特許拒絶査定不服審判
2017-003916
金属-セラミック基板を金属体に接合する方法
- 審判番号
- 2017-003916
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-114560外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月17日
- 審決日
- 2018年09月04日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イクシス セミコンダクター ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-114560「金属-セラミック基板を金属体に接合する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日出願公開、特開2012-250284〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成24年5月18日(パリ条約による優先権主張2011年(平成23年)5月31日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成28年1月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月18日付けで拒絶の査定がなされた。
これに対し、上記拒絶の査定を不服として平成29年3月17日に審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出された。
第2 平成29年3月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す)。
「 【請求項1】
少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有する金属-セラミック基板を、金属合金によって金属体に接合する方法であって、
(a)厚みが1mm未満である金属体を使用し、
(b)(b-1)アルミニウムを含み、(b-2)液相温度が450℃より高い金属合金の層を、金属-セラミック基板と金属体との間に配置し、
前記金属合金の層が、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合され、
(c)ステップ(b)が提供するアセンブリは金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合されており、前記アセンブリは炉に導入され、450℃より高い温度に加熱され、不活性ガス雰囲気下でセラミック基板と金属体が接合されることを特徴とする、方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有する金属-セラミック基板を、金属合金によって金属体に接合する方法であって、
(a)厚みが1mm未満である金属体を使用し、
(b)(b-1)アルミニウムを含み、(b-2)液相温度が450℃より高い金属合金の層を、金属-セラミック基板と金属体との間に配置し、
前記金属合金の層が、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合され、または、結合される金属-セラミック基板の面と金属体との間の揚げ板として置かれ、
(c)ステップ(b)が提供する配置を450℃より高い温度に加熱することを特徴とする、方法。」
2 補正の適否
(1)新規事項・目的要件
本件補正の、特許請求の範囲の請求項1について、「または、結合される金属-セラミック基板の面と金属体との間の揚げ板として置かれ」という記載を削除した点は、請求項1に係る発明の「金属合金の層」についての択一的記載の要素の削除であり、また、「アセンブリは金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合されており、前記アセンブリは炉に導入され」という記載及び「不活性ガス雰囲気下でセラミック基板と金属体が接合される」という記載を付加した点は、請求項1に係る発明の「金属合金の層」が、「金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合されて」いる「アセンブリ」であるとの限定を付加するとともに、「前記アセンブリは炉に導入され」「不活性ガス雰囲気下でセラミック基板と金属体が接合される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件補正は、本願明細書の記載からみて新規事項を追加するものではないことも明らかである。
(2)独立特許要件
次に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、つまり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、について検討する。
ア 引用文献及びその記載事項
(ア)引用文献1
本件優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-270596号公報(以下「引用文献1」という)には、次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審で付した)。
a 「【0009】
【発明の実施の形態】次に本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
(a) 構造体
図1及び図5に示すように、構造体14,24はセラミック基板13,23の両面に第1及び第2アルミニウム11,12板又は第1及び第2銅板21,22がそれぞれ積層接着されて構成され、セラミック基板13,23はAlN,Si3N4又はAl2O3により形成される。図1に示すように、セラミック基板13の両面に第1及び第2アルミニウム板11,12を積層接着するには、第1アルミニウム板11の上にAl-Si系ろう材(図示せず)、セラミック基板13、Al-Si系ろう材(図示せず)及び第2アルミニウム板12を重ねた状態で、これらに荷重0.5~5kgf/cm2を加え、真空中で600~630℃に加熱することにより行われる。積層接着後、第2アルミニウム板12はエッチングにより所定のパターンの回路となる。Al-Si系ろう材は90~95重量%のAlと5~10重量%のSiとの合金が好ましい。図5に示すように、セラミック基板23の両面に第1及び第2銅板21,22を積層接着するには、第1銅板21の上にセラミック基板13及び第2銅板22を重ねた状態で、これらに荷重0.5~2kgf/cm2を加え、N2雰囲気中で1065~1075℃に加熱するDBC(Direct Bond Copper)法により作られ、構造体24の第2銅板22はエッチンクにより所定のパターンの回路となる。
【0010】(b) ヒートシンク
ヒートシンク16はCu、Al又はAlSiC系複合材料により形成される。ヒートシンクがAlSiC系複合材料である場合には、SiCの焼成前の粉体を加圧した状態で、この粉体間の隙間にAl合金を流込むことによりAlSiC系複合材料が形成される。
【0011】(c) アルミニウム箔
アルミニウム箔17は純度99重量%以上のアルミニウム箔であって、図2に示すように、両面にAl融点降下層17a,17aが形成される。アルミニウム箔17は5~500μmの厚さを有し、Al融点降下層17aにはAl-Si合金層、Al-Cu合金層、Al-Mg合金層、Al-Ni合金層、Al-Ag合金層又はAl-Ce合金層が挙げられる。なお、Al融点降下層17aのアルミニウム箔17への形成は図2に示すようにAl融点降下層17aをアルミニウム箔17にコーティングして形成してもよく、図3に示すように、微粒子形状のAl融点降下層17aをアルミニウム箔17に蒸着等により形成しても良い。
【0012】(d) ヒートシンクの第1アルミニウム板又は第1銅板への接合
図4に示すように、ヒートシンク16の上に第1アルミニウム板11又は第2銅板21を下側にした構造体14,24を重ね、これらに荷重3kgf/cm2を加え、真空中で520~570℃に加熱保持することにより、アルミニウム箔の両側に形成されたAl融点降下層17a中のAl合金が溶融してアルミニウム箔17を介してヒートシンク16が構造体14,24に接合される。なお、第1アルミニウム板11又は第1銅板21をエッチングにより所定のパターンの回路とし、第2アルミニウム板12又は第2銅板22にアルミニウム箔17を介してヒートシンク16を接合してもよい。」
b 「【0019】次に、この構造体とともに縦、横及び厚さがそれぞれ70mm、70mm及び2.0mmのAlにより形成されたヒートシンクと、・・・」
c 「【0021】次に、この構造体とともに縦、横及び厚さがそれぞれ70mm、70mm及び2mmのCuにより形成されたヒートシンクと、・・・」
d 引用文献1に記載された発明
上記摘記事項a~cを、技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。
「セラミック基板13の両面に第1及び第2アルミニウム板11,12又は第1及び第2銅板21,22を積層接着した構造体14を、両面にAl融点降下層17aが形成されたアルミニウム箔17によって、Al又はCuにより形成されたヒートシンク16に接合する方法であって、
厚さ2.0mmの前記ヒートシンク16を使用し、
前記アルミニウム箔17を、前記構造体14と前記ヒートシンク16との間に配置し、
前記アルミニウム箔17が、前記構造体14と前記ヒートシンク16との間に介され、
前記ヒートシンク16の上に前記アルミニウム箔17を介して前記構造体14を重ねて、これらに荷重を加え、真空中で520~570℃に加熱保持することにより前記構造体14と前記ヒートシンク16が接合される方法。」(以下「引用発明」という)
(イ)引用文献2
本件優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-281498号公報(以下「引用文献2」という)には、次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審で付した)。
a 「【0040】
図3に示すように、従来の絶縁回路基板は回路板1、セラミックス板2および放熱板5の積層体を活性金属やAl合金系のろう材6を用いて接合したものである。この場合も、セラミックス板2に発生する最大の残留主応力は、回路板の形状の影響を受ける回路板分離部100で生じる。」
b 「【0045】
従って、従来構造の絶縁回路基板においては、回路板1および放熱板5の素材としてCuやCu合金を用いたCu回路板、AlやAl合金を用いたAl回路板を適用したときの回路板2/放熱板5の限界の肉厚は、セラミックス板2が窒化ケイ素であるときは、それぞれ0.4mm/0.3mm,0.6mm/0.4mmであった。」
(ウ)引用文献3
本件優先日前に頒布された特開2005-252122号公報(以下「引用文献3」という)には、次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審で付した)。
a 「【0019】
1又は複数枚のセラミックグリーンシートには、例えば、枠体状になるように中空部を打ち抜き加工すると共に、タングステンや、モリブデン等の高融点金属からなる金属導体ペーストを用いて、セラミック基板10の下面側が一方の主面、上面側が他方の主面となるようにスクリーン印刷してそれぞれろう付け接合用の導体パターンを形成する。また、セラミックグリーンシートが複数枚の場合には、積層して積層体の一方の主面、及び他方の主面が導体パターンとなるようにスクリーン印刷して形成する。そして、図3(A)に示すように、導体パターンが形成されたセラミックグリーンシートは、高融点金属とセラミックグリーンシートを還元雰囲気中で同時焼成して両表面にメタライズ膜12、12aを有するセラミック基板10を作製する。なお、一方の主面のメタライズ膜12は、ヒートシンク板11とろう付け接合するために、例えば、枠体状の下面全周面に形成されており、他方の主面のメタライズ膜12aは、外部接続端子18とろう付け接合するために、例えば、枠体状の上面周面に部分的に形成されている。更に、セラミック基板10のメタライズ膜12、12aの表面には、例えば、Niや、Ni-Co等のNi合金等からなるNiめっき被膜13、13aが電解めっき法や、無電解めっき法で形成される。そして、更に、図3(B)に示すように、ヒートシンク板11とろう付け接合されるセラミック基板10のメタライズ膜12のNiめっき被膜12の上面には、例えば、BAg-8等からなるAg-Cu系ろう材が載置され、非酸化性雰囲気中、約780~900℃で加熱してAg-Cu系ろう材を溶融し、Niめっき被膜12の上面に付着させてAg-Cu系ろう膜14を設けることでセラミック基板10を作製している。」
b 「【0022】
次いで、ヒートシンク板11と、セラミック基板10、及び外部接続端子18をろう付け接合して形成する接合体の作製方法を説明する。図3(C)に示すように、先ず、接合体を形成するためには、ヒートシンク板11の平面形状からなる一方の主面の中央部に、セラミック基板10の下面側である一方の主面に形成されたAg-Cu系ろう膜14を当接させて載置し、非酸化性雰囲気中、約780~900℃で加熱してAg-Cu系ろう膜14を再溶融してヒートシンク板11の一方の主面との間にAg-Cu系ろう層17を設けてセラミック基板10をろう付け接合している。このろう付け接合においては、予め溶融付着していたAg-Cu系ろう膜14がAg-Cuろう材中のAgの比率の上昇によるAg-Cu系ろう材再溶融時の融点を上昇させるので、キャビティ部16へのろう材流れ21を小さくさせている。次に、セラミック基板10の上面側である他方の主面に、例えば、BAg-8等のAg-Cu系ろう材を介して外部接続端子18の先端部の下面側を当接させて載置し、非酸化性雰囲気中、約780~900℃で加熱してAg-Cu系ろう材を溶融してセラミック基板10と外部接続端子18との間にAg-Cu系ろう層17aを設けてろう付け接合している。接合体は、このヒートシンク板11と、セラミック基板10の接合、及びセラミック基板10と、外部接続端子18のろう付け接合によって形成されている。なお、この接合体の形成は、ヒートシンク板11と、セラミック基板10の接合、及びセラミック基板10と、外部接続端子18の接合を同時に行って形成することもできる。次に、接合体の外表面に露出する全金属表面上には、例えば、Niや、Ni-Co等のNi合金等からなるNiめっき被膜が施され、更に、このNiめっき被膜上にAuめっき被膜が施される。上記のようにして形成された接合体は、例えば、高周波用等の半導体素子15を実装するために、枠体状のセラミック基板10の開口部とヒートシンク板11の一方の主面とで形成されているキャビティ部16を有し、ヒートシンク板11の他方の主面が放熱用の基台に当接できる半導体素子収納用パッケージ20として形成されている。」
(エ)引用文献4
本件優先日前に頒布された実願平8-2929号(実開平8-1644号)のCD-ROM(以下「引用文献4」という)には、次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審で付した)。
a 「【0005】
この考案は、上記知見にもとづいてなされたものであって、第1図に概略説明図で示されるように、Al-Si系合金またはAl-Ge系合金ろう材DをAlまたはAl合金からなるヒートシンク板材Aの片面にクラッドしたろう付け板材を用意し、さらに、Al-Si系合金またはAl-Ge系合金ろう材DをAlまたはAl合金からなる回路形成用薄板材Bの片面にクラッドしたろう付け板材を用意し、これらろう付け板材のろう材側が酸化アルミニウム焼結体からなる絶縁材Cに接するように積層して積層体を製造し、この積層体をろう材溶融温度に加熱して積層接合体を製造し、ついで前記回路形成用薄板材Bの表面の所定部分または全面にCuまたはNiメッキ層を形成してなる半導体装置用軽量基板に特徴を有するものである。」
(オ)引用文献5
本件優先日前に頒布された特開2001-44345号公報(以下「引用文献5」という)には、次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審で付した)。
a 「【0034】本発明の基板一体型構造体においては、窒化アルミニウム基板の一方の面にAl回路が形成され、他方の反対面にはアルミニウム板を介して、若しくは介さずに、ベース板やヒートシンクなどの放熱部品が接合される。上記のAl-Mg-Cu系合金、Al-Mg-Ge系合金或いはAl-Mg-Si系合金の組成と、Al/SiC複合材に用いるAlを主成分とする金属の組成を適宜選択することにより、アルミニウムからなる回路パターン又は放熱用アルミニウム板と、Al/SiC複合材からなる放熱部品とを、同時に窒化アルミニウム基板の表裏面に接合することができる。この場合、Al-Mg-Cu系合金、Al-Mg-Ge系合金或いはAl-Mg-Si系合金の接合材は、窒化アルミニウム基板とアルミニウム回路パターン、或いはアルミニウム回路形成用のアルミニウム板との間に積層介在させるが、あらかじめアルミニウム板と接合用合金をクラッドしておくと一層使用しやすく、好ましい。」
b 「【0036】本発明の基板一体型構造体は、Mgを含有する液相温度が500~630℃のAl合金を接合材に用いることによって、その生産性を著しく高めることができる。その理由の一つは、接合が真空炉に限定されないことである。真空炉は元来高価なうえ、連続化が難しく、またバッチ炉では容積効率が悪い。大型炉にすると温度分布が生じ易く、高収率での生産は望めない。これに対し、従来のAl-Si系やAl-Ge系合金の接合材のかわりに、Al-Mg-Cu系合金やAl-Mg-Ge系合金を始めとする、Mgを含有する液相温度が500~630℃のAl合金をを用いると、真空下でなくとも、N2、H2、不活性ガス及びこれらの混合ガスの低酸素雰囲気下で接合することができるので、炉構造が簡単になり、連続化も容易となる。更に、連続化によって、温度分布等の製品のバラツキ要因を低減させることができ、歩留まりよく、品質の安定した製品を製造することができるという効果を達することができる。」
c 「【0044】(3)一体型構造体の作製
表2に示される接合材と、前記の窒化アルミニウム基板、放熱部品及びAl回路とを、図1のように積層した。これを炉外から油圧式の一軸加圧装置でカーボン製の押し棒を介して窒化アルミニウム基板面と垂直方向に加圧しながら加熱を行い、接合した。接合条件は、表3に示すとおりであり、4×10-3Paの真空中(バッチ炉)又はN2ガス中(連続炉)で行った。なお、比較例1では、窒化アルミニウム基板の表裏面にAl板(厚み0.4mm)を接合した後、共晶半田で放熱部品に接合した。」
イ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「セラミック基板13の両面に第1及び第2アルミニウム板11,12又は第1及び第2銅板21,22を積層接着した構造体14」は、本件補正発明の「少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有する金属-セラミック基板」に相当し、同様に、「両面にAl融点降下層17aが形成されたアルミニウム箔17」は「金属合金」に、「Al又はCuにより形成されたヒートシンク16」は「金属体」に、それぞれ相当することは明らかである。
引用発明の「厚さ2.0mmの前記ヒートシンク16を使用し」た点は、本件補正発明の「(a)厚みが1mm未満である金属体を使用し」た点とは、「(a)金属体を使用し」た点までは一致する。
また、引用発明の「Al融点降下層17a」が、Alが主成分のAl系合金であり、その液相温度が450℃より高いことも、当業者には自明の事項であることを勘案すれば、引用発明の「前記アルミニウム箔17を、前記構造体14と前記ヒートシンク16との間に配置し、前記アルミニウム箔17が、前記構造体14と前記ヒートシンク16との間に介され」ている点は、本件補正発明の「(b)(b-1)アルミニウムを含み、(b-2)液相温度が450℃より高い金属合金の層を、金属-セラミック基板と金属体との間に配置し、前記金属合金の層が、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合され」ている点とは、「(b)(b-1)アルミニウムを含み、(b-2)液相温度が450℃より高い金属合金の層を、金属-セラミック基板と金属体との間に配置し」ている点までは一致する。
さらに、引用発明の「前記ヒートシンク16の上に前記アルミニウム箔17を介して前記構造体14を重ねて」配置したものは、本件補正発明の「金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含」む「アセンブリ」に相当し、引用発明の「これらに荷重を加え、真空中で520~570℃に加熱保持する」点が、本件補正発明の「前記アセンブリは炉に導入され、450℃より高い温度に加熱され」る点に相当することも、当業者には自明である。
そうすると、引用発明の「前記ヒートシンク16の上に前記アルミニウム箔17を介して前記構造体14を重ねて、これらに荷重を加え、真空中で520~570℃に加熱保持することにより前記構造体14と前記ヒートシンク16が接合される」点と、本件補正発明の「(c)ステップ(b)が提供するアセンブリは金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合されており、前記アセンブリは炉に導入され、450℃より高い温度に加熱され、不活性ガス雰囲気下でセラミック基板と金属体が接合される」点とは、「(c)ステップ(b)が提供するアセンブリは金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、前記アセンブリは炉に導入され、450℃より高い温度に加熱され、セラミック基板と金属体が接合される」点までは一致する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有する金属-セラミック基板を、金属合金によって金属体に接合する方法であって、
(a)金属体を使用し、
(b)(b-1)アルミニウムを含み、(b-2)液相温度が450℃より高い金属合金の層を、金属-セラミック基板と金属体との間に配置し、
(c)ステップ(b)が提供するアセンブリは金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、前記アセンブリは炉に導入され、450℃より高い温度に加熱され、セラミック基板と金属体が接合される、方法。」
<相違点1>
本件補正発明の金属体が「厚みが1mm未満である」のに対し、引用発明のヒートシンク16は「厚さ2.0mm」である点。
<相違点2>
本件補正発明では「金属合金の層が、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合され」ているのに対し、引用発明では「アルミニウム箔17が、前記構造体14と前記ヒートシンク16との間に介され」てはいるが、堅固に結合されてはいない点。
<相違点3>
接合を行うのが、本件補正発明では「不活性ガス雰囲気下」であるのに対し、引用発明では「真空中」である点。
ウ 判断
(ア)相違点1について
引用文献2に、従来構造の絶縁回路基板において、放熱板5の限界の肉厚が0.3mm、0.4mmであることが示されているように、回路基板の熱伝導用の金属体の厚みを1mm未満とすることは、従来周知の事項にすぎないものである。
そして、引用発明のヒートシンク16において、セラミック回路基板からの熱伝導を勘案しながら、必要に応じて従来周知の事項を適用し、ヒートシンク16の厚みとして1mm未満のものを採用することは、当業者であれば適宜成し得る設計変更程度の事項である。
(イ)相違点2について
半導体用基板とヒートシンク用金属板とのろう付け接合を行う際に、ろう付け材を基板又は金属板のどちらかに予め固定しておく技術は、引用文献3(ヒートシンク板11とろう付け接合されるセラミック基板10のメタライズ膜12のNiめっき被膜12の上面にAg-Cu系ろう材を溶融付着させている点を参照)や、引用文献4(Al系合金ろう材DをAlからなるヒートシンク板材Aの片面にクラッドしたろう付け板材を酸化アルミニウム焼結体からなる絶縁材Cに接合する点を参照)にも示されているように、従来周知の事項にすぎないものである。
そして、2枚の板材のろう付け接合を行う場合、ろう付け材の配置構造は、2枚の板材の片方又は両方に固定しておくか、2枚の板材に固定せずに挟むかのどれかであって、このような配置構造は必要に応じて適宜選択される構造にすぎないから、引用発明のセラミック回路基板と金属のヒートシンクとのろう付け接合を行うに際し、ろう付け材の配置構造に引用文献3、4に記載された従来周知の事項を選択して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることが、当業者にとって困難性があるものとは認められない。
(ウ)相違点3について
炉中で行う金属材料のろう付けに際して、炉中の雰囲気を窒素等の不活性ガス雰囲気とすることは、真空下で行うのと同様に一般的に周知の方法にすぎず、基板とヒートシンクとのAl系合金ろう付け材による接合においても、真空又は不活性ガス雰囲気で行われることは、引用文献5に示されているように従来周知の事項であるから、引用発明のろう付け接合において不活性ガス雰囲気下とすることも、当業者が適宜選択することが可能であって、格別困難な事項とは認められない。
(エ)効果について
上記の相違点1ないし3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された従来周知の事項の奏する効果から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 小結
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)補正の適否についてのむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件出願について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし12に係る発明は、平成28年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、上記第2の1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし12に係る発明は、優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開平10-270596号公報
引用文献2:特開2007-281498号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、上記第2の2(2)ア(ア)及び(イ)に記載したとおりである。
4 当審の判断
本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明について、「金属合金の層」が、「金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合され」るだけでなく、択一的に、「結合される金属-セラミック基板の面と金属体との間の揚げ板として置かれ」る構成も含まれるとともに、「ステップ(b)が提供するアセンブリ」が「金属-セラミック基板、金属合金、および金属体を含み、金属-セラミック基板および金属体の少なくとも1つに堅固に結合されており、前記アセンブリは炉に導入され、不活性ガス雰囲気下でセラミック基板と金属体が接合される」という限定事項を削除したものである。
そして、本願発明の「金属合金の層」が、「結合される金属-セラミック基板の面と金属体との間の揚げ板として置かれ」る構成は、引用発明が、「前記ヒートシンク16の上に前記アルミニウム箔17を介して前記構造体14を重ねて」いる構成であって、当該アルミニウム箔17は、結合される構造体14とヒートシンク16との間の揚げ板として置かれていることになると考えられるから、本願発明と引用発明とで構成は相違しないものと認められる。
また、本願発明には、本件補正発明の発明特定事項で限定された「不活性ガス雰囲気下でセラミック基板と金属体が接合される」点は含まれておらず、当該点での相違点は存在しない。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点でのみ相違し、その余の点では一致するものと認められる。
<相違点4>
本願発明の金属体が「厚みが1mm未満である」のに対し、引用発明のヒートシンク16は「厚さ2.0mm」である点。
上記相違点4は、本件補正発明と引用発明との上記相違点1と同じである。
そうすると、上記第2の2(2)ウ(ア)で検討したのと同様に、引用発明のヒートシンク16において、セラミック回路基板からの熱伝導を勘案しながら、必要に応じて引用文献2にも示された従来周知の事項を適用し、ヒートシンク16の厚みとして1mm未満のものを採用して、本願発明のように構成することは、当業者であれば適宜成し得る設計変更程度の事項であると認められる。
また、本願発明によってもたらされる効果も、引用発明及び従来周知の事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものではない。
よって、本願発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003916