特許異議申立
2016-700516
ガラスクロス
- 審判番号
- 2016-700516
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-159612
- 登録番号
- 特許第5831665号(P5831665)
- 請求日
- 2016年06月06日
- 審決日
- 2017年03月07日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東紡績株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人創成国際特許事務所
- 【異議申立人】ユニチカグラスファイバー 株式会社
- 【異議申立人代理人】田中 順也
- 【異議申立人代理人】水谷 馨也
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 山田 由希子
- 審判官 蓮井 雅之
- 分類
- P1651.113-YAA(D03D) / P1651.121-YAA(D03D) / P1651.161-YAA(D03D) / P1651.536-YAA(D03D) / P1651.537-YAA(D03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5831665号発明「ガラスクロス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5831665号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第5831665号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5831665号の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年8月12日に特許出願され、平成27年11月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人ユニチカグラスファイバー株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年9月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月29日(受付日)に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から平成29年1月10日(受付日)に意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正するもので、以下のア~チの訂正事項1~17からなるものである。
ア 訂正事項1
請求項1の
「20~220cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える」を
「20~150cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える」に訂正し、
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが80~100本/25.4mmの範囲にあり」を
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあり」に訂正し、
「該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06~1.60の範囲にある」を
「該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にある」に訂正する。
イ 訂正事項2
本件特許明細書の段落【0008】の
「20~220cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える」を
「20~150cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える」に訂正し、
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが80~100本/25.4mmの範囲にあり」を
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあり」に訂正し、
「該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06~1.60の範囲にある」を
「該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にある」に訂正する。
ウ 訂正事項3
同段落【0010】の
「20~220cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える」を
「20~150cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える」に訂正し、
「通気度が220cm3/cm2/秒」を
「通気度が150cm3/cm2/秒」に訂正する。
エ 訂正事項4
同段落【0012】の
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが80~100本/25.4mmの範囲にある」を
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にある」に訂正し、
「織密度が80本/25.4mmとした場合には」を
「織密度が93本/25.4mmとした場合には」に訂正する。
オ 訂正事項5
同段落【0015】の
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06~1.60の範囲にある」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にある」に訂正する。
カ 訂正事項6
同段落【0016】の
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06未満であると、前記通気度が220cm3/cm2/秒を超え」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20未満であると、前記通気度が150cm3/cm2/秒を超え」に訂正する。
キ 訂正事項7
同段落【0017】の
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.60を超えると」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.40を超えると」に訂正する。
ク 訂正事項8
同段落【0019】の2箇所の
「220cm3/cm2/秒」を
「150cm3/cm2/秒」に訂正する。
ケ 訂正事項9
同段落【0021】の
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが80~100本/25.4mmの範囲にあり」を
「該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあり」に訂正し、
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06~1.60の範囲にある」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にある」に訂正する。
コ 訂正事項10
同段落【0027】の
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)は、好ましくは、1.20~1.50であり、より好ましくは、1.25~1.40の範囲であり」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)は、より好ましくは、1.25~1.40の範囲であり」に訂正する。
サ 訂正事項11
同段落【0028】の
「20~220cm3/cm2/秒の範囲」を
「20~150cm3/cm2/秒の範囲」に訂正する。
シ 訂正事項12
同段落【0033】、【0048】の
「実施例2」を
「参考例」に訂正する。
ス 訂正事項13
同段落【0033】の
「本実施例」を
「本参考例」に訂正する。
セ 訂正事項14
同段落【0049】の
「実施例1,2のガラスクロス」を
「実施例1のガラスクロス」に訂正し、
「通気度が130~220cm3/cm2/秒であり」を
「通気度が130cm3/cm2/秒であり」に訂正する。
ソ 訂正事項15
同段落【0050】の
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06未満である」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20未満である」に訂正し、
「通気度が220cm3/cm2/秒を超えており」を
「通気度が150cm3/cm2/秒を超えており」に訂正する。
タ 訂正事項16
同段落【0051】、【0052】の
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.60を超える」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.40を超える」に訂正する。
チ 訂正事項17
同段落【0053】の
「緯糸の織密度が80本/25.4mm未満」を
「緯糸の織密度が93本/25.4mm未満」に訂正し、
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06未満である」を
「比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20未満である」に訂正し、
「通気度が220cm3/cm2/秒を超えており」を
「通気度が150cm3/cm2/秒を超えており」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)アの訂正事項1は、「通気度」を「20~220cm3/cm2/秒の範囲」から「20~150cm3/cm2/秒の範囲」に減縮し、「経糸の織密度(Dt)」と「緯糸の織密度(Dy)」を「80~100本/25.4mmの範囲」から「93~100本/25.4mmの範囲」に減縮し、「該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)」を「1.06~1.60の範囲」から「1.20~1.40の範囲」に減縮しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「通気度」に関しては段落【0019】に「本実施形態のガラスクロスは、・・・、20~220cm3/cm2/秒、好ましくは、40~200cm3/cm2/秒、より好ましくは、50~150cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備える。」との記載があり、「経糸の織密度(Dt)」と「緯糸の織密度(Dy)」に関しては段落【0027】に「前記経糸の織密度(Dt)及び緯糸の織密度(Dy)は、好ましくは、93~97本である。」との記載があり、「該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)」に関しては段落【0027】に「前記経糸の質量(Wt)と経糸の織密度(Dt)との積に対する緯糸の質量(Wy)と緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)は、好ましくは、1.20~1.50であり、より好ましくは、1.25~1.40の範囲であり、さらに好ましくは、1.27~1.37の範囲であり、特に好ましくは、1.28~1.34の範囲である。」との記載があるから、新規事項の追加に該当しない。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
上記(1)イ~チの訂正事項2~17は、上記訂正事項1に対応して、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1についての訂正を認める。
3.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「経糸と緯糸とから構成され、7~14μmの範囲の厚さと、1m2当たり7~14gの範囲の質量と、20~150cm3/cm2/秒の範囲の通気度とを備えるガラスクロスであって、
該経糸と該緯糸とは、3.5~4.4μmの範囲で実質的に同一の平均直径を備えるガラスフィラメントを複数本集束してなり、1m当たり5.0×10-7~1.7×10-6kgの範囲の質量を備え、
該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあり、
該経糸の質量(Wt)に対する該緯糸の質量(Wy)の比(Wy/Wt)が1.26~1.42の範囲にあり、
該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にあることを特徴とするガラスクロス。」
4.取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
なお、当該取消理由において採用しなかった特許異議申立理由はない。
1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
2)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
5)本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
甲1:特願2015-20376(特開2016-84567)
甲2:国際公開第2015/033731号
甲3:JIS R 3413:2012「ガラス糸」、日本規格協会
甲4:JIS R 3420:2013「ガラス繊維一般試験方法」、日本規格協会
甲5:2016年5月25日付けでユニチカグラスファイバー株式会社技術部の服部剛士が作成した実験成績証明書
<理由1>
請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明である。
<理由2>
請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明である。
<理由3>
請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。
<理由4>
請求項1に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
<理由5>
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
5.判断
(1)取消理由1(特許法第29条の2)について
甲1に記載された発明は、通気度が20~150cm3/cm2/秒の範囲のものであるとの特定がない。
そして、甲5を参酌しても、甲1に記載された発明における通気度が、20~150cm3/cm2/秒の範囲内であるとすることはできない。
してみると、請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明でない。
よって、取消理由1によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。
(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号)について
甲2に記載された発明は、通気度が20~150cm3/cm2/秒の範囲のものであるとの特定がない。
そして、本件訂正後の参考例(本件訂正前の実施例2)は、
「経糸と緯糸とから構成され、7~14μmの範囲の厚さと、1m2当たり7~14gの範囲の質量と、を備えるガラスクロスであって、
該経糸と該緯糸とは、3.5~4.4μmの範囲で実質的に同一の平均直径を備えるガラスフィラメントを複数本集束してなり、1m当たり5.0×10-7~1.7×10-6kgの範囲の質量を備え、
該経糸の織密度(Dt)と該緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあり、
該経糸の質量(Wt)に対する該緯糸の質量(Wy)の比(Wy/Wt)が1.26~1.42の範囲にあり、
該経糸の質量(Wt)と該経糸の織密度(Dt)との積に対する該緯糸の質量(Wy)と該緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にあるガラスクロス。」
ではあるものの、
通気度は「20~150cm3/cm2/秒の範囲」ではないことから、通気度以外のパラメータが、本件発明に含まれるものであっても、必ずしも通気度が上記本件発明に特定された範囲である「20~150cm3/cm2/秒の範囲」となるわけではないと解される。
したがって、甲2に記載された発明の通気度が20~150cm3/cm2/秒の範囲のものであるとは、必ずしもいえない。
してみると、請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明でない。
よって、取消理由2によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。
(3)取消理由3(特許法第29条第2項)について
上記(2)のとおり、甲2に記載された発明の通気度が20~150cm3/cm2/秒の範囲のものであるとは、必ずしもいえない。
さらに、甲2には、経糸の質量(Wt)に対する緯糸の質量(Wy)の比(Wy/Wt)、及び、経糸の質量(Wt)と経糸の織密度(Dt)との積に対する緯糸の質量(Wy)と緯糸の織密度(Dy)との積の比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)を、所定の範囲にすることで、ピンホールが発生するという不都合を解消しつつ、製織性が良好で、プリプレグ製造時に反りの発生を抑制するとの課題を達成するとの技術的思想が記載されていない。
ここで、通気度を調整する方法として、経糸の織密度(Dt)や、緯糸の織密度(Dy)や、経糸の質量(Wt)や、緯糸の質量(Wy)を調整することが考えられるところ、比(Wy/Wt)、及び、比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)を所定の範囲にするとの技術的思想のない甲2に記載された発明において、比(Wy/Wt)が1.26~1.42の範囲にあり、比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にあり、かつ、通気度が20~150cm3/cm2/秒の範囲にあるとすることは、そのような数値範囲にすることの動機に欠けるといわざるを得ない。
そして、本件発明では、比(Wy/Wt)が1.26~1.42の範囲にあり、比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にあり、通気度が20~150cm3/cm2/秒の範囲にあることで、ピンホールが発生するという不都合を解消しつつ、製織性が良好で、プリプレグ製造時に反りを発生させることがないとの効果を奏するものである(段落【0006】~【0007】、【0010】、【0013】~【0017】)。
してみると、請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものでない。
よって、取消理由3によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。
(4)取消理由4(特許法第36条第6項第1号)について
取消理由4の詳細は、以下のア及びイのとおりであった。
ア 請求項1では、経糸の織密度(Dt)と緯糸の織密度(Dy)とが80~100本/25.4mmの範囲にあることが規定されている。
しかし、発明の詳細な説明に記載されている実施例1、2では、経糸の織密度(Dt)と緯糸の織密度(Dy)はいずれも95本/25.4mmである。
一方、発明の詳細な説明に記載されている比較例4では、緯糸の織密度(Dy)は78本/25.4mmである。
してみると、少なくとも緯糸の織密度(Dy)が80本/25.4mmである場合には、実施例1、2よりも、比較例4に近似しているから、発明の効果が奏されることが、発明の詳細な説明において実証されているとはいえない。
イ 請求項1では比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.06~1.60の範囲にあることが規定されている。
しかし、発明の詳細な説明に記載されている実施例1、2では、当該比は1.28及び1.30である。
一方、発明の詳細な説明に記載されている比較例4では、当該比は1.05である。
してみると、少なくとも緯糸の当該比が1.06である場合には、実施例1、2よりも、比較例4に近似しているから、発明の効果が奏されることが、発明の詳細な説明において実証されているとはいえない。
しかし、請求項1に係る発明は、訂正により、経糸の織密度(Dt)と緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあるものとなり、比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にあるものとなった。
よって、取消理由4によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。
(5)取消理由5(特許法第36条第4項第1号)について
取消理由5の詳細は、上記(4)ア及びイのとおり、発明の効果が奏されることが、発明の詳細な説明において実証されているとはいえないから、発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない、というものであった。
しかし、上記(4)のとおり、請求項1に係る発明は、訂正により、経糸の織密度(Dt)と緯糸の織密度(Dy)とが93~100本/25.4mmの範囲にあるものとなり、比(Wy×Dy)/(Wt×Dt)が1.20~1.40の範囲にあるものとなった。
よって、取消理由5によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700516