特許拒絶査定不服審判
2017-001170
縦型窒化物半導体素子およびその製造方法
- 審判番号
- 2017-001170
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-072442外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月26日
- 審決日
- 2017年10月17日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日亜化学工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01L) / P18 .55 -WY (H01L) / P18 .561-WY (H01L) / P18 .575-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 72442「縦型窒化物半導体素子およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 7日出願公開,特開2013-206990,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成24年3月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 8月10日 拒絶理由通知(同年8月18日発送)
同年10月15日 手続補正書・意見書
平成28年 3月10日 拒絶理由通知(最後・同年3月15日発送)
同年 5月13日 手続補正書・意見書
同年10月18日 補正の却下の決定(同年11月1日発送)
(平成28年5月13日 手続補正書について)
同年10月18日 拒絶査定(同年11月1日発送)
平成29年 1月26日 審判請求
第2 平成28年10月18日付けの補正の却下の決定について
請求人は,審判請求の理由において,平成28年5月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)に係る標記補正の却下の決定(以下「本件決定」という。)について,その補正の却下の理由はいずれもあたらない旨の主張をしているので,まずこれについて検討する。
1 本件決定の理由
本件決定の理由は,請求項1に係る発明の「半導体層の接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となる」という発明特定事項は,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから,特許法第17条の2第3項の規定に違反し,仮にそうでないとしても,本件補正後の請求項1-4に記載された発明は,周知技術を勘案して,引用例1又は引用例2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができず,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たさない,というものである。
ここで,本件決定において引用された各刊行物は以下のとおりである。
---< 引用例等一覧 >--------------------
1 特開2006-073822号公報
2 特開2006-073619号公報
3 特開平11-163403号公報
4 特開平5-343742号公報
5 特開2007-234865号公報
6 特開2010-114411号公報
7 特開2006-319311号公報
---------------------------------
2 本件補正
(1)本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲及び明細書を補正するものであり,補正前後の特許請求の範囲については以下のものである。
〈補正前〉
「【請求項1】
導電性基板と,前記導電性基板の一方の表面側に,第2の電極を介して接合された,窒化物からなる半導体層と,前記導電性基板の他方の表面に形成された金属層と,前記半導体層の接合表面と対向する表面に形成された第1の電極と,前記導電性基板と前記第2の電極との間に形成された電極材料または導電性材料からなる接合層と,を備える縦型窒化物半導体素子であって,
前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有し,
前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であることを特徴とする縦型窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記接合層は,前記第2の電極の表面に形成された第1の接合層,および,前記導電性基板の表面に形成された第2の接合層の少なくとも一層を有することを特徴とする請求項1に記載の縦型窒化物半導体素子。
【請求項3】
請求項1に記載の縦型窒化物半導体素子の製造方法であって,
導電性基板と,絶縁性基板の表面に形成され,第2の電極が接合された窒化物からなる半導体層とを準備し,前記導電性基板および前記第2の電極の少なくとも一方に接合層を形成する準備工程と,
前記導電性基板の一方の表面に,前記接合層を介して,前記準備工程で準備した前記半導体層を接合する接合工程と,
前記半導体層から前記絶縁性基板を除去する基板除去工程と,
前記半導体層に第1の電極を形成すると共に,前記導電性基板に金属層を形成する電極・金属層形成工程と,
前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出して,前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となるように,前記半導体層から前記導電性基板の厚さ方向の一部までを切削することによって当該導電性基板の残部を複数形成し,前記導電性基板の残部で互いが連結された複数の積層素子を作製する切削工程と,
前記導電性基板の残部を分割し,前記フランジ部を有する複数の縦型窒化物半導体素子を作製する分割工程と,を含むことを特徴とする縦型窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記分割工程は,前記導電性基板の他方の表面側から,前記導電性基板の残部に分割線を形成することによって前記積層素子を分割することを特徴とする請求項3に記載の縦型窒化物半導体素子の製造方法。」
〈補正後〉
「【請求項1】導電性基板と,前記導電性基板の一方の表面側に,第2の電極を介して接合された,窒化物からなる半導体層と,前記導電性基板の他方の表面に形成された金属層と,前記半導体層の接合表面と対向する表面に形成された第1の電極と,前記導電性基板と前記第2の電極との間に形成された電極材料または導電性材料からなる接合層と,を備える縦型窒化物半導体素子であって,
前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有し,
前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であり,
前記フランジ部の延出長さが,前記半導体層の長さに対して0.1~0.5倍であることを特徴とする縦型窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記接合層は,前記第2の電極の表面に形成された第1の接合層,および,前記導電性基板の表面に形成された第2の接合層の少なくとも一層を有することを特徴とする請求項1に記載の縦型窒化物半導体素子。
【請求項3】
請求項1に記載の縦型窒化物半導体素子の製造方法であって,
導電性基板と,絶縁性基板の表面に形成され,第2の電極が接合された窒化物からなる半導体層とを準備し,前記導電性基板および前記第2の電極の少なくとも一方に接合層を形成する準備工程と,
前記導電性基板の一方の表面に,前記接合層を介して,前記準備工程で準備した前記半導体層を接合する接合工程と,
前記半導体層から前記絶縁性基板を除去する基板除去工程と,
前記半導体層に第1の電極を形成すると共に,前記導電性基板に金属層を形成する電極・金属層形成工程と,
前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出して,前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となるように,前記半導体層から前記導電性基板の厚さ方向の一部までを切削することによって当該導電性基板の残部を複数形成し,前記導電性基板の残部で互いが連結された複数の積層素子を作製する切削工程と,
前記導電性基板の残部を分割し,前記フランジ部を有する複数の縦型窒化物半導体素子を作製する分割工程と,を含むことを特徴とする縦型窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記分割工程は,前記導電性基板の他方の表面側から,前記導電性基板の残部に分割線を形成することによって前記積層素子を分割することを特徴とする請求項3に記載の縦型窒化物半導体素子の製造方法。」
(2)補正事項の整理
《補正事項》
補正前の請求項1の「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積である」を補正後の請求項1の「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であり, 前記フランジ部の延出長さが,前記半導体層の長さに対して0.1~0.5倍である」と補正すること。
3 本件補正の目的の適否についての検討
前記補正事項は,補正前の「フランジ部」について,補正後の「前記フランジ部の延出長さが,前記半導体層の長さに対して0.1~0.5倍である」として,補正前の請求項1の発明特定事項である「フランジ部」について技術的に限定するものである。よって,前記補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
4 本件補正の新規事項の追加の有無についての検討
(1)フランジ部について
前記補正事項に係る,「フランジ部の延出長さが,前記半導体層の長さに対して0.1~0.5倍である」ことは,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0021】に記載されている。よって,前記補正事項は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
(2)各表面が同一面積であることについて
本件補正後の請求項1に係る,「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積である」ことは,平成27年10月15日にされた手続補正により加入されたものであり,当該手続補正に対して,平成28年3月10日付けの最後の拒絶理由通知において,当該事項の加入について特許法第17条の2第3項の規定に違反する旨が通知されて,本件決定の理由の一つとなっているから,以下,この点について検討する。
ア 当初明細書等の記載
当初明細書等には以下の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。
「【0017】
<縦型窒化物半導体素子>
本発明に係る縦型窒化物半導体素子の実施の形態について,図面を参照して説明する。図1に示すように,縦型窒化物半導体素子100は,導電性基板20と,半導体層30と,金属層70と,第1の電極50と,第2の電極60と,接合層40とを備える。そして,導電性基板20は,フランジ部21を有する。
なお,本発明において,縦型窒化物半導体素子100とは,導電性基板20および半導体層30を挟んで第1の電極50,第2の電極60および金属層70とが対向するように上下方向(積層方向)に配置された半導体素子構造を持つものを言う。
以下,縦型窒化物半導体素子(以下,半導体素子と称する)100の各構成について説明する。
【0018】
・・・(中略)・・・
【0023】
そして,フランジ部21の形成方法の詳細は,後記する半導体素子100の製造方法の欄で説明するが,図4,図5に示すように,導電性基板20と半導体層30とを接合した後,半導体層30の側面30bと導電性基板20の側面20bが露出するように,半導体層30をエッチングし,エッチング後,導電性基板20の厚さ方向の一部までを切削して形成される導電性基板20の残部22を分割することによってフランジ部21が形成される。」
「【0043】
(切削工程)
切削工程S5では,図5(b)に示すように,半導体層30の側面30bと導電性基板20の側面20bが露出するように,絶縁性基板10が除去された半導体層30側から導電性基板20の厚さ方向の一部までを切削することによって導電性基板20の残部22を複数形成して,導電性基板20の残部22で互いが連結された複数の積層素子110を作製する。
【0044】
詳細には,絶縁性基板10が除去された半導体層30の表面側から,SiO2等の絶縁膜80までRIE(Reactive Ion Etching)を行い,その後,絶縁膜80,接合層40および導電性基板20をダイサー等により切削する。例えばダイサー等により切込みを入れて厚さ方向に切溝を形成すると共に,導電性基板20の一部を残すように導電性基板20の厚さ方向の一部を切削する。このように切溝を厚さ方向の一部まで形成することによって,半導体層30の側面30b,接合層40の側面41b,42bおよび導電性基板20の側面20bを露出させる溝部23と溝部23に対向する導電性基板20の残部22とを複数形成して,導電性基板20の残部22で互いが連結された複数の積層素子110を作製する。
【0045】
溝部23の間隔Lは,作製する複数の積層素子110(半導体素子)の大きさに相当する。そして,積層素子110(半導体素子)の大きさによって適宜設定するが,例えば,間隔Lは,ダイサーの刃の厚みにもよるが0.5mm~3.0mmである。また,溝部23の深さT3は,導電性基板20の残部22の厚さが,前記したフランジ部21の厚さT2となるように,適宜設定する。ここで,フランジ部21の厚さT2は,導電性基板20にCuWを用いる場合,10μm~100μmであることが好ましい。
【0046】
溝部23の形成方法としては,溝部23が形成できれば特に限定されないが,電子線照射,ダイサー等を用いることができ,作業性に優れる点でダイサーを用いることが好ましい。その場合,ダイサーの幅が,溝部23の幅D2に相当することとなる。なお,ダイシングにおいて,溝部23の幅D2は,導電性基板20の残部22を分割して形成されるフランジ部21の延出長さD1(図1参照)の略2倍となる。前記したように,フランジ部21の延出長さD1は10μm~100μmが好ましいため,溝部23の幅D2は,20μm~200μmが好ましい。」
ここで,図5は以下のものであって,溝部23の幅が一定であることが見て取れる。
イ 検討
当初明細書等の記載からは,上記図5に示されているとおり,溝部23の幅が一定であることが見て取れ,また,当初明細書等の全記載を見ても,溝部の幅を深さ方向について途中で変える旨の記載もない。
ところで,上記アで摘記したとおり,溝部23の形成方法として,具体的には,半導体層30をエッチングし,その後ダイサーにより導電性基板に至るように切削することが,上記段落【0023】及び【0044】に記載されている。
しかしながら,当初明細書等には,半導体層30をエッチングすることによる技術的意義は何ら記載されておらず,また,「溝部23の形成方法としては,溝部23が形成できれば特に限定されない」(段落【0046】)との記載もある。
さらに,一般に,発光ダイオードを構成する半導体層をダイサーで切削することは,従来より慣用されていることでもある(例えば,特開平11-163403号公報の段落【0039】の記載を参照)。
また,当初明細書等に記載されたものにおいて,半導体層30がダイサーで切削されることにより,半導体層30の切削加工面にダメージが生じ,当該切削加工面近傍における発光がいくらか減少するとしても,当該減少の程度が,従来技術に比して増大された半導体層主面の面積により発光面面積が増加するという効果を全く消滅するものとまではいえない。
したがって,当初明細書等の記載からは,半導体層30をエッチングし,その後ダイサーにより導電性基板に至るように切削するに際し,ダイサーの切削幅をエッチングによる加工幅と同等以上として切削して,溝部23の全部において幅を一定とすることが排除されているとはいえない。
よって,本件補正後の請求項1に係る,「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積である」ことは,当初明細書に記載されているといえる。
5 補正発明の独立特許要件についての検討
上記3で検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる限定的減縮を目的とするものを含むから,以下においては,本件補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて更に検討する。
(1)刊行物に記載された発明
ア 引用例1:特開2006-73822号公報
(ア)本件決定の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-73822号公報(以下「引用例1」という。)には,図1~6とともに,以下の記載がある。
「【0030】
以下,本発明を,図を用いて詳細に説明する。図1は,本発明の窒化物系化合物半導体発光素子の概略断面図である。本発明の窒化物系化合物半導体は,第一の導電性基板11上に,第一のオーミック電極12が形成され,当該第一のオーミック電極12上に接着用金属層20が形成され,当該接着用金属層20の上に第二のオーミック電極13が形成され,当該第二のオーミック電極13上に窒化物系化合物半導体層30が形成され,当該窒化物系化合物半導体層30上に透明電極17が形成され,当該透明電極17上にパッド電極18が形成されている。なお,窒化物系化合物半導体層30には凹溝部50が形成されている。これにより,当該窒化物系化合物半導体層30に接する接着用金属層20の面積が小さくなり,第一の導電性基板11との接着性を良好にすることができる。
【0031】
また,上記図1の窒化物系化合物半導体発光素子において,第一の導電性基板11の裏面には,オーミック電極14がさらに形成され,パッド電極18上にはワイヤボンディング10が形成されていることが好ましい。また,第二のオーミック電極13と第二の接着用金属層22との間には,反射層19が形成されていることが好ましい。なお,図1において,凹溝部50は,当該反射層19および第二の接着用金属層22まで形成されている。これは,当該発光素子の製造工程において,窒化物系半導体層30に凹溝部50を作製した後,P型層31上に反射層19および第二の接着用金属層22を形成するために,半導体層30の凹溝部が反射層19および第二の接着用金属層22にまで引き継がれることになるからである。
【0032】
さらに,図1において,窒化物系化合物半導体層30は,第一の導電性基板11側から順番に,P型層31,発光層32およびN型層33よりなる。発光素子として機能させるためである。また,接着用金属層20は,第一の接着用金属層21と第二の接着用金属層22とから構成されている。
【0033】
・・・(中略)・・・
【0040】
なお,本発明において,上記の窒化物系化合物半導体層を形成した後,凹溝部を形成する。凹溝部の形成手段としては,反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができ,凹溝の幅は,1μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。100μmを超えるとであると,チップの取れ数が減少するという問題が生じるおそれがあり,1μm未満であると,チップを分割する際にうまく分割できないという問題が生じるおそれがあるためである。また,凹溝部の深さは,後述するように第二の基板に達するか,または,第二の基板の途中まで形成することが好ましい。
【0041】
なお,本発明において,窒化物系化合物半導体層は,第一の接着用金属層と接合する前に,すなわち,第一の導電性基板と接着する前に,予めバッファ層,N型層,発光層およびP型層をこの順番で第二の基板上に積層形成して,窒化物系化合物半導体発光素子構造体とするものである。
【0042】
すなわち,図2に示すように,第二の基板35上に,バッファ層36,N型層33,発光層32およびP型層31をこの順番で積層成長し,窒化物系化合物半導体層を形成する。次いで,当該窒化物系化合物半導体層に,凹溝部50をバッファ層36に達する程度までまたは第二の基板の途中まで形成して窒化物系化合物半導体発光素子構造体とする。その後,凹溝部50の形成されてない部分におけるN型層上に第二のオーミック電極13,反射層19,バリヤ層(図示せず),第二の接着用金属層22をこの順番で蒸着法などにより形成する。その後,当該構造体中の第二の接着用金属層22を第一の接着用金属層21に接合する。
【0043】
このように,予め窒化物系化合物半導体発光素子構造体を形成しておくことにより,窒化物系半導体層と第一の導電性基板との接着性を確実にすることができ,また,窒化物系半導体層の凹溝部形成も容易に行うことができる。さらに,電極を半導体発光素子の上下に対向するように形成することができるものである。
【0044】
・・・(中略)・・・
【0049】
本発明において,第一の導電性基板にも,凹溝部を形成していてもよい。当該凹溝部はエッチングにより形成することができる。また,当該凹溝の幅は,2μm以上150μm以下とすることが好ましい。150μmを超えるとであると,窒化物系化合物半導体発光素子構造体を保持できないという問題が生じるおそれがあり,2μm未満であると,窒化物系化合物半導体発光素子構造体に形成した凹溝部に対向して形成できないという問題が生じるおそれがあるためである。また,エッチング液としては,フッ酸系のエッチング液,ドライエッチング用のハロゲン系ガスを用いることができる。
【0050】
本発明において,上述したように,第一の導電性基板と窒化物系半導体層とを一体化するに際し,第一の導電性基板に予め凹溝部を形成しておき,その後窒化物半導体層と一体化してもよい。このように,第一の導電性基板および窒化物半導体層の両方に凹溝部を形成しておくことにより,接着の面積がさらに小さくなり,より確実な密着性を確保することができる。
【0051】
次に,本発明の窒化物系化合物半導体発光素子の製造方法について説明する。本発明の窒化物系化合物半導体の製造方法によれば,第二の基板上に窒化物系化合物半導体を積層形成する工程と,該窒化物系化合物半導体に凹溝部を形成する工程と,該凹溝部を有する窒化物系化合物半導体上に第二のオーミック電極を形成する工程と,該第二のオーミック電極の上に第二の接着用金属層を形成する工程と,第一の導電性基板上に第一のオーミック電極を形成する工程と,該第一のオーミック電極上に第一の接着用金属層を形成する工程と,前記第一の接着用金属層と前記第二の接着用金属層とを接合する工程と,前記第二の基板を除去して前記窒化物系化合物半導体層の表面を露出させる工程と,該露出した表面に透明電極を形成する工程とを包含する。
【0052】
・・・(中略)・・・
【0055】
本発明の製造方法において,第二の接着用金属層と第一の接着用金属層とを接合する前に,第一の導電性基板に予め凹溝部を形成していることが好ましい。具体的には,図4に示すように,第一の導電性基板11上に第一のオーミック電極12および第一の接着用金属層21を形成した後,エッチングにより凹溝部51を形成するものである。その後,図5に示すように,上述の製造方法と同様に,第二の基板側の構造と第一の導電性基板側の構造とを一体化し,第二の基板を除去する。その後,第一の導電性基板において,凹溝部51の底部Xから基板面に垂直な方向にスクライブラインを導入し,その後当該スクライブラインに沿って分割することにより,図6に示すような窒化物系化合物半導体発光素子を得ることができる。
【0056】
このように,第一の導電性基板にも凹溝部を形成していることにより,第一の接着用金属層と第二の接着用金属層との接合の際の面積がさらに小さくなるので,接合の強度をさらに増大させることができる。」
ここで,図6は以下のものである。
(イ)図6に示された断面を参照すると,導電性基板11には,凹溝部が形成されて,オーミック電極14が設けられた面が,第一のオーミック電極12が設けられた面よりも幅が広くなっていることが見て取れ,このことから,オーミック電極14が設けられた面の面積が,第一のオーミック電極12が設けられた面の面積よりも広いことがわかる。また,凹溝部50は曲線として表されていることから,窒化物系化合物半導体発光素子を構成する各層の表面の面積が必ずしも同じとはいえないことがわかる。
(ウ)以上から,引用例1には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明1」という。)。
「窒化物系化合物半導体発光素子であって
第一の導電性基板11上に,第一のオーミック電極12が形成され,当該第一のオーミック電極12上に接着用金属層20が形成され,当該接着用金属層20の上に第二のオーミック電極13が形成され,当該第二のオーミック電極13上に窒化物系化合物半導体層30が形成され,当該窒化物系化合物半導体層30上に透明電極17が形成され,当該透明電極17上にパッド電極18が形成され,窒化物系化合物半導体層30には凹溝部50が形成されており,
第一の導電性基板11の裏面には,オーミック電極14がさらに形成され,
第二のオーミック電極13と第二の接着用金属層22との間には,反射層19が形成されており,
接着用金属層20は,第一の接着用金属層21と第二の接着用金属層22とから構成されており,
第一の導電性基板11には,凹溝部が形成されて,オーミック電極14が設けられた面の面積が,第一のオーミック電極12が設けられた面の面積よりも広くなっている,
窒化物系化合物半導体発光素子。」
イ 引用例2:特開2006-73619号公報
(ア)本件決定の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-73619号公報(以下「引用例2」という。)には,図1~10とともに,以下の記載がある。
「【0027】
(実施形態1)
図1は,本発明の窒化物系化合物半導体発光素子の概略断面図である。図1において,本発明の窒化物系化合物半導体発光素子は,導電性基板1上に,少なくとも第一のオーミック電極,第一の接着用金属層21,第二の接着用金属層31および第二のオーミック電極3を含み,当該第二のオーミック電極3上に窒化物系化合物半導体層60が形成されている。また,当該窒化物系化合物半導体層60上には,発光素子として機能させるために必要な,透明電極7,パッド電極8およびボンディングワイヤ9が形成されている。
【0028】
本発明において,上記窒化物系化合物半導体層は,図1に示すように,P型層4,発光層5およびN型層6をこの順に備える。このような半導体層の組成,層厚および物性等を調整することにより,所望の特性を有する発光を達成することができる。
【0029】
・・・(中略)・・・
【0033】
次に,本発明の窒化物系化合物半導体発光素子の製造方法を,図を用いて説明する。なお,以下の製法において例示する各層の寸法は一例であって,所望する発光素子の特性に応じて適宜調整することができる。
・・・(中略)・・・
【0040】
次に,図5に示すように,図3に示した構成体と図4に示した構成体とを,第二の接着用金属層31と第一の接着用金属層21とが接合するようにして接合させる。具体的には,第一の接着用金属層21としてのAu層と第二の接着用金属層31としてのAuSn層上のAu層とを対向させ,共晶接合法を用いて,温度290℃,圧力300Nにて貼り付ける。
【0041】
次に,図6に示すように,支持基板10を除去する。具体的には,YAG-THGレーザ(波長355nm)を鏡面研磨した支持基板10側から照射し,支持基板10と界面のGaN材料からなるバッファ層11とN型GaN材料からなるN型層6の一部を熱分解することにより支持基板10を除去する。なお,図6において,図中の破線は,除去された支持基板10,バッファ層11およびN型層6の一部を示す。
【0042】
次に,図7に示すように,N型層6上にレジスト12を形成し,反応性イオンエッチング(RIE)を用いて,N型層6側からP型層4まで完全に除去し,第二のオーミック電極3の一主面50を露出させて溝を形成する。ここで,RIEで露出させた溝の幅Xは,1μm以上100μm以下とすることが好ましい。1μm未満であると,露出させた溝の表面にチップ化するための溝を形成することが困難なため,チップ分割ができないおそれがあり,100μmを超えると,溝の幅を広く取りすぎるため,一枚のウェハからチップの取れ率が減少してしまう。より好ましくは,10μm以上30μm以下である。なお,実施形態1においては,50μmとしている。
【0043】
次いで,図8に示すように,レジスト12を除去し,支持基板10が除去され露出されたGaN材料からなるN型層6上にITO(SnドープIn2O3)からなる透明導電体電極7をほぼ全面に形成し,その中心部にボンディングパッド電極8としてN型ボンディングパッド電極(Au/Ti)を形成する。
【0044】
次に,図9に示すように,矢印の方向にYAG-THGレーザ(波長355nm)を照射して,第二のオーミック電極3の一主面50から導電性基板1の途中までに溝13を形成する。次に,図10に示すように,赤外線透過型スクライブ装置を用いて,溝13に対向するように導電性基板裏面側からケガキ線14を入れる。このケガキ線14に沿って分割するとチップ化工程を完了することができる。さらに,ボンディングパッド8上にAu材料からなるボンディングワイヤ9をボールボンディングする。これにより,図1に示すような本発明の窒化物系化合物半導体発光素子化工程を製造することができる。
【0045】
以上のように,本発明の窒化物系化合物半導体発光素子によれば,PN接合近傍をケガキまたは分割しない構造とするため,ケガキまたは分割用の溝を形成する領域において窒化物系化合物半導体層を完全に除去するかまたはP型層の途中まで除去することにより,チップ化工程でのケガキ時に発生するP層とN層の短絡がなくなりリーク電流の低減が可能となり,信頼性の良好な窒化物系化合物半導体発光素子が実現できる。
【0046】
また,露出したオーミック電極層を,レーザを用いて溝を形成し,さらにその溝に対向するように導電性基板側からも溝を形成しているため,接着用金属層の剥がれ,剥離等がなくなりチップ分割が容易になりチップの取れ率が向上する。なお,導電性基板裏面側からのケガキ線14は導電性基板の裏面からSiをエッチングにより除去しそこにケガキ線を入れるとさらにチップ化が容易になる。」
ここで,図1は以下のものである。
(イ)図1に示された断面を参照すると,第二のオーミック電極3よりも下の部分と,窒化物系化合物半導体層60とは,その幅が異なるように表され,両者を構成する各層の表面の面積が必ずしも同じとはいえないことがわかる。
(ウ)以上から,引用例2には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明2」という。)。
「窒化物系化合物半導体発光素子であって,
導電性基板1上に,少なくとも第一のオーミック電極,第一の接着用金属層21,第二の接着用金属層31および第二のオーミック電極3を含み,当該第二のオーミック電極3上に窒化物系化合物半導体層60が形成されており,当該窒化物系化合物半導体層60上には,発光素子として機能させるために必要な,透明電極7,パッド電極8およびボンディングワイヤ9が形成されている,
窒化物系化合物半導体発光素子。」
(2)対比
上記引用発明1または2と,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)とを対比する。
ア 引用発明1との対比
引用発明1の「第一の導電性基板11」,「窒化物系化合物半導体層30」,「透明電極17」,「第二のオーミック電極13」,「接着用金属層20」,及び「オーミック電極14」は,それぞれ,補正発明の「導電性基板」,「窒化物からなる半導体層」,「第1の電極」,「第2の電極」,「接合層」,及び「金属層」に相当する。
また,引用発明1の,「第一の導電性基板11には,凹溝部が形成されて,オーミック電極14が設けられた面の面積が,第一のオーミック電極12が設けられた面の面積よりも広くなっている」ことは,補正発明の「前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有」することに相当する。
よって,引用発明1と補正発明とは,
「導電性基板と,前記導電性基板の一方の表面側に,第2の電極を介して接合された,窒化物からなる半導体層と,前記導電性基板の他方の表面に形成された金属層と,前記半導体層の接合表面と対向する表面に形成された第1の電極と,前記導電性基板と前記第2の電極との間に形成された電極材料または導電性材料からなる接合層と,を備える縦型窒化物半導体素子であって,
前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有する縦型窒化物半導体素子。」
である点で一致する。
一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
補正発明は,「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であ」るとの構成を備えるが,引用発明1はそのような構成を備えない点。
《相違点2》
補正発明は,「前記フランジ部の延出長さが,前記半導体層の長さに対して0.1~0.5倍である」と特定されているのに対して,引用発明1はそのような特定がされていない点。
イ 引用発明2との対比
引用発明2の「導電性基板1」,「窒化物系化合物半導体層60」,「透明電極7」,「第二のオーミック電極3」,及び「接着用金属層31」は,それぞれ,補正発明の「導電性基板」,「窒化物からなる半導体層」,「第1の電極」,「第2の電極」及び「接合層」に相当する。
よって,引用発明2と補正発明とは,
「導電性基板と,前記導電性基板の一方の表面側に,第2の電極を介して接合された,窒化物からなる半導体層と,前記半導体層の接合表面と対向する表面に形成された第1の電極と,前記導電性基板と前記第2の電極との間に形成された電極材料または導電性材料からなる接合層と,を備える縦型窒化物半導体素子。」
である点で一致する。
一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点3》
補正発明は「導電性基板の他方の表面に形成された金属層」を備えるが,引用発明2はそのようなものを備えない点。
《相違点4》
補正発明は,「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であ」るとの構成を備えるが,引用発明2はそのような構成を備えない点。
《相違点5》
補正発明は,「前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有」するとともに「前記フランジ部の延出長さが,前記半導体層の長さに対して0.1~0.5倍であ」る構成を備えるが,引用発明2は,そのような構成を備えない点。
(3)判断
ア 上記(2)ア,イから,引用発明1と補正発明との相違点である《相違点1》は,引用発明2と補正発明との相違点である《相違点4》と同じものであるから,まずこの点について検討する。
イ 《相違点1》について
前記(1)ア(イ)に記載したとおり,引用例1の図6に示された断面において,凹溝部50は曲線として表されていることから,窒化物系化合物半導体発光素子を構成する各層の表面の面積が必ずしも同じとはいえないことがわかる。すなわち,補正発明の「前記半導体層の前記接合表面」に相当する窒化物系化合物半導体層30の導電性基板11側の表面と,補正発明の「前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面」に相当する窒化物系化合物半導体層30の透明電極17側の表面と,補正発明の「前記導電性基板の一方の前記表面」に相当する導電性基板11の窒化物系化合物半導体層30側の表面とは,同一の表面積とはいえない。
また,引用発明1には,断面において,凹溝部50が曲線として表される構造に代えて,凹溝部50が垂直な直線として表されるように構成する旨の記載ないし示唆はない。
引用例3及び4には,半導体層表面から支持基板表面にかけて各層の表面が同じ面積となるように構成することが記載されてはいるものの,引用例3及び4に記載された技術は,支持基板としてサファイア等を用いたときの素子分割時の課題(特に,引用例3の段落【0004】~【0013】,引用例4の段落【0004】~【0005】を参照。)に対応するものであるから,引用発明1に係る,導電性基板を用いたものに当該技術を適用する動機は生じ得ない。
一方,補正発明は,相違点1に係る構成を備えることで,発光面積の増大という効果を奏するものである。
よって,周知技術を勘案しても,相違点1は,引用発明1から当業者が容易に想到することができないものである。
ウ 《相違点4》について
前記(1)イ(イ)に記載したとおり,引用例2の図1に示された断面を参照すると,第二のオーミック電極3よりも下の部分と,窒化物系化合物半導体層60とは,その幅が異なるように表され,両者を構成する各層の表面の面積が必ずしも同じとはいえないことがわかる。すなわち,補正発明の「前記半導体層の前記接合表面」に相当する窒化物系化合物半導体層60の導電性基板1側の表面と,補正発明の「前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面」に相当する窒化物系化合物半導体層60の透明電極7側の表面と,補正発明の「前記導電性基板の一方の前記表面」に相当する導電性基板1の窒化物系化合物半導体層30側の表面とは,同一の表面積とはいえない。
そして,引用例2に記載されたものがそのような構成を備えることは,製造工程において,引用例2の段落【0042】~【0046】に記載された製造工程において,RIEにより形成された溝と,YAG-THGレーザ照射により形成された溝13を設けることにより生ずるものである。そして,引用例2には,第二のオーミック電極3よりも下の部分と,窒化物系化合物半導体層60とが,幅が同じとなるように形成する旨の記載ないし示唆はない。
引用例3及び4には,半導体層表面から支持基板表面にかけて各層の表面が同じ面積となるように構成する技術が記載されてはいるものの,上記イでの検討と同様に,引用発明2に係る,導電性基板を用いたものに当該技術を適用する動機は生じ得ない。
一方,補正発明は,相違点4に係る構成を備えることで,発光面積の増大という効果を奏するものである。
よって,周知技術を勘案しても,相違点4は,引用発明2から当業者が容易に想到することができないものである。
エ よって,《相違点2》について検討するまでもなく,補正発明は引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものではなく,また,《相違点3》及び《相違点5》について検討するまでもなく,補正発明は引用発明2から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ また,本件補正後の請求項2は,補正発明に係る構成を全て含むものであるから,上記検討と同様に,周知技術を勘案しても,引用発明1又は引用発明2から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件補正後の請求項3,及び請求項3を引用する請求項4について検討する。
請求項3は,「請求項1に記載の縦型窒化物半導体素子の製造方法」であって,「前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出して,前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となるように,前記半導体層から前記導電性基板の厚さ方向の一部までを切削する」工程を備えるところ,上記検討のとおり,引用例1及び引用例2には,いずれも「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であ」る構成が示されておらず,また,そのような構成となるように製造することも記載されていない。
それゆえ,本件補正後の請求項3に係る発明は,周知技術を勘案しても,引用例1に記載された発明又は引用例2に記載された発明から,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,本件補正後の請求項3に係る構成を全て含む請求項4に係る発明についても,同様に,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであり,また,他に,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たさない事項は発見しないので,本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものである。
6 小括
以上のとおりであって,本件補正は適法にされたものであるから,平成28年10月18日付けの補正の却下の決定は取り消すべきものである。
第3 本件発明について
1 本件発明
上記第2 2~6で検討したとおり,本件補正は適法にされたものであるから,本件発明は,前記第2 2(1)に〈補正後〉として記載したとおりのものである(以下においては,請求項1~4に係る発明を,それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)。
2 原査定の拒絶の理由について
原査定の拒絶の理由は,本願に係る発明は,周知技術を勘案して,引用例1又は引用例2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,また,平成27年10月15日にされた手続補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものでないから特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。
3 検討
(1)特許法第29条第2項の規定に関して
上記第2 5(1)~(3)で検討したとおり,本件発明1~本件発明4は,周知技術を勘案しても,引用例1又は引用例2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)特許法第17条の2第3項の規定に関して
ア 平成27年10月15日にされた手続補正の内容
(ア)補正事項1
補正前の請求項1の「前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面から延出するフランジ部を有し」を,補正後の請求項1の「前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有し」とすること。
(イ)補正事項2
補正前の請求項1の「前記フランジ部は,前記導電性基板と前記半導体層とを接合した後,前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出するように,前記半導体層から前記導電性基板の厚さ方向の一部までを切削して形成される当該導電性基板の残部を分割することによって形成される」を,補正後の請求項1の「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積である」とすること。
(ウ)補正事項3
補正前の請求項3の「前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出するように,」を,補正後の請求項3の「前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出して,前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となるように,」とすること。
イ 検討
(ア)補正事項1について
「前記導電性基板は,他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有」することは,前記第2 4(2)アで摘記した,当初明細書等の段落【0044】~【0046】の記載から明らかである。
(イ)補正事項2及び補正事項3について
上記第2 4で検討したとおり,「前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積である」ことは当初明細書に記載されているといえる。
また,同様に理由により,「前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出して,前記半導体層の前記接合表面と,前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と,前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となるように,」することも当初明細書に記載されているといえる。
ウ 小括
以上のとおりであるから,平成27年10月15日にされた手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1~4に係る発明は,周知技術を勘案しても,引用発明1または引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず,また,平成27年10月15日にされた手続補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-001170