2017-000695
配線体、導体層付き構造体、及びタッチセンサ
- 審判番号
- 2017-000695
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-152536外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月18日
- 審決日
- 2017年08月15日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社フジクラ
- 【請求人代理人】とこしえ特許業務法人
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
本願は,平成27年7月31日の出願であって,平成28年3月23日付けで拒絶理由が通知され,平成28年5月30日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年10月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成29年1月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出され,平成29年3月8日付けで前置報告がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者という。」)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-8
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.登録実用新案第3191884号公報
2.特開2014-207283号公報
第3 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,平成29年1月18日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】電極パターンと,複数の第2の導体線により網目状に形成された引き出し配線と,前記電極パターンと前記引き出し配線との間に介在し,前記電極パターンと前記引き出し配線とを電気的に接続する境界配線と,を備え,続きを表示(全41行)前記引き出し配線は,一端が前記境界配線と電気的に接続され,網目状に形成された少なくとも2つの枝線と,すべての前記枝線と電気的に接続され,網目状に形成された主線と,を有し,隣り合う前記枝線同士は,相互に離間しており,隣り合う前記枝線同士の間には,前記第2の導体線が未形成の領域が設けられており,前記引き出し配線の開口率は,10~50%である配線体。【請求項2】請求項1に記載の配線体であって,前記枝線を構成する前記第2の導体線は,前記枝線の延在方向に対して傾斜して配置されており,前記枝線の側端部は,前記枝線の延在方向において,前記枝線を構成する複数の前記第2の導体線によりジグザグ状に延在している配線体。【請求項3】請求項1又は2に記載の配線体であって,前記電極パターンは,複数の第1の導体線を有し,前記電極パターンは,前記第1の導体線により網目状に形成され,下記(1)式を満たす配線体。W1<W2・・・(1)但し,上記(1)式において,W1は前記第1の導体線の幅であり,W2は前記境界配線の幅である。【請求項4】請求項3に記載の配線体であって,複数の前記第1の導体線は,相互に交差することで,同一形状とされた複数の開口を画定しており,下記(2)式を満たす配線体。D<L・・・(2)但し,上記(2)式において,Dは前記境界配線の延在方向における前記開口の幅の最大値であり,Lは前記境界配線の延在方向における隣り合う前記枝線の間の距離である。【請求項5】請求項3又は4に記載の配線体であって,下記(3)式を満たす配線体。W1<W3・・・(3)但し,上記(3)式において,W1は前記第1の導体線の幅であり,W3は前記第2の導体線の幅である。【請求項6】請求項1~5のいずれか一項に記載の配線体であって,前記配線体は,樹脂層をさらに備え,前記電極パターン,前記引き出し配線,及び前記境界配線は,前記樹脂層上に設けられている配線体。【請求項7】請求項6に記載の配線体と,前記配線体の少なくとも一方の主面上に設けられた支持体と,を備えた導体層付き構造体。【請求項8】請求項7に記載の導体層付き構造体を備えたタッチセンサ。」
第4 引用発明,引用文献等
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。
ア 「【0014】図1,図2,及び図3を参照すると,タッチスクリーン100の実施形態は,透明基板110,第1の基板層120,第1の導電層130,第1の電極トレース140,第2の基板層150,第2の導電層160,第2の電極トレース170,及び絶縁層180を含む。」
イ 「【0016】第1の基板層120は第1の表面112に取り付けられる。第1の基板層120は透明絶縁材で作られている。特に,第1の基板層120は,第1の表面112上に塗布された接着剤を硬化させて形成される。さらに,第1の基板層120は,透明基板110から離れた面上に複数の第1のメッシュ状溝121を有する。第1の導電層130は,第1のメッシュ状溝121に充填された導電材料で形成される。さらに,第1の電極トレース140が第1の基板層120上に配置され,第1の導電層130はこの第1の電極トレース140に電気的に接続する。特に,第1の導電層130は,互いに交差する複数の導線から構成される導電性メッシュ構造である。従って,タッチパネル100の準備プロセス中に,エッチングプロセス無しに予成形された導電層を得ることができ,原材料の浪費を防いでコストを低減することができる。【0017】また,図4を参照すると,例示的な実施形態において,第1の導電層130は,互いに絶縁された複数の第1のメッシュストリップ131に分かれており,第1の電極トレース140は,それぞれ複数の第1のメッシュストリップ131に電気的に接続する。」
ウ 「【0019】図5を参照すると,例示的な実施形態において,第2の導電層160は,互いに絶縁された複数の第2のメッシュストリップ161に分かれており,第2の電極トレース170は,複数の第2のメッシュストリップ161に電気的に接続する。」
エ 「【0022】図4及び5を参照すると,例示的な実施形態において,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は両方ともソリッドワイヤであり,第1の基板層120及び第2の基板層150上に形成されるトレンチ(符号なし)に埋め込むことができる。第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170としてソリッドワイヤを用いると,製造が容易になりコストを低減することができる。」
オ 「【0024】図6を参照すると,別の実施形態において,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,互いに交差する複数の導線で形成され,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170のメッシュセルの辺長は,第1の導電層130及び第2の導電層160のメッシュセルの辺長よりも短い。特に,第1のメッシュ状溝121及び第2のメッシュ状溝151は,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170を形成するために使用される部分を含む。導電材料が第1のメッシュ状溝121及び第2のメッシュ状溝151に充填される場合,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170が同時に形成される。このメッシュ状構造により,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170のメッシュ内に交点が増え,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170の断線の可能性が低くなる。【0025】さらに,例示的な実施形態において,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,それぞれ第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173を備える。第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173はともに連続した導線である。【0026】第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170のメッシュセルの辺長は,第1の導電層130及び第2の導電層160のメッシュセルの辺長よりも短いので,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170が第1の導電層130及び第2の導電層160に直接,電気的に接続される場合,これらに整列することは難しい場合がある。例示的な実施形態において,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173を介して第1の導電層130及び第2の導電層160に電気的に接続される。第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173は連続的な導線なので,第1の電極アダプタケーブル143は第1の導電層130の少なくとも2本の導線の端部と,第1の電極トレース140とに接続することができ,第2の電極アダプタケーブル173は,第2の導電層160の少なくとも2本の導線の端部と,第2の電極トレース170とに接続することができる。従って,第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173を使用して,異なる辺長のメッシュセルを有するメッシュに金属導線を整列させるのが難しいという問題を解決することができ,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は第1の導電層130及び第2の導電層160に良好に接続することができる。」
上記引用文献1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には,タッチスクリーンの電極トレースに関し,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1の導電層130は,互いに絶縁された複数の第1のメッシュストリップ131に分かれており,第1の電極トレース140は,それぞれ複数の第1のメッシュストリップ131に電気的に接続し,第2の導電層160は,互いに絶縁された複数の第2のメッシュストリップ161に分かれており,第2の電極トレース170は,複数の第2のメッシュストリップ161に電気的に接続し,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,互いに交差する複数の導線で形成され,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170のメッシュセルの辺長は,第1の導電層130及び第2の導電層160のメッシュセルの辺長よりも短く,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,それぞれ第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173を備え,第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173はともに連続した導線であり,第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173を介して第1の導電層130及び第2の導電層160に電気的に接続される,電極トレース。」
2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0075】<第2の実施形態>図6は,第2の実施形態における配線基材の平面図であり,特に第1の配線を拡大して示す部分拡大平面図である。本実施形態においても,接続部34は複数の接続配線36を有して形成されているが,複数の接続配線36が六角形状や菱形形状のメッシュ状パターンを形成していない点で,第1の実施形態と異なる。図6に示すように,接続部34が第2の配線部33に接続された箇所において,第2の配線部33から複数の接続配線36a,36bに分岐される。そして,接続配線36aは接続配線36c,36dに分岐され,また,接続配線36bは接続配線36e,36fに分岐されて,第1の配線部32に向かう方向において直列的に分岐を繰り返して複数の接続配線36が形成される。このように分岐された複数の接続配線36と第1の配線部32とが接続される。【0076】このような態様であっても,接続部34を構成する複数の接続配線36の合計の幅が,第2の配線部33から第1の配線部32に向かうにしたがって大きくなるように形成される。よって,第1の配線31を形成する工程において,第1の配線部32を形成するために塗布されたインク53と第2の配線部33を形成するために塗布されたインク53との表面張力による凝集力の差が,接続部34によって緩和されて第1の配線部32と第2の配線部33との間で凝集力の急激な変化が生じることを抑制できる。よって,第2の配線部33のインク53が第1の配線部32の側に引き込まれることによるパターンの断絶を防止でき,第2の配線部33の電気的接続が確保される。」
上記引用文献2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「塗布されたインクの表面張力による凝集力の差を抑制するために,第1の配線部32に向かう方向において直列的に分岐を繰り返して複数の接続配線36が形成され,接続部34を構成する複数の接続配線36の合計の幅が,第2の配線部33から第1の配線部32に向かうにしたがって大きくなるように形成される,第1の配線。」
3.引用文献3
前置報告書で新たに引用された特開2015-49909号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】基板と,前記基板上に設けられる複数の電極を備える電極部と,を含み,前記電極部はメッシュ状に形成される複数の導体線からなり,前記電極部は前記基板の複数の領域別に異なる開口率を有する,タッチパネル。【請求項2】前記複数の領域は有効領域及びベゼル領域を含み,前記有効領域上の前記電極部の開口率は,前記ベゼル領域上の前記電極部の開口率より大きい,請求項1に記載のタッチパネル。・・・(中略)・・・【請求項23】前記導体線により形成される複数のメッシュ状の開口率は,10%~99%の範囲で変動される,請求項22に記載のタッチパネル。」
上記引用文献3の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「電極部はメッシュ状に形成される複数の導体線からなり,有効領域上の電極部の開口率は,ベゼル領域上の電極部の開口率より大きく,導体線により形成される複数のメッシュ状の開口率は,10%~99%の範囲で変動されること。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
a 引用発明の第1の導電層130の「第1のメッシュストリップ131」や第2の導電層160の「第2のメッシュストリップ161」は,本願発明1の「電極パターン」に相当する。
b 引用発明の「第1の電極トレース140」や「第2の電極トレース170」は,「互いに交差する複数の導線で形成され」るから,本願発明1の「複数の第2の導体線により網目状に形成された引き出し配線」に相当する。
c 引用発明の「第1の電極アダプタケーブル143」や「第2の電極アダプタケーブル173」はともに「連続した導線であ」り,また,「第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170は,第1の電極アダプタケーブル143及び第2の電極アダプタケーブル173を介して第1の導電層130及び第2の導電層160に電気的に接続される」ことからから,上記「第1の電極アダプタケーブル143」や「第2の電極アダプタケーブル173」は,本願発明1の「境界配線」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「 電極パターンと,複数の第2の導体線により網目状に形成された引き出し配線と,前記電極パターンと前記引き出し配線との間に介在し,前記電極パターンと前記引き出し配線とを電気的に接続する境界配線と,を備えた配線体。」
(相違点)
本願発明1では,
「前記引き出し配線は,一端が前記境界配線と電気的に接続され,網目状に形成された少なくとも2つの枝線と,すべての前記枝線と電気的に接続され,網目状に形成された主線と,を有し,隣り合う前記枝線同士は,相互に離間しており,隣り合う前記枝線同士の間には,前記第2の導体線が未形成の領域が設けられており,前記引き出し配線の開口率は,10~50%である」
のに対し,
引用発明では,「第1の電極トレース140」や「第2の電極トレース170」はそのような構成を有しない点。
(2)相違点についての判断
上述した通り,引用文献2には,
「塗布されたインクの表面張力による凝集力の差を抑制するために,第1の配線部32に向かう方向において直列的に分岐を繰り返して複数の接続配線36が形成され,接続部34を構成する複数の接続配線36の合計の幅が,第2の配線部33から第1の配線部32に向かうにしたがって大きくなるように形成される,第1の配線。」
という技術的事項が記載されている。
しかしながら,引用発明の「第1の電極トレース140及び第2の電極トレース170」は互いに交差する複数の導線で形成されているものであるところ,そのようなメッシュ構造の配線部に対して「直列的に分岐を繰り返して複数の接続配線36が形成」される構成を採用したとして「塗布されたインクの表面張力による凝集力の差を抑制する」か否かは不明であるし,引用発明において「塗布されたインクの表面張力による凝集力の差」が生じることが当業者にとって明らかであるとは認められないから,引用発明において引用文献2に記載された技術的事項を採用する動機付けはない。
また,上述したとおり,引用文献3には,
「電極部はメッシュ状に形成される複数の導体線からなり,有効領域上の電極部の開口率は,ベゼル領域上の電極部の開口率より大きく,導体線により形成される複数のメッシュ状の開口率は,10%~99%の範囲で変動されること。」
という技術的事項が記載されている。
しかしながら,引用文献3の「有効領域上の電極部」や「ベゼル領域上の電極部」はタッチパネルの電極であって本願発明1の「引き出し配線」に相当するものとは認められないから,その開口率の数値を本願発明1の「引き出し配線」に適用する合理的理由はない。
したがって,上記(相違点)に係る本願発明1の構成は,引用発明1及び引用文献2,3の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできないから,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-8について
本願発明2-8も,本願発明1の
「前記引き出し配線は,一端が前記境界配線と電気的に接続され,網目状に形成された少なくとも2つの枝線と,すべての前記枝線と電気的に接続され,網目状に形成された主線と,を有し,隣り合う前記枝線同士は,相互に離間しており,隣り合う前記枝線同士の間には,前記第2の導体線が未形成の領域が設けられており,前記引き出し配線の開口率は,10~50%である」
と同一の構成を備えるものである。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2,3の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-000695