特許拒絶査定不服審判
2024-008914
光コネクタ用フェルールおよび光コネクタ
- 審判番号
- 2024-008914
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-565045
- 請求日
- 2024年05月29日
- 審決日
- 2025年11月20日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社フジクラ
- 【請求人代理人】及川 周
- 【請求人代理人】清水 雄一郎
- 【請求人代理人】片岡 央
- 【請求人代理人】丹野 拓人
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 東松 修太郎
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-565045「光コネクタ用フェルールおよび光コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月 2日国際公開、WO2022/113418〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)7月14日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和2年11月24日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年10月31日付け:拒絶理由通知書
同年12月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 3月 5日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
以下、令和2年11月24日を「優先日」という。
第2 令和6年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月29日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年5月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであって、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年12月25日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
光ファイバが挿入される複数のファイバ孔が形成されたフェルール本体部を備え、
前記複数のファイバ孔が延びる方向を前後方向とし、前記複数のファイバ孔が並べられた方向を左右方向とし、前記前後方向および前記左右方向の双方に直交する方向を上下方向とし、前記前後方向において前記フェルール本体部の接続端面が位置する側を前方とし、前記前方の反対側を後方とするとき、
前記フェルール本体部は、
ガイドピンが挿入されるガイド孔と、
前記フェルール本体部の後端面から前記前方に向けて窪む凹部と、を有し、
前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口し、
前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され、
前記フェルール本体部の前記上下方向における厚みTfと前記ガイド孔の直径DとがD/Tf>0.4を満足し、
前記フェルール本体部の上面および下面の全ては、壁面で覆われ、
前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置されるとともに、前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びている、光コネクタ用フェルール。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
光ファイバが挿入される複数のファイバ孔が形成されたフェルール本体部を備え、
前記複数のファイバ孔が延びる方向を前後方向とし、前記複数のファイバ孔が並べられた方向を左右方向とし、前記前後方向および前記左右方向の双方に直交する方向を上下方向とし、前記前後方向において前記フェルール本体部の接続端面が位置する側を前方とし、前記前方の反対側を後方とするとき、
前記フェルール本体部は、
ガイドピンが挿入されるガイド孔と、
前記フェルール本体部の後端面から前記前方に向けて窪む凹部と、を有し、
前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口し、
前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され、
前記フェルール本体部の前記上下方向における厚みTfと前記ガイド孔の直径DとがD/Tf>0.4を満足し、
前記フェルール本体部の上面および下面の全ては、壁面で覆われ、
前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置されるとともに、前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びており、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の各々は、複数の領域に分かれていない、光コネクタ用フェルール。」
2 本件補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「第1傾斜面」と「第2傾斜面」の各々について、「複数の領域に分かれていない」ことを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。
<本件補正発明の分説>
A 光ファイバが挿入される複数のファイバ孔が形成されたフェルール本体部を備え、
B 前記複数のファイバ孔が延びる方向を前後方向とし、前記複数のファイバ孔が並べられた方向を左右方向とし、前記前後方向および前記左右方向の双方に直交する方向を上下方向とし、前記前後方向において前記フェルール本体部の接続端面が位置する側を前方とし、前記前方の反対側を後方とするとき、
C 前記フェルール本体部は、ガイドピンが挿入されるガイド孔と、前記フェルール本体部の後端面から前記前方に向けて窪む凹部と、を有し、
前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口し、
前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され、
D 前記フェルール本体部の前記上下方向における厚みTfと前記ガイド孔の直径DとがD/Tf>0.4を満足し、
E 前記フェルール本体部の上面および下面の全ては、壁面で覆われ、
F 前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置されるとともに、前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びており、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の各々は、複数の領域に分かれていない、
X 光コネクタ用フェルール。
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項等及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2012/108324号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。他の文献についても同様である。)。
a 技術分野([0001])
「技術分野
[0001] 本発明は、光モジュールに関する。」
b 第1の実施形態([0009]~[0054]、[図1]~[図3])
「[0009] 図1は、本発明の第1の実施形態に係る光モジュール100を示す。光モジュール100は、回路基板50と、回路基板50に実装された筐体10と、フェルール60を介して光信号を伝送する光ファイバ70と、フェルール60を筐体10に対して着脱可能に固定する固定部材40とを備える。・・・(中略)・・・
[0011] 筐体10は、セラミック製であってよい。筐体10の厚みは、最も厚い場所で、数mm程度であってよい。フェルール60の厚みは、1.6mm以下である。固定部材40は、後述する第1押圧部30及び第2押圧部20を有する。固定部材40は、厚さが約0.2mmの金属製の板状部材を加工して形成する。固定部材40の材料金属は、アルミ合金、銅合金、ステンレス鋼等であってよい。
[0012] 光モジュール100は、回路基板50をフェルール60を介して光ファイバ70に結合する。つまり、光モジュール100は、回路基板50の電気信号を光に変換して、フェルール60を介して光ファイバ70に結合し、光ファイバ70からの光信号を電気信号に変換して回路基板50の素子に供給することによって、回路基板50と光ファイバ70との光-電気接続を着脱可能に行う。
「
[図:0001431704000001.jpg]
」
「[0013] 図2は、光モジュール100の分解図である。フェルール60は、光ファイバ70のコア部を通じて伝送される光信号を入出力する光入出力面62を有する。図2において、光入出力面62の法線方向をY軸とする。また、後述する載置面13の法線方向をZ軸とする。また、Y軸およびZ軸の双方と直交する方向をX軸とする。フェルール60は、光入出力面62に少なくとも2つのガイド穴66が設けられている。ガイド穴66は、後述するガイドピン18と嵌合し、フェルール60の位置決めを行う。フェルール60はX軸を法線方向とする側面64を有する。
・・・(中略)・・・
[0014] 筐体10は、フェルール60が載置される載置部12を有する。・・・(中略)・・・
[0015] 載置部12はフェルール60を支持する載置面13を有する。・・・(中略)・・・
」
「
[図:0001431704000002.jpg]
」
「[0032] 図3は、光ファイバ70側から筐体10を見た断面図である。筐体10は、フェルール60の光入出力面62と対向して、光入出力部14を有する。光入出力部14は、フェルール60の光入出力面62との間で光を入出力するレンズ16を有する。レンズ16は、フェルール60の光入出力面62に対応する大きさ及び形状を有する。レンズ16は、フェルール60のチャネル毎に設けられてもよい。レンズ16は石英ガラスにより形成されてよい。
[0033] 光入出力部14は、少なくとも2つのガイドピン18を有する。それぞれのガイドピン18は、フェルール60のそれぞれのガイド穴66と嵌合する。ガイドピン18はフェルール60のガイド穴66に挿入されるように、光入出力部14において位置決めされる。ガイドピン18の径は、例えば、約0.7mmである。
・・・(後略)・・・」
「
[図:0001431704000003.jpg]
」
(イ) 引用文献1に記載された事項及び技術常識から当業者が把握できる事項
当業者であれば、引用文献1に記載された事項及び技術常識から、以下の事項を把握できる(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a [図1]及び[0009]の「光モジュール100は、回路基板50と、回路基板50に実装された筐体10と、フェルール60を介して光信号を伝送する光ファイバ70と、フェルール60を筐体10に対して着脱可能に固定する固定部材40とを備える」との記載より、当業者は、光モジュール100が備えるフェルール60を把握できる。
b [0013]の「フェルール60は、光ファイバ70のコア部を通じて伝送される光信号を入出力する光入出力面62を有する。・・・(中略)・・・フェルール60は、光入出力面62に少なくとも2つのガイド穴66が設けられている。」との記載を踏まえて[図2]を見ると、フェルール60の光入出力面62にX軸方向に並ぶ複数の円が視認され、当該複数の円が、複数の光ファイバのコア部であることは明らかである。したがって、当業者は、フェルール60の光入出力面62には、光ファイバ70のコア部がX軸方向に並んで複数設けられることを把握でき、故に、フェルール60は多心フェルールであることを把握できる。また、[0013]の同記載及び[図2]から、当業者は、光ファイバ70はフェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面からフェルール60内に延伸することも把握できる。そして、多心フェルールの光ファイバの入出力面に垂直な方向に複数の光ファイバ挿入孔が、挿入される複数の光ファイバごとに設けられることは技術常識であることを踏まえると、当業者であれば、フェルール60には、光入出力面62に設けられた複数の光ファイバ70のコア部に対応して、X軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔が設けられることを把握できる。
c [0011]の「フェルール60の厚み」とは、フェルール60のZ軸方向の厚みのことであることは明らかである。
d [図2]より、当業者は、フェルール60は略直方体形状であること、及び、フェルール60の+Z側の面は、開口を有しないことを把握できる。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)に摘記した引用文献1に記載された事項及び前記(イ)の引用文献1に記載された事項及び技術常識から当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施形態に係る光モジュール100が備えるフェルール60に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「光モジュール100が備える多心フェルール60であって、(前記(イ)a、b)
光モジュール100は、回路基板50と、回路基板50に実装された筐体10と、フェルール60を介して光信号を伝送する光ファイバ70と、フェルール60を筐体10に対して着脱可能に固定する固定部材40とを備え、([0009])
光モジュール100は、回路基板50の電気信号を光に変換して、フェルール60を介して光ファイバ70に結合し、光ファイバ70からの光信号を電気信号に変換して回路基板50の素子に供給することによって、回路基板50と光ファイバ70との光-電気接続を着脱可能に行い、([0012])
フェルール60は、光ファイバ70のコア部を通じて伝送される光信号を入出力する光入出力面62を有し、光入出力面62の法線方向をY軸とし、載置面13の法線方向をZ軸とし、Y軸およびZ軸の双方と直交する方向をX軸とし、フェルール60は、光入出力面62に少なくとも2つのガイド穴66が設けられ、ガイド穴66は、ガイドピン18と嵌合し、フェルール60の位置決めを行い、([0013])
筐体10は、フェルール60が載置される載置部12を有し、([0014])
載置部12はフェルール60を支持する載置面13を有し、([0015])
筐体10は、フェルール60の光入出力面62と対向して、光入出力部14を有し、([0032])
光入出力部14は、少なくとも2つのガイドピン18を有し、それぞれのガイドピン18は、フェルール60のそれぞれのガイド穴66と嵌合し、ガイドピン18はフェルール60のガイド穴66に挿入されるように、光入出力部14において位置決めされ、ガイドピン18の径は、約0.7mmであり、([0033])
フェルール60は略直方体形状であり、フェルール60の+Z側の面は、開口を有さず、(前記(イ)d)
フェルール60のZ軸方向の厚みは、1.6mm以下であり、([0011]、前記(イ)c)
光ファイバ70はフェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面からフェルール60内に延伸し、(前記(イ)b)
フェルール60の光入出力面62には、光ファイバ70のコア部がX軸方向に並んで複数設けられ、フェルール60には、光入出力面62に設けられた複数の光ファイバ70のコア部に対応して、X軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔が設けられる、(前記(イ)b)
多心フェルール60」
イ 引用文献4に記載された事項及び引用文献4技術事項の認定
(ア) 引用文献4に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に発行された、特開2000-111761号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0016】図1(a)は本発明の第1の実施形態を示すもので、(イ)は縦断面図、(ロ)は横断面図、(ハ)は(ロ)の部分拡大図である。図において、14は多心光コネクタ、31は多心光ファイバテープ心線である。多心光コネクタ14は光コネクタ本体1と、該光コネクタ本体1に設けた多心光ファイバテープ心線31の端末部を挿入する心線挿入孔2、該挿入孔2の幅を狭めるテーパー部3、テーパー部3に続く光ファイバを導入するための円錐状入口部4、光ファイバ導入孔5、該導入孔5の孔径を光ファイバの径より若干大きい孔径に狭める円錐状入口部6、この円錐状入口部6に続く、光ファイバの径より若干大きい孔径を有し、光ファイバを挿入する光ファイバ挿入微細孔7とを有している。この光コネクタ本体1に多心光ファイバテープ心線31を装着するには、光ファイバテープ心線の端末から所定距離離れた位置まで光ファイバを被覆する被覆層を剥離して各光ファイバ32を口出しする。このようにして端末処理した光ファイバテープ心線にブーツ13をかぶせ、該光ファイバテープ心線の端末部分を光コネクタ本体1のブーツ挿入孔12を経て、心線挿入孔2に挿入する。光ファイバテープ心線から口出しされた光ファイバ32は心線挿入孔2からテーパー部3、各光ファイバを導入するための円錐状入口部4から光ファイバ導入孔5へと導かれる。光ファイバ導入孔5へ入った光ファイバは光ファイバ挿入微細孔7の円錐状入口部6から光ファイバ挿入微細孔7に導かれて行くが、光ファイバテープ心線の光ファイバを露出させた口出し端末面33は、前記光ファイバテープ心線挿入孔2と光ファイバを導入するための円錐状入口部4につながるテーパー部3の中間位置8のところで当たり、それ以上進むことができなくなり、この位置で光ファイバテープ心線の挿入位置が決められる。従って、この状態において光ファイバの先端を、光ファイバ挿入微細孔7から光コネクタ本体1の外側に突き出す長さ分だけ被覆層を剥離し、口出ししておく必要がある。即ち、露出させる光ファイバの長さlを、光ファイバテープ心線を光コネクタに装着した時、光ファイバの先端が光コネクタを貫通する長さとすることである。
・・・(中略)・・・
【0018】なお、前記テーパー部3は心線挿入孔2の上下、左右4面に設けてもよく、あるいは上下2面または左右2面のみに設けるだけでもよいことは勿論である。」
「【図1】(a)
[図:0001431704000004.jpg]
」
(イ) 引用文献4に記載された事項から当業者が把握できる事項
a 引用文献4の【0016】、【0018】及び【0019】の記載並びに【図1】(a)(イ)及び同(ロ)から、当業者は、テーパー部3及び円錐状入口部4は、心線挿入孔2の底面に設けられることを把握することができる。
b 引用文献4の【0016】、【0018】の記載並びに【図1】(a)(ロ)から、当業者は、円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5は、左右方向に複数設けられることを把握することができる。
c 引用文献4の【0016】の記載並びに【図1】(a)(イ)及び同(ロ)と、テーパー部3は、口出しされた各光ファイバを導入するための円錐状入口部3の手前に設けられることから、当業者は、テーパー部3は、光ファイバ毎に区切られていない平坦状であることを把握できる。
d 引用文献4の【0018】の記載及び【図1】(a)(イ)から、当業者は、テーパー部3は、上下方向において円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5を挟む位置に設けられることを把握できる。
e 引用文献4の【0018】の記載並びに【図1】(a)(イ)及び同(ロ)から、当業者は、テーパー部3は、左右方向において円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5が形成された位置と重なるように設けられることを把握できる。
(ウ) 引用文献4技術事項の認定
前記(ア)で摘記した引用文献4に記載された事項及び前記(イ)に示した引用文献4に記載された事項から当業者が把握できる事項から、引用文献4には、次の技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献4技術事項>
「光コネクタ本体1と、該光コネクタ本体1に設けた多心光ファイバテープ心線31の端末部を挿入する心線挿入孔2、該挿入孔2の底面に設けられ、該挿入孔の幅を狭める上下2面のテーパー部3、該挿入孔2の底面に設けられ、テーパー部3に続く光ファイバを導入するための円錐状入口部4、光ファイバ導入孔5を有する多心光コネクタ14において、(【0016】、前記(イ)a)
円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5は、左右方向に複数設けられ、(前記(イ)b)
テーパー部3は、光ファイバ毎に区切られていない平坦状であり、(前記(イ)c)
テーパー部3は、上下方向において円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5を挟む位置に設けられ、(前記(イ)d)
テーパー部3は、左右方向において円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5が形成された位置と重なるように設けられること。(前記(イ)e)」
ウ 引用文献2~4の記載事項並びに周知技術及び技術常識の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に発行された、特開2009-157143号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0022】
図1は本発明の一実施例の多心光コネクタ用フェルール21の斜視図・・・(中略)・・・である。
これらの図に示すように、この光コネクタ用フェルール21は、フェルール後端側に鍔部21aを持つ概ね角形をなしている。また、多心光ファイバ挿入用と接着剤充填用とを兼ねてフェルール後端側にのみ開口する中空部22を備え、フェルール前端面に開口する横一列の複数の光ファイバ穴23を備えている。
・・・(中略)・・・
【0025】
・・・(中略)・・・また、中空部22はフェルール後端側に開口するのみであり上面に接着剤充填窓がなく上下対称形状なので、前述したような上下非対称形状であることに伴う成形精度低下の問題を解消することができ、多心光コネクタ用フェルールの成形精度を向上させることができる。
・・・(後略)・・・」
「【図1】
[図:0001431704000005.jpg]
」
(イ) 引用文献3に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に発行された、特開2001-324650号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信における光ファイバ相互の接続部や光半導体等の光モジュールの接続部で使用される多心コネクタ、特にMTコネクタ用のフェルールに関する。」
「【0014】
【発明の実施の形態】・・・(中略)・・・先ず、第1の実施形態に係るフェルール10は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や液晶ポリマー,ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂から成型され、図1及び図2に示すように、同一構造の他のフェルールに対して位置決めするためのガイドピンを挿通する2本のピン孔10aと、2本のピン孔10aの間に所定ピッチで配列形成された挿入孔Hとが設けられている。尚、挿入孔Hは、一端が突合せ端面10bに、他端が後端面に形成された接着剤溜め部10hの底部にそれぞれ開口し、光ファイバ挿通後に光ファイバをフェルール10に接着剤で固定するようになっている。又、挿入孔Hの中心軸線15a,15bとピン孔10aの中心軸線16a,16bとが同一平面を形成するように、挿入孔Hが配置されている・・・(中略)・・・。
【0015】ここで、本発明のフェルールは、以下に説明する他の各実施形態においても、前記合成樹脂を用いて成型される。各挿着孔Hは、孔中心が同一なファイバ孔10c、ガイド孔10d及び導入孔10eを有し、ファイバ孔10cとガイド孔10d及びガイド孔10dと導入孔10eとの間には、テーパ状に形成した案内部10f,10gが設けられている。・・・(中略)・・・
【0017】ファイバ孔10cは、挿通される光ファイバ心線5(図4参照)から被覆5bを除去した裸ファイバ5aの直径よりも僅かに大きな直径に形成され、突合せ端面10bに開口している。ガイド孔10dは、ファイバ孔10cよりも大きな直径を有し、フェルール1の後部から導入孔10eに挿通された光ファイバをファイバ孔10cへと案内する。導入孔10eは、ガイド孔10dよりも大きな直径を有し、光ファイバ心線をフェルール10内へ導入する。案内部10f,10gは、テーパ状に形成されており、導入孔10eに挿通された光ファイバを、これとつながる孔との境で引っ掛かることがないように円滑にガイド孔10dやファイバ孔10cへと案内する。」
「【図4】
[図:0001431704000006.jpg]
」
(ウ) 引用文献4に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に発行された、前記引用文献4(特開2000-111761号公報)には、次の記載がある。
「【0009】 請求項1に係る発明は、複数本の光ファイバをテープ状に配列した多心光ファイバテープ心線の端末部から光ファイバを口出しし、該端末部を光コネクタに装着する多心光コネクタにおいて、前記光ファイバテープ心線端末を挿入する心線挿入孔、該挿入孔の幅を狭めるテーパー部、テーパー部に続き、光ファイバを導入するための円錐状入口部、それに続く光ファイバ導入孔、該導入孔の孔径を光ファイバの径より若干大きい孔径に狭める円錐状入口部、この円錐状入口部に続く光ファイバの径より若干大きい孔径の光ファイバ挿入微細孔とを一端から他端に向けて有し、前記テーパー部の途中で多心光ファイバテープ心線の口出し端末位置を確定するように構成したことを特徴とする多心光コネクタである。
・・・(中略)・・・
【0013】 請求項5に係る発明は、請求項1、・・・(中略)・・・のいずれかに記載の光コネクタにおいて、接着剤注入用窓を有しないものとした多心光コネクタである。多心光コネクタの構造を請求項1・・・(中略)・・・に係る発明のものとすれば、多心光ファイバテープ心線の被覆を剥いで口出しした、複数本の光ファイバのいずれをも傷つけることなく、自動挿入することが可能となるため、光ファイバ挿入作業の監視用としての機能を有していた接着剤注入用窓は、別途の注入方法を採用することで、不要とすることができる。かかる窓無しの光コネクタの採用によって、光コネクタの構造を上下、左右とも対称とすることが出来るので、注入された接着剤の硬化収縮が生じても、窓有り光コネクタに生じていた凹形変形は防止され、組立後の接続損失を極小とする光コネクタを提供することが可能となる。
【0014】 請求項6に係る発明は、請求項5記載の光コネクタにおいて、光ファイバテープ心線挿入孔より接着剤を注入し、光ファイバ挿入微細孔出口より吸引して接着剤を少なくとも光ファイバ挿入微細孔に導入し、接着剤を導入した各光ファイバ挿入微細孔に、光ファイバを挿入した後、該接着剤を硬化させることを特徴とする多心光コネクタの組立方法についてである。本発明により、接着剤注入用の窓を有しない光コネクタにおいても接着剤の注入が可能となり、かつ、その注入作業の自動化が可能であるため、多心光ファイバテープ心線の挿入から接着剤の注入、その硬化までの一連の光コネクタ組立作業の自動化が可能となる。」
(エ) 周知技術1の認定
前記(ア)で摘記した引用文献2に記載された事項及び前記(ウ)で摘記した引用文献4に記載された事項に例示されるように、次の技術事項は、本願の優先日前に当業者にとって周知技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
<周知技術1>
「多心コネクタ用フェルールにおいて、多心光ファイバ挿入用と接着剤充填用とを兼ねてフェルール後端側にのみ開口する中空部を備え、上面に接着剤充填窓がなく上下対称形状とすることで、多心光コネクタ用フェルールの成形精度を向上し、変形を防止すること。」
(オ) 技術常識1の認定
前記(イ)で摘記した引用文献3に記載された事項に例示されるように、次の技術事項は、本願の優先日前に当業者にとって技術常識(以下「技術常識1」という。)であったと認められる。
<技術常識1>
「フェルールのガイド孔にテーパ状に形成した案内部を設けることにより光ファイバをガイド孔に円滑に案内できること。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点
a 構成Xは、「光コネクタ用フェルール」の発明であることを特定するものである。
b 引用発明の「フェルール60」は、本件補正発明の「フェルール」に相当する。
c 引用発明の「フェルール60」は、「光モジュール100が備える」ものであるところ、当該「光モジュール100」は、「回路基板50の電気信号を光に変換して、フェルール60を介して光ファイバ70に結合し、光ファイバ70からの光信号を電気信号に変換して回路基板50の素子に供給することによって、回路基板50と光ファイバ70との光-電気接続を着脱可能に行[う]」ものであるから、引用発明の「フェルール60」は、本件補正発明でいう「光コネクタ用」であるといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、「光コネクタ用フェルール」の発明である点で一致する。
(イ) 構成Aの観点
a 構成Aは、「光ファイバが挿入される複数のファイバ孔が形成されたフェルール本体部を備え[る]」ことである。
b 引用発明の「フェルール60」は、前記(ア)のとおり本件補正発明の「フェルール」に相当するとともに、それ自体が本件補正発明の「フェルール本体部」にも相当する。
c 引用発明の「X軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔」は、本件補正発明の「光ファイバが挿入される複数のファイバ孔」に相当する。また、引用発明における「フェルール60」は、「X軸方向に並びY軸方向に延びる複数のファイバ孔が設けられ」るものであるから、本件補正発明でいう「光ファイバが挿入される複数のファイバ孔が形成された」ものといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Aの点で一致する。
(ウ) 構成Bの観点
a 構成Bは、「前記複数のファイバ孔が延びる方向を前後方向とし、前記複数のファイバ孔が並べられた方向を左右方向とし、前記前後方向および前記左右方向の双方に直交する方向を上下方向とし、前記前後方向において前記フェルール本体部の接続端面が位置する側を前方とし、前記前方の反対側を後方とするとき」という方向と向きの定義である。
b 引用発明は、「X軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔が設けられる」ものであるから、引用発明の「Y軸」の方向は、本件補正発明の「前記複数のファイバ孔が延びる方向」である「前後方向」に相当する。
c 引用発明は、「X軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔が設けられる」ものであるから、引用発明の「X軸」の方向は、本件補正発明の「前記複数のファイバ孔が並べられた方向」である「左右方向」に相当する。
d 引用発明は、「光入出力面62の法線方向をY軸とし、載置面13の法線方向をZ軸とし、Y軸およびZ軸の双方と直交する方向をX軸と[する]」ものであるから、前記b及びcも踏まえると、引用発明の「Z軸」の方向は、本件補正発明の「前記前後方向および前記左右方向の双方に直交する方向」である「上下方向」に相当する。
e 引用発明の「光入出力面62」は、「光ファイバ70のコア部を通じて伝送される光信号を入出力する」ものであるから、本件補正発明の「前記フェルール本体部の接続端面」に相当する。また、引用発明の「Y軸」の方向において、「光入出力面62」が位置する側が、本件補正発明の「前方」に相当し、これとは反対側が、本件補正発明の「後方」に相当する
f そうすると、本件補正発明と引用発明は、構成Bの点で一致する。
(エ) 構成Cの観点
a 構成Cは、「前記フェルール本体部は、ガイドピンが挿入されるガイド孔と、前記フェルール本体部の後端面から前記前方に向けて窪む凹部と、を有し、前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口し、前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され[る]」ことである。
b 引用発明の「ガイドピン18」と「ガイド穴66」は、本件補正発明の「ガイドピン」と「ガイド孔」に、それぞれ相当する。そして、引用発明の「フェルール60」は、「光入出力面62に少なくとも2つのガイド穴66が設けられ[る]」ものであるから、本件補正発明でいう「ガイド孔」「を有[する]」ものである。また、引用発明の「ガイド穴66」は、「ガイドピン18と嵌合[する]」ものであるから、本件補正発明でいう「ガイドピンが挿入される」ものといえる。
c 引用発明は、「光ファイバ70はフェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面からフェルール60内に延伸[する]」ものの、フェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面から光入出力面62に向けて窪む凹部が設けられているかどうかは不明である。
d そうすると、構成Cの点について、本件補正発明と引用発明は次の点で一致し、次の点で相違する。
(a)構成Cの観点における一致点
「前記フェルール本体部は、ガイドピンが挿入されるガイド孔」「を有する」点。
(b)構成Cの観点における相違点
「フェルール本体部」について、本件補正発明は、「後端面から前記前方に向けて窪む凹部」「を有し、前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口し、前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され[る]」のに対して、引用発明は、「光ファイバ70はフェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面からフェルール60内に延伸[する]」ものの、当該凹部が設けられているかどうかは不明である点。
(オ) 構成Dの観点
a 構成Dは、「前記フェルール本体部の前記上下方向における厚みTfと前記ガイド孔の直径DとがD/Tf>0.4を満足[する]」ことである。
b 引用発明の「フェルール60のZ方向の厚み」は、本件補正発明の「前記フェルール本体部の前記上下方向における厚みTf」に相当する。
c 引用発明における「ガイド穴66」の直径は、本件補正発明の「前記ガイド孔の直径D」に相当する。一方、引用発明は、「ガイド孔66と嵌合する」「ガイドピン18の径」は、「約0.7mm」であり、「ガイド穴66」の直径が「ガイド穴66と嵌合[する]」「ガイドピン18の径」よりも大きくなることは当業者に自明である。
そして、引用発明においては、「フェルール60のZ軸方向の厚み」が「1.6mm以下」である一方、「ガイド穴66」の直径は約0.7mmよりも大きく、「ガイド穴66」の直径/「フェルール60のZ軸方向の厚み」は0.7/1.6=0.4375より大きくなるから、本件補正発明でいう「D/Tf>0.4」を満足するものと認められる。
d そうすると、本件補正発明と引用発明は、構成Dの点で一致する。
(カ) 構成Eの観点
a 構成Eは、「前記フェルール本体部の上面および下面の全ては、壁面で覆われ[る]」ことである。
b 引用発明の「フェルール60の+Z側の面」は、本件補正発明の「前記フェルール本体部の上面」に相当する。また、引用発明の「フェルール60」は、-Z側の面を有することは自明であるところ、当該-Z側の面は、本件補正発明の「前記フェルール本体部の」「下面」に相当する。
そして、引用発明の「フェルール60の+Z側の面」は、「開口を有さ[ない]」から、本件補正発明でいう「全ては、壁面で覆われ[る]」ものであるといえる。
一方、引用発明の「フェルール60」の-Z側の面は、その構造が不明であり、本件補正発明でいう「全ては、壁面で覆われ[る]」ものであるか不明である。
c そうすると、構成Eについて、本件補正発明と引用発明は次の点で一致し、次の点で相違する。
(a)構成Eの観点における一致点
「前記フェルール本体部の上面」「の全ては、壁面で覆われ[る]」点。
(b)構成Eの観点における相違点
「前記フェルール本体部の」「下面」について、本件補正発明は、「全ては、壁面で覆われ[る]」のに対して、引用発明は、「フェルール60」の-Z側の面は、その構造が不明であり、本件補正発明でいう「全ては、壁面で覆われ[る]」ものであるか不明である点。
(キ) 構成Fの観点
a 構成Fは、「前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置されるとともに、前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びており、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の各々は、複数の領域に分かれていない」ことである。
b ここで、構成Fにおける「前記底面」、「第1傾斜面」、「第2傾斜面」は、いずれも、本件補正発明の「前記フェルール本体部の後端面から前記前方に向けて窪む凹部」の構成であるところ、前記(エ)cで説示したとおり、引用発明の「フェルール60」は、フェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面から光入出力面62に向けて窪む凹部が設けられているかどうか不明である。
c そうすると、構成Fについて、本件補正発明と引用発明は次の点で相違する。
「前記フェルール本体部の後端面から前記前方に向けて窪む凹部」について、本件補正発明は、「前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置されるとともに、前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びており、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の各々は、複数の領域に分かれていない」のに対して、引用発明は、当該凹部が設けられているかどうか不明である点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「光ファイバが挿入される複数のファイバ孔が形成されたフェルール本体部を備え、
前記複数のファイバ孔が延びる方向を前後方向とし、前記複数のファイバ孔が並べられた方向を左右方向とし、前記前後方向および前記左右方向の双方に直交する方向を上下方向とし、前記前後方向において前記フェルール本体部の接続端面が位置する側を前方とし、前記前方の反対側を後方とするとき、
前記フェルール本体部は、
ガイドピンが挿入されるガイド孔と、
を有し、
前記フェルール本体部の前記上下方向における厚みTfと前記ガイド孔の直径DとがD/Tf>0.4を満足し、
前記フェルール本体部の上面の全ては、壁面で覆われる、光コネクタ用フェルール」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
「フェルール本体部」について、本件補正発明は、「後端面から前記前方に向けて窪む凹部」「を有し、前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口し、前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され、」「前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置されるとともに、前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びており、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の各々は、複数の領域に分かれていない」のに対して、引用発明は、「光ファイバ70はフェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面からフェルール60内に延伸[する]」ものの、当該凹部が設けられているかどうかは不明である点。
b 相違点2
「前記フェルール本体部の」「下面」について、本件補正発明は、「全ては、壁面で覆われ[る]」のに対して、引用発明の「フェルール60」の-Z側の面は、その構造が不明であり、本件補正発明でいう「全ては、壁面で覆われ[る]」ものであるか不明である点。
(4) 判断
ア 相違点1について
(ア)引用文献4技術事項の適用について
引用発明は、「光ファイバ70はフェルール60の光入出力面62とは反対側に位置する面からフェルール60内に延伸[する]」とともに、「フェルール60には、光入出力面62に設けられた複数の光ファイバ70のコア部に対応して、X軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔が設けられる」ものであるから、光入出力面62とは反対側に位置する面から、Y軸方向に延びる複数のファイバ孔に光ファイバ70を挿入するための何らかの構造を設ける必要があることは当業者に明らかである。したがって、当業者であれは当該構造を具体化する動機があるといえる。そうすると、引用発明の「フェルール60」に、前記(2)イ(ウ)で認定した引用文献4技術事項を適用し、「フェルール60」に、光ファイバ70の端末部を挿入する挿入孔、該挿入孔の底面に設けられ、該挿入孔の幅を狭める上下2面のテーパー部、該挿入孔の底面に設けられ、テーパー部に続くX軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔を設け、テーパー部は、光ファイバ毎に区切られていない平坦状であり、テーパー部は、Z軸方向において光ファイバ挿入孔を挟む位置に設けられ、テーパー部は、X軸方向において光ファイバ挿入孔が形成された位置と重なるように設けられる構成(以下、そのような構成を「引用文献4技術事項適用構成」という)とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(イ)引用文献4技術事項適用構成について
相違点1に係る本件補正発明の構成と、引用文献4技術事項適用構成とは、以下のように対応する。
a 引用文献4技術事項適用構成における、フェルール60に設けられる、光ファイバ70の端末部を挿入する挿入孔は、本件補正発明の前記フェルール本体部の「後端面から前記前方に向けて窪む凹部」に相当する。
b 引用文献4技術事項適用構成における、挿入孔の底面は、本件補正発明の「前記凹部の底面」に相当する。また、引用文献4技術事項適用構成における、テーパー部に続くX軸方向に並びY軸方向に延びる複数の光ファイバ挿入孔は、本件補正発明の「前記複数のファイバ孔」に相当する。また、引用文献4技術事項適用構成は、前記複数の光ファイバ挿入孔は、挿入孔の底面に設けられることから、本件補正発明でいう「前記凹部の底面には、前記複数のファイバ孔の後端部が開口[する]」ものであるといえる。
c 引用文献4技術事項適用構成における、上下2面のテーパー部は、挿入孔の幅を狭めるものであるから、本件補正発明の「前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面」と「前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面」に相当するといえる。
また、引用文献4技術事項適用構成における、上下2面のテーパー部は、挿入孔の底面に設けられるから、本件補正発明でいう「前記底面に」「形成され[る]」ものといえる。
そうすると、引用文献4技術事項適用構成は、本件補正発明でいう「前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第1傾斜面が形成され、」「前記底面には、前記前方に向かうに従って前記複数のファイバ孔に向かうように傾斜した第2傾斜面が形成され[る]」ものといえる。
d 引用文献4技術事項適用構成における、上下2面のテーパー部は、Z軸方向において光ファイバ挿入孔を挟む位置に設けられるから、本件補正発明でいう「前記複数のファイバ孔を前記上下方向において間に挟むように配置される」ものといえる。
また、引用文献4技術事項適用構成における、上下2面のテーパー部は、X軸方向において光ファイバ挿入孔が形成された位置と重なるように設けられるから、本件補正発明でいう「前記左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように、前記左右方向に延びて[いる]」ものといえる。
e 引用文献4技術事項適用構成における、上下2面のテーパー部は、光ファイバ毎に区切られていない平坦状であるから、本件補正発明でいう「複数の領域に分かれていない」ものといえる。
f そうすると、引用発明において、引用文献4技術事項を適用することにより、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
前記(2)ウ(エ)で周知技術1として認定したとおり、「多心光コネクタ用フェルールにおいて、多心光ファイバ挿入用と接着剤充填用とを兼ねてフェルール後端側にのみ開口する中空部を備え、上面に接着剤充填窓がなく上下対称形状とすることで、多心光コネクタ用フェルールの成形精度を向上し、変形を防止すること」は、周知技術である。
そして、フェルールの成型精度の向上や変形の防止は一般的な課題であることに鑑みれば、引用発明において、当該一般的な課題を解決するために周知技術1を採用することにより、フェルール60を接着剤充填窓がなく上下対称形状とすることにより、フェルール60の-Z側の面を接着剤充填窓がない壁面で覆われるものとして、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
ウ 総合評価
前記ア~イにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張1
a 主張
請求人は、複数のファイバ孔を上下方向において間に挟むように配置されるとともに、左右方向において前記複数のファイバ孔が形成された領域と重なるように左右方向に延びるとともに、第1傾斜面および前記第2傾斜面の各々は、複数の領域に分かれていないような、第1傾斜面、第2傾斜面は、引用文献1~4のいずれにも開示されていないと、主張している。
b 前記主張の検討
請求人が引用文献1~4のいずれに開示されていないとする構成は相違点1に係る本件補正発明の構成に含まれる構成であるところ、前記アで説示したとおり、引用発明に引用文献4技術事項を適用して引用文献4技術事項適用構成とすることにより、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、主張1は採用できない。
(イ) 請求人の主張2
a 主張
本件補正発明は、引用文献1~4のいずれにも開示されていない第1傾斜面、第2傾斜面を有することにより、光ファイバをファイバ孔に挿入する際、光ファイバがファイバ孔に対して上方または下方のどちらにずれていたとしても、傾斜面によって光ファイバをファイバ孔に向けて導くことができるという特有の効果を奏する。
b 前記主張の検討
引用文献4技術事項の上下2面のテーパー部3は、上下方向において円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5を挟む位置に設けられ、左右方向において円錐状入口部4及び光ファイバ導入孔5が形成された位置と重なるように設けられる。そして、前記(2)ウ(オ)で技術常識1として認定したとおり、「フェルールのガイド孔にテーパ状に形成した案内部を設けることにより光ファイバをガイド孔に円滑に案内できること」は技術常識であることを考慮すれば、引用文献4技術事項適用構成のテーパー部が、光ファイバ70の端末部を挿入する挿入孔において光ファイバ70を案内する機能を有することは、引用文献4技術事項適用構成が奏する効果として予測可能なものにすぎない。
したがって、主張2は採用できない。
(5) 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2012/108324号(主たる引用文献)
引用文献2.特開2009-157143号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2001-324650号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2000-111761号公報(周知技術を示す文献)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
各引用文献に記載された事項並びに引用発明、引用文献4技術事項、周知技術1及び技術常識1の認定は、前記第2の3(2)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から、「第1傾斜面」と「第2傾斜面」の各々について、「複数の領域に分かれていない」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008914