特許拒絶査定不服審判
2017-010482
複数置換プロテアーゼ変異体
- 審判番号
- 2017-010482
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-107226外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月13日
- 審決日
- 2018年07月03日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダニスコ・ユーエス・インク
- 【請求人代理人】山崎 行造
- 分類
- P18 .121-Z (C12N) / P18 .575-Z (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-107226「複数置換プロテアーゼ変異体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-198660〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成15年1月16日(パリ条約による優先権主張 2002年1月16日 米国)を国際出願日とする特許出願である特願2003-562248号の一部を、平成25年1月8日に新たな特許出願としたものである特願2013-1180号の一部を、平成27年5月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 5月19日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月10日付け:拒絶査定
平成29年 7月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年 7月27日 :審判請求書を対象とする手続補正書の提出
第2 平成29年7月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年7月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1-4の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、7N、23A、26S、26T、28C、28S、29G、30A、31A、31I、31T、31V、47D、61E、65M、66D、66E、73G、73T、82R、85G、85S、85V、88S、90A、90I、90M、90V、92E、92R、93A、93G、93S、93T、105D、105E、105R、113D、139A、148G、149A、149F、149G、149H、149S、149W、150A、150C、150F、150L、151V、174G、174S、178S、178C、178L、200S、201C、201S、203D、203E、216E、231G、231S、233G、267R、267I、273S、231V、及び258Eからなる群より選択される1以上の置換を有し、
前記アミノ酸置換の位置番号が、配列番号2に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号に基づき、かつ
前記変異体が、a)洗浄能力及びb)熱安定性から選択される少なくとも1の改善された性質を有する、
プロテアーゼ変異体。
【請求項2】
請求項1のプロテアーゼ変異体であって、
前記置換が、位置7N、23A、26S、26T、28C、28S、29G、30A、31A、31I、31T、31V、47D、65M、66D、66E、73G、73T、82R、85G、85S、85V、88S、90A、90I、90M、92E、92R、93A、93G、93S、93T、105D、105E、105R、113D、139A、148G、149A、149F、149G、149H、149S、149W、150A、150C、150F、150L、151V、178S、178C、178L、201C、231G、231S、233G、267R、267I、及び273Sからなる群より選択され、かつ
前記変異体が、親ズブチリシンに対して改善された熱安定性を有する、
プロテアーゼ変異体。
【請求項3】
請求項1のプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、20℃で、濃度0.5~1.0ppmプロテアーゼ及び水の硬度条件が3グレイン/ガロン(grains per gallon)合計Ca2+/Mg2+硬度で改善された洗浄能力を有し、かつ
前記置換が、31I、31V、47D、85G、90V、92E、105D、105E、113D、151V、174G、174S、200S、及び201Cからなる群より選択される、
プロテアーゼ変異体。
【請求項4】
請求項1のプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、40℃で、プロテアーゼ濃度0.3~0.5ppmプロテアーゼ及び水の硬度条件が15グレイン/ガロン合計Ca2+/Mg2+硬度で改善された洗浄能力を有し、かつ
前記置換が、31I、31V、82R、148G、201S、231V、233G、及び267Rからなる群より選択される、
プロテアーゼ変異体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、7N、23A、26S、26T、28C、28G、28S、28T、29G、30A、31A、31I、31T、31V、47D、47S、61E、65M、66D、66E、69G、73G、73T、82R、85D、85G、85S、85L、85V、85Y、88S、90A、90I、90M、90V、92E、92R、93A、93G、93S、93T、105D、105E、105G、105R、113D、139A、148G、148W、149A、149F、149G、149H、149S、149W、150A、150C、150F、150L、151V、174G、174S、178S、178C、178L、200S、201C、201S、203D、203E、216E、231G、231S、233G、233V、267R、267I、273S、231V、及び258Eからなる群より選択される1以上の置換を有し、
前記アミノ酸置換の位置番号が、配列番号2に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号に基づき、かつ
前記変異体が、a)洗浄能力及びb)熱安定性から選択される少なくとも1の改善された性質を有する、
プロテアーゼ変異体。
【請求項2】
請求項1のプロテアーゼ変異体であって、
前記置換が、位置7N、23A、26S、26T、28C、28G、28S、28T、29G、30A、31A、311、31T、31V、47D、65M、66D、66E、73G、73T、82R、85D、85G、85S、85L、85V、85Y、88S、90A、90I、90M、92E、92R、93A、93G、93S、93T、105D、105E、105G、105R、113D、139A、148G、149A、149F、149G、149H、149S、149W、150A、150C、150F、150L、151V、178S、178C、178L、201C、231G、231S、233G、233V、267R、267I、及び273Sからなる群より選択され、かつ前記変異体が、親ズブチリシンに対して改善された熱安定性を有する、
プロテアーゼ変異体。
【請求項3】
請求項1のプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、20℃で、濃度0.5~1.0ppmプロテアーゼ及び水の硬度条件が3グレイン/ガロン(grains per gallon)合計Ca2+/Mg2+硬度で改善された洗浄能力を有し、かつ
前記置換が、311、31V、47S、47D、85G、90V、92E、105D、105E、113D、148W、151V、174G、174S、200S、及び201Cからなる群より選択される、
プロテアーゼ変異体。
【請求項4】
請求項1のプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、40℃で、プロテアーゼ濃度0.3~0.5ppmプロテアーゼ及び水の硬度条件が15グレイン/ガロン合計Ca2+/Mg2+硬度で改善された洗浄能力を有し、かつ
前記置換が、311、31V、69G、82R、148G、201S、231V、233G、及び267Rからなる群より選択される、
プロテアーゼ変異体。」
2 補正の適否
本件補正のうち、本件補正前の請求項2-4に記載された「311」を「31I」にする補正は誤記の訂正を目的とするものに該当する。
また、本件補正前の請求項1-4に並列的に記載された変異体の一部を削除する補正は、限定的減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1-4に記載される発明(以下、「本件補正発明1」、「本件補正発明2」等という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討する。
(1)本件補正発明1-4
本件補正後の請求項1の「配列番号2」なる記載は、以下のとおり本願明細書の記載と矛盾しているので、この点について検討する。
本願明細書、図面には、以下のとおり記載されている。
「【0023】
1以上の残基位置におけるアミノ酸の具体的な置換は、バチルス・レンタス(BPN’の番号を用いて)中のA1E、A1D、A1R、A1K、W6R、G7N、Q12H、G23A、F24S、V26S、V26T、V28C、V28S、V28T、A29G、V30A、L31A、L31I、L31T、L31V、T38S、N43D、G47D、G47S、L50F、G52E、T57A、G65M、T66D、T66E、G69_、172C、172L、172V、A73L、A73G、A73T、A73V、L82R、A85D、A85G、A85L、A85S、A85V、A85Y、P86D、A88S、E89G、L90A、L90I、L90M、L90V、A92E、A92R、V93A、V93G、V93I、V93S、V93T、S99G、S103C、S105D、S105D、S105E、S105G、S105R、W113D、A114C、A114G、A114S、A114T、N116D、N117S、M119A、M119C、M119F、M119G、M119S、M119T、M119V、H120R、Q121I、G127A、S128D、S128L、E136R、V139A、A142E、R145G、V147C、V147G、V147L、V147S、L148G、L148W、V149A、V149F、V149G、V149H、V149S、V149W、V150A、V150C、V150F、V150L、A151V、S156E、S156D、A169G、R170M、A172T、A174G、A174S、A174T、G178C、G178L、G178S、I198A、I198L、I198M、I198V、I198T、M199V、A200S、P201C、P201S、V203R、V203D、V203E、V203L、V203S、N204D、Q206R、S216D、N218S、S216E、S216R、A231G、A231S、A232C、A232G、A232I、A232L、A232M、A232N、A231V、A232T、A232V、A232S、L233G、L233V、I246M、I246V、R247C、N252S、S256G、T253D、T253E、T253K、T253R、G258D、G258E、G258K、G258R、Y263H、G264S、L267I、L267R、A270L、A270V、A273S、T260Aに等しい。」
「【0114】
【図1A】バチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのDNA配列(配列番号1)及びアミノ酸配列(配列番号2)並びにこの遺伝子の制限地図の一部を示す。
・・・
【図3A】図3Aと3Bは、4つのズブチリシンのアミノ酸配列を表す。一番上の行はバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシン(ズブチリシンBPN’と呼ぶ時もある)から得たズブチリシンのアミノ酸配列を表す(配列番号3)。
・・・
4行目はバチルス・レンタス(PCT WO89/06276でズブチリシン309とも呼ばれている)から得たズブチリシンのアミノ酸配列を表す(配列番号6)。」
また、本願配列番号2、3、6で示されるアミノ酸配列は以下のとおりである。
配列番号2
配列番号3
配列番号6
本件補正後の請求項1の記載からみて、例えば、同項に記載の「258E」は、配列番号2に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号258位に対応する配列番号6(バチルス・レンタス・ズブチリシン)のアミノ酸を「E」に置換することを意味しているものと認められる。そして、配列番号2、6と図3A、Bの記載からみて、配列番号2に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号258位のアミノ酸は「Ala」(一文字表記では「A」)であり、これに対応する配列番号6(バチルス・レンタス・ズブチリシン)のアミノ酸は149位の「A」である。したがって、本件補正後の請求項1の記載からみると、本件補正後の請求項1に記載の「258E」は、配列番号6のアミノ酸配列の149位の「A」を「E」に置換することを意味しているものと解することができる。
他方、バチルス・アミロリケファシエンスの位置番号258位に対応する位置での置換について、本願明細書【0023】段落には「G258D」、「G258E」、「G258K」、「G258R」と記載されており、いずれも置換される前のアミノ酸が「G」であることから、上記本件補正後の請求項1の記載から理解できる「258E」の意味と矛盾する。
ここで、配列番号3は配列番号2のアミノ酸配列のN末端側107アミノ酸が欠失したアミノ酸配列を示すものであり、両者はいずれもバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのアミノ酸配列である。そこで、本件補正後の請求項1に記載の「配列番号2」が「配列番号3」の誤記であるとすると、配列番号3に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号258位のアミノ酸は「Gly」(一文字表記では「G」)であり、これに対応する配列番号6(バチルス・レンタス・ズブチリシン)のアミノ酸は252位の「G」であることから、本願明細書【0023】段落に記載された置換と矛盾しない。
同様に、本件補正後の請求項1に記載された他の置換についても、配列番号2の位置番号での置換は本願明細書【0023】段落に記載された置換と矛盾するが、本件補正後の請求項1に記載の「配列番号2」が「配列番号3」の誤記であるとすればそのような矛盾を生じず、また、本願明細書全体をみてもこれと矛盾する記載はない。
よって、本件補正後の請求項1に記載の「配列番号2」は「配列番号3」の誤記と認め、本件補正発明1は以下のとおりのものと認め、本件補正発明2-4は上記1(1)に記載したとおりのものと認める。
「【請求項1】
配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、7N、23A、26S、26T、28C、28S、29G、30A、31A、31I、31T、31V、47D、61E、65M、66D、66E、73G、73T、82R、85G、85S、85V、88S、90A、90I、90M、90V、92E、92R、93A、93G、93S、93T、105D、105E、105R、113D、139A、148G、149A、149F、149G、149H、149S、149W、150A、150C、150F、150L、151V、174G、174S、178S、178C、178L、200S、201C、201S、203D、203E、216E、231G、231S、233G、267R、267I、273S、231V、及び258Eからなる群より選択される1以上の置換を有し、
前記アミノ酸置換の位置番号が、配列番号3に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号に基づき、かつ
前記変異体が、a)洗浄能力及びb)熱安定性から選択される少なくとも1の改善された性質を有する、
プロテアーゼ変異体。」
(2)引用文献の記載事項(下線は当審で付した。)
ア 引用文献1
原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2001-520046号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 1以上の残基位置においてアミノ酸の置換を含むプロテアーゼ変異体であって、該置換が、その位置における電荷を、前駆体プロテアーゼと比較して、より負にまたはより正でないように改変し、かつ当該プロテアーゼ変異体は前駆体プロテアーゼより低い洗剤濃度系でより効果的であることを特徴とするプロテアーゼ変異体。
【請求項2】 前記プロテアーゼがスブチリシンであることを特徴とする請求項1記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項3】 バチラス(Bacillus)スブチリシンに由来することを特徴とする請求項1記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項4】 バチラス・レンタス(Bacillus lentus)スブチリシンに由来する請求項3記載のプロテアーゼ変異体。
・・・
【請求項11】 1以上の残基位置でアミノ酸残基の置換を含むプロテアーゼ変異体であって、該置換が、その位置における電荷を、前駆体プロテアーゼと比較して、より正にまたはより負でないように改変し、かつ当該プロテアーゼ変異体は前駆体プロテアーゼよりも高い洗剤濃度系でより効果的であることを特徴とするプロテアーゼ変異体。
【請求項12】 前記プロテアーゼがスブチリシンであることを特徴とする請求項11記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項13】 バチラス(Bacillus)スブチリシンに由来することを特徴とする請求項11記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項14】 バチラス・レンタス(Bacillus lentus)スブチリシンに由来する請求項13記載のプロテアーゼ変異体。」
(ア-2)
「 【0019】
我々は、低い洗剤濃度系でより効果的なプロテアーゼ変異体を生産するには、正に荷電した残基を負に荷電した残渣または中性残基でおよび/または中性残渣を負に荷電した残基で置き換える必要があることを見いだした。対照的に、我々は、高い洗剤濃度系でより効果的なプロテアーゼ変異体を生産するには、負に荷電した残基を正に荷電したまたは中性の残基でおよび/または中性残基を正に荷電した残基で置き換える必要があることを見いだした。さらに、我々は、低い洗剤濃度系および/または高い洗剤濃度系で有用なプロテアーゼ変異体の多くが中程度の洗剤濃度系で効果的であることを見いだした。これらの効果をバランスすることによって、低い洗剤濃度系、低いおよび中程度の洗剤濃度系、中程度のおよび高い洗剤濃度系、高い洗剤濃度系、または全ての3つの洗剤濃度系でよく働くプロテアーゼ変異体を生産することが可能である。」
(ア-3)
「 【0029】
本発明は、変異体のアミノ酸配列がそれに由来する前駆体カルボニルヒドロラーゼと比較して、異なる蛋白質分解活性、安定性、基質特異性、pHプロフィールおよび/または効率特徴を有する天然に生じるカルボニルヒドロラーゼ(プロテアーゼ変異体)であるプロテアーゼ酵素を含む。具体的には、かかるプロテアーゼ変異体は、前駆体プロテアーゼの複数のアミノ酸残基の異なるアミノ酸での置換によつて由来する、天然では見いだされないアミノ酸配列を有する。前駆体プロテアーゼは天然に生じるプロテアーゼまたは組換えプロテアーゼであり得る。」
(ア-4)
「 【0058】
本発明の1つの態様において、当該目的は、前駆体プロテアーゼと比較して、改変された蛋白質分解活性を有する変異体プロテアーゼを確保することである。というのは、かかる活性を増大させることは(数字的に大)、酵素が標的基質により効果的に作用するように使用することを可能とするからである。また、興味あることは、前駆体と比較して、改変された熱安定性および/または改変された基質特異性を有する変異体酵素である。」
(ア-5)
「 【0064】
・・・本発明の変異体は、(前駆体と比較して)洗剤組成物における増強された性能を含むことができる。本明細書で用いるごとく、洗剤における増強された性能は、標準的な洗浄サイクル後に通常の評価によって測定して、ガラスまたは血液のごときある種の酵素感受性汚染の清浄の増大と定義される。」
(ア-6)
「 【0072】
【実施例】
(実施例1)
当該分野でよく知られた方法を用い、非常に多数のプロテアーゼ変異体を生産し、精製した。全ての突然変異はBacillus lentus GG36スブチリシンでなした。
【0073】
「An improved method of assaying for a preferred enzyme and/or preferred detergent composition」、米国特許第80/066,796号に記載されているミクロスウォッチアッセイを用い、生産されたプロテアーゼ変異体を、2つのタイプの洗剤および洗浄条件における性能につきテストした。
【0074】
表1-13はアッセイした変異体プロテアーゼおよび2つの異なる性能におけるテスト結果をリストする。全ての値は表に目下最初のプロテアーゼに対する比較として与える(すなわち、1.32の値は、表中の最初の変異体の100%に対して、当該株の132%を放出する能力を示す)。
【0075】
A欄は変異体の電荷の差異を示す。B欄については、洗剤は、ガロン当たり3グレインの混合されたCa2+/Mg2+硬度を含有する溶液中の0.67g/lの濾過されたAriel Ultra (Procter & Gamble, Cincicati, オハイオ州, 米国)であり、0.3ppmの酵素を25℃の各ウェルで用いた(低濃度洗剤系)。C欄については、洗剤は、ガロン当たり15グレインの混合されたCa2+/Mg2+硬度を含有する溶液中の3.38g/lの濾過されたAriel Ultra (Procter & Gamble, Cincicati, オハイオ州, 米国)であり、0.3ppmの酵素を40℃の各ウェルで用いた(高濃度洗剤系)。
【0076】
(実施例2)
実施例1に記載したごとく、以下のプロテアーゼ変異体を作成し、テストした。
【0077】
表14における変異体は、両タイプの置換;B. lentus GG36と比較して、電荷をより負にまたはより正ではなくする位置における電荷を変化させる置換および電荷をより正にまたはより負ではないようにする位置における電荷を変化させる置換、ならびに所与の残基位置における電荷に影響しない中性置換を有するプロテアーゼ変異体である。これは、低い洗剤濃度系(A欄;0.67g/lの濾過されたAriel Ultra (Procter & Gamble, Cincicati, オハイオ州, 米国)、ガロン当たり3グレインの混合されたCa2+/Mg2+硬度を含有する溶液中、0.3ppmの酵素を25℃の各ウェルで用いた)および低い洗剤濃度系(B欄;3.38g/lの濾過されたAriel Futur (Procter & Gamble, Cincicati, オハイオ州, 米国)、ガロン当たり15グレインの混合されたCa2+/Mg2+硬度を含有する溶液中、0.3ppmの酵素を40℃の各ウェルで用いた)の双方における標準よりも良好な性能のプロテアーゼ変異体を生じさせる。
【0078】
」
(ア-7)
「【図6】
【図7】
」
イ 引用文献2
同じく原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2001-520305号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(イ-1)
「 【0053】
本発明のクリーニング組成物で有用な更に一層好ましいプロテアーゼ変種は、下記からなる群より選択される置換組合せを包含している(下記表VIIで横一列につき1つの置換組合せ):
表VII
【表7】
・・・
・・・
」
(イ-2)
「 【0083】
本発明の一面において、前駆プロテアーゼと比較して改変されたタンパク質分解活性を有する変種プロテアーゼを得ることが目的であり、そうすればこのような活性を(数値的に大きく)増加させて標的基質で更に効率的に作用するように酵素を使えるからである。前駆体と比較して改変された熱安定性および/または改変された基質特異性を有する変種酵素も対象である。」
(イ-3)
「 【0086】
これらの置換は好ましくはBacillus lentus(組換えまたは天然タイプ)ズブチリシンで行われるが、その置換はBacillusプロテアーゼで行ってもよい。
変種プロテアーゼで得られたスクリーニング結果に基づくと、Bacillus amyloliquefaciensズブチリシンにおける前記変異は、これら酵素のタンパク質分解活性、性能および/または安定性、およびこのような変種酵素のクリーニングまたは洗浄性能にとり重要である。」
ウ 引用文献3
同じく原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-113179号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ウ-1)
「【0013】
【発明の概要】本発明は、ズブチリシン遺伝子の変異に関し、これらの変異の中にはズブチリシン酵素の化学的特性を変更させるものもある。変異は、ズブチリシン遺伝子の特異的核酸で生じ、そして種々の具体的実施態様では、変異酵素の化学的性質が変化して、酸化安定性が増加し、タンパク質分解活性が増加し、洗浄性が向上したりするが、これらには限定されない。」
(ウ-2)
「【0105】6.2.2.ズブチリシン309遺伝子の部位(サイト)特異的突然変異の発生部位特異的突然変異はMorinagaらの方法(特にBiotechnology)により行なわれた。この突然変異をおこすため以下のオリゴヌクレオチドが用いられた。
【表10】
【表11】
」
(ウ-3)
「【0119】6.2.6.変異ズブチリシンの洗浄性
前記方法に従い、ホウレンソウジュースに対し種々の突然変異体の洗浄性をテストした。結果を第VI表に示す。この表より、テストした突然変異体はすべて親酵素と比較して改良された洗浄能を有し、突然変異体c),d),i)、及びj)は特にすぐれていることがわかる。
【0120】
【表14】
」
エ 引用文献4
同じく原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-246895号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(エ-1)
「【0004】プロテアーゼ酵素のアミノ酸配列がプロテアーゼの特徴を決定している。プロテアーゼのアミノ酸配列の変化は、酵素の性質を様々な程度に変えたり、あるいはアミノ酸配列における変化の位置、性質および/または大きさに応じて酵素を不活化させることさえある。洗浄環境下のようなクリーニング用途でプロテアーゼの効力を増加させることを目標として、それらの性質を改善する試みに際し、プロテアーゼのアミノ酸配列を変えるいくつかの試みが行われてきた。これらの試みには、全く多様な条件下で熱安定性を高めて酸化安定性を改善するために、アミノ酸配列を変えることも含まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】当業界で記載された様々な試みにもかかわらず、様々な表面をクリーニングする上で有用なプロテアーゼの新たに有効な変種に関する必要性が依然として存在している。したがって、改善されたタンパク質分解活性、基質特異性、安定性および/または高性能特徴を有したカルボニルヒドロラーゼ変種であるプロテアーゼ酵素を含有するクリーニング組成物を提供することが本発明の目的である。これらのおよび他の目的は、以下の詳細な記載から容易に明らかとなるであろう。
(エ-2)
「【0151】例68
洗浄性能試験
本発明組成物で有用な変種の洗浄性能は、EMPA116(コットン上に血液/ミルク/カーボンブラック)衣切れ(Testfabrics,Inc.,Middlesex,NJ 07030)から汚れの除去を調べることにより評価する。
・・・
【0156】
・・・
性能はB.Lentus(GG36)プロテアーゼの性能の%として報告し、同様の汚れ除去性能を示すために必要な変種プロテアーゼの量でB.Lentus(GG36)プロテアーゼの量を割り100を掛けることにより計算する。データは表VII で示されている。
【0157】
表VII
酵素 洗浄性能
B.Lentusズブチリシン 100
N76D 310
N76D/S103A 230
N76D/V104I 130
N76D/I107V 160
N76D/S99D/S101R 370
N76D/S99D/S103A 290
N76D/S101R/S103A 130
N76D/S101R/V104I 300
N76D/S103A/V104I 320
N76D/S103G/V104I 160
N76D/S103A/V104F 210
N76D/S103A/V104N 110
N76D/S103A/V104T 170
N76D/V104I/I107V 210
N76D/S99D/S101R/S103A 220
N76D/S99D/S101R/V104I 140
N76D/S101G/S103A/V104I 170
N76D/S101R/S103A/V104I 150
N76D/S103A/V104I/S105A 170
N76D/S103A/V104T/I107A 120
N76D/S103A/V104T/I107L 110
N76D/S103A/V104I/L126F 110
N76D/S103A/V104I/L128G 280
N76D/S103A/V104I/L135V 160
N76D/S103A/V104I/D197E 160
N76D/S103A/V104I/N204A 170
N76D/S103A/V104I/N204G 160
N76D/S103A/V104I/N204C 150
N76D/S103A/V104I/P210I 470
N76D/S103A/V104I/M222A 100
N76D/S103A/V104I/T260P 280
N76D/S103A/V104I/S265N 190」
(3)引用発明
上記(2)ア(ア-1)、(ア-3)の記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1以上の残基位置においてアミノ酸の置換を含むバチラス・レンタス・スブチリシンプロテアーゼの変異体であって、該置換が、その位置における電荷を、天然に生じるプロテアーゼと比較して、より負にまたはより正でないように改変し、かつ当該プロテアーゼ変異体は天然に生じるプロテアーゼより低い洗剤濃度系でより効果的であるか、あるいは、該置換が、その位置における電荷を、天然に生じるプロテアーゼと比較して、より正にまたはより負でないように改変し、かつ当該プロテアーゼ変異体は天然に生じるプロテアーゼよりも高い洗剤濃度系でより効果的であるプロテアーゼ変異体。」
(4)引用発明との対比
引用文献1の図6、7の4列目に記載されたバチラス・レンタス・ズブチリシンのアミノ酸配列と本願配列番号6に示されるアミノ酸配列は同一である。
また、本件補正発明1に係るプロテーゼ変異体は「a)洗浄能力及びb)熱安定性から選択される少なくとも1の改善された性質」を有することが特定されており、このうち、a)の性質とは、本願明細書の記載(段落【0004】、【0102】など)からみてアミノ酸配列に変異が導入されていない野生型プロテアーゼに対する改善された洗浄能力であると認められる。
他方、引用発明の「天然に生じるプロテアーゼ」は、そのアミノ酸配列に変異は生じていないことから、本願明細書における野生型プロテアーゼに相当する。また、引用発明の「より効果的」なる発明特定事項は、上記(2)ア(ア-5)の記載から、酵素感受性汚染の清浄の増大を意味しているといえる。
したがって、引用発明における「天然に生じるプロテアーゼより低い洗剤濃度系でより効果的である」プロテアーゼ変異体、及び、「天然に生じるプロテアーゼよりも高い洗剤濃度系でより効果的である」プロテアーゼ変異体は、本件補正発明1における「a)洗浄能力及びb)熱安定性から選択される少なくとも1の改善された性質」を有するプロテアーゼ変異体に相当する。
よって、このa)の性質のみを有する本件補正発明1と引用発明を対比すると、両者は、本願配列番号6にそのアミノ酸配列が示されるバチラス・レンタス・ズブチリシンプロテアーゼ変異体である点で共通し、「a)洗浄能力の改善された性質を有する、プロテアーゼ変異体」である点で一致するものの、本件補正発明1は、
「配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ変異体であって、
前記変異体が、7N、23A、26S、26T、28C、28S、29G、30A、31A、31I、31T、31V、47D、61E、65M、66D、66E、73G、73T、82R、85G、85S、85V、88S、90A、90I、90M、90V、92E、92R、93A、93G、93S、93T、105D、105E、105R、113D、139A、148G、149A、149F、149G、149H、149S、149W、150A、150C、150F、150L、151V、174G、174S、178S、178C、178L、200S、201C、201S、203D、203E、216E、231G、231S、233G、267R、267I、273S、231V、及び258Eからなる群より選択される1以上の置換を有し、
前記アミノ酸置換の位置番号が、配列番号3に示すバチルス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの位置番号に基づ」くことが特定されているのに対して、
引用発明では、「置換が、その位置における電荷を、天然に生じるプロテアーゼと比較して、より負にまたはより正でないように改変」するものであるか、あるいは、「置換が、その位置における電荷を、天然に生じるプロテアーゼと比較して、より正にまたはより負でないように改変」するものであると特定されている点で相違すると認められる。
(5)判断
本件補正発明1には、プロテアーゼ変異体の洗浄能力が改善されたことが特定されているが、洗浄能力が改善されたとは定性的な表現であって、本件補正発明1にいう洗浄能力の改善とは具体的にどの程度の改善であるか明らかでない。
そして、本願明細書の表2、3には、本願補正発明1に該当するプロテアーゼ変異体として、野生型プロテアーゼに対して本件補正発明1に列挙されるアミノ酸置換のうち1つまたは2つのみを有する特定のプロテアーゼ変異体については、その洗浄能力の改善について具体的に示されているが、本件補正発明1に列挙されるアミノ酸配列を多数含む場合については、洗浄能力は具体的に示されていない。また、本件補正発明1は、「配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む」と特定されており、配列番号6は269アミノ酸残基からなる配列であるため、本件補正発明1は、本件補正発明1に列挙されるアミノ酸置換に加えて、他の多数のアミノ酸変異を包含するものである。
ここで、通常、プロテアーゼのような酵素タンパク質は、わずか1個のアミノ酸を置換するだけでも、その機能が大きく変化する場合があることが技術常識であり、実際、本願明細書の【0107】の表3にも、バチルス・レンタス・ズブチリシンにおいて、わずか1個のアミノ酸を置換するだけでも、洗浄条件によっては洗浄性能が大きく低下する変異体が多数存在することが示されている。
そうすると、本件補正発明1は、ごくわずかな洗浄能力の改善、例えば「82R」のみを有する変異体の洗浄能力の改善である1.2倍よりもさらに少ない改善しかもたらさない置換がなされたプロテアーゼ変異体を包含すると認められる。
そして、上記(2)ア(ア-1)、(ア-3)、(ア-5)、(ア-6)、イ(イ-2)、(イ-3)、ウ(ウ-1)~(ウ-3)、エ(エ-1)、(エ-2)の記載からみて、引用文献1-4(引用文献3の「ズブチリシン309」は、本願明細書の段落【0114】の記載からみて、「バチラス・レンタス・ズブチリシン」と認められる)には、バチラス・レンタス・ズブチリシンプロテアーゼにおいて、野生型プロテアーゼの洗浄能力を向上させる目的で、野生型プロテアーゼに種々のアミノ酸置換を導入することが記載されているのであるから、野生型プロテアーゼの洗浄能力を向上させる目的で、野生型プロテアーゼに種々のアミノ酸置換を導入することは、本願優先日前の周知技術である。
そうすると、引用発明は、野生型プロテアーゼの洗浄能力を向上させる目的で、野生型プロテアーゼのアミノ酸を、その位置における電荷を、野生型プロテアーゼと比較して、より負にまたはより正でないように置換するか、その位置における電荷を、野生型プロテアーゼと比較して、より正にまたはより負でないように置換するものであるところ、引用発明において、同じ目的で、野生型プロテアーゼのアミノ酸を、その位置における電荷を、野生型プロテアーゼと比較して、より負にまたはより正でないように置換するか、その位置における電荷を、野生型プロテアーゼと比較して、より正にまたはより負でないように置換するのみならず、その他の種々のアミノ酸置換を検討することは、当該本願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。
また、引用文献3、4には、野生型プロテアーゼに種々のアミノ酸置換を導入することで、実際に洗浄能力を向上できたことが記載されていると認められる。すなわち、引用文献3の第VI表には、バチラス・レンタス・ズブチリシン変異体であって、最小でも15.4、最大では22.2の洗浄性能を示すものが記載されており、これは野生型の洗浄性能(14.4)のそれぞれ約1.07倍、約1.54倍である。また、引用文献4の図VIIには、最小でも野生型の1.1倍、最大では野生型の4.7倍の洗浄性能を示す変異体が記載されている。
引用発明では、具体的なアミノ酸置換を特定していないが、引用文献1の表1~14には、それぞれ特定のアミノ酸置換を有する数々の変異体が記載されている。これらの変異体は、本件補正発明に特定されるアミノ酸置換は有していないが、引用文献3、4の記載からみて、引用文献1に具体的に記載される数々の変異体が有するアミノ酸置換以外でも洗浄能力が改善できるといえるから、引用発明において種々のアミノ酸置換を検討することによって、本件補正発明1にいう、洗浄能力がごくわずかにでも改善されたプロテアーゼ変異体が得られる蓋然性が高いといえる。実際に、上記(2)イ(イ-1)のとおり、引用文献2には、本件補正発明1に列挙されるアミノ酸置換に含まれる「203E」の置換を有する変異体や「61E」の置換を有する変異体が記載されており((イ-1)の一つ目の表の下から10個目の変異体、2つ目の表の上から16個目の変異体)、これらの変異体は「有用な更に一層好ましいプロテアーゼ変種」として示されているから、これらの置換を有するプロテアーゼ変異体は洗浄能力が改善されていると認められる。
したがって、引用発明において種々のアミノ酸置換を検討し、洗浄能力がごくわずかにでも改善されたプロテアーゼ変異体を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
その際に、配列番号6に示されるアミノ酸配列は269アミノ酸からなるものであるところ、上記(2)ア(ア-6)、イ(イ-1)、ウ(ウ-2)、エ(エ-2)の記載からみて、引用文献1-4に記載されているアミノ酸置換の数はせいぜい1~13個であるから、アミノ酸置換を検討する際にその数を引用文献1-4に記載された程度の数とし、配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有する範囲でアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ変異体とすることは当業者が適宜なし得たことである。
そして、そのようにして得られる洗浄能力がごくわずかにでも改善されたプロテアーゼ変異体の中には、本件補正発明1に特定される種々のアミノ酸置換を含むプロテアーゼ変異体が含まれると認められる。
したがって、上記の相違点は当業者が容易になし得ることである。
そして、上述の通り、本件補正発明は、ごくわずかしか洗浄能力の改善のない変異体を包含するから、本件補正発明1が奏する効果が当業者が予測できないほど格別なものとは認められない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、「補正後の請求項1に記載の置換は、いずれも、本願明細書の実施例5(洗浄能力)、実施例6(洗浄能力)、又は実施例7(熱安定性)において、改善された効果を有することが確認されています。・・・補正後の請求項1に記載の置換は、いずれも、表2、3、又は4のいずれかの試験結果において、1.1以上の性能指数を有することが分かります」と主張している。
しかしながら、本件補正発明1は表2~4に示された変異体のみに特定されておらず、したがって、性能指数が1.1以上に特定されているともいえない。また、上述したとおり、本件補正発明1は、野生型のバチラス・レンタス・スブチリシンのプロテアーゼと比べて、洗浄性能の点でわずかな改善しかみられない変異体も含んでいる。
よって、出願人の主張を考慮しても、依然として、本件補正発明1は、引用文献1に記載された事項及び本願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
1 本願発明
平成29年7月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-9に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記の引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献2:特表2001-520046号公報
引用文献3:特表2001-520305号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平10-113179号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開平11-246895号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2-5の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に、それぞれ引用文献1-4として記載したとおりである。
4 対比・判断
前記第2の[理由]2で検討した本件補正は、誤記の訂正と限定的減縮を目的とするものであるところ、本件補正発明1が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、原査定の引用文献2(第2の[理由]2における引用文献1)に記載された事項及び本願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も原査定の引用文献2に記載された事項及び本願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-010482