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特許拒絶査定不服審判

2024-010776

ナノ粒子

審判番号
2024-010776
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-545320
請求日
2024年07月01日
審決日
2026年01月29日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】三星電子株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人ITOH
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 吉野 三寛
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .113-Z (C09K) / P18 .121-Z (C09K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-545320「ナノ粒子」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日国際公開、WO2020/078843、令和 4年 1月19日国内公表、特表2022-508726〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)10月11日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年10月15日、ヨーロッパ特許庁)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和3年 6月11日 :翻訳文の提出 令和5年 5月17日付け:拒絶理由通知書 同年11月17日 :意見書、手続補正書の提出 令和6年 2月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 3月 1日 :原査定の謄本の送達) 同年 7月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 7月24日付け:前置報告書 令和7年 7月14日 :上申書の提出 以下、2018年(平成30年)10月15日を「優先日」という。 第2 本願発明について 1 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1(当該補正では、請求項1自体は補正されていないので、令和5年11月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1と同じである。)に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 少なくとも、 i)第1半電導性材料、 ii)任意に少なくとも1つのシェル層、 iii)以下の化学式(I) 【化1】 [図:0001436639000001.jpg] 式中、 XおよびYは、各々独立してまたは互いに従属して、O、S、PまたはN、好ましくはOまたはSであり、 nは、YがOまたはSである場合0であり、nは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 mは、XがOまたはSである場合0であり、mは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 R1は、付着基であり、好ましくは該付着基は、S、Se、O、PまたはNから選択される少なくとも1つの元素、より好ましくは硫黄またはセレンを含有する基を含み、なおより好ましくは該付着基は、1つまたは2つのS原子を含み、なおより好ましくは該付着基は、 【化2】 [図:0001436639000002.jpg] であり、ここで「#」は、基Yへの連結点を表し、および「*」は、コアの表面または半電導性発光ナノ粒子のシェル層の最も外側の表面への連結点を表し、 R2は、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、 Raは、出現毎に、同一にまたは異なって、H、D、または、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~40個の炭素原子を有する環状アルキルまたはアルコキシ基、5~60個の炭素環原子を有する芳香環系、または、5~60個の炭素原子を有するヘテロ芳香環系であり、ここでH原子は、D、F、Cl、Br、Iによって置き換えられていてもよく、ここで2以上の隣接する置換基Raは、相互に、モノ-または多環式、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香環系を形成してもまたよく、 R3は、二価の結合であり、好ましくはそれは、1~25個の炭素原子、好ましくは1~15個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、なおより好ましくは1~5個の炭素原子を有する線状のアルキレン基またはアルコキシレン基からなる群の1以上の要素から選択され、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、好ましくは非隣接するCH2基のいずれも置換されていない、 R4は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 R5は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 で表される化学化合物、 を含む半電導性発光ナノ粒子。」 2 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成C8までに分説する。なお、読みやすくするために、適宜改行を入れた。 <本願明の分説> 【請求項1】 少なくとも、 A i)第1半電導性材料、 B ii)任意に少なくとも1つのシェル層、 C iii)以下の化学式(I) 【化1】 [図:0001436639000003.jpg] 式中、 C1 XおよびYは、各々独立してまたは互いに従属して、O、S、PまたはN、好ましくはOまたはSであり、 C2 nは、YがOまたはSである場合0であり、nは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 C3 mは、XがOまたはSである場合0であり、mは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 C4 R1は、付着基であり、好ましくは該付着基は、S、Se、O、PまたはNから選択される少なくとも1つの元素、より好ましくは硫黄またはセレンを含有する基を含み、なおより好ましくは該付着基は、1つまたは2つのS原子を含み、なおより好ましくは該付着基は、 【化2】 [図:0001436639000004.jpg] であり、ここで「#」は、基Yへの連結点を表し、および「*」は、コアの表面または半電導性発光ナノ粒子のシェル層の最も外側の表面への連結点を表し、 C5 R2は、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および 4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、 ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、 ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、および ここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、 Raは、出現毎に、同一にまたは異なって、 H、D、または、 1~20個の炭素原子を有するアルキル基、 3~40個の炭素原子を有する環状アルキルまたはアルコキシ基、 5~60個の炭素環原子を有する芳香環系、または、 5~60個の炭素原子を有するヘテロ芳香環系であり、ここでH原子は、D、F、Cl、Br、Iによって置き換えられていてもよく、ここで2以上の隣接する置換基Raは、相互に、モノ-または多環式、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香環系を形成してもまたよく、 C6 R3は、二価の結合であり、 好ましくはそれは、1~25個の炭素原子、好ましくは1~15個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、なおより好ましくは1~5個の炭素原子を有する線状のアルキレン基またはアルコキシレン基からなる群の1以上の要素から選択され、 ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、および ここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、 好ましくは非隣接するCH2基のいずれも置換されていない、 C7 R4は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 C8 R5は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 C で表される化学化合物、 X を含む半電導性発光ナノ粒子。 3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、【0010】の記載で下線を引いたところは、令和5年11月17日に提出された手続補正書で請求項1から削除された選択肢である。 「【技術分野】 【0001】 本発明の分野 本発明は、半電導性発光ナノ粒子、半電導性発光ナノ粒子を含む組成物、配合物、半電導性発光ナノ粒子の使用、組成物の使用、配合物の使用、光学媒体、および光学デバイスに関する。 【背景技術】 【0002】 背景技術 US 2010/0068522 A1には、結合基としてカルボキシラート基および官能基の好適な末端不飽和基としてビニル基を有する表面結合リガンドをもつ量子ドットナノ粒子が開示される。 US 9,666,768 B2には、量子ドットナノ粒子のために好適なリガンドとして化学式(1)~(6)で表されるジチオリガンドを使用することが記述される。 …(中略)… 【発明の概要】 【0005】 本発明の概要 しかしながら、本発明者らは、以下に列挙されるとおりの、改善が所望される1以上の相当な問題がなお存在することを新しく見出した。 ナノ粒子の量子収量の改善、より高いデバイス効率、ナノ粒子のトラップ放射を低下させること、ナノ粒子のシェル部分の表面状態を最適化すること、ナノ粒子のシェル層の格子欠陥を低減させること、シェル層のダングリングボンドの形成の低減/防止すること、より良好な熱安定性、改善された酸化安定性、ラジカル物質への改善された安定性、QYの著しい低下を引き起こさない長期保存の間の改善された安定性、より良好な化学的安定性、ナノ粒子の製作プロセスを最適化すること、シェル層の格子欠陥を低減するための新しい製作プロセス、および、環境にやさしく、およびより安全な製作プロセスを提供すること。 【0006】 本発明者らは、上述の問題の1以上を解決することを目指した。 次いで、少なくとも、 i)第1半電導性材料、 ii)任意に少なくとも1つのシェル層、 iii)以下の化学式(I) 【化1】 [図:0001436639000005.jpg] 式中、 【0007】 XおよびYは、各々独立してまたは互いに従属して、O、S、PまたはN、好ましくはOまたはSであり、 nは、YがOまたはSである場合0であり、nは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 mは、XがOまたはSである場合0であり、mは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 【0008】 R1は、付着基であり、好ましくは該付着基は、S、Se、O、PまたはNから選択される少なくとも1つの元素、より好ましくは硫黄またはセレンを含有する基を含み、なおより好ましくは該付着基は、1つまたは2つのS原子を含み、なおより好ましくは該付着基は、 【化2】 [図:0001436639000006.jpg] であり、ここで「#」は、基Yへの連結点を表し、および「*」は、第1半電導性材料の表面または半電導性発光ナノ粒子のシェル層の最も外側の表面への連結点を表し、 【0009】 ナノ粒子が2より多くのシェル層を含む場合、「*」は、半電導性発光ナノ粒子のシェル層の最も外側の表面への連結点を表し、 【0010】 R2は、1~40個の炭素原子、好ましくは1~25個の炭素原子、より好ましくは1~15個の炭素原子を有する線状のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、2~40個の炭素原子、好ましくは2~25個の炭素原子を有するアルケニル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよい、 【0011】 Raは、出現毎に、同一にまたは異なって、H、D、または、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~40個の炭素原子を有する環状アルキルまたはアルコキシ基、5~60個の炭素環原子を有する芳香環系、または、5~60個の炭素原子を有するヘテロ芳香環系であり、ここでH原子は、D、F、Cl、Br、Iによって置き換えられていてもよく、ここで2以上の隣接する置換基Raは、相互に、モノ-または多環式、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香環系を形成してもまたよく、 【0012】 R3は、二価の結合であり、好ましくはそれは、1~25個の炭素原子、好ましくは1~15個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、なおより好ましくは1~5個の炭素原子を有する線状のアルキレン基またはアルコキシレン基からなる群の1以上の要素から選択され、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、好ましくは非隣接するCH2基のいずれも置換されていない、 【0013】 R4は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 【0014】 R5は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 で表される化学化合物、 を含む、本質的にからなる、またはからなる新規な半電導性発光ナノ粒子を見出した。」 「【0111】 技術的効果 本発明は、以下の技術的効果の1以上を提供する。 ナノ粒子の量子収量の改善、より高いデバイス効率、ナノ粒子のトラップ放射を低下させること、ナノ粒子のシェル部分の表面状態を最適化すること、ナノ粒子のシェル層の格子欠陥を低減させること、シェル層のダングリングボンドの形成の低減/防止すること、より良好な熱安定性、改善された酸化安定性、ラジカル物質への改善された安定性、QYの著しい低下を引き起こさない長期保存の間の改善された安定性、より良好な化学的安定性、ナノ粒子の製作プロセスを最適化すること、シェル層の格子欠陥を低減するための新しい製作プロセス、および、環境にやさしく、およびより安全な製作プロセスを提供すること。 以下の実施例1~6は、本発明の説明、ならびにそれらの製造の詳細な説明を提供する。」 「【0112】 実施例 比較例1:トルエン中においてドデカンチオール、ステアリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸のリガンドをもつ量子ドット 【0113】 トルエン中においてドデカンチオール、ステアリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸のリガンドをもつRed InP ベースの量子ドット(QD)を、US7,588,828 Bに記載されるとおり調製する。 次いでQDを乾燥トルエン中において0.08mg/mLの濃度にて溶解させ、および初期量子収率(以後、初期QY)についてHamamatsu Quantaurusにおいて測定する。 【0114】 その後、100mgのQDを2mLの乾燥トルエン中において溶解させ、および3mgの光開始剤Irgacure@TPOと混合し、およびアルゴン下、365nmをもつ光源に60min間曝露させながら室温にて撹拌させる。試料を採取する。次いで試料を0.08mg/mLに希釈する。および次いで、試料の量子収率をHamamatsu Quantaurusにより測定する。 【0115】 各試料の初期QYを、以下の式を使用することによって100%に設定する。 正規化された初期QY(100%)=各試料の初期QY*α 正規化されたQYは、以下の式に基づき計算される。 正規化されたQY=(QY*α/初期QY)*100 測定の結果を表4に示す。 【0116】 【表4】 [図:0001436639000007.jpg] 【0117】 実施例1:トルエン中において化学化合物イソ-オクチルメルカプトアセタート(IOMA)をもつ量子ドット トルエン中においてドデカンチオール、ステアリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸のリガンドをもつRed InP ベースの量子ドット(QD)を、US7,588,828 Bに記載されるとおり調製する。 【0118】 -リガンド交換 5mLのQD溶液(トルエン中において50mg/mL)を0,098gのIOMA(Bruno Bock イソ-オクチル チオグリコラート、dist.40286)と混合し、およびアルゴン下で50℃にて終夜撹拌する。混合物を遠心分離バイアルに移し、および5mLの乾燥メタノールを添加する。混合物をアルゴン下で4000rpm、5min間遠心分離する。その後、無色の上澄みを除去し、および赤色の沈殿物を5mLの乾燥トルエン中において懸濁させ、QDを0.08mg/mLの濃度にて乾燥トルエン中において溶解させる。 【0119】 次いでそれを、初期量子収率(以下、初期QY)についてHamamatsu Quantaurusにおいて測定する。 その後、100mgのQDを2mLの乾燥トルエン中において溶解させ、および3mgの光開始剤Irgacure@TPOと混合し、およびアルゴン下、365nmをもつ光源に60min間曝露させながら室温にて撹拌させる。試料を採取する。次いで試料を0.08mg/mLに希釈する。および次いで、試料の量子収率をHamamatsu Quantaurusにより測定する。 測定の結果を表5に示す。 【0120】 【表5】 [図:0001436639000008.jpg] 【0121】 実施例2:トルエン中において化学化合物イソ-オクチルメルカプトプロピオナート(IOMP)をもつ量子ドット トルエン中において化学化合物IOMPをもつ量子ドットを、IOMAの代わりにIOMPを使用することを除き、実施例1に記載されるとおりと同じやり方において調製する。 QY測定の結果を表6に示す。 【0122】 【表6】 [図:0001436639000009.jpg] 【0123】 実施例3:トルエン中において化学化合物イソ-トリデクチルメルカプトプロピオナート(ITMP)をもつ量子ドット トルエン中において化学化合物ITMPをもつ量子ドットを、IOMAの代わりにITMPを使用することを除き、実施例1に記載されるとおりと同じやり方において調製する。 QY測定の結果を表7に示す。 【0124】 【表7】 [図:0001436639000010.jpg] 【0125】 実施例4:トルエン中において化学化合物イソ-トリデクチルメルカプトアセタート(ITMA)をもつ量子ドット トルエン中において化学化合物ITMAをもつ量子ドットを、IOMAの代わりにITMAを使用することを除き、実施例1に記載されるとおりと同じやり方において調製する。 QY測定の結果を表8に示す。 【0126】 【表8】 [図:0001436639000011.jpg] 【0127】 実施例5:トルエン中において化学化合物フェニルメルカプトアセタート(PMA)をもつ量子ドット トルエン中において化学化合物PMAをもつ量子ドットを、IOMAの代わりにPMAを使用することを除き、実施例1に記載されるとおりと同じやり方において調製する。次いで試料をQY測定のために採取する。 【0128】 実施例6:QY測定 実施例6におけるQY測定において、比較例1からの試料、実施例1からの試料、および実施例5からの試料を測定し、本発明の効果を比較する。 本実施例において、量子収率を、Hamamatsu Quantaurusを使用して、比較例1に記載のとおりに正規化せずに測定する。したがって、図1において用語「量子収率(またはQY)」は、絶対量子収率を意味する。 図1は、QY測定の結果を示す。 【図1】 [図:0001436639000012.jpg] 」 第3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由1(新規性の欠如)及び理由2(進歩性の欠如)の概要は、次の理由を含むものである。 1 理由1(新規性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 2 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献2.特開2018-153915号公報 第4 引用文献2の記載事項及び引用発明の認定 1 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である引用文献2(特開2018-153915号公報には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記2の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 (1) 【特許請求の範囲】 「表面上に配位子層を有する量子ドットであって、 前記配位子層が下記の化学式1~4で表される化合物のうちの1種以上を含む量子ドット: 【化1】 [図:0001436639000013.jpg] 【化2】 [図:0001436639000014.jpg] 【化3】 [図:0001436639000015.jpg] 【化4】 [図:0001436639000016.jpg] 前記式中、 X1は、水素又はC1~C3のアルキル基であり、 R1は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、 X2及びY1は、それぞれ独立して、水素又はC1~C3のアルキル基であり、 R2は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、 nは、0~1の整数であり、 X3は、C1~C3のアルキレン基であり、 R3は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、 X4は、C1~C5のアルキレン基であり、 Y2は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基である。 …(後略)」 (2) 【技術分野】~【効果】(【0001】~【0020】) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、有機配位子を有する量子ドット及びその用途に係り、より詳しくは、有機配位子として、マロン酸誘導体、チオチオール化合物、チオカルボン酸化合物、及びエステル基とチオール基を含有する化合物のうちの1種以上を有して酸化安定性に優れる量子ドット及びその用途に関する。 【0002】 量子ドットは、ナノメートルの大きさを有する半導体ナノ結晶であって、大きさや形状によってエネルギーバンドギャップ(Bandgap、Eg)が変わる特徴を持っている。このような量子ドットは、量子閉じ込め(quantum confinement)効果により量子ドットの大きさの調節だけで発光波長を調節することができ、且つ優れた色純度及び高いPL(photoluminescence)効率を示すことができ、ディスプレイだけではなく照明用光源、太陽電池、半導体レーザ/光増幅器、バイオイメージングなどの分野でも多くの関心を集めている。 【0003】 量子ドットは、優れた光学的特性を有する量子ドットを大量生産できるという点から主に湿式化学工程によって製造されている。湿式化学工程は、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。このような湿式化学工程により量子ドットを製造した場合、量子ドットの凝集を防止し且つ量子ドットの粒子の大きさをナノ水準に制御するために有機配位子が用いられる。このような有機配位子としては、一般にオレイン酸が用いられている[大韓民国登録特許第10-1,447,238号参照]。 【0004】 しかし、このような量子ドットは空気中の酸素によって酸化され易い。そのため、酸化安定性に優れる量子ドットに関する開発が望まれている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の一目的は、酸化安定に優れる量子ドットを提供することである。 …(中略)… 【発明の効果】 【0020】 本発明による量子ドットは、酸化安定性に優れるため、量子ドットフィルム、カラーフィルター、量子ドット発光ダイオードなどの多様な用途に効果的に適用され得る。」 (3) 【発明を実施するための形態】(【0021】~【0097】) 「【発明を実施するための形態】 【0021】 以下、本発明をより詳しく説明する。 【0022】 本発明の一実施形態は、表面上に配位子層を有する量子ドットであって、前記配位子層が下記の化学式1で表されるマロン酸誘導体、化学式2で表されるチオチオール化合物、化学式3で表されるチオカルボン酸化合物、及び化学式4で表されるエステル基とチオール基を含有する化合物のうちの1種以上を含む量子ドットに関する。 【0023】 【化5】 [図:0001436639000017.jpg] 【0024】 【化6】 [図:0001436639000018.jpg] 【0025】 【化7】 [図:0001436639000019.jpg] 【0026】 【化8】 [図:0001436639000020.jpg] 【0027】 前記式中、 X1は、水素又はC1~C3のアルキル基であり、 R1は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、 X2及びY1は、それぞれ独立して、水素又はC1~C3のアルキル基であり、 R2は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、 nは、0~1の整数であり、 X3は、C1~C3のアルキレン基であり、 R3は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、 X4は、C1~C5のアルキレン基であり、 Y2は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基である。 【0028】 本明細書において用いられるC1~C3のアルキル基は、炭素数1~3個からなる直鎖状若しくは分岐状の炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。 【0029】 本明細書において用いられるC4~C22のアルキル基は、炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の炭化水素を意味し、例えば、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコサニル、ドコサニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。 【0030】 本明細書において用いられるC4~C22のアルケニル基は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素を意味し、例えば、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ドコセニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。 【0031】 本明細書において用いられるC1~C3のアルキレン基は、炭素数1~3個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素を意味し、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、i-プロピレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。 【0032】 本明細書において用いられるC1~C5のアルキレン基は、炭素数1~5個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。 【0033】 本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、X1が水素又はメチルであり、R1は、C16~C20のアルキル基又はC16~C20のアルケニル基である化合物であってよい。 【0034】 本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、X1が水素であり、R1は、C16~C20のアルキル基又はC16~C20のアルケニル基である化合物であってよい。 …(中略)… 【0077】 本発明の一実施形態において、前記化学式4で表されるエステル基とチオール基を含有する化合物は有機配位子であって、量子ドットの表面にエステル基の「=o」とチオール基の「S」が二重で配位結合されて量子ドットを安定化させる役割を遂行することができる。 【0078】 前記化学式4で表されるエステル基とチオール基を含有する化合物は極性官能基であって、チオールとエステル基とを共に有することで、オレイン酸に比べて、量子ドットとの結合力に優れている。 【0079】 また、前記化学式4で表されるエステル基とチオール基を含有する化合物は、X4が直鎖状構造を有する場合、立体障害が小さいことからより近接した距離で量子ドットと結合することができるため、量子ドットを構成する金属元素とより強い配位結合をなし得る。 …(中略)… 【0083】 本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、ナノ大きさの半導体物質を称するものであってよい。原子が分子をなし、分子はクラスタという小さな分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、このようなナノ粒子が半導体特性を呈しているときに量子ドットという。前記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて浮き状態になると、当該量子ドットの自ら該当するエネルギーバンドギャップに応じたエネルギーを放出するようになる。 【0084】 前記量子ドットは、光または電気による刺激で発光することができる量子ドット粒子であれば特に限定されない。例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素またはこれを含む化合物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってよく、これらは、単独でまたは2種以上混合して用いていてよい。 …(中略)… 【0089】 前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)、グラディエント(gradient)構造などのような二重構造;または、これらの混合構造を有していてよい。好ましくは、前記量子ドットは、コア及びコアを覆うシェルを含むコア-シェル構造を有していてよい。 …(中略)… 【0097】 また、本発明の一実施形態に係る量子ドットは、10日以降でも初期の量子効率に対して80%以上の量子効率を保つことができ、長期に亘り安定して保管が可能であるため、多様な用途としての商用化が可能である。 …(後略)」 (4) 【実施例】(【0149】~【0193】) 「【実施例】 【0149】 (前略)… 【0178】 実施例12-2:化学式27で表される配位子を有するInP/ZnSコア-シェル量子ドットの製造 化学式5で表される配位子に代えて、化学式27で表される配位子を用いることを除いては、実施例1-2と同様に実施した。 …(中略)… 【0189】 (2)量子効率 前記実施例1-2~12-2と比較例1-2及び2-2の量子ドット分散液製造初期の量子効率(QY%)と常温で10日放置後の量子効率(QY%)をPL分光光度計及びUV-Vis分光光度計を用いて測定した。 【0190】 量子ドットの表面が酸化すると、量子効率が減少するようになるため、量子効率の減少量を測定して酸化安定性を確認することができる。すなわち、ΔQY%を測定して酸化安定性を確認することができる。 【0191】 【表2】 [図:0001436639000021.jpg] 【0192】 前記表2に表したように、本発明に係る化学式1~4で表される化合物のうちの1種以上の有機配位子を有する実施例1-2~12-2の量子ドットは、比較例1-2及び2-2の量子ドットに比べて、量子効率の低下が抑制されることを確認することができた。したがって、本発明に係る化学式1~4で表される化合物のうちの1種以上の有機配位子を有する実施例1-2~12-2の量子ドットが、比較例1-2及び2-2の量子ドットに比べて、酸化安定性により優れていることを確認することができた。 【0193】 特に、本発明に係る化学式1~4で表される化合物のうちの1種以上の有機配位子を有する実施例1-2~12-2の量子ドットは、10日以降でも初期の量子効率に対して80%以上の量子効率を保っているのに対し、オレイン酸配位子を有する比較例1-2の量子ドットは初期の量子効率に対して35%の水準に量子効率が大きく低下し、末端にチオール基が位置する配位子を有する比較例2-2の量子ドットも初期の量子効率に対して65%水準の量子効率を示し、量子効率低下の抑制効果に劣っていることを確認することができた。」 2 引用発明の認定 前記1に摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、請求項1で式(4)を選択したものに係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「表面上に配位子層を有する量子ドットであって、 前記配位子層が下記の化学式4で表される化合物のうちの1種以上を含み、(請求項1) 前記量子ドットは、ナノ大きさの半導体物質を称し、(【0083】) 光または電気による刺激で発光することができるものであり、(【0084】) コア-シェル(core-shell)構造を有していてよい、(【0089】) 量子ドット: 【化4】 [図:0001436639000022.jpg] 前記式中、X4は、C1~C5のアルキレン基であり、 Y2は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基であり、(請求項1) C4~C22のアルキル基は、炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の炭化水素を意味し、(【0029】) C4~C22のアルケニル基は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素を意味し、(【0030】) C1~C5のアルキレン基は、炭素数1~5個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素を意味する。(【0032】)」 第5 本願発明と引用発明の対比 1 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 (1) 構成Xの観点(半電導性発光ナノ粒子) 引用発明の「量子ドット」は、「ナノ大きさの半導体物質」であって、「光または電気による刺激で発光することができるものであ「る」」ことから、本願発明にいうところの「半電導性発光ナノ粒子」であるといえる。したがって、本願発明と引用発明は、「半電導性発光ナノ粒子」の発明である点において一致する。 (2) 構成Aの観点(第1半電導性材料について) ア 構成Aは、「第1半電導性材料」を含むことである。 イ 引用発明の「量子ドット」は、「ナノ大きさの半導体物質」であるから、本願発明にいうところの「第1半電導性材料」に相当する構成を備えることは明らかである。 ウ したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「第1半電導性材料」を含む点。 (3) 構成Bの観点(シェル層について) ア 構成Bは、「任意に少なくとも1つのシェル層」を含むことである。 イ 構成Bは、任意付加の構成であるから、無くてもよいものであり、もとより相違点は構成しない。 さらには、引用発明は、「コア-シェル(core-shell)構造を有していてよい」ものであるから、本願発明にいうところの「任意に少なくとも1つのシェル層」を含むものであるといえる。 ウ したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「任意に少なくとも1つのシェル層」「を含む」点。 (4) 構成Cの観点(化学式(I)で表される化合物について) ア 構成Cは、下記の「化学式(I)」で表される化合物を含むことである。 [図:0001436639000023.jpg] 引用発明における次の式(4)と本願発明における前記「化学式(I)」について対比する。 [図:0001436639000024.jpg] イ 構成C1(X及びY)について 引用発明における2個の「O」は、本願発明における「X」及び「Y」について、「O」を選択したものに相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成C1を充足する。 ウ 構成C2(n)及びC7(R4)について 本願発明においては、「YがO」の場合、「R4」の数である「n」は「0」であるところ、引用発明における「Y2」は本願発明における「R2」と対応付けでき、本願発明における「R4」は存在しないから、引用発明は「n=0」の要件を充足することとなる。 したがって、引用発明は、本願発明の構成C2を充足する。 また、「R4」が存在したときの条件であり、存在しないときは無視される構成C7も充足することとなる。 エ 構成C3(m)及び構成C8(R5)について 本願発明においては、「YがO」の場合、「R5」の数である「m」は「0」であるところ、引用発明においては、本願発明における「R5」は存在しないから、引用発明は「m=0」の要件を充足することとなる。 したがって、引用発明は、本願発明の構成C3を充足する。 また、「R5」が存在したときの条件であり、存在しないときは無視される構成C8も充足することとなる。 オ 構成C4について 引用発明における「HS」は、本願発明における「#-S-H」に相当するから、引用発明は本願発明の構成C4を充足する。 カ 構成C5について (ア) 引用発明における「Y2」は、本願発明における「R2」に対応するものである。 (イ)a 引用発明においては、「Y2は、C4~C22のアルキル基又はC4~C22のアルケニル基」である。 b ここで、引用発明においては、「C4~C22のアルキル基」と「C4~C22のアルケニル基」については、次のとおり定義されている。 (a) 「C4~C22のアルキル基は、炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の炭化水素を意味[する]。」 (b) 「C4~C22のアルケニル基は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素を意味[する]。」 (ウ) 本願発明においては、「R2」は、つぎのとおりである。 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、 3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および 4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基 からなる群の1以上の要素(member)から選択され、 ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、 ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、および ここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよ[い]」。 (エ)a そうすると、本願発明と引用発明は次の要件を充足する点において共通する。 「R2は、4~22個の炭素原子を有する直線状若しくは分岐状のアルキル基、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する4~22個の炭素原子からなる直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、1~40個の炭素原子、好ましくは1~25個の炭素原子、より好ましくは1~15個の炭素原子を有する線状のアルキル基またはアルコキシル基、33~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよ[い]」点。 b そして、次の点において相違すると認められる。 R2が 本願発明においては、 「3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよ[い]」であって、「4~22個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基」と「4~22個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の不飽和炭化水素であるアルケニル基」が選択肢に含まれないのに対して、 引用発明においては、 「炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状のアルキル基炭化水素」又は「一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素であるアルケニル基」である点。 キ 構成C6について 引用発明においては、「X4は、C1~C5のアルキレン基であり、」「C1~C5のアルキレン基は、炭素数1~5個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素を意味する」ことから、本願発明における「R3は、二価の結合であ[る]」ことに相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成C6を充足する。 2 一致点及び相違点 前記1の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 (1) 一致点 「少なくとも、 i)第1半電導性材料、 ii)任意に少なくとも1つのシェル層、 iii)以下の化学式(I) 【化1】 [図:0001436639000025.jpg] 式中、 XおよびYは、各々独立してまたは互いに従属して、O、S、PまたはN、好ましくはOまたはSであり、 nは、YがOまたはSである場合0であり、nは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 mは、XがOまたはSである場合0であり、mは、YがNまたはPである場合1であり、好ましくはnは、0であり、 R1は、付着基であり、好ましくは該付着基は、S、Se、O、PまたはNから選択される少なくとも1つの元素、より好ましくは硫黄またはセレンを含有する基を含み、なおより好ましくは該付着基は、1つまたは2つのS原子を含み、なおより好ましくは該付着基は、 【化2】 [図:0001436639000026.jpg] であり、ここで「#」は、基Yへの連結点を表し、および「*」は、コアの表面または半電導性発光ナノ粒子のシェル層の最も外側の表面への連結点を表し、 R2は、4~22個の炭素原子を有する直線状若しくは分岐状のアルキル基、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する4~22個の炭素原子からなる直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、 Raは、出現毎に、同一にまたは異なって、H、D、または、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~40個の炭素原子を有する環状アルキルまたはアルコキシ基、5~60個の炭素環原子を有する芳香環系、または、5~60個の炭素原子を有するヘテロ芳香環系であり、ここでH原子は、D、F、Cl、Br、Iによって置き換えられていてもよく、ここで2以上の隣接する置換基Raは、相互に、モノ-または多環式、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香環系を形成してもまたよく、 R3は、二価の結合であり、好ましくはそれは、1~25個の炭素原子、好ましくは1~15個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、なおより好ましくは1~5個の炭素原子を有する線状のアルキレン基またはアルコキシレン基からなる群の1以上の要素から選択され、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよく、好ましくは非隣接するCH2基のいずれも置換されていない、 R4は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 R5は、H原子、D原子、またはR2からなる群の1以上の要素から選択され、 で表される化学化合物、 を含む半電導性発光ナノ粒子」の発明である点。 (2) 相違点 R2が、 本願発明においては、 「3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基またはアルコキシル基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子、より好ましくは3~15個の炭素原子を有するシクロアルカン基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するアリール基、3~40個の炭素原子、好ましくは3~25個の炭素原子を有するヘテロアリール基、および4~40個の炭素原子、好ましくは4~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群の1以上の要素(member)から選択され、ここで各場合において1以上のラジカルRaによって置換されていてもよく、ここで1以上の非隣接するCH2基は、RaC=CRa、C≡C、Si(Ra)2、Ge(Ra)2、Sn(Ra)2、C=O、C=S、C=NRa、SO、SO2、NRa、またはCONRaによって置き換えられていてもよく、およびここで1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO2、または、1以上のラジカルRaによって置換されていてもよい5~60個の芳香環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香環系によって置き換えられていてもよ[い]」であって、4~22個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基」と「4~22個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の不飽和炭化水素であるアルケニル基」が選択肢に含まれないのに対して、 引用発明においては、 「炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状のアルキル基炭化水素」又は「一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素であるアルケニル基」である点。 第6 判断 1 相違点は選択にすぎないこと 引用発明におけるR2の選択肢である「炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状のアルキル基炭化水素」又は「一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素であるアルケニル基」の中から、「炭素数4~22個からなる分岐状のアルキル基炭化水素」を選択すると、本願発明の構成を備えるようになる。 このような選択は、そもそも自明である。 2 効果についての検討 (1) 効果に係る請求人の主張 請求人は、審判請求書において、本願発明の効果について、次の点を主張する。 ア 本願発明は、請求項1で特定された構成を採用することにより、(1)QYの著しい低下を引き起こさない長期保存の間の改善された安定性、(2)改善された酸化安定性、改善された化学的安定性、(3)ラジカル物質への改善された安定性を提供するという、顕著な効果を奏するものである([0111]および実施例)。 イ 本願の比較例には、ドデカンチオール、ステアリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸のリガンドをもつ量子ドットが開示されている。 [図:0001436639000027.jpg] これらは、引用文献2の化学式(27) [図:0001436639000028.jpg] のように、長い直鎖のアルキル基を有しており、本願特許明細書の比較例1及び実施例には、直鎖アルキル鎖を有するこれらのリガンドのQY測定値は、本願の請求項1に記載のリガンドと比較して非常に低いことが示されているから、本願発明が、引用発明からも想起し得ない顕著な効果を奏することは明らかであるものと思料する。 (2) 請求人の主張する効果の検討 前記請求人の主張する顕著な効果は、本願の明細書の比較例1と実施例との比較であり、比較例1のドデカンチオール、ステアリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸は、エステル基とチオール基を両方とも有するものではなく、引用発明における選択肢の一つである「炭素数4~22個からなる直鎖状若しくは分岐状のアルキル基炭化水素」において、直鎖状のものと分岐状のものとの差を示すものではない。 そして、本願の出願当初の【請求項1】及び明細書の【0010】においては、「1~40個の炭素原子、好ましくは1~25個の炭素原子、より好ましくは1~15個の炭素原子を有する線状のアルキル基またはアルコキシル基」及び「2~40個の炭素原子、好ましくは2~25個の炭素原子を有するアルケニル基」が選択肢として含まれており、こららとこれらを除外したものとの間で、作用効果上の差があることをうかがわせるような記載は、本願明細書の発明の詳細な説明にはない。 そうすると、前記1で指摘したとおり、相違点は引用発明における選択肢の中から選択することにより到達されるものであり、そもそも自明であるところ、かかる自明性を覆して、選択発明として進歩性を認めることを正当化するような事情があるとはいえない。 したがって、本願発明には、引用発明との実質的な相違点を認めることができないから、引用発明と同一であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、又は、同条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-010776

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