審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2016-800079

散乱光式煙感知器

審判番号
2016-800079
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2003-119394
登録番号
特許第4010455号(P4010455)
請求日
2016年06月29日
審決日
2019年10月04日
公報発行日
2020年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】能美防災 株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人きさ特許商標事務所
  • 【被請求人】ホーチキ 株式会社
  • 【被請求人代理人】鈴木 守
  • 【被請求人代理人】加藤 真司
  • 【被請求人代理人】井上 義隆
審判長/審判官
  • 審判長 森 竜介
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
分類
P1113.121-YAA(G01N) / P1113.537-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第3項、特許法第181条第2項、特許法第134条の2第1項第1号、特許法第134条の2第1項第2号、特許法第134条の2第1項第3号、特許法第123条第1号、特許法第156条第3項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4010455号「散乱光式煙感知器」の特許無効審判事件についてされた平成30年 3月19日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10055号、令和 1年 7月22日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第4010455号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許4010455号(以下「本件特許」という。)は、平成15年4月24日に出願されたものであって、本件無効審判の手続の経緯は以下のとおりである。平成19年 9月14日 特許権の設定登録 平成28年 6月29日 審判請求 平成28年 9月23日 訂正請求書、及び答弁書 平成28年12月14日 上申書(請求人) 平成28年12月28日 無効理由通知書、職権審理結果通知書 平成29年 1月24日 意見書(請求人) 平成29年 2月 3日 意見書(被請求人) 平成29年 4月 3日 審理事項通知書 平成29年 4月27日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成29年 4月28日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成29年 5月11日 第1回口頭審理 平成29年 5月25日 上申書(被請求人) 平成29年 6月 8日 上申書(請求人) 平成29年10月16日 審決の予告 平成29年12月18日 上申書(被請求人) 平成30年 3月 2日 審理終結通知書 平成30年 3月19日 審決 平成30年 4月27日 被請求人出訴(平成30年(行ケ)第10055号) 令和 元年 7月22日 審決取消の判決言渡 令和 元年 8月30日 審理再開通知書 令和 元年 9月17日 審理終結通知書 令和 元年 9月26日 上申書(請求人) 上記審決は、訂正を認め、請求項1ないし6、8に係る発明についての特許を無効とし、請求項7に係る発明についての請求は成り立たない旨の審決であり、上記判決は、「特許庁が無効2016-800079号事件について平成30年3月19日にした審決中、特許第4010455号の請求項1ないし6、8に係る発明についての特許を無効とする。」とした部分を取り消すとしたものである。 そして、上記判決は確定したことから、上記審理再開通知書において、上記請求項1ないし6、8に係る発明とともに一群の請求項を構成する請求項7についての審決も、特許法第181条第2項の規定により取り消すことを通知した。 第2 訂正請求について 1 訂正請求の内容 被請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許4010455号の特許請求の範囲(訂正請求書には訂正明細書として添付されているが、下記のとおり訂正事項は特許請求の範囲に対する事項のみであるから、以下、明細書の部分を「本件明細書」、訂正する特許請求の範囲を「訂正特許請求の範囲」という。)を、平成28年9月23日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり請求項1ないし8について訂正することであり、訂正事項は、以下の訂正事項1ないし4のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くしたことを特徴とする散乱光式煙感知器。」と記載されているのを、「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くし、前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別することを特徴とする散乱光式煙感知器。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、「特徴とする散乱光式煙感知知器」とあるのを、「特徴とする散乱光式煙感知器」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「特徴とする散乱光式煙感知知器」とあるのを、「特徴とする散乱光式煙感知器」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別し、煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行うことを特徴とする散乱光式煙感知器。」とあるのを、「前記煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行うことを特徴とする散乱光式煙感知器。」に訂正する。 2 訂正の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1の請求項1に係る訂正は、発明特定事項である「散乱光式煙感知器」に、「前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」という「散乱光式煙感知器」の「煙の種類を識別する」手段の限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものにあたる(特許法第134条の2第1項第1号)。 また、上記訂正は、本件特許請求の範囲の【請求項4】の「前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別し」との記載、本件明細書の段落【0006】、【0009】、【0014】、【0041】、【0057】などの記載に基づくものであるから、新たな技術的意義を追加することはなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものであり(同第134条の2第9項、第126条第5項)、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない(同第134条の2第9項,第126条第6項)。 (2)訂正事項2及び3について 訂正事項2及び3の請求項2及び3にかかる訂正は、「散乱光式煙感知知器」とあるを「散乱光式煙感知器」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものであることは明らかである。(特許法第134条の2第1項第2号) また、本件特許が「散乱光式煙感知器」であることから、上記訂正は、新たな技術的意義を追加することはなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものであり(同第134条の2第9項、第126条第5項)、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない(同第134条の2第9項,第126条第6項)。 (3)訂正事項4について 本件特許の請求項4に係る訂正は、請求項4が引用する請求項1に、訂正前の請求項4の発明特定事項の一部を加えたことに伴って、発明特定事項が重複することを避けるために訂正を行うものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。(特許法第134条の2第1項第3号) また、上記訂正は、発明特定事項が重複することを避けるための訂正であるから、新たな技術的意義を追加することはなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものであり(同第134条の2第9項、第126条第5項)、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない(同第134条の2第9項,第126条第6項)。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし8は、訂正前の請求項1の記載を訂正前の請求項2ないし8が直接または間接的に引用しているものであるから、一群の請求項である。 したがって、これらに対応する訂正後の請求項1ないし8も一群の請求項である。 よって、上記訂正事項1ないし4に係る本件訂正は、一群の請求項ごとに明細書及び特許請求の範囲の訂正を請求するものであって、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。 (5)訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第3項の規定に適合し、同条第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項により準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるので、訂正後の請求項〔1~8〕についての訂正を認める。 第3 本件訂正発明 上記のとおり、本件訂正は認められたので、本件無効審判の対象となっている本件請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1ないし8」という。)は、本件明細書の記載からみて、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認める。(以下、「A)」等の記号は、当審にて付した。) 【請求項1】 A)検煙空間に向け、第1波長を発する第1発光素子と、第1波長とは異なる第2波長を発する第2発光素子と、 B)第1発光素子と第2発光素子から発せられる光を直接受光しない位置に設けられた受光素子とを備えた散乱光式煙感知器に於いて、 C)前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成し、 D)第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くし、 E)前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別することを特徴とする F)散乱光式煙感知器。 【請求項2】 請求項1記載の散乱光式煙感知器に於いて、前記第1発光素子と受光素子で構成する光軸と、前記第2発光素子と受光素子で構成する光軸が、同一平面上に存在するよう、前記第1発光素子と第2発光素子及び受光素子を平面角配置としたことを特徴とする散乱光式煙感知器。 【請求項3】 請求項1記載の散乱光式煙感知器に於いて、前記第1発光素子と受光素子で構成する光軸と、前記第2発光素子と受光素子で構成する光軸が、同一平面上に存在しないよう、前記第1発光素子と第2発光素子及び受光素子を立体角配置としたことを特徴とする散乱光式煙感知器。 【請求項4】 請求項1記載の散乱光式煙感知器に於いて、煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行うことを特徴とする散乱光式煙感知器。 【請求項5】 請求項4記載の散乱光式煙感知器に於いて、前記判断基準は、煙の種類に応じて閾値を変更することを特徴とする散乱光式煙感知器。 【請求項6】 請求項4記載の散乱光式煙感知器に於いて、前記判断基準は、煙の種類に応じて火災を判断するカウント回数を設定することを特徴とする散乱光式煙感知器。 【請求項7】 請求項2乃至6記載の散乱光式煙感知器に於いて、通常の監視状態では、第1発光素子のみを駆動し、前記受光素子から所定の受光出力が得られた際、前記第2発光素子を駆動することを特徴とする散乱光式煙感知器。 【請求項8】 請求項1記載の散乱光式煙感知器に於いて、 前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角を20°~50°の範囲に定め、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を100°~150°の範囲に定め、 第1発光素子から発せられる第1波長の中心波長を800nm以上に定め、第2発光素子から発せられる第2波長の中心波長を500nm以下に定めたことを特徴とする散乱光式煙感知器。 第4 請求人の主張の概要 請求人は、「特許第4010455号発明の特許請求の範囲の請求項1から8に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、甲第1号証ないし甲第11号証を添付して審判請求書を提出し、平成28年12月14日に甲第1号証の全文訳である資料1を添付した上申書を提出し(なお、甲第1号証の翻訳文については、この上申書に添付された資料1を採用し、審判請求書等の甲第2号証についての記載は、資料1と読み替えて理解することとした(第1回口頭審理調書参照)。)、平成29年1月24日に甲第12号証及び甲第13号証を添付して意見書を提出し、同年4月28日に、口頭審理陳述要領書を提出し、同年6月8日に上申書を提出している。 なお、平成29年1月24日付け意見書において、新たに甲第12号証を提示し、本件訂正発明7は、甲第12号証から容易であるとの無効理由がある旨の主張をしたが、第1回口頭審理において、この主張は、本件特許を無効にする根拠となる主要事実を追加的に主張・立証するものであるから、請求の理由の要旨を変更するものであり、許可しないとする旨の補正拒否の決定を行った(第1回口頭審理調書参照)。 また、請求人が主張する無効理由1は、本件特許が特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないという理由以外に、同法第36条第4項第1号の要件も満たしていないという理由が認められるところ、第1回口頭審理において無効理由1は、本件特許が特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないという理由のみである点を確認した(第1回口頭審理調書参照)。第1回口頭審理において、請求人からの無効理由を整理した結果は以下のとおりである。 1 無効理由1について (1)請求項1~8について 「明細書の発明の詳細な説明中の第2頁第44行~第45行には、『火災による煙と火災以外の原因による調理の煙やバスルームの湯気等を識別する確度が必ずしも十分とはいえず、さらに高度な煙識別が望まれている』という発明が解決する課題が記載され、・・・ている。(審判請求書第12頁第21行~第13頁第3行) ・・・ しかしながら、特許請求の範囲の請求項1の記載のように、第1発光素子の第1散乱角より第2発光素子の第2散乱角を大きいというだけでは『煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差を持たせる』ことができない。 すなわち、第5頁第13行~第6頁第33行に示す第1散乱角θ1=30°、第2散乱角θ2=120°のような、前方散乱光になる第1散乱角と後方散乱光になる第2散乱角との組み合わせのみを開示して、顕著な差(十分な差)を持たせることができると記載されているものである。 これに対し、特許請求の範囲の請求項1の記載では、第1散乱角θ1と第2散乱角θ2と大小関係のみが規定され、第1散乱角と第2散乱角との角度の差までは規定されていない。(審判請求書第13第19行~末行) ・・・第1散乱角θ1より第2散乱角θ2がわずかに大きい角度関係のいずれも特許請求の範囲の請求項1に規定した第1散乱角及び第2散乱角の関係を満たす。(審判請求書第14頁第3~4行) ・・・『煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差』を持たせることができず、火災による煙についても黒煙火災と白煙火災といった燃焼物の種類を確実に識別することができない。(審判請求書第14頁10~12行) ・・・ よって、本件特許の願書に添付した明細書は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさず、本件特許は同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである。 また、請求項1を引用する請求項2から8についても、請求項1と同様、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさず、本件特許は同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである。」 (2)請求項8について 「明細書の発明の詳細な説明の第7頁第39行~第49行には『まず第1発光素子9の第1波長λ1としては800nm以上の中心波長であれば良い。第1発光素子9の第1散乱角θ1としてはθ1=20°~50°の範囲に定めれば良い。一方、第2発光素子10については第2波長λ2としては中心波長500nm以下とすれば良く、第2散乱角θ2はθ2=100°~150°の範囲に定めれば良い。より具体的には第1発光素子9の第1波長λ1及び散乱角θ1と、第2発光素子10の第2波長λ2と散乱角θ2は、図3の綿灯芯の煙、即ち燻焼煙(白色煙)について、それぞれの光による受光量の比率Rが燃焼物の種類を識別する閾値=6より大きく、一方、図4のケロシンの燃焼による燃焼煙(黒色煙)については、第1発光素子9と第2発光素子10から発した煙による散乱による受光信号量の比率Rが閾値=6より小さくなるように設定すれば良い。』と記載されている。 しかしながら、本件請求項8に記載の波長λ1が800nm以上、第2波長λ2が500nm以下の数値範囲において、どのような波長を組み合わせても、比率Rの閾値=6を用いて白色煙と黒色煙とを識別できるか不明である。(審判請求書第15頁第10~24行) ・・・ よって、本件請求項8の構成では、火災時の煙についても黒煙火災と白煙火災を識別して燃焼物の種類を確実に識別することができる、という課題を解決する作用・効果を奏するか不明確である。(審判請求書第16頁第10~12行) ・・・第1散乱角θ1=30°及び第2散乱角θ2=120°の組み合わせについての比率Rのみが記載されており、他の確度の組み合わせの比率Rは記載がなく、当該数値範囲の臨界的意義も不明である。(審判請求書第16頁第15~17行) ・・・発明の詳細な説明には課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載されていないので、本件特許の願書に添付した明細書は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるため、本件特許は同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである。(審判請求書第16頁第24行~末行)」 2 無効理由2について (1)請求項1について (無効理由2-請求項1-1) 本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項1に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第25頁第23行~第28頁末行) (無効理由2-請求項1-2) 本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第5号証~甲第8号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項1に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第29頁第1行~第29頁末行) (2)請求項2について (無効理由2-請求項2-1) 本件特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲第5号証~甲第8号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項2に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第30頁第2~11行) (無効理由2-請求項2-2) 甲第7号証には、本件特許請求の範囲の請求項2の「前記第1発光素子と受光素子で構成する光軸と、前記第2発光素子と受光素子で構成する光軸が、同一平面上に存在するよう、前記第1発光素子と第2発光素子及び受光素子を平面角配置としたことを特徴とする散乱光式煙感知知器」と同一の構成が記載されている。 本件特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲第5号証~甲第8号証記載の技術事項を適用することに加え、甲第7号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項2に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第30頁第12行~20行) (3)請求項3について (無効理由2-請求項3) 甲第8号証及び甲第9号証のいずれにも、本件特許請求の範囲の請求項3の「前記第1発光素子と受光素子で構成する光軸と、前記第2発光素子と受光素子で構成する光軸が、同一平面上に存在しないよう、前記第1発光素子と第2発光素子及び受光素子を立体角配置としたことを特徴とする散乱光式煙感知知器」が記載されている。 よって、本件特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲第5号証~甲第8号証記載の技術事項に加えて、甲第8号証又は甲第9号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項3に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第30頁第21行~第31頁第3行) (4)請求項4について (無効理由2-請求項4) 甲第1号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第10号証のすべてに本件特許請求の範囲の請求項4の「前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別し、煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行うことを特徴とする散乱光式煙感知器」が記載されている。 よって、本件特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲第5号証~甲第8号証記載の技術事項に加えて、甲第1号証、甲第5号証、甲第6号証又は甲第10号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項4に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第31頁第4~14行) (5)請求項5について (無効理由2-請求項5) 甲第5号証及び甲第10号証の双方に本件特許請求の範囲の請求項5の「前記判断基準は、煙の種類に応じて閾値を変更することを特徴とする散乱光式煙感知器」が記載されている。 よって、本件特許請求の範囲の請求項5に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲第5号証~甲第8号証又は甲第10号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項5に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第31頁第15~23行) (6)請求項6について (無効理由2-請求項6) 甲第11号証には、本件特許請求の範囲の請求項6の「前記判断基準は、煙の種類に応じて火災を判断するカウント回数を設定することを特徴とする散乱光式煙感知器」が記載されている。 よって、本件特許請求の範囲の請求項6に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲第5号証~甲第8号証に加えて甲第11号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項6に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第31頁第24行~第32頁6行) (7)請求項7について (無効理由2-請求項7) 本件特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲5~甲第8号証に加えて、甲第9号証、甲第10号証もしくは甲第11号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項7に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第32頁第7~25行) (8)請求項8について (無効理由2-請求項8) 本件特許請求の範囲の請求項8に係る発明は、甲第1号証を主引例として、甲第1号証記載の発明に甲第3号証記載の技術事項もしくは甲5~甲第8号証及び甲第11号証記載の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件請求項8に係る特許は無効とすべきものである。(審判請求書第32頁末行~第33頁19行) そして、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:国際公開第01/059737号 甲第2号証:特表2003-523028号公報(甲第1号証の翻訳として提出されたものである。) 甲第3号証:湯原義公・鈴木哲也、「レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-700」、Readout HORIBA Technical Reports、株式会社堀場製作所、1992年1月26日、No.4、p30-36、(インターネットでの入手方法:http://www.horiba.com/uploads/media/R004-06-030_01.pdf) 甲第4号証:特開平8-178830号公報 甲第5号証:特開平6-109631号公報 甲第6号証:特開昭51-15487号公報 甲第7号証:特開2001-126165号公報 甲第8号証:特開平4-124798号公報 甲第9号証:特開2001-153801号公報 甲第10号証:特開平11-23458号公報 甲第11号証:特開昭59-47691号公報 甲第12号証:特開2001-331878号公報(上記で述べたとおり証拠として採用しない。) 甲第13号証:特願2000-154428号(特開2001-331878号公報)に対し発送された拒絶理由通知書(起案日:平成18年12月19日、発送日:平成18年12月26日) 第5 当審から通知した無効理由の概要 平成28年12月28日に当審から通知した無効理由は以下のとおりである。 本件訂正発明1~5及び8は、甲第1号証に記載された発明に、甲第3号証から導き出せる技術事項を適用することにより容易に想到できたものであり、本件訂正発明6は、甲第1号証及び甲第3号証に加え甲第11号証に記載された技術事項を適用することにより容易に想到できたものである。 そうすると、本件訂正発明1~6及び8は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1号第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 第6 被請求人の主張の概要 被請求人は、平成28年9月23日付け審判事件答弁書及び訂正請求書を乙第1号証とともに提出し、平成29年2月3日付け意見書とともに乙第2号証ないし乙第4号証を提出し、同年4月27日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、同年5月25日付け上申書を提出し、同年12月18日に上申書とともに乙第5号証ないし乙第8号証を提出し、請求人の主張する理由及び証拠、並びに、当審から通知した無効理由によっては本件特許を無効とすることはできないと主張している。 そして、被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 乙第1号証:大津元一「光科学への招待」 乙第2号証:特開2016-107427号公報 乙第3号証:特開2013-30380号公報 乙第4号証:国際公開2013/018503号 乙第5号証:光学総合サイトというホームページ 乙第6号証:H. C. van de Hulst 「LIGHT SCATTERING by small particles 」 乙第7号証:特開平09-007079号公報 乙第8号証:特開平01-093892号公報 第7 主な証拠の記載事項 1 甲第1号証について 請求人が提出した甲第1号証である国際公開第01/059737号には、次の事項が記載されている(下線は当審において付したものである。以下同様。)。 (甲1-ア)「THE CLAIMS DEFINING THE INVENTION ARE AS FOLLOWS: 1. A device for the detection of particles suspended in a fluid, the device including light source(s) adapted to provide at least a first illumination and a second illumination, a particle detection zone through which a stream of sample fluid is adapted to flow, logic means adapted to alternately illuminate the detection zone with either the first or second illumination, sensor means for reception of light scattered off particles within the detection zone and output means to provide an indication of a predetermined condition in the detection zone. 2. A particle detection device as claimed in claim 1 wherein the light source(s) includes at least 2 light sources, the components of the device are mechanically fixed in position, the first and second illuminations are independently radiated, the first and second illuminations are of different polarisation, the first and second illuminations are provided from different positions, and / or the first and second illuminations are of different wavelength such as one of short wavelength light and the other of long wavelength light. ・・・ 12. A smoke detector including the particle detector as claimed in claim 1 , 2 or 3.」 (当審訳「特許請求の範囲 【請求項1】流体中に浮遊する粒子を感知する装置であって、少なくとも第1の照明および第2の照明を与えるように構成された光源と、サンプル流体が流れるように構成された粒子感知区画と、前記第1または第2の照明によって、前記感知区画を交互に照射するように構成された諭理手段と、前記感知区画内の粒子で散乱した光を受光するセンサ手段と、前記感知区画の所定の状態の指標を提供する出力手段と、を備えた、粒子感知装置。 【請求項2】前記光源が、少なくとも2つの光源を含み、当該装置の構成要素が、適所に機械的に固定されており、前記第1および第2の照明が、独立して放射され、前記第1および第2の照明が、異なる偏光であり、前記第1および第2の照明が、異なる位置から与えられ、および/または、前記第1および第2の照明が、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長である、請求項1に記載の粒子感知装置。 ・・・ 【請求項12】 請求項1、2または3のいずれか一項に記載の粒子感知装置を備えた、煙感知器。) (甲1-イ)「In the preferred embodiment of the invention, two light emitting diodes (LED's) operating at different wavelengths are employed. This permits the use of wavelengths as distant as 430nm (blue) and 880nm (infrared) such that the wavelengths are separated by a full octave. Such a large difference in wavelength can produce a significantly different strength of signal when light of alternate wavelength is scattered off particles toward the sensor.」(12頁7~12行、当審訳「本発明の好適な実施形態においては、異なる波長で動作する2つの発光ダイオード(LED)が採用される。これにより、オクターブ全域にわたって分離するように、430nm(青色)および880nm(赤外)という離れた波長を使用可能である。このように波長が大きく異なることにより、両波長の光が交互に粒子で散乱してセンサに向かう場合、強度が大幅に異なる信号を生成可能である。」) (甲1-ウ)「In one preferred embodiment of the invention, each light source is pulsed in sequence for a short period such as 10mS. At the sensor, a signal is generated in response to each pulse of scattered light at each wavelength. The system is pre-calibrated to account for the sensitivity of the sensor at each wavelength, preferably by adjusting the intensity of the LED projections during manufacture. The signals are amplified using digital filtering to improve the signal-to noise ratio, and both the absolute and relative amplitudes of the pulse signals are stored. The absolute value indicates the particle concentration whereas the relative value indicates the particle size or the average size of a group of particles. From Rayleigh theory, at a given mass concentration of airborne particles, the long wavelength light will produce a low amplitude signal in the case of small particles, or a large amplitude signal in the case of large particles. The short wavelength light will produce a relatively equal amplitude signal in the case of both small and large particles. By comparing the ratio of the signals it is therefore possible to determine whether the particles are large or small.」(13頁29行~14頁11行、当審訳「本発明の好適な一実施形態においては、10ms等の短期間にわたって、各光源が順々にパルス化される。センサでは、各波長の散乱光の各パルスに応答して、信号が生成される。システムは、予備較正によって、好ましくは製造時にLED投射の強度を調整することにより、各波長でのセンサの感度を考慮している。信号は、デジタルフィルタリングを用いた増幅によって、信号対雑音比が改善されており、パルス信号の絶対振幅および相対振幅の両者が格納される。絶対値が粒子濃度を示す一方、相対値が粒子サイズまたは粒子群の平均サイズを示す。レイリーの理論から、浮遊粒子の所与の質量濃度において、長波長光は、小さな粒子の場合に小さな振幅信号を生成し、大きな粒子の場合に大きな振幅信号を生成することになる。短波長光は、大小の粒子いずれの場合にも、相対的に等しい振幅信号を生成することになる。したがって、信号の比を比較することにより、粒子が大きいか小さいかを判定することができる。」) (甲1-エ)「Figures 1b and 1c illustrate alternative positioning of the light source(s) 11 of Figure 1a. This has necessitated the re-positioning of the light trap 39, 40. In many other respects, the features of figures 1 b and 1 c are identical to the illustration of Figure 1 and the accompanying description. Figures 1b and 1c do not show all the detail of Figure 1a, only as a matter of clarity. It is to be noted that Figures 1b and 1c allow for backscatter detection or a combination of back and forward scatter i.e. different angles.」(16頁1~7行、当審訳「図1bおよび図1cは、図1aの光源11の別の位置決めを示している。これには、光トラップ39、40の再位置決めが必然的に伴う。その他多くの点で、図1b および図1cの特徴は、図1の図解および付随する説明と同じである。図1bおよび図1cは、単に明瞭化の便宜上、図1aの詳細をすべて示しているわけではない。なお、図1bおよび図1cは、後方散乱の感知または前後散乱すなわち異なる角度の組み合わせを可能とする。」) (甲1-オ)Fig 1c. (甲1-カ)Fig 1a. (甲1-キ)「In one embodiment of the invention, and referring to Figure 1 , the smoke detector housing 10 is produced by the molding of two substantially identical halves 10a, 10b (see Figure 4). Two LED lamps 11 are positioned to project light across the detection chamber 12 into a region that is viewed by the sensor 13. Smoke 14 is drawn across the chamber 12 in the direction of arrows 15 so that it can be irradiated by the projectors 1 1 in sequence. Some light 16 scattered off the airborne smoke particles is captured by a focussing lens 17 onto the receiving sensor 13.」(15頁5~12行、当審訳「本発明の一実施形態において、図1を参照すると、煙感知器ハウジング10は、2つの実質的に同一の片身10a、10bの成形により作成されている(図4参照)。感知チャンバ12を横切って、センサ13が視認する領域へと光を投射するように、2つのLEDランプが位置決めされている。煙14は、投光器11による照射を順々に受け得るように、チャンバ12を横切って矢印15の方向に取り込まれる。浮遊煙粒子で散乱したいくらかの光16が集光レンズ17によって、受光センサ13上に捕捉される。」) (甲1-ク)「There is provided according to the present invention a device for the detection of particles suspended in a fluid, the device including light source(s) adapted to provide at least a first illumination and a second illumination, a particle detection zone through which a stream of sample fluid is adapted to flow, logic means adapted to alternately illuminate the detection zone with either the first or second illumination, sensor means for reception of light scattered off particles within the detection zone and output means to provide an indication of a predetermined condition in the detection zone. The device may or may not be duct mounted. Preferably, in the particle detection device, the light source(s) includes at least 2 light sources, the components of the device are mechanically fixed in position, the first and second illuminations are independently radiated, the first and second illuminations are of different polarisation, the first and second illuminations are provided from different positions, and / or the first and second illuminations are of different wavelength, such as one of short wavelength light and the other of long wavelength light. Preferably, the light source(s) includes a pair of light sources, one of short wavelength light the other of long wavelength light. Alternatively, the light is projected through polarising filters each with a different relative polarisation, or different polarisation source of light, such as laser diodes set to different polarisation and / or wavelength. The improvement embodied in the current invention is the ability to retain sensitivity to a wide range of particle sizes and also to discriminate between different kinds of smoke or dust according to particle size, whilst also achieving relatively long service life, small size, light weight and low cost. The light source(s) may be adapted to project light at the same angle relative to the detection zone axis, or, alternatively, at a different angle. Typically the light source(s) is operated in a pulse mode such that only one wavelength is operated at one time. The system gain within the electronic circuitry is adjusted so that under calibration conditions, each light source can produce the same signal level at the receiving sensor. In addition the receiving sensor is selected for its suitable bandwidth of operation (sensitivity to all of the wavelengths employed).」(6頁16行~7頁17行、当審訳「本発明によれば、流体中に浮遊する粒子を感知する装置であって、少なくとも第1の照明および第2の照明を与えるように構成された光源と、サンプル流体が流れるように構成された粒子感知区画と、第1または第2の照明によって、感知区画を交互に照明するように構成された論理手段と、感知区画内の粒子で散乱した光を受光するセンサ手段と、感知区画の所定の状態の指標を提供する出力手段と、を備えた、粒子感知装置が提供される。 この装置は、ダクト設置であってもよいし、ダクト設置でなくてもよい。この粒子感知装置において、光源は、少なくとも2つの光源を含み、当該装置の構成要素は、適所に機械的に固定されており、第1および第2の照明は、独立して放射され、第1および第2の照明は、異なる偏光であり、第1および第2の照明は、異なる位置から与えられ、ならびに/または、第1および第2の照明は、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長であることが好ましい。光源は、一方が短波長光で他方が長波長光の一対の光源を含むのが好ましい。 あるいは、相対偏光が異なり、異なる偏光および/または波長に設定されたレーザダイオード等の異なる偏光光源を備えた偏光フィルタを通して光が投射される。 本発明において具現化された改良は、広範な粒子サイズに対して感度を確保できること、比較的耐用年数、小型化、軽量化、および低コスト化の実現しつつ、粒子サイズに従って、異なる種類の煙または塵埃を識別できることである。光源は、感知区画軸に対して同じ角度で照射されるように構成されてもよいし、異なる角度で光を照射するように構成されてもよい。通常、光源は、一度に動作する波長が1つだけとなるように、パルスモードで動作する。電子回路内のシステムゲインは、較正条件下において、各光源が受光センサで同じ信号レベルを生成できるように調整されている。また、各センサは、その適当な動作帯域幅(採用するすべての波長に対する感度)に関して選択されている。」) (甲1-ケ)「It is known from Rayleigh theory that the intensity of the scattered light reduces according to the fourth power of wavelength, for particles smaller than the wavelength of light. This has proven relevant to smoke detection in experiments using Xenon lamps which produce a complete spectrum embracing infrared, visible and ultraviolet wavelengths, where it was found that wavelengths in the blue region are necessary for the detection of certain kinds of fires liberating small particles.」(12頁16~21行、当審訳「レイリーの理論から、光の波長より小さな粒子の場合、散乱光の強度が波長の4乗に従って低下することが知られている。これは、赤外、可視、および紫外波長を含む完全スペクトルを生じるキセノンランプを用いた実験において、煙感知に関連して証明されており、小さな粒子が解き放たれる特定種類の火災の感知には、青色領域の波長が必要であることが分かっている。」) (甲1-コ)「Discrimination of airborne particle size could be achieved in a number of ways. The two or more light sources may differ in wavelength, polarisation, position (specifically the solid angle of incidence to the detection zone axis), or a combination of these.」(12頁3~6行、当審訳「浮遊粒子サイズの識別は、多くの方法で実現可能である。2つ以上の光源の違いは、波長、偏光、位置(具体的には、感知区画軸に対する立体入射角)、またはこれらの組み合わせであってもよい。」) (甲1-サ)Fig 2. 2 甲第1号証に記載の発明 (1)請求項12には、「請求項1、2または3のいずれか一項に記載の粒子感知装置を備えた、煙感知器。」(甲1-ア)と記載されている。 請求項12の発明を解釈する上で、請求項1には、「流体中に浮遊する粒子」と特定されているが、請求項12は「煙感知器」であるから、該「流体中に浮遊する粒子」は、「空気中に浮遊する煙粒子」となるべきであり、また、請求項1の「サンプル流体」は、「煙粒子を含み得る検出対象空気」となるべきである。 (2)(甲1-ク)には、前半部分に、請求項1の特定事項がそのまま記載され、その後に続いて、「光源は、感知区画軸に対して同じ角度で照射されるように構成されてもよいし、異なる角度で光を照射するように構成されてもよい。」と記載されている。 そうすると、請求項1の「第1の照明および第2の照明」を異なる角度で光を照射する態様も請求項1の発明の一態様として認識できる。 (3)ここで、「異なる角度で光を照射する」(甲1-ク)意味について精査する。 「図1bおよび図1cは、後方散乱の感知または前後散乱すなわち異なる角度の組み合わせを可能とする。」(甲1-エ)と記載されているように、第1の照明および第2の照明を異なる角度で照射するように構成した場合の具体的な実施の態様が図1c(甲1-オ)に示されている。 図1c(甲1-オ)には、受光センサについて明示的に符号を付けていないが、「光トラップ39」(甲1-エ)については、「39」と図中に符号が振られている。 そして、「図1bおよび図1cは、図1aの光源11の別の位置決めを示している。これには、光トラップ39、40の再位置決めが必然的に伴う。その他多くの点で、図1b および図1cの特徴は、図1の図解および付随する説明と同じである。」(甲1-エ)と記載されていることから、光源の位置決め以外は、図1cは図1a(甲1-カ)と同じであることが分かる。 そこで、図1a(甲1-カ)及び「煙14は、投光器11による照射を順々に受け得るように、チャンバ12を横切って矢印15の方向に取り込まれる。浮遊煙粒子で散乱したいくらかの光16が集光レンズ17によって、受光センサ13上に捕捉される。」(甲1-キ)との図の説明を参照すると、図1cに図示された「光トラップ39」(甲1-オ)の左上方に受光センサ13が存在していることが分かる。 そうすると、図1c(甲1-オ)においては、(甲1-エ)に記載されているように投光器11(請求項1の「第1の照明および第2の照明」に相当)の照射方向すなわち光軸が受光センサの光軸と交差する角度が前方散乱を検出する角度と後方散乱を検出する角度の2つの異なる角度で設けたものであることが分かる。 ここで、請求項1の第1の照明を前方散乱を検出するものとし、第2の照明を後方散乱を検出するものとすると、次のことが請求項1記載の発明の態様として認識できる。 (態様1)請求項1の「第1の照明および第2の照明が異なる位置から与えられ」(甲1-ア)ることの態様として、第1の照明の光軸と「散乱した光を受光するセンサ手段」(甲1-ア)の光軸と交差する角度を前方散乱を検出する角度とし、第2の照明の光軸と「散乱した光を受光するセンサ手段」(甲1-ア)の光軸と交差する角度を後方散乱を検出する角度とする態様が、甲第1号証から認識できる。 (4)そして、図1cにおいては、「光源11」(甲1-エ)の照射方向は、前記受光センサの受光方向に直接向いていないことが理解される。 よって、次のような態様も請求項1記載の発明の態様として理解できる。 (態様2)請求項1の「第1の照明および第2の照明」(甲1-ア)の照射方向が、「散乱した光を受光するセンサ手段」の受光方向に直接向いていない態様。 (5)(甲1-ク)には「本発明において具現化された改良は、・・・粒子サイズに従って、異なる種類の煙または塵埃を識別できることである。」と記載されているから、粒子サイズに従って、異なる種類の煙または塵埃を識別することを解決しようとする課題の一つとして含むことが理解される。 (6)(甲1-ウ)の「本発明の好適な一実施形態においては、10ms等の短期間にわたって、各光源が順々にパルス化される。センサでは、各波長の散乱光の各パルスに応答して、信号が生成される。」との記載から、第1の照明および第2の照明の光は、10ms等の短い幅にパルス化されており、センサでは、各波長の散乱光の各パルスに応答して、信号が生成されているといえる。 (7)以上のことを加味して、甲第1号証の特許請求の範囲(甲1-ア)の請求項12記載の発明について、請求項12が引用する請求項2の「および/または」とする選択肢について、出射位置と波長の選択肢を「および」として「a)」等の見出しを付けて整理すると、甲第1号証の請求項2を引用する請求項12に係る発明(以下「甲1発明」という。)は、以下のとおりのものであると認められる。 「a) 空気中に浮遊する煙粒子を感知する装置であって、 b) 少なくとも第1の照明および第2の照明を与えるように構成された光源と、 c) 煙粒子を含み得る検出対象空気が流れるように構成された煙粒子感知区画と、 d) 前記第1または第2の照明によって、前記煙粒子感知区画を交互に照射するように構成された諭理手段と、 e) 前記煙粒子感知区画内の煙粒子で散乱した光を受光するセンサ手段と、 f) 前記煙粒子感知区画の所定の状態の指標を提供する出力手段と、 g) 当該装置の構成要素が、適所に機械的に固定されており、 h) 前記第1および第2の照明が、独立して放射され、 i) 前記第1および第2の照明が、異なる位置から与えられ、 j) 前記第1および第2の照明が、異なる角度で照射し、 k) 前記第1の照明の光軸と散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度を前方散乱を検出する角度とし、第2の照明の光軸と散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度を後方散乱を検出する角度とするような態様とされ、 l) 前記第1および第2の照明が、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長であり、 m) 前記第1の照明および第2の照明の照射方向が、前記散乱した光を受光するセンサ手段の受光方向に直接向いていない態様とし、 o) 前記第1の照明および第2の照明の光は、10ms等の短い幅にパルス化されており、センサでは、各波長の散乱光の各パルスに応答して、信号が生成される、 p) 煙粒子感知装置 を備えた煙感知器。」 なお、ここで、a)~p)の順において、上記平成30年(行ケ)第10055号の判決(以下「判決」という。)の判事内容を踏まえ、平成30年3月19日付け審決の甲1発明において認定されていたn)の特定事項を削除したことを示すために、n)を省いて記載した。 また、a)~m)及びo)、p)の特定事項については、請求人及び被請求人とも争いはない。 3 甲第3号証について 請求人が提出した甲第3号証である湯原義公・鈴木哲也、「レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-700」、Readout HORIBA Technical Reports、株式会社堀場製作所、1992年1月26日、No.4、p30-36には、以下の点が記載されている。 (甲3-ア)「一般的に光散乱現象は,Maxwellの電磁方程式から厳密に解かれたMie散乱理論で説明されることが多い.しかし,その取扱いが複雑なため,入射波長λと粒子半径rとの関係が以下の場合, r<λ  :Rayleigh散乱理論 r≒λ   :Mie散乱理論 (当審注:ほぼ等しいことを表わす記号は「≒」で代用した。以下同様。) r>λ  :Fraunhofer回折理論 の各理論式を用いる。 粒子径が波長より大きい領域では,Fraunhofer回折はMie散乱の近似として取り扱える.」(31頁10~18行) (甲3-イ)「2.1 光散乱と粒子計測の関係1.2) ・・・ Mie散乱理論によれば,単一球状粒子に光(単色光)が入射した場合,散乱光強度は,球の周長と入射光波長との比で定義される粒径パラメータと,粒子と媒質の屈性率の比,つまり相対屈折率によって決定される(図1).散乱強度は散乱角によって変化し,その大きさによって以下のように区別される. 0°≦θ≦90°   前方散乱 θ=90°      側方散乱 90°≦θ≦180° 後方散乱 (θ:散乱角) 粒子径が波長より大きい場合(Fraunhofer領域)、散乱光はほとんど前方にだけ集中し、粒子径の大きさに依存して散乱光強度が大きく変化する.この粒子の光強度分布(散乱パターン)がわかれば,その粒子径を特定することができる。光強度分布は,図2に示す同心円上に検出区域を分割したシリコンフォトダイオード(リングデテクター)によって検出される. 2.2 高感度化2,3,4) 一方、粒子径が波長より小さい場合(Mie領域),散乱光は散乱角に依存して側方・後方散乱の割合が増加し,やがて全方向に広がるようになる.0.1μm以下の粒子では,前方散乱光の強度分布に明確な差がなくなるため,前方散乱の情報だけでは微小粒子径を判断することはできなくなる.したがって,散乱強度を近似式で表せず,厳密なMie散乱理論による検討が必要になる. 図3を見ると,1.8μmの粒子の散乱光強度は,散乱角の小さい範囲(前方散乱)で非常に大きく変化しているのがわかる.この場合は前方散乱光だけの検出で粒子径を判別できる. 一方,粒子径が0.4,0.2μmと小さくなると同じ散乱角範囲では光強度の変化が小さい.しかし,広い散乱角範囲(側方・後方散乱領域)では,わずかながら光強度が変化しているのがわかる.したがって,微小粒子径を測定するためには,側方・後方散乱光の強度分布の検出が不可欠となる.」(31頁9行~32頁1行) (甲3-ウ)「LA-700で採用した新しい光学系は,図4に示したように,前方散乱用リングデテクターの他に,側方と後方用の検出器を一つづつ追加した.さらに側方と後方の散乱光検出用の光源に関しては,タングステンランプを用い,He-Neレーザ光より短波長の光よりわずかな散乱光の強度分布を検出することとした.つまり,前方散乱光は,従来どおりHe-Neレーザ光を用いリングデテクタで検出し、側方,後方散乱光は,より短波長の光を用いホトダイオードで検出する.この光学系を開発することにより,一度に幅広い範囲の粒子径の測定を可能とした.」(第32頁第2-9行) (甲3-エ)図3(B)散乱光強度の角度分布の図面として、以下の図面が記載されている。 4 参考文献1について 参考文献1は、高橋幹二、基礎エアロゾル光学、日本、1982.11.01発行(145~150頁)であり、これは請求人あるいは被請求人が提出した証拠ではないものの、上記甲第3号証の「2.2 高感度化2,3,4)」の3)の文献であることから、ここで記載することとする。参考文献1には、以下の点が記載されている。 (参1a)「また,光散乱現象は,古くからハイドロゾル粒子の研究手段,とくに粒径測定の手段に応用2,3)されてきたが,その方法の多くはエアロゾル粒子の測定にも利用できる.したがって,ここではとくに触れない限り,エアロゾル粒子とハイドロゾル粒子との区別はしない. さて,粒子は半径aの球形粒子とし,媒質および粒子中の光の屈折率をそれぞれμ1,μ2,媒質および真空中の光の波長をそれぞれλ,λ0として,光散乱に関する基本的因子をつぎのように定義する. 」(145頁15~25行) (参1b)「Mie4)はMaxwellの電磁方程式を球形粒子に適用し,これを粒子表面における電場,磁場およびエネルギーに関する連続条件のもとに解いてつぎのような解をえた.すなわち, 1個の粒子に,単位強度の偏光されていない自然光の入射があったとき,粒子からの距離R(ただしR≫a).散乱角θにおける散乱光強度Iθは次式で表わされる.ただし,θは図7.1に示すように,入射光の進行方向から測った角度,i1,i2はそれぞれの振動方向が観測面に垂直または平行な,直線偏光成分を表わす. ・・・ ・・・ ○1 α<0.3:この領域は,いわゆるRayleigh散乱を含む領域であって, i1,i2は式(7.15)で表わされるような単調な角度分布を有する.すなわちi1は全散乱角でほとんど一定値,i2はθ=90°でほとんど0となる.また, i1,i2,Iθはいずれもθ=90°軸に対して対称に近い. ・・・ ○4 α>5:角度分布の不規則的振動性がますます著しくなるとともに,後方散乱が再び増大する.全散乱光量は粒径の2乗にほぼ比例するようになる.また,極大または極小の現われる数はαの値にほぼ等しい.」(147頁1行~149頁下から2行、なお、○1は、○の中に1がある記号を表す。○4も同じである。) 5 甲第4号証について 請求人が提出した甲第4号証である特開平4-178830号公報には、以下の点が記載されている。 (甲4-ア)「【0008】 【作用】照射光が被照射物に照射されて生じる散乱光は、その被照射物の大きさが大きい程、散乱光は前方側に集中し、所謂前方散乱が強くなる。逆に、被照射物の大きさが小さい程、前方散乱光が広がる(前方散乱光の散乱角が大きくなる)と共に、後方側にも広がり所謂後方散乱も強くなる。 【0009】本発明では、上記原理に基づいて、散乱光の互いに異なる複数の方向における光強度比(即ち、散乱光の強度分布の識別)から被照射物の大きさを検出するので、複雑な光検出手段が不要であり、装置を安価に提供できる。」 6 甲第5号証について 請求人が提出した甲第5号証である特開平6-109631号公報には、以下の点が記載されている。 (甲5-ア)「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明はこの様な目的を達成するために、二種類の波長の光を検煙空間に照射して、煙が侵入したときの夫々の波長の光の散乱光の光強度の比に基づいて煙の種類を判定すると共に、これによって判定した煙の種類に応じて設定されているしきい値とこれらの光強度を更に比較することによって火災の有無を判断することとした。 【0007】又、複数の波長の光を検煙空間に照射し、煙が侵入したときの散乱光から特定の二種類の波長の光を光学フィルタを介して検出し、夫々の波長の光の光強度の比に基づいて煙の種類を判定すると共に、これによって判定した煙の種類に応じて設定されているしきい値とこれらの受光強度を更に比較することによって火災の有無を判断することとした。 【0008】 【作用】この様な構成から成る本発明の火災報知装置によれば、波長の異なる散乱光の光強度の比と煙の種類との間に固有の相関関係があるので、煙の種類を判定することができる。又、判定した煙の種類に応じて、火災の有無を判定するためのしきい値を設定し、このしきい値と散乱光の光強度の大小関係を比較することによって火災の有無を最終判断するので、従来のように煙の種類に関係なく一律のしきい値で火災の有無を判断するよりも、判断精度が向上し、誤火報を防止することができる。」 (甲5-イ)「【0009】 【実施例】以下、散乱光式火災感知器に適用した場合の一実施例を図面と共に説明する。まず、図1に基づいて構造を述べると、12は指向性を有する光を検煙空間の中心部Xに向けて照射する発光素子であり、複数の波長成分を有する光を発するハロゲンランプ等が適用されている。 【0010】14はフォトダイオード等の第1の受光素子であり、その受光軸が、発光素子12の光軸方向に対して所定の散乱角θ1となるように設けられている。16は所定の波長λ1の光だけを透過させる第1の光学フィルタであり、第1の受光素子14の受光面の前方に設けられている。18はフォトダイオード等の第2の受光素子であり、その受光軸が、発光素子12の光軸方向に対して所定の散乱角θ2となるように設けられている。 【0011】20は所定の波長λ2の光だけを透過させる第2の光学フィルタであり、第2の受光素子18の受光面の前方に設けられている。尚、この実施例では、第1の受光素子14と第2の受光素子18の散乱角θ1とθ2は共に等しい30°に設定され、又、第1の光学フィルタ16の透過波長λ1を0.5μm、第2の光学フィルタ20の透過波長λ2を0.9μmに設定している。尚、散乱角θ1,θ2、透過波長λ1,λ2は適宜に定めうることは勿論のことである。」 (甲5-ウ)「【0017】図2から明らかなように、煙の種類毎に、散乱効率Iには散乱角θ及び透過波長λとの間に固有の相関関係があることが判る。そこで、本願発明者は、各煙の種類毎に、透過波長λ1における散乱効率I1と透過波長λ2における散乱効率I2との比β(=I1/I2)を求め、この比βの値から煙の種類を判定することとした。 【0018】図3の表は、図2の特性曲線に基づいて液体火災と燻燃火災の夫々について、散乱角θ=150°、透過波長λ1=0.5μmとλ2=0.9μmのときの散乱効率の比βを求めた実験例であり、液体火災の比β1は約3.8、燻燃火災の比β2は約2.1となり、これらの比β1,β2は各煙の固有の特性を表している。」 (甲5-エ)「【0023】このように、この実施例によれば、火災による煙の種類を判断し、更に煙の種類毎に特定のしきい値Tvに基づいて火災の有無を判断するので、精度の良い火災報知を可能にする。尚、この実施例では、演算部22、判断部24及び参照データ記憶部26を散乱光式煙感知器に内蔵する場合を示したが、発光素子12と第1,第2の受光素子14,18及び光学フィルタ16,20の光学系だけを散乱光式煙感知器に内蔵し、光電変換出力S1,S2に基づく演算及び判断を行うための演算部22、判断部24及び参照データ記憶部26を、所謂受信機や中継器に設けるようにしてもよい。」 (甲5-オ)図1として、以下の図面が記載されている。 7 甲第6号証について 請求人が提出した甲第6号証である特開昭51-15487号公報には、以下の点が記載されている。 (甲6-ア)「本発明は上記の欠点を除去し、煙の種類に対して選択性をもたせた、非火災報の少ない煙感知器を提供することを目的とする。 1個の煙粒子によって、ある角度に散乱される散乱光強度は、一般に光の波長、散乱角、粒子径、粒子の屈折率に依存する。 いま、散乱光受光角及び粒子の屈折率が一定の場合、散乱光強度の波長依存性が、粒子径によってどのように変わるかを示すと、例えば第1図に示すようになる。ここでdmは煙の平均粒径、Λは平均粒径の分散を示す。しかして第1図(ロ)に示すように粒子の屈折率n=1.96-j0.66で散乱角θ=150°のとき、煙粒子の大きさがdm=0.35(μ)とdm=1.85(μ)の場合の波長と散乱光出方との関係を第1図(イ)に示す。 そこで、例えば、λ=0.5(μ)及び2.0(μ)での散乱光強度I0.5、I2.0の比をとると、 dm=0.35(μ)、Λ=1.05のとき、I0.5/I2.0=1.5 dm=0.185(μ)、Λ=2.0のとき、I0.5/I2.0=1.2 となって、I0.5/I2.0比は、煙粒子によって、変化することがわかる。 従って本発明においては、煙の粒子の大小による選択性をもたせ、検出を可能ならしめようとするものである。」(1頁左欄14行~右欄下から2行) 8 甲第7号証について 請求人が提出した甲第7号証である特開2001-126165号公報には、以下の点が記載されている。 (甲7-ア)「【0002】 【従来の技術】図24~図27は、従来の光電式煙感知器であり、図24が横断面図、図25は縦断面図、図26は検煙部の配置構造図、図27は組立分解図である。 【0003】図24及び図25において、外カバー201内には端子盤203が収納され、端子盤203の内側にはシールドケース204が固着されている。検煙部本体205は端子盤203に嵌合され、検煙部本体205上にプリント基板208が取り付けられている。外カバー201の周囲には、煙流入口202が複数開口している。 【0004】検煙部本体205の下面には検煙部カバー211が脱着自在に取り付けられる。検煙部カバー211の周壁には煙流入口215が形成され、周壁の内側には複数のラビリンス部材213が形成されている。また、検煙部カバー211には防虫網214が一体的に設けられる。 【0005】検煙部本体215の下面の発光ホルダ217には赤外線LED等の発光素子221が収納され、受光ホルダ216にはフォトダイオードPD等の受光素子220が収納される。発光素子221と受光素子220は、図26のように、各光軸が検煙空間の中央において例えば70°の角度で交差するように配置している。尚、228はテスト用赤外線LED、232はスリット穴を備えた板部材である。」 9 甲第8号証について 請求人が提出した甲第8号証である特開平4-124798号公報には、以下の点が記載されている。 (甲8-ア)「2.特許請求の範囲 (1)光ビームを投光する1つの投光手段と、夫々の光軸が投光手段の光軸に対して夫々所定の角度をなすように配置された複数の受光手段とを備え、上記光ビームの煙粒子による散乱光を受光手段により受光するようにした光電式煙感知器において、複数の受光手段の出力レベルの比を計算し、この比が所定の範囲内であるとき煙粒子が存在すると判断する判別手段を設けて成ることを特徴とする光電式煙感知器。」(1頁左欄4~13行) (甲8-イ)「[実施例] 本発明光電式煙感知器はMie散乱理論によって知られている散乱光強度の角度分布を用いたものである。 ここで実施例の説明の前に原理説明を行う。 まず粒径パラメータαを粒子径りと波長λからα=πD/λ で定義される数値とする。 そして粒子の屈折率がm=1.33(水の場合)の粒径パラメータα(=0.3,5,2.10)と散乱光強度角度分布の関係を求めると、第4図(a)~(d)のようになる。 尚図中実線は投光光軸と受光光軸とによって決まる面に垂直方向の偏光成分のみの強度を示し、破線は平行方向の偏光成分のみの強度を示し、受光手段の前に偏光フィルター等ある偏光成分のみを抽出する機能を持つものを挿入しなければ偏光方向を考慮する必要が無くなって、実線と破線の平均が強度となる。 また屈折率mが1.33(水の場合)における粒径パラメータα(0~10)と、偏光方向を考慮しない場合の受光角度45度と135度における散乱光強度の比の関係を求めると、第5図(a)のようになり5粒径パラメータα(0~2.0)と、上記受光角度45度と135度における散乱光強度の比の関係を粒子の屈折率mが1.55,1.44,1.33の各場合について求めると第5図(b)のようになる。 第5図(a)の場合粒子の屈折率をm=1.33としたが、種々の屈折率について受光角度(20度と50度、20度と60度)を変えたときの強度比をα=0~4の範囲で計算したところ第6区(a)、(b)のようになる、尚偏光方向は考慮していない。 ここで照射光の波長を0.9μm、α=4の時粒径は1.14μmとなる。また近年光通信分野において用いられるようなった波長1.55μmの発光素子を用いればα=4の時粒径は1,97μmとなる。一方、煙粒子の粒径は0.1~1μmであるから、散乱光の強度比を用いることによって煙粒子の存否が判定できるわけである。」(2頁右上欄16行~右下欄16行) (甲8-ウ)「以下本発明を実施例により説明する。 第1図は本実施例の光学系の概略構成を示しており、投光手段は発光素子1と投光レンズ5とからなる。発光素子1としては、発光ダイオード、半導体レーザ、キセノンランプ等からの光を煙粒子Xが導入される空間領域に導く。ここに、発光素子1及び投光レンズ5の光軸を6tとして、光の進行方向を0度とする。2個の受光手段は、投光軸6tに対して所定の角度θ1、θ2、をなす光軸を6rl、6r2としたもので、夫々の光軸6rl、6r2上には集光レンズである受光レンズ7と受光素子21、22を配設している。受光素子21、22としては、ホトトランジスタ、ホトダイオード、又はホトダイオードと信号処理回路が一体となった半導体IC等が用いられる。」 (甲8-エ)第1図として、以下の図面が記載されている。 10 甲第9号証について 請求人が提出した甲第9号証である特開2001-153801号公報には、以下の点が記載されている。 (甲9-ア)「【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 @ 図1乃至図5は、本発明の請求項1乃至4及び10全てに係る第1の実施の形態の光電式粒子検知センサ1を示しており、該光電式粒子検知センサ1は、発光素子2、受光素子3、検知回路4、出射レンズ51、集光レンズ61が、回路基材8表面に実装されている。 【0016】この光電式粒子検知センサ1は、検知室92内に光を照射する発光素子2と、同発光素子2から出射手段5を介して出射された光のうち、集光手段6を介して該検知室92内に構成される所定検知領域91に流入した粒子にて散乱される散乱光を受光する受光素子3とを、その前側に検知領域91を設けるよう形成された樹脂成形体による回路基材8表面に実装させ、同回路基材8に出射手段5の出射レンズ51及び集光手段6の集光レンズ61を固着させてなり、これらが、粒子導入路を設けたラビリンス構造を有するハウジング9の内部に配置されて構成される。 【0017】なお、上記ハウジング9は、検知領域91を構成する検知室92を形成するための略円筒状の合成樹脂成形体で、下面側に、煙粒子をその内部へ導入するための導入孔93とラビリンス構造(図示せず)とを有している。また、このハウジング9には、上面側に検知回路4へ電気的に接続される接続端子(図示せず)が設けられる。 【0018】上記回路基材8は、その前側に、出射手段5に相当する出射レンズ51を介した発光素子2の発光光軸と、集光手段6に相当する集光レンズ61を介した受光素子3の受光光軸とは検知領域91に向けて一致するように、発光素子2をその一方の端部近傍に且つ受光素子3をその他方の端部近傍に実装するように、平面視略円状のMID基板にて形成されている。すなわち、発光素子2の実装部と受光素子3の実装部から回路基材8の中心方向へ伸びる各法線が、検知領域91の略中心で交差するようになっている。」 11 甲第10号証について 請求人が提出した甲第10号証である特開平11-23458号公報には、以下の点が記載されている。 (甲10-ア)【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、異なる2波長λ1,λ2の散乱光を受光手段において時間的に交互に受光する構成の煙感知器であって、受光手段からの波長λ1の散乱光出力yと波長λ2の散乱光出力gとに対して、煙検出に必要な所定の演算を行なう演算手段と、演算手段からの演算結果に基づき、煙検出処理を行なう煙検出処理手段とを有し、演算手段は、受光手段から時間的に交互に出力される波長λ1の散乱光出力y,波長λ2の散乱光出力gのいずれか一方の、他方のサンプリング時点における出力値を推定し、上記一方の散乱光の他方のサンプリング時点における出力推定値と他方の散乱光の出力値と比を2波長比として求めるようになっていることを特徴としている。」 (甲10-イ)「【0066】また、図1の煙感知器において、煙検出処理手段16は、演算手段15からの2波長比に基づいて煙の種類(質)を判断するのに、例えば、2波長比に対するしきい値を設定し、そのしきい値に対する比の大小関係から煙の種類(質),例えば、火災時に発生する種類の煙か(さらには、炎により発生する煙か、燻焼により発生する煙か)、非火災要因であるホコリや水蒸気等かを判定することができる。」 (甲10-ウ)「【0069】また、煙検出処理手段16は、演算手段15からの2波長比に基づいて、上記のように煙の種類(質)を判断したときに、煙の質毎に火災判断基準を可変設定することもできる。」 12 甲第11号証について 請求人が提出した甲第11号証である特開昭59-47691号公報には、以下の点が記載されている。 (甲11-ア)「カウンター回路54は予め設定した複数の入力信号をアンドゲート53から連続送出されたときにその出力端から一定の出力信号を煙感知信号として送出する回路構成が採られている。」(3頁右上欄17~20行) (甲11-イ)「該カウンター回路54は同期パルス信号の周期に従って例えば3回連続してカウントアップ動作したときその出力端に煙感知信号を発生するように予めカウントアップ数の設定がなされている。」(4頁右上欄16~20行) (甲11-ウ)「更に、発光素子、光電素子、増幅回路等は間欠的に電源入力が供給される構成が採られ、しかも両煙検出ユニットは交互に動作して同時動作は行なわないために電力消費か少く、かつ電源回路や発振回路は単一で両ユニットを作動せしめ得るからコスト高抑止効果は著しい。」(4頁右下欄17行~5頁左上欄2行) 第8 当審の判断 1 請求人が主張する無効理由1について (1)請求項1~8について 請求人は、本件特許は、「火災による煙と火災以外の原因による調理の煙やバスルームの湯気等を識別する確度が必ずしも十分とはいえず、さらに高度な煙識別が望まれている」という課題を解決するためのものであり、「さらに高度な煙識別」とは黒煙火災と白煙火災といった燃焼物の種類を確実に識別することであると主張しているものであると認められる。 本件明細書には課題に関し以下の記載がある。 「【0003】 このような火災以外の原因による非火災報を防止するため、2種類の波長の光を検煙空間に照射し、煙による散乱光について異なる波長の光強度の比を求めて煙の種類を判定する方法や、散乱面に対し垂直な偏光面をもつ光と水平な偏光面を持つ光を照射し、煙による散乱光の各偏光成分の光強度の比を求めて煙の種類を判定する方法が知られている。」 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、このような従来の異なる波長の光や偏光面の異なる光を用いて煙の種類を判別する方法にあっては、火災による煙と火災以外の原因による調理の煙やバスルームの湯気等を識別する確度が必ずしも十分とはいえず、さらに高度な煙識別が望まれている。 【0006】 本発明は、煙識別の確度を高めて非火災報防止を確実なものとする散乱光式煙感知器を提供することを目的とする。」 煙識別の確度が高くなれば非火災報防止がより確実なものとなることは明らかであるから、上記記載より、本件特許の課題は、「従来の異なる波長の光や偏光面の異なる光を用いて煙の種類を判別する方法」に比べ、「煙識別の確度を高」くすることであり、火災による煙について、ケロシンを燃焼させた時の黒煙火災と綿灯芯を燃焼させた時の白煙火災といった燃焼物の種類を確実に識別するという課題は、実施例において解決できた課題であって本件特許の課題であるとはいえない。 そうすると、本件訂正発明1は、本件特許の発明の詳細な説明の記載により、「従来の異なる波長の光や偏光面の異なる光を用いて煙の種類を判別する方法」に比べ、「煙識別の確度」が高いことが認識できるから、当業者が本件特許の課題を解決できることが認識できるといえる。 よって、訂正特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、本件請求項1~8に係る特許は同法第123条第1項第4号の規定に該当せず、無効とすることはできない。 (2)請求項8について 請求人は、本件訂正発明8は、波長λ1が900nm以上、第2波長λ2が500nm以下の数値範囲において、どの様な波長の組み合わせにおいて、比率Rの閾値=6を用いて白色煙と黒色煙とを識別できるか不明である旨主張している。 しかしながら、本件特許の課題は、上記(1)で検討したとおり、「従来の異なる波長の光や偏光面の異なる光を用いて煙の種類を判別する方法」に比べ、「煙識別の確度を高」くすることである。 そして、従来同じ散乱角で測定していたものに対し、散乱角を変えて測定した場合、どの様な波長の組み合わせにおいても、煙識別の確度を高くなることは明らかであるから、本件訂正発明8は、本件特許の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件特許の課題を解決できることが認識できるといえる。 よって、訂正特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、本件請求項8に係る特許は同法第123条第1項第4号の規定に該当せず、無効とすることはできない。 2 当審が通知した無効理由について (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)本件訂正発明1A)の特定事項について 甲1発明d)の「煙粒子感知区間」は、本件訂正発明1の「検煙空間」に相当する。 また、甲1発明d)の「第1の照明」及び「第2の照明」は、甲1発明k)によると「前記第1および第2の照明が、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長である」から、それぞれ異なる波長であることが理解できる。 そうすると、引用発明d)の「第1の照明」及び「第2の照明」は、それぞれ、本件訂正発明1の「第1波長を発する第1発光素子」及び「第1波長とは異なる第2波長を発する第2発光素子」に相当する。 そして、甲1発明の「前記煙粒子感知区画を交互に照射」する、「前記第1の照明及び第2の照明」であって、「l) 前記第1および第2の照明が、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長である」ものは、本件訂正発明1の「A) 検煙空間に向け、第1波長を発する第1発光素子と、第1波長とは異なる第2波長を発する第2発光素子」に相当する。 (イ)本件訂正発明1B)の特定事項について 甲1発明m)の「前記散乱した光を受光するセンサ手段」は、本件訂正発明1の「受光素子」に相当する。 そうすると、甲1発明m)の「前記第1の照明および第2の照明の照射方向が」、「受光方向に直接向いていない」「前記散乱した光を受光するセンサ手段」は、本件訂正発明1の「B)第1発光素子と第2発光素子から発せられる光を直接受光しない位置に設けられた受光素子」に相当する。 (ウ)本件訂正発明1C)の特定事項について 甲1発明k)における「第1の照明の光軸と前記散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度」は、本件訂正発明1C)の「前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角」に相当する。 また、甲1発明k)における「第2の照明の光軸と前記散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度」は、本件訂正発明1C)の「前記第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角」に相当する。 甲1発明k)における「第1の照明の光軸と前記散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度」は、「前方散乱を検出する角度」であるから、「後方散乱を検出する角度」である「第2の照明の光軸と前記散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度」が大きいことは自明なことであるから、甲1発明の「前記第1の照明の光軸と散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度を前方散乱を検出する角度とし、第2の照明の光軸と散乱した光を受光するセンサ手段の光軸と交差する角度を後方散乱を検出する角度とする」ことは、本件訂正発明1の「C)前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成」することに相当する。 (エ)本件訂正発明1D)の特定事項について 甲1発明においては、「l) 前記第1および第2の照明が、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長であ」ると規定されているように、第1の照明と第2の照明のどちらが短い波長であるかは規定されていない。 そうすると、甲1発明の「l) 前記第1および第2の照明が、一方が短波長光で他方が長波長光等、異なる波長であ」ることと、本件訂正発明1の「D)第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短く」することとは、「D’)第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を異ならせる」ことで共通する。 (オ)本件訂正発明1E)について 本件訂正発明1の1E)の特定事項は、「前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」ことであるところ、上記甲第1号証の(甲1-ウ)には「(n1)信号は、デジタルフィルタリングを用いた増幅によって、信号対雑音比が改善されており、パルス信号の絶対振幅および相対振幅の両者が格納される。(n2)絶対値が粒子濃度を示す一方、相対値が粒子サイズまたは粒子群の平均サイズを示す。(n3)レイリーの理論から、浮遊粒子の所与の質量濃度において、長波長光は、小さな粒子の場合に小さな振幅信号を生成し、大きな粒子の場合に大きな振幅信号を生成することになる。(n4)短波長光は、大小の粒子いずれの場合にも、相対的に等しい振幅信号を生成することになる。(n5)したがって、信号の比を比較することにより、粒子が大きいか小さいかを判定することができる。」(文章の最初に付した(n1)~(n5)の符号は当審が付したものである。)との記載があり、当該記載からは、「信号の比」(記載(n5))における「信号」は、「長波長光」が生成する「振幅信号」(記載(n3))と、「短波長光」が生成する「振幅信号」(記載(n4))であり、「信号の比」とは、長波長光が生成する振幅信号と短波長光が生成する振幅信号の比であると理解することも文脈上は可能であるようにみえる。そこで、このような理解を前提に、上記(甲1-ウ)の記載を技術的に理解することができるかについて、判決の判事内容にならって検討する。 a 技術常識について (a)α<0.3とα>5の領域における散乱光強度の特徴 上記参考文献1の(参1a)及び(参1b)から、粒径パラメータα<0.3のレイリー散乱領域においては,散乱光強度は、(参1a)に記載された(7.18)の式によって算出される(レイリーの理論。なお、Iθは散乱角θにおける散乱光強度、aは半径、Rは粒子からの距離、λは波長、mは屈折率)。 (再掲) そうすると、粒径パラメータα<0.3(α=2πr/λ(rは粒径,λは波長)であるレイリー散乱領域においては、1つの粒子により散乱された光の強度は粒径の6乗に比例するということができる。そして、散乱光強度は、1つの粒子により散乱された光の強度に粒子の個数を乗じたものとなるところ、粒子の個数は粒径の3乗に反比例するから、結局、質量濃度が一定の場合,散乱光強度は粒径の3乗に比例するということができる。また、散乱光強度は、波長の4乗に従って低下する。 他方、粒径パラメータα>5では、1個の粒子による散乱光強度は粒径の2乗に比例するところ、粒子の個数は粒径の3乗に反比例するから、結局、質量濃度が一定の場合、散乱光強度は、粒径に反比例することになる。 (b)散乱角による散乱光強度の変化 散乱角による散乱光強度の変化は、上記(甲3-エ)で摘記した図3(B)のとおりである。そして、粒子径が波長より大きい領域(フラウンホーファ領域)では、散乱光はほとんど前方にだけ集中し、粒子径の大きさに依存して散乱光強度が大きく変化するため、前方散乱光の光強度分布を検出することにより粒子径を特定することができる。これに対し、粒子径が波長より小さい場合(ミー領域)では、散乱光は散乱角に依存して側方・後方散乱の割合が増加し、やがて全方向に広がるようになる(レイリー散乱)。0.1μm以下の粒子では、前方散乱光の強度分布に明確な差がなくなるため、前方散乱の情報だけでは粒子径を判断することはできない。 (c)散乱光強度と粒径の関係 上記(甲3-エ)で摘記した図3(B)により、α=0.5、1.0、2.0、4.0における、質量濃度を一定とした場合の散乱光強度I(垂直成分と平行成分の散乱光強度の和)について、α=0.5の値を基準に散乱角θごとに比較すると、おおむね次の「散乱光強度と粒径の関係」の表(判決の別紙として添付されたものを引用した。判決によれば、1粒子当たりの散乱光強度は、散乱角θごとにi1とi2の和を求め、α=0.5の散乱光強度を「1」とし、α=1.0、α=2.0、α=4.0の散乱光強度をα=0.5の散乱光強度で除する。そして、質量濃度一定の条件での比較として、粒径が2倍になれば、単位体積あたりに含まれる粒子数は1/8になることから、上記で求めた数値について、波長が一定であることを前提に、散乱角θごとに、α=1.0の数値を1/8倍し、α=2.0の数値を1/64倍し、α=4.0の数値を1/512倍する。)のようになる。 これによれば、粒径と散乱光強度との関係は、波長と質量濃度が一定の場合、θ=30°では粒径が大きくなるにしたがって散乱光強度が大きくなり、その際の粒径の変動による散乱光強度の差も大きい。また、θ=45°及び60°ではα=2.0のときが最大であり、θ=120°及び150°ではα=1.0のときが最大であり、αの変動による差はθによってまちまちである。 b(甲1-ウ)の記載の技術的意義 (a)レイリー理論を前提とした場合 記載(n4)には「短波長光は,大小の粒子いずれの場合にも、相対的に等しい振幅信号を生成することになる」という記載があり、この記載は、記載(n5)の前提となっている。しかし、レイリーの理論からすれば、質量濃度を一定とした場合、長波長光が、小さな粒子の場合に小さな振幅信号を生成し、大きな粒子の場合に大きな振幅信号を生成するとすれば、短波長光は、長波長光よりさらに小さな粒子についても、粒子の大きさに比例した振幅信号を生成することとなり、大小の粒子いずれの場合にも相対的に等しい振幅信号を生成するとはいえない。そうすると、レイリーの理論から、記載(n4)のようにいうことはできず、記載(n4)を記載(n3)及び記載(n5)と整合的に説明することはできない。 (b)ミー散乱領域に関する理論を考慮した場合 そこで、ミー散乱領域も考慮するに、レイリー散乱領域よりαが大きい領域においては、上記aの(b)、(c)のとおり、散乱光強度は散乱角に依存して大きく変化し、αが変化した場合の散乱光強度の変化の仕方や程度は、散乱角θによってまちまちであることがわかる。そうすると、散乱光強度に対する粒径の影響は、散乱角θによって異なるといわざるを得ないことから、ミー散乱領域を考慮したとしても、「長波長光が、小さな粒子の場合に小さな振幅信号を生成し、大きな粒子の場合に大きな振幅信号を生成するのに対し、短波長光が、大小の粒子いずれの場合にも相対的に等しい振幅信号を生成する」ということはできない。 c 検討のまとめ 他に記載(n4)が成り立つことを裏付けるに足りるような根拠を見出すこともできないから、結局、記載(n4)を記載(n3)及び記載(n5)と整合的に説明することはできない。そうすると、当業者は、上記甲第1号証の(甲1-ウ)の記載から、甲1発明の特定事項において「長波長光からの振幅信号と短波長光からの振幅信号との比を比較することにより煙粒子の大きさを判定」するという技術的思想を認識することはできない。 よって、本件訂正発明1の1E)の特定事項に相当する技術的思想は、甲1発明において認識することはできない。 (カ)本件訂正発明1F)について 甲1発明の「煙粒子感知装置」は、上記(ア)~(エ)より、「散乱光式」の「煙粒子感知装置」といえ、甲1発明の「煙粒子感知装置を備えた煙感知器」は、本件訂正発明1の「散乱光式煙感知器」に相当する。 イ 一致点及び相違点 よって、本件訂正発明1と甲1発明とは、 「A)検煙空間に向け、第1波長を発する第1発光素子と、第1波長とは異なる第2波長を発する第2発光素子と、 B)第1発光素子と第2発光素子から発せられる光を直接受光しない位置に設けられた受光素子とを備えた散乱光式煙感知器に於いて、 C)前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成し、 D’)第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を異ならせる、 F)散乱光式煙感知器。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本件訂正発明1は、「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くし」ているのに対し、甲1発明の第1の照明と第2の照明とは、どちらの照明の波長が短いか特定されていない点。 (相違点2) 本件訂正発明1は、「第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」のに対し、甲1発明の第1の照明と第2の照明について、両者による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別するとは特定されていない点 ウ 判断 (ア)本件訂正発明1の特徴について 判決の判事内容によれば、本件訂正発明1の特徴は、本件明細書の以下の記載から理解される。 「【0006】 本発明は、煙識別の確度を高めて非火災報防止を確実なものとする散乱光式煙感知器を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 この目的を達成すため本発明は次のように構成する。 【0008】 本発明は、検煙空間に向け、第1波長を発する第1発光素子と、第1波長とは異なる第2波長を発する第2発光素子と、第1発光素子と第2発光素子から発せられる光を直接受光しない位置に設けられた受光素子とを備えた散乱光式煙感知器に於いて、第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角θ1に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角θ2を大きく構成し、第1発光素子から発せられる第1波長λ1に対し、第2発光素子から発せられる第2波長λ2を短くしたことを特徴とする。 【0009】 このように本発明は2つの発光素子につき、受光素子に対する散乱角を異ならせることで、煙の種類による散乱特性の相違を作り出し、同時に、2つの発光素子から発する光の波長を異ならせることで、波長に起因した散乱特性の相違を作り出し、この散乱角の相違と波長の相違の相乗効果によって煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差をもたせることで、煙の識別確度を高めて調理の湯気などによる非火災報を防止する。」 「【0014】 ここで、第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより、例えば両者の比を取って閾値と比較することで煙の種類を識別し、煙の種類に応じた判断基準により火災判断を行う。」 「【0097】 【発明の効果】以上説明してきたように本発明によれば、2つの発光素子につき受光素子に対する散乱角を異ならせることで煙の種類による散乱特性の相違を作り出し、同時に2つの発光素子から発する光の波長を異ならせることで波長に起因した散乱特性の相違を作り出し、この散乱角の相違と波長の相違の相乗効果によって煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差を持たせることで煙の識別確度を高め、調理の湯気やタバコの煙による非火災報を防止し、更に火災による煙についても黒煙火災と白煙火災といった燃焼物の種類を確実に識別することができる。」(下線は当審において付与した。) 上記記載を踏まえると、本件発明の散乱光式煙感知器の特徴は、第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成するとともに、第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くし、散乱角の相違と波長の相違の相乗効果によって、第1発光素子による煙の散乱光量と第2発光素子による煙の散乱光量に顕著な差を持たせることができ、両者を比較することにより、煙の識別確度を高めることができるというものであると理解される。 すなわち、本件訂正発明1の散乱光式煙感知器は、「C)前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成し、D)第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くし、E)前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別することを特徴とする」ことに特徴があるものであるから、特定事項のE)は、上記C)及びD)の特定事項を前提とするものであるといえる。 (イ)相違点の判断 a 上記訂正発明1の特徴を踏まえると、相違点を検討するにあたり、「第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成」すること、「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くする」こと、そして、「第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」ことを各々単独の技術的事項として検討できるものではない。 してみれば、甲1発明における相違点1及び2についての検討は、「第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成」し、かつ「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短く」することを前提に「第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」ということ、すなわち、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提に、2つの発光素子による散乱光量を比較して煙の種類を識別するという、一つの技術思想を開示するものがあるかどうかについて検討することとなる。 b 甲号証の技術内容の検討 上記aで述べた技術思想について検討するに、上記第7の「主な証拠の記載事項」で記載した甲第3号証~甲第11号証の記載を参照すると、甲4号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第8号証、甲第10号証において、散乱光量の比較をすることが記載されているので、以下、これらについて検討する。 (a)甲第4証について 上記摘記(甲4-ア)に「散乱光の互いに異なる複数の方向における光強度比(即ち、散乱光の強度分布の識別)から被照射物の大きさを検出する」との記載はあるもの、そもそも、2つの発光素子があるものでもなく、それらの散乱角及び波長について言及するものではない。 ましてや、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提にするものではない。 よって、上記aで述べた技術思想を示すものではない。 (b)甲第5号証について 上記摘記(甲5-ウ)に「煙の種類毎に、散乱効率Iには散乱角θ及び透過波長λとの間に固有の相関関係があることが判る。」との記載はあるものの、摘記(甲5-イ)の「第1の受光素子14と第2の受光素子18の散乱角θ1とθ2は共に等しい30°に設定」、(甲5-ウ)の「散乱角θ=150°、透過波長λ1=0.5μmとλ2=0.9μmのときの散乱効率の比βを求めた」との記載、そして、(甲5-オ)の図1の記載から、2つの発光素子からの異なる散乱角についての散乱効率の比をとったものではなく、(甲5-ア)に記載されているとおり、同じ散乱角のもと、二種類の波長の光を検煙空間に照射して、煙が侵入したときの夫々の波長の光の散乱光の光強度の比に基づいて煙の種類を判定するという技術である。 ましてや、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提にするものではない。 よって、上記aで述べた技術思想を示すものではない。 (c)甲第6号証について 上記摘記(甲6-ア)に、「λ=0.5(μ)及び2.0(μ)での散乱光強度I0.5、I2.0の比をとる・・・I0.5/I2.0比は、煙粒子によって、変化する」との記載はあるものの、「散乱光受光角及び粒子の屈折率が一定の場合」との前提があり、2つの発光素子からの異なる散乱角についての散乱効率の比をとったものではない。 ましてや、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提にするものではない。 よって、上記aで述べた技術思想を示すものではない。 (d)甲第8号証について 上記摘記(甲8-ア)には「1つの投光手段と、夫々の光軸が投光手段の光軸に対して夫々所定の角度をなすように配置された複数の受光手段とを備え、・・・、複数の受光手段の出力レベルの比を計算し、この比が所定の範囲内であるとき煙粒子が存在すると判断する」と記載されているものの、「1つの投光手段」と記載され、(甲8-ウ)の記載及び(甲8-エ)の図をみても、2つの発光素子からのそれぞれ波長を異ならせた光についての散乱光を受光したものではない。この点、(甲8-イ)には「ここで照射光の波長を0.9μm、α=4の時粒径は1.14μmとなる。また近年光通信分野において用いられるようなった波長1.55μmの発光素子を用いればα=4の時粒径は1,97μmとなる。」との記載があるものの、波長を0.9μmの発光素子と波長1.55μmの発光素子を、同時に用いることを示したものではない。 ましてや、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提にするものではない。 よって、上記aで述べた技術思想を示すものではない。 (e)甲第10号証について 上記摘記(甲10-ア)に「受光手段から時間的に交互に出力される波長λ1の散乱光出力y,波長λ2の散乱光出力gのいずれか一方の、他方のサンプリング時点における出力値を推定し、上記一方の散乱光の他方のサンプリング時点における出力推定値と他方の散乱光の出力値と比を2波長比として求める」と記載され、(甲10-イ)に「2波長比に基づいて煙の種類(質)を判断する」と記載されているものの、異なる散乱角のもと散乱光量とを比較するものではない。 ましてや、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提にするものではない。 よって、上記aで述べた技術思想を示すものではない。 (f)甲号証の技術内容の検討のまとめ 甲4号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第8号証及び甲第10号証以外の甲号証には、上記上記第7の「主な証拠の記載事項」で記載したとおり、上記aで述べた技術思想を示すものはない。 してみれば、甲第3号証~甲第11号証には、「第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成」し、かつ「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短く」することを前提に「第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」という一つの技術思想を開示するものはないということになる。 c 相違点の判断のまとめ そうすると、甲1発明において、甲第3号証~甲第11号証に記載されている事項を参照して、上記相違点1及び2を当業者が容易になし得たこととすることはできない。 (ウ)本件訂正発明1の効果について そして、本件訂正発明1の「第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成」し、かつ「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短く」することを前提に「第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」ということ、すなわち、2つの発光素子について、長い波長の光の散乱角に対し、短い波長の光の散乱角を大きくすることを前提に、2つの発光素子による散乱光量を比較することにより、上記(ア)で摘記した本件明細書の【発明の効果】に記載されている「煙の種類による散乱光の光強度に顕著な差を持たせることで煙の識別確度を高め、調理の湯気やタバコの煙による非火災報を防止し、更に火災による煙についても黒煙火災と白煙火災といった燃焼物の種類を確実に識別することができる。」という格別顕著な効果を奏するものである エ 小括 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明に、甲第3号証~甲第11号証に記載された事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたとすることはできないのであるから、当審が通知した無効理由によって、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとすることはできない。 (2)本件訂正発明2~5及び8について 本件訂正発明2~5及び8は、本件訂正発明1を引用しさらに限定したものであるあるから、当審が通知した無効理由によって、本件訂正発明2~5及び8も、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとすることはできない。 (3)当審が通知した無効理由のまとめ よって、本件訂正発明1~6及び8は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、当審が通知した無効理由によって、本件訂正発明1~6及び8に係る特許を無効とすることはできない。 3 請求人が主張する無効理由2について (1)無効理由2は、本件訂正発明1~8について、いずれも、甲第1号証を主引例として、甲1発明に、甲第3号証又は甲第5号証~甲第11号証に記載の一つ又は複数の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたとするものである。 一方、上記2(1)で説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1発明に、甲第3号証~甲第11号証に記載された事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたとすることはできないのであるから、本件訂正発明1及びそれを引用しさらに限定した本件訂正発明2~8について、甲1発明に、甲第3号証又は甲第5号証~甲第11号証に記載の一つ又は複数の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明することができたとするものことはできない。 (2)無効理由2についてのまとめ よって、本件訂正発明1~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、請求人が主張する無効理由2によって、本件訂正発明1~8に係る特許を無効とすることはできない。 第9 審理終結後の上申書について (1)審理終結の通知は、当事者に対し、近く審決がされることを知らせるものであって、この通知がされた以後に当事者が攻撃防御方法を提出しても、それを審理の対象にすることができない(東高判昭40.7.29(昭39(行ケ)17号)参照。特許庁「審判便覧(18版)」42-00参照。)ところであるが、請求人は、審理終結後の令和元年9月26日に上申書を提出し、以下の事項を述べたうえで、「審理終結通知がなされた後であっても、特許法第156条第3項の規定により、審理の再開を申し立てる。」ことを主張しているので、以下検討する。 (事項1)上記第3で記載した本件訂正発明1の構成要件E)である「E)前記第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」ことについて、具体的に甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証の記載を示し、「このように、煙感知器において、2つ以上の出力を取得して、その比率に基づいて煙の種類を判別することは、本件特許の出願前から公知である。」と記載し、また、甲第10号証及び甲第12号証(甲第12号証については、上記第4で述べたとおり補正拒否の決定で証拠として採用できない)を挙げて、上記構成要件Eは技術常識であり、業界において公知の技術であることを主張し、本件訂正発明は上記第4で記載した無効理由2の無効理由を有することを述べている。 (事項2)上記第3で記載した本件訂正発明1の構成要件C)及びD)である「C)前記第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成し、D)第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短くし」との構成は、第1発光素子及び第2発光素子の配置関係が、一意に読み取ることができない極めて不明確な記載であることを述べている。 (事項3)上記第8の2(1)イで記載した(相違点1)について、新たな特開昭63-167242号公報を提示し、その第5図に本件訂正発明1の発光素子と同じ配置構造が記載されていることを述べている。 (2)検討 上記事項1について、上記第8の2(1)ウ(イ)「相違点の判断」において、b「甲号証の技術内容の検討」で甲第5号証、甲第6号証、甲第8号及び甲第10号証に対して個別に検討しており、その余の甲号証も含め(f)「甲号証の技術内容の検討のまとめ」として、当審の判断を述べており、請求人の主張するように「2つ以上の出力を取得して、その比率に基づいて煙の種類を判別すること」自体が公知であるとしても、上記当審の「第1発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第1散乱角に対し、第2発光素子と受光素子の光軸の交差で構成される第2散乱角を大きく構成」し、かつ「第1発光素子から発せられる第1波長に対し、第2発光素子から発せられる第2波長を短く」することを前提に「第1発光素子による煙の散乱光量と、第2発光素子による煙の散乱光量とを比較することにより煙の種類を識別する」という一つの技術思想を開示するものはないという判断を覆すものではない。 上記事項2については、構成要件C)及びD)は、特許権設定時の特許請求の範囲の請求項1に既に記載されていた事項であり、訂正の請求によって生じたものではないことから、請求の理由の要旨を変更するもので採用できない。 事項3についも、訂正の請求により必要となった証拠とも認められないことから、請求の理由の要旨を変更するもので採用できない(なお、特開昭63-167242号公報は、上記一つの技術思想を開示するものではない)。 (3)まとめ 上記検討のとおり、請求人の述べた事項には、審理を再開するほどの事項は認められないことから、請求人の審理の再開のを申し立てに応じて、審理を再開することはできない。 第10 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正に係る訂正は認められ、本件特許第4010455号の訂正後の請求項1ないし8に係る発明の特許は、請求人の主張する理由及び証拠方法、当審が通知した無効理由によっては、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2016-800079

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決93件(ホーチキ 株式会社、能美防災 株式会社)
  • 2019-700881異議申立 / 2020-01-30 / 維持トンネル内非常用設備
    同じ当事者: ホーチキ 株式会社、能美防災 株式会社
  • 2026-390109訂正審判 / 2026-09-16
    同じ当事者: ホーチキ 株式会社
  • 2025-009661拒絶査定不服審判 / 2026-05-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)防災システム
    同じ当事者: ホーチキ 株式会社
  • 2025-012654拒絶査定不服審判 / 2026-04-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)火災報知システム
    同じ当事者: 能美防災 株式会社
  • 2025-700771異議申立 / 2026-02-06 / 訂正認容火災報知システム
    同じ当事者: 能美防災 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,052件(121・G01N、537・G01N)
  • 2021-800062無効審判 / 2022-03-25 / 請求不成立ガスセンサ
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2018-800049無効審判 / 2019-10-23 / 請求不成立体液用センサーアッセンブリ
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2014-800031無効審判 / 2018-12-05 / 請求不成立ガスセンサ素子及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2017-800037無効審判 / 2018-06-05 / 請求不成立ガスセンサ
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2016-800075無効審判 / 2018-01-15 / 請求不成立水質自動監視装置及び低濃度毒性検知方法
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存