特許無効審判
2018-800049
体液用センサーアッセンブリ
- 審判番号
- 2018-800049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2013-059818
- 登録番号
- 特許第5538587号(P5538587)
- 請求日
- 2018年04月27日
- 審決日
- 2019年10月23日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】寺本 光生
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人代理人】田部 元史
- 【請求人代理人】後藤 学
- 【請求人代理人】黒田 晋平
- 【請求人代理人】光末 竜太
- 【被請求人】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
- 【被請求人代理人】小林 浩
- 【被請求人代理人】杉山 共永
- 【被請求人代理人】黒川 恵
- 【被請求人代理人】藤 拓也
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 三木 隆
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1113.113-ZDA(G01N) / P1113.121-ZDA(G01N) / P1113.537-ZDA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第5項、特許法第36条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5538587号発明「体液用センサーアッセンブリ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5538587号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明特許請求のとおり、訂正後の請求項1、〔2-8〕、9、10について訂正することを認める。
特許第5538587号の請求項1、9、10に係る発明についての特許を無効とする。
特許第5538587号の請求項2ないし8に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その10分の7を請求人の負担とし、10分の3を被請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5538587号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2008年(平成20年)4月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年4月27日、欧州特許庁)を国際出願日とする特願2010-504451号の一部を平成25年3月22日に新たな特許出願(特願2013-59818号)としたものであって、平成26年5月9日にその特許権の設定登録がなされた。その特許についての、無効審判の請求についての経緯は、次のとおりである。
平成30年 4月27日 本件無効審判請求(無効2018-80004 9号)
同年 6月 4日 請求人:手続補正書(方式)提出
同年10月 1日 被請求人:答弁書提出
同年11月 8日 審理事項通知書
同年12月28日 請求人:口頭審理陳述要領書提出
同日 被請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成31年 1月18日 口頭審理
同年 2月27日 審決の予告
令和 元年 6月 3日 被請求人:訂正請求書、上申書提出
同年 8月13日 請求人:弁駁書提出
同年 9月13日 補正拒否の決定
(上記補正拒否の決定は、弁駁書により下記第4で記載する無効理由4及び5を追加することについて、訂正請求により生じたものと認められることから、請求の理由の補正を認める旨の決定をしたものである。そして、下記第6の3及び4で述べるように、当該無効理由4及び5については、理由がないと判断されることから、被請求人に無効理由4及び5についての答弁あるいは訂正請求をする機会を与えなかった。)
第2 訂正請求について
被請求人は、特許5538587号の特許請求の範囲を、令和元年6月3日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めており、その内容は以下のとおりである。
なお、下線は訂正箇所を示す。
1 訂正請求の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「スペーサと、を備えており、」とある後に、
「前記検体センサーの少なくとも1つは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーであるセンサーアッセンブリであって、」
を追加する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、センサーアッセンブリ。」とあるのを、
「少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有し、
前記スペーサが、長さ20~60mm、幅5~20mm、厚さ0.2~0.6mmの寸法を有するか、前記スペーサの切り抜き溝が、長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している、センサーアッセンブリ。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9を、
「第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、少なくとも実質的にハウジング内に封入されているセンサーアッセンブリであって、
記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いているセンサーアッセンブリ。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10を、
「第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、センサーアッセンブリであって、
前記検体センサーは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定する血液パラメータセンサーである、センサーアッセンブリ。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2を、
「第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、センサーアッセンブリであって、
前記第1基板の前記電気接点は、前記第1基板の前記第2面に配置されており、前記第2基板の前記電気接点は、前記第2基板の前記第1面に配置されている、センサーアッセンブリ。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6乃至8が従属する請求項について、「請求項1から」とあるのを「請求項2から」に訂正する。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明特定事項である「検体センサー」に、「前記検体センサーの少なくとも1つは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーであるセンサーアッセンブリであって、」という検体センサーの測定項目に限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0015】の「或る好適な実施形態では、検体センサーは血液パラメータセンサーである。検体センサーは、望ましくは、以下のパラメータ、即ち、pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、ブドウ糖、乳酸塩、尿素、及びクレアチニン、の内の1つ又はそれ以上を測定するように構成されていてもよい。・・・」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第124条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明特定事項である「センサーアッセンブリ」の「スペーサ」または「スペーサの切り抜き溝」の寸法を、「前記スペーサが、長さ20~60mm、幅5~20mm、厚さ0.2~0.6mmの寸法を有するか、前記スペーサの切り抜き溝が、長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している」と限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、本件特許明細書等の段落【0026】の「・・・スペーサの寸法は、長さが20mmから60mm、幅が5mmから20mm、そして厚さが0.2mmから0.6mmの範囲内にあるのが望ましい。スペーサ内の溝は、長さが10mmから50mm、幅が1mmから5mm、そして深さが0.2mmから0.6mmの範囲内の寸法を有していてもよい。」との記載、段落【0048】の「スペーサの寸法は、長さが約20mmから60mm、幅が約5mmから20mm、そして厚さが約0.2mmから0.6mmの範囲内にある。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第124条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項9の「請求項1から8の何れかに記載のセンサーアッセンブリ。」について、請求項1のみを引用する記載とし、かつ、請求項1の記載を引用する請求項9の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項9の「センサーアッセンブリ」を「前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」センサーアッセンブリに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)「前記第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」センサーアッセンブリについて、本件特許明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は当審において付与したものである。
「【0022】
或る好適な実施形態では、第1基板の電気接点は、第1基板の第2面側に配置され、第2基板の電気接点は、第2基板の第1面側に配置されている。第2基板の広がりは、第1基板の広がりより幾分大きめであるのが望ましい。第2基板は、横方向又は縦方向の広がりが第1基板より大きくてもよい。或いは、第2基板は、横方向と縦方向共に、広がりが第1基板より大きくてもよい。縦方向及び横方向は、測定用セルの流れ方向に関して定義される。これにより、センサーアッセンブリを組み立て、センサー要素が測定用セルに相対するように基板を配置した時、第2基板の第1面の一部は、第1基板の境界を超えて張り出している。第2基板の電気接点は、第1面のこの張り出した部分に配置されており、第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は、而して、この実施形態によれば、同じ方向を向いている。その結果、同じ方向に向いた十分な数の対応する電気接点を備えている単一の接触ユニットを使用して、第1基板と第2基板の電気接点のそれぞれに対する接触を得ることが可能になる。これにより、分析器への接続の設計を著しく単純化することができ、従って、これは非常に好都合な解決策であると考えられる。」
「【0049】
検体センサー6のそれぞれは、関係付けられた電気接点5cに接続されている。電気接点5cは、適した配線を介して分析器に接続されていてもよい。これにより、検体センサー6によって行われた測定に関する情報が、関係付けられた電子接点5cを介して分析器に伝達されると、分析器は、次いで、測定値の必要な分析を行うことができる。第1基板2の電気接点5cと第2基板3の電気接点5cは、同じ方向を向いているので、同じ側から電気接点5cのそれぞれにアクセスすることができ、これにより分析器への接続、而して、測定情報の伝達がやり易くなる。」
上記下線部の記載から、本件特許明細書等には、センサーアッセンブリの第1基板の電気接点と第2基板の電気接点を同じ方向に向けることで、同じ側から電気接点のそれぞれにアクセスすることができ、分析器への接続をやり易くするとの技術的事項が記載されており、訂正事項3の「前記第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」は、当該技術的事項と実質的に相違しないものである。
そうすると、訂正事項3の「前記第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」センサーアッセンブリは本件特許明細書等の記載に基づくものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第124条第5項に適合するものである。
(イ)請求人の主張について
a 請求人の主張
請求人は、令和元年8月13日に提出の弁駁書の4頁15行~6頁24行で、以下のように主張している。
請求項9において訂正事項3として付加された「前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」との記載における「同じ方向」について、いかなる方向であるか特定されていないことから、同じ「方向」下記参考図1のX方向、Y方向、Z方向またはX方向、Y方向及びZ方向のうち何れか2つもしくは全ての方向成分を有する中間方向等の方向を含む態様となっている。
それに対し、本件特許明細書等には、段落【0022】の「或る好適な実施形態では、第1基板の電気接点は、第1基板の第2面側に配置され、第2基板の電気接点は、第2基板の第1面側に配置されている。・・・第2基板の電気接点は、第1面鋸の張り出した部分に配置されており、第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は、而して、この実施形態によれば、同じ方向を向いている。」、段落【0049】の「第1基板2の電気接点5cと第2基板3の電気接点5cは、同じ方向を向いている」という記載、【図1】及び【図2】(ここでは、請求人が加筆した図面として,以下の参考図1を示す。)の記載から、具体的にはZ方向のみ記載されている。
よって、「同じ方向」が下記の参考図1のZ方向に限定されていない点で、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載されていない構成を請求項9に付加するものであり、新規事項であるため、特許法第134条の2第9項の準用する特許法第126条第5項に違反する。
b 当審の反論
しかしながら、本件特許明細書等には、センサーアッセンブリの第1基板の電気接点と第2基板の電気接点を同じ方向に向けることで、同じ側から電気接点のそれぞれにアクセスすることができ、分析器への接続をやり易くするという技術的事項が記載されており、下記参考図1のZ方向だけでなく、その他の方向においても、分析器等が同じ方向から電気接点のそれぞれにアクセスすることができ、これにより分析器などへの接続がやりやすくなるものであるから、下記参考図1のZ方向以外の方向をも含んでいることをもってして、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとまではいえない。
「
(参考図1)本件特許の図1(X方向、Y方向、Z方向は請求人が付加)」
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項10の「請求項1から9の何れかに記載のセンサーアッセンブリ」について、請求項1のみを引用する記載とし、かつ、請求項1の記載を引用する請求項10の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項10の「検体センサー」に、「前記検体センサーの少なくとも1つは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーであるセンサーアッセンブリであって、」という検体センサーの測定項目に限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものである。
イ 新規事項の有無
上記(1)訂正事項1のイで述べたとおり、「前記検体センサーの少なくとも1つは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーであるセンサーアッセンブリであって、」は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第124条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項2の「請求項1に記載のセンサーアッセンブリ」について、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第124条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6乃至8が従属する請求項について、「請求項1から」とあるのを「請求項2から」に訂正するものであり、請求項1との従属関係を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無
訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第124条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(7)一群の請求項について
本件訂正は、訂正前の一群の請求項で或る請求項1~8についてされたものであるから、訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求されたものであり、特許法第134条の2第3項の規定を満たすものである。そして、訂正請求書において、「訂正後の請求項1、9、10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項に係る請求項2~8の請求とは別途訂正することを求める」と記載されており、訂正後の請求項1、9及び10についての訂正は上記(1)~(4)で述べたとおり、何れも認められることから訂正後は請求項1、〔2~8〕、9、10となる。
3 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第3項の規定に適合し、同条第1項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項により準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるので、訂正後の請求項1、〔2~8〕、9、10についての訂正を認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
センサーアッセンブリにおいて、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記検体センサーの少なくとも1つは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーであるセンサーアッセンブリであって、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有し、
前記スペーサが、長さ20~60mm、幅5~20mm、厚さ0.2~0.6mmの寸法を有するか、前記スペーサの切り抜き溝が、長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している、センサーアッセンブリ。
【請求項2】
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、センサーアッセンブリであって、
前記第1基板の前記電気接点は、前記第1基板の前記第2面に配置されており、前記第2基板の前記電気接点は、前記第2基板の前記第1面に配置されている、センサーアッセンブリ。
【請求項3】
前記第2基板の前記検体センサーと前記接点は、前記センサーから前記基板を通って前記第2面へと伸び、そして前記第2面から前記基板を通って前記接点まで伸びている配線を介して接続されている、請求項2に記載のセンサーアッセンブリ。
【請求項4】
前記第2基板の一部は、前記第1基板を超えて張り出している、請求項2又は3の何れかに記載のセンサーアッセンブリ。
【請求項5】
前記第2基板の前記電気接点は、前記張り出し部分に配置されている、請求項4に記載のセンサーアッセンブリ。
【請求項6】
前記基板の内の少なくとも一方は、セラミック材料で作られている、請求項2から5の何れかに記載のセンサーアッセンブリ。
【請求項7】
前記測定用セルは、入口ポートと出口ポートを有しており、前記両ポートは、前記第1基板に形成されている、請求項2から6の何れかに記載のセンサーアッセンブリ。
【請求項8】
前記測定用セルは、入口ポートと出口ポートを有しており、前記両ポートは、前記第2基板に形成されている、請求項2から6の何れかに記載のセンサーアッセンブリ。
【請求項9】
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、少なくとも実質的にハウジング内に封入されているセンサーアッセンブリであって、
前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いているセンサーアッセンブリ。
【請求項10】
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している、センサーアッセンブリであって、
前記検体センサーは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定する血液パラメータセンサーである、センサーアッセンブリ。
第4 無効理由に関する当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張
審判請求の趣旨は、本件特許発明1ないし10に係る特許を無効とし、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めるものである。
請求人は、審判請求書、手続補正書及び口頭審理(第1回口頭審理調書(以下「調書」という。)参照)によれば、以下の無効の理由により、本件特許発明1ないし10に係る特許は無効とすべきものであると主張し、証拠として甲第1ないし6号証を提出している。また、請求人は、口頭審理陳述要領書において参考資料1及び2(調書参照)を添付している。
(1)無効理由1(特許法第29条第1項違反)
本件特許発明1、7及び8は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(特許法第29条第2項違反)
本件特許発明1ないし10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(特許法第36条第6項第2号違反)
本件特許発明1の「前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」との特定事項について、「実質的に直線的な運動を行えるようにする形状」がいかなる形状を指すかが明確でないことから、本件特許発明1及びそれを引用する本件特許発明2ないし10の記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願にされたものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4(特許法第36条第6項第2号違反)
本件訂正発明9の「前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」との特定事項における「同じ方向」はいかなる方向であるか特定されておらず、各基板の電気接点がどのように配置されているのか明確でないことから、本件訂正発明9の記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願にされたものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(5)無効理由5(特許法第36条第6項第1号違反)
本件訂正発明9の「前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」における「同じ方向」について、いかなる方向であるか特定されていないことから、同じ「方向」として上記第3 2(3)イ(イ)の参考図1のX方向、Y方向、Z方向またはX方向、Y方向及びZ方向の内何れ2つもしくは全ての方向成分を有する中間方向等の方向を含む態様となっている。
それに対し、本件特許明細書等には、段落【0022】の「或る好適な実施形態では、第1基板の電気接点は、第1基板の第2面側に配置され、第2基板の電気接点は、第2基板の第1面側に配置されている。・・・第2基板の電気接点は、第1面鋸の張り出した部分に配置されており、第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は、而して、この実施形態によれば、同じ方向を向いている。」、段落【0049】の「第1基板2の電気接点5cと第2基板3の電気接点5cは、同じ方向を向いている」という記載、【図1】及び【図2】(上記第3 2(3)イ(ア)で摘記した参考図1参照)の記載から、具体的にはZ方向のみ記載されている。
よって、「同じ方向」が上記第3 2(3)イ(イ)の参考図1のZ方向に限定されていない点で訂正発明9は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願にされたものであることから、その特許は同法第124条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
2 請求人が提出した証拠方法
請求人は、以下の甲号証を書証として提出している。
甲第1号証:Joseph Wang, Gary D. Rayson, Ziling Lu, and Hui Wu, Anal. Chem. 1990, 62, 1924-1927, “Coated Amperometric Electrode Arrays for Multicomponent Analysis”
甲第2号証:特表2006-517652号公報
甲第3号証:特表平9-509485号公報
甲第4号証:米国特許第5916425号明細書
甲第5号証:特表2004-506178号公報
甲第6号証:特開2001-183291号公報
参考資料1:Bioanalytical Systems社のウェブサイトに掲載されたModel MF 1000の製品紹介ページ(https://www.basinc.com/products/387)の写し
参考資料2:Bioanalytical Systems社のウェブサイトに掲載されたMF 1000を用いたフローセルの一例を示したページ(https://www.basinc.com/manuals/LC_epsilon/Installation/Flowcell/flowcell#types)の写し
3 被請求人の主張
答弁の趣旨は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるものである。
被請求人は、答弁書及び口頭審理陳述要領において、上記無効理由1ないし3はいずれも理由がないものと主張し、答弁書の添付物件として以下の乙号証を書証として提出している。
乙1号証:広辞苑第七版1916頁 編者:新村出 発行所:株式会社岩波書店
乙2号証:広辞苑第七版1653頁 編者:新村出 発行所:株式会社岩波書店
乙3号証:広辞苑第七版2812頁 編者:新村出 発行所:株式会社岩波書店
乙4号証:G.Sittampalam and G.S.Wilson“Surface-Modified Electrochemical Detector for Liquid Chromatography”Anal. Chem. Vol.55 No.9、1983年8月、pp.1608-1610
乙5号証:広辞苑第七版1590頁 編者:新村出 発行所:株式会社岩波書店
乙6号証:広辞苑第七版2897頁 編者:新村出 発行所:株式会社岩波書店
第5 証拠の内容について
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付与したものである。
(甲1ア)「This paper describes a sensor array of several amperometric electrodes, each coated with a different permselective film. Coatings with different transport properties, based on size (cellulose acetate), charge (Nation, poly(vinylpyrldlne), poly(ester sulfonic acid)), and polarity (phospholipid) are employed In connection with a four-electrode thin-layer flow detector. With equipotentlal operation, the array's response pattern of each analyte provides a unique characterization of the individual components. Multicomponent analysis is obtained by taking advantage of the partial selectivity of the Individual sensors and using a pattern recognition (multiple linear regression) method. Additional Information is obtained by recording the complete hydrodynamic voltammogram at the individual sensors. The merits of the new array are illustrated for the quantification of neurologically significant catechol compounds.」
(訳:本論文では、それぞれが異なる選択透過性膜で被覆された、いくつかの電流測定電極からなるセンサアレイについて記述する。サイズ(アセチルセルロース)、電荷(ナフロン、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(エステルスルホン酸))、および極性(リン脂質)に基づいて異なる輸送特性を持つ被覆が、4電極薄層流量検出器と結び付けて使用される。等電位動作では、各分析物のアレイの応答パターンにより、個々の成分について独特な特性評価が行われる。多成分分析が、個々のセンサの部分的選択性を利用すること、およびパターン認識(多重線形回帰)法を用いることによって得られる。付加情報が、個々のセンサにおいて完全な流体力学ボルタモグラムを記録することによって得られる。新規アレイの利点が、神経学的に重要なカテコール化合物の定量化に関して示される。)
(甲1イ)「EXPERIMENTAL SECTION
Apparatus. The four-electrode thin-layer flow cell is shown in Figure 1. The body consisted of two dual electrode (glassy carbon) half cells (Model MF1000, Bioanalytical Systems (BAS)). One of the blocks was drilled to accept the solution inlet and outlet tubings. The two blocks were separated by two Teflon gaskets (TG-15M, BAS). The Ag/AgCl (3 M NaCl) reference electrode and stainless steel auxiliary electrode were positioned downstream in the conventional manner. The flow injection system was described previously (2); a 20-μL sample loop was used. The electrodes were connected to an IBM instruments Model EC 220 voltammetric analyzer, the output of which was displayed on a Houston Omniscribe strip-chart recorder. The flow injection response of each electrode was recorded sequentially.」
(訳:実験セクション
装置。図1に4電極薄層フローセルが示されている。その本体は、2つの二電極(ガラス状炭素)半セル(モデルMF1000、Bioanalytical Systems(BAS))で構成された。ブロックのうちの1つに、溶液入口および出口配管を受け入れるための孔がドリルであけられた。2つのブロックが、2つのテフロンガスケット(TG-15M、BAS)によって分離された。Ag/AgCl(3M NaCl)参照電極およびステンレス鋼補助電極が、従来方式で下流に置かれた。フローインジェクションシステムについては以前に記述されていたが(2)、20μL試料ループが使用された。電極がIBM計測器Model EC 220ボルタメトリ分析器に接続され、その出力がHouston Omniscribeの記録紙レコーダに表示された。各電極のフローインジェクション応答が順次記録された。)
(甲1ウ)Figure1には、4電極薄層フローセルとして以下の図面が記載されている。
(訳:図1 薄層フローセルの拡大図:(A、B)溶液入口および出口;(C1~C4)作用電極;(D1、D2)スペーサ)
(甲1エ)「Procedure. Flow injection analysis, with equipotential operation and flow rate of 1.0 mL/min, was used for demonstrating the merits of the arrays. Working potentials (in the plateau regions) were applied sequentially at the individual electrodes. Some experiments were performed by recording the complete hydrodynamic voltammograms at the individual sensors.」
(訳:手順。フローインジェクション分析が、等電位動作および1.0mL/分の流量によって、アレイの利点を実証するために用いられた。動作電位(プラトー領域における)が順次、個々の電極に加えられた。一部の実験は、個々のセンサにおいて完全な流体力学ボルタモグラムを記録することによって行われた。)
(甲1オ)「While the concept is presented within the framework of biomedical (neurochemical) applications, similar amperometric-electrode arrays could be beneficially employed for environmental monitoring or industrial process control.」
(訳:この概念は生物医学(神経化学)用途の枠組み内で提示されたが、同様の電流測定-電極アレイが、環境監視または工業プロセス管理のために有益に使用され得る。)
(2)甲1に記載された発明
ア(甲1ウ)で摘記したFigure1から、以下の事項が見て取れる。
(ア)全体構成
作用電極C1及び作用電極C2を有する「C1C2側ブロック」、作用電極C3及び作用電極C4を有する「C3C4側ブロック」、切り抜き空間を有する「D1スペーサ」及び「D2スペーサ」があり、Figure1は、「C1C2側ブロック」、「C3C4側ブロック」、「D1スペーサ」及び「D2スペーサ」を離して分かりやすく記載されたものであるが、薄層フローセルとしては、「C1C2側ブロック」、「D2スペーサ」、「D1スペーサ」及び「C3C4側ブロック」は、この順で層状構造に配置される。
(イ)セル
「C1C2側ブロック」の「D2スペーサ」側の面が、「D2スペーサ」の切り抜き空間の「C1C2側ブロック」側の開口部分を閉じ、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ」側の面が、「D1スペーサ」の切り抜き空間の「C3C4側ブロック」側の開口部分を閉じることでセルを形成する。
(ウ)作用電極
Figure1において作用電極C1及び作用電極C2、作用電極C3及び作用電極C4と記載されている作用電極は、円柱部分とそれに接続している線部分があり、円柱部分が溶液と接する部分であり、線部分がボルタメトリ分析器に接続されることになるから、円柱部分が「作用電極C1~4」、線部分が「配線」となる。
そして、円柱部分である「作用電極C1」及び「作用電極C2」は、上記セルに相対するように「C1C2側ブロック」の「D2スペーサ」側の面にあり、それらに接続する「配線」は「D2スペーサ」側と反対側の面に出ている。同様に、円柱部分である「作用電極C3」及び「作用電極C4」は、上記セルに相対するように「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ」側の面にあり、それらに接続する「配線」は「D1スペーサ」側と反対側の面に出ている。
(エ)溶液の流れ
「C1C2側のブロック」には「溶液入り口A」及び「溶液出口B」があり、溶液は「溶液入り口A」から入り、上記セルを通り、「溶液出口B」から出て行く。
イ 甲1発明について
上記アを踏まえると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「多成分分析を行う4電極薄層フローセルであって、
作用電極C1及び作用電極C2を有するC1C2側ブロック、切り抜き空間を有す
るD2スペーサ、切り抜き空間を有するD1スペーサ、作用電極C3及び作用電極C4を有するC3C4側ブロックの順で層状構造に配置され、
C1C2側ブロックのD2スペーサ側の面が、D2スペーサの切り抜き空間のC1C2側ブロック側の開口部分を閉じ、C3C4側ブロックのD1スペーサ側の面が、D1スペーサの切り抜き空間のC3C4側ブロック側の開口部分を閉じることでセルを形成し、
作用電極C1及び作用電極C2は、上記セルに相対するようにC1C2側ブロックのD2スペーサ側の面にあり、それらに接続する配線はD2スペーサ側と反対側の面に出ており、作用電極C3及び作用電極C4は、上記セルに相対するようにC3C4側ブロックのD1スペーサ側の面にあり、それらに接続する配線はD1スペーサ側と反対側の面に出ており、
C1C2側ブロックには溶液入り口A及び溶液出口Bがあり、溶液は溶液入り口Aから入り、上記セルを通り、溶液出口Bから出て行くものであり、
そして、上記各配線はボルタメトリ分析器に接続され、各電極のフローインジェクション応答が記録される、
4電極薄層フローセル。」
2 甲第2号証について
(1)甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の記載がある。
(甲2ア)「【請求項15】
複数の生化学アッセイを実行する装置であって、
少なくとも1つの専用の作用電極、少なくとも1つの二役電極、及び少なくとも1つの対向電極を含んだ複数の電極であり、前記専用の作用電極及び二役電極の上にはアッセイ試薬が付着された複数の電極を備え、
前記二役電極は最初は作用電極として働き、次に対向電極として働くように構成された装置。
・・・
【請求項21】
前記複数の電極は単一の検出チャンバ内に配置されている請求項15に記載の装置。」
(甲2イ)「【0061】
図示のように、好適な一実施例は、好適には少なくとも1つの専用の対向電極135、1つの二役電極136、及び1つの専用の作用電極137有する電極アレイを使用するであろう。このような好適な構成は二役電極135が再利用され得るペアワイズ形態の発射スキーム(以下で詳細に説明する)を使用するであろう。図1bはカートリッジベースのデバイス150の検出部分の可能な一実施例をより詳細に示している。図示のように、2つの検出チャンバ155、156は各々、個々にアドレス可能な9本の電極の列157、158を含んでいる。検出チャンバ及び電極157、158への対応するリード線170、171を備えた2列の電気接点165、166に標本、試薬及び/又は洗浄溶液を導入する2つの流体入口ライン160、161が示されている。この好適な実施例では、流体検出(例えば、標本、試薬、洗浄液、緩衝液等)及び/又は流体識別(例えば、標本、試薬、洗浄液、緩衝液等及び/又は全血、血漿、粘液等の標本タイプの識別)において使用されてよい2列のインピーダンスセンサ172、173も示されている。
【0062】
図1cは好適な一実施例のアセンブリの略図であり、電極アレイ176を備えたカートリッジコンポーネント178のアセンブリを示している。一実施例によれば、(高きにはカーボンインクから成る)電極アレイ176は電極180、電気リード線181、及び電気接点182の部分を形成する基体層175に塗布される。誘電体層177を電極層上に塗布して、アッセイ領域190及びインピーダンスセンサ191を形成することが好ましい。別の場合には、電気接点182は基体の反対側に印刷され、基体を貫ける貫通孔を介して電極180又は電気リード線181に接続されてよい。カーボン層又は誘電体層のほか種々の別の材料を塗布する方法を以下により詳細に説明する。」
(甲2ウ)「【0142】
別の実施例では、標本チャンバ及び廃棄物チャンバは共に、第1及び第2の入口/出口導管を有する検出チャンバ(好適には、細長形の形状を有する検出チャンバであり、入口/出口導管はその細長形の寸法の両端において又はその近傍に配置される)の上流側に配置される。」
(甲2エ)「【0174】
検出チャンバは細長形寸法の対向する端部において又はその近傍に入口及び出口を有する細長形のフローセル設計に配置されることが好ましい。用途、製造方法、標本サイズ等に応じて、フローセルの寸法はナノメートル~数十センチメートルの範囲であってよく、体積はピコリットル~ミリリットルの範囲であってよい。ある好適な実施例は0.05mm~20mm、より好適には1~5mmに及び得る範囲の幅、及び0.01~20mm、より好適には0.05~0.2mmの範囲の高さ(好適には、所与の量に対しては、検出チャンバの底部の表面積を、特にこの表面を用いて結合試薬を固定化するときに増大させるように該幅以下)を有する。高さは幅以下であることが好ましい。検出チャンバは0.1~1000μL、より好適には1~200μL、さらに好適には2~50μL、もっとも好適には5~25μLの標本量を収容するように設計されることが好ましい。標本量(例えば、フィンガープリックの血液を測定するカートリッジ)によって制限される実施例では、特に好適な検出チャンバの容量は、10μL未満、より好適には0.5~10μL未満、さらに一層好適には2~6μL未満である。フローセルは高さ以上の幅を有することが好ましい。」
(甲2オ)「【0181】
本発明の好適な一実施例は「積層」プロセスを用いて製造されてよく、これによりカートリッジボディの機能表面はカバー層を用いて密閉されて流体ネットワークを形成する。例えば、本願明細書では「機能表面」呼ばれるものを提供する、カートリッジボディの1つ又は複数の表面の凹部(例えば、チャネル、溝、ウェル等)である。カバー層への機能表面の密閉/結合により、少なくともそのいくつかは一部はカートリッジボディの凹部によって、一部はカバー層の表面によって形成される流体コンポーネント(例えば、導管、チャンバ等)を含んだ流体ネットワークが形成される。」
(甲2カ)図1bとして、以下の図面が記載されている。
上記図面から、検出チャンバ155、156が細長い直線的なものであることが見て取れる。
(2)甲2に記載された技術的事項
上記(1)の摘記事項から、甲2には、以下の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されている。
検出チャンバに流れる流体をそれに配置されている複数の電極でアッセイする技術において、検出チャンバの形状が細長い直線的なものであることが記載されている。
3 甲第3号証について
(1)甲第3号証(以下「甲3」という。)には、次の記載がある。
(甲3ア)「【特許請求の範囲】
1.試験サンプル中のアナライトの存在または量を判定するための診断用フローセルであって、前記フローセルが、
(I)対向する第1及び第2の基板の間に配置され、長手方向切欠きを有し、前記対向基板との間でフローチャネルを形成するスペーシング層と、
(II)前記スペーシング層と前記対向基板とを結合させる締結手段と、
(III)前記サンプルを前記フローチャネルに流入させ得る流入口手段と、
(IV)前記サンプルを前記フローチャネルから流出させ得る流出口手段と、
(V)検出可能な信号を発生する固定化試薬手段とから構成されており、前記試薬手段が少なくとも部分的に前記フローチャネルに内蔵されていることを特徴とする診断用フローセル。
・・・
4.前記試薬手段が、参照電極と対極と作用電極とから成ることを特徴とする請求項1に記載のフローセル。」
(甲3イ)「II.フローセル
本発明は、対向する2つの基板層と、これらの2つの対向基板層の間に配置されたスペーシングまたはガスケット(gasket)層と、から成る診断用フローセルを目的とする。スペーシングまたはガスケット層は長手方向切欠きを有し、該切欠きは基板と共にフローセルのフローチャネルを形成する。」(8頁28行~9頁5行)
(甲3ウ)「本発明で提供されるフローセルの種々の構成層を対向基板に付加し、次いで基板をガスケット層に結合し、本文中に教示されたフローセルを形成する。フローセルの設計及びその製造方法などを理由として診断用フローセルは再使用可能であり、廉価に製造でき、完成形態または未完成形態で容易に保存でき、固定化試薬手段のパターン形成が可能であり、従来の技術に比較して機械加工部分の数が顕著に少ない。更に、試薬手段から発生する信号対雑音比が増加し、電磁干渉が減少する。
対向する基板は、該基板に付加される種々の物質を支持し得る化学的に不活性で物理的に耐久性の任意の不導性材料から製造され得る。このような材料の非限定例は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテルイミドのようなプラスチックフィルム、アクリル系、フェノール系、ポリオレフィンのようなプラスチック成形物、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)のようなセラミックス、ガラス、シリコンウェーハなどである。」(9頁21行~10頁5行)
(甲3エ)「VI.実施態様
多くの型のデバイスが本発明の範囲に包含されるが、特に好ましい実施態様を図面と共に以下に記載する。先ず図面を参照すると、図1は電気化学的フローセルの展開図である。図1は、電気化学的フローセルの一方の部分を形成するための、基板10と基板10に付加された複数の層とを示す。詳細には、基板10に付加され得る層は、レドックスカップル22と導電性トレース32とから成る参照電極と、作用電極の一部を形成する導電性トレース30と、マスク層40と、スペーシング層50と、接着層60とを含む。図1はまた、第2基板70と基板70に重層された対極80とから成る電気化学的フローセルの他方の半体を示す。電気化学的フローセルを形成する2枚の基板の結合を補助するために、対向する基板10及び70は、位置合わせ用開孔12及び14と72及び74とを備えており、マスク層40は位置合わせ用開孔42及び44を備えており、スペーシング層は位置合わせ用開孔52及び54を備えており、接着層は位置合わせ用開孔62及び64を備えており、対極は位置合わせ用開孔82及び84を備えている。
接着層60及びスペーシング層50は長手方向切欠き66及び56を有しており、これらは、接着層とスペーシング層とを基板10と70との間に挟持したときにフローセルのフローチャネルを部分的に形成する。基板70と対極層80とはポート用の開孔76及び78と、86及び88とを備えている。基板及び夫々の層を互いに組立てるかまたは結合させたとき、ポート用の開孔は長手方向切欠き56及び66の末端の近傍で位置合わせされ、フローチャネルの流入ポート及び流出ポートとして機能する。」(17頁9行~18頁2行)
(甲3オ)図1として、以下の図面が記載されている。
上記図面から、長手方向切欠き66及び56からなるフローチャネルが細長い直線的なもの、すなわち溝であることが見て取れる。
(甲3カ)図4として、以下の図面が記載されている。
上記図面から、フローチャネル320が細長い直線的なものであることが見て取れる。
(2)甲3に記載された技術的事項
上記(1)の摘記事項から、甲3には、以下の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されている。
フローチャネルに流れる試験サンプルをそれに内蔵されている複数の電極で検出する技術において、フローチャネルが細長い直線的なもの、すなわち溝であることが記載されいる。
4 甲第4号証について
(1)甲第4号証(以下「甲4」という。)には、次の記載がある。
(甲4ア)「This invention relates to systems for analyzing fluids, and more particularly to an apparatus for determining partial pressures of blood gasses, concentrations of electrolytes, and hematocrit value of a fluid sample, and to a method for fabricating such an apparatus.」(1欄6行~10行)
(訳:本発明は、流体を分析するためのシステムに関し、より詳細には、血液ガス分圧、電解質濃度、および流体試料のヘマトクリット値を決定するための装置と、このような装置を製作するための方法とに関する。)
(甲4イ)「For example, in one embodiment of the present invention, sensors for pCO2, pO2, pH, Na+, K+, Ca2+ and hematocrit value are all provided in a single relatively small sample chamber. 」(4欄63行~67行)
(訳:たとえば、本発明の一実施形態では、pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+およびヘマトクリット値のセンサがすべて、単一の比較的小さい試料チャンバ内に設けられる。)
(甲4ウ)「Overview
FIG. 2 is a front plan view of one embodiment of the sensor assembly 400 of the present invention. FIG. 3 is a back plan view of the sensor assembly 400 of the present invention shown in FIG. 2. The present invention is a sensor assembly 400 having a plurality of sensors 403, including highly pure, planar circular silver potentiometric and amperometric electrode sensors disposed on an inorganic substrate 405. The sensor assembly 400 is preferably enclosed within a housing which defines a flowcell into which an analyte is transferred for analysis by the sensors 403.」(6欄1行~12行)
(訳:概要
図2は、本発明のセンサアセンブリ400の一実施形態の表平面図である。図3は、図2に示された本発明のセンサアセンブリ400の裏平面図である。本発明品は、無機基板405上に配置された高純度の平坦な円形の銀の電位差測定センサおよび電流測定電極センサを含む、複数のセンサ403を有するセンサアセンブリ400である。センサアセンブリ400は、好ましくは、フローセルを画定するハウジング内に密閉され、このフローセルには、センサ403による分析のための分析物が伝達される。)
(甲4エ)「The substrate 405 of the preferred embodiment of the present invention is essentially impervious to aqueous electrolytes and blood over relatively long periods of time (i.e., more than six months in the case of one embodiment of the present invention). In accordance with the preferred embodiment of the present invention, the inorganic substrate 405 is a sheet of approximately 0.025 inch thick commercial grade 96% alumina (Al2O3). The substrate 405 is preferably stabilized by a heat treatment prior to purchase. One such substrate is available from Coors Ceramic Company, Grand Junction, Colo. Alternatively, the substrate may be any non-conductive essentially flat surface upon which the sensors may be deposited, as will be described in further detail below. For example, the substrate may be any silicon, glass, ceramic, wood product, non-conducting polymer or commercially available frit that can be used as a substantially smooth flat surface. However, the substrate preferably should be capable of withstanding the presence of an electrolyte having a pH of more than 6 to 9 and remaining essentially unaffected for an extended period of time (i.e., in the order of weeks).
Use of an alumina substrate provides the following advantages: (1) low thermal mass; (2) dimensional stability when subjected to aqueous electrolytes and blood for extended periods time; (3) establishes a mechanically and chemically stable substrate for use with thick film deposition techniques; (4) can be accurately laser drilled to high precision with very small diameter holes; (5) does not react with any of the materials which are used to fabricate sensors; and (6) very high electrical resistance. As a consequence of the fact that the assembly, including the inorganic substrate 405 and each deposited layer, is very stable and does not breakdown when subjected to aqueous electrolytes and blood, the sensor assembly 400 maintains very high isolation between (1) each of the sensors 403; (2) each of the sensors 403 and each electrical conductor; and (3) each of the electrical conductors.」(7欄15行~51行)
(訳:本発明の好ましい実施形態の基板405は、比較的長い期間(すなわち、本発明の一実施形態の場合では6カ月超)にわたって水性電解質および血液を本質的に浸透させない。本発明の好ましい実施形態によれば、無機基板405は、厚さ約0.025インチの市販グレードの96%アルミナ(Al2O3)のシートである。基板405は、好ましくは購入前に熱処理によって安定化される。1つのそのような基板は、Coors Ceramic Company, Grand Junction, Colo.から入手可能である。あるいは、基板は、以下でさらに詳細に説明するように、センサを上に堆積できる任意の非導電性の本質的に平坦な面とすることができる。たとえば、基板は、実質的に滑らかで平坦な面として使用できる、任意のシリコン、ガラス、セラミック、木製品、非導電ポリマーまたは市販のガラス材料とすることができる。しかし、基板は、好ましくは、pHが6を超え9までの電解質が存在することに耐えること、および長期間(すなわち数週間程度)本質的に影響を受けないままでいることができなければならない。
アルミナ基板を使用することにより以下の利点、すなわち、(1)低いサーマルマス、(2)水性電解質および血液に長期間曝されたときの寸法安定性、(3)厚膜堆積技法と共に使用するための機械的および化学的に安定した基板を確立する、(4)非常に小さい直径の孔に対し高い精度の正確なレーザ加工をすることができる、(5)センサを製作するために使用される材料のいずれとも反応しない、および(6)非常に高い電気抵抗、が得られる。無機基板405および各堆積層を含むアセンブリが、水性電解質および血液に曝されたときに非常に安定しており、かつ破壊されないことの結果として、センサアセンブリ400は、(1)センサ403のそれぞれの間、(2)センサ403のそれぞれと各導電体の間、および(3)導電体それぞれの間、に非常に高度の分離を維持する。)
(甲4オ)「In accordance with the sensor assembly 400 shown in FIGS. 2 and 3 the following sensors are provided: (1) sodium sensor 403h; (2) potassium sensor 403g; (3) calcium sensor 403f; (4) pH sensor 403e; (5) carbon dioxide sensor 403a; (6) oxygen sensor 403b; and (7) hematocrit value sensor 403c, 403d.」(8欄24行~29行)
「訳:図2および図3に示されたセンサアセンブリ400によれば、以下のセンサが設けられる。(1)ナトリウムセンサ403h、(2)カリウムセンサ403g、(3)カルシウムセンサ403f、(4)pHセンサe、(5)二酸化炭素センサ403a、(6)酸素センサ403b、および(7)ヘマトクリット値のセンサ403c、403d。)
(甲4カ)「FIG. 12 is a top plan view of the sensor assembly 400 installed within a preferably transparent or translucent plastic encasement 1200.
…
The front side of the sensor assembly 400 is enclosed in the plastic encasement 1200 which forms a flowcell 1201 and a reference cell 1203. A lap joint 1211 is preferably formed between the sensor assembly 400 and the encasement 1200. In accordance with the preferred embodiment of the present invention, an adhesive, such as epoxy glue, is used to secure the sensor assembly 400 in the encasement 1200. The encasement 1200 is formed with inlet and output ports 1202, 1204, respectively. The inlet and outlet ports 1202, 1204 allow a sample to be injected into, and discharged from, the flowcell 1201. The adhesive seals the reference cell 1203 and the flowcell 1201 along the lap joint, such that fluid can only enter and exit through the inlet and outlet ports 1202, 1204.
…
The flowcell 1201 is formed to ensure that a sample which enters the flowcell comes into contact with each of the sensors 403.」(20欄6行~65行)
(訳:図12は、好ましくは透明または半透明のプラスチックケース1200内に取り付けられたセンサアセンブリ400の上面図である。・・・センサアセンブリ400の表側は、フローセル1201および参照セル1203を形成するプラスチックケース1200に密封される。重ね継手1211が、好ましくはセンサアセンブリ400とケース1200の間に形成される。本発明の好ましい実施形態によれば、エポキシ接着剤などの接着剤が、センサアセンブリ400をケース1200の中に固定するのに使用される。ケース1200は、入口ポート1202および出口ポート1204を備えて形成される。入口ポート1202および出口ポート1204は、試料をフローセル1201に注入し、フローセル1201から排出することができるようにする。接着剤は、参照セル1203およびフローセル1201を、流体が入口ポート1202および出口ポート1204だけを通って出入りするように、重ね継手に沿って封止する。・・・フローセル1201は、フローセルに入る試料が確実にセンサ403のそれぞれと接触するように形成される。)
(甲4キ)図12として、以下の図面が記載されている。
上記図面から、フローセル1201が細長い直線的なものであることが見て取れる。
2)甲4に記載された技術的事項
上記(1)の摘記事項から、甲4には、以下の技術(以下「甲4技術」という。)が記載されている。
フローセルに流れる流体をそこにある複数の電極で分析する技術において、フローセルの形状が細長い直線的なものであることが記載されている。
5 甲第5号証について
(1)甲第5号証(以下「甲5」という。)には、次の記載がある。
(甲5ア)「【0027】
(発明の実施の形態)
図1はバイオセンサの分解組立図である。バイオセンサは評価装置に挿入されるように設計されており、評価装置のスリットに挿入されたときに電気的に接触される接点14を有した対応部分15を有している。このバイオセンサは、いずれも10μm~200μmの厚みを有するプラスチックシートからなる上側部分2および下側部分3によって構成されている。上側部分2と下側部分3との間には中間層5が設けられ上下部分を互い連結している。上側部分2には空気孔7が設けられている。この空気孔7の機能については後で説明する。上側部分2は、その中間層5側の表面に2つの電極10,11を有しているが、これらの電極は図解し易いように図1においては中間層5とは接しない側に示されている。下側部分2にも同様の電極8,9が設けられている。上側部分2および下側部分3は、電極10が電極8の真正面、電極9が電極11の真正面にくるように中間層5を上下部分間に含んでいる。」
(甲5イ)図1として、以下の図面が記載されている。
6 甲第6号証について
(1)甲第6号証(以下「甲6」という。)には、次の記載がある。
(甲6ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、励起ビーム及び測定ビームに対して少なくとも部分的に透明な、組み付け後には測定チャネルを作り出すベース部材とカバー部材とからなり、センサー領域に配置された蛍光センサー素子を備えた測定チャンバー、特には貫流測定チャンバーに関する。」
(甲6イ)「【0021】図1に示されている測定チャンバーは、1つの透明なベース部材1並びに1つの透明なカバー部材2があり、それらは組み付け後に1つの測定チャネル3を作り出す。測定チャンバーは、図1では断面図で示されているが、その断面は測定チャネル3に配置された蛍光センサー素子4を横断しており、測定チャネル3の軸に直角となっている。センサー素子4には、光源5から励起ビーム6が照射されるが、その際試料パラメーターに依存して放出される測定ビーム7が適切な検出器8に捉えられる。励起ビーム6並びに測定ビーム7の経路には、それぞれ励起フィルター9や測定フィルター10が配置されている。ベース部材1においてもカバー部材2においても、各々1つの長手方向スロット11が設けられているが、これらはこの2つの測定チャンバー部材1及び2の組み付け後に測定チャネル3を作り出す。測定チャネル容量を最適に利用する場合、ベース部材1の長手方向スロット及びカバー部材2の長手方向スロットにセンサー素子4が配置され、これらにはセンサー領域全体を被覆する連続的に延びた光学カバー層12が備えられている。これによって広範囲に均質な測定チャネル3の被覆が達成され、それによって測定チャネルがスムーズに充填されることも保証される。」
(甲6ウ)図1として、以下の図面が記載されている。
第6 無効理由について
1 無効理由1及び2について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)検体センサーについて
a 本件訂正発明1の「検体センサー」について、本件特許明細書には、
「【0021】
・・・これは、例えば、検体センサーが、2つ又はそれ以上の電極を備えている電気化学的センサーである場合である。この場合、センサーの電極それぞれを電気接点に接続してもよい。」と記載されている一方で、
「【0029】
センサーアッセンブリは、更に、少なくとも実質的に固定された基準電位をセンサーアッセンブリに提供するように作られた基準電極を備えていてもよい。この様な基準電極は、1つ又はそれ以上の検体センサーが、ただ1つの電極しか備えていない電気化学的センサーである場合に非常に有用であり、その様な場合、この電極の電位は、流体試料中の特定の物質の濃度に伴って変化し、検体センサーは、この濃度を測定することを目的とする。この場合、センサーによって測定される電位と基準電極によって提供される基準電位の間の差が測定値として使用されることになる。これにより、測定された電位のあらゆる考えられるオフセット値が測定値から取り除かれることになるので、測定値は、確実に、試料中の物質の実際の濃度を反映するものとなる。」
「【0040】
この説明文中、検体センサーという用語は、化学物質の濃度の様な物理的なパラメータを測定することのできるあらゆるセンサーを表す。検体センサーは、1つ又はそれ以上の電極と1つ又はそれ以上の膜を備えていてもよい。」
「【0055】
検体センサー6は、pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、Mg++、Ca++を測定するための検体センサーを備えており、追加の検体センサー、例えば、乳酸塩、クレアチニン、及び尿素を測定する検体センサーを、必要に応じ又は所望に応じて設けてもよい。FO2Hb、FCOHb,FMetHb、FHHb、及びFHbFなどのビリルビン及びヘモグロビン値の様なパラメータを、追加のモジュールで測定してもよい。
【0056】
図3は、第1ハウジング部分8aと第2ハウジング部分8bで形成された実質的に閉じられたハウジング8に封入されている図1のセンサーアッセンブリ1の分解組立図である。これにより、図3のセンサーアッセンブリ1を備えたハウジングは、更に取り扱いやすい特性を備えたユニットを形成している。
【0057】
更に、ハウジング8には、基準電極9と液体室10が封入されている。保管中、液体は、弁要素11のおかげで液体室10に閉じ込められているので、基準電極9は乾燥状態に保たれる。センサーアッセンブリ1を使用しようとする時に、弁要素11を操作して、液体が液体室10から基準電極9へ通れるようにする。このことを、下で図4と図5を参照しながら更に詳細に説明してゆく。」
「【0068】
このため、調整ユニット内のセンサーアッセンブリを分析器で使用しようとするその時に、センサーアッセンブリの検体センサーの調整工程を起動させる(上述の実施形態では、調整処理は、第2区画を第1区画に対して捻ることによって起動させたが、他の起動機構も可能である)。調整工程を起動させたら、調整ユニットを約2時間から24時間触れずに置いてから、箔及びシール用キャップを取り外し、センサーアッセンブリを分析器に入れ、そこで検体センサーと基準電極を、電気接点を介して分析器と接続する。調整ユニット内で調整を施すことができるおかげで、センサーアッセンブリは、分析器に入れられた時には、実質的に作動可能状態になっている。」と記載され、「検体センサー」という用語を、「基準電極」を含まない、1つの電極すなわち「作用電極」のみとして用いている。
してみれば、本件訂正発明1の「検体センサー」は、1つの電極すなわち「作用電極」のみからなるものを含んでいるといえる。
b そうすると、甲1発明における「作用電極C1」、「作用電極C2」、「作用電極C3」及び「作用電極C4」の各々は、本件訂正発明1の「検体センサー」に相当する。
(イ)第1電子配線基板について
a 甲1発明の「C1C2側ブロック」の「D2スペーサ側の面」及びそれ「と反対側の面」は、本件訂正発明1の「第1面」及び「第2面」に相当し、甲1発明の「D2スペーサ側の面に」ある「作用電極C1」及び「作用電極C2」は、上記(ア)を踏まえると、本件訂正発明1の「前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサー」に相当する。
そして、甲1発明の「作用電極C1及び作用電極C2」が「配線」「に接続する」ことは、接続箇所が電気接点といえることから、本件訂正発明1の「少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている」ことに相当する。
また、甲1発明の「C1C2側ブロック」には、「作用電極C1及び作用電極C2」「に接続」し「C1C2側ブロック」の「D2スペーサ側と反対側の面に出て」いる「配線」があることから、甲1発明の「C1C2側ブロック」は、本件訂正発明1の「電子配線基板」に相当する。
b してみれば、甲1発明の「作用電極C1及び作用電極C2」が「D2スペーサ側の面にあり、それらに接続する配線はD2スペーサ側と反対側の面に出て」いる「C1C2側ブロック」は、本件訂正発明1の「第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板」に相当する。
(ウ)第2電子配線基板について
a 甲1発明の「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側の面」及びそれ「と反対側の面」は、本件訂正発明1の「第1面」及び「第2面」に相当し、甲1発明の「D1スペーサ側の面に」ある「作用電極C3」及び「作用電極C4」は、上記(ア)を踏まえると、本件訂正発明1の「前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサー」に相当する。
そして、甲1発明の「作用電極C3及び作用電極C4」が「配線」「に接続する」ことは、接続箇所が電気接点といえることから、本件訂正発明1の「少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている」ことに相当する。
また、甲1発明の「C3C4側ブロック」には、「作用電極C3及び作用電極C4」「に接続」し「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側と反対側の面に出て」いる「配線」があることから、甲1発明の「C3C4側ブロック」は、本件訂正発明1の「電子配線基板」に相当する。
b してみれば、甲1発明の「作用電極C3及び作用電極C4」が「D1スペーサ側の面にあり、それらに接続する配線はD1スペーサ側と反対側の面に出て」いる「C3C4側ブロック」は、本件訂正発明1の「第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板」に相当する。
(エ)スペーサ及び測定用セルについて
a 上記第2の1(2)で記載したように、本件訂正発明1は「前記スペーサが、長さ20~60mm、幅5~20mm、厚さ0.2~0.6mmの寸法を有するか、前記スペーサの切り抜き溝が、長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している」との選択的記載を追加しているが、ここでは後者を選択することとする。
b 甲1発明の「層状構造に配置され」る「切り抜き空間を有するD1スペーサ」及び「切り抜き空間を有するD2スペーサ」は、本件訂正発明1の「スペーサ」に相当し、甲1発明の「D2スペーサの切り抜き空間のC1C2側ブロック側の開口部分」及び「D1スペーサの切り抜き空間のC3C4側ブロック側の開口部分」は、本件訂正発明1の「第1開口部及び第2開口部」に相当する。
してみれば、「D2スペーサの切り抜き空間のC1C2側ブロック側の開口部分」及び「D1スペーサの切り抜き空間のC3C4側ブロック側の開口部分」がある「層状構造に配置され」る「D2スペーサ」及び「D1スペーサ」が有する「切り抜き空間」と、本件訂正発明1の「第1開口部及び第2開口部を備えた」「長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している」「切り抜き溝を有しているスペーサ」とは、「第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き空間を有しているスペーサ」という点で共通する。
c 甲1発明の「作用電極C1及び作用電極C2を有するC1C2側ブロック、切り抜き空間を有するD2スペーサ、切り抜き空間を有するD1スペーサ、作用電極C3及び作用電極C4を有するC3C4側ブロックの順で層状構造に配置され」、「C1C2側ブロックのD2スペーサ側の面が、D2スペーサの切り抜き空間のC1C2側ブロック側の開口部分を閉じ、C3C4側ブロックのD1スペーサ側の面が、D1スペーサの切り抜き空間のC3C4側ブロック側の開口部分を閉じることで」「形成」される「セル」は、本件訂正発明1の「前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって」「形成」される「測定用セル」に相当する。
d 甲1発明の「C1C2側ブロックのD2スペーサ側の面にあ」る「作用電極C1及び作用電極C2は、上記セルに相対する」こと及び「C3C4側ブロックのD1スペーサ側の面にあ」る「作用電極C3及び作用電極C4は、上記セルに相対する」ことは、上記bのとおり「セル」が「C1C2側ブロックのD2スペーサ側の面が、D2スペーサの切り抜き空間のC1C2側ブロック側の開口部分を閉じ」「C3C4側ブロックのD1スペーサ側の面が、D1スペーサの切り抜き空間のC3C4側ブロック側の開口部分を閉じることで」「形成」されるものであることを踏まえると、本件訂正発明1の「前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対」することに相当する。
e 甲1発明の「溶液入り口Aから入り、上記セルを通り、溶液出口Bから出て行く」「溶液」は、本件訂正発明1の「前記測定用セルを通って流れる流体」に相当する。
そして、「溶液」は「セルを通」ることから「セル」において運動しているといえることから、甲1発明の「溶液入り口Aから入り」「溶液出口Bから出て行く」「溶液」が「通」る「セル」と、本件訂正発明1の「前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」「測定用セル」とは、「前記測定用セルを通って流れる流体が運動を行えるようにする形状を有している」「測定用セル」の点で共通する。
(オ)センサーアッセンブリについて
甲1発明の「4電極薄層フローセル」は、本件訂正発明1の「センサーアッセンブリ」に相当する。
イ 一致点・相違点について
本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「センサーアッセンブリにおいて、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第1電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第1電子配線基板と、
第1面及び第2面と、前記第1面上に形成されている少なくとも2つの検体センサーと、を有している第2電子配線基板であって、前記少なくとも2つの検体センサーは、電気接点と接続されている、第2電子配線基板と、
第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き空間を有しているスペーサと、を備えており、
前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって、測定用セルを形成し、該測定用セルでは、前記第1基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第1開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記第2基板の前記第1面上に形成されている前記検体センサーのすべてが前記スペーサの前記第2開口部を介して前記測定用セルに相対し、前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が運動を行えるようにする形状を有している、センサーアッセンブリ。」
<相違点1>
スペーサが有している切り抜き空間(前者)、第1基板、第2基板及び前記スペーサが層状構造に配置されることによって形成される測定用セルの形状(後者)が、
本件訂正発明1では、前者について「長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している」「溝」であり、後者について、流れる流体が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行えるようにする形状であるのに対し、
甲1発明では、前者について、D2スペーサ及びD1スペーサが有する切り抜き空間が「溝」とはいえず、後者について、溶液が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行えるようにする形状とは特定されていない点。
<相違点2>
検体センサーについて、本件訂正発明1では、検体センサーの少なくとも1つは、「pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーである」のに対して、甲1発明では、検体センサーがそのようなものであるとは特定されていない点。
ウ 各相違点についての判断
(ア)相違点1に関する判断
上記甲2技術の「検出チャンバ」、甲3技術の「フローチャネル」及び甲4技術の「フローセル」は、「測定用セル」に相当し、それらの形状が細長い直線的なものであることが記載されていることから、測定用セルに流れる流体を複数の電極で検出する技術において、その測定用セルの形状を溝などの細長い直線的なものとすることは本件優先日前周知技術であり、この溝などの細長い直線的なものは、そこを通って流れる流体が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行うものである。
してみれば、甲1発明は、セルに流れる溶液を複数の電極で検出する技術であり、上記周知技術に鑑み、その溶液が流れる「セル」を溝などの細長い直線的なものとする、すなわち、D2スペーサ及びD1スペーサが有する切り抜き空間を「溝」とし、C1C2側ブロック、D2スペーサ、D1スペーサ、C3C4側ブロックを順に層状構造に配置することによって形成されるセルの形状を、溶液が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行えるようにする形状とすることは当業者が容易になし得たことである。
なお、甲1のFigure.1には、空間として菱餅状のような形として描かれているが、そのような形にする理由が甲1には記載されておらず、そのような形に描いた技術的な特段の事情があるともいえないことから、甲1発明において「セル」を溝などの細長い直線的なものにすることに何ら阻害要因は認められない。
そして、電極を用いて生化学的な成分分析を行う装置において、そのフローセルの大きさは標本サイズ、標本量によって適宜設計されるものであり、例えば、上記電極を用いて生化学アッセイを行う装置が記載されている甲2の摘記(甲2エ)には、フローセルの寸法(標本が電極によって検出される場所、すなわち本件訂正発明1の「溝」部分の寸法に相当)として、幅0.05mm~20mm、高さ0.05~0.2mm、体積0.1~1000μLの範囲のものが例示されており、これは、本件訂正発明1の溝の大きさ程度であり、セルに流れる溶液を複数の電極で検出する技術の甲1発明において、上記切り抜き空間を「溝」とする際に、長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有する溝とすることは当業者において通常になし得る設計事項にすぎない。
(イ)相違点2に関する判断
甲1発明の「4電極薄層フローセル」は、「溶液」を「多成分分析」するものであり、(甲1オ)には「生物医学」の用途として用いられることが示されている。そして、上記(甲2イ)には複数の電極で複数の成分を分析する対象として「血液」が記載されており、さらに上記(甲4イ)及び(甲4オ)にも記載されているように、血液パラメータセンサーとしてpCO2、pO2、pHを測定するものは本願優先日前に周知であるから、甲1発明において、血液を多成分分析しようとして、4つの作用電極C1、C2、C3及びC4をpCO2、pO2、pHの1つまたはそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサとすることは、当業者が容易になし得たことである。
エ 効果について
本件特許明細書には「測定用セルは、測定用セルを通って流れる流体が、少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有していてもよい。この実施形態によれば、測定用セルには、曲がり部と折り返し箇所が全くないか又はその数が限定されているべきである。測定用セルに曲がり部と折り返し箇所が無いようにすることで、測定用セルの濯ぎと洗浄は著しくやり易くなり、気泡形成の危険性は小さくなる。」(【0020】)と記載されているが、流体が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行えるようにする形状の効果として、「濯ぎと洗浄は著しくやり易くなり、気泡形成の危険性は小さくなる」との効果は、当業者が予期し得る範囲のものである。
オ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、答弁書において、甲2について「よって、参照電極407が配置される参照セル1203からフローセル1201を切り離して周知技術ということはできない。」、甲3について「したがって、フローセルは、フローセルを通って流れる流体が、その流れる過程において複数の開口46内への上昇移動を伴わなければならず、流体が実質的に直線的な運動を行えるようにする形状とはなっていない。」、甲4について「よって、参照電極407が配置される参照セル1203からフローセル1201を切り離して周知技術ということはできない。」と主張しているが、本件訂正発明1の「測定用セルに相対」する「検体センサー」は、上記ア(ア)で述べたとおり、作用電極のみからなるものを含むものであり、この場合、本件訂正発明1の「測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」「測定用セル」は、作用電極が相対する部分のことであるから、上記甲2及び4についての主張は当を得ない。また、甲3について、開口46付近で開口46内への上昇移動は長手方向に向かう流体の流れに対してわずかなものであるから、フローチャネル部分においては、流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有しているといえることから、甲3についての主張は当を得ない。
してみれば、上記ウ(ア)において、甲2技術、甲3技術及び甲4技術を踏まえて、測定用セルの形状を溝などの細長い直線的なものとすることは本件優先日前周知技術であり、また、この溝などの細長い直線的なものは、そこを通って流れる流体が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行うものであると述べたことに誤りはない。
(イ)そして、被請求人は、答弁書において、「仮に、甲第2号証~甲第6号証から上記周知技術が認定できるとしても、甲1発明2にこの周知技術を組み合わせることに動機付けがない。例えば、甲第1号証には、そのフローセルにおいて、流体の流れ(一旦拡がるように流れた後、狭まるように流れる)方向に沿って、表裏それぞれに1つずつのセンサを設けることしか記載していないのであるから、本件訂正発明1のように、複数のセンサーを有することに動機付けられ、さらにこれら複数のセンサをレイアウトし得るようにフローセルの形状を特定することに当業者が動機付けられることはないからである。」と主張しているが、「流体の流れ(一旦拡がるように流れた後、狭まるように流れる)」について、甲1に記載されている技術において、流体の流れが一旦拡がるように流れた後狭まるように流れる必要もなく、流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状にすることは、上記ウ(ア)で述べたとおり、当業者において通常になし得る設計事項にすぎない。
(ウ)また、被請求人は、上申書において、「訂正後の請求項1に係る発明について付加した技術的事項は、本件発明がこのような目的のもとになされたものであることを端的に示すものである。すなわち、訂正後の請求項1は、次の2つの新たな構成を備えている。
1.前記検体センターの少なくとも1つは、pCO2、pO2、pHの1つ又はそれ以上を測定するように構成されている血液パラメータセンサーである
2.前記スペーサが、長さ20~60mm、幅5~20mm、厚さ0.2~0.6mmの寸法を有するか、前記スペーサの切り抜き溝が、長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している
訂正の請求項1に係る発明は、このような構成を併せ備えることにより、測定用セルを形成する第1及び第2電子配線基板のそれぞれが有する複数の検体センサーのすべてが測定用セルに相対する等の構成と相俟って、非常に小型化されたセンサーアッセンブリを実現することができ、もって、使用される患者の血液を可能な限り少なくすることができるという効果を奏するのである。・・・甲1発明にいたっては、作用電極が血液パラメータセンサーであることすら記載も示唆もされておらず、試料を可能な限り少なくするといった要請や、血液の化学的性質を測定するセンサーに寸法的制約があることから一時に多くの情報を取得するといった要請を甲1発明から導き出すことはできない。」と主張している。
しかしながら、上記ウ(イ)でも述べたように、甲1発明は「溶液」を「多成分分析」するものであるとともに、甲1には「生物医学」の用途として用いられることが示されている。そして、「生物医学」の分野における分析において血液は代表的な液体試料であることからすると、甲1発明の「溶液」を血液とすることは一般的に行われていることを採用しているにすぎない。
さらに、フローセル型のセンサ装置においては、例えば上記(甲2エ)に「標本量(例えば、フィンガープリックの血液を測定するカートリッジ)によって制限される実施例では、特に好適な検出チャンバの容量は、10μL未満、より好適には0.5~10μL未満、さらに一層好適には2~6μL未満である。」とあるように、小型化の要請はフローセル型のセンサ装置において内在されたものであるといえることから、甲1発明のようなフローセル型のセンサ装置においても、本件訂正発明1で特定するような大きさとすることは、上記ウ(イ)で述べたとおり、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないとの判断に変わりはない。
カ まとめ
したがって、甲1発明、並びに、甲2ないし甲4に記載された事項から導出される周知技術及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件訂正発明1は、甲1発明と上記イで述べた相違点1及び相違点2の点で相違し、甲1発明とはいえないことから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないということはできないものの、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである
(2)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、相違点3及び相違点4で相違する。
<相違点3>
スペーサが有している切り抜き空間(前者)、第1基板、第2基板及び前記スペーサが層状構造に配置されることによって形成される測定用セルの形状(後者)が、
本件訂正発明2では、前者について「溝」であり、後者について、流れる流体が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行えるようにする形状であるのに対し、
甲1発明では、前者について、D2スペーサ及びD1スペーサが有する切り抜き空間が「溝」とはいえず、後者について、溶液が「少なくとも実質的に直線的な」運動を行えるようにする形状とは特定されていない点。
<相違点4>
第1基板及び第2基板について、本件訂正発明2では、第1基板の「第2面に電気接点が配置」され、第2基板の「第1面に電気接点が配置」されているのに対し、甲1発明では、そのようなものであるかどうか不明である点。
イ 相違点4に関する判断
事案に鑑み上記相違点4について検討する。
(ア)上記相違点4における、第2基板の「第1面に電気接点が配置」されている点について検討する。
上記(1)ア(ウ)で述べたとおり、甲1発明の「C3C4側ブロック」、「D1スペーサ側の面」及び「D1スペーサ側と反対側の面」が、本件訂正発明2の「第2基板」、「第1面」及び「第2面」に相当しており、甲1発明の「C3C4側ブロック」には、「作用電極C3及び作用電極C4」「に接続」し「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側と反対側の面に出て」いる「配線」があり、「作用電極C3及び作用電極C4」が「配線」「に接続する」接続箇所が電気接点といえる。
ここで、「C1C2側ブロック」、「D2スペーサ」、「D1スペーサ」、「C3C4側ブロック」「の順で層状構造に配置され」、「C1C2側ブロックのD2スペーサ側の面が、D2スペーサの切り抜き空間のC1C2側ブロック側の開口部分を閉じ、C3C4側ブロックのD1スペーサ側の面が、D1スペーサの切り抜き空間のC3C4側ブロック側の開口部分を閉じることでセルを形成し」、「C1C2側ブロックには溶液入り口A及び溶液出口Bがあり、溶液は溶液入り口Aから入り、上記セルを通り、溶液出口Bから出て行くものであ」るから、「層状構造に配置され」る「C1C2側ブロック」と「D2スペーサ」、「D2スペーサ」と「D1スペーサ」、「D1スペーサ」と「C3C4側ブロック」は、溶液が漏れないように、互いに密着しているものである。
してみれば、甲1発明において、「配線」は「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側と反対側の面に出」るものであるから、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側と反対側の面」(「第2面」)に電気接点を配置することはあっても、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側の面」(「第1面」)に電気接点を配置することは想定されず、むしろ、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側の面」(「第1面」)と「D1スペーサ」とが密着しなければならないことに鑑みるに、このような面と面が密着しなければならない箇所にあえて電気接点を配置することには阻害要因があるといえる。
そうすると、仮に、請求人が主張するとおり上記摘記(甲2イ)の【0062】、(甲5イ)の図1に液と接する面の方に電気接点を設けるような態様が記載されているからといって、甲1発明において「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側の面」に電気接点を配置することは当業者が容易になし得たこととはいえない。そして、この点、上記甲3、4及び6の記載事項によっても、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(イ)小括
したがって、相違点2は、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ まとめ
よって、相違点3については検討するまでもなく、本件訂正発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(3)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、上記本件訂正発明2を引用する発明であるから、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、上記本件訂正発明2を直接又は間接的に引用する発明であるから、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明4は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、上記本件訂正発明2を間接的に引用する発明であるから、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(6)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、上記本件訂正発明2を直接又は間接的に引用する発明であるから、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明6は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(7)本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、上記本件訂正発明2を直接又は間接的に引用する発明であるから、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明7は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(8)本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、上記本件訂正発明2を直接又は間接的に引用する発明であるから、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明8は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないということはできないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。
(9)本件訂正発明9について
ア 対比
本件訂正発明9と甲1発明とを対比すると、上記相違点3のほかに、さらに相違点5及び相違点6で相違する。
<相違点5>
センサーアッセンブリが、本件訂正発明9では、「少なくとも実質的にハウジング内に封入されている」のに対し、甲1発明ではそのようになっているのか不明である点。
<相違点6>
前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点が、本件訂正発明9では、「同じ方向を向いている」のに対し、甲1発明では、そのようなものであるかどうか不明である点。
イ 各相違点についての判断
(ア)相違点3に関する判断
相違点3は、本件訂正発明1の相違点1に対応するものであって、相違点1の「長さ10mm~50mm、幅1mm~5mm及び深さ0.2mm~0.6mmの寸法を有している」との構成を含まないものである。
そうすると、相違点3については上記(1)ウ(ア)で相違点1について検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点5に関する判断
甲1発明の「4電極薄層フローセル」を、外環境からの影響を抑えて分析するために、上記(甲4イ)に記載されているように、ハウジング内に密閉する、すなわち「少なくとも実質的にハウジング内に封入」することは当業者が容易になし得たことである。
(エ)相違点6に関する判断
上記1(1)ア(イ)及び(ウ)で述べたとおり、甲1発明の「C1C2側ブロック」、「C3C4側ブロック」は、本件訂正発明9の「第1電子配線基板」、「第2電子配線基板」にそれぞれ相当し、また、甲1発明の「作用電極C1及び作用電極C2」が「配線」「に接続する」接続箇所と、「作用電極C3及び作用電極C4」が「配線」「に接続する」接続箇所が、それぞれ本件訂正発明9の「第1基板の電気接点」、「前記第2基板の電気接点」に相当する。
そして、甲1発明は「上記各配線はボルタメトリ分析器に接続され」るものである。
してみると、上記各配線は、どちらもボルタメトリ分析器がある同じ方向に向かうものであるから、上記各配線がボルタメトリ分析器に接続し易いように、上記接続箇所すなわち電気接点を「同じ方向を向いている」ようにすることは当業者が容易になし得たことである。
ところで、上記(2)「本件訂正発明2について」のイ(ア)で、甲1発明の「層状構造に配置され」る「C1C2側ブロック」と「D2スペーサ」、「D2スペーサ」と「D1スペーサ」、「D1スペーサ」と「C3C4側ブロック」は、溶液が漏れないように、互いに密着しているものであり、甲1発明において、「配線」は「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側と反対側の面に出」るものであるから、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側と反対側の面」(「第2面」)に電気接点を配置することはあっても、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側の面」(「第1面」)に電気接点を配置することは想定されず、むしろ、「C3C4側ブロック」の「D1スペーサ側の面」(「第1面」)と「D1スペーサ」とが密着しなければならないことに鑑みるに、このような面と面が密着しなければならない箇所にあえて電気接点を配置することには阻害要因があると述べたが、例えば上記第5の1(1)(甲1ウ)に示したFigure 1において、上記各配線を、「作用電極C1及び作用電極C2」「に接続する」「配線」並びに「作用電極C3及び作用電極C4」「に接続する」「配線」を、共に「C1C2側ブロック」及び「C3C4側ブロック」の上方面(あるいは、下方面、紙面の前側に対応する面、紙面の裏側に対応する面)から出して、すなわち「同じ方向を向いている」ようにして、ボルタメトリ分析器に接続し易くすることには、上記で述べた阻害要因は存在しない。
よって、本件訂正発明9の相違点6に係る構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
ウ まとめ
したがって、本件訂正発明9は、甲1発明、並びに、甲2ないし甲4に記載された事項から導出される周知技術及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件訂正発明9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(10)本件訂正発明10について
ア 対比
本件訂正発明10と甲1発明とを対比すると、上記相違点2及び相違点3で相違する。
イ 相違点の判断
相違点1については上記(1)ウ(イ)で、相違点3については上記(9)イ(ア)で述べたとおりである。
ウ まとめ
したがって、本件訂正発明10は、甲1発明、並びに、甲2ないし甲4に記載された事項から導出される周知技術及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件訂正発明10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(11)無効理由1及び2のまとめ
ア 無効理由1について
本件訂正発明1、7及び8は、特許法第29条第1項3号に該当せず、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないとはいえないことから、無効理由1によっては、本件訂正発明1、7及び8に係る特許を無効とすることはできない。
イ 無効理由2について、
本件訂正発明1、9及び10は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2ないし4号証に記載された事項から導出される周知技術、及び甲第2号証、甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、無効理由2によって、本件訂正発明1、9及び10に係る特許は無効とすべきものである。
一方、本件訂正発明2ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないことから、無効理由2によっては、本件訂正発明2ないし8に係る特許を無効とすることはできない。
2 無効理由3について
(1)本件訂正発明1の記載について
本件訂正発明1で「前記測定用セルは、前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」と特定されている「測定用セル」は、その特定事項の前で「第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって」「形成」されるものである。
してみれば、「測定用セル」は、スペーサの「溝」の部分に対応するものであり、ここで「溝」とは、「一般に、細長くくぼんだところ」(乙第3号証(広辞苑第七版)参照)であるから、「測定用セル」は細長いものといえる。そして、その「測定用セル」は、そこ「を通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」ものである。
したがって、「測定用セル」が「第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって」「形成」され、そこ「を通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」ことは、請求人が主張する「実質的に直線的な運動を行えるようにする形状」との記載があるからといって、不明確とまではいえない。
(2)本件訂正発明2、9及び10の記載について
本件訂正発明2、9及び10には、本件訂正発明1と同様に「実質的に直線的な運動を行えるようにする形状」との記載があるが、上記(1)で述べたとおり、「実質的に直線的な運動を行えるようにする形状」との記載があるからといって、不明確とまではいえない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書で、本件特許明細書等の【0020】の記載から、
「本件特許明細書の段落[0020]には、「測定用セルは、測定用セルを通って流れる流体が、少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有していてもよい。この実施形態によれば、測定用セルには、曲がり部と折り返し箇所が全くないか又はその数が限定されているべきである。測定用セルに曲がり部と折り返し箇所が無いようにすることで、測定用セルの濯ぎと洗浄は著しくやり易くなり、気泡形成の危険性は小さくなる。」と記載されているが、「測定用セルを通って流れる流体が、少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状」といえるには、どの程度の数の曲がり部と折り返し箇所が無いようにすべきであるのかが不明である。」(下線は当審で付与した)と主張している。
しかし、上記(1)で述べたとおり、本件訂正発明1の記載が不明確であるとまではいえないものであるから、本件特許明細書等の記載を参酌して本件訂正発明1の記載を解釈する必要のないものである(いわゆるリパーゼ判決(昭和62年(行ツ)第3号、最高裁平成3年3月8日第2小法廷判決)参照)。
また、その余の記載も一応確認するに、
「【0043】
図1は、第1基板2、第2基板3、及びスペーサ4を備えているセンサーアッセンブリ1の分解組立図である。」
「【0046】
スペーサ4には、スペーサ4の大部分を貫通して伸張している細長いボアの形態をした溝7が設けられている。」
「【0047】
・・・、測定用セル7aは、洗浄し易く、不純物の沈降する場所ができないように、可能な限り直線的で平坦であるのが望ましい。更に、測定用セル7aが、直線的で平坦であれば、測定用セル7aに必要な容積はより小さくて済む。」
「【図1】
」
と記載され、上記(1)で述べた解釈と矛盾するものではない。
イ 請求人は、口頭審理陳述要領書において、被請求人の答弁書における「流体の運動軌跡が厳密な意味での直線的なものに限定されないことを意味することを特定している」、「ある程度の曲がりを許容することを意図して特定したものである」と記載していることを受け、依然として不明確であることを主張している。
しかしながら、被請求人は答弁書において、
「「線」とは「(1)糸のように細く長いもの、すじ。(2)幾何学で取り扱う対象の一つ。・・位置および長さをもつが、幅および厚さをもたない。」(広辞苑第七版、乙2)である。このように、仮に構成Gを「直線的な運動を行えるようにする形状」と特定した場合には、幅および厚さをもたない、まっすぐなすじのみに限定されるおそれがあるため、構成Gは、現実のアッセンブリにおいて、ある程度の幅および厚さを持ち、ある程度の曲がりを許容することを意図して特定したものである。」と説明しており、被請求人の答弁書に「流体の運動軌跡が厳密な意味での直線的なものに限定されないことを意味することを特定している」、「ある程度の曲がりを許容することを意図して特定したものである」との記載があるからといって、測定用セルの形状が不明確であるとすることはできない。
(4)小括
本件訂正発明1、2、9及び10の「第1開口部及び第2開口部を備えた切り抜き溝を有しているスペーサと、を備えており、前記第1基板、前記第2基板、及び前記スペーサは、層状構造に配置されていて、前記第1基板の前記第1面が前記スペーサの第1開口部を閉じ、前記第2基板の前記第1面が前記スペーサの第2開口部を閉じることによって」「形成」される「測定用セル」について、「前記測定用セルを通って流れる流体が少なくとも実質的に直線的な運動を行えるようにする形状を有している」との特定事項において、「実質的に直線的な運動を行えるようにする形状」との記載があるからといって、不明確とまではいえない。
よって、本件訂正発明1、本件訂正発明2及びそれを引用する本件特許発明3ないし8並びに本件訂正発明9及び10の記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。
(5)無効理由3のまとめ
本件訂正発明1、本件訂正発明2及びそれを引用する本件訂正発明3ないし8並びに本件訂正発明9及び10の記載が、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願にされたものとはいえないことから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由3によっては、本件訂正発明1ないし10に係る特許を無効とすることはできない。
3 無効理由4について
(1)本件訂正発明9の「前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」ことについて、本件特許明細の段落【0022】には、「第1基板の電気接点と第2基板の電気接点は、而して、この実施形態によれば、同じ方向を向いている。その結果、同じ方向に向いた十分な数の対応する電気接点を備えている単一の接触ユニットを使用して、第1基板と第2基板の電気接点のそれぞれに対する接触を得ることが可能になる。これにより、分析器への接続の設計を著しく単純化することができ、従って、これは非常に好都合な解決策であると考えられる。」と、また、段落【0049】には、「第1基板2の電気接点5cと第2基板3の電気接点5cは、同じ方向を向いているので、同じ側から電気接点5cのそれぞれにアクセスすることができ、これにより分析器への接続、而して、測定情報の伝達がやり易くなる。」と記載されている。
これらの本件特許明細書の記載から、第1基板の電気接点と第2基板の電気接点を同じ方向に向けることは、同じ側から電気接点のそれぞれにアクセスすることができ、分析器への接続をやり易くするための構成であると理解できる。
すると、本件訂正発明9の「前記第1基板の電気接点と前記第1基板の電気接点は同じ方向を向いている」とは、分析器などが同じ側(方向)から電気接点のそれぞれにアクセスすることができるように電気接点を設けることという技術的意味において一義的に解されることから、請求人の主張する「「同じ方向」とはいかなる方向であるか特定されていない」ことをもってして、本件訂正発明9における「前記第1基板の電気接点と前記第1基板の電気接点は同じ方向を向いている」との記載が不明確であるとまではいえない。
(2)無効理由4のまとめ
本件訂正発明9の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願にされたものとはいえないことから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由4によっては、本件訂正発明9に係る特許を無効とすることはできない。
4 無効理由5について
(1)上記3の(1)で述べたが、本件訂正発明9の「前記第1基板の電気接点と前記第2基板の電気接点は同じ方向を向いている」こととは、本件特許明細書によれば、第1基板の電気接点と第2基板の電気接点を同じ方向に向けることは、同じ側から電気接点のそれぞれにアクセスすることができ、分析器への接続をやり易くするための構成であると理解され、分析器などが同じ側(方向)から電気接点のそれぞれにアクセスすることができるように電気接点を設けることという技術的意味において一義的に解されるものである。
そして、上記第2 2(3)イ(イ)の参考図1のZ方向だけでなく、当該参考図1のX方向、Y方向においても、分析器等が同じ方向から電気接点のそれぞれにアクセスすることができ、これにより分析器などへの接続がやりやすくなるものであるから、請求人の主張する参考図1のZ方向に限定されていない点で本件訂正発明9は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないということにはならない。
(2)無効理由5のまとめ
本件訂正発明9の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願にされたものとはいえないことから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由5によっては、本件訂正発明9に係る特許を無効とすることはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許第5538587号の請求項1、9及び10に係る発明の特許は、無効理由2により無効とする。
本件特許第5538587号の請求項2ないし6に係る発明の特許は、無効理由2及び3によっては無効とすることはできず、そして、請求項7及び8に係る発明の特許は、無効理由1、2及び3によっては無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その10分の7を請求人の負担とし、10分の3を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-800049