can be repeated as often as required until the desired number of individual, hermetically sealed nanocrystal segments are created. In this manner, different compositions of luminescent nanocrystals can be separated from each other in the same container, thereby allowing the production of containers comprising multiple compositions (e.g., colors) of luminescent nanocrystals. In a similar embodiment, a multi-lumen capillary can be used in which different compositions of luminescent nanocrystals (e.g., those which emit different colors) can be introduced and thus kept separate from each other, and still be hermetically sealed from external air and moisture.」(第14右欄ないし15頁左欄)
(日本語訳
[0152] PMMAの押出成形によって、2mm×0.5mmの空洞を有する寸法約3mm×0.5mmの長方形の管が調製される。次いで、管の全長に、蛍光発光ナノ結晶を含む溶液が充填される。次いで、この発光ナノ結晶溶液を硬化させる。次いで、管の中にナノ結晶を閉じ込めるため、管の複数の部分がヒートシールされる。適当には、この充填および封止が不活性雰囲気中で実行される。次いで、管の外面に、バリア層(例えばSiO2、TiO2またはAlO2)を配置することができる。
[0153] 引抜きによって製造されたガラス毛細管を使用して、ナノ結晶を含む気密封止された容器を調製することもできる。溶融封止によって、あるいははんだもしくは接着剤または同様の構造物で栓をすることによって、毛細管の端が封止される。この毛細管には、毛細管の容積全体に同じナノ結晶溶液が充填されるように発光ナノ結晶の溶液を充填することができ、または、毛細管の全長に沿って異なるナノ結晶が分離されるように、数段階に分けて発光ナノ結晶の溶液を毛細管に充填することができる。例えば、第1の発光ナノ結晶溶液を毛細管の中へ導入し、次いでこの溶液に隣接して、(例えば毛細管を溶融封止し、または毛細管に栓をする以外で)シールを配置することができる。次いで、第2の発光ナノ結晶溶液を毛細管に加え、次いで再び、その溶液に隣接してシールを配置することができる。気密封止された所望の数の個々のナノ結晶部分が生成されるまで、この工程を必要な回数繰り返すことができる。このようにして、同じ容器の中で発光ナノ結晶の異なる組成物を互いから分離することができ、それによって、発光ナノ結晶の複数の組成物(例えば色)を含む容器を製造することができる。類似の実施形態では、発光ナノ結晶の異なる組成物(例えば異なる色の光を放出する組成物)を導入することができ、したがってそれらを互いに分離された状態で保持することができ、外部の空気および水分から依然として気密封止することができる、多(複数)管腔(multi-lumen)毛管を使用することができる。)
(カ)図7A及び図7Bは、以下のものである。
イ 引用文献に記載された発明
(ア)上記ア(ア)の記載からして、引用文献には、
「白色光発光ダイオード(LED)デバイス」が記載されているものと認められる。
(イ)上記ア(イ)ないし(オ)の記載を踏まえて、図7A及び図7Bを見ると、
上記(ア)の「白色光発光ダイオード(LED)デバイス」は、具体的には、
a 青色光を発光するLED702と、
b LED702に光学的に結合される光ガイド712と、
c 複数の発光ナノ結晶を含む気密封止された容器708と、を含み、
前記発光ナノ結晶は、青色光の第1の部分718を吸収し且つ緑色光724を放出するナノ結晶と青色光の第1の部分718を吸収し且つ赤色光722を放出するナノ結晶を含み、
前記LED702から放出される青色光の第2の部分720と、緑色光724及び赤色光722とが組み合わされて白色光726を生じる、白色光発光ダイオード(LED)デバイス。」であることが理解できる。
(ウ)上記ア(エ)及び(オ)の記載からして、
上記イの「気密封止された容器708」は、「ガラス毛細管」であって、該ガラス毛細管は、その内部にポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶を含むことが理解できる。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「白色光発光ダイオード(LED)デバイスであって、
青色光を発光するLED702と、
前記LED702に光学的に結合される光ガイド712と、
ポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶を含む、気密封止されたガラス毛細管708と、を含み、
前記発光ナノ結晶は、青色光の第1の部分718を吸収し且つ緑色光724を放出するナノ結晶と青色光の第1の部分718を吸収し且つ赤色光722を放出するナノ結晶ととを含み、
前記LED702から放出される青色光の第2の部分720、緑色光724及び赤色光722とが組み合わされて白色光726を生じる、白色光発光ダイオード(LED)デバイス。」
(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「白色光発光ダイオード(LED)デバイス」は、「LED702から放出される青色光の第2の部分720、緑色光724及び赤色光722とが組み合わされて白色光726を生じる」ものであるから、本願補正発明の「三色白色光を発生するための装置」に相当する。
以下、同様に、
「ポリマーマトリックス」は、「ホスト材料」に、
「緑色光724を放出するナノ結晶」は、「緑色光を放出することが可能な第1の量子ドット」に、
「赤色光722を放出するナノ結晶」は、「赤色光を放出することが可能な第2の量子ドット」に、
「青色光を発光するLED702」は、「青色光を放出することが可能な光源」に、
「ポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶」は、「光学材料」に、
「気密封止されたガラス毛細管708」は、「密封されている透明毛細管」に、それぞれ、相当する。
(イ)引用発明の「気密封止されたガラス毛細管708」は、透明であり、ガスおよび水分を通さず、その両端が密封されたものであることは、明らかである。
(ウ)してみると、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「三色白色光を発生するための装置であって、
ホスト材料並びに緑色光を放出することが可能な第1の量子ドットおよび赤色光を放出することが可能な第2の量子ドットを含む光学材料と共に青色光を放出することが可能な光源を含み、前記光学材料内の前記第2の量子ドットの重量パーセントに対する前記光学材料内の前記第1の量子ドットの重量パーセントの比は所定範囲にあり、
前記光学材料は、密封されている透明毛細管に含まれ、前記密封はガスおよび水分を通さず、前記毛細管の両端はガラスで密閉されている、装置。」
(エ)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点>
光学材料に関して、
本願補正発明は、
a 「光学材料内の第2の量子ドットの重量パーセントに対する光学材料内の第1の量子ドットの重量パーセントの比は9:1~2:1の範囲にあり」、
b 「光学材料は、少なくとも70%のEQEを有し」、
c 「粘度および収縮を制御するために5~30重量パーセントの範囲の量のガラスビーズと、2~10重量パーセントの範囲の量のチキソトロピー剤を含み、前記チキソトロピー剤はヒュームド金属酸化物を含む」のに対して、
引用発明は、上記aないしcの構成を備えているか否か不明である点。
イ 判断
(ア)上記<相違点>について検討する。
a 引用発明は、「青色光の第2の部分720、緑色光724及び赤色光722とが組み合わされて白色光726を生じる」ものであるから、「緑色光724を放出するナノ結晶(第1の量子ドット)」及び「赤色光722を放出するナノ結晶(第2の量子ドット)」の量をどの程度に設定するかは、当業者が色温度等を勘案して適宜決め得る設計事項であり、「赤色光722を放出するナノ結晶(第2の量子ドット)」に対する「緑色光724を放出するナノ結晶(第1の量子ドット)」の重量パーセントの比を「9:1~2:1の範囲」とすることに何ら困難性は認められない。
b 引用発明において、「ポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶を含む、気密封止されたガラス毛細管708」のEQEが高いことが望ましいことは明らかであるから、理想的な100%に近い「少なくとも70%」とすることに何ら困難性は認められない。
c 引用発明の「ガラス毛細管708」は、その内部に「ポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶を含む」ものであるから、複数の発光ナノ結晶をポリマーマトリックス中に分散させるために、添加剤として、ガラスビーズ等のフィラーやヒュームド金属酸化物などの粘度調整剤を添加することは、下記の文献等に記載されているように、当業者が必要に応じて適宜なし得ることであり、その量をどの程度にするかは、設計事項である(以下「周知技術」という。)。
特開2010-70583号公報(【0036】)
特表2007-522282号公報(【0026】)
特開2009-96947号公報(【0017】ないし【0019】)
特開2009-13186号公報(【0083】)
特開2002-249636号公報(【0011】)
特開2002-114928号公報(【0026】)
国際公開第2009/151515号(第40頁の実施例2を参照。)
d 以上のことから、引用発明において、上記<相違点>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(イ)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、上記<相違点>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術から予測し得る範囲内のものである。
よって、本願補正発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
(4)審判請求書における主張
請求人は、審判請求書(第8頁下段ないし第9上段)において、以下のように主張していることから、この点について検討する。
「(2)本願発明と引用文献との比較
・新請求項1、5、6においては、明細書段落[0081]~[0083]の記載に基づき、光学材料は、『粘度および収縮を制御するために5~30重量パーセントの範囲の量のガラスビーズ、2~10重量パーセントの範囲の量のチキソトロピー剤を含み、チキソトロピー剤はヒュームド金属酸化物を含む』ことを特定しました。
このような光学材料の構成は、粘度および収縮を制御し光学材料の特性を向上させるという効果があります。
…
これらのような構成は、引用文献1~4に記載されていなく、また、これら引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものでもないため、進歩性を有するものと思料致します。」
ア しかしながら、引用文献1に記載された引用発明の「気密封止されたガラス毛細管708」は、「ポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶を含む」ものであるところ、封止時の粘性を勘案して、気密封止する前に、粘度等を調整した「『ポリマーマトリックス中に分散された複数の発光ナノ結晶を含む』『溶液』」を準備する必要のあることは、当業者にとって明らかである。
イ よって、請求人の上記主張は、上記「(3)対比 イ」の判断を左右するものではない。
(5)独立特許要件についてのまとめ
本願補正発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正却下の決定の理由のむすび
上記「3」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて、本件補正前の請求項1として記載した、以下のとおりのものである(再掲)。
「三色白色光を発生するための装置であって、
ホスト材料並びに緑色光を放出することが可能な第1の量子ドットおよび赤色光を放出することが可能な第2の量子ドットを含む光学材料と共に青色光を放出することが可能な光源を含み、前記光学材料内の前記第2の量子ドットに対する前記第1の量子ドットの重量パーセント比は9:1~2:1の範囲にあり、
前記光学材料は、少なくとも70%のEQEを有し、前記光学材料は、ガスおよび水分を通さず、密封されている透明毛細管に含まれる、前記装置。」
2 引用文献
引用文献及びその記載事項は、前記「第2(3)」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願補正発明は、前記「第2 1」に記載したとおり、本願発明を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2(3)」で検討したとおり、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-010818