特許異議申立
2016-700862
ガスセンサの検知電極、導電性ペーストの製造方法、および、ガスセンサ
- 審判番号
- 2016-700862
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-121843
- 登録番号
- 特許第5883976号(P5883976)
- 請求日
- 2016年09月14日
- 審決日
- 2017年10月05日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本碍子株式会社
- 【権利者代理人】吉竹 英俊
- 【権利者代理人】有田 貴弘
- 【異議申立人】平林 恭子
- 審判長/審判官
- 審判長 伊藤 昌哉
- 審判官 信田 昌男
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1652.113-YAA(G01N) / P1652.121-YAA(G01N) / P1652.537-YAA(G01N) / P1652.536-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5883976号発明「ガスセンサの検知電極、導電性ペーストの製造方法、および、ガスセンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5883976号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5~12〕、3、4、13、14について訂正することを認める。
特許第5883976号の請求項1~3、5~11、13に係る特許を維持する。
特許第5883976号の請求項12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5883976号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成27年6月17日(優先権主張、平成26年7月29日)を出願日として出願したものであって、平成28年2月12日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 平林 恭子(以下、「申立人」という。)より請求項1~3、5~12に対して特許異議の申立てがされ、平成28年12月27日付けで取消理由が通知され、平成29年3月6日に意見書の提出及び訂正請求がされ、その訂正請求に対して同年4月14日に申立人から意見書が提出されたものである。
さらに、同年5月11日付で、再度、取消理由が通知され、その取消理由通知の指定期間内である同年6月21日に意見書の提出及び訂正請求がされ、その訂正請求に対して申立人からは意見書が提出されなかったものである。
第2 訂正請求について(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)本件訂正請求の内容
特許権者は、以下の訂正事項1~13により特定されるとおり訂正することを請求する。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記所定ガス成分を検知するための検知電極であって、」と記載されているのを、
「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、」と訂正する(請求項1を直接にまたは間接に引用する請求項2および請求項5~請求項11についても同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」と訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」と訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記所定ガス成分の濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。」
と記載されているのを、
「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。」と訂正する(請求項5を直接にまたは間接に引用する請求項6~請求項11についても同様に訂正する)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
と訂正し、新たに請求項13とする。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
と訂正し、新たに請求項14とする。
ク 訂正事項8
特許明細書の段落【0012】に
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記所定ガス成分を検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とする。」
と訂正する。
ケ 訂正事項9
特許明細書の段落【0014】に
「請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項3の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、 前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と訂正する。
コ 訂正事項10
特許明細書の段落【0015】に
「請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項4の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と訂正する。
サ 訂正事項11
特許明細書の段落【0016】に
「請求項5の発明は、被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、を備え、前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記所定ガス成分の濃度を求める、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項5の発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、を備え、前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、ことを特徴とする。」
と訂正する。
シ 訂正事項12
特許明細書の段落【0023】に
「請求項12の発明は、請求項5ないし請求項11のいずれかに記載のガスセンサであって、前記所定ガス成分が炭化水素ガスまたは一酸化炭素の少なくとも一種類である、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項13の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
請求項14の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と訂正する。
ス 訂正事項13
特許明細書の段落【0026】に
「請求項1ないし請求項12の発明によれば、貴金属成分としてPtのみを含む検知電極を有するものよりも未燃炭化水素に対する検出感度の優れたガスセンサを実現できる。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項11、請求項13、および請求項14の発明によれば、貴金属成分としてPtのみを含む検知電極を有するものよりも未燃炭化水素に対する検出感度の優れたガスセンサを実現できる。」
と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1、4は、「被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する」と記載されているのを、「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する」と、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許明細書の段落【0030】に「より具体的には、ガスセンサ100Aは、・・・該被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を、好適に求めるためのものである。」と記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2は、訂正前請求項3のうち訂正前請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3について
ウー1 訂正事項3は、訂正前請求項4のうち訂正前請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウー2 訂正前の請求項4は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については独立して特許を受けることができるものでなければならない。
(ア) 被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ、明確であるから、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではない。
(イ) 甲1の記載事項(「第9」「1」「(1)」参照)、甲2の記載事項(「第8」「1」「(1)」参照)、甲3の記載事項(「第13」「1」「(1)」参照)、甲4の記載事項(「第9」「1」「(4)」参照)、甲5の記載事項(「第9」「1」「(5)」参照)から、訂正後の請求項4に係る発明の「Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含む」導電性ペーストの製造方法は、甲1~5のいずれにも記載されていない(下記「第8~10、12、13」参照)。
したがって、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものではない。
そして、他に、訂正事項3により訂正された請求項4は、独立して特許を受けることができないとする理由はない。
したがって、訂正事項3により訂正された請求項4は、独立して特許を受けることができるものである。
訂正前の請求項4から、訂正事項7により独立形式の新たな特許発明として追加された請求項14も、同様に、独立して特許を受けることができるものである。
エ 訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項6は、訂正前請求項3のうち訂正前請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めて、新たな請求項13とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
カ 訂正事項7について
カー1 訂正事項7は、訂正前請求項4のうち訂正前請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めて、新たな請求項14とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
カー2 訂正前の請求項4は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については独立して特許を受けることができるものでなければならない。
上記ウ-2で検討したように、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではないし、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものではないので、訂正後の請求項4を減縮したものに相当する新たな請求項14も特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではないし、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものではない。
そして、他に、訂正事項7により訂正された請求項4は、独立して特許を受けることができないとする理由はない。
したがって、訂正事項7により訂正された、訂正前請求項4のうち訂正前請求項1を引用する請求項2を引用するものを独立形式請求項へ改めた請求項14は、独立して特許を受けることができるものである。
キ 訂正事項8について
特許明細書の段落【0012】における訂正は、上記アと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項1の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ク 訂正事項9について
特許明細書の段落【0014】における訂正は、上記イと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項3の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ケ 訂正事項10について
特許明細書の段落【0015】における訂正は、上記ウと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項4の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
コ 訂正事項11について
特許明細書の段落【0016】における訂正は、上記アと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項5の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
サ 訂正事項12について
特許明細書の段落【0023】における「請求項12の発明は、・・・。」
と記載されているのを、
「請求項13の発明は、・・・を特徴とする。
請求項14の発明は、・・・を特徴とする。」
と訂正するは、請求項12が削除され、独立形式の新たな請求項13、14が追加された訂正後の請求項の記載と整合させるためのものであって、上記エ~カと同様、新規事項ではなく、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
シ 訂正事項13について
特許明細書の段落【0026】における「請求項1ないし請求項12の発明によれば、・・・。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項11、請求項13、および請求項14の発明によれば」
と訂正するは、請求項12が削除され、独立形式の新たな請求項13、14が追加された訂正後の請求項と整合させるためのものであって、新規事項ではなく、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ス 一群の請求項
訂正前の請求項2~12は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~12は、一群の請求項である。
したがって、訂正事項1~7は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
セ 明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
訂正事項8~13は、それぞれ、訂正後の請求項1、3、4、5、12、13、14の記載と整合させるためのものとして訂正を請求したものであり、訂正前の請求項1~12は一群の請求項であるから、訂正事項8~13は、いずれも一群の請求項1~12に関係する訂正である。
したがって、訂正事項8~13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。
ソ 訂正後の請求項
本件訂正請求において、「訂正後の請求項3、請求項4、請求項13,および請求項14については、引用関係の解消を目的とする訂正であるから、当該請求項についての訂正が認められる場合には請求項3、請求項4、請求項13、および請求項14は、請求項1~2および請求項5~12とは別途訂正すること」を「求め」ているので、訂正前の一群の請求項1~12は、訂正後の請求項〔1、2、5~12〕、3、4、13、14となる。
(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、5~12〕、3、4、13、14について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記「第2 訂正請求について」で述べたとおり、本件訂正は認められることとなったから、請求項1~14に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件特許発明1」などという。)は、次の事項により特定される発明であると認める。
【請求項1】
被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするガスセンサの検知電極。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサの検知電極であって、
Au存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするガスセンサの検知電極。
【請求項3】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項4】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項5】
被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のガスセンサであって、
少なくとも前記検知電極を被覆する多孔質層である電極保護層、
をさらに備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子が、
前記被測定ガスが存在する空間と隔絶されてなり、基準ガスが導入される基準ガス導入空間、
をさらに備え、
前記基準電極が前記基準ガスの雰囲気下に配置される、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項8】
請求項7に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子が、
前記基準ガス導入空間に連通する多孔質層である基準ガス導入層、
をさらに備え、
前記基準電極が前記基準ガス導入層に被覆されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項9】
請求項7に記載のガスセンサであって、
前記基準電極を前記基準ガス導入空間に露出させて配置してなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、
前記検知電極と前記基準電極が前記センサ素子の表面に配置されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項11】
請求項10に記載のガスセンサであって、
前記検知電極と前記基準電極とが電極保護層に被覆されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項14】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
第4 特許異議申立の理由及び証拠について
1 申立の概要
申立人は、以下の証拠を提出して、本件特許の請求項1~3、5~12に係る発明に対して、以下の取消理由を申し立てている。
甲第1号証:特開平11-223617号公報
甲第2号証:特開2003-35693号公報
甲第3号証:特許第4827924号公報
甲第4号証:特開2000-28573号公報
甲第5号証:特許第3560316号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第5号証」を、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号違反:申立書9頁「理由の要点」の項)
ア 請求項1、2、5、6、7、9、10
甲1および甲2記載の発明に該当する。
イ 請求項11、12
甲2記載の発明に該当する。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項違反:申立書9頁「理由の要点」の項)
ア 請求項1、2、5、6、7、9、10
甲1記載の発明、および甲2記載の発明から容易に想到できる。
イ 請求項3
甲3記載の発明、甲2記載事項から容易に想到できる。
ウ 請求項8
甲1記載の発明および甲2記載の発明、並びに、甲1記載事項および甲2記載事項から容易に想到できる。
エ 請求項11
甲2記載の発明から容易に想到できる。
オ 請求項12
甲2記載の発明から容易に想到できる。
甲1記載の発明、甲4記載事項から容易想到である。
(3)申立理由3(特許法第36条第6項第1号違反:申立書9頁「理由の要点」の項)
本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(4)申立理由4(特許法第36条第4項第1号違反:申立書39頁6~16行「(4)具体的理由 エ 記載不備 (イ)」の項)
本件特許の請求項1に係る発明に、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記ptが露出している部分に対する前記AUが被覆している部分の面積比率であるAU存在比」なる記載があるが、本件の特許明細書には「ptが露出している部分」と「Auが被覆している部分」の具体的説明は何ら記載されていない。このため、これらを前提として数値が定められるAu存在比は、前提が不明確であるために、如何なるものを示すのか不明であり、本件特許の請求項1に係る発明を認識することができない。したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
第5 取消理由の概要
平成28年12月27日付けで通知した当審の1回目の取消理由、及び平成29年3月6日付けの訂正請求に対する平成29年5月11日付けで通知した当審の2回目の取消理由の概要は以下のとおりである。
1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反について)
本件特許の請求項1~3、5~12に係る発明は、下記のように発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
請求項1における検知電極が検知する所定ガス成分として、炭化水素ガス以外のガス成分は、発明の詳細な説明に技術的な裏付けを持って記載されていないのでサポートがないものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~12も同様である。
2 取消理由2(特許法第36条第6項第2号違反について)
本件特許の請求項1~3、5~12に係る発明は、下記のように明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
(1)請求項1は「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比」と特定している。
一方、「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」は、
(Auが露出している部分でその下にPtがある部分の面積)/(Ptが露出している部分の面積)
となるが、「Auが露出している部分」について、「Auが露出している部分でもその下にPtがない部分の面積」と「Auが露出している部分でその下にPtがある部分の面積」をどのように区別して測定するのかが不明であり、その結果、面積比率をどのように計算するのかも不明である。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~12も同様である。
(2)請求項3は「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、」と導電性ペーストを製造する方法を限定しているが、この限定によって導電性ペーストを製造する方法について、何を特定しているのか明確でない。
したがって、請求項3に係る発明は明確でない。
3 取消理由3(特許法第29条第1項第3号違反について)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
4 取消理由4の1(特許法第29条第2項違反について)
本件特許の請求項1、2、5~11に係る発明は、本件特許の出願の優先日前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
5 取消理由4の2(特許法第29条第2項違反について)
本件特許の請求項5~12に係る発明は、本件特許の出願の優先日前日本国内または外国において頒布された甲2に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
6 訂正請求に伴い生じた取消理由5(特許法第36条第6項第1号違反について)
平成29年3月6日付けの訂正請求における請求項1~11、13、14に係る発明は、下記のように発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
(1)訂正後の請求項1に係る発明では「Au存在比」を「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率」であると特定している。
一方、発明の詳細な説明の段落【0072】には「Au存在比」について「検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率」であると記載されており、「Auが被覆している部分」とは記載されているが「Auが露出している部分」とは記載されていない。
明細書全体を見渡しても実施例を含めても「Au存在比」について「検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率」以外は記載されていない。
そうすると、訂正後の請求項1に係る発明における「Au存在比」として、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率」は、発明の詳細な説明に技術的な裏付けを持って記載されていないのでサポートがないものである。
(2)したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2、5~11に係る発明も同様である。
また、訂正後の請求項1に係る発明と同様に「Au存在比」を特定している訂正後の請求項3、4、13、14に係る発明も同様である。
第6 特許法第36条第6項第1号に関する取消理由1についての当審の判断
本件特許発明1は、上記「第2」「(1)」「ア 訂正事項1」の訂正により、「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサ」と訂正されている。
この訂正により、本件特許発明1は、特許明細書に「【0011】 本発明は、・・・未燃炭化水素ガスに対する検出感度の優れたガスセンサを提供することを目的とする。」と記載され、そのための構成が技術的な裏付けを持って記載されているものとなり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとなった。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、5~11も同様である
本件特許発明1と同じ「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサ」との記載を含む本件特許発明3、4、13、14も、発明の詳細な説明に、技術的な裏付けを持って記載されているものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第7 特許法第36条第6項第2号に関する取消理由2についての当審の判断
(1)本件特許発明1の「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」における、「Auが被覆している部分」との表現は、検知電極中で、Pt粒子がAuに被覆されている状態において、Ptが露出している部分(Auに被覆されていない部分)に対して、Auに被覆されている部分を表現しているものと解せる。
そうすると、「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比」は明確であるので、本件特許発明1は明確である。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、3、5~12も同様である。
本件特許発明1と同じ「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」との記載を含む本件特許発明3、4、13、14も明確である。
(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、」と訂正され、本件特許発明3の「導電性ペースト」の用途が明確になり、本件特許発明3が明確になった。
訂正前の請求項3から、訂正事項7により独立形式の新たな特許発明として追加された本件特許発明13についても同様である。
第8 特許法第29条第1項第3号に関する取消理由3についての当審の判断
1 甲号証の記載
(1)甲2記載の事項
本願の優先権主張日前に頒布された甲2には、「可燃性ガスセンサ」について、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は可燃性ガスセンサに関する。更に詳しくは、リッチ(可燃ガス含有量の多い)雰囲気への曝露前後におけるセンサ出力の差が小さく、この曝露後におけるセンサ出力の低下が抑制され、高い測定精度で可燃性ガスの濃度測定を行うことができる可燃性ガスセンサに関する。本発明の可燃性ガスセンサは、あらゆる内燃機関から排出される排気ガス中の可燃性ガス等の濃度測定に好適である。」
(イ)
「【0017】本発明の可燃性ガスセンサにより測定できる可燃性ガスは検知電極に含有される白金、金及びロジウムを除く他の成分等により異なるが、例えば、アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、水素及び炭化水素ガスである。」
(ウ)
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]可燃性ガスセンサの製造及び接続
(1)6種類の検知電極用ペーストの調製
表1に示す割合で白金粉末(純度99.9%以上、平均粒径7.4μm)と、金粉末(純度99.9%以上、平均粒径1μm)と、ロジウム粉末(純度99.9%以上、平均粒径3μm)と、ジルコニア粉末(純度99.9%以上、平均粒径1μm)10部(白金、金及びロジウムの合計を100部とした場合の外配合)とを混合した混合粉末に、バインダ(エチルセルロース)、エトセル及び溶剤(ブチルカルビトール)を加えて調製した検知電極用ペーストを得た。
・・・
【0022】(2)固体電解質体の作製
4.5モル%のY2O3を含有するイットリア安定化ジルコニア(以下、単にYSZという)の粉末をゴム型に充填し、有底円筒型に加圧成形した。その後、得られた成形体の外表面に検知電極リード線となる白金ペーストを印刷し、焼成して検知電極リード部が配設された有底円筒型の固体電解質体を得た。
【0023】(3)検知電極及び基準電極の形成
得られた固体電解質体の内表面に白金めっきを施して基準電極を形成した。その後、固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7~10mmの領域に(1)で得られた各検知電極用ペースト6種を各々別々の固体電解質体に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて検知電極を形成した。」
(エ)
表1に表示された実施例の比較例は、貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストが記載されている。
2 甲2記載の発明
上記(1)甲2記載の事項の(ア)~(エ)の記載を参照すると、上記甲2号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストを、
4.5モル%のY2O3を含有するイットリア安定化ジルコニアの粉末を焼成して得られた固体電解質体、の内表面に白金めっきを施して基準電極を形成した後に、該固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7~10mmの領域に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて形成した、濃度測定を行うことができる内燃機関から排出される排気ガス中の炭化水素ガスのセンサの検知電極。」(以下、「甲2発明」という。)
3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比・判断
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「Au」は、「貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストを」、「固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7~10mmの領域に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて形成した」「検知電極」の「Au」であって、AuがPt粉末を被覆しているか否か明らかでなく、さらに、被覆しているとしても、「Au存在比」が0.3以上であるか否かも明らかでない。
したがって、本件特許発明1では、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成であるのに対して、甲2では、「貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストを、」「該固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7~10mmの領域に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて形成した」構成である点(以下、「相違点」という。)で相違する。
よって、本件特許発明1は甲2発明ではない。
(2)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明ではないから、本件特許発明1の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
4 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2は、甲2発明ではないから、本件特許発明2の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
第9 特許法第29条第2項に関する取消理由4の1についての当審の判断
1 甲号証の記載
(1)甲1記載の事項
本願の優先権主張日前に頒布された甲1号証には、「二酸化硫黄ガスセンサ」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、燃焼機関等の排気ガスあるいは空気中の二酸化硫黄(SO2)ガスの濃度を測定するためのSO2ガスセンサに関するもの・・・。」
(イ)
「【0015】 図1は、本発明のSO2ガスセンサの基本構造を示す断面図である。固体電解質板1と、同固体電解質板1を挟み込む一対の電極である基準極2と検知極3とが該固体電解質板1のそれぞれの表面に形成される。このとき、基準極2は基準ガス側に、検知極3は測定ガス側に形成され、それぞれの電極にはリード線4、5が取り付けられる。また、固体電解質板1は基体6に嵌挿されて測定ガス領域と基準ガス領域との隔壁の役割をも果たしている。
【0016】 固体電解質板1としては、酸素イオン伝導性を有する材料であればよく、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化セリウムが例としてあげられるが、本発明においては、高温安定性、化学的安定性に優れた安定化ジルコニアが好適に使用される。」
(ウ)
「【0023】 このことから、検知極用の金属としては本発明においては、金(Au)が好適に使用される。また、Auに0.1~10wt%の他の貴金属を加えたAu合金を用いるとより好ましい。Auに0.1~10wt%、好ましくは0.1~5wt%、より好ましくは、0.1~1wt%の他の貴金属を加えることにより検知極の製造時の高温下でのAu粒子の凝集を抑制し、検知極の多孔質性の保持と検知極の表面積の拡大化が可能となり、結果としてSO2の検出感度をより向上させることができる。なお、Auと合金化される金属としては、Rh、Pt、Pd、銀(Ag)等が例としてあげられる。このときの、Au含有率としては、90wt%以上、好ましくは95wt%以上、より好ましくは99wt%以上が好適であり、Auの含有率は合金の融点と焼付け温度あるいはセンサの使用温度により適宜選択し定めればよい。係る合金の調製方法としては、常法に従えばよい。勿論、AuまたはAu合金に固体電解質板と同じ材料を混合したサーメット電極も好適に用いられる。」
(エ)図1
(2)甲2記載の事項
上記「第8」「1」「(1)」記載のとおりである。
(3)甲3記載の事項
下記「第13」「1」「(1)」記載のとおりである。
(4)甲4記載の事項
甲4には高温で検知が可能な炭化水素ガスセンサに関する技術事項が記載されている。
(5)甲5記載の事項
甲5には酸素濃度や素子温度が変動しても、高精度で検出でき、水蒸気の分解による可燃ガス成分検出精度への影響が生じにくいガスセンサに関する技術事項が記載されている。
2 甲1記載の発明
上記(1)甲1記載の事項の(ア)~(エ)の記載を参照すると、上記甲1号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「固体電解質板1を挟み込む一対の電極である基準極2と検知極3とが酸素イオン伝導性を有する材料である固体電解質板1のそれぞれの表面に、基準極2は基準ガス側に、検知極3は測定ガス側に形成された燃焼機関等の排気ガス中の二酸化硫黄(SO2)ガスの濃度を測定するためのSO2ガスセンサの検知極3であって、
検知極3用の金属としてはAuに0.1~10wt%のRh、Pt、Pd、銀(Ag)等の貴金属を加えたAu合金を用い、Au含有率としては、90wt%以上となる、Au合金に固体電解質板と同じ材料を混合したサーメット電極である、SO2ガスセンサの検知極3」(以下、「甲1発明」という。)
3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、
本件特許発明1では、「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であ」るのに対して、甲1発明では、「燃焼機関等の排気ガス中の二酸化硫黄(SO2)ガスの濃度を測定するためのSO2ガスセンサの検知極3であ」る点(以下、「相違点1」という。)、
本件特許発明1では、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成であるのに対して、甲1発明では、「検知極3用の金属としてはAuに0.1~10wt%のRh、Pt、Pd、銀(Ag)等の貴金属を加えたAu合金を用い、Au含有率としては、90wt%以上となる」構成である点(以下、「相違点2」という。)で相違する。
(2)判断
事案に鑑み相違点2から検討する。
「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成は、甲2~甲5のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲1発明と、甲2ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえない。
(3)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 本件特許発明2、5~11について
本件特許発明2、5~11は、いずれも本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2、5~11は、いずれも、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲1発明と、甲2ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないから、本件特許発明2、5~11の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第10 特許法第29条第2項に関する取消理由4の2についての当審の判断
1 甲号証の記載
(1)甲2記載の事項
上記「第8」「1」「(1)」記載のとおりである。
2 甲2記載の発明
上記「第8」「2」記載のとおりである。
3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比
上記「第8」「3」「(1)対比・判断」記載のとおりの相違点で相違する。
(2)判断
「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成は、甲1、甲3~甲5のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。
そうすると、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲2発明と、甲1、甲3ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえない
(3)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 本件特許発明5~12について
本件特許発明12は削除されている。
本件特許発明2、5~11は、いずれも本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明5~11は、いずれも、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲2発明と、甲1、甲3ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないから、本件特許発明5~11の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第11 特許法第36条第6項第1号に関する取消理由5についての当審の判断
今回の訂正により「Au存在比」を「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」とする訂正前の特許発明の定義に戻ったので、取消理由5は解消した。
第12 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(1)
申立人は、申立理由1(特許法第29条第1項第3号違反)において、
ア 本件特許発明1、2、5、6、7、9、10は、甲1発明であり、
イ 本件特許発明11、12は甲2発明であると主張するので以下に検討する。
1 検討
アについては、上記「第9」において説示したように、本件特許発明1は甲1発明と対比すると相違点があるから、甲1発明であるとはいえないし、また、本件特許発明2、5、6、7、9、10は甲1発明をさらに限定するものであるから、同様に、甲1発明であるとはいえない。
イについては、上記「第8」において説示したように、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、本件特許発明11、12は、本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明11、12は、甲2発明ではない。
したがって、かかる主張は理由がない。
第13 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(2)
申立人は、申立理由2(特許法第29条第2項違反)において、イ 本件特許発明3は 甲3記載の発明及び甲2記載事項から容易に想到できると主張するので以下に検討する。
1 甲号証の記載
(1)甲3記載の事項
本願の優先権主張日前に頒布された甲3には、「ガス混合物内のガス成分濃度の測定センサおよびその製造方法」について、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア)
「【請求項4】
イオン伝導性固体電解質(120)と、固体電解質(120)によって相互に分離された電極とを備え、外部電極(160)はガス混合物にさらされ、内部電極(170)は、拡散隔壁(150)によってガス混合物から分離された中空空間(130)内に配置されている、ガス混合物内のガス成分濃度の測定センサの電極の製造方法において、
白金-金ペーストが固体電解質(120)上に塗布され、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され、この固体が外部電極(160)を形成することを特徴とするガス混合物内のガス成分の濃度測定センサの電極の製造方法。
【請求項5】
前記ペーストの金含有量が、0.1-10重量%の間で変化することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。」
(イ)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物内ガス成分濃度の測定センサに関するものである。さらに、本発明は、このようなセンサの電極の製造方法に関するものである。」
(ウ)
「【0010】
図2に示されているセンサは、拡散隔壁150を介して、例えば(図示されていない)内燃機関の排気ガスと結合されている中空空間130を設けた、加熱要素190として形成されたヒータによって加熱される酸化ジルコニウム要素120と、基準電極140、内部ポンプ電極170および外部ポンプ電極160とを含む。」
(エ)
「【0016】
外部ポンプ電極が、白金からなるそれ自身既知の固体において金の電気めっきが行われることによって形成されることが好ましい。白金電極を含浸工程によって修正すること、即ち白金電極を適切なAu塩、即ちHAuCl4により含浸させ、且つ後燃焼工程においてAu塩を分解することもまた可能である。さらに、酸化ジルコニウム・セラミック120に白金-金ペーストを塗布し、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され、この固体が外部ポンプ電極160を形成することもまた可能である。この場合、0.1-10重量%、特に1-5重量%の白金-金ペースト内のAu含有量が有利であることがわかった。」
(オ)図2
2 甲3記載の発明
上記(1)甲2記載の事項の(ア)~(オ)の記載を参照すると、上記甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「イオン伝導性固体電解質(120)と、固体電解質(120)によって相互に分離された電極とを備え、外部電極(160)はガス混合物にさらされ、内部電極(170)は、拡散隔壁(150)によってガス混合物から分離された中空空間(130)内に配置されている、ガス混合物内のガス成分濃度の測定センサの電極の製造方法において、
白金-金ペーストが固体電解質(120)上に塗布され、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され、この固体が外部電極(160)を形成することを特徴とするガス混合物内のガス成分の濃度測定センサの電極の製造方法。」(以下、「甲3発明」という。)
3 本件特許発明3との対比・判断
(1)対比
本件特許発明3と甲3発明とを対比すると、本件特許発明3では、「導電性ペーストの製造方法」において、「Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含む」のに対して、甲3では、「白金-金ペースト」である点(以下、「相違点1」という。)、
本件特許発明3では、そのペースとにより形成される検知電極について、「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」のに対して、甲3では、「白金-金ペーストが固体電解質(120)上に塗布され、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され」たものである点(以下、「相違点2」という。)で相違する。
(2)検討
事案に鑑み相違点2から検討する。
「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成は、甲2には記載されていないし、示唆もされていない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲3発明及びに甲2に記載の技術事項基づいて当業者が容易に想到するものとはいえない。
訂正前の請求項3から、訂正事項6により独立形式の新たな特許発明として追加された本件特許発明13についても同様である。
したがって、かかる主張は理由がない。
第14 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(3)
(1)申立理由4(特許法第36条第4項第1号違反)
ア 本件の特許明細書には、「【0061】 <センサ素子の製造プロセス>
次に、図1ないし図3に例示するような層構造を有する場合を例として、センサ素子101Aないし101Cを製造するプロセスについて説明する。」として、本件特許発明のセンサ素子の製造プロセスが開示されている。
イ その中で「【0078】<検知電極形成用の導電性ペースト>
次に、検知電極10の形成に用いる導電性ペーストについて説明する。検知電極形成用の導電性ペーストは、Auの出発原料としてAuイオン含有液体を用い、該Auイオン含有液体を、Pt粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって作製する。」、「【0088】 <導電性ペースト作製の別態様>
検知電極形成用の導電性ペーストを作製するにあたっては、上述のようにAu液体混合によって作製する代わりに、Ptの粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料として作製するようにしてもよい。」と記載されている。
そうすると、検知電極形成用の導電性ペーストはPtの粉末がAuに被覆された状態であると認められる。
ウ さらに、「【0072】なお、本明細書において、Au存在比とは、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率を意味している。Ptが露出している部分の面積と、Auによって被覆されてなる部分の面積が等しいときに、Au存在比は1となる。本明細書においては、XPS(X線光電子分光法)により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度から、相対感度係数法を用いてAu存在比を算出するものとする。」と「Au存在比」の測定方法も記載されている。
エ 以上より、発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないものとはいえない。
オ よって、特許異議申立書に記載された特許法第36条第4項第1号に関する特許異議申立理由によっては、本件特許発明1を取り消すべき理由を発見しない。
第15 むすび
以上のとおりであるから、平成28年12月27日付けの取消理由通知に記載した取消理由、平成29年5月11日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~3、5~11、13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3、5~11、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項12は、本件訂正請求により削除されたので請求項12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論の通り決定する。
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2016-700862