特許無効審判
2014-800031
ガスセンサ素子及びその製造方法
- 審判番号
- 2014-800031
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2008-322180
- 登録番号
- 特許第5104744号(P5104744)
- 請求日
- 2014年02月26日
- 審決日
- 2018年12月05日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本特殊陶業 株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人コスモス特許事務所
- 【被請求人】株式会社 デンソー
- 【被請求人代理人】碓氷 裕彦
- 【被請求人代理人】中村 広希
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 三木 隆
- 分類
- P1113.121-YAA(G01N) / P1113.537-YAA(G01N) / P1113.851-YAA(G01N) / P1113.853-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第3項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5104744号「ガスセンサ素子及びその製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成29年 9月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項1ないし3に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成29年(行ケ)第10190号、平成30年 9月20日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5104744号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
平成20年12月18日 出願(特願2008-322180号)
平成24年10月12日 特許登録(特許第5104744号)
平成26年 2月26日 本件無効審判請求(無効2014-800031号)
平成26年 5月16日 被請求人:第1回答弁書提出
同日 被請求人:第1回訂正請求書提出
平成26年 6月27日 請求人:第1回弁駁書提出
平成26年10月29日 請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成26年10月31日 被請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成26年11月14日 請求人:第1回上申書提出
同日 口頭審理
平成26年12月 3日 審決予告
平成27年 2月 3日 被請求人:第2回訂正請求書提出
平成27年 2月10日 請求人:第2回上申書提出
平成27年 4月 3日 請求人:第2回弁駁書提出
平成27年 5月 8日 審理終結
平成27年 5月27日 審決(訂正を認める。請求は成り立たない。) 平成27年 7月 1日 請求人出訴(平成27年(行ケ)第10126号)
平成28年 6月 9日 審決取消の判決言渡
平成28年 8月 4日 被請求人:第3回訂正請求書提出
平成28年10月 6日 請求人:第3回弁駁書提出
平成28年12月28日 補正許否の決定(第3回弁駁書による請求の理由の補正を認める旨の決定)
平成29年 2月 3日 被請求人:第2回答弁書提出
同日 被請求人:第4回訂正請求書提出
平成29年 3月21日 審決予告
平成29年 5月24日 被請求人:第5回訂正請求書提出
平成29年 7月 7日 請求人:第4回弁駁書提出
平成29年 9月11日 審理終結
平成29年 9月26日 審決(訂正を認める。請求項1に係る発明についての特許を無効とし、請求項2及び3に係る発明についての請求は成り立たない。)
平成29年11月 1日 請求人出訴(平成29年(行ケ)第10194号)
平成29年10月28日 被請求人出訴(平成29年(行ケ)第10190号)
平成30年 9月20日 審決取消の判決言渡
第2 平成29年5月24日付け訂正請求について
1 訂正の内容
平成29年5月24日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりであり、訂正前の請求項の引用関係からみて、次の訂正単位があると認められる。
(1)訂正単位1(請求項1および2)
(2)訂正単位2(請求項3)
なお、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項4を削除した訂正事項については、平成27年5月27日付け審決が同年6月4日に送達された時点で、すでに確定している。
(1)訂正単位1についての訂正事項
訂正単位1は、訂正事項a-1ないしa-3及び訂正事項bよりなる。
ア 請求項1についての訂正事項
(ア)訂正事項a-1
請求項1の「該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、」の後に、「該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、」を加えて訂正する。
(イ)訂正事項a-2
請求項1に「該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」とあるのを、「該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なって、
上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、」に訂正する。
(ウ)訂正事項a-3
請求項1の「ことを特徴とするガスセンサ素子。」の前に、「上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」を加えて訂正する。
イ 請求項2についての訂正事項
請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2も訂正された。
ウ 明細書についての訂正事項
(ア)訂正事項b
願書に添付した明細書の段落【0006】に「第1の発明は、固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において、上記固体電解質シートは、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり、上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり、上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり、該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項1)。」とあるのを、
「第1の発明は、固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において、上記固体電解質シートは、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり、上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり、上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり、該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、
上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なって、上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項1)。」と訂正する。
(2)訂正単位2についての訂正事項
訂正単位2は、訂正事項c-1ないしc-7及び訂正事項dよりなる。
ア 請求項3についての訂正事項
(ア)訂正事項c-1
請求項3の「酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり、上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを、上記充填用貫通穴内に配置し、」の後に、「上記ジルコニアシートの両表面に電極を配置し、」を加えて訂正する。
(イ)訂正事項c-2
請求項3に「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、」とあるのを、「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に開口用貫通穴が重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、」に訂正する。
(ウ)訂正事項c-3
請求項3の「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、」の後に、「該開口用貫通穴は、上記充填用貫通穴よりも小さく、上記ジルコニアシートにおける上記電極よりも大きな形状に形成し、」を加えて訂正する。
(エ)訂正事項c-4
請求項3の「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、」の後に、上記訂正事項c-3の訂正に、さらに「上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なって、上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニアシートが上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、」を加えて訂正する。
(オ)訂正事項c-5
請求項3の「シート体を形成し、」の前に、「上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面を露出させ、
上記配置により」を加えて訂正する。
(カ)訂正事項c-6
請求項3の「シート体を形成し、」の後ろに、「2枚の上記シート体を、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層して、上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成し、」を加えて訂正する。
(キ)訂正事項c-7
請求項3に「該シート体を焼成する」とあるのを、「該シート体及び上記スペーサを焼成する」に訂正する。
イ 明細書についての訂正事項
(ア)訂正事項d
願書に添付した明細書の段落【0009】に「第2の発明は、固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において、電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて、充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり、上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを、上記充填用貫通穴内に配置し、上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、シート体を形成し、該シート体を焼成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法にある(請求項3)。」とあるのを、
「第2の発明は、固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において、
電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて、充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し、
酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり、上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを、上記充填用貫通穴内に配置し、
上記ジルコニアシートの両表面に電極を配置し、
上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に開口用貫通穴が重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、
該開口用貫通穴は、上記充填用貫通穴よりも小さく、上記ジルコニアシートにおける上記電極よりも大きな形状に形成し、
上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なって、上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニアシートが上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面に露出させ、
上記配置によりシート体を形成し、
2枚の上記シート体を、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層して、上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成し、
該シート体及び上記スペーサを焼成することを特徴とするガスセンサの製造方法(請求項3)。」と訂正する。
2 当審の判断
(1)訂正単位1についての検討
ア 請求項1についての訂正事項
(ア)訂正事項a-1
a 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0025】には、「開口用貫通穴351は、ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく、ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある。」と記載されている。
したがって、訂正事項a-1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項a-1は、表面アルミナ層の「開口用貫通穴」、「ジルコニア充填部」、「電極」の構成に関し、三者間の大小関係を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項a-2
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0016】には、「該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねる。これにより、表面アルミナ層によって、ジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防止することができる。」と記載されている。
したがって、訂正事項a-2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項a-2は、表面アルミナ層の「開口用貫通穴」、「ジルコニア充填部」の構成を訂正事項a-1に加えてさらに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)訂正事項a-3
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の図4を以下に示す。
【図4】
上記図4の記載より、ジルコニア充填部4の両表面には電極5が設けられ、表面アルミナ層35と該電極5との間に隙間が存在し、該表面アルミナ層35と該電極5の隙間より、ジルコニア充填部4が露出する点が読み取れる。
したがって、訂正事項a-3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項a-3は、表面アルミナ層の「開口用貫通穴」と「電極」の配置関係に基づき、上記電極と上記開口用貫通穴との隙間からジルコニア充填部の表面を露出させる点を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項1に係る訂正事項a-1ないしa-3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(オ)請求項1についてのまとめ
以上のことから、請求項1に係る訂正事項a-1ないしa-3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
イ 請求項2についての訂正事項
請求項1に係る訂正事項a-1ないしa-3により、請求項1を引用する請求項2も同様に訂正された。
そして、請求項1に係る訂正事項a-1ないしa-3は、上記「ア 請求項1についての訂正事項」「(オ) 請求項1についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項a-1ないしa-3による訂正によって、請求項2に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項1を引用する請求項2に係る訂正事項a-1ないしa-3は、同様に、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 明細書についての訂正事項
明細書に係る訂正事項bは、訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、 特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項a-1ないしa-3と同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 訂正単位について
訂正単位1は、訂正前の請求項2が請求項1を直接引用していることから、訂正前において一群の請求項に該当し、特許法第134条の2第3項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項に規定する要件に適合するものである。
オ 訂正単位1のまとめ
以上のことから、訂正単位1は、訂正前において一群の請求項に該当し、特許法第134条の2第3項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項に規定する要件に適合するものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するので、訂正を認める。
(2)訂正単位2
ア 請求項3についての訂正事項
(ア)訂正事項c-1
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0026】には、「・・・ここで、一対の電極5は、ジルコニアシートを充填用貫通穴31内に配置する前にジルコニアシートの両表面に設けておくことができる。また、一対の電極5は、ジルコニアシートを充填用貫通穴31内に配置した後にジルコニアシートの両表面に設けることもできる。」と記載されている。
したがって、訂正事項c-1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-1は、ガスセンサ素子の製造方法において、ジルコニアシートと電極との関係を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項c-2
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0016】には、「・・・上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を積層し、該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴を設け、該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねる。」と記載されている。
したがって、訂正事項c-2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-2は、ガスセンサ素子の製造方法において、表面アルミナ層の「開口用貫通穴」と「ジルコニア充填部」との関係を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)訂正事項c-3
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0025】には、「開口用貫通穴351は、ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく、ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある。」と記載されている。
したがって、訂正事項c-3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-3は、ガスセンサ素子の製造方法において、「表面アルミナ層の開口用貫通穴」、「ジルコニアシート」及び「電極」の構成に関し、三者間の大小関係を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項c-4
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0016】には、「該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねる。これにより、表面アルミナ層によって、ジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防止することができる。」と記載されている。
したがって、訂正事項c-4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-4は、表面アルミナ層の「開口用貫通穴」、「ジルコニアシート」の大小関係の構成を、訂正事項c-3に加えてさらに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(オ)訂正事項c-5
a 新規事項の有無
上記「(1)訂正単位1についての検討」「ア 請求項1についての訂正事項」「(ウ)訂正事項a-3」において検討したように、本件特許明細書等の図4より、ジルコニア充填部4の両表面には電極5が設けられ、表面アルミナ層35と該電極5との間に隙間が存在し、該表面アルミナ層35と該電極5の隙間より、ジルコニア充填部4が露出する点が読み取れる。
したがって、訂正事項c-5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-5は、ガスセンサ素子の製造方法において、表面アルミナ層の「開口用貫通穴」と「電極」の配置関係に基づき、上記電極と上記開口用貫通穴との隙間からジルコニア充填部の表面を露出させる点を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(カ)訂正事項c-6
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0027】には、「次いで、2枚のシート体20を、アルミナ材料からなるスペーサ6を介して積層し、第1のシート体20(上記第1のアルミナシート3A)にヒータ72を積層すると共に、第2のシート体20(上記第2のアルミナシート3B)に拡散抵抗層71を積層して、積層体を形成する(図1参照)。スペーサ6は、シート材を用いて形成することができ、ペースト、スラリー等をアルミナシート3の表面に塗布して形成することもできる。・・・」と記載されており、また、段落【0017】には、「また、上記ガスセンサ素子は、上記ジルコニア充填部を配設した2枚の上記アルミナシートを、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層し、該スペーサによって、上記2枚のアルミナシートにおける上記ジルコニア充填部に対応する位置に、被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成することが好ましい(請求項2)。」と記載されている。
したがって、訂正事項c-6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-6は、ガスセンサ素子の製造方法において、「電気絶縁性を有するアルミナ材料から」なる「スペーサ」を備える点、及び、「2枚の上記シート体」を、「スペーサを介して積層して、」「上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成」する点を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(キ)訂正事項c-7
a 新規事項の有無
本件特許明細書等の段落【0027】には、「次いで、2枚のシート体20を、アルミナ材料からなるスペーサ6を介して積層し、第1のシート体20(上記第1のアルミナシート3A)にヒータ72を積層すると共に、第2のシート体20(上記第2のアルミナシート3B)に拡散抵抗層71を積層して、積層体を形成する(図1参照)。スペーサ6は、シート材を用いて形成することができ、ペースト、スラリー等をアルミナシート3の表面に塗布して形成することもできる。また、各構成部品間の積層は、アルミナ材料からなるペースト、スラリー等を塗布して行うことができる。その後、積層体を焼成してガスセンサ素子1を製造する。」と記載されている。
したがって、訂正事項c-7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
b 訂正の目的の適否
訂正事項c-7は、ガスセンサ素子の製造方法において、スペーサをシート体とともに焼成することを減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ク)請求項3についての特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項3に係る訂正事項c-1ないしc-7の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ケ)請求項3についてのまとめ
以上のことから、請求項3に係る訂正事項c-1ないしc-7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項d
訂正事項dは、訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、 特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項c-1ないしc-7と同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正単位について
本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項4を削除した訂正事項については、上記「1 訂正の内容」に記載したとおり、平成27年5月27日付け審決の送達により確定していることから、訂正前の請求項3は他の請求項を引用していないものであり、訂正単位2は、訂正前において一群の請求項に該当し、特許法第134条の2第3項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項に規定する要件に適合するものである。
エ 訂正単位2のまとめ
以上のことから、訂正単位2は、訂正前において一群の請求項に該当し、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第4項に規定する要件に適合するものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するので、訂正を認める。
3 本件訂正についてのまとめ
よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、同条第3項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正を認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は、上記のとおり認められたので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明3」という。)は、それぞれ、平成29年5月24日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、1A)ないし3L)の符号を付けると、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
1A) 固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において、
1B) 上記固体電解質シートは、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり、
1C) 上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり、
1D) 上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり、
1E) 該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、
1F) 該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、
1G) 該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なって、
1H) 上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
1I) 上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させることを特徴とする
1K) ガスセンサ素子。
【請求項2】
2A) 請求項1において、上記ガスセンサ素子は、上記ジルコニア充填部を配設した2枚の上記アルミナシートを、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層してなり、
2B) 該スペーサによって、上記2枚のアルミナシートにおける上記ジルコニア充填部に対応する位置に、被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成したことを特徴とする
ガスセンサ素子。
【請求項3】
3A) 固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において、
3B) 電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて、充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し、
3C) 酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり、上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを、上記充填用貫通穴内に配置し、
3D) 上記ジルコニアシートの両表面に電極を配置し、
3E) 上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に開口用貫通穴が重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、
3F) 該開口用貫通穴は、上記充填用貫通穴よりも小さく、上記ジルコニアシートにおける上記電極よりも大きな形状に形成し、
3G) 上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なって、上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニアシートが上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
3H) 上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面を露出させ、
3I) 上記配置によりシート体を形成し、
3J) 2枚の上記シート体を、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層して、上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成し、
3K) 該シート体及び上記スペーサを焼成することを特徴とする
3L) ガスセンサの製造方法。」
第4 無効理由に関する当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張
上記「第2 平成29年5月24日付け訂正請求について」「1 訂正の内容」に記載のとおり、特許請求の範囲の請求項4が削除されていることから、特許査定時の請求項4に対する無効理由の主張については、対象請求項が存在しない。
そうすると、請求人が本件訂正発明1ないし3に対して主張する無効理由(1、2、3、4-1ないし4-3、5-1ないし5-4、6-1ないし6-5)、及び、証拠方法は以下のとおりである。
(1)無効理由1(特許法第36条第6項第1号・第2号違反)
本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての記載がないため不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(特許法第36条第6項第1号違反)
本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は、開口用貫通穴の周縁部がジルコニア充填部の外縁部に重なる範囲又は程度についての規定がないため、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(特許法第36条第6項第1号・第2号違反)
本件特許の請求項2の記載は、「ジルコニア充填部に対応する位置」がどのような位置を示しているのかが不明確であり、ジルコニア充填部とチャンバーとの位置関係が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正発明2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4(特許法第29条第2項違反)
(無効理由4-1)
(無効理由4-1-1)本件訂正発明1は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(無効理由4-1-2)本件訂正発明1は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(無効理由4-1-3)本件訂正発明1は、甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
以上の理由で、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由4-2)
本件訂正発明2は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由4-3)
本件訂正発明3は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(5)無効理由5(特許法第36条第6項第2号違反)
無効理由5には、以下の無効理由5-1ないし5-4が含まれる。
(無効理由5-1)
第3回訂正請求書による訂正後の請求項1(以下「第3回訂正後の請求項1」等という。)及びこれを引用する請求項2の記載には、「上記ジルコニア充填部に設けた電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニア充填部の表面に露出させておくことができる」の記載が含まれるが、電極が開口用貫通穴「を介して」ジルコニア充填部の表面「に」露出するとの記載は、電極と開口用貫通穴がどのような関係になっていることを示しているのか不明であり、第3回訂正後の請求項1の範囲に含まれる各形態のガスセンサ素子において、ジルコニア充填部に設けた電極を、どのように、かつ、何に露出させておくのか、また、電極と開口用貫通穴とがどのような関係となっているのか明確でないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由5-2)
第3回訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2における「上記ジルコニア充填部に設けた電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニア充填部の表面に露出させておくことができる」の記載には、ガスセンサ素子の形態として、電極を露出させておく形態のほか、電極を露出させておかない形態をも選択できる表現となっており、電極の露出に関し、ガスセンサ素子の構成が一義に定まらないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由5-3)
第3回訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2における「上記ジルコニア充填部に設けた電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニア充填部の表面に露出させておくことができる」の記載中の「上記ジルコニア充填部に設けた電極」が、それ以前に記載された「一対の電極」及び「上記ジルコニア充填部における上記電極」とどのような関係であるのか不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由5-4)
第3回訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2における「該開口用貫通穴が、上記ジルコニア充填用貫通穴よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、」の記載中の「上記ジルコニア充填用貫通穴」は、その記載以前に「充填用貫通穴」の記載はあるが、「ジルコニア充填用貫通穴」の記載が無いことから、記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
以上の理由で、第3回訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである
(6)無効理由6(特許法第36条第6項第1号・第2号違反)
無効理由6には、以下の無効理由6-1ないし6-5が含まれる。
(無効理由6-1)
第3回訂正後の請求項3には、「上記ジルコニアシートの両表面における上記充填用貫通穴の外縁部に開口用貫通穴が重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、」の記載が含まれ、ここに言う「充填用貫通穴の外縁部」は、ジルコニアシートの一部ではなく、「アルミナシート」の一部と解さざるを得ないが、本件特許明細書等において、「ジルコニアシートの両表面における外縁部」の記載は存在するが、アルミナシートのうち充填用貫通穴の外縁部(周縁部)と、表面アルミナ層との関係について検討し、その作用効果を記載した部分は存在しないことから、第3回訂正後の請求項3に係る発明は、本件特許明細書等に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由6-2)
第3回訂正後の請求項3の記載には、「上記ジルコニアシートに設けた電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニアシートの表面に露出させておくことができ、」の記載が含まれるが、電極が開口用貫通穴「を介して」ジルコニアシートの表面「に」露出するとの記載は、電極と開口用貫通穴がどのような関係になっていることを示しているのか不明であり、第3回訂正後の請求項3の範囲に含まれるガスセンサの製造方法において、ジルコニアシートに設けた電極を、どのように、かつ、何に露出させておくのか、また、電極と開口用貫通穴とがどのような関係となっているのか明確でないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由6-3)
第3回訂正後の請求項3における「上記ジルコニアシートに設けた電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニアシートの表面に露出させておくことができ、」の記載には、ガスセンサ素子の構成として、電極を露出させておく形態のほか、電極を露出させておかない形態をも選択できる表現となっており、電極の露出に関し、シート体及びガスセンサ素子の構成が一義に定まらないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由6-4)
第3回訂正後の請求項3の「上記配置によりシート体を形成し、」の記載に関して、当該請求項には、この記載以前に「…上記充填用貫通穴内に配置し」、「…電極を配置し」、「…一対の表面アルミナ層を配置して」の記載があり、各々の記載において、「配置」が異なる内容を有して用いられている。このため、「上記配置」が、どの配置に対応しているのか、不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(無効理由6-5)
第3回訂正後の請求項3の「電気絶縁性を有するアルミナ材料からなり、上記ジルコニアシートの上記充填用貫通穴の外縁部に上記表面アルミナ層の開口用貫通穴が重なる部位に対応する位置にチャンバーを形成するスペーサをこのシート体に積層し、」の記載中の「上記ジルコニアシートの上記充填用貫通穴の外縁部」の記載に関して、ジルコニアシートは、アルミナシートが有する充填用貫通穴に配置されるものであるから、ジルコニアシートは充填用貫通穴を含んでいないはずであり、構成が不明確である。また、「上記ジルコニアシートの上記充填用貫通穴の外縁部に上記表面アルミナ層の開口用貫通穴が重なる部位に対応する位置にチャンバーを形成するスペーサをこのシート体に積層し、」の記載は、「表面アルミナ層の開口用貫通穴が重なる部位」及び「重なる部位に対応する位置」が、チャンバ-と関係しているのか、チャンバ-ではなくチャンバ-を形成するスペーサと関係しているのか不明であり、「重なる部位に対応する位置」とは、「重なる部位」とどのような関係を有する位置であるのか不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
以上の理由で、第3回訂正後の請求項3に係る発明の特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
なお、上記無効理由5及び6については、平成28年12月28日付け補正許否の決定により無効理由の補正が許可されたものである。
2 請求人が提出した証拠方法
(審判請求書で提示された証拠)
甲第1号証:特許第5104744号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特開2007-278941号公報
甲第3号証:特開2004-93207号公報
甲第4号証:特開2003-294698号公報
甲第5号証:特開2003-240750号公報
甲第6号証:特開2000-65782号公報
(第1回弁駁書で提示された証拠)
甲第7号証:特開2007-85946号公報
3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
第5 無効理由についての当審の判断
1 無効理由1について
(1)本件訂正後の請求項1には、ガスセンサ素子として必要な固体電解質シート及び一対の電極を有し、上記一対の電極は、ジルコニア充填部の両表面に設けられていることが特定されていることから、測定対象のガスと電極とが接触するための構造を把握することができ、本件訂正後の請求項1に係るガスセンサ素子がガスセンサ素子として機能することは明らかである。
したがって、本件訂正後の請求項1にジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての特定がされていないことをもって、本件訂正後の請求項1の記載が明確でないということはできない。
(2)本件特許明細書等の段落【0016】の「第1の発明において、上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を積層し、該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴を設け、該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねる。これにより、表面アルミナ層によって、ジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防止することができる。」という記載を参酌すれば、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果は、表面アルミナ層がジルコニア充填部の外縁部に重ねて配置されることによってもたらされることは明らかである。
そして、本件訂正後の請求項1では、「上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり、上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり、該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なって、上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止」することが特定されているから、課題を解決するための手段が反映されており、発明の作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。
(3)よって、本件訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないということはできないから、本件訂正発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできない。
2 無効理由2について
(1)本件訂正後の請求項1において、表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部がジルコニア充填部の外縁部に重なっていることの技術的意義は、上記「1」「(2)」で指摘したようにジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止することにあることに鑑みると、表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部とが重なる範囲及び程度は、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止することができるものであると解釈するのが相当である。
したがって、本件訂正後の請求項1の記載が、表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部とが重なる範囲及び程度を特定していないことをもって、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。
(2)よって、本件訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないということはできないから、本件訂正発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできない。
3 無効理由3について
(1)本件訂正後の請求項2には、「上記2枚のアルミナシートにおける上記ジルコニア充填部に対応する位置に、被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成した」と記載されている。
ガスセンサ素子において、固体電解質と被測定ガスを導入するためのチャンバーとが重なるように構成することが技術常識であり、本件特許明細書等の図1にジルコニア充填部4に重なるようにチャンバー61が設けられていることが示されていることに鑑みれば、本件訂正後の請求項2の上記記載が、固体電解質であるジルコニア充填部と被測定ガスを導入するためのチャンバーとが重なるように構成することを意味していると解釈するのが相当である。
したがって、本件訂正後の請求項2の記載が被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成する位置をジルコニア充填部に対応する位置として特定していることをもって、本件訂正後の請求項2の記載が明確でないとまでいうことはできない。
(2)上記「1」「(2)」で指摘したように、本件訂正後の請求項2が引用する請求項1では、ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏するための構成が特定されているから、発明の作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。
(3)よって、本件訂正後の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないということはできないから、本件訂正発明2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできない。
4 無効理由5及び6について
(1)無効理由5-1ないし5-3について
無効理由5-1ないし5-3は、第3回訂正により請求項1に付加された「上記ジルコニア充填部に設けた上記電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニア充填部の表面に露出させておくことができる」の記載に関するものであり、本件訂正により、当該記載は、本件訂正後の請求項1の1I)「上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」に訂正された。
したがって、本件訂正後の請求項1には、無効理由5-1ないし5-3の対象となる記載は存在しなくなり、無効理由5-1ないし5-3は解消した。
(2)無効理由5-4について
本件訂正により、第3回訂正後の請求項1における「上記ジルコニア充填用貫通穴」の記載は、「上記ジルコニア充填部」に訂正され、本件訂正後の請求項1には、「上記ジルコニア充填用貫通穴」の記載は存在しなくなった。
したがって、無効理由5-4は解消した。
(3)無効理由6-1について
本件訂正により、第3回訂正後の請求項3の「上記ジルコニアシートの両表面における上記充填用貫通穴の外縁部」の記載は、「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部」に訂正された。
したがって、本件訂正後の請求項3には、無効理由6-1の対象となる記載は存在しなくなり、無効理由6-1は解消した。
(4)無効理由6-2及び6-3について
無効理由6-2及び6-3は、第3回訂正により請求項3に付加された「上記ジルコニアシートに設けた電極は、上記開口用貫通穴を介して、上記ジルコニアシートの表面に露出させておくことができ、」の記載に関するものであり、本件訂正により、当該記載は、本件訂正後の請求項3の3H)「上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面を露出させ、」に訂正された。
したがって、本件訂正後の請求項3には、無効理由6-2及び6-3の対象となる記載は存在しなくなり、無効理由6-2及び6-3は解消した。
(5)無効理由6-4について
本件訂正後の請求項3に「3K) 該シート体及び上記スペーサを焼成することを特徴とする」「3L) ガスセンサの製造方法。」と記載されていることから、該シート体と上記スペーサという2つの部材でガスセンサが構成されていることが理解される。
また、本件訂正後の請求項3の3J)に「上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成し、」とあるから、スペーサはチャンバを形成するものであって、それ以外の機能を果たさないから、完成したガスセンサからチャンバを形成する「スペーサ」を除いたものが必然的に「3I) 上記配置によりシート体を形成し」て得た、「シート体」が具備する構成となる。
そうすると、3C)の「ジルコニアシート」及び「充填用貫通穴」、3D)の「電極」及び「ジルコニアシート」並びに3E)の「ジルコニアシート」、「開口用貫通穴」、「アルミナシート」、「表面アルミナ層」は、スペーサではなく「シート体」が具備するものであり、3C)、3D)及び3E)に記載の「配置」の全てを「3I) 上記配置」が指していることは明らかである。
これは、本件特許明細書等の図4に「20」という符号で図示された「シート体」をみても明らかように本件特許明細書等の記載と矛盾するものではない。
よって、無効理由6-4は解消した。
(6)無効理由6-5について
無効理由6-5は、第3回訂正により請求項3に付加された「電気絶縁性を有するアルミナ材料からなり、上記ジルコニアシートの上記充填用貫通穴の外縁部に上記表面アルミナ層の開口用貫通穴が重なる部位に対応する位置にチャンバーを形成するスペーサをこのシート体に積層し、」の記載に関するものである。
しかしながら、本件訂正により、上記記載は、3J)「2枚の上記シート体を、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層して、上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成し、」に訂正された。
したがって、本件訂正後の請求項3には、無効理由6-5の対象となる記載は存在しなくなり、無効理由6-5は解消した。
(7)無効理由5及び6についてのまとめ
以上のことから、本件訂正後の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、本件訂正発明1ないし3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできない。
5 無効理由4について
(1)甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証、及び、甲第7号証の記載事項
甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証、及び、甲第7号証には、それぞれ、以下の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には次の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された板型形状の絶縁性材料からなる絶縁部材と、少なくとも一部が貫通孔に配置された固体電解質体と、少なくとも自身の一部が固体電解質体を覆う電極部と、長手方向に延びて電極部に接続するリード部と、を有し、絶縁部材および固体電解質体の板面上に配置される一対の電極と、を備えるガスセンサ素子およびそのようなガスセンサ素子の製造方法に関する。」
(イ)「【0015】
さらに、貫通孔内に配置された固体電解質体は、貫通孔に対して全周が当接するように配置されていることは言うまでもないが、寸法公差等の隙間があっても良い。
また、電極のうち電極部は、少なくとも一部が固体電解質体を覆う構成であればよい。具体的には、電極部全体が固体電解質体の一部を覆い、固体電解質体と絶縁部材との境界部分にリード部が配置された構造や、電極部の一部が固体電解質体全体を覆い、固体電解質体と絶縁部材との境界部分に電極部が配置された構造や、電極部の一部が固体電解質体の一部を覆い、固体電解質体と絶縁部材との境界部分に電極部およびリード部が配置された構造であっても良い。」
(ウ)「【0037】
ここで、センサ素子4の概略構造を表す分解斜視図を、図2に示す。なお、図2では、先端側が図における左側となり、後端側が図における右側となるように、センサ素子4を図示している。図に示すように、センサ素子4は、センサ部600と、ヒータ500と、を備えて構成されている。
【0038】
センサ部600は、酸素濃度検出セル430および保護層407を備えて構成されている。
センサ部600の酸素濃度検出セル430は、絶縁性材料(アルミナなど)からなる絶縁部材405と、部分安定化ジルコニア焼結体からなる固体電解質体435と、白金(Pt)からなる第1電極404および第2電極406と、を備えて構成されている。
【0039】
絶縁部材405は、厚さ方向に貫通する貫通孔433を有する板型形状に形成されている。また、絶縁部材405は、後端側に厚さ方向に貫通する第1スルーホール461を備えている。
【0040】
固体電解質体435は、絶縁部材405における貫通孔433の内部に配置されている。この固体電解質体435は、ジルコニア(ZrO2)に安定化剤としてイットリア(Y2O2)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体で構成されている。
【0041】
第1電極404は、固体電解質体435の一部を覆う第1電極部451と、第1電極部451から絶縁部材405の長手方向の後端側に延びる第1リード部453と、を備えて形成されている。
【0042】
第2電極406は、固体電解質体435の一部を覆う第2電極部447と、第2電極部447から絶縁部材405の長手方向の後端側に延びる第2リード部449と、を備えて形成されている。
【0043】
これら一対の電極(第1電極404、第2電極406)のうち、第1電極404は絶縁部材405の表面(図2における上面)に配置され、第2電極406は絶縁部材405の裏面(図2における下面)に配置される。」
(エ)「【0045】
また、絶縁部材405の表面には、第2電極406を挟み込むようにして、保護層407が形成されている。この保護層407は、多孔質材料からなる電極保護部441と、絶縁性材料からなる補強部408と、を備えている。」
(オ)「【0047】
次に、ヒータ500は、アルミナを主体とする第1基体401と、アルミナを主体とする第2基体403と、第1基体401と第2基体403とに挟まれた白金(Pt)を主体とする発熱体402と、を備えて構成されている。」
(カ)「【0051】
次に、センサ素子4の製造方法について説明する。
まず、第1原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第1スラリーを用意する。第1原料粉末は、例えば、アルミナ粉末97質量%と、焼結調整剤としてのシリカ3質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びジブチルフタレート(DBP)からなる。
【0052】
ドクターブレード装置を使用したシート成形法により、この第1スラリーを厚さ0.4mmのシート状物に成形した後、140mmx140mmに切断し、未焼成絶縁部用シート117を得る。未焼成絶縁部用シート117は、加工焼成後に絶縁部材405となる未焼成シートである。なお、この未焼成絶縁部用シート117は、後述する切断工程で切断されることで、10個の積層体に分割される。
【0053】
また、同様に、上記の第1スラリーを用いて、焼成後に第1基体401、第2基体403、保護層407(図2参照)となる未焼成シートを得る。
一方、第2原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第2スラリーを用意する。第2原料粉末は、例えば、アルミナ粉末63質量%と、焼結調整剤としてのシリカ3質量%とカーボン粉末34質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPからなる。
【0054】
そして、この第2スラリーを用い、未焼成絶縁部用シート117と同様のシート成形法により、未焼成電極保護部用シートを得る。なお、この未焼成電極保護部用シートは、加工焼成後に電極保護部441となる未焼成シートである。
【0055】
また、第3原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第3スラリーを用意する。第3原料粉末は、例えば、ジルコニア粉末97質量%と、焼結調整剤としてシリカ(SiO2 )粉末及びアルミナ粉末合計3質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPからなる。
【0056】
この第3スラリーを用い、未焼成絶縁部用シート117と同様のシート成形法により、未焼成固体電解質体用シート113を得る。未焼成固体電解質体用シート113は、加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成シートである。」
(キ)「【0058】
次に、未焼成シートに対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成するための貫通孔形成工程を行う。
図3に、貫通孔成形型301に対して未焼成絶縁部用シート117が配置されたときの断面状態を表す説明図を示す。なお、図3における未焼成絶縁部用シート117は、貫通孔433が形成される前の状態を表している。
【0059】
図4は、パンチ型307を下降させたときの未焼成絶縁部用シート117の断面状態を表す説明図である。
図5は、貫通孔433が形成された未焼成絶縁部材405のうち一部分(具体的には、1つの貫通孔433の近傍部分)の先端部外観を示す説明図である。
【0060】
貫通孔形成工程では、図3及び図4に示す貫通孔成形型301を用いる。貫通孔成形型301は、貫通孔用下型303、貫通孔用上型305、パンチ型307を備える。
貫通孔用下型303には、上下方向に貫通する下型加工孔311が10個備えられている。また、貫通孔用上型305には、上下方向に貫通する上型加工孔313が10個備えられている。そして、10個の下型加工孔311と10個の上型加工孔313とは、貫通孔用下型303と貫通孔用上型305とを重ね合わせたときに連続するように配置されている。
【0061】
下型加工孔311および上型加工孔313は、貫通方向に対して垂直な断面における輪郭形状が、正方形の頂点部近傍領域を曲線形状に置き換えた形状に形成されている。つまり、下型加工孔311および上型加工孔313の断面輪郭形状は、頂点部を有しない形状(図5参照)である。
【0062】
パンチ型307は、断面輪郭形状が下型加工孔311および上型加工孔313の断面輪郭形状と同様に形成され、下型加工孔311および上型加工孔313の内部に挿通可能に形成されている。
【0063】
そして、未焼成シートに対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成するためには、まず、貫通孔用下型303と貫通孔用上型305とを離し、パンチ型307を貫通孔用上型305の内部に配置した状態で、図3に示すように、貫通孔用下型303の上に未焼成絶縁部用シート117を配置する。これにより、下型加工孔311は、未焼成絶縁部用シート117によって覆われる。
【0064】
次に、貫通孔用上型305を下降させ、貫通孔用上型305と貫通孔用下型303とで未焼成絶縁部用シート117を挟んで固定する。続いて、図4に示すように、パンチ型307を下降させ、未焼成絶縁部用シート117に10個の貫通孔433を貫設し、未焼成絶縁部材405を作成する。この後、貫通孔用上型305およびパンチ型307を上昇させる。
【0065】
貫通孔433は、図5に示すように、貫通方向に対して垂直な断面における輪郭形状が、下型加工孔311および上型加工孔313と同様、正方形の頂点部近傍領域を曲線形状に置き換えた形状(換言すれば、頂点部を有しない形状)をなしている。
【0066】
次に、打抜配置工程を行う。
図6は、貫通孔成形型301に対して未焼成絶縁部材405および未焼成固体電解質体用シート113が配置されたときの断面状態を表す説明図である。
【0067】
図7は、貫通孔433に未焼成固体電解質体435が挿入された未焼成絶縁部材405の断面状態を表す説明図である。
まず、図6に示すように、貫通孔用下型303と貫通孔用上型305とを離して、さらにパンチ型307を貫通孔用上型305における上型加工孔313の内部に配置した状態で、未焼成絶縁部材405の上に未焼成固体電解質体用シート113を配置する。
【0068】
そして、貫通孔用上型305を下降させ、貫通孔用上型305と貫通孔用下型303とで未焼成絶縁部材405および未焼成固体電解質体用シート113を挟んで固定する。
続いて、図7に示すように、パンチ型307を下降させ、未焼成固体電解質体用シート113から10個の未焼成固体電解質体435を繰り抜くとともに、未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入する。
【0069】
その後、パンチ型307を上昇させるとともに貫通孔用上型305を取り除いて、貫通孔433に未焼成固体電解質体435が挿入された未焼成絶縁部材405を取り出す。
本実施形態では、パンチ型307の下降移動時におけるパンチ型307の下端面の最下位置は、未焼成絶縁部材405と未焼成固体電解質体用シート113との当接面と上下方向で同位置とされている。なお、パンチ型307の下降移動時における下端面の最下位置は、未焼成固体電解質体用シート113の厚みの半分より下側に位置すれば、十分に未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入することができる。
【0070】
このように、未焼成絶縁部材405の上に未焼成固体電解質体用シート113を載置した状態で、未焼成固体電解質体用シート113を打ち抜きつつ、打ち抜かれた未焼成固体電解質体435を未焼成絶縁部材405の貫通孔433の内部に配置することで、貫通孔433と未焼成固体電解質体435との間に隙間が生じ難くすることができる。
【0071】
また、このようにして打抜配置工程を行うことで、未焼成固体電解質体用シート113を打ち抜いて未焼成固体電解質体435を作成する打抜工程と、その未焼成固体電解質体435を貫通孔433に配置する配置工程とを、連続的に行うことができ、作業を簡略化することができる。」
(ク)「【0083】
なお、以下の説明では、上記のようにして得られる未焼成シートのうち、焼成後に保護層407となる未焼成シートを未焼成保護層407とし、焼成後に補強部408となる未焼成シートを未焼成補強部408とし、焼成後に電極保護部441となる未焼成シートを未焼成電極保護部441として表す。また、焼成後に第1基体401となる未焼成シートを未焼成第1基体401とし、焼成後に第2基体403となる未焼成シートを未焼成第2基体403として表す。」
(ケ)「【0085】
なお、これらの未焼成シートおよびペーストの符号については、焼成後の部材と同一の符号を用いて表す。
そして、未焼成保護層407については、未焼成固体電解質体435および未焼成絶縁部材405と同様にして、貫通孔形成工程、打抜配置工程、加圧工程などを行うことで、未焼成補強部408の貫通孔442に未焼成電極保護部441を配置して、未焼成保護層407を得ることができる。」
(コ)「【0086】
次に、上記のようにして得られた未焼成シートを積層して未焼成成型体を形成する成型体形成工程を行う。
なお、未焼成成型体は、下方から順に、未焼成第1基体401、未焼成発熱体402、未焼成第2基体403、未焼成第1電極404、未焼成絶縁部材405、未焼成第2電極406、未焼成保護層407などが積層されて形成される。
【0087】
成型体形成工程では、まず、未焼成第1基体401の上に、白金を主体とするペーストを用い、スクリーン印刷により未焼成発熱体402を成形する。そして、未焼成発熱体402を挟み込むようにして、未焼成第2基体403を未焼成第1基体401に対して積層する。
【0088】
さらに、固体電解質体435および絶縁部材405の上に、未焼成第1電極404および未焼成第2電極406をスクリーン印刷法により形成する。なお、未焼成第1電極404および未焼成第2電極406は、白金90質量%及びジルコニア粉末10質量%の白金ペーストからなる。この白金ペーストを用いたスクリーン印刷法により、未焼成第1電極404および未焼成第2電極406を成形する。
【0089】
続いて、未焼成第1電極404を挟み込むようにして、絶縁部材405を未焼成第2基体403に対して積層する。なお、このときの絶縁部材405は、貫通孔433に固体電解質体435が配置されている。
【0090】
そして、未焼成第2電極406を挟み込むようにして、未焼成保護層407を絶縁部材405に対して積層する。なお、未焼成保護層407は、未焼成補強部408および電極保護部441を備えている。
【0091】
このようにして未焼成の成型体を形成する。
次に、切断工程を行う。
切断工程では、未焼成の成型体に対して積層方向の外力(1[MPa])を加えて、未焼成成型体を構成する各未焼成シートを圧着した後、予め定められた大きさに切断して、1個の成型体から10個の積層体を得る。この積層体は、上述の加圧工程において、未焼成固体電解質体435を加圧変形したことから、未焼成固体電解質体435と未焼成絶縁部材405における貫通孔433の内壁との間に隙間が生じ難い構成である。
【0092】
その後、焼成工程として、積層体から樹脂抜きを行う前焼成を実施した後、さらに本焼成して酸素濃度を検出するセンサ素子4を得る。
未焼成第1電極404は、焼成工程により、第1電極部451と第1リード部453とからなる第1電極404となる。」
(サ)【図2】
(シ)【図3】
(ス)【図4】
(セ)【図5】
(ソ)【図6】
(タ)【図7】
イ 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、次の記載がある。
(ア)「【0001】
【技術分野】
本発明は,被測定ガス中に含まれるNOx等のガス濃度の検出を行うガスセンサ素子の製造方法に関する。」
(イ)「【0005】
しかしながら,図17,図18に示すごとく,上記ガスセンサ素子9において,上記スクリーン印刷を行ったヒータシート995における発熱体991の表面は円弧状に突出している。そのため,上記積層を行う際には,発熱体991における円弧状の突出先端部992が,ガスセンサ素子9の長手方向Lに向けて線状に被覆ヒータシート996に当接する。
そのため,上記積層を行う際に,上記各シート931,932,94,96,996,995及び各スペーサ933,95,97を重ねた状態で加圧したときには,ヒータシート995において,上記円弧状の突出先端部992の形成位置に亀裂901を生じることがある。
【0006】
また,この亀裂901の問題点は,上記電極31,32,41,42を形成した固体電解質シート94又は上記電極21,22を形成した固体電解質シート96においても,同様に発生するおそれがある。さらに,この亀裂901の問題点は,例えば,特開平9-113484号公報に示されたガスセンサ素子においても同様に発生するおそれがある。
【0007】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,ガスセンサ素子の製造時に,これを構成する各シートに亀裂が生じることを防止するガスセンサ素子を提供しようとするものである。」
(ウ)「【0009】
本発明のガスセンサ素子の製造方法においては,上記導体層形成工程として,未焼成基板の表面に導体層を形成する際に,上記平坦部を形成する。そして,上記積層工程において,未焼成基板上の導体層を形成した表面に未焼成積層シートを積層して中間体を作製する際には,未焼成積層シートは導体層の平坦部に当接することができる。そのため,この積層の際に,未焼成基板と未焼成積層シートとの間に過度の局所的な加重が加わることを防止することができる。それ故,未焼成基板又は未焼成積層シートに亀裂が発生することを防止することができる。」
(エ)「【0026】
【実施例】
以下に,図面を用いて本発明のガスセンサ素子の製造方法にかかる実施例につき説明する。
(実施例1)
本例のガスセンサ素子1は,自動車のエンジンからの排気ガスを被測定ガスとし,この被測定ガス中におけるNOxの濃度を検出するものである。ガスセンサ素子1は,図1,図2に示すごとく,被測定ガス室11,12,ポンプセル2,モニタセル3,センサセル4及びヒータ19を備えている。また,被測定ガス室11,12は所定の拡散抵抗の下に被測定ガスが導入されるよう構成されている。
【0027】
上記ポンプセル2は,酸素イオン導電性の固体電解質シート16とその表面に設けた一対の電極21,22とにより構成されている。一方の電極21は上記被測定ガス室11内に配設されており,他方の電極22は大気を導入する基準ガス室121内に配設されている。
上記被測定ガス室11には,多孔質シート131及びガス導入穴101を介して上記排気ガスが導入される。そして,ポンプセル2は,一対の電極21,22に電圧を印加することにより,被測定ガス室11に導入した排気ガス中の酸素濃度を調整する。その後,この酸素濃度の調整を行った排気ガスは,被測定ガス室11より拡散抵抗通路102を介して被測定ガス室12に導入される。
【0028】
上記モニタセル3は,酸素イオン導電性の固体電解質シート14とその表面に設けた一対の電極31,32とにより構成されている。一方の電極31は,大気を導入する基準ガス室122内に配設されており,他方の電極32は上記被測定ガス室12内に配設されている。
モニタセル3は,被測定ガス室12における酸素濃度と基準ガス室122における酸素濃度との差により,一対の電極31,32の間に流れる酸素イオン電流を測定して,被測定ガス室12内の酸素濃度を検出する。そして,この検出を行った酸素イオン電流の値に応じて,上記ポンプセル2に印加する電圧を制御する。
【0029】
上記センサセル4は,酸素イオン導電性の固体電解質シート14とその表面に設けた一対の電極41,42とにより構成されている。一方の電極41は,大気を導入する基準ガス室122内に配設されており,他方の電極42は上記被測定ガス室12内に配設されている。
そして,センサセル4は,電極42において排気ガス中のNOxを分解させ,この分解量に応じて発生する酸素濃度の変化を一対の電極41,42の間に流れる酸素イオン電流として測定し,NOxの濃度を求める。
【0030】
上記ヒータ19は,上記ポンプセル2,モニタセル3及びセンサセル4を所定の活性温度に至るまで加熱するものである。このヒータ19は,絶縁性のヒータシート195と絶縁性の被覆ヒータシート196との間に,通電により発熱する発熱体191を備えている。
【0031】
そして,本例のガスセンサ素子1は,多孔質シート131,遮蔽シート132,基準ガス室122を形成するスペーサ133,モニタセル3及びセンサセル4を構成する固体電解質シート14,被測定ガス室11,12を形成するスペーサ15,ポンプセル2を構成する固体電解質シート16,基準ガス室121を形成するスペーサ17,被覆ヒータシート196,発熱体191を配設したヒータシート195を積層して構成したものである。
【0032】
上記ポンプセル2における一対の電極21,22,上記モニタセル3における一対の電極31,32及び上記センサセル4における電極41は,いずれもNOxに対する分解活性をほとんど有しないものである。具体的には,これらの電極21,22,31,32,41は,主成分としてPtとAuを含有する多孔質サーメット電極により構成してある。
また,センサセル4における電極42は,NOxに対する分解活性を有するものである。具体的には,電極42は,主成分としてPtとRhを含有する多孔質サーメット電極により構成してある。
【0033】
上記各固体電解質シート14,16は,ジルコニアやセリア等の酸素イオン導電性を有する固体電解質体よりなる。また,上記遮蔽シート132,上記各スペーサ133,15,17,ヒータシート195及び被覆ヒータシート196は,は,アルミナ等の絶縁材料よりなる。
【0034】
図1,図2に示すごとく,上記ポンプセル2は,固体電解質シート16の両側の表面に導体層20を印刷することにより形成されている。この導体層20は,電極部としての一対の電極21,22と,電極部を上記ガスセンサ素子1の外部にそれぞれ接続するための端子部としての一対の端子212,222と,端子部と電極部とをそれぞれ接続するリード部としての一対のリード211,221とよりなる。
【0035】
上記モニタセル3は,固体電解質シート14の両側の表面に導体層30を印刷することにより形成されている。この導体層30は,電極部としての一対の電極31,32と,電極部を上記ガスセンサ素子1の外部にそれぞれ接続するためのリード部としての一対のリード311,321とよりなる。
【0036】
また,上記センサセル4は,固体電解質シート14の両側の表面に導体層40を印刷することにより形成されている。この導体層40は,電極部としての一対の電極41,42と,電極部を上記ガスセンサ素子1の外部にそれぞれ接続するためのリード部としての一対のリード411,421とよりなる。」
(オ)「【0047】
また,図2に示すごとく,未焼成固体電解質シート160の表面に未焼成積層シートとしての未焼成スペーサ150を積層し,この未焼成スペーサ150の表面に未焼成基板としての未焼成固体電解質シート140を重ね合わせる。さらに,未焼成固体電解質シート140の表面に,未焼成多孔質シート1310及び未焼成積層シートとしての未焼成スペーサ1330を積層し,未焼成スペーサ1330の表面に未焼成遮蔽シート1320を重ね合わせる。
なお,上記各未焼成スペーサ1310,150,170はいずれも焼成前のスペーサ131,15,17のことをいい,未焼成多孔質シート1310及び未焼成遮蔽シート1320についても,それぞれ焼成前の多孔質シート131及び遮蔽シート132のことをいう。」
(カ)「【0048】
また,図6,図7に示すごとく,上記重ね合わせの際には,各未焼成シート1310,1320,140,160,1950,1960及び各未焼成スペーサ1330,150,170の間には,接着剤5を塗布した。この接着剤5としては,アルミナ,有機系バインダ及び溶剤を混錬したものがある。アルミナとしては,微細な粒子径を有するものが好ましい。また,接着剤5としては,ジルコニア,有機系バインダ及び溶剤を混錬したものもある。いずれにおいても,溶剤としては,例えば,テルピネオールがある。
【0049】
本例では,図6に示すごとく,未焼成ヒータシート1950の上記導体層190を形成した側の表面には,上記接着剤5を,導体層190における平坦部199と略面一になるよう塗布した。また,図7に示すごとく,各未焼成固体電解質シート140,160の上記導体層30,40,20を形成した両側の表面にも,上記接着剤5を,導体層30,40,20における平坦部301,401,201と略面一になるよう塗布した。
【0050】
その後,図8,図9に示すごとく,各未焼成シート1310,1320,140,160,1950,1960及び各未焼成スペーサ1330,150,170を重ね合わせた状態で加圧してこれらを積層し,ガスセンサ素子1の中間体を作製した。このとき,図8に示すごとく,未焼成被覆ヒータシート1960は,未焼成ヒータシート1950において上記略面一の状態を形成した導体層20の平坦部199と接着剤5とに対して当接することができる。
【0051】
また,図9に示すごとく,未焼成スペーサ1330,150は,未焼成固体電解質シート140の両側の表面において上記略面一の状態を形成したリード部311,321,411,421の平坦部301,401と接着剤5とに対して当接することができる。なお,未焼成固体電解質シート140における電極31,32,41,42は,未焼成スペーサ1330の被測定ガス室11,12内に配設されるため,未焼成スペーサ1330と当接しない。【0052】
また,未焼成スペーサ150,170は,未焼成固体電解質シート160の両側の表面において上記略面一の状態を形成したリード部211,221の平坦部201と接着剤5とに対して当接することができる。なお,未焼成固体電解質シート160における電極21,22は,未焼成スペーサ150,170の基準ガス室121内に配設されるため,未焼成スペーサ150,170と当接しない。
【0053】
そのため,上記加圧の際に,各未焼成シート140,160,1950,1960と各未焼成スペーサ1330,150,170との間に,局所的な加重が加わることを防止することができる。
それ故,各未焼成シート140,160,1950,1960又は各未焼成スペーサ1330,150,170に亀裂が発生することを防止することができる。
【0054】
その後,焼成工程として,上記積層を行った中間体を焼成して,各シート131,132,14,16,195,196を各スペーサ133,15,17とが積層されたガスセンサ素子1が製造される。」
(キ)【図1】
(ク)【図2】
(ケ)【図6】
(コ)【図7】
(サ)【図8】
(シ)【図9】
(ス)上記図7及び9には、それぞれ積層前後の導体層との間に隙間を空けることなくその周縁に接するように接着剤が塗布された状態が示されている。
(セ)上記図1、図2を参照すると、一対の電極21,22又は31,32が形成される部分に被測定ガス室11,12される点が見て取れる。
ウ 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、次の記載がある。なお、表記上の制限のため、丸囲み付きの数字を「○1」のように記す。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積層型ガスセンサ素子及びその製造方法並びにガスセンサに関する。」
(イ)「【0038】(4-6)中間層
更に、本発明の素子は、第2絶縁性基部の多孔質部と非多孔質部との境界が、第2絶縁性基部の層下に配置されるセル部の備える電極と直接接することを防止するために、中間層(例えば、図21及び図23における17)を備えることができる。電極は幅広に形成された電極部と幅細に形成された電極リード部とから形成することができる。しかし、特にこのような幅細の電極リード部が第2絶縁性基部の多孔質部と非多孔質部との境界と接すると、製造過程における積層時や焼成時において細線化されたり、切断されることが危惧される。このため、第2絶縁性基部の多孔質部と非多孔質部との境界部分に生じ易い段差をできる限り平坦化して取り除くために、この境界と電極との間に薄い層(但し、第2絶縁性基部の通気性を阻害しない)を形成することができる。」
(ウ)「【0046】(3)第1セル部用固体電解質体と内室との相関
本発明の素子が前述のように内室を備える場合に、第1セル部用固体電解質体と内室との相関は特に限定されず、第1セル部用固体電解質体の方が内室よりも小さくてもよく(図4、図6~図9、図13、図17及び図18)、大きくてもよく(図3、図5、図10、図11、図14~図16及び図19)、第1セル部用固体電解質体と内室とが同じ大きさ(図12)であってもよい。しかし、前述のようにより早期に安定して所定の温度にまで加熱され、より少ないエネルギー量でこの温度が保持できるためには、第1セル部用固体電解質体と内室とは同じ大きさであるか、又は第1セル部用固体電解質体の方が内室よりも小さいことが好ましく、更には、第1セル部用固体電解質体の方が内室よりも小さいことがより好ましい。」
(エ)「【0060】(2)イオン導電部を2つ備える素子
また、例えば、第1絶縁性基部、第2セル部、1つの内室、第1セル部及び第2絶縁性基部の各々をこの順に積層して備えるイオン導電部を2つ備える素子である。この素子は、更に例えば、第1セル部及び第2セル部の各々を構成する固体電解質体として酸素イオン導電性を有するものを用い、第2セル部を酸素濃淡電池として機能させ、第1セル部を酸素ポンプとして機能させ、内室を検知室として用いることで、空燃比センサ等として用いることができる。尚、この素子でいう検知室は、被測定雰囲気中に含有される酸素を第1セル部の酸素ポンプ作用により導入及び導出でき、また、第2セル部の濃淡電池作用により、室内の酸素濃度を測定することができる室である。このような素子としては、図6(幅方向断面図)、図22(長手方向断面図)及び図23(分解斜視図)に示すような具体的な構成とすることができる。尚、図22は図6のA-A’における模式的な断面図であり、図6は図22のB-B’における模式的な断面図である。また、この素子については、後述する実施例で詳細に説明する。」
(オ)「【0080】
【実施例】以下、本発明の素子のうち2つのイオン導電部を有する素子について、図6、図22及び図23を用いて更に詳しく説明する。尚、以下では解かり易さのために各部の符号を焼成前後で同じにした。
[1]積層型ガスセンサ素子の製造(図6及び図22に示される模式的な断面構造を有する素子)
・・・」
(カ)「【0085】○2 未焼成第2セル部用固体電解質体131の形成ジルコニア粉末とアルミナ粉末とを配合した混合粉末、分散剤、ブチルカルビトール、ジブチルフタレート及びアセトンを用いてスラリーを得た。このスラリーを上記(2)○1で形成された未焼成第2セル部用電極133上に厚さ30μmでスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成第2セル部用固体電解質体131を得た。
【0086】○3 未焼成層間調節層(第2セル部用)134の形成
アルミナ粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いてスラリーを得た。このスラリーを上記(2)○2で形成された未焼成第2セル部用固体電解質体131を除く、素シート112及び未焼成第2セル部用電極133の未焼成電極リード部上に、未焼成第2セル部用固体電解質体131の表面と高さが合うようにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成層間調節層134を得た。但し、後に未焼成電極133の未焼成電極リード部と未焼成電極取出パッド166とを接続するためのスルーホール135が形成されるように印刷を行った。」
(キ)「【0088】〈2〉内室15及び未焼成律速導入部151及び152の形成
(1)未焼成層間調節層(内室形成用)153及び154の形成
上記〈1〉(2)○3と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記〈1〉(2)までに形成された第1積層体の未焼成第2セル部用電極132と未焼成層間調節層134上にスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成層間調節層153及び154を得た。但し、後に未焼成第2セル部用電極132の未焼成電極リード部と未焼成電極取出パッド165と接続するためのスルーホール155が形成され、また、未焼成第2セル部用電極133の未焼成電極リード部と未焼成電極取出パッド166と接続するためのスルーホール156が形成されるように印刷を行った。更に、焼成後に内室15が形成されるように未焼成層間調節層を153と154との2つの部位に分け、その間に空間が形成されるように印刷を行った。
【0089】(2)未焼成律速導入部151及び152の形成
アルミナ粉末(焼成後に空隙を残存させることができる粒径)、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いてスラリーを得た。このスラリーを第1積層体の未焼成層間調節層134上であって、未焼成層間調節層153及び154の形成されていない部分に図23に示すような形状にスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成律速導入用多孔質部151及び152を得た。尚、未焼成層間調節層153及び154並びに未焼成律速導入部151及び152に囲まれた図23中の内室15は検知室となる。」
(ク)「【0090】〈3〉第2積層体の作製
(1)未焼成第2シート16の作製
アルミナ粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いて非多孔質部用スラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法により厚さ500μmの非多孔質部用のグリーンシートに成形した。一方、アルミナ粉末、カーボン粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いて多孔質部用スラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法により厚さ500μmの多孔質部用のグリーンシートに成形した。これら2種のグリーンシートから図23に示すような非多孔質部となる未焼成非多孔質部162となるシートの一端側に多孔質部161となる未焼成多孔質部161を備えるシートを形成した。次いで、スルーホール163となる孔を3つ設けて未焼成第2シート16を得た。
【0091】(2)未焼成中間層17の形成
上記〈3〉(1)と同様の多孔質部用及び非多孔質部用の2種のスラリーを得た。このうち多孔質部用のスラリーを、上記〈3〉(1)で得られた未焼成第2シート16の備える未焼成多孔質部161を覆うようにスクリーン印刷し、乾燥させて中間層17の多孔質部171となる未焼成中間層多孔質部171を形成した。次いで、非多孔質部用のスラリーを未焼成第2シート16上であって、未焼成中間層多孔質部171が形成されていない表面にスクリーン印刷し、乾燥させて中間層17の非多孔質部172となる未焼成中間層非多孔質部172を形成した。但し、後に未焼成第2セル部用電極133と未焼成電極取出パッド166とを接続するためのスルーホール175が形成され、また、未焼成第2セル部用電極132及び未焼成第1セル部用電極123と未焼成電極取出パッド165とを接続するためのスルーホール174が形成され、更に、未焼成第1セル部用電極122と未焼成電極取出パッド164とを接続するためのスルーホール173が形成されるように印刷を行った。
【0092】(3)未焼成第1セル部12の形成
この未焼成第1セル部12は焼成されて酸素ポンプセルとして機能する。
○1 未焼成第1セル部用電極122の形成
上記〈1〉(2)と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記で得られた未焼成中間層17の表面にスクリーン印刷し、焼成されて電極部となる幅広の未焼成電極部1221と、焼成されて電極リード部となる幅細の未焼成電極リード部1222を備える未焼成第1セル部用電極122を形成した。
【0093】○2 未焼成第1セル部用固体電解質体121の形成
上記〈1〉(2)○2と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記で得られた未焼成第1セル部用電極122の未焼成電極部上に30μmの厚さにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成第1セル部用固体電解質体121を得た。
【0094】○3 未焼成層間調節層124(第1セル部用)の形成
上記〈1〉(2)○3と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記で得られた未焼成第1セル部用固体電解質体121を除く、未焼成中間層17及び未焼成第1セル部用電極122の未焼成電極リード部上に、未焼成第1セル部用固体電解質体121の表面と高さが合うようにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成層間調節層124を得た。但し、後に未焼成第2セル部用電極133と未焼成電極取出パッド166とを接続するためのスルーホール126が形成され、また、未焼成第2セル部用電極132及び未焼成第1セル部用電極123(この時点では未形成)と未焼成電極取出パッド165とを接続するためのスルーホール125が形成されるように印刷を行った。
【0095】○4 未焼成第1セル部用電極123の形成
上記〈1〉(2)○1と同様にスラリーを得た。このスラリーを未焼成第1セル部用固体電解質体121及び未焼成層間調節層124の表面に印刷し、乾燥させて、焼成されて電極部となる幅広の未焼成電極部(この未焼成電極部は未焼成第1セル部用固体電解質体121の表面に形成した)と、焼成されて電極リード部となる幅細の未焼成電極リード部(この未焼成電極リード部は未焼成層間調節層124の表面に形成した)を備える未焼成第1セル部用電極123を形成した。このようにして、上記(1)~(3)により第2積層体を得た。」
(ケ)【図6】
(コ)【図11】
(サ)【図22】
(シ)【図23】
(ス)上記摘記事項(カ)ないし(ク)より、層間調節層153及び154、律速導入部151及び152、中間層多孔質部171、中間層非多孔質部172並びに層間調節層124は、いずれもアルミナ粉末を含むスラリーを焼成して得られるものであるから、アルミナである。
(セ)上記摘記事項(カ)及び(ク)より、第1セル部用固体電解質体121は、ジルコニア粉末とアルミナ粉末とを配合した混合粉末を含むスラリーを焼成して得られるものであるから、ジルコニア材料からなるものである。
(ソ)上記図11及び23から、第1絶縁性基部11、第2セル部13、層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152で形成される内室15、第1セル部12、中間層17、第2絶縁性基部16が、この順に積層されて積層型ガスセンサ素子を構成していることが見て取れる。
(タ)上記図11及び23から、層間調節層124は貫通穴を有し、第1セル部用固体電解質体121は当該貫通穴に配置されていることが見て取れる。
(チ)上記図11には、第1セル部用電極122及び123の幅が、第1セル部用固体電解質体121の幅及び内室15の幅よりも狭いことが示されている。
(ツ)上記図11には、内室15の幅が、第1セル部用固体電解質体121の幅よりも狭いことが示されている。
(テ)上記図11には、中間層17の厚さが、層間調節層124及び第1セル部用固体電解質体121の厚さよりも薄いことが示されている。
エ 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、次の記載がある。
(ア)「【0018】
【実施例】以下に,図面を用いて本発明の実施例について説明する。
(実施例1)本発明にかかるガスセンサ素子について図1~図6を用いて説明する。図1~図3に示すごとく,部分安定化ジルコニアよりなる固体電解質板11と該固体電解質板11の表面に被測定ガス雰囲気と対面する被測定ガス側電極121と基準ガス雰囲気と対面する基準電極131とを有し,上記固体電解質板11に被測定ガス側電極121を覆うガス透過性の拡散層141を積層し,該拡散層141にガス不透過性の遮蔽層142を積層する。」
(イ)「【0021】図1~図3に示すごとく,本例のガスセンサ素子1は,基準ガス室形成板15,固体電解質板11,拡散層141,遮蔽層142を積層して構成する。基準ガス室形成板15は,断面がコ字状で基準ガスを導入する基準ガス室となる溝部150を備える。固体電解質板11は,被測定ガス側電極121と基準電極131とを有し,これらの電極121,131に電気的に導通するリード部122,132を備える。また,上記被測定ガス側電極121を覆うように拡散層141が,該拡散層141を覆うように遮蔽層142が積層される。」
(ウ)「【0023】上記ヒータ絶縁板197と上記基準ガス室形成板15との間,基準ガス室形成板15と固体電解質板11との間,拡散層141と遮蔽層142との間はそれぞれ接着層161,162,165が介在する。また,固体電解質体11と拡散層141との間は絶縁層163と接着層164とが介在する。」
(エ)「【0026】上記絶縁層163,接着層164は,被測定ガス側電極121と対面する位置に窓128,129を有する。また,被測定ガス側電極121はリード部122を介して端子123と電気的に導通する。ガスセンサ素子1の出力は上記端子123,136より得ることができる。また,図3に示すごとく絶縁層163と接着層164に設けた窓128,129は積層により被測定ガス側電極121を格納する小室127となる。また,この小室127は,拡散層141を通じて被測定ガスが導入される。」
(オ)【図1】
(カ)【図3】
オ 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、次の記載がある。
(ア)「【0025】図1,図2に示すごとく,本例の積層型空燃比センサ素子1は,酸素イオン導電性の固体電解質体100と,該固体電解質体100の一方の面に設けた被測定ガス側電極11と,他方の面に基準ガス室150と対面するよう設けた基準ガス側電極12とよりなり,上記被測定ガス側電極11は多孔質拡散抵抗層13にて被覆されてなる。
【0026】そして,上記被測定ガス側電極11と上記多孔質拡散抵抗層13との間には空間部10が設けてある。上記空間部10の固体電解質体100に対する投影面積は被測定ガス側電極11の表面積よりも一回り大きくなるよう構成されている。この状態を図3(a)に示す。」
(イ)「【0028】以下,詳細に説明する。図2に示すごとく,部分安定化ジルコニアよりなる酸素イオン導電性の固体電解質体100の表面にアルミナよりなる緻密でガスを透過しない絶縁層101を設け,その表面に白金よりなる被測定ガス側電極11とこれに接続されたリード部111,端子部112が設けてある。
【0029】このような固体電解質体100にスペーサ102が積層される。スペーサ102は電気絶縁性で緻密でガスを透過させないアルミナセラミックよりなり,空間部10を構成する窓部104が設けてある。上記スペーサ102に対して多孔質拡散抵抗層13が積層される。この多孔質拡散抵抗層13は気孔率10%のアルミナセラミックよりなる。上記多孔質拡散抵抗層13に対し緻密でガスシール性のアルミナセラミックよりなるガス遮閉層14が積層される。」
(ウ)【図1】
(エ)【図2】
カ 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層手段について、次の記載がある。
(ア)「【0033】
・・・ガスセンサ素子1は、図1、図2に示すごとく、センサ層2、ダクト層11、ヒータ層3、及び拡散層12を有する積層体10よりなる。本例の積層体10は、さらに遮蔽層13を有しており、遮蔽層13、拡散層12、センサ層2、ダクト層11、ヒータ層3の順に積層して構成されている。」
(イ)「【0035】
ダクト層11は、センサ層2の基準ガス側電極23と対面し、センサ層2との間に接着剤51を介して積層されている。ダクト層11におけるセンサ層2の基準ガス側電極23と対面する面には、基準ガス室110として機能する溝状の基準ガス室形成部119が設けてある。基準ガス室110は、基準ガスとしての大気が導入されるように構成されている。」
(ウ)「【0037】
拡散層12は、センサ層2の被測定ガス電極22に対面し、センサ層2との間に接着剤51を介して積層されている。また、拡散層12は、ガス透過性の多孔質材料よりなり、拡散層12とセンサ層2との間には、被測定ガス室100が形成されている。被測定ガス室100は、被測定ガスとしての排気ガスが拡散層12を通過して導入されるように構成されている。」
(エ)「【0039】
・・・接着剤51は、セラミック粉末としてのアルミナ、バインダとしてのアクリル系、ビニル系樹脂等を含有したものを焼成したものである。・・・」
(オ)【図1】
(カ)【図2】
(2)甲号証に記載された発明又は技術
ア 甲第2号証に記載された発明
上記摘記事項(1)ア(ア)ないし(タ)を含む甲第2号証全体の記載から、甲第2号証には、以下の2つの発明(以下、それぞれの発明を、「引用発明2の1」及び「引用発明2の2」という。)が記載されている。なお、「引用発明2の1」及び「引用発明2の2」の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
(ア)引用発明2の1
「一対の電極である第1電極404と第2電極406とのうち、第1電極404は絶縁部材405の表面に配置され、第2電極406は絶縁部材405の裏面に配置され、
絶縁部材405は絶縁性材料であるアルミナからなり、厚さ方向に貫通する貫通孔433を有する板型形状に形成されており、部分安定化ジルコニア焼結体で構成されている固体電解質体435が、絶縁部材405における貫通孔433の内部に配置されており、
第1電極404は、第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆い、
第2電極406は、第2電極部447全体が固体電解質体435の一部を覆い、
絶縁部材405の裏面には、第2電極406を挟み込むようにして、保護層407が形成されており、
絶縁部材405の表面には、ヒータ500の第2基体403で第1電極404を挟み込むようにして、ヒータ500が形成されている、センサ素子4。」
(イ)引用発明2の2
「厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された板型形状の絶縁性材料からなる絶縁部材と、少なくとも一部が貫通孔に配置された固体電解質体と、少なくとも自身の一部が固体電解質体を覆う電極部と、長手方向に延びて電極部に接続するリード部と、を有し、絶縁部材および固体電解質体の板面上に配置される一対の電極と、を備えるガスセンサ素子の製造方法であって、
アルミナ粉末97質量%の第1原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第1スラリー、アルミナ粉末63質量%の第2原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第2スラリー、ジルコニア粉末97質量%の第3原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第3スラリーを用意し、
第1スラリーを用いて、加工焼成後に絶縁部材405となる未焼成絶縁部用シート117、焼成後に保護層407となる未焼成シート、焼成後に第2基体403となる未焼成シートである未焼成第2基体403を形成し、
第2スラリーを用いて、加工焼成後に電極保護部441となる未焼成電極保護部用シートを形成し、
第3スラリーを用いて、加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成固体電解質体用シート113を形成し、
貫通孔形成工程では、パンチ型307を下降させて未焼成絶縁部用シート117に貫通孔433を貫設して未焼成絶縁部材405を作成し、
打抜配置工程では、未焼成絶縁部材405の上に未焼成固体電解質体用シート113を配置し、パンチ型307を下降させ、未焼成固体電解質体用シート113から未焼成固体電解質体435を繰り抜くとともに、未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入し、
未焼成固体電解質体435及び未焼成絶縁部材405と同様にして、焼成後に保護層407となる未焼成シート及び未焼成電極保護部用シートに対して貫通孔形成工程、打抜配置工程を行うことで、未焼成補強部408の貫通孔442に未焼成電極保護部441を配置して、未焼成保護層407を形成し、
未焼成固体電解質体435および未焼成絶縁部材405の上に、未焼成固体電解質体435の一部を覆う第1電極部451を備えた未焼成第1電極404および未焼成固体電解質体435の一部を覆う第2電極部447を備えた未焼成第2電極406をスクリーン印刷法により形成し、
未焼成第1電極404を挟み込むようにして、未焼成絶縁部材405を未焼成第2基体403に対して積層し、未焼成第2電極406を挟み込むようにして、未焼成保護層407を絶縁部材405に対して積層して、下方から順に、未焼成第2基体403、未焼成第1電極404、未焼成絶縁部材405、未焼成第2電極406、未焼成保護層407などが積層された未焼成成型体を形成し、
焼成工程として、樹脂抜きを行う前焼成を実施した後、さらに本焼成して、
酸素濃度を検出するセンサ素子4を得る方法。」
イ 甲第3号証に記載された技術
上記摘記事項(1)イ(ア)ないし(シ)並びに認定事項(1)イ(ス)及び(セ)を含むを含む甲第3号証全体の記載から、甲第3号証には、以下の2つの技術(以下、それぞれの技術を、「甲3技術1」及び「甲3技術2」という。)が記載されている。なお、「甲3技術1」及び「甲3技術2」の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
(ア)甲3技術1
「ガスセンサ素子の製造方法において、シート上の導体層との間に隙間を空けることなくその周縁に接するように、かつ、導体層の平坦部と略面一になるように接着剤を塗布し、シート又はスペーサを重ね合わせた状態で加圧して積層して中間体を作製し、その後焼成する技術。」
(イ)甲3技術2
「未焼成固体電解質シート16(160)の表面の、電極が設けられた部位に、被測定ガス室11,12を形成する未焼成積層シートとしてのアルミナ等の絶縁材料よりなる未焼成スペーサ15(150)を積層し、この未焼成スペーサの表面に未焼成基板としての未焼成固体電解質シート14(140)を重ね合わせ、積層を行った中間体を焼成しガスセンサ素子を製造する技術。」
ウ 甲第4号証に記載された発明
上記摘記事項(1)ウ(ア)ないし(シ)及び認定事項(1)ウ(ス)ないし(テ)を含む甲第4号証全体の記載から、甲第4号証には以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されている。なお、「引用発明4」の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
「第1絶縁性基部11、第2セル部13、層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152で形成される内室15、第1セル部12、中間層17、第2絶縁性基部16が、この順に積層された積層型ガスセンサ素子であって、
中間層17は、アルミナからなる中間層多孔質部171及び中間層非多孔質部172からなり、
第1セル部12は、貫通穴を有しアルミナからなる層間調節層124、層間調節層124の貫通穴に配置され、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなる第1セル部用固体電解質体121、第1セル部用固体電解質体121の中間層17側に設けられた第1セル部用電極122、第1セル部用固体電解質体121の内室15側に設けられた第1セル部用電極123からなり、
内室15を形成する層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152はアルミナからなり、
中間層17の厚さは、層間調節層124及び第1セル部用固体電解質体121の厚さよりも薄く、
第1セル部用電極122及び123の幅は、第1セル部用固体電解質体121の幅及び内室15の幅よりも狭く、
内室15の幅は、第1セル部用固体電解質体121の幅よりも狭い、積層型ガスセンサ素子。」
エ 甲第5号証に記載された技術
上記摘記事項(1)エ(ア)ないし(カ)を含む甲第5号証全体の記載から、甲第5号証には以下の技術(以下「甲5技術」という。)が記載されている。なお、「甲5技術」の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
「固体電解質板に被測定ガス側電極を覆うガス透過性の拡散層を積層したガスセンサ素子において、固体電解質体と拡散層との間に被測定ガス側電極と対面する位置に窓を有する絶縁層と接着層とを介在させ、絶縁層と接着層とに設けた窓により被測定ガス側電極を格納する小室を形成する技術。」
オ 甲第6号証に記載された技術
上記摘記事項(1)オ(ア)ないし(エ)及び認定事項(1)オ(オ)を含む甲第6号証全体の記載から、甲第6号証には以下の技術(以下「甲6技術」という。)が記載されている。なお、「甲6技術」の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
「酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に設けた被測定ガス側電極を多孔質拡散抵抗層にて被覆した積層型空燃比センサ素子において、固体電解質体と多孔質拡散抵抗層との間に開口を有する絶縁層及び窓部を有するスペーサを積層し、絶縁層の開口及びスペーサの窓部により被測定ガス側電極と多孔質拡散抵抗層との間に空間部を設ける技術。」
(3)無効理由4-1(本件訂正発明1)について
ア 無効理由4-1-1(甲第2号証と甲第3号証との組合わせ)について
(ア)対比
本件訂正発明1と引用発明2の1とを対比する。
a 引用発明2の1の「絶縁部材405」は、「板型形状に形成されて」いるから、シートであるといえる。
b 引用発明2の1の「貫通孔433」が、本件訂正発明1の「充填用貫通穴内」に相当する。
c 部分安定化ジルコニア焼結体が酸素イオン導電性を有することは技術常識であるから、引用発明2の1の「部分安定化ジルコニア焼結体で構成されている固体電解質体435」が、本件訂正発明1の「酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部」に相当する。
d 上記aないしcから、引用発明2の1における、「絶縁性材料であるアルミナからなり、」「板型形状に形成されて」いる「絶縁部材405における貫通孔433の内部に」「部分安定化ジルコニア焼結体で構成されている固体電解質体435が」「配置されて」なるものが、本件訂正発明1の「電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してな」る「固体電解質シート」に相当する。
e 引用発明2の1の「一対の電極である第1電極404と第2電極406」が、本件訂正発明1の「一対の電極」に相当する。
f 引用発明2の1において、「第1電極404は絶縁部材405の表面に配置され」ているから、「第1電極404は、第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆」うことは、「第1電極部451全体が固体電解質体435の」表面の「一部を覆」うことを意味し、「第2電極406は絶縁部材405の裏面に配置され」ているから、「第2電極406は、第2電極部447全体が固体電解質体435の一部を覆」うことは、「第2電極部447全体が固体電解質体435の」裏面の「一部を覆」うことを意味していることは明らかである。
g 上記c、e及びfから、引用発明2の1の「第1電極404は、第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆い、第2電極406は、第2電極部447全体が固体電解質体435の一部を覆」うことが、本件訂正発明1の「上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあ」ることに相当する。
h 上記gを踏まえると、引用発明2の1において、「第1電極404」と「第2電極406」とは、「貫通孔433の内部に」「固体電解質体435が」「配置され」た「絶縁部材405」の両表面の互いに対向する位置に設けられているといえる。
i 引用発明2の1の「センサ素子4」が、本件訂正発明1の「ガスセンサ素子」に相当する。
j 上記d、h及びiから、引用発明2の1の「一対の電極である第1電極404と第2電極406とのうち、第1電極404は絶縁部材405の表面に配置され、第2電極406は絶縁部材405の裏面に配置され」た「センサ素子4」が、本件訂正発明1の「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子」に相当する。
(イ)一致点・相違点
本件訂正発明1と引用発明2の1とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。なお、以下の一致点及び相違点の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
<一致点>
「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において、
上記固体電解質シートは、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり、
上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてある、ガスセンサ素子。」
<相違点>
(相違点1)本件訂正発明1は、
「1D) 上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり、
1E) 該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、
1F) 該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填用貫通穴よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、
1G) 上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なって、
1H) 上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
1I) 上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」のに対して、引用発明2の1は、そのような表面アルミナ層を備えていない点。
(ウ)相違点に関する判断
a 甲第3号証には、上記「(2)イ 甲第3号証に記載された技術」(ア)のとおり、ガスセンサ素子の製造方法において、シート上の導体層との間に隙間を空けることなくその周縁に接するように、かつ、導体層の平坦部と略面一になるように接着剤を塗布し、シート又はスペーサを重ね合わせた状態で加圧して積層して中間体を作製し、その後焼成する技術である甲3技術1が記載されている。
b 引用発明2の1に甲3技術1を適用する動機付けの有無について以下に検討すると、甲第3号証には、ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層手段について、各未焼成シート1310、1320、140、160、1950、1960及び各未焼成スペーサ1330、150、170の間に、アルミナ、有機系バインダ及び溶剤を混練した接着剤5を塗布して各未焼成シートを積層する技術が記載されており、甲第5号証の上記摘記事項(1)エ、及び、甲第7号証の上記摘記事項(1)カを参酌すると、本件特許に係る出願の出願当時、積層タイプのガスセンサ素子において、これを構成する各未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することは、当業者にとって周知の技術であったものと認められる。
c 一方、甲第2号証の上記摘記事項(1)ア(コ)に示す段落【0091】の記載によれば、引用発明2の1においては、ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層に当たり、各層を接合する方法として、接着剤を用いるのではなく、積層方向に外力を加えて未焼成シートを圧着する方法が用いられているところ、上記(b)のとおり、ガスセンサ素子を構成する未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することが本件特許に係る出願の出願当時の周知技術であったことからすると、引用発明2の1において、未焼成シートの積層に当たり、圧着ではなく甲3技術1の接着剤を用いた接合方法を採用することに、格別の困難があったものとはいえない。
d したがって、引用発明2の1に甲3技術1を適用し、絶縁部材405の表面及び裏面のうち、第1電極404及び第2電極406周囲の電極非形成部分に、各電極の周縁に接するように、かつ、各電極の平坦部と略面一の状態になるようにアルミナからなる接着剤を塗布して段差を解消し、平坦化を図った上で上記403ないし407の各層を積層することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
e 上記aないしdのとおり、引用発明2の1に甲3技術1を適用することは、当業者が容易に想到し得たといえるところ、その結果得られるガスセンサ素子において、絶縁部材405の両面に形成されるアルミナからなる接着剤の層(以下「接着剤表面アルミナ層」という。)は、本件訂正発明1の表面アルミナ層に相当するものといえる。
そして、接着剤表面アルミナ層は、絶縁部材405よりも薄いものであり、第1電極404及び第2電極406の周縁(側面)に接し、各電極の表面を露出させており、固体電解質435の表面及び裏面のうち各電極で覆われない部分と重なるように形成されるものであり、接着剤表面アルミナ層における、第1電極404及び第2電極406が露出した部位には、穴が存在することは明らかであるから、開口用貫通穴を有するものである。
f そうすると、引用発明2の1に甲3技術1を適用したセンサ素子において、接着剤表面アルミナ層は、上記相違点に係る本件訂正発明1の特定事項のうち、
「1D) 上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり、」
「1E) 該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、」
「1F) 該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、」
「1G) 該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なって」いる構成を満たすこととなる。
g 次に、「1I)上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」点について、以下に検討する。
上記甲3技術1において接着剤を塗布するに当たり接着剤の量を調整することはあるにしろ、甲3号証の上記摘記事項(1)イ(カ)に示す段落【0049】及び【0050】の記載、及び当該段落が引用する上記摘記事項(1)イ(ケ)ないし(シ)に示す【図6】ないし【図9】に接した当業者は、その接着剤の量は、導体層に設けられた平坦部と略面一となるように、すなわち、当該平坦部との間にできるだけ隙間を生じないように調整するものと理解されると認めるのが相当である。
そうすると、引用発明2の1に甲3技術1を適用するに当たり、当業者が「電極と接着剤との間に隙間を設ける」構成を採用する動機付けがあるとはいえず、構成要件1I)に係る「上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」構成を、当業者が容易に想到できたということはできない。
h 小括
よって、上記相違点1のうち、構成要件1I)の「ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」との構成は、引用発明2の1及び甲3技術1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえないことから、上記相違点1の構成要件1H)について検討するまでもなく、本件訂正発明1における相違点1は、引用発明2の1及び甲3技術1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
(エ)無効理由4-1-1のまとめ
本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 無効理由4-1-2(甲第4号証と甲第5号証との組合わせ)について
(ア)対比
本件訂正発明1と引用発明4とを対比する。
a 引用発明4の「アルミナからなる層間調節層124」、「貫通穴」及び「酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなる第1セル部用固体電解質体121」が、それぞれ本件訂正発明1の「電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシート」、「充填用貫通穴内」及び「酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部」に相当するから、引用発明4の「アルミナからなる層間調節層124」の「貫通穴」に「酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなる第1セル部用固体電解質体121」を「配置」してなるものが、本件訂正発明1の「電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してな」る「固体電解質シート」に相当する。
b 引用発明4の「第1セル部用固体電解質体121の中間層17側に設けられた第1セル部用電極122」と「第1セル部用固体電解質体121の内室15側に設けられた第1セル部用電極123」とが、本件訂正発明1の「上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあ」る「上記一対の電極」に相当する。
c 引用発明4の「第1セル部用固体電解質体121の中間層17側に設けられた第1セル部用電極122」と「第1セル部用固体電解質体121の内室15側に設けられた第1セル部用電極123」とは、「第1セル部用固体電解質体121」の両表面の互いに対向する位置に設けられているといえるから、引用発明4の「貫通穴を有しアルミナからなる層間調節層124、層間調節層124の貫通穴に配置され、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなる第1セル部用固体電解質体121、第1セル部用固体電解質体121の中間層17側に設けられた第1セル部用電極122、第1セル部用固体電解質体121の内室15側に設けられた第1セル部用電極123からな」る「第1セル部12」を有する「積層型ガスセンサ素子」が、本件訂正発明1の「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子」に相当する。
d 引用発明4において、「第1セル部12」の「アルミナからなる層間調節層124」の上面に、「層間調節層124及び第1セル部用固体電解質体121の厚さよりも薄く」、「アルミナからなる中間層多孔質部171及び中間層非多孔質部172からな」る「中間層17」が「積層され」ていることと、本件訂正発明1の「上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあ」ることとは、「上記アルミナシートの上面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる表面アルミナ層が積層してある」点において共通する。
e 引用発明4において、「アルミナからな」る「層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152」は、「第2セル部13」と「第1セル部12」との間に「内室15を形成する」ように並べて配置され、層を形成するものといえるから、引用発明4において、「第1セル部12」の「アルミナからなる層間調節層124」の下面に、「アルミナからな」る「層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152で形成される内室15」が「積層され」ていることと、本件訂正発明1の「上記アルミナシートの両表面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあ」ることとは、「上記アルミナシートの下面には、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる表面アルミナ層が積層してある」点において共通する。
f 引用発明4の「内室15」は、「第1セル部用固体電解質体121」に対応する位置に形成されることは明らかであるから、本件訂正発明1の「開口用貫通穴」に相当し、引用発明4において、「アルミナからな」る「層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152」で「内室15」が「形成される」ことと、本件訂正発明1の「該一対の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあ」ることとは、「上記アルミナシートの下面の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてある」点において共通する。
g 引用発明4の「第1セル部用電極122及び123の幅」が「内室15の幅よりも狭」いことと、本件訂正発明1の「該開口用貫通穴は、上記電極よりも大きな形状に形成してあ」ることとは、「該開口用貫通穴は、上記電極よりも大きな幅に形成してある」点において共通し、引用発明4の「内室15の幅は、第1セル部用固体電解質体121の幅よりも狭い」ことと、本件訂正発明1の「該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく」、「該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていること」とは、「該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さな幅であり」、「該開口用貫通穴の幅方向の周縁部は、上記ジルコニア充填部の下面における幅方向の外縁部に重なっている」点において共通する。
(イ)一致点・相違点
本件訂正発明1と引用発明4とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において、
上記固体電解質シートは、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり、
上記一対の電極は、上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり、
上記アルミナシートの上面には、該アルミナシートよりも薄く、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる表面アルミナ層が積層してあり、
上記アルミナシートの下面には、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる表面アルミナ層が積層してあり、
上記アルミナシートの下面の表面アルミナ層には、上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、
該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さな幅であり、上記電極よりも大きな幅に形成してあって、該開口用貫通穴の幅方向の周縁部は、上記ジルコニア充填部の下面における幅方向の外縁部に重なっているガスセンサ素子。」
<相違点>
(相違点A)アルミナシートの上面の表面アルミナ層が、本件訂正発明1においては、
「1E')上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり、
1F)該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、
1G) 該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の上表面における外縁部に重なって、
1H)上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
1I)上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」ものであるのに対し、
引用発明4においては、「開口用貫通穴」が設けられていない点。
(相違点B)アルミナシートの下面の表面アルミナ層が、本件訂正発明1においては、「該アルミナシートよりも薄」いのに対し、引用発明4においては、アルミナシートよりも薄いのかが不明である点。
(相違点C)アルミナシートの下面の表面アルミナ層に設けられた開口用貫通穴が、本件訂正発明1においては、
「1F) 該開口用貫通穴は、上記ジルコニア充填部よりも小さく、上記ジルコニア充填部における上記電極よりも大きな形状に形成し、
1G) 該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の下表面における外縁部に重なって、
1H) 上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニア充填部が上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
1I) 上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」のに対し、
引用発明4においては、「ジルコニア充填部よりも小さな幅であり、上記電極よりも大きな幅に形成してあって、該開口用貫通穴の幅方向の周縁部は、上記ジルコニア充填部の下面における幅方向の外縁部に重なっている」ものの、長手方向における開口用貫通穴、電極及びジルコニア充填部相互の大小関係が不明であり、長手方向においても、開口用貫通穴がジルコニア充填部よりも小さく、上記電極よりも大きく形成してあって、かつ、該開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニア充填部の下面における外縁部に重なっているのかが不明である点。
(ウ)相違点に関する判断
相違点Aについて検討する。
a 甲第5号証には、上記「(2)エ 甲第5号証に記載された技術」のとおり、固体電解質板に被測定ガス側電極を覆うガス透過性の拡散層を積層したガスセンサ素子において、固体電解質体と拡散層との間に被測定ガス側電極と対面する位置に窓を有する絶縁層と接着層とを介在させ、絶縁層と接着層とに設けた窓により被測定ガス側電極を格納する小室を形成する技術である甲5技術が記載されている。ここで、甲5技術における絶縁層及び接着層は、固体電解質板に対して、貫通穴を有する表面層であると見ることもできる。
b しかしながら、引用発明4は、第1セル部用電極122上に中間層17における中間層多孔質部171を積層する積層型ガスセンサ素子であり、第1セル部用電極122を小室に格納するタイプのガスセンサ素子ではなく、前者と後者とではそもそもガスセンサ素子としてのタイプが異なるものであるから、引用発明4の第1セル部用電極122を小室に格納しようとする動機付けが存在するとはいえない。してみれば、中間層17を甲5技術の絶縁層163及び接着層に換え、小室127を形成することの動機付けがあるとはいえない。
c 加えて、引用発明4における中間層17は、上記摘記事項(1)ウ(イ)に示す段落【0038】の記載されているとおり、第2絶縁性基部の多孔質部と非多孔質部との境界が第2絶縁性基部の層下に配置されるセル部の備える電極と直接接することを防止するという、電極の保護のために設けるものであり、上記甲第4号証の上記摘記事項(1)ウ(ケ)ないし(シ)で示されるすべての図面において、幅細に形成された電極リード部の部分のみならず、電極は幅広に形成された電極部の部分に対しても中間層17を備えた積層型ガスセンサ素子が記載されている。
してみれば、引用発明4において、中間層17の部分にジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴を設けることは、開口用貫通穴を設ける部分において電極が保護されないことになることから、引用発明4において中間層17を設けることの技術的意義が失われることになり、阻害要因があるともいえる。
d よって、引用発明4において中間層17の部分に、中間層17を甲5技術の絶縁層163及び接着層に換え小室127を形成すること、すなわち「ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴」を「設け」ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
e 小括
引用発明4において、上記相違点Aのうち「ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴」を「設け」ること自体が当業者が容易になし得たことでない以上、その「開口用貫通穴」が上記1F)ないし1I)の構成を有するというその余の上記相違点Aの構成要件についても、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件訂正発明1における相違点Aは、引用発明4及び甲5技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
(エ)無効理由4-1-2のまとめ
本件訂正発明1は、上記相違点B及びCを検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 無効理由4-1-3(甲第4号証と甲第6号証との組合わせ)について
(ア)対比及び一致点・相違点対比
本件訂正発明1と引用発明4との対比、一致点及び相違点については、上記イの(ア)及び(イ)で述べたとおりである。
(イ)相違点に関する判断
相違点Aについて検討する。
a 甲第6号証には、「(2)オ 甲第6号証に記載された技術」のとおり、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に設けた被測定ガス側電極を多孔質拡散抵抗層にて被覆した積層型空燃比センサ素子において、固体電解質体と多孔質拡散抵抗層との間に開口を有する絶縁層及び窓部を有するスペーサを積層し、絶縁層の開口及びスペーサの窓部により被測定ガス側電極と多孔質拡散抵抗層との間に空間部を設ける技術である甲6技術が記載されている。ここで、甲6技術における絶縁層及びスペーサは、固体電解質体に対して、貫通穴を有する表面層であると見ることもできる。
b しかしながら、引用発明4は、第1セル部用電極122上に中間層17における中間層多孔質部171を積層する積層型ガスセンサ素子であり、第1セル部用電極122を空間部に格納するタイプのガスセンサ素子ではなく、前者と後者とではそもそもガスセンサ素子としてのタイプが異なるものであるから、引用発明4の第1セル部用電極122を空間部に格納しようとする動機付けが存在するとはいえない。してみれば、中間層17を甲6技術の絶縁層及びスペーサに換え、空間部を形成することの動機付けがあるとはいえない。
c 加えて、上記イの(ウ)cで述べたとおり、引用発明4における中間層17は、電極の保護のために設けるものであり、それは幅細に形成された電極リード部の部分のみならず、電極は幅広に形成された電極部の部分に対しても備えられるものである。
してみれば、引用発明4において、中間層17の部分にジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴を設けることは、開口用貫通穴を設ける部分において電極が保護されないことになることから、引用発明4において中間層17を設けることの技術的意義が失われることになり、阻害要因があるともいえる。
d よって、引用発明4において中間層17の部分に、中間層17を甲6技術の絶縁層及びスペーサに換え空間部を形成すること、すなわち「ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴」を「設け」ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
e 小括
引用発明4において、上記相違点Aのうち「ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴」を「設け」ること自体が当業者が容易になし得たことでない以上、その「開口用貫通穴」が上記1F)ないし1I)の構成を有するというその余の上記相違点Aの構成要件についても、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件訂正発明1における相違点Aは、引用発明4及び甲6技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
(エ)無効理由4-1-3のまとめ
本件訂正発明1は、上記相違点2及び3を検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 無効理由4-1のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(4)無効理由4-2(本件訂正発明2)について
ア 本件訂正発明2は、本件訂正発明1に対し、上記「第3 本件訂正発明」の【請求項2】で記載している「2A)」と「2B)」の構成要件を付加したものである。
そうすると、甲第2号証に記載された発明(引用発明2の1)とは、少なくとも上記(3)ア(イ)<相違点>で記載した点で相違し、その相違点に対する判断は、上記(3)ア(ウ)に記載したとおりである。
よって、本件訂正発明2は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 無効理由4-2のまとめ
したがって、本件訂正発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(5)無効理由4-3(本件訂正発明3)について
ア 対比
本件訂正発明3と引用発明2の2とを対比する。
(ア)本件訂正発明3の3A) の特定事項について
a 引用発明2の2の「固体電解質体」、「一対の電極」及び「配置される」ことは、それぞれ、本件訂正発明3の「固体電解質シート」、「一対の電極」及び「設け」ることに相当する。
b 引用発明2の2において、「固体電解質体の板面上に」「一対の電極」が「配置される」のであれば、それらの配置が互いに対向する位置となることは、技術常識を参酌すれば、当業者にとって明らかである。
c 引用発明2の2の「ガスセンサ素子の製造方法」は、本件訂正発明3の「ガスセンサ素子を製造する方法」に相当する。
d よって、引用発明2の2の「固体電解質体の板面上に配置される一対の電極と、を備えるガスセンサ素子の製造方法」は、本件訂正発明3の「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法」に相当する。
(イ)本件訂正発明3の3B) の特定事項について
a 引用発明2の2において、「アルミナ粉末97質量%の第1原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第1スラリー」は、電気絶縁性を有するアルミナ材料であるといえるから、引用発明2の2の「第1スラリーを用いて」形成される「未焼成絶縁部用シート117」に「貫通孔433を貫設して」作成される「未焼成絶縁部材405」は、電気絶縁性を有するアルミナ材料で形成されるシート体である。
b 引用発明2の2の「貫通孔433」は、「未焼成固体電解質体435」が「挿入」されるものであるから、本件訂正発明3の「充填用貫通穴」に相当する。
c してみると、引用発明2の2の「貫通孔433」が「貫設」された「未焼成絶縁部材405」は、本件訂正発明3の「充填用貫通穴を有するアルミナシート」に相当する。
d よって、引用発明2の2の「第1スラリーを用いて、加工焼成後に絶縁部材405となる未焼成絶縁部用シート117」を形成し、「パンチ型307を下降させて未焼成絶縁部用シート117に貫通孔433を貫設して未焼成絶縁部材405を作成」することは、本件訂正発明3の「電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて、充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成」することに相当する。
(ウ)本件訂正発明3の3C) の特定事項について
a 引用発明2の2において、「ジルコニア粉末97質量%の第3原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第3スラリー」は、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料であるといえるから、引用発明2の2の「第3スラリーを用いて」形成される「加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成固体電解質体用シート113」から「繰り抜」かれた「未焼成固体電解質体435」は、酸素イオン導電性を有するジルコニア材料で形成されるシート体である。
b 引用発明2の2において、「未焼成絶縁部用シート117に貫通孔433を貫設して未焼成絶縁部材405を作成」する際に用いる「パンチ型307」と、「未焼成固体電解質体用シート113から未焼成固体電解質体435を繰り抜く」際に用いる「パンチ型307」とは、同一の「パンチ型307」であるから、「未焼成固体電解質体435」の形状は「貫通孔433」の形状に沿った形状であるといえる。
c してみると、引用発明2の2の「未焼成固体電解質体用シート113から」「繰り抜」かれた「未焼成固体電解質体435」は、本件訂正発明3の「上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシート」に相当する。 d よって、引用発明2の2の「第3スラリーを用いて、加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成固体電解質体用シート113を形成し、」「パンチ型307を下降させ、未焼成固体電解質体用シート113から未焼成固体電解質体435を繰り抜くとともに、未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入」することは、本件訂正発明3の「酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり、上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを、上記充填用貫通穴内に配置」することに相当する。
(エ)本件訂正発明3の3D) の特定事項について
a 引用発明2の2の「未焼成固体電解質体435」は、上記したように、本件訂正発明3の「ジルコニアシート」に相当し、引用発明2の2の「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406」は、本件訂正発明3の「電極」に相当し、さらに引用発明2の2の「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406」を「スクリーン印刷法により形成」することは、本件訂正発明3の「電極を配置」することに相当する。
b よって、引用発明2の2の「未焼成固体電解質体435」「の上に、」「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406を」「スクリーン印刷法により形成」することは、本件訂正発明3の「上記ジルコニアシートの両表面に電極を配置」することに相当する。
(オ)本件訂正発明3の3E) ないし3H) の特定事項について
引用発明2の2は、本件訂正発明3の3E) ないし3H) の特定事項を具備していない。
(カ)本件訂正発明3の3I) の特定事項について
a 引用発明2の2における「未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入」し、その後、「未焼成固体電解質体435」「の上に、」「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406を」「スクリーン印刷法により形成」したものは、「未焼成絶縁部材405」に、「未焼成固体電解質体435」、「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406」のそれぞれが配置されたシート体といえる。
b よって、引用発明2の2における「未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入し」、「未焼成固体電解質体435」「の上に、」「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406を」「スクリーン印刷法により形成」することは、本件訂正発明3における「上記配置によりシート体を形成」することに相当する。
(キ)本件訂正発明3の3J) の特定事項について
引用発明2の2は、本件訂正発明3の3J) の特定事項を具備していない。
(ク)本件訂正発明3の3K) の特定事項について
a 引用発明2の2の「前焼成を実施した後、さらに本焼成」することは、本件訂正発明3の「焼成すること」に相当する。
b よって、引用発明2の2の「未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入し」、「未焼成固体電解質体435」「の上に、」「未焼成第1電極404および未焼成第2電極406を」「スクリーン印刷法により形成」されたものを「前焼成を実施した後、さらに本焼成」することは、本件訂正発明3の「該シート体」「を焼成すること」に相当する。
イ 一致点・相違点
本件訂正発明2と引用発明2の2とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。なお、以下の一致点及び相違点の認定には請求人及び被請求人とも争いはない。
<一致点>
「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において、
電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて、充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し、
酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり、上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを、上記充填用貫通穴内に配置し、
上記ジルコニアシートの両表面に電極を配置し、
上記配置によりシート体を形成し、
該シート体を焼成する
ガスセンサの製造方法。」
<相違点>
(相違点2)本件訂正発明3は、
「3E) 上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に開口用貫通穴が重なる状態で、上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して、
3F) 該開口用貫通穴は、上記充填用貫通穴よりも小さく、上記ジルコニアシートにおける上記電極よりも大きな形状に形成し、
3G) 上記開口用貫通穴の周縁部は、上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なって、上記表面アルミナ層によって、上記ジルコニアシートが上記充填用貫通穴から抜け出るのを防止し、
3H) 上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面を露出させ」るように構成されたものであるのに対して、
引用発明2の2は、そのような構成とされていない点。
(相違点3)本件訂正発明3は、製造されるガスセンサ素子が、
「3J) 2枚の上記シート体を、電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層して、上記スペーサによって、上記2枚のシート体における上記ジルコニアシートに対応する位置に、チャンバーを形成し、3K) 該シート体及び上記スペーサを焼成する」ものであるのに対して、
引用発明2の2は、その点が不明である点。
ウ 相違点に関する判断
相違点2について検討する。
(ア)本件訂正発明3は、上記「第3 本件訂正発明」の【請求項2】及び【請求項3】で記載されているとおり、実質的に本件訂正発明2に係るガスセンサ素子を焼成により製造する方法に係る発明であるといえ、その本件訂正発明2が引用する本件訂正発明1が備える構成要件1I)「上記ジルコニア充填部に設けた上記電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニア充填部の表面を露出させる」に対応する構成要件3H)「上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面を露出させ」る構成のガスセンサ素子の製造方法の発明である。
(イ)上記(3)ア(ウ)(g)において説示したとおり、構成要件1I)に係る構成は、引用発明2の1及び甲3技術1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではなく、また、引用発明2の2は、実質的に引用発明2の1に係るガスセンサ素子を焼成により製造する方法に係る発明にすぎないから、構成要件1I)に対応する構成要件3H)についても、引用発明2の2及び甲3技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
(ウ)小括
よって、上記相違点2のうち、構成要件3H)の「上記ジルコニアシートに設けた電極と上記開口用貫通穴との隙間から、上記ジルコニアシートの表面を露出させ」る構成は、引用発明2の2及び甲3技術1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえないことから、その余の3E)ないし3G)の構成要件について検討するまでもなく、本件訂正発明3における相違点2は、引用発明2の2及び甲3技術1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
エ 無効理由4-3のまとめ
本件訂正発明3は、上記相違点3を検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
以上のとおり、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(6)無効理由4のまとめ
本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された技術、甲第4号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術のいずれに基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないことから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできず、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
本件訂正発明2及び3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないことから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできず、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正に係る訂正は認められ、本件特許第5104744号の訂正後の請求項1ないし3に係る発明の特許は、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2014-800031