審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2016-700619

膨張性織物及びエアバッグ

審判番号
2016-700619
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-099733
登録番号
特許第5848281号(P5848281)
請求日
2016年07月15日
審決日
2017年06月22日
公報発行日
2017年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】コーロン インダストリーズ インク
  • 【権利者代理人】山下 託嗣
  • 【権利者代理人】堀川 かおり
  • 【権利者代理人】朴 沼泳
  • 【異議申立人】久門 享
審判長/審判官
  • 審判長 千葉 成就
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 小野田 達志
分類
P1651.113-YAA(D03D) / P1651.121-YAA(D03D) / P1651.536-YAA(D03D) / P1651.537-YAA(D03D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5848281号発明「膨張性織物及びエアバッグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5848281号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。 特許第5848281号の請求項1、3~26に係る特許を維持する。 特許第5848281号の請求項2に係る特許についての申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5848281号の請求項1~26に係る特許についての出願は、平成20年12月26日(パリ条約による優先権主張 平成19年12月28日 韓国)を国際出願日とする出願(特願2010-540580号)の一部を、平成25年5月9日に新たな特許出願としたものであって、平成27年12月4日にその特許権の設定登録がされたものである。 その後、その特許について、特許異議申立人久門享(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年9月16日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年12月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、申立人により平成29年2月1日に本件訂正請求について意見書が提出され、平成29年3月28日付けで特許権者に審尋したところ、平成29年4月26日に特許権者の要請により面接を行い、平成29年5月10日に上申書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「膨張性を有する膨張部、 前記膨張部を支持する非膨張部、及び 前記膨張部及び非膨張部の境界を成す接結部を含み、 前記膨張部は、2つの分離した織物層で構成され、前記非膨張部は、2つの分離した織物層を単一織物に部分接結した段階的な交差接結からなる段階接結織を含み、前記接結部の組織は膨張部の閉鎖された系を形成するように、連続的な接結部位からなるものであり、前記段階接結織は前記段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるものであり、 前記段階接結織における二層織物層を間におく非連続的接結部位と他の非連続的接結部位間の間隔は3ないし35mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の幅は0.3乃至2.5mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の一方向に連続した長さは1乃至10mmであり、 前記段階接結織は、複数の線状形態、ハニカム状や放射状、円形や楕円形、または三角形や台形からなるものである、膨張性二層織物。」 とあるのを、 「膨張性を有する膨張部、 前記膨張部を支持する非膨張部、及び 前記膨張部及び非膨張部の境界を成す接結部を含み、 前記膨張部は、2つの分離した織物層で構成され、前記非膨張部は、2つの分離した織物層を単一織物に部分接結した段階的な交差接結からなる段階接結織を含み、前記接結部の組織は膨張部の閉鎖された系を形成するように、連続的な接結部位からなるものであり、前記接結部の組織は、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織またはこれらの1種以上の混合織を含み、前記段階接結織は前記段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるものであり、 前記段階接結織は、互いに分離された2つの織物層を含む二重織物層と、1×1織、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織およびこれらの1種以上の混合織からなる群より選択された組織による前記段階的な交差接結を構成するものであり、 前記段階接結織における二層織物層を間におく非連続的接結部位と他の非連続的接結部位間の間隔は3ないし35mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の幅は0.3乃至2.5mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の一方向に連続した長さは1乃至10mmであり、 前記段階接結織は、複数の線状形態、ハニカム状や放射状、円形や楕円形、または三角形や台形からなるものである、膨張性二層織物。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記接結部織組織は、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織、またはこれらの1種以上の混合織を含み、かつ、13以上の原糸で接結されている」とあるのを、「前記接結部織組織は、13以上の原糸で接結されたものである」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に「前記経リブ織は、2×2織、3×3織、または4×4織である」とあるのを、「前記経リブ織は、1×2織、1×3織、または1×4織である」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「前記緯リブ織は、2×2織、3×3織、または4×4織である」とあるのを、「前記緯リブ織は、2×1織、3×1織、または4×1織である」に訂正する。 (6)訂正事項6 願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0013】に、図12について「2×2経リブ織(b)、2×2緯リブ織(c)」とあるのを、「1×2経リブ織(b)、2×1緯リブ織(c)」に訂正する。 (7)訂正事項7 本件特許明細書の段落【0051】に「2×2織、3×3織、または4×4織」とあるのを、「1×2織、1×3織、または1×4織」に訂正する。 (8)訂正事項8 本件特許明細書の段落【0058】、【0060】に「2×2の経リブ織、2×2の緯リブ織」とあるのを、「1×2の経リブ織、2×1の緯リブ織」に訂正する。 (9)訂正事項9 本件特許明細書の段落【0097】に「図4に示されたような2×2の経リブ織(a)及び2×2の緯リブ織(d)」とあるのを、「図10に示されたような1×2の経リブ織(a)及び2×1の緯リブ織(d)」に訂正する。 (10)訂正事項10 本件特許明細書の段落【0099】に「図4に示されたような3×3の経リブ織(b)及び3×3の緯リブ織(e)」とあるのを、「図10に示されたような1×3の経リブ織(b)及び3×1の緯リブ織(f)」に訂正する。 (11)訂正事項11 本件特許明細書の段落【0105】に「図4に示したような2×2のバスケット織、2×2の経リブ織、2×2の緯リブ織」とあるのを、「図12に示したような2×2のバスケット織、1×2の経リブ織、2×1の緯リブ織」に訂正する。 (12)訂正事項12 本件特許明細書の段落【0107】に「図4に示すように3×3のバスケット織、3×3の経リブ織、3×3の緯リブ織」とあるのを、「図11に示すように3×3のバスケット織、1×3の経リブ織、3×1の緯リブ織」に訂正する。 (13)訂正事項13 本件特許明細書の段落【0087】、【0093】、【0100】、【0108】、【0113】、【0115】【0117】、【0119】にそれぞれ記載された「1×1バスケット織」とあるのを、「1×1織」に訂正する。 (14)訂正事項14 本件特許明細書の段落【0078】、【0079】、【0080】、【0081】、【0082】にそれぞれ記載された「実施例」とあるのを「参考例」に、【0114】、【0116】、【0119】、【0120】にそれぞれ記載された「比較例4」、「比較例6」、「比較例9」、「比較例10」とあるのを、「参考例6」、「参考例7」、「参考例8」、「参考例9」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1が、接結部の組織及び段階接結織の組織について、どのような組織なのか特定されていなかったものを、それぞれ具体的に特定するものであるから、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、接結部の組織及び段階接結織の組織については、本件特許明細書の段落【0046】、【0038】にそれぞれ記載されており、これらの訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の「接結部織組織は、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織、またはこれらの1種以上の混合織を含み、」との事項を請求項1に限定したことに伴い、記載の重複を避けるために請求項3の記載からこの事項を削除するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4~12について 願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0017】の記載によれば、図4に図示されるような組織を「2×2バスケット織」といい、同じく段落【0033】には、「前記本発明の一態様の接結部において、4つ以上のピクセルからなる織組織パターンが正常に挿入されるというのは、図6の(a)に示したように、2つ以上の経糸及び2つ以上の緯糸が互いに交差してバスケット織組織を形成することをいうものである。4つ以上のピクセルの織組織パターンがnk+1のピクセルでない他のピクセルに構成される場合、すなわち、図6の(b)に示したように、非正常に挿入される場合には、2×2織組織などのバスケット織組織がうまく形成されず、経リブ織や緯リブ織のように1×2織組織や2×1織組織などが挿入されて脆弱部が発生し、接結部織組織の強度が弱くなって、空気などの気体が漏出する恐れがある。」と記載されていることからすると、「経リブ織」や「緯リブ織」とは、1×2織組織や2×1織組織を意味し、2×2織組織などのバスケット織組織とは異なるものであるから、 ・訂正事項4に係る訂正前の請求項7の「前記経リブ織は、2×2織、3×3織、または4×4織である」との記載 ・訂正事項5に係る訂正前の請求項8の「前記緯リブ織は、2×2織、3×3織、または4×4織である」との記載 ・訂正事項6に係る訂正前の段落【0013】の「2×2経リブ織(b)、2×2緯リブ織(c)」との記載 ・訂正事項7に係る訂正前の段落【0051】の「2×2織、3×3織、または4×4織」との記載 ・訂正事項8に係る訂正前の段落【0058】及び【0060】の「2×2の経リブ織、2×2の緯リブ織」との記載 ・訂正事項9に係る訂正前の段落【0097】の「図4に示されたような2×2の経リブ織(a)及び2×2の緯リブ織(d)」との記載 ・訂正事項10に係る訂正前の段落【0099】の「図4に示されたような3×3の経リブ織(b)及び3×3の緯リブ織(e)」との記載 ・訂正事項11に係る訂正前の段落【0105】の「図4に示したような2×2のバスケット織、2×2の経リブ織、2×2の緯リブ織」との記載 ・訂正事項12に係る訂正前の段落【0107】の「図4に示すように3×3のバスケット織、3×3の経リブ織、3×3の緯リブ織」との記載は、 いずれも明らかな誤記を含むものであって、訂正事項4~12に係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものである。 そして、当初明細書の段落【0033】の記載、及び、図10、図11、図12の組織図の図示内容に基づけば、訂正事項4~12に係る訂正は、当初明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項13について 「バスケット織」とは、「2×2織組織などのバスケット織組織」(当初明細書段落【0033】)のように、一般に、経糸、緯糸ともに2本以上の糸を揃えて織る織り方をいい、経糸、緯糸ともに2本以上ではない、「1×1バスケット織」という記載を含む訂正事項13に係る各記載は、いずれも明らかな誤記を含むものである。 よって、訂正事項13に係る各記載の「1×1バスケット織」から、誤った記載である「バスケット」を削除する訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、当初明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項14について 訂正事項14は、請求項1に記載された「段階接結織」を含まない実施例や比較例を、「参考例」として整理するものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項14に係る訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 3.一群の請求項について 訂正前の請求項2~26は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であるから、請求項1~26は一群の請求項であるところ、上記の訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.請求項1、3~26に係る発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、3~26に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、3~26に記載された事項により特定されるとおりであり、そのうち、本件訂正発明1は、以下のとおりである。 「膨張性を有する膨張部、 前記膨張部を支持する非膨張部、及び 前記膨張部及び非膨張部の境界を成す接結部を含み、 前記膨張部は、2つの分離した織物層で構成され、前記非膨張部は、2つの分離した織物層を単一織物に部分接結した段階的な交差接結からなる段階接結織を含み、前記接結部の組織は膨張部の閉鎖された系を形成するように、連続的な接結部位からなるものであり、前記接結部の組織は、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織またはこれらの1種以上の混合織を含み、前記段階接結織は前記段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるものであり、 前記段階接結織は、互いに分離された2つの織物層を含む二重織物層と、1×1織、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織およびこれらの1種以上の混合織からなる群より選択された組織による前記段階的な交差接結を構成するものであり、 前記段階接結織における二層織物層を間におく非連続的接結部位と他の非連続的接結部位間の間隔は3ないし35mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の幅は0.3乃至2.5mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の一方向に連続した長さは1乃至10mmであり、 前記段階接結織は、複数の線状形態、ハニカム状や放射状、円形や楕円形、または三角形や台形からなるものである、膨張性二層織物。」 2.取消理由の概要 訂正前の請求項1~26に係る特許に対して、平成28年9月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。なお、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由は、すべて通知した。 理由1)本件特許は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2)本件特許の請求項1~3、19、21、23~25に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由3)本件特許の請求項1~26に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:国際公開第2005/031052号 甲第2号証:特開2004-270053号公報 甲第3号証:特表2006-505721号公報 [理由1] 請求項1~26に係る発明は、不明確であるし、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。また、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~26に係る発明を実施できる程度の記載となっていない。 [理由2、3] 上記理由1のとおり請求項1~26に係る発明が不明確であることを踏まえると、甲第1号証~甲第2号証には、膨張性織物及びエアバッグに関し、請求項1~3、19、21、23~25に係る発明と同様のものが記載されている。 また、請求項1~26に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載のものに基づき、当業者が容易に想到し得たものである。 3.判断 (1)理由1(記載不備)について ア.請求項1の「段階接結織は段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるもの」との記載について検討する。 本件訂正発明1において、「膨張性二層織物」は、「膨張性を有する膨張部」と「膨張部を支持する非膨張部」及び「膨張部及び非膨張部の境界を成す接結部」からなり、この「非膨張部」は、「2つの分離した織物層を単一織物に部分接結した段階的な交差接結からなる段階接結織を含」む旨特定されている。 ここで、本件特許明細書の記載を参照すると、段落【0030】には「二層織物において、前記非膨張部は、膨張部を支持する役割を果たし、二層織物部及びこれを区画する部分接結部から構成される」と記載され、段落【0040】には、「『段階接結織』とは、図2a及び2bにおいて図示されている分離した層部分(A)のような非膨張部における2つの分離した織物層が単一織物に部分接結されている部分接結織の一種を意味する。具体的には、前記段階接結織は、部分接結織が段階的および交互に配列し、非連続的な接結部が段階的交差接結を通じて含まれることを意味する」と記載され、段落【0038】には、「段階接結織」の織組織として、「前記段階接結織は、2つの分離した織物層を含む二層織物層と、1×1織、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織、及びこれらの1種以上の混合織からなる群より選択された織組織を段階的に交差接結することができる」と記載されている。 また、「段階接結織」の部位を含む「非膨張部」の具体的な組織の例として、段落【0041】に「前記本発明のまた他の態様による非膨張部は、図7に示したように、二層織物層と段階的に交差接結する『段階接結織』を含むものである。」として図7の組織を、さらに、段落【0085】に「接結点(C)を基準に左側非膨張部の層分離部分(A)の織組織が図5のような方式で二層織及び2×2バスケット織組織を段階的に交差接結する段階接結織で構成されるようにし、」として図5の組織が例示されている。 これらの記載から、非膨張部は、二層織物層の部分とこれを区画する部分接結織の部分からなり、2つの分離した織物層が単一織物に部分接結されている部分接結織の一種が「段階接結織」であり、この「段階接結織」が「1×1織、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織、及びこれらの1種以上の混合織からなる群より選択された織組織」を「段階的および交互に配列」させて、「2つの分離した織物層」を単一織物に部分接結するものであると理解できる。 そして、「段階接結織」の部位を含む「非膨張部」の具体的な組織の例として、図5(「二層織及び2×2バスケット織組織を段階的に交差接結する段階接結織で構成」(段落【0085】))、図7(「2×2斜子織様の単一層織物と、平二重織物とが交互に配列した織物」(特許異議申立書49頁5~6行))も示されているから、これらの具体的な「段階接結織」の組織例も参酌すれば、当業者にとって、請求項1の「段階接結織は段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるもの」との記載は明確であり、この事項を含む本件訂正発明1を実施することができるものといえる。 申立人は、特許異議申立書(49頁7~12行)において、「段階的な」と「非連続的な」の意味が不明確であるため、請求項1の「段階接結織は段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるもの」との記載を含む請求項1に係る発明が不明確となっている旨主張する。 しかし、「段階的な」の「段階」には、「階段」や「物事の進展過程の区切り」等の意味があり(乙1:広辞苑第6版)、「段階」という用語がもつこれらの一般的な意味と、請求項1の「段階接結織」が果たす機能や作用とは少なくとも矛盾するものではなく、請求項1に「段階的な」と記載されていることをもって、直ちに請求項1に係る発明が不明確になるとはいえない。 また、「非連続的な」についても、「接結部が、連続せずに、段階的に、交互に配置」(上申書6頁7行)されていることを示すものであり、この記載をもって、請求項1に係る発明が不明確になるとはいえない。 イ.本件特許明細書の「実施例1」~「実施例5」は、本件訂正請求により、「参考例1」~「参考例5」に訂正され、本件訂正発明1の課題を解決できるとされる態様ではないことは明確であり、実施可能要件に違反するものではない。 ウ.本件特許明細書の「実施例8」、「実施例14」、「実施例21」、「実施例29」の「1×1バスケット織」との記載は、本件訂正請求により、「1×1織」に訂正されたため、その意味は明確であり、実施可能要件に違反するものではない。 エ.本件特許明細書の「実施例18」、「実施例20」、「実施例26」、「実施例28」について、本件訂正請求により、「1×2の経リブ織」、「2×1の緯リブ織」、「1×3の経リブ織」、「3×1の緯リブ織」に訂正され、その意味は明確であり、実施可能要件に違反するものではない。 オ.そして、本件訂正発明1、3~26が、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものでもない。 (2)理由2、3(新規性、進歩性)について ア.甲第1号証には、 「[0039]本発明の非膨張・展開部は、少なくとも一部にあるいは全体に部分結節組織部を含む二重袋織組織とするのが好ましい。 [0040]部分結節組織とは、二重袋織を基本とした袋織であるが、袋織の上下の布が所々で一重部が存在する組織であり、上下布がずれることを防止することや取り扱いを容易にする等のために設けるもので、点や線、あるいは亀甲柄や斜め線等の任意の点や線で一重部を作ることができる。」と記載され、甲第1号証には、袋織の上下の布が所々で一重部が存在する「部分結節組織」を備えた「基布」に係る発明が記載されている。 しかし、本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明とは、本件訂正発明1の「段階接結織」と、甲第1号証に記載された発明の「部分結節組織部」について、 本件訂正発明1の「段階接結織」が 「段階接結織は前記段階的な交差接結からなる非連続的な接結部位からなるものであり、 前記段階接結織は、互いに分離された2つの織物層を含む二重織物層と、1×1織、2×2織、3×3織、繻子織、二層織物の部分接結織およびこれらの1種以上の混合織からなる群より選択された組織による前記段階的な交差接結を構成するものであり、 前記段階接結織における二層織物層を間におく非連続的接結部位と他の非連続的接結部位間の間隔は3ないし35mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の幅は0.3乃至2.5mmであり、前記段階接結織における非連続的接結部位の一方向に連続した長さは1乃至10mmであり、 前記段階接結織は、複数の線状形態、ハニカム状や放射状、円形や楕円形、または三角形や台形からなるものである」のに対し、 甲第1号証に記載された発明の「部分結節組織部」は、そのように特定されていない点で、少なくとも相違する。 よって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 イ.また、この相違点に係る構成は、甲第2号証、甲第3号証にも記載されていない。 そして、このような「段階接結織」の部位を「非膨張部」に備えることにより、本件訂正発明1は、「二層織物が空気によって膨張する時に、非膨張部からも気体が段階的に漏出されるようにして、接結部分での気体の漏出現象を最大限抑制しつつ、内圧維持性能などの物性を改善し、より効率的な製織工程によって優れた性能の二層織物及びエアバッグを提供することができる」(本件特許明細書段落【0037】)、「接結部を補強し、気体膨張性を有する膨張部の密閉性が強化されるようにすることを特徴とする。また、前記非膨張部を段階接結織で構成して、布地全体の張力が均等に作用するようにすることができる」(同段落【0039】)という効果を奏するものである。 よって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ.本件訂正発明3~26は、本件訂正発明1の発明特定事項のすべてを含むものであるから、本件訂正発明3、19、21、23~25は甲第1号証に記載された発明ではなく、また、本件訂正発明3~26は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件訂正発明1、3~26に係る特許を取り消すことはできず、他に取り消すべき理由も発見しない。 また、請求項2は、本件訂正請求により削除された。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700619

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決48件(コーロン インダストリーズ インク、久門 享)
  • 2024-700374異議申立 / 2025-03-21 / 請求成立(取消)フォルディング後の復元力に優れた光学フィルム及びこれを含む表示装置
    同じ当事者: コーロン インダストリーズ インク
  • 2024-700317異議申立 / 2025-03-06 / 訂正認容繊維製品
    同じ当事者: 久門 享
  • 2023-700916異議申立 / 2023-11-30 / 維持情報管理装置及び情報管理方法
    同じ当事者: 久門 享
  • 2023-700531異議申立 / 2023-08-25 / 維持空気入りタイヤ
    同じ当事者: 久門 享
  • 2022-701232異議申立 / 2023-08-01 / 訂正認容触媒装置
    同じ当事者: 久門 享
同じ論点・分野の審決(審決分類)57件(113・D03D、121・D03D、536・D03D ほか)
  • 2024-700102異議申立 / 2025-06-20 / 訂正認容プリプレグ用シリカガラスクロス
    共通の審決分類: 113・D03D、121・D03D、536・D03D、537・D03D
  • 2024-700172異議申立 / 2025-05-02 / 維持アニールド石英ガラスクロスとその製造方法
    共通の審決分類: 113・D03D、121・D03D、536・D03D、537・D03D
  • 2023-700480異議申立 / 2023-10-13 / 維持ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板
    共通の審決分類: 113・D03D、121・D03D、536・D03D、537・D03D
  • 2017-701003異議申立 / 2018-11-05 / 訂正認容耐摩耗織物
    共通の審決分類: 113・D03D、121・D03D、536・D03D、537・D03D
  • 2016-700641異議申立 / 2017-08-09 / 訂正認容織物及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・D03D、121・D03D、536・D03D、537・D03D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存