審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-017056

オリゴヌクレオチドを利用して細胞内の核酸を編集するための組成物および方法

審判番号
2023-017056
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-159689
請求日
2023年10月06日
審決日
2026年04月14日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ウルフ、トッド エム.
  • 【請求人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
  • 【請求人】レベデブ、アレクサンドル
  • 【請求人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
  • 【請求人】ホグレフ、リチャード アイ.
  • 【請求人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 上條 肇
  • 審判官 福澤 洋光
  • 審判官 中村 浩
分類
P18 .113-Z (C12N) / P18 .575-Z (C12N) / P18 .121-Z (C12N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2、特許法第164条第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-159689「オリゴヌクレオチドを利用して細胞内の核酸を編集するための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月13日出願公開、特開2022- 8651〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成27年12月11日(パリ条約による優先権主張 2014年12月12日、2015年3月31日、2015年6月16日、2015年11月9日 いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-550092号の一部を、令和3年9月29日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和 3年10月29日 :手続補正書の提出 令和 4年 9月 7日付け:拒絶理由通知 令和 5年 3月 9日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 5月29日付け:拒絶査定 同年10月 6日 :審判請求書及び手続補正書の提出 同年12月 1日 :審判請求書の手続補正書(方式)の提出 令和 6年 2月28日付け:前置報告 令和 8年 3月13日付け:審理終結通知 同年 3月25日 :審理再開申立書の提出 第2 令和 5年10月 6日提出の手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 5年10月 6日提出の手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 令和5年10月6日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の 「 【請求項1】 一本鎖の編集オリゴヌクレオチドであって、前記編集オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列に実質的に相補的であり;標的核酸配列に対する少なくとも1つ又は2つ以上のミスマッチを含み;該ミスマッチを介して、前記標的核酸配列を編集することが可能であり、1つ又は2つ以上の2'修飾ヌクレオチドを含み、ただし前記2’修飾は、2’-O-メチル、2’F、又は2’-O-メチル及び2’Fの組み合わせである、前記編集オリゴヌクレオチド。」 との記載から、 「 【請求項1】 一本鎖の編集オリゴヌクレオチドであって、前記編集オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列に実質的に相補的であり;標的核酸配列に対する少なくとも1つ又は2つ以上のミスマッチを編集領域に含み;該ミスマッチを介して、前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性のタンパク質又は核酸を用いずに前記標的核酸配列を編集することが可能であり、1つ又は2つ以上の2'修飾ヌクレオチドを含み、ただし前記2’修飾は、2’-O-メチル、2’F、又は2’-O-メチル及び2’Fの組み合わせであり、前記編集ヌクレオチドはGal-NAc又は親油性基にコンジュゲートしている、前記編集オリゴヌクレオチド。」(以下、「本件補正発明」という。下線は、補正箇所を示す。) との記載に変更する補正を含むものである。 2 補正の適否 (1)補正の目的 本件補正は、「編集オリゴヌクレオチド」に関する、以下の3つの補正事項を含むものである。 (補正事項1)「標的核酸配列に対する少なくとも1つ又は2つ以上のミスマッチ」について、補正前の「含(む)」ものとしていた特定を、「編集領域に含(む)」との特定に変更する補正事項 (補正事項2)補正前の「前記標的核酸配列を編集することが可能であ(る)」としていた特定を、「前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性のタンパク質又は核酸を用いずに前記標的核酸配列を編集することが可能であ(る)」との特定に変更する補正事項 (補正事項3)「前記編集ヌクレオチドはGal-NAc又は親油性基にコンジュゲートしている」との特定を追加する補正事項 補正事項1は、「編集オリゴヌクレオチド」が「標的核酸配列に対する少なくとも1つ又は2つ以上のミスマッチ」を含む領域について、補正前の、「編集オリゴヌクレオチド」が含む関係となっている限りどの部分に含むものでもよいもの、すなわち、編集オリゴヌクレオチドの全体にわたる領域であったものを、補正後の、「編集領域に含む」場合に限定するものである。 補正事項2は、「編集オリゴヌクレオチド」が有する機能について、補正前の、条件を付さずに「前記標的核酸配列を編集することが可能であ(る)」とされていた機能を、補正後の、「前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性のタンパク質又は核酸を用いずに」という条件下で「前記標的核酸配列を編集することが可能であ(る)」という機能に限定するものである。 補正事項3は、「編集オリゴヌクレオチド」の化学修飾について、補正前は、「1つ又は2つ以上の2'修飾ヌクレオチドを含み、ただし前記2’修飾は、2’-O-メチル、2’F、又は2’-O-メチル及び2’Fの組み合わせであ(る)」ことを特定していたが、補正後は、それに加えて、「Gal-NAc又は親油性基にコンジュゲートしている」ものでもあると限定するものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野がいずれも「一本鎖の編集オリゴヌクレオチド」であり、両者の解決しようとする課題はいずれも、本願明細書【0014】に記載されるように、より短い編集オリゴヌクレオチドでより効率的に機能し、かつ、送達ビヒクルや免疫原性タンパク質または未修飾の不安定RNAを細胞に送達すること並びにベクター配列を標的核酸及び/または細胞に導入することを厳密に必要としない核酸編集化合物を提供することであると認められる。 したがって、補正前後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 そうすると、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。 (2)引用文献の記載事項 原審において引用文献1として引用され、本願の最先の優先日(2014年12月12日)前である2014年9月18日に国際公開された国際公開第2014/144951号(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(原文は英文のため、対応する特表2016-512695号公報を参考にした日本語訳で示し、摘記箇所は原文での箇所に続けて括弧書きで前記公表公報での箇所を付した。下線は当審合議体による。) 引1ア 請求の範囲 「1.細胞中の標的デオキシリボ核酸(DNA)配列に遺伝子修復オリゴ核酸塩基(GRON)仲介型突然変異を導入するための方法であって、細胞へのGRONの送達を含み、GRONが以下の特徴: GRONが55塩基長より大きく、GRONが標的DNAに導入するための2つ以上の突然変異部位を場合によっては含むこと、 GRONが1つまたは複数の無塩基部位ヌクレオチドを含むこと、 GRONが1つまたは複数の8’オキソdAおよび/または8’オキソdGヌクレオチドを含むこと、 GRONがその3’末端に逆向き塩基を含むこと、 GRONがその5’または3’末端に1つまたは複数の2’O-メチルヌクレオチドを含むこと、 GRONがその5’末端に1つまたは複数の2’O-メチルRNAヌクレオチドを含むこと、 GRONがその5’末端に少なくとも2つの2’O-メチルRNAヌクレオチドを含むこと、 GRONが挿入色素を含むこと、 GRONが5’末端キャップを含むこと、 GRONがホスホチオエート修飾、メチルホスホネート修飾、ロックド核酸(LNA)修飾、O-(2-メトキシエチル)(MOE)修飾、ジPS修飾、およびペプチド核酸(PNA)修飾からなる群から選択される骨格修飾を含むこと、 GRONが1つまたは複数の鎖間架橋を含むこと、 GRONが1つまたは複数の共有結合した蛍光色素を含むこと、および GRONがハイブリダイゼーションエネルギーを増大させる1つまたは複数の塩基を含むこと、 の1つまたは複数、および好ましくは2、3、4、5つ、またはそれより多くを含む方法。 ・・・ 」 引1イ [0010](【0010】) 「本発明は、ゲノムまたは他のヌクレオチド配列中の特定位置に対する、修飾の標的化の効率を改善するための新規な方法および組成物を提供する。本明細書で後に記載するように、ゲノムに対して特異的変化を誘導する核酸を様々な手法と組み合せて、修飾の標的である細胞中に存在する天然修復系の構成要素の利用性を高めることができる。」 引1ウ [0023](【0022】) 「[0023] 過去数年間にわたり開発され、オリゴヌクレオチドによって仲介される標的遺伝子修飾は、欠失、短い挿入、および点突然変異をもたらすためのDNAの短いストレッチの特異的改変において使用するのに値する技法であることが示されている。これらの方法はDNA対形成/アニーリング、次にDNA修復/組換え事象を含む。最初に核酸は、細胞タンパク質因子によって仲介されるプロセスにおいて、二本鎖DNA中のその相補鎖とアニーリングする。このアニーリングによって(点突然変異の場合)中央に位置するミスマッチ塩基対を生成し、内在性タンパク質機構を刺激して修復プロセス中に第2のステップである、染色体配列およびさらにそれらのオルガネラ(例えば、ミトコンドリアと葉緑体)の部位特異的修飾を開始させる可能性が最も高い構造不安定化をもたらす。この新たに導入されたミスマッチはDNA修復機構を誘導し、標的部位の最終修正をもたらす第2の修復事象を実施する。本発明の方法は、DNA修復構成要素の利用性を高め、したがって標的核酸に対する遺伝子修復仲介型修飾の効率と再現性を高める新規な手法を提供することにより、これらの方法を改良する。」 引1エ [00145]~[00146](【0143】) 「[00145] 効率の改善 [00146] 本発明は、修復オリゴヌクレオチドを使用する、標的遺伝子の転換の有効性を高めるための幾つかの手法を記載し、それらは単独でまたは互いに組み合せて使用することができる。これらは以下を含む: 1.標的(ミスマッチ)部位にDNA修復機構を向ける修復オリゴヌク レオチドに対する修飾の導入。 ・・・ 2.修復オリゴヌクレオチドの安定性の増大: ・・・ 修復オリゴヌクレオチドの5’および/または3’末端における、 ハイブリダイゼーションエネルギーを増大させる1つまたは複数の 2’O-メチルヌクレオチドまたは塩基の導入(例えば、WO20 07/073149参照)。 修復オリゴヌクレオチドの5’末端における複数の2’O-メチル RNAヌクレオチドの導入、所望のミスマッチ部位をもたらすDN A塩基が生じ、それによって岡崎フラグメント様核酸構造を生成す る。 ・・・ T/Aクランプ、コレステロール成分、SIMA(HEX)、リボ Cおよびアミダイトなどの5’末端キャップの導入。 ・・・ 3.・・・」 引1オ [00156](【0153】) 「好ましい一実施形態において、オリゴ核酸塩基は、リンカーを介して5’末端炭素に結合した5’ブロッキング置換基を含有することができる。リンカーの化学的性質はその長さ以外は重要ではなく、長さは好ましくは少なくとも6原子長でなければならず、リンカーは柔軟性でなければならない。ビオチン、コレステロールもしくは他のステロイドなどの様々な非毒性置換基、または非挿入剤カチオン性蛍光色素を使用することができる。・・・」 引1カ [00200]~[00211](【0193】~【0203】) 「[00200] 実施例1:GRONの長さ [00201] Sommer et al.,(Mol Biotechnol.33:115-22,2006)は、一ヌクレオチド変化を利用し緑色蛍光タンパク質(GFP)変異体において青色蛍光と緑色蛍光を転換する、in vivo遺伝子転換を検出するためのレポーターシステムを記載する。このレポーターシステムを、モデル種としてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を使用しGRON長修飾後のGRON転換の効率を評価した、以下の実験中での使用に適合させた。 [00202] 要約すると、この実施例および後の実施例用に、青色蛍光タンパク質遺伝子の多数のコピーを有するシロイヌナズナ系統を、当業者に知られる方法によって作製した(例えば、Clough and Brent,1998を参照)。根部由来分裂組織培養物をこの系統で樹立し、これをプロトプラスト単離および培養に使用した(例えば、Mathur et al.,1995を参照)。プロトプラストへのGRON送達は、プロトプラストへのポリエチレングリコール(PEG)仲介GRON取り込みによって実施した。Fujiwara and Kato(2007)によって記載された方法と類似した、96ウエル形式を使用する方法を使用した。以下に、そのプロトコールを簡潔に記載する。所与の体積は、96ウエル皿の個々のウエルに施用した体積である。 [00203] 1.96ウエルプレートの各ウエルにおいて、5×106細胞/mlで6.25μlのGRON(80μM)と25μlのシロイヌナズナBFPトランスジェニック根部分裂組織由来プロトプラストを混合する。 [00204] 2.31.25μlの40%PEG溶液を加えプロトプラストを混合した。 [00205] 3.処置した細胞を氷上で30分間インキュベートした。 [00206] 4.各ウエルに200μlのW5溶液を加え細胞を混合した。 [00207] 5.プレートを氷上で30分間インキュベートし、各ウエルの底部にプロトプラストを沈殿させた。 [00208] 6.沈殿したプロトプラスト上の培地200μlを除去した。 [00209] 7.85μlの培養培地(MSAP,Mathur et al.,1995)を加えた。 [00210] 8.プレートは48時間暗所において室温でインキュベートした。培養培地添加後のGRONの最終濃度は8μMである。 [00211] GRON送達後48時間で、サンプルをフローサイトメトリーによって分析し、その緑色蛍光と黄色蛍光が対照プロトプラストのそれと異なるプロトプラストを検出した(BFP0はBFP標的と比較して変化がない非標的GRONを示し、Cはコード鎖設計であり、NCは非コード鎖設計である)。BFP4分子の中心においてC→Tの1ヌクレオチド差(コード鎖)またはG→Aのヌクレオチド標的突然変異(非コード鎖)。緑色蛍光はBFP遺伝子における標的突然変異の導入によって引き起こされ、GFPの合成をもたらす。結果は図1中に示す。」 引1キ [00216]~[00219](【0208】~【0211】) 「実施例3:41量体BFP4/NC5’-3PS/3’-3PSGRONと岡崎フラグメントGRONの間の比較 [00216] この実験系の目的は、DNA切断を誘導するブレオマイシンファミリーのメンバー、ゼオシン(商標)(1mg/ml)の有無の下で、GRONの各末端に3PS成分を有するホスホチオエート(PS)標識GRONと「岡崎フラグメントGRON」の転換効率を比較することである。これらのGRONの設計は図2中に示す。GRONはPEG処置によりシロイヌナズナBEPプロトプラストに送達し、BFPからGFPへの転換は処置後24時間でサイトメトリーにより測定した。ゼオシン(1mg/ml)で処置したサンプルは、PEG処置前に氷上で90分間ゼオシンとインキュベートした。 [00217] 一般に、サイトメトリーにより測定して、ゼオシン(1mg/ml)の存在によってBFPからGFPへの転換は増大した(表2)。ゼオシンの存在下と不在下の両方で、GRONの5’末端における最初のRNA塩基上に1つの2’-OMe基を含有するNC岡崎フラグメントGRONは、最初の9個の5’RNA塩基のそれぞれに1つの2’-OMe基を含有するNC岡崎フラグメントGRONと比較したとき、BFPからGFPへの転換においてより有効であった(図2および表2)。 [00218] 全ての実験において、サイトメトリーにより測定して、1mg/mlのゼオシンの存在下と不在下の両方でBFPからGFPへの転換において、41量体BFP4/NC5’3PS/3’3PSと、最初の5’RNA塩基上に1つの5’2’-Ome基を含有する71量体岡崎フラグメントBFP4/NCGRON(BFP471量体(1)NCと示す)の間に有意な差はなかった(図2および表2)。ゼオシン(およびおそらくブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプレオマイシンおよびこの抗生物質ファミリーの他のメンバー)の存在下において、転換は鎖非依存的になる(すなわち、これらの実験中で試験した設計を有するCGRONとNCGRONの両方がほぼ同じ活性を示す)ことを記すことは重要である。 [00219] [図:0001438610000001.jpg] 」 引1ク 図2 「 [図:0001438610000002.jpg] 」 (3)引用発明 引用文献1には、実施例3([00216]~[00219])において、「GRONの5’末端における最初のRNA塩基上に1つの2’-OMe基を含有するNC岡崎フラグメントGRON」が記載されており、このGRONの設計は図2中のAにおいて「BFP4/NC」または「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」として示されるものであって、当該GRONを、DNA切断を誘導するブレオマイシンファミリーのメンバー、ゼオシン(商標)の不存在下で、PEG処置によりシロイヌナズナBFPプロトプラストに送達したところ、BFPからGFPへの転換が行われたことが記載されている([00216]~[00217]、図2)。「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」は、表2([00219])下段の説明及び図2をあわせてみれば、71量体であって、5’の最初の10塩基はRNAであり5’末端上の最初の塩基は2’-O-Meを有する一本鎖の核酸であることが明らかである。 ここで、「GRON」は、「遺伝子修復オリゴ核酸塩基」を意味し(請求項1)、シロイヌナズナBFPプロトプラストは、青色蛍光タンパク質遺伝子の多数のコピーを有するシロイヌナズナ系統から樹立した根部由来分裂組織培養物であり([00202])、BFPからGFPへの転換は、BFP4分子の中心においてC→Tの1ヌクレオチド差(コード鎖)またはG→Aのヌクレオチド標的突然変異(非コード鎖)の導入によって、GFPの合成をもたらし、青色蛍光と緑色蛍光を転換するものであって([00201]、[00211])、BFP標的と比較して変化がない非標的GRONはBFP0で示されている([00211])。 上述の「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」を用いた試験の結果については、表2([00219])が記載されており、それを、「5’の最初の10塩基はRNAでありGRONに保護がな(い)」ものである「BFP4 71量体(0)」の「NC」、つまり、2’-O-メチル修飾を有さない以外は「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」と同じ構造を有するものと比較してみると、ゼオシンの不存在下、実験APT043及び実験APT066のそれぞれで、「BFP4 71量体(0)」の「NC」は0.1875、0.112であったの対し、「BFP4 71量体(1)」の「NC」すなわち「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」は、それぞれ0.21、0.141であったことが示されている([00219]表2中段左から4、6列)。 そうすると、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。 「遺伝子修復オリゴ核酸塩基(GRON)の5’末端における最初のRNA塩基上に1つの2’-OMe基を含有するNC岡崎フラグメントGRONのBFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)であって、 一本鎖の核酸であり、 当該BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)は、DNA切断を誘導するブレオマイシンファミリーのメンバー、ゼオシン(商標)の不存在下で、PEG処置によりシロイヌナズナBFPプロトプラストに送達すると、BFPからGFPへの転換が行われるものであり、 前記BFPからGFPへの転換は、BFP4分子の中心においてG→Aのヌクレオチド標的突然変異(非コード鎖)の導入によって、GFPの合成をもたらすものである、 BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)。」(以下「引用発明」という。) (4)対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明における「一本鎖の核酸」である「遺伝子修復オリゴ核酸塩基(GRON)BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」は、本件補正発明における「一本鎖の編集オリゴヌクレオチド」に相当する。 また、一般に、非コード鎖の岡崎フラグメントはコード鎖に相補的な関係にあることを考慮すると、引用発明において、「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」が、「岡崎フラグメント」であり、かつ、「G→Aのヌクレオチド標的突然変異(非コード鎖)」を「BFP4分子の中心に」有するということは、本件補正発明において、「編集オリゴヌクレオチド」が、「標的核酸配列に実質的に相補的であり;標的核酸配列に対する少なくとも1つ又は2つ以上のミスマッチを編集領域に含(む)」ことに相当する。 さらに、引用発明において、「BFPからGFPへの転換」が「G→Aのヌクレオチド標的突然変異(非コード鎖)の導入によって、GFPの合成をもたらす」ということは、本件補正発明において「ミスマッチを介して」、「標的核酸配列を編集する」ことに相当するものであり、したがって、引用発明において、「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」を「DNA切断を誘導するブレオマイシンファミリーのメンバー、ゼオシン(商標)の不存在下で、PEG処置によりシロイヌナズナBFPプロトプラストに送達すると、BFPからGFPへの転換が行われる」ことは、本件補正発明において、「前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性のタンパク質又は核酸を用いずに前記標的核酸配列を編集することが可能であ(る)」ことに相当する。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、 「一本鎖の編集オリゴヌクレオチドであって、 前記編集オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列に実質的に相補的であり; 標的核酸配列に対する少なくとも1つのミスマッチを編集領域に含み; 該ミスマッチを介して、前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性のタンパク質又は核酸を用いずに前記標的核酸配列を編集することが可能であり、 1つの2'修飾ヌクレオチドを含み、ただし前記2’修飾は、2’-O-メチルである、 前記編集オリゴヌクレオチド。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点)「編集オリゴヌクレオチド」について、本件補正発明では、「Gal-NAc又は親油性基にコンジュゲートしている」ものであるのに対し、引用発明では、そのような特定はない点。 (5)判断 ア 相違点について 引用文献1には、「標的遺伝子の転換の有効性を高めるための幾つかの手法」について、「組み合せて使用することができる」ものとして、2’Oメチルヌクレオチドの導入と並んで、「コレステロール成分」等の「5’末端キャップの導入」が記載されており([00145]~[00146])、コレステロールの他には、他のステロイド等も5’末端に結合させることができることも記載されている([00156])。ここでいう「コレステロール成分」や「ステロイド」が親油性であることは当業者の技術常識である。 そして、引用文献1のこの文章は、引用文献1の請求項1に記載された方法についてのものであることは明らかであり、その方法の実施例において用いられている引用発明のGRONにおいても当てはまることも明らかであるから、引用発明のGRONにおいて、標的遺伝子の転換の有効性を高めるために、「コレステロール成分」又は「ステロイド」を、その5’末端に結合させることは、引用文献1に動機付けられている。 したがって、引用発明において、「コレステロール成分」又は「ステロイド」を、その5’末端に結合させて、もって、「親油性基にコンジュゲートしている」ものとして、相違点の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。 イ 本件補正発明の効果について 引用文献1には、標的遺伝子の転換の有効性を高めるための手法として、「コレステロール成分」又は「ステロイド」を、GRONの5’末端に結合させることが記載されている([00145]~[00146])のであるから、標的遺伝子の転換の有効性が高まることは当業者が予測可能なものである。 これに対し、本件の明細書では、編集ヌクレオチドを、実際に「Gal-NAc又は親油性基にコンジュゲートしている」ものとした具体例を試験した結果等については記載されておらず、当業者が予測できないような顕著な効果は何ら示されていない。 そうすると、本件補正発明の効果は、引用文献1から当業者から予測できないような格別なものとは認められない。 ウ 請求人の主張について (ア)審判請求人は、補正された審判請求書において、概略、次の点を主張する。 a 引用文献1には、特に、特定の2’修飾及び「前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性のタンパク質又は核酸を用いずに前記標的核酸配列を編集することが可能」であるという構成については記載も示唆もなされていない点 b 引用文献1に記載されているオリゴヌクレオチドは、他の手法と組み合わされることを前提とするばかりでなく、他の構成要素の利用可能性を高めるにすぎないのであって、編集オリゴヌクレオチドのみにより、標的核酸配列の編集を可能とするものではない点 c 本件補正発明は、編集オリゴヌクレオチドがGal-NAc又は親油性基に結合していることにより、編集オリゴヌクレオチドが自己送達され、送達媒体を使用せずに効率的に細胞内部に侵入するものである点 (イ)しかしながら、a、bの点については、引用文献1の実施例3において、2’-O-メチル修飾を有さない「BFP4 71量体(0)」の「NC」と、2’-O-メチル修飾を有する引用発明「BFP4/NC/71/5’2’-O-Me(1)」である「BFP4 71量体(1)」の「NC」の両方のデータが記載されていて、ゼオシンの不存在下であっても、実験APT043及び実験APT066のそれぞれで、「BFP4 71量体(0)」の「NC」は0.1875、0.112であったの対し、「BFP4 71量体(1)」の「NC」は0.21、0.141であったことが示されている([00219]表2中段左から4、6列)とおりであるのだから、aの点は引用文献1に開示されているし、したがって、bの点は審判請求人の誤認というべきであって、いずれの点も採用できない。 また、cの点について検討すると、本件の明細書の【0024】では、「自己送達」に関して、「自己送達性オリゴヌクレオチドとは、送達ビヒクルなしで細胞の内側に効率的に侵入する化学構造、例えば、Gal-NAC接合オリゴヌクレオチド、親油性基接合編集オリゴヌクレオチド(・・・)、または、ホスホロチオエート尾部を有するか、さもなければ約8個以上のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチド(・・・)などを指す。」と定義されている。一方、引用文献1の実施例3で用いられた試験系([00216]~[00219])は、GRONを細胞へ送達するに際し、送達ビヒクルを用いずに実施しているものであり、しかも、実施例3で使用されたGRONは、そのGRONの各末端に3PS成分を有する、すなわち、ホスホロチオエートを3つ有する構造であることが記載されている([00216])。そうすると、引用文献1に記載されたGRONも自己送達されるものである。 さらに、細胞内部への侵入の効率性は、本件の明細書でいう「編集効率」に寄与する要素の一つであり、すなわち、引用文献1でいう「転換効率」の要素の一つであるという関係であるが、引用文献1には、その「転換効率」を試験して「有効」であったと記載している([00217])。これを踏まえると、引用文献1においては、侵入の効率性を包含した形で転換効率を評価しているものであるから、cの点を、効果に関する主張と捉えても、何ら格別な点は見当たらない。 したがって、cの点も採用できない。 エ 小括 よって、本件補正発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 令和5年10月6日提出の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1に補正前の【請求項1】に記載したとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 第4 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2014/114951号(上記第2の2(2)に記載した「引用文献1」である。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものを含むものである。 第5 引用文献の記載事項及び引用発明 引用文献1に記載された事項及び引用発明については、上記第2の2(2)及び第2の2(3)に記載したとおりである。 第6 対比・判断 上記第2の2(1)で述べたとおり、補正事項1~3は、いずれも本願発明を限定する関係にあって、本願発明は本件補正発明を包含するものであるから、上記第2の2(4)において本願補正発明と引用発明の対比において一致するとした点は、本願発明と引用発明との対比においても一致することが明らかである。 また、本願発明は、却下された本件補正に含まれる補正事項3による特定を有しないものであるから、本件補正発明と引用発明との間で相違点となった特定を有しないものである。 したがって、本願発明は、引用発明と差異がない。 第7 付記 審判請求人は、令和8年3月25日に審理再開申立書を提出し、概略、以下の5点を主張する。 (1)審判請求時の特許請求の範囲についての補正は、限定的減縮を目的とするものであるから、前置報告書において、当該補正は特許法第17条の2の第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず補正却下すべきとした認定判断には、理由がない。 (2)上記(1)のとおり前置報告書において示された補正の却下の認定判断に理由がないにもかかわらず応答の機会が与えられていない。また、前置報告書において示された新たに引用された文献に基づく特許第29条第1項第3号/第29条第2項の規定による拒絶理由に対する応答の機会が与えられていない。 (3)応答の機会が与えられていれば拒絶の理由は解消した十分な可能性があった。 (4)本願は出願人にとり極めて重要な出願であるため、少なくとも拒絶理由通知に応答する機会を得て適宜分割出願を行いたい事情がある。 (5)審判請求理由を補充する手続補正書(令和5年12月1日付け)にて、審判請求時から、万一本件出願の特許性について疑義が残る場合は、本件審判請求人は、さらに相応の補正を行う用意もあり、審判請求人に手続補正書・意見書及び/又は面接の機会を与えることなく拒絶審決に至らしめないよう配慮されたい旨を述べている経緯も勘案されるべきである。 しかしながら、本件補正の目的に関する(1)及び(2)の主張については、本件補正が補正要件を満たしていることの説明は、審判請求書又は審判請求理由を補充する手続補正書においてなされるべきであるから、その説明の補充が審理を再開すべき事情とは認められない。さらにいえば、前置報告は、特許をすべき旨の査定をする場合以外の結果が特許庁長官に報告されるという性質のものであり(特許法第164条第3項)、この場合、結局、審判請求時の補正の適否を含めて審判官による合議体により審理がされるのであるから(同法第136条第1項、第164条第2項)、前置報告における本件補正の認定判断に対する応答の機会を設けることは要するものではないし、請求人にとって必要なら審理終結通知の前に上申書の提出等により行えたことである。 (2)の主張のうち前置報告において新たに引用された文献に基づく拒絶理由については、当該新たに引用された文献は、上記第2で述べた本件補正についての補正却下の理由、及び、上記第3から第6で述べた本願発明と引用発明との対比・判断に、何ら必要なものではなく、しかも、上記第1に記載したとおり、審判請求人には、引用発明が記載された引用文献1に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会や防御の機会は確保されていたのであるから、さらなる応答の機会を設ける必要があるとも審理を再開すべき事情があるとも認められない。 また、(3)及び(4)の主張については、要するに補正又は分割出願が可能な期間を過ぎた後に、補正又は分割出願の機会を求めるものに他ならないから、審理再開をすべき事情とは認められない。 そして、(5)の主張については、当該手続補正書には「さらなる相応の補正」の内容は示されておらず、「面接ガイドライン【審判編】」において「6.面接等の申込みに応じることができない事例」として掲載されている「f.上申書等の中身が、単に面接を希望する旨の表明だけであって、具体的な内容が記載されていない場合」に相当する不適切なものであるから、さらなる応答の機会を設ける必要があるとも審理再開をすべき事情があるとも認められない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と差異がない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-017056

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)1,465件(113・C12N、121・C12N、575・C12N)
  • 2023-011645拒絶査定不服審判 / 2025-10-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)細胞懸濁液の製造方法、及び、接着細胞の製造方法
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、575・C12N
  • 2023-002633拒絶査定不服審判 / 2024-10-29 / 請求不成立安定化されたコピー数の機能性DNA配列を有する微生物及び関連方法
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、575・C12N
  • 2022-014871拒絶査定不服審判 / 2024-06-05 / 請求不成立胎児ヘモグロビンの発現を増加させる方法
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、575・C12N
  • 2022-014872拒絶査定不服審判 / 2024-06-05 / 請求不成立胎児ヘモグロビンの発現レベルを増加させる方法
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、575・C12N
  • 2021-016480拒絶査定不服審判 / 2023-08-22 / 請求不成立AAVベクター、及び抗AAV(アデノ関連ウイルス)中和抗体についてのアッセイ
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、575・C12N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存