特許異議申立
2016-700858
農作物の鮮度保持方法および生鮮農作物の生産方法
- 審判番号
- 2016-700858
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-531409外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月13日
- 審決日
- 2017年04月20日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.121-YAA(A23B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5889310号発明「農作物の鮮度保持方法および生鮮農作物の生産方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5889310号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第5889310号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5889310号の請求項1、2に係る特許についての出願は、2012年8月30日(優先権主張2011年8月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月26日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人西林博より特許異議の申立がされ、平成28年11月25日付けで取消理由が通知され、平成29年1月27日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、その後、特許法第120条の5第5項の規定により期間を指定して特許異議申立人に意見書の提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかったものである。
2.訂正の請求についての判断
(1)訂正の内容
平成29年1月27日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5889310号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「前記近赤外光が700~1000nmの範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が700~1000nmの範囲であり」とあるのを、「前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であり」に訂正する。
(訂正事項2)
明細書の【発明の名称】に「農作物の鮮度保持方法」とあるのを、「農作物の鮮度保持方法および生鮮農作物の生産方法」に訂正する。
(訂正事項3)
明細書の【0001】に「本発明は、農作物の鮮度保持方法に関する。」とあるのを、「本発明は、農作物の鮮度保持方法および生鮮農作物の生産方法に関する。」に訂正する。
(訂正事項4)
明細書の【0006】に「そこで、本発明は、簡単かつ低コストで、薬剤を使用することなく、加熱を伴わず、広範囲の農作物に適用可能で、対象農作物全体に均一な鮮度保持効果が得られる農作物の鮮度保持方法を提供することを目的とする。」とあるのを、「そこで、本発明は、簡単かつ低コストで、薬剤を使用することなく、加熱を伴わず、広範囲の農作物に適用可能で、対象農作物全体に均一な鮮度保持効果が得られる農作物の鮮度保持方法および生鮮農作物の生産方法を提供することを目的とする。」に訂正する。
(訂正事項5)
明細書の【0007】に「前記目的を達成するために、本発明の農作物の鮮度保持方法は、農作物に近赤外光を照射することを特徴とする。」とあるのを、「前記目的を達成するために、本発明の農作物の鮮度保持方法は、農作物に近赤外光を照射し、前記農作物が、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類からなる群から選択された少なくとも1つであり、前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であり、前記近赤外光を、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒照射することを特徴とする。また、本発明の生鮮農作物の生産方法は、生鮮農作物の生産方法であって、収穫後の農作物に対し、鮮度保持処理を行う鮮度保持処理工程を含み、前記鮮度保持処理工程が、本発明の農作物の鮮度保持方法により行われることを特徴とする。」に訂正する。
(訂正事項6)
明細書の【0012】に「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の波長は、700nm~2500nmの範囲であることが好ましい。」とあるのを、「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の波長は、前述のとおり、前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲である。」に訂正する。
(訂正事項7)
明細書の【0013】に「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の照射光強度は、0.1μmol/m2/s~10000μmol/m2/sの範囲であることが好ましい。」とあるのを、「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の照射光強度は、前述のとおり、0.1μmol/m2/s~10000μmol/m2/sの範囲である。」に訂正する。
(訂正事項8)
明細書の【0014】に「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の照射時間は、1ナノ秒~72時間の範囲であることが好ましい。」とあるのを、「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の照射時間は、前述のとおり、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒の範囲である。」に訂正する。
(訂正事項9)
明細書の【0015】に「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記農作物は、野菜類、果実類、花卉類であることが好ましい。」とあるのを、「本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記農作物は、前述のとおり、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類からなる群から選択された少なくとも1つである。」に訂正する。
(訂正事項10)
明細書の【0024】に「本発明の生産方法は、生鮮農作物の生産方法であって、収穫後の農作物に対し、鮮度保持処理を行う鮮度保持処理工程を含み、前記鮮度保持処理工程が、本発明の農作物の鮮度保持方法により行われることを特徴とする。」とあるのを、「本発明の生鮮農作物の生産方法は、前述のとおり、生鮮農作物の生産方法であって、収穫後の農作物に対し、鮮度保持処理を行う鮮度保持処理工程を含み、前記鮮度保持処理工程が、本発明の農作物の鮮度保持方法により行われることを特徴とする。」に訂正する。
(訂正事項11)
明細書の【0027】に「本発明の適用対象である農作物は、特に制限されないが、例えば、前述のとおり、通常行われている利用部位による分類(園芸的分類または人為的分類と呼ばれる)における、野菜類、果実類、花卉類であることが好ましい。」とあるのを、「本発明の適用対象である農作物は、前述のとおり、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類からなる群から選択された少なくとも1つであり、例えば、通常行われている利用部位による分類(園芸的分類または人為的分類と呼ばれる)における、生鮮野菜類、生鮮果実類、生鮮花卉類である。」に訂正する。
(訂正事項12)
明細書の【0028】に「ネギ、細ネギ、アサツキ、ニラ、アスパラガス、ウド、コールラビ、ザーサイ、タケノコ、ニンニク、ヨウサイ、ネギ、ワケギ、タマネギなどの茎菜類、」とあるのを、「ネギ、細ネギ、アサツキ、ニラ、アスパラガス、ウド、コールラビ、ザーサイ、タケノコ、ヨウサイ、ネギ、ワケギ、タマネギなどの茎菜類、」に訂正し、「根菜類(カブ、ダイコン、ハツカダイコン、ワサビ、ホースラディッシュ、ゴボウ、チョロギ、ショウガ、ニンジン、ラッキョウ、レンコン、ユリ根などに加えて、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ナガイモ(大和芋)、ヤマノイモ(山芋、自然薯)などのイモ類を含む)、」とあるのを、「、」に訂正する。
(訂正事項13)
明細書の【0032】に「前述のように、本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の波長は、700nm~2500nmの範囲であることが好ましい。前記近赤外光の波長は、より好ましくは750nm~1100nmの範囲であり、さらに好ましくは750nm~1000nmの範囲である。本発明において、照射する近赤外光は、レーザーのような単波長のものでもよいし、波長分布を有するものでもよい。蛍光灯、LED等のように前記波長分布を有するものの場合、中心波長(ピーク波長)が前記の範囲内にあることが好ましい」とあるのを、「前述のように、本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の波長は、前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲である。本発明において、照射する近赤外光は、レーザーのような単波長のものでもよいし、波長分布を有するものでもよい。蛍光灯、LED等のように前記波長分布を有するものの場合、中心波長(ピーク波長)が前記の範囲内にある。」に訂正する。
(訂正事項14)
明細書の【0033】に「前述のように、本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の照射光強度は、0.1μmol/m2/s~10000μmol/m2/sの範囲であることが好ましい。前記近赤外光の照射光強度は、より好ましくは1μmol/m2/s~200μmol/m2/sの範囲であり、さらに好ましくは1μmol/m2/s~150μmol/m2/sの範囲である。」とあるのを、「前述のように、本発明の農作物の鮮度保持方法において、前記近赤外光の照射光強度は、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒の範囲である。」に訂正する。
(訂正事項15)
明細書の【0035】に「また、本発明において、例えば、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sの範囲のような大光量、例えば、フラッシュのような光量で照射する場合には、照射時間は、例えば、1ナノ秒~10秒の範囲であることが好ましく、より好ましくは1マイクロ秒~1秒の範囲である。」とあるのを、「また、本発明において、例えば、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sの範囲の大光量、例えば、フラッシュのような光量で照射する場合には、照射時間は、1ナノ秒~10秒の範囲であり、好ましくは1マイクロ秒~1秒の範囲である。」に訂正する。
(訂正事項16)
明細書の【0039】に「前記照射器具は、レーザーのように単波長を照射するものであってもよいし、波長700nm~2500nmに中心波長をもつ光を照射するものであってもよい。」とあるのを、「前記照射器具は、レーザーのように単波長を照射するものであってもよいし、波長800nmを超え1000nm以下の範囲に中心波長をもつ光を照射するものであってもよい。」に訂正する。
(訂正事項17)
明細書の【0066】に「中心波長700nmから1000nmの近赤外光を、照射光強度を100μmol/m2/s、15μmol/m2/sとして5分間照射し、蒸散量を求めた。」とあるのを、「参考例として中心波長700nmから800nm、および実施例として800nmを超え1000nm以下の近赤外光を、照射光強度を100μmol/m2/s、15μmol/m2/sとして5分間照射し、蒸散量を求めた。」に訂正する。
(2)訂正の適否
(訂正事項1について)
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、近赤外光に関して、単波長光のものにおいて、波長を「700~1000nm」から「800nmを超え1000nm以下」へとその範囲を狭め、波長分布を有するものにおいて、中心波長を「700~1000nm」から「800nmを超え1000nm以下」へとその範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に近赤外光について「700~1000nm」の範囲であることが記載されているところ、当該「700~1000nm」の範囲から単に700~800nmの範囲を除いたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(訂正事項2~4、10について)
ア 訂正の目的
上記訂正事項2~4、10は、訂正後の請求項1が「農作物の鮮度保持方法」であって、請求項2が「生鮮農作物の生産方法」であることから、【発明の名称】、【0001】、【0006】及び【0024】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2~4、10は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2~4、10は、請求項1に「農作物の鮮度保持方法」が、請求項2に「生鮮農作物の生産方法」が記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(訂正事項5について)
ア 訂正の目的
上記訂正事項5は、訂正後の請求項1の「前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であ」ること及び訂正後の請求項2に、【0007】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(訂正事項6、13、16、17について)
ア 訂正の目的
上記訂正事項6、13、16、17は、訂正後の請求項1の「前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であ」ることに、【0012】、【0032】、【0039】及び【0066】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項6、13、16、17は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項6、13,16,17は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(訂正事項7、8、14、15について)
ア 訂正の目的
上記訂正事項7、8、14、15は、訂正後の請求項1の「前記近赤外光を、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒照射する」ことに、【0013】、【0014】、【0033】及び【0035】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項7、8、14、15は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項7、8、14、15は、上アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(訂正事項9、11、12について)
ア 訂正の目的
上記訂正事項9、11、12は、訂正後の請求項1の「前記農作物が、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類からなる群から選択された少なくとも1つであ」ることに、【0015】、【0027】及び【0028】の野菜類の列挙の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項9,11、12は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項9、11、12は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、2についての訂正を認める。
3.本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された以下の事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
農作物に近赤外光を照射し、
前記農作物が、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類からなる群から選択された少なくとも1つであり、
前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であり、
前記近赤外光を、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒照射することを特徴とする農作物の鮮度保持方法。
【請求項2】
生鮮農作物の生産方法であって、
収穫後の農作物に対し、鮮度保持処理を行う鮮度保持処理工程を含み、
前記鮮度保持処理工程が、請求項1記載の農作物の鮮度保持方法により行われることを特徴とする生産方法。」
4.当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について(特許法第29条第2項)ア 取消理由の概要
平成28年11月25日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
請求項1、2に係る特許は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものである
甲第1号証:特開平3-22946号公報
甲第2号証:特開2010-187598号公報
イ 取消理由についての判断
(ア)甲第1号証記載の発明
甲第1号証(2頁右下欄18行~3頁左上欄9行)には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「穀物に760ナノメートル±20の光線を所定時間照射し、
穀物を長期間保存に適した状態とする方法。」
(イ)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「穀物」は、本件特許明細書の【0028】を参照すると本件発明1の「生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)」及び「農作物」に相当し、同様に、「穀物を長期間保存に適した状態とする方法」は「農作物の鮮度保持方法」に相当する。また、甲1発明の「760ナノメートル±20の光線を所定時間照射」することと本件発明1の「近赤外光を照射し、」「前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であり、前記近赤外光を、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒照射すること」とは、「光線を所定時間照射」することの限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「農作物に光線を所定時間照射し、
前記農作物が、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類からなる群から選択された少なくとも1つである、
農作物の鮮度保持方法。」
<相違点>
光線を所定時間照射することについて、本件発明1では、「近赤外光を照射し、」「前記近赤外光が800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、前記近赤外光が波長分布を有し、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲であり、前記近赤外光を、0.1μmol/m2/s~10μmol/m2/sで1分以上、10μmol/m2/sを超え200μmol/m2/s未満で10秒以上、または、200μmol/m2/s~10000μmol/m2/sで1ナノ秒~10秒照射すること」であるのに対して、甲1発明では、760ナノメートル±20の光線であり、照射強度及び照射時間は特定されていない点。
(ウ)当審の判断
上記相違点に関し、照射強度及び照射時間を好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎないといえるとしても、800nmを超え1000nm以下の範囲の単波長光であるか、または、中心波長が800nmを超え1000nm以下の範囲である波長分布を有する近赤外光を照射することで、生鮮野菜類(根菜類およびニンニクを除く)、生鮮果実類および生鮮花卉類の鮮度を保持することは、甲第1号証及び甲第2号証に記載及び示唆されておらず、また、周知であるとも認められない。
よって、甲1発明において、760ナノメートル±20の光線を上記相違点に係る本件発明1の範囲内のものに変更する動機付けがあるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含む生鮮農作物の生産方法であるから、同様の理由により、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
4.むすび
以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700858