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特許異議申立

2016-700522

吸収性物品用不織布

審判番号
2016-700522
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-110963
登録番号
特許第5829349号(P5829349)
請求日
2016年06月08日
審決日
2017年01月18日
公報発行日
2017年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ユニ・チャーム株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】石田 敬
  • 【権利者代理人】古賀 哲次
  • 【権利者代理人】胡田 尚則
  • 【権利者代理人】蛯谷 厚志
  • 【権利者代理人】藤本 健治
  • 【権利者代理人】小野田 浩之
  • 【権利者代理人】奥野 剛規
  • 【権利者代理人】出野 知
  • 【権利者代理人】吉迫 大祐
  • 【異議申立人】山田 大介
審判長/審判官
  • 審判長 久保 克彦
  • 審判官 渡邊 豊英
  • 審判官 井上 茂夫
分類
P1651.113-YAA(A41B) / P1651.121-YAA(A41B) / P1651.536-YAA(A41B) / P1651.537-YAA(A41B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5829349号発明「吸収性物品用不織布」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5829349号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5829349号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5829349号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成27年5月29日に特許出願され、平成27年10月30日にその特許権の設定登録がされた。 その後、請求項1~9に係る特許について、特許異議申立人山田大介(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年7月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年9月27日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)があり、平成28年11月10日(特許庁受付)に異議申立人より意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 特許請求の範囲の請求項1において、「吸収性物品用不織布」とあるのを、 「肌に接触する箇所に用いられる、吸収性物品用不織布」に訂正する。 さらに、特許請求の範囲の請求項1において、「前記第1凹部内において前記第1方向に不連続に設けられ、前記第1底部に開口する窪み状に形成された、前記第1底部よりも前記第2面の方向に位置する第2底部を備えた複数の第2凹部」とあるのを、 「前記第1凹部内において前記第1方向に不連続に設けられ、前記第1底部に開口する窪み状に形成され、前記第1底部よりも前記第2面の方向に位置する第2底部を備え、0.25~5mmの前記第1方向の長さを有する複数の第2凹部」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.本件訂正前の請求項2~9は、請求項1を直接あるいは間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は一群の請求項1~9に対し請求されたものである。 イ.上記訂正は、本件特許明細書の段落【0019】の「本発明の不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、尿取りパット、パンティーライナー等の吸収性物品のトップシートや防漏壁、即ち、吸収性物品の使用者の肌と接する側に配設されるシートとして好適に用いられる。」なる記載等に基づいて、請求項1及びこれを引用する請求項2~9に係る発明の「不織布」の用途をより具体的に特定して、限定するとともに、段落【0029】の「また、第2凹部の第1方向及び第2方向の長さは、溝部の溝幅、即ち隣り合う凸部の間の距離にもよるが、0.25~5mmであることが好ましく」なる記載に基づいて、請求項1及びこれを引用する請求項2~9に係る発明の「第2凹部」の「第1方向の長さ」を特定して、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1~9」という。)は、本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第2面から前記第1面の方向に向けて突出する複数の凸部と、前記第1面から前記第2面の方向に向けて窪んだ複数の溝部とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む、肌に接触する箇所に用いられる、吸収性物品用不織布であって、 前記凸部は、 前記不織布の平面方向における第1方向に向けて延設されていると共に、前記不織布の平面方向において前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で設けられ、 前記溝部は、 前記第2方向に対して相互に隣り合う前記凸部の間の空間に、前記第1方向に向けて延設されていて、 前記凸部の頂部における前記第1面の位置よりも第2面の方向に位置する第1底部を備えた第1凹部と、 前記第1凹部内において前記第1方向に不連続に設けられ、前記第1底部に開口する窪み状に形成され、前記第1底部よりも前記第2面の方向に位置する第2底部を備え、0.25~5mmの前記第1方向の長さを有する複数の第2凹部とを有し、 前記凸部の頂部とその凸部と隣り合う他の前記凸部の頂部との間の距離が0.5~2mmであり、 前記不織布において少なくとも前記凸部を形成する繊維の平均繊維径が10~30μmである、吸収性物品用不織布。 【請求項2】 前記凸部を形成する繊維の平均繊維間距離が50~150μmである、請求項1に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項3】 前記第2凹部は、前記第1底部から前記凸部の突出する方向と反対の方向に延出した周壁部と、前記周壁部における前記第1底部とは反対の方向の端部に、その端部を塞ぐように設けられた第2底部とを備えている、請求項1又は2に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項4】 前記第2凹部の前記周壁部は、前記第1方向に沿うように形成された一対の第1周壁部と、前記第2方向に沿うように形成された一対の第2周壁部とを有し、前記第1周壁部は、前記第1面と前記第2面との間を貫通させる孔部を備えている、請求項3に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項5】 前記孔部は、前記熱可塑性樹脂繊維のうち、先細りの端部を備えた繊維の前記端部が含まれている周縁部を有する、請求項4に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項6】 前記孔部は、その孔部の内部空間内に、前記熱可塑性樹脂繊維の一部が架け渡されている請求項4又は5に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項7】 前記孔部は、前記内部空間の開孔率が1~50%である、請求項4~6のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項8】 前記孔部が前記第1周壁部の前記第2底部寄りの位置にのみ設けられている、請求項4~7のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。 【請求項9】 前記第2凹部は、前記第1凹部における前記第1底部の前記第1面から、第2底部の第1面までの距離が0.05~2mmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 なお、異議申立人が申立てたすべての理由を通知した。 理由1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 理由2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記(刊行物については刊行物等一覧参照) 訂正前の請求項1~9に係る発明を、本件特許発明1~9という。 刊行物1~15は、特許異議申立の甲第1号証~甲第15号証であり、刊行物1、刊行物2、刊行物3に記載された発明を各々甲1発明、甲2発明、甲3発明といい、刊行物1~15に記載された事項を各々甲1記載事項~甲15記載事項という。 ア.本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲1発明との間に実質的な差異はなく、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明であるから、理由1により、その特許を取り消すべきである。 (イ)本件特許発明1と甲2発明との間に実質的な差異はなく、本件特許発明1は、刊行物2に記載された発明であるから、理由1により、その特許を取り消すべきである。 (ウ)本件特許発明1と甲3発明との間に実質的な差異はなく、本件特許発明1は、刊行物3に記載された発明であるから、理由1により、その特許を取り消すべきである。 (エ)本件特許発明1は、甲1発明または甲2発明または甲3発明の各々に、甲4記載事項及び甲5記載事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明し得たものであるから、理由2により、その特許を取り消すべきである。 また、本件特許発明1は、甲1発明または甲2発明または甲3発明の各々に基づき、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明し得たものであるから、理由2により、その特許を取り消すべきである。 (オ)本件特許発明1は、甲6発明に、甲5記載事項、甲7記載事項、甲3記載事項及び甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明し得たものであるから、理由2により、その特許を取り消すべきである。 イ.本件特許発明2~9について 本件特許発明2~9は、甲1発明または甲2発明または甲3発明または甲6発明の各々に、甲4記載事項、甲5記載事項、甲7記載事項、甲8記載事項、甲9記載事項、甲10記載事項及び甲11~15の記載事項に例示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明し得たものであるから、理由2により、その特許を取り消すべきである。 <刊 行 物 等 一 覧> 1.特開2009-291473号公報 2.特開2008-23311号公報 3.特開2001-137284号公報 4.特開2008-23326号公報 5.特開2001-170109号公報 6.特開2007-151678号公報 7.特開平8-302555号公報 8.特開2013-132523号公報 9.特開平4-58951号公報 10.特開2011-120661号公報 11.特開2003-339761号公報 12.特開2008-149156号公報 13.特開2013-78362号公報 14.特開平9-299402号公報 15.特開2006-175688号公報 理由3.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本件特許発明1~9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 (3)判断 以下に述べるとおり、上記理由1~3はいずれも解消された。 ア.理由1及び理由2について (ア)甲1発明に基づく、新規性、進歩性について a.甲1発明 刊行物1には、その特許請求の範囲の【請求項1】、発明の詳細な説明の段落【0001】~【0009】、【0016】、【0018】、【0024】~【0029】、【0034】、【0035】、【0061】、【0062】、【図3】、【図4】の記載からみて以下の甲1発明が記載されている。 《甲1発明》 第1の面10aとこれに対向する第2の面10bとを有し、前記第2の面10bから前記第1の面10aの方向に向けて突出する複数の畝部20と、前記第1の面10aから前記第2の面10bの方向に向けて窪んだ複数の溝部30とを備え、熱可塑性樹脂繊維を含み、肌と接する箇所に用いられる、不織布製の表面シート10を備えた、生理用ナプキン(吸収性物品)1であって、 前記畝部20は、前記生理用ナプキン(吸収性物品)1の長手方向(Y方向)に向けて延設されていると共に、前記生理用ナプキン(吸収性物品)1の長手方向(Y方向)と直交する幅方向(X方向)に予め定めた間隔で設けられ、 前記溝部30は、前記幅方向(X方向)に対して相互に隣り合う前記畝部20の間の空間に、前記長手方向(Y方向)に向けて延設されていて、前記畝部20の頂部における前記第1の面10aの位置よりも第2の面10bの方向に位置する底部を有しており、 前記底部において前記長手方向(Y方向)に不連続に設けられ、前記底部に開口する窪み状に形成された、前記底部よりも前記第2面の方向に位置する底部を備え、3~10mmの前記長手方向(Y方向)の長さを有する複数の凹部31が設けられ、 前記畝部20の頂部とその畝部20と隣り合う他の前記畝部20の頂部との間の距離が1.5~17mm(畝部20の幅1~10mm、溝部30の幅0.5~7mm)であり、 前記不織布において少なくとも前記凸部を形成する繊維の(平均)繊度が1~6dtexである、生理用ナプキン(吸収性物品)1。 b.対比、判断 本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 《相違点1》 本件発明1は、「溝部」の「第1凹部内において」、「複数の第2凹部」を有した、「吸収性物品用不織布」の発明であるのに対し、甲1発明は、「生理用ナプキン(吸収性物品)1」の発明であって、「複数の凹部31」(複数の第2凹部に対応)を有するものは、「不織布製の表面シート10」ではなく、「生理用ナプキン(吸収性物品)1」である点。 そして、この《相違点1》は、実質的かつ本質的な相違点であるから、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではない。 また、甲1発明において、「不織布製の表面シート10」の「溝部30」に「複数の凹部31」を有するようにその構成を変更することは、刊行物1~15のいずれにも記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1発明、甲4記載事項、甲5記載事項、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものであるとはいえない。 さらに、本件発明2~9は、本件発明1を限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1に記載された発明ではなく、甲1発明、甲4記載事項、甲5記載事項、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものでもない。 なお、異議申立人は、平成28年11月10日(特許庁受付)に提出した意見書(以下、「意見書」という。)において、甲第1号証(刊行物1)では、ナプキン1(吸収性物品)について、表面シート10(不織布)と吸収体12とを明確に区別し、異なる構造体として説明しており、甲第1号証に記載されたナプキン1(吸収性物品)から、表面シート10(不織布)それ自体を、吸収性物品用不織布の発明として把握し得える旨を主張している。(意見書2頁17行~3頁4行) しかしながら、甲第1号証には、「複数の凹部31」について、畝溝構造が形成された不織布製の表面シート10を吸収体12の上に載置した後に、「複数の凹部31」が形成されることで、目的とする「生理用ナプキン(吸収性物品)1」が得られる旨が記載されている(段落【0061】、【0062】を参照)のみであるから、「複数の凹部31」を有するものとは、「生理用ナプキン(吸収性物品)1」であって、「不織布製の表面シート10」それ自体は、「複数の凹部31」が形成されていない畝溝構造が形成されたものとして把握することが自然である。 また、意見書とともに提出された甲第16号証は、本件発明1の第2凹部に対応する凹部エンボス8a(8b)のライナー1の長手方向寸法を0.3~4mmとすることが記載されているものの、甲第1号証に記載されたナプキン1(吸収性物品)から、表面シート10(不織布)それ自体を、吸収性物品用不織布の発明として把握し得ることを裏付けるものではない。 したがって、上記主張は採用できない。 (イ)甲2発明に基づく、新規性、進歩性について a.甲2発明 刊行物2には、その特許請求の範囲の【請求項9】~【請求項13】、発明の詳細な説明の段落【0001】~【0009】、【0035】~【0043】、【0082】、【0085】、【0092】、【0121】、【0134】、【137】、【0140】~【0142】、【0148】、【166】、【195】、【図17】の記載からみて以下の甲2発明が記載されている。 《甲2発明》 一面と該一面とは反対側の面とを有し、前記反対側の面から前記一面の方向(厚さ方向)に向けて突出する複数の凸状部2Aと、厚さ方向に向けて窪んだ複数の溝部1Aとを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む、肌に接触する箇所に用いられる、第1繊維層141と前記第1繊維層141における一方の面側に積層配置され吸水性繊維を主体とした繊維で構成された吸収体142とを備える多層吸収体150であって、 前記凸状部2Aは、前記多層吸収体150の平面方向における長手(縦)方向に向けて延設されていると共に、前記多層吸収体150の平面方向において前記長手(縦)方向と直交する幅(横)方向に予め定めた間隔で設けられ、 前記溝部1Aは、前記幅(横)方向に対して相互に隣り合う前記凸状部2Aの間の空間に、前記長手(縦)方向に向けて延設されていて、前記凸状部2Aの頂部における前記一面の位置よりも前記反対側の面の方向に位置する底部を備えた凹部と、前記凹部内において前記長手(縦)方向に不連続に設けられ、前記底部に開口する窪み状に形成された、前記底部よりも前記反対側の面の方向に位置する別の底部を備え、3.2mmの前記長手(縦)方向の長さを有する複数の別の凹部とを有し、 前記凸状部2Aの頂部とその凸状部2Aと隣り合う他の前記凸状部2Aの頂部との間の距離が0.5~30mmであり、 前記多層吸収体150において前記凸状部2Aを形成する前記第1繊維層141の繊維の平均繊度が3.3dtexである、多層吸収体150。 b.対比、判断 本件発明1と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 《相違点2》 本件発明1は、「吸収性物品用不織布」の発明であるのに対し、甲2発明は、「第1繊維層141と前記第1繊維層141における一方の面側に積層配置され吸水性繊維を主体とした繊維で構成された吸収体142とを備える」、「多層吸収体150」の発明である点。 《相違点2》について検討する。 本件発明1の「吸収性物品用不織布」は、吸収体ではなく、吸収体等の他の部材と組み合わされることで吸収性物品を構成するための部材に使用されるものであることが、本件特許明細書の「なお、本発明の不織布が吸収性物品に使用される場合には、この不織布の第2面が吸収性物品の各構成部材(例えば、トップシートとして使用される場合には吸収体)に接合される。」(段落【0019】)、「即ち、本発明に係る不織布は、例えば吸収性物品にトップシートとして使用される場合は、この不織布の第2面が吸収性物品の吸収体に接合されるが、その状態においては、凸部、次いで第1凹部の第1底部の順に肌に触れ易くなる。このとき、凸部(特に頂部)は、吸収体にほとんど接合されず」(段落【0027】)、「逆に2mm超であると、第2底部を吸収性物品の他の部材、例えば吸収体や他の不織布、フィルム等と貼り合わせた際」(段落【0028】)といった記載から明らかである。 そして、本件発明1の「吸収性物品用不織布」を積層構造とすることは、本件特許明細書には記載されていない。 一方、甲2発明の「多層吸収体150」は、刊行物2の記載からみて、吸収体そのものであり(特に、【要約】、【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0006】~【0009】、【0082】、【0085】、【0134】、【0140】~【0142】、【0148】を参照)、また、「多層吸収体150」を構成する「第1繊維層141」は表面シートとして機能するものであること(段落【137】を参照)が、明らかである。 したがって、上記《相違点2》は、実質的かつ本質的な相違点であるから、本件発明1は、刊行物2に記載された発明ではない。 そして、甲2発明において、「第1繊維層141と前記第1繊維層141における一方の面側に積層配置され吸水性繊維を主体とした繊維で構成された吸収体142とを備える」、「多層吸収体150」を、積層構造であることをその要件とはしていない「吸収性物品用不織布」に変更することや、表面シートとして機能するものである「第1繊維層141」そのものが、凹部及び当該凹部内に設けられる別の凹部を有するようにその構成を変更することは、刊行物1~15のいずれにも記載も示唆もされていない。 ゆえに、本件発明1は、甲2発明、甲4記載事項、甲5記載事項、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものであるとはいえない。 さらに、本件発明2~9は、本件発明1を限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物2に記載された発明ではなく、甲2発明、甲4記載事項、甲5記載事項、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものでもない。 なお、異議申立人は、意見書において、甲第2号証(刊行物2)の段落【0103】、【0106】、【0117】、【0121】、【0137】、【0150】等の記載によれば、甲第2号証には、第1繊維層141と吸収体142をいずれも不織布で形成することが記載されているから、吸収体150は不織布である旨を主張している。(意見書6頁下から2行~8頁4行) しかしながら、甲第2号証の上記記載からは、吸収体150が不織布製であることが把握されるものの、吸収体150が、本件発明1のように、「吸収体ではなく、吸収体等の他の部材と組み合わされることで吸収性物品を構成するための部材に使用されるもの」であることまでもが把握されるものではない。 したがって、上記主張は採用できない。 (ウ)甲3発明に基づく、新規性、進歩性について a.甲3発明 刊行物3には、その特許請求の範囲の【請求項1】、発明の詳細な説明の段落【0001】~【0008】、【0012】、【0021】、【0025】、【0028】~【0035】、【0041】~【0048】、【図2】、【図3】の記載からみて以下の甲3発明が記載されている。 《甲3発明》 受液側(上部側、肌当接部側、+Z側)の面と該面とは反対側の裏面(下部側、-Z側)とを有し、前記裏面から前記受液側の面の方向に向けて突出する複数の山部2aと、前記受液側の面から前記裏面の方向に向けて窪んだ複数の谷部2bとを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む、肌に接触する箇所に用いられる、吸収性物品に用いられる表面シート2であって、 前記山部2aは、前記表面シート2の平面方向における長手(Y)方向に向けて延設されていると共に、前記表面シート2の平面方向において前記長手(Y)方向と直交する幅(X)方向に予め定めた間隔で設けられ、 前記谷部2bは、前記幅(X)方向に対して相互に隣り合う前記山部2aの間の空間に、前記長手(Y)方向に向けて延設されていて、前記山部2aの頂部における前記受液側の面の位置よりも裏面の方向に位置する底部を備えた複数の連結部2eと、隣り合う前記連結部2eの間に前記長手(Y)方向に不連続に設けられ、前記底部に対して窪み状に形成された、前記底部よりも前記裏面の方向に位置する別の底部を備え、前記長手(Y)方向の長さを有する複数の凹状の部分とを有し、 前記山部2aの頂部とその山部2aと隣り合う他の前記山部2aの頂部との間の距離が1~15mmであり、 前記不織布において少なくとも前記凸部を形成する繊維の繊度が1.1~6.6dtexである、吸収性物品に用いられる表面シート2。 b.対比、判断 本件発明1と甲3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 《相違点3》 本件発明1の「第2凹部」は、「0.25~5mmの前記第1方向の長さを有する」ものであるのに対し、甲3発明の「凹状の部分」は、「前記長手(Y)方向の長さを有する」ものの、その長さが不明である点。 《相違点3》について検討する。 本件発明1の「第2凹部」は、「0.25~5mmの前記第1方向の長さを有する」ものであることの技術的意義について、本件特許明細書には「第2凹部の第1方向及び第2方向の長さは、溝部の溝幅、即ち隣り合う凸部の間の距離にもよるが、0.25~5mmであることが好ましく・・・第2凹部の第1方向や第2方向の長さが0.25mm未満であると、第2凹部が小さくなりすぎて第2底部の形成が不十分になるため、第2凹部がほとんど機能しない可能性がある。逆に5mm超であると、第2凹部が大きくなりすぎて、凹部による違和感や異物感を感じ易くなる可能性がある。」(段落【0029】を参照)と記載され、第2凹部の機能について、「第2凹部の存在により、第1凹部の第1底部が肌に接する面積が抑えられて、柔軟な肌触りを得ることができる。これにより、不織布全体として柔軟な肌触りが得られる上、凸部を形成する繊維が手の指の指紋の隣り合う突起部間にある平坦部分や、突起部の側面部分にある触覚器官を刺激するため、繊細で柔らかく、肌になじみ易くてしっとりした感触を得ることができる。」(段落【0016】を参照)と記載されている。 ゆえに、本件発明1では、「第2凹部」の「第1方向の長さ」を、「0.25~5mm」という特定の範囲内に設定することが、その技術的課題である「手の指が接触した際に、繊細で柔らかな、肌になじむような感触を得ることができる吸収性物品用の不織布を提供する」(段落【0006】を参照)ことを達成することに密接に関係していることが明らかである。 一方、甲3発明の「凹状の部分」の「長手(Y)方向の長さ」に関し、刊行物3には、「表面シート2では、1つの谷部2bの内部には複数の連結部2eが所定の間隔寸法Pで形成されており、前記谷部2bの両サイドに隣接する山部2a,2aどうしが連結されている。前記連結部2eは、繊維自体の弾性が高いため、体圧により生じる表面シート2の変形量を最小にできる。また前記連結部2eの弾性は、体圧が解除されると表面シート2を元の状態へ戻す復帰力として作用する。このため、前記表面シート2は優れた回復力を有するので着用者が激しく運動しても型崩れすることを防止できる。」と記載されているのみである。 ゆえに、甲3発明において、「隣り合う前記連結部2eの間に前記長手(Y)方向に不連続に設けられ」る「凹状の部分」の「長手(Y)方向の長さ」は、「連結部2e」が奏すべき「体圧により生じる表面シート2の変形量を最小にでき」るという機能が発揮されることを妨げない程度に設定されるものと解するのが相当である。 してみると、この《相違点3》は、実質的かつ本質的な相違点であるから、本件発明1は、刊行物3に記載された発明ではない。 そして、上記のように設定されるべき長さを、本件発明1の発明特定事項である「0.25~5mm」という特定の範囲とするべき動機や示唆について、刊行物3には記載されていないし、刊行物1~15のいずれにも記載されていない。 また、意見書とともに提出された甲第16号証は、本件発明1の第2凹部に対応する凹部エンボス8a(8b)のライナー1の長手方向寸法を0.3~4mmとすることが記載されているものの、甲3発明において、「連結部2e」が奏すべき「体圧により生じる表面シート2の変形量を最小にでき」るという機能が発揮されることを妨げない程度の「凹状の部分」の長さが「0.3~4mm」であることを示唆するものではない。 ゆえに、本件発明1は、甲3発明、甲4記載事項、甲5記載事項、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものであるとはいえない。 さらに、本件発明2~9は、本件発明1を限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物3に記載された発明ではなく、甲3発明、甲4記載事項、甲5記載事項、甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものでもない。 (エ)甲6発明に基づく、進歩性について a.甲6発明 刊行物6には、その特許請求の範囲の【請求項7】、発明の詳細な説明の段落【0001】~【0006】、【0010】~【0015】、【0024】、【0027】、【0031】~【0034】、【図1】~【図3】の記載からみて以下の甲6発明が記載されている。 《甲6発明》 一方の面と該一方の面とは反対側の他方の面とを有し、前記他方の面から前記一方の面の方向に向けて突出する複数の畝部14と、前記一方の面から前記他方の面の方向に向けて窪んだ複数の溝部13とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む、肌に触れる箇所に用いられる、不織布製の表面シート10であって、 前記畝部14は、前記表面シート10の平面方向における長手方向(MD)に向けて延設されていると共に、前記表面シート10の平面方向において前記長手方向と直交する幅方向(CD)に予め定めた間隔で設けられ、 前記溝部13は、前記幅方向(CD)に対して相互に隣り合う前記畝部14の間の空間に、前記長手方向(MD)に向けて延設されていて、前記畝部14の頂部における前記一方の面の位置よりも他方の面の方向に位置する底部を備えた凹部と、前記凹部内において前記長手方向(MD)に不連続に設けられ、前記底部に開口する窪み状に形成された、前記底部よりも前記他方の面の方向に位置する別の底部を備え、前記長手方向(MD)の長さを有する、複数の接合部15とを有し、 前記畝部14の頂部とその畝部14と隣り合う他の前記畝部14の頂部との間の距離が1~6mmである、表面シート10。 b.対比、判断 本件発明1と甲6発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 《相違点4》 本件発明1の「第2凹部」は、「0.25~5mmの前記第1方向の長さを有する」ものであるのに対し、甲6発明の「接合部15」は、「前記長手方向(MD)の長さを有する」ものの、その長さが不明である点。 《相違点4》について検討する。 甲6発明の「接合部15」の「長手方向(MD)の長さ」に関し、刊行物3には、何も記載されていない。 ゆえに、甲6発明において、「接合部15」の「長手方向(MD)の長さ」は、「接合部15」が奏すべき所望の接合強度に応じて設定されるものと解するのが相当である。 そして、その設定される長さを、本件発明1の発明特定事項である「0.25~5mm」という特定の範囲とするべき動機や示唆について、刊行物6には記載されていないし、刊行物1~15のいずれにも記載されていない。 また、意見書とともに提出された甲第16号証は、本件発明1の第2凹部に対応する凹部エンボス8a(8b)のライナー1の長手方向寸法を0.3~4mmとすることが記載されているものの、甲6発明において、「接合部15」が奏すべき所望の接合強度に応じて設定された「接合部15」の長さが「0.3~4mm」であることを示唆するものではない。 ゆえに、本件発明1は、甲6発明、甲5記載事項、甲7記載事項、甲3記載事項及び甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものであるとはいえない。 さらに、本件発明2~9は、本件発明1を限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲6発明、甲5記載事項、甲7記載事項、甲3記載事項及び甲11記載事項~甲13記載事項に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものでもない。 イ.理由3について 理由3.は、凸部の高さ、凸部の幅及び凸部頂部の幅、溝部の深さ、溝部の幅、凸部の幅と溝部の幅の比について特定していない本件発明1~9は、溝部の幅が極端に狭い形態を含み得るものであり、本件特許明細書の段落【0043】、【0044】の記載を踏まえると、【0006】に記載された課題を解決し得ない場合も含むものであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないというものである。 これに関し、本件特許明細書には、以下の記載がある。 (ア)【0002】 例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品において、トップシート等の構成部材として用いられる不織布は、使用者の肌に触れる部分であることから、柔軟で肌触りが良いことが大きな条件となる。 そのため、近年では、肌と接触する面に、複数列の凸部と、隣り合う凸部の間の空間に設けられた溝部とが設けられた不織布が用いられることが多くなっているが、このような不織布は、比較的柔軟な凸部が肌に接触し、またその凸部が肌面にフィットし易いため、不織布の柔軟性を感じ易い傾向にある。 (イ)【0006】 本発明の技術的課題は、手の指が接触した際に、繊細で柔らかな、肌になじむような感触を得ることができる吸収性物品用の不織布を提供することにある。 (ウ)【発明の効果】 【0016】 本発明によれば、凸部を形成する繊維の平均繊維径が、手の指の指紋の突起部の間の幅よりも小さく、また隣り合う凸部の頂部の間の距離を予め定めた範囲内としたことにより、前記凸部を形成する繊維を、手の指の指紋の凹凸に沿わせ易く、また前記凸部を形成する繊維を、突起部間に入り込ませ易い。一方で、第2凹部の存在により、第1凹部の第1底部が肌に接する面積が抑えられて、柔軟な肌触りを得ることができる。これにより、不織布全体として柔軟な肌触りが得られる上、凸部を形成する繊維が手の指の指紋の隣り合う突起部間にある平坦部分や、突起部の側面部分にある触覚器官を刺激するため、繊細で柔らかく、肌になじみ易くてしっとりした感触を得ることができる。 (エ)【0043】 ・・・ 本発明において、凸部の頂部とその凸部と隣り合う他の凸部の頂部との間の距離を0.5~2mmとしたのは、手の指が不織布に触れた際に、凸部と凸部との間に入り込ませた指紋の突起部のすべてを、その凸部と凸部との間において不織布に確実に接触させて、突起部の側面部分等を刺激し易くするためである。この凸部の頂部とその凸部と隣り合う他の凸部の頂部との間の距離も、前述の凸部を形成する繊維の平均繊維径と並んで、繊細で柔らかく、肌になじみ易くてしっとりした感触の不織布を得るための非常に重要な要素である。 ・・・ (オ)【0044】 さらには、凸部の頂部とその凸部と隣り合う他の凸部の頂部との間の距離が0.5mm未満であると、凸部の頂部と隣り合う凸部の頂部との距離が短すぎて不織布が凹凸構造を形成しているとは言い難く、結果として凸部による肌との接触面積をあまり減らすことができないため、肌触りが低下する可能性がある。 上記(ア)、(オ)にあるように、本件発明1~9は、凹凸構造、すなわち、凸部と溝部とを有するものを前提としたものであって、「前記第2面から前記第1面の方向に向けて突出する複数の凸部と、前記第1面から前記第2面の方向に向けて窪んだ複数の溝部とを備え」ることを発明特定事項としており、上記(イ)の課題を解決し、上記(ウ)の効果を得るために、上記(エ)にその技術的意義が説明されている「前記凸部の頂部とその凸部と隣り合う他の前記凸部の頂部との間の距離が0.5~2mmであり」、「前記凸部を形成する繊維の平均繊維径が10~30μmである」ことに加え、「溝部は、・・・第2凹部を有す」ることをも、発明特定事項としているものである。 してみると、本件発明1~9は、もはや凹凸構造とはいえず、溝部が第2凹部を有し得ないような、溝部の幅が極端に狭い形態をも含み得るものと解すべきではないから、上記(イ)の課題を解決し得ない場合も含むものとはいえない。 したがって、本件発明1~9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。 (4)むすび 以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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