特許無効審判
2014-800037
- 審判番号
- 2014-800037
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2004-141248
- 登録番号
- 特許第5142002号(P5142002)
- 請求日
- 2014年03月10日
- 審決日
- 2015年10月01日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】ユニチカ 株式会社
- 【請求人代理人】田中 順也
- 【請求人代理人】山田 威一郎
- 【請求人代理人】中村 小裕
- 【請求人代理人】水谷 馨也
- 【請求人代理人】立花 顕治
- 【請求人代理人】阿部 清二
- 【請求人代理人】毛利 裕一
- 【被請求人】日東紡績 株式会社
- 【被請求人代理人】特許業務法人浅村特許事務所
- 【被請求人代理人】井上 洋一
- 【被請求人代理人】浅村 昌弘
- 【被請求人代理人】松川 直樹
- 審判長/審判官
- 審判長 栗林 敏彦
- 審判官 渡邊 豊英
- 審判官 河原 英雄
- 分類
- P1113.121-ZAA(B32B) / P1113.536-ZAA(B32B) / P1113.537-ZAA(B32B) / P1113.1 -ZAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第123条第1項第2号、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第4号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5142002号発明「透明不燃性シート及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
請求のとおり訂正を認める。
特許第5142002号の請求項1ないし3及び7に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
【理 由】
<< 目 次 >>
第1.請求及び答弁の趣旨
第2.手続の経緯
第3.訂正請求について(1.~9.)
第4.本件発明
第5.無効理由についての当事者の主張及び証拠方法(1.~2.)
第6.無効理由についての当審の判断
1.甲1、8~10の記載事項((1)~(4))
2.無効理由1(甲1による進歩性欠如)について
(1)本件発明1と甲1発明との対比、一致点及び相違点
(2)本件発明1と甲1発明との相違点の検討(1)
-甲10の適用について(ア.~カ.)
(3)本件発明1と甲1発明との相違点の検討(2)
-甲9の適用について(ア.~カ.)
(4)~(8)
3.無効理由2(甲8による進歩性欠如)について((1)~(6))
4.無効理由3(甲9による進歩性欠如)について((1)~(6))
5.無効理由4(甲10による進歩性欠如)について((1)~(6))
6.無効理由5(実施可能要件違反)について
7.無効理由6(サポート要件違反)について
8.無効理由7(明確性要件違反)について
9.当審無効理由について
10.備考
第7.むすび
第1.請求及び答弁の趣旨
請求人は、訂正を認めない、本件特許の請求項に係る全ての発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めている。
被請求人は、訂正を認める、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
第2.手続の経緯
本件に係る主な手続の経緯を以下に示す。
平成16年 5月11日 本件特許出願
平成24年11月30日 設定登録(特許第5142002号)
平成26年 3月10日付け 審判請求
平成26年 5月29日付け 審判事件答弁書
平成26年 6月 2日付け 審理事項通知
平成26年 6月27日付け 口頭審理陳述要領書(第1回)(請求人)
平成26年 6月27日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成26年 7月10日付け 審理事項通知(2)
平成26年 7月23日付け 口頭審理陳述要領書(第2回)(請求人)
平成26年 7月23日付け 口頭審理陳述要領書(第2回)(被請求人)
平成26年 7月23日 口頭審尋(無効2014-800024号
と審理を併合した。)
平成26年 8月20日付け 口頭審理陳述要領書(第3回)(請求人)
平成26年 8月20日付け 意見書(被請求人)
平成26年 9月17日付け 口頭審理陳述要領書(第4回)(請求人)
平成26年 9月17日付け 口頭審理陳述要領書(第3回)(被請求人)
平成26年10月 7日付け 上申書(請求人)
平成26年10月 7日付け 上申書(被請求人)
平成26年10月 7日 口頭審理(口頭審理終了時に無効2014
-800024号(以下、「元併合事件」と
いう。)と審理を分離した。)
平成26年10月27日付け 上申書(被請求人)
平成26年11月 5日付け 上申書(請求人)
平成27年 3月16日付け 審決の予告
平成27年 5月18日付け 訂正請求及び上申書(被請求人)
平成27年 6月25日付け 無効審判弁駁書及び上申書(請求人)
平成27年 7月 3日付け 訂正拒絶理由通知及び職権審理結果通知
平成27年 8月 6日付け 意見書、手続補正書(訂正請求書)
及び上申書(被請求人)
平成27年 8月11日付け 上申書(被請求人)
平成27年 8月24日付け 審理終結通知
以下、「甲第1号証」等及び「乙第1号証」等を、それぞれ「甲1」等及び「乙1」等と略記し、「口頭審理陳述要領書」を単に「要領書」ということがある。
第3.訂正請求について
1.当事者の主張
請求人は、訂正後の請求項1ないし3及び7に係る訂正請求は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内においてしたものでなく、不適法であるから認容すべきでないと主張している。
被請求人は、請求項1ないし3についての請求項ごとの訂正、請求項4ないし6の削除、及び新たな請求項7を追加して行う請求項7についての請求項ごとの訂正を請求し、訂正請求は適法であるから認められるべきであると主張している。
2.訂正請求書の補正について
被請求人は、平成27年8月6日付けで、訂正請求書を補正する手続補正を行った。
この手続補正は、(ア)補正前の訂正請求書の訂正事項7の適法性についての説明部分に「JIS K 7142のB法」と誤記していたものを、「JIS K 7142」と正しい記載に補正するとともに、(イ)当該補正に合わせて適法性についての説明を補正するものである。
この手続補正は、要旨変更に該当しないから、補正を認める。
3.請求項1の訂正について
請求項1の訂正は、訂正事項1及び2からなっている。
ア.訂正事項1について
(ア)訂正事項1は、訂正前の請求項1では透明不燃性シートを構成する「ガラス組成物」と「樹脂組成物」の屈折率について測定方法が規定されていなかったところ、これら屈折率が「JIS K 7142に従って測定される測定値である」と規定するものである。
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の規定に適合する。
(イ)請求項1は、「ガラス繊維を構成するガラス組成物」と「樹脂組成物」との「屈折率の差」についての規定を含んでいる。透明不燃性シートの光学的特性である全光線透過率やヘーズに影響を与えるのは、透明不燃性シートに含まれる「ガラス繊維」と「樹脂組成物」との「屈折率の差」であることは明らかである。請求項1における「ガラス組成物」の「屈折率」は、「ガラス繊維」の状態の「ガラス組成物」の「屈折率」を意味しているといえる。繊維状物の屈折率を測定する方法として、ベッケ法が周知である(乙1)。本件特許明細書には、「樹脂組成物」の屈折率の測定法としてではあるが、JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」(甲28)で屈折率を測定することが説明されており、そのうちのB法は「ベッケ法」である。そうすると、「ガラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」を「JIS K 7142に従って測定」することは、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内の事項といえる。訂正事項1は、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項1は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)訂正事項1は、適法である。
イ.訂正事項2について
(ア)訂正事項2は、訂正前の請求項1ではガラス繊維の種類が規定されていなかったところ、ガラス繊維の種類を「Eガラス」と規定するものである。訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の規定に適合する。
(イ)ガラス繊維の種類が「Eガラス」であることは、本件特許明細書段落0098に記載されているから、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項2は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)訂正事項2は、適法である。
ウ.訂正事項1及び2は、いずれも適法であるから、請求項1の訂正を認める。
4.請求項2の訂正について
請求項2の訂正は、訂正事項3ないし5からなっている。
ア.訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、独立形式の請求項に改めるものである。訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号の規定に適合する。
訂正事項3が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
訂正事項3は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
訂正事項3は、適法である。
イ.訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2では「ガラス組成物」と「樹脂組成物」の屈折率の測定方法が規定されていなかったところ、それらを「前記硬化樹脂層の屈折率の値は、JIS K 7142のB法に従って測定される測定値であり、前記ガラス繊維織物を構成するガラス組成物の屈折率の値はJIS K 7142のB法におけるプラスチックをガラスに替えた方法に従って測定される測定値であり」と規定するものである。
訂正事項4は、上記3(請求項1の訂正について)アで検討したのと同様の理由により適法である。
ウ.訂正事項5は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2ではガラス繊維の種類が規定されていなかったところ、ガラス繊維の種類を「Eガラス」と規定するものである。
訂正事項5は、上記3(請求項1の訂正について)イで述べたのと同様の理由により、適法である。
エ.訂正事項3ないし5は、いずれも適法であるから、請求項2の訂正を認める。
5.請求項3の訂正について
請求項3の訂正は、訂正事項6ないし8からなっている。
ア.訂正事項6は、訂正前の請求項3が、訂正前の請求項1又は2を引用する形式であったものを、独立形式の請求項に改めるものであり、訂正前の請求項1を引用する発明を訂正後の請求項3とし、訂正前の請求項2を引用する発明を新たな請求項7とするものである。訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号の規定に適合する。
訂正事項6が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
訂正事項6は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
訂正事項6は、適法である。
イ.訂正事項7は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3では「ガラス組成物」と「樹脂組成物」の屈折率の測定方法が規定されていなかったところ、それらを「JIS K 7142のB法に従って測定される少なくとも小数第3位まで測定される測定値」であると規定するものである。
この訂正のうち、「JIS K 7142のB法」に従う旨訂正する点は、上記3(請求項1の訂正について)アで検討したのと同様の理由により、適法である。
屈折率を「少なくとも小数第3位まで測定される測定値」と訂正する点について検討する。本件特許明細書の段落0083、0085には、「ガラス組成物」と「樹脂組成物」の屈折率が、それぞれ小数第3位までの値で示されている。そうすると、屈折率を「少なくとも小数第3位まで測定される測定値」とすることは、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内の事項といえる。訂正事項7は、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
訂正事項7は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
訂正事項7は、適法である。
ウ.訂正事項8は、ガラス繊維の種類を「Eガラス」と規定するものである。訂正事項8は、上記3(請求項1の訂正について)イで検討したのと同様の理由により、適法である。
エ.訂正事項6ないし8は、いずれも適法であるから、請求項3の訂正を認める。
6.請求項4ないし6の訂正について
請求項4ないし請求項6を削除する訂正(訂正事項9ないし11)は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、適法であるから、訂正を認める。
7.請求項7の訂正について
請求項7の訂正は、訂正事項6及び、12ないし15からなっている。
ア.訂正事項6は、上記5(請求項3の訂正について)アで述べたとおり、適法である。
イ.訂正事項12は、訂正事項6によって新たに設けられた請求項7では「ガラス組成物」と「樹脂組成物」の「アッベ数」について「有効数字」が規定されていなかったところ、アッベ数の有効数字を「有効数字を少なくとも2桁でそれぞれ求めた前記ガラス組成物と前記樹脂組成物のアッベ数」と規定するものである。
訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の規定に適合する。
本件特許明細書段落0105の表1では、ガラス繊維織物のアッベ数が「58」と2桁で示され、樹脂のアッベ数が「50.5」と3桁で示されている。「ガラス組成物と樹脂組成物のアッベ数」を「有効数字を少なくとも2桁でそれぞれ求めたアッベ数」とすることは、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内の事項といえる。訂正事項12は、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
訂正事項12は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
訂正事項12は、適法である。
ウ.訂正事項13は、訂正事項6によって新たに設けられた請求項7で「……を超えない、透明不燃性シートであり」と規定されていた事項を、「……を超えない、ように成形される透明不燃性シートから選択される透明不燃性シートであり」と訂正するものである。この訂正は「物」の発明としての「防煙垂壁」の構成要件を減縮するものとはいえないが、下記第4で分説して示す各構成要件が、いずれも並列的に発明を規定する構成要件であることを明瞭にする訂正といえる。訂正事項13は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号の規定に適合する。
訂正事項13は、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内の事項といえるから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
訂正事項13は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項が準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
訂正事項13は、適法である。
エ.訂正事項14は、訂正事項6によって新たに設けられた請求項7では「ガラス組成物」と「樹脂組成物」の屈折率の測定方法が規定されていなかったところ、これらを「前記硬化樹脂層の屈折率の値は、JIS K 7142のB法に従って少なくとも小数第3位まで測定される測定値であり、前記ガラス繊維織物を構成するガラス組成物の屈折率の値はJIS K 7142のB法におけるプラスチックをガラスに替えた方法に従って少なくとも小数第3位まで測定される測定値であり」と規定するものである。
訂正事項14は、上記5(請求項3の訂正について)イで検討したのと同様の理由により、適法である。
オ.訂正事項15は、ガラス繊維の種類を「Eガラス」と規定するものである。訂正事項15は、上記3(請求項1の訂正について)イで検討したのと同様の理由により、適法である。
カ.訂正事項6及び、12ないし15は、いずれも適法であるから、請求項7の訂正を認める。
8.明細書については、訂正の前後で実質的な変更(訂正)がない。
9.小括
以上のとおりであるから、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりの訂正を認める。
第4.本件発明
上記のとおり、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりの訂正が認められた。本件特許の請求項1ないし3及び7に係る発明を分説して示せば、次のとおりである。本件においては、構成要件A、M、N、J1は欠番である。
【請求項1】
A1.透明不燃性シートからなる防煙垂壁であって、
B.該透明不燃性シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラ
ス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シートであっ
て、
C.前記硬化樹脂がビニルエステル樹脂であり、
D.前記ガラス繊維織物が30~70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層
が70~30重量%であり、
F.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であ
り、
G.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下であり
、
H.全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であり、
I.輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射
熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8
MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10
秒以上継続して200kW/m2を超えない透明不燃性シートであり、
J.前記屈折率の値は、JIS K 7142に従って測定される測定値で
あり、
O.前記ガラス繊維はEガラスからなる、
K.防煙垂壁。
【請求項2】
A1.透明不燃性シートからなる防煙垂壁であって、
B.該透明不燃性シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラ
ス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シートであっ
て、
C.前記硬化樹脂がビニルエステル樹脂であり、
D.前記ガラス繊維織物が30~70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層
が70~30重量%であり、
F.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であ
り、
G.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下であり
、
H.全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であり、
I.輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射
熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8
MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10
秒以上継続して200kW/m2を超えない透明不燃性シートであり、
L.前記透明不燃性シートが、前記ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の
隙間が0.5mm以下であり、又は、前記ガラス繊維織物中の隣接する
緯糸の間の隙間が0.5mm以下であり、
J2.前記硬化樹脂層の屈折率の値は、JIS K 7142のB法に従って
測定される測定値であり、前記ガラス繊維織物を構成するガラス組成物
の屈折率の値はJIS K 7142のB法におけるプラスチックをガ
ラスに替えた方法に従って測定される測定値であり、
O.前記ガラス繊維はEガラスからなる、
K.防煙垂壁。
【請求項3】
A1.透明不燃性シートからなる防煙垂壁であって、
B.該透明不燃性シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラ
ス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シートであっ
て、
C.前記硬化樹脂がビニルエステル樹脂であり、
D.前記ガラス繊維織物が30~70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層
が70~30重量%であり、
F.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であ
り、
G.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下であり
、
H.全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であり、
I.輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射
熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8
MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10
秒以上継続して200kW/m2を超えない透明不燃性シートであり、
E.前記透明不燃性シートが、前記透明不燃性シート1m2当たり、前記一
対の硬化樹脂層の重量が15~500gの範囲であり、
J4.前記屈折率の値は、JIS K 7142に従って少なくとも小数第3
位まで測定される測定値であり、
O.前記ガラス繊維はEガラスからなる、
K.防煙垂壁。
【請求項7】
A1.透明不燃性シートからなる防煙垂壁であって、
B.該透明不燃性シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラ
ス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シートであっ
て、
C.前記硬化樹脂がビニルエステル樹脂であり、
D.前記ガラス繊維織物が30~70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層
が70~30重量%であり、
F.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であ
り、
G1.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対
の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差として、有効数字
を少なくとも2桁でそれぞれ求めた前記ガラス組成物と前記樹脂組成物
のアッベ数の差が30以下であり、
H.全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であり、
I1.輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射
熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8
MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10
秒以上継続して200kW/m2を超えない、
P.ように成形される透明不燃性シートから選択される透明不燃性シートで
あり、
E.前記透明不燃性シートが、前記透明不燃性シート1m2当たり、前記一
対の硬化樹脂層の重量が15~500gの範囲であり、
L.前記ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の隙間が0.5mm以下であ
り、又は、前記ガラス繊維織物中の隣接する緯糸の間の隙間が0.5m
m以下であり、
J3.前記硬化樹脂層の屈折率の値は、JIS K 7142のB法に従って
少なくとも小数第3位まで測定される測定値であり、前記ガラス繊維織
物を構成するガラス組成物の屈折率の値は前記JIS K 7142の
B法におけるプラスチックをガラスに替えた方法に従って少なくとも小
数第3位まで測定される測定値であり、
O.前記ガラス繊維はEガラスからなる、
K.防煙垂壁。
第5.無効理由についての当事者の主張及び証拠方法
以下、本件特許の請求項1ないし3及び7に係る発明を、「本件発明1」ないし「本件発明3」及び「本件発明7」といい、これらを総称する場合には「本件発明」ということがある。
1.請求人の主張の要旨及び証拠方法
(1)請求人の主張の要旨
審理の全趣旨からみて、請求人は、本件発明1ないし3及び7並びに訂正前の請求項1ないし3に係る発明は、いずれも以下のア~キに示す無効理由1ないし無効理由7によって無効にされるべきであると主張している。そして、下記(2)に示す証拠方法を提示している。
請求人は、被請求人が提出した乙1ないし乙28並びに乙30ないし乙35の成立を認めており、審決予告後の平成27年5月18日付け上申書に添付して提出された乙36ないし乙38については、成立を否認する旨の主張をしていない。乙29は欠番である。
ア.無効理由1(甲1による進歩性欠如)
本件発明は、甲1に記載された発明に、甲2ないし甲57に記載された技術及び各甲号証に例示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
イ.無効理由2(甲8による進歩性欠如)
本件発明は、甲8に記載された発明に、甲1ないし甲7並びに甲9ないし甲57に記載された技術及びこれら甲号証に例示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
ウ.無効理由3(甲9による進歩性欠如)
本件発明は、甲9に記載された発明に、甲1ないし甲8並びに甲10ないし甲57に記載された技術及びこれら甲号証に例示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
エ.無効理由4(甲10による進歩性欠如)
本件発明は、甲10に記載された発明に、甲1ないし甲9並びに甲11ないし甲57に記載された技術及びこれら甲号証に例示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
オ.無効理由5(実施可能要件違反)
本件特許における発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないので、特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
カ.無効理由6(サポート要件違反)
本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないので、特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
キ.無効理由7(明確性要件違反)
本件発明は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものとはいえないので、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(2)請求人が提示した証拠方法
甲1:米国特許第5240058号明細書及びその部分訳
甲2:実公昭52-49208号公報
甲3:特開平11-76442号公報
甲4:実公昭55-41234号公報
甲5:実公昭53-40005号公報
甲6:特公昭55-44984号公報
甲7:特公昭52-43014号公報
甲8:米国特許第5090163号明細書及びその部分訳
甲9:清野担、外2名、“ガラスクロス補強透明難燃シート(エスロンUT
シート)”、40th FRP CON-EX'95 講演要旨集、社団法人強化プラスチッ
ク協会、1995年、B-27/1~B-27/2頁
甲10:特開平5-123869号公報
甲11:国際公開第03/064535号
甲12:特開平5-294671号公報
甲13:特開平9-110948号公報
甲14:特開2001-261367号公報
甲15:建設省住宅局建築指導課監修、『平成12年6月1日施行 改正建
築基準法(2年目施行)の解説』、新日本法規出版株式会社、平成12年
7月19日、17、185~187、343~350頁
甲16:日本複合材料学会 複合材料活用辞典編集委員会、『複合材料活用
事典』、株式会社産業調査会、2001年4月20日、352~359
頁
甲17:津田健、“FRP構成素材入門 第1章 FRPとその構成素材”、
日本複合材料学会誌、一般社団法人日本複合材料学会、2007年、
33巻4号、11~20頁
甲18:特開2003-276113号公報
甲19:大塚保治、“高分子材料の光学的性質”、日本ゴム協会誌、社団法
人日本ゴム協会、1988年12月、61巻12号、805~812頁
甲20:実用プラスチック事典編集委員会、『実用プラスチック事典』、
株式会社産業調査会、1993年5月1日、523~526頁
甲21:川村隆之、“レンズ特性とその選択について”、視覚の科学、日本
眼科紀要会、2004年6月26日、25巻2号、51~56頁
甲22:『防耐火性能試験・評価業務方法書』、一般財団法人建材試験セン
ター、平成12年6月1日制定、平成24年4月1日変更、41~46
頁
甲23:特開2001-311235号公報
甲24:特願2010-260764号(本件特許の分割出願)の審査にお
いて、被請求人が平成24年8月10日に提出した意見書
甲25:本件特許出願の審査において、被請求人が平成21年12月25日
に提出した意見書
甲26:梅棹忠夫、外3名監修、『日本語大辞典第二版』、株式会社講談社
、1997年9月2日(第二版第五刷)、1909頁
甲27:山根正之、外6名編、『ガラス工学ハンドブック』、株式会社朝倉
書店、2007年3月30日(初版第4刷)、130~133頁
甲28:日本工業標準調査会審議、『日本工業規格 プラスチック-屈折率
の求め方 JIS K 7142:2008』、一般財団法人日本規格協
会、平成20年1月20日
甲29:日本工業標準調査会審議、『日本工業規格 化学製品の屈折率測定
方法 JIS K 0062-1992』、一般財団法人日本規格協会、
平成4年7月31日
甲30:特開2008-105287号公報
甲31:株式会社ライフアートプランテックのウェブサイトの「パラスモー
ク」が掲載されたページのハードコピー(印刷物)、(http://web.arch
ive.org/web/20130422220520/http://www.lap-parasmork.jp/Jisseki.
html)、印刷日:2014年6月11日
甲32:被請求人が東京地方裁判所に平成26年5月1日付けで提出した
特許権侵害差止等請求事件の訴状(平成26年(ワ)10848号)
甲33:帝人株式会社のウェブサイトの「性能一覧表」が掲載されたページ
のハードコピー(印刷物)、(http://tent.teijin.co.jp/awning/pdf/
capability_list.pdf)
甲34:『膜材料解説書』、泉株式会社
甲35:ユニチカ株式会社ガラス繊維開発部の堀越裕樹が作成した2014
年6月27日付け『実験成績証明書』
甲36:大塚保治、“高分子物性入門講座5 有機ポリマーの光学的性質”
、高分子、公益社団法人高分子学会、1984年3月1日、33巻(1
984年3月号)、266~273頁及び227頁
甲37:一般財団法人建材試験センターのウェブサイトの「回答編」が掲載
されたページのハードコピー(印刷物)、(http://www.jtccm.or.jp/ma
in_services/seino/seino_qa/seino_Q_38_A_Q_38_A/seino_Q_38_A_Q_38
_Akaitou_Q_38_Akaitou.html)、印刷日:2014年6月27日
甲38:五頭辰紀、“発熱性試験法による防火性能評価”、平成15年度
建築研究発表・討論会 聴講資料、国立研究開発法人建築研究所・国土
交通省国土技術政策総合研究所、平成15年5月21日、防火2-1~
防火2-4
甲39:特開2006-212820号公報
甲40:特開2003-73973号公報
甲41:ユニチカ株式会社ガラス繊維開発部の堀越裕樹が作成した2014
年7月16日付け『実験成績証明書』
甲42:増田剛、“Topics 地震被害 防煙垂れ壁のガラスがまた落下 懸念
される破損ガラスによる人身被害”、日経アーキテクチュア、株式会社
日経BP、2003年7月7日号、080~082頁
甲43:三好清隆、“三陸南地震におけるガラス防煙垂壁の被害記録と教訓
”、建築技術、株式会社建築技術、2003 August No.643、平成15年8
月1日、164~165頁
甲44:三好清隆、“宮城県連続地震におけるガラス防煙垂壁の被害記録と
教訓-その2-”、建築技術、株式会社建築技術、2003 October No.64
5、平成15年10月1日、175~177頁
甲45:三好清隆、“十勝沖地震におけるガラス防煙垂壁の被害記録と教訓
”、建築技術、株式会社建築技術、2003 December No.647、平成15年
12月1日、204~207頁
甲46:特開2014-40033号公報
甲47:日東紡績株式会社が製造する不燃透明ガラスクロスシート「ダンク
リア(R)」のカタログ
甲48:株式会社ビニテンのウェブサイトの「ダンクリア(R)」が掲載され
たページのハードコピー(印刷物)、(http://www.vinyten.co.jp/clo
th/1251/)、印刷日:平成26年5月14日
甲49:株式会社日本テント製作所のウェブサイトの「ケムストップ」が掲
載されたページのハードコピー(印刷物)、(http://www.nihontent.c
om/wp2/%E5%8F%96%E6%89%B1%E5%95%86%E5%93%81/%E3%82%B1%E3%83%A0%E
3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97/)、印刷日:平成26年5月1
4日
甲50:株式会社島津製作所のウェブサイトの「屈折率測定法の種類」が掲
載されたページのハードコピー(印刷物)、(http://www.shimadzu.co.jp
/opt/guide2/02.html)、印刷日:平成26年8月10日
甲51:金井英三、“ガラスの徐冷”、窯業協会誌、社団法人窯業協会、6
3集708号、昭和30年5月1日、203~210頁
甲52:境野照雄、外2名、“圧力を利用したガラスの屈折率測定装置の試
作”、圧力技術、社団法人日本高圧力技術協会、16巻4号、昭和53
年7月25日、169~174頁
甲53:柳田裕昭、“20.2 ガラスの屈折率”、『ガラスの百科事典』、株
式会社朝倉書店、2008年7月20日(第2刷)、564~565頁
甲54:森谷太郎、外3名、『ガラス工学ハンドブック』、株式会社朝倉書
店、昭和47年9月15日(9版)、690~691頁
甲55:ユニチカ株式会社ガラス繊維開発部の堀越裕樹が作成した2014
年8月18日付け『実験成績証明書』
甲56:弁護士 山田威一郎が作成した平成26年8月20日付け『写真撮
影報告書』
甲57:クラレ株式会社のウェブサイトの「<パラグラス>の光学特性」及
び「<コモグラス>の光学特性」が掲載されたページのハードコピー
(印刷物)、(http://www.paraglas.jp/art/optics.html)、印刷日:平
成26年10月3日
甲58:ショット日本株式会社 アドバンスドオプティクス事業部、
“SCHOTT glass made of ideas 光学ガラス 2014年版 特性の説明”、
14、18及び19頁
甲59:東レ株式会社のウェブサイトの「フィルム物性項目」「光学特性
」が掲載されたページのハードコピー(印刷物)、(http://www.toray.
jp/films/knowledge/kno_002_5.html)、印刷日:平成27年3月20日
甲60:東京地方裁判所における平成26年(ワ)10848号、特許権侵害
行為差止等請求事件において、被請求人が平成27年1月7日に提出し
た第3準備書面の1頁及び62頁
甲61:株式会社古河テクノマテリアルのウェブサイトの「防災製品 ケー
ブル、建築配管など」「FAQ:材料について」が掲載されたページの
ハードコピー(印刷物)、(https://www.furukawa-ftm.com/bousai/faq/
zairyou.htm)、印刷日:平成27年3月20日
甲1~甲26は、審判請求書と同時に提出され、甲27~甲61はその後提出された。
2.被請求人の主張の要旨及び証拠方法
(1)被請求人の主張の要旨
審理の全趣旨からみて、被請求人は、本件発明1ないし3及び7には、請求人が主張する無効理由1ないし7並びに口頭審尋において当審が通知した当審無効理由1及び当審無効理由2はいずれも理由がないと主張し、仮に、訂正請求が認められないとしても、訂正前の請求項1ないし3に係る発明には、請求人が主張する無効理由1ないし7並びに当審が通知した当審無効理由1及び当審無効理由2はいずれも理由がないと主張している。そして、下記(2)に示す証拠方法を提出している。
被請求人は、請求人が提出した甲1ないし甲57の成立を認めており、審決予告後の平成27年6月25日付け無効審判弁駁書に添付して提出された甲58及び、同日付上申書に添付して提出された甲59ないし甲61について成立を否認する旨の主張をしていない。
(2)被請求人が提示した証拠方法
乙1:岡島三郎、“繊維に対する偏光顕微鏡の使い方”、高分子、公益社団
法人高分子学会、昭和31年5月20日、Vol.5、No.51、58~62頁
、70頁
乙2:特許第4370654号公報
乙3:特許第4483058号公報
乙4:特許第4807961号公報
乙5:特許第4604261号公報
乙6:特許第4424044号公報
乙7:特許第5162369号公報
乙8:笹川勝好、“眼鏡レンズ用プラスチック材料”、熱硬化性樹脂、合成
樹脂工業協会、平成6年12月10日、第15巻第4号、11~20頁
乙9:日本複合材料学会 複合材料活用辞典 編集委員会、『複合材料活用辞
典』、株式会社産業調査会、2001年4月20日、332~333頁
乙10:湯川博、“15.眼鏡用レンズ”、透明ポリマーの屈折率制御、季
刊化学総説、株式会社学会出版センター、1998年11月10日、
第39巻、174~182頁
乙11:繊維学会編、『繊維便覧 第3版』、丸善株式会社、平成16年1
2月15日、104~105頁、186~189頁
乙12:松井二三雄、“第8章 熱硬化性透明樹脂フィルム「リゴライト」
”、『透明プラスチックの最新技術と市場』、株式会社シーエムシー、
2001年5月31日、81~90頁
乙13:河合宏政、“光学用プラスチック材料”、光学、社団法人応用物理
学会(応用物理学会分科会 日本光学会)、1995年2月10日、
第24巻第2号、69~75頁
乙14:大塚保治、“高分子物性入門講座5 有機ポリマーの光学的性質”
、高分子、公益社団法人高分子学会、1984年3月1日、33巻(1
984年3月号)、266~273頁
(当審注:甲36と実質的に同じものである。)
乙15:井手文雄、“1.序論”、透明ポリマーの屈折率制御、季刊化学総
説、株式会社学会出版センター、1998年11月10日、第39巻、
3~13頁
乙16:河合博政、“17.精密光学用プラスチックレンズ材料”、透明ポ
リマーの屈折率制御、季刊化学総説、株式会社学会出版センター、19
98年11月10日、第39巻、191~201頁
乙17:特開2005-8721号公報
乙18:清水保美、山科政雄、“ジアリルフタレート樹脂”、プラスチック
ス、株式会社工業調査会、1998年1月1日、第49巻第1号、15
0~154頁
乙19:特開第2002-138131号公報
乙20:繊維学会編、『繊維便覧 第2版』、丸善株式会社、平成6年3月 25日、194~195頁
乙21:特開第2010-146831号公報
乙22:特開第2003-15435号公報
乙23:建設通信新聞の記事、“防煙垂れ壁 ガラスから不燃シートにシフ
ト”、株式会社日刊建設通信新聞社、2013年6月27日
乙24:株式会社オハラ 計測サービスセンター センター長の増村明が作成
した2004年2月4日付けの『報告書』
乙25:株式会社島津製作所のウェブサイトの「Vブロック法の原理」が掲
載されたページのハードコピー(印刷物)、(http://www.shimadzu.co
.jp/opt/guide2/08.html)、印刷日:平成26年7月16日
乙26:一般社団法人ニューガラスフォーラムのウェブサイトの「国際ガラ
スデータベースINTERGLAD」と題するガラス情報データベースにて、被
請求人がガラス組成物を検索した画面のハードコピー(印刷物)、
(http://www.newglass.jp/interglad_n/gaiyo/info_j.html)
乙27:特開平7-126506号公報
乙28:特許第5115931号公報
(乙29は、欠番)
乙30:ユニチカ株式会社ガラス繊維事業部の「ユニチカ不燃透明軽量シー
ト U-CLEARSHEET ユークリアシート」と題するパンフレ
ット
乙31:被請求人が作成した「製品分析報告書」(東京地方裁判所 平成26
年(ワ)10848号において甲第8号証とされたもの)
乙32:特開平5-286020号公報
乙33:特開平11-157036号公報
乙34:日東紡績株式会社 グラスファイバー事業部門 福島研究所の南和明
及び平山紀夫が2014年10月3日付けで作成した「実験報告書1(
屈折率、アッベ数測定)」
乙35:日東紡績株式会社 グラスファイバー事業部門 技術開発センターの
後藤敏晴が2014年10月3日付けで作成した「実験報告書2(作成
シートの評価)」
乙36:三村量一、“連載/特許法のフロンティア Number 11 進歩性”、
ジュリスト、株式会社有斐閣、2012年10月25日、2012年
11月号(No.1447)、78~86頁
乙37:山根正之、外6名、『ガラス工学ハンドブック(普及版)』、株式会
社朝倉書店、2012年4月20日(第2刷)、513頁及び519頁
乙38:日本建築行政会議編、『建築物の防火避難規定の解説 2012』
、株式会社ぎょうせい、平成26年11月1日(第7版(2012)第8刷)
、77~78頁
乙39:特許第5648139号公報
乙40:特許業務法人浅村特許事務所 情報部の白井悦子が、平成27年4
月27日に、東京都品川区東品川二丁目二番二四号天王洲セントラルタ
ワー 3階のエレベータ前にある「防煙垂壁」を撮影した写真
乙41:特許第5731175号公報
第6.無効理由についての当審の判断
1.甲1、8~10の記載事項
(1)甲1の記載事項、甲1発明
ア.甲1の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1には、煙封じ込めカーテン及び取り付け方法(SMOKE CONTAINMENT CURTAIN SYSTEM AND METHOD OF
INSTALLATION)に関する発明について、次の事項が開示されている。
(ア)「As described briefly above, the curtain containment system
provided by the invention relates to smoke containment curtains
which are suspended from the underside of a roofing deck of a
building and which end at a level far above the floor. The primary
purpose of such a system is to confine smoke generated by a fire
within a building to a small ceiling area and to enable rapid
extraction of that smoke by means of automatically actuated
ventilators.」(カラム3の66行~カラム4の6行)
(簡素に上で述べたように、本発明によって提供されるカーテン封じ込めシステムは、建築物の屋根デッキの下側から垂下され、その端が床よりもはるかに上方の高さにある煙封じ込めカーテンに関する。そのようなシステムの主目的は、建物内の火によって発生した煙を小さな天井エリアに閉じ込め、自動的に始動した換気装置の手段によって、その煙の迅速な引き抜きを可能にすることである。)
(イ)「FIG. 4 illustrates a similar view of a building roof
support structure as was seen in FIG. 2. Bar joist 12, having
flange 14, supports roofing deck 10, all in dashed lines. The
curtain system of the invention is shown suspended from flange 14
so as to hang vertically downward. A double jaw spring clip 162
attaches to upper tubular bar 124 which holds curtain 120 which,
in turn suspends lower bar 128.」(カラム4の61~68行)
(図4は、図2に示された建築物の屋根の支持構造と類似の図を示す。フランジ14を有する棒梁12が、ルーフデッキ10を支持しており、全体が破線で示されている。本発明のカーテンシステムは、垂直方向に垂れ下がるように、フランジ14から吊される。二重あごバネクリップ162が、カーテン120を保持する上側の管状棒124に取り付けられており、(カーテン120は)下側の棒128を吊す。)
(ウ)「Curtain 120 is made of a relatively light weight resin
coated fiberglass fabric which is essentially impervious to smoke
at normal low pressure」(カラム5の5~7行)
(カーテン120は、通常の低圧で煙を基本的に通さない比較的軽量な樹脂で被覆したガラス繊維織物からなる。)
イ.甲1発明
これら開示事項及び図4からみて甲1に開示されている技術的事項を、本件発明1に照らして整理すれば、甲1には次の発明が記載されている。(以下、「甲1発明」という。)
《甲1発明》
a1.建築物の屋根デッキの下側から垂下された、樹脂で被覆したガラス繊
維織物からなる、
k1.煙封じ込めカーテン。
(2)甲8の記載事項、甲8発明
ア.甲8の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲8には、容易に利用できるカーテン煙幕組立品(EASILY ACCESSIBLE SMOKE CURTAIN ASSEMBLY)に関する発明について、次に示す事項が開示されている。
(ア)「The smoke curtain assembly 12 includes a smoke shield 14,
which is formed as a sheet and extends downward mainly
perpendicular to the ceiling 10.」(カラム2の35~38行)
(カーテン煙幕組立品12は、シート状に形成されており、天井10から主に垂直方向に下に伸びている煙シールド14を含む。)
(イ)「The smoke shield 14 is preferably made of glass, but other
natural or synthetic materials such as plastic or wood may also be
used.」(カラム2の38~40行)
(煙シールド14は、好ましくはガラス製であるが、プラスチック又は木のような他の天然又は合成材料でも使用してもよい。)
(ウ)「In the example illustrated in FIG. 4, the smoke shields are
substantially clear, but they may also be tinted or opaque, in
whole or in part.」(カラム5の67行~カラム6の1行)
(図4に示す例において、煙シールドは実質的に透明であるが、これは全体又は一部が着色又は不透明であってもよい。)
(エ)「The invention allows the interior designer or architect the
freedom to choose the material and appearance of the smoke shields
14; indeed, because the smoke shields according to the invention
may be changed easily, the shields themselves may be chosen to be
an attractive element in an interior design, or may be used to
support advertising or other displays.」(カラム6の2~8行)
(本発明は、インテリアデザイナー又は建築家に、煙シールド14の材料及び外観を自由に選択するのを可能にする:実際、本発明の煙シールドは容易に変更し得るので、該シールド自体、インテリアデザインにおいて魅力的な要素となるように決められ得る、又は広告又は他のディスプレイを支えるために使用し得る。)
(オ)上記(ア)の「シート状に形成されており、天井10から主に垂直方向に下に伸びている煙シールド14」及び上記(ウ)の「煙シールドは実質的に透明であるが、これは全体又は一部が着色又は不透明であってもよい」は、煙シールド全体が、無色透明なシート状である形態、すなわち、「透明シート」である形態をも示唆している。
イ.甲8発明
これら開示事項及び図1~図4からみて甲8に開示されている技術的事項を、本件発明1に照らして整理すれば、甲8には次の発明が記載されている。(以下、「甲8発明」という。)
《甲8発明》
a8.天井から主に垂直方向に下に伸びている、透明シートからなる煙
シールドを含むカーテン煙幕組立品であって、
b8.前記透明シートはプラスチックである
k8.カーテン煙幕組立品。
(3)甲9の記載事項、甲9発明
ア.甲9の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲9には、ガラスクロス補強透明難燃シートに関する発明について、次に示す事項が開示されている。
(ア)「ガラスクロス補強透明難燃シート(エスロンUTシート)」(B-27/1頁、1行目に記載された表題)
(イ)「感光性樹脂はこれまで薄膜的に使用される事が一般的で、シート状物等にし日用品や、二次構造材として使用することはほとんどなかった。……我々は数年前から製品化研究に着手して来たが、その一環としてガラスクロスを芯材にし、柔軟で透明な又、火花を貫通させない難燃性を有するシートを開発し、上市する運びとなったのでここに報告する。」(B-27/1頁、「1.はじめに」)
(ウ)「架橋性樹脂シートの弱点である強度を補強する為、今回はガラスヤーンクロスを用いた。これにより引張強度は約100MP程度になり、シートを単独で使用するに十分な強度となった。火花を貫通させない透明且つ柔軟なと言う市場要求があり、技術的興味とマッチしたので開発したが、用途としては単にカーテン類に留まらず種々考えられる。」(B-27/1頁、「2.難燃透明シート(エスロンUTシート)について」)
(エ)「ガラスヤーンクロスを芯材としこれに感光性難燃樹脂組成物を含浸、脱泡し所定の厚みに調整して紫外線硬化したもので架橋物であるため耐熱性に優れる。」(B-27/1頁、「2-1 技術的要点」の1))
(オ)「ガラスと樹脂組成物との屈折率をある範囲内に調整し、又、クロス内の空気を完全に脱泡することで透明性が維持される。……屈折率の許容範囲はガラスの屈折率GD(ここでは D20 1.556)とすると GD+0.015>GD>GD-0.005 となる。」(B-27/1頁、「2-1 技術的要点」の2))(当審注:「>GD>」における「GD」は、樹脂組成物の屈折率を示す何らかの符号(例えば「RD」)の誤記と認める。)
(カ)「難燃性である。 溶接等の火花を貫通させない。……建築用薄物材料の難燃性試験 JIS-A-1322 防炎1級 に合格 建築工事用シートの溶接及び溶断火花に対する難燃性試験JIS-A-1323C種に合格」(B-27/2頁、「2-2 製品の特徴」の1))
(キ)「透明である 又透明着色が可能である。 ヘイズ値20~30 無着色シートでの全光線透過率89%」(B-27/2頁、「2-2 製品の特徴」の2))
(ク)「耐熱性がある 加熱分解温度(JIS-K-7120) 350℃ 常用熱風使用温度 160℃」(B-27/2頁、「2-2 製品の特徴」の4))
(ケ)「鋏で容易に切断でき切断面がほつれず,又,縫製鳩目加工が容易で両面粘着テープで容易に継ぎ足しができる.」(B-27/2頁、「2-2 製品の特徴」の5))
(コ)「ガラス転移点が高く温度低下に従って柔軟性が損なわれるがシートの厚みを薄くすることでガラス繊維の性質が支配的となり耐寒性が良くなる. 尚使用したガラスヤーンクロスの厚み0.1mmである。」(B-27/2頁、「2-3 シートの厚みと耐寒性能」)
また「Table 4 thickness of sheet vs. brittleness at low temperature」と題する表には、厚み0.17~0.38mmの範囲で6種類の厚みのシートについて28℃~-28℃の範囲の7種類の温度において強く折り曲げた際にシートが割れたか割れなかったかを実験した結果が示されている。(同頁同項目)
(サ)「繰返し折曲に弱い(MIT400回) 但し直径100mmのドラムでの巻き上げテストでは10万回クリアー(続行中)、従って巻き上げカーテンには使用可能と思われる.」(B-27/2頁、「2-4 製品の問題点」の3))
(シ)B-27/2頁の「Table 3 mechanical properties of product」と題する表には、「通常品」の重量が「328g/m2」であり、「引裂強度補強品」の重量が「375g/m2」であることが記載されている。
(ス)上記(エ)の記載から、甲9のガラスクロス補強透明難燃シートが「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む」ことは、当業者に明らかである。また、上記(シ)の記載から「一対の硬化樹脂層」の重量が「375g/m2」より小さい構成が開示されていることが明らかである。
(セ)上記(オ)の「GD+0.015>GD>GD-0.005」(当審注:上記(オ)で指摘したとおり「>GD>」における符号「GD」は、樹脂組成物の屈折率を示す他の何らかの符号の誤記である。ここでは、その符号を仮に「RD」とする。)という式から、ガラスの屈折率GDと樹脂組成物の屈折率RDとの差GD-RDが0.005未満であるものが含まれていることが分かる。すると、上記(オ)には、甲9のガラスクロス補強透明難燃シートが「透明難燃シートを構成するガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.005未満」である構成が開示されている。また、上記(キ)からみて、全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%である構成が開示されている。
イ.甲9発明
これら開示事項からみて甲9に開示されている技術的事項を、本件発明1に照らして整理すれば、甲9には次の発明が記載されている。(以下、「甲9発明」という。)
《甲9発明》
a9.透明難燃シートからなるカーテン類であって、
b9.前記透明難燃シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前
記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明難燃シー
トであって、
e9.前記透明難燃シート1m2当たり、前記一対の硬化樹脂層の重量
が375g/m2より小さい範囲であり、
f9.前記透明難燃シートを構成するガラス繊維織物中のガラス繊維を
構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成
物との屈折率の差が0.005未満であり、
h9.全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%である、
i9.建築用薄物材料の難燃性試験 JIS-A-1322 防炎1級 に
合格し、かつ、建築工事用シートの溶接及び溶断火花に対する難燃性
試験JIS-A-1323C種に合格している、
k9.カーテン類。
(4)甲10の記載事項、甲10発明
ア.甲10の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲10には、ウエルディングカーテン材に関する発明について、次に示す事項が開示されている。
(ア)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、溶接や溶断作業等において発生する火花を遮断して火災発生を予防できるウエルディングカーテン材に関する。
【0002】【従来の技術】従来、ウエルディングカーテン材としては、軟質塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂製の透明シートならなるものが知られている……。しかし、この種のウエルディングカーテン材は、熱可塑性樹脂製であるため、燃焼したり、溶接や溶断作業の際に生ずるノロやスパッタ等の火花が貫通して孔があき易い。
【0003】溶接、溶断作業の際に生ずるノロやスパッタ等の火花の貫通を防止できるウエルディングカーテン材として、炭素繊維などの無機繊維の織物又は不織布、或いはガラス繊維の織物又は不織布にシリコン樹脂等をコーテイングしたものが用いられている。」
(イ)「【0004】【発明が解決しようとする課題】前者の熱可塑性樹脂製透明シートからなるウエルディングカーテン材のうち、軟質塩化ビニル樹脂製のものは、JIS-A-8952に定められた火災安全の評価基準に達している。しかし、この火災安全の評価基準は、シート自体が燃え広がることなくて火災に進展しないことが基準とされており、軟質塩化ビニル樹脂製シートからなるウエルディングカーテン材であっても、ノロやスパッタ等の高温の火花に触れると溶けて孔があき易い。そのため、その孔から火花が貫通して火災が発生する危険性があり、JIS-A-1323に規定されているようなより高度の火災安全基準には満足せず、使用範囲が限定されるものであった。
【0005】後者の炭素繊維等の無機繊維の織物、シリコ-ンでコーティングしたガラス繊維の織物又は不織布等からなるウエルディングカーテン材は、JIS-A-1323に規定されている火災安全の評価基準に満足するものであるが、不透明であるか、曇った状態であってその向こう側を見通すことができないという問題があった。そこで、覗き孔をあけ、そこに透明軟質塩化ビニル樹脂シートを貼って覗き窓を形成しているが、そのための手間と費用が嵩み、また、覗き窓部分は火花により孔があく危険性があった。」
(ウ)「【0006】この発明は、上記の点に鑑み、難燃性であることはもちろんのこと、ノロやスパッタ等の高温の火花に触れても孔があくことがなく、かつ、透明性を有し、覗き窓を設けなくともカーテンの向こう側を見通すことができるウエルディングカーテン材を提供することを目的とする。
【0007】【課題を解決するための手段】この発明のウエルディングカーテン材は、光線透過性を有する無機繊維からなる織物又は不織布に難燃性熱硬化性樹脂組成物を含浸して硬化した繊維強化樹脂シートからなるウエルディングカーテン材であって、上記難燃性熱硬化性樹脂組成物の硬化後における屈折率Aと上記無機繊維の屈折率Bとの関係が、次式(1)を満足するものであり、かつ、繊維強化樹脂シートの平行光線透過率が全光線透過率の80%以上であることを特徴とするものである。
【0008】B+0.015≧A≧B-0.005 ・・・・・(1)
上記難燃性熱硬化性樹脂組成物に関しては、ハロゲン化アリールのアクリル誘導体もしくはハロゲン元素を含む不飽和ポリエステル樹脂、該誘導体もしくは不飽和ポリエステル樹脂を溶解し得る液状架橋剤、及び燐含有モノマーよりなり、ハロゲン元素が15~50重量%、燐が1~10重量%含有されているものであることが好ましい。そして、液状架橋剤に関しては、末端ビニル基を1~3個含むアクリル系エステルのモノマーもしくはマクロモノマーからなるものであることが好ましい。」
(エ)「【0010】この発明において、光線透過性を有する無機繊維の織物又は不織布としては、例えば、ガラス繊維のヤーンやロービングを平織り、綾織り、繻子織りなどした織物、ガラス繊維チョップドストランドマットなどのガラス繊維不織布などがあげられる。」
(オ)「【0015】この発明において、無機繊維及び難燃性熱硬化性樹脂組成物を硬化したものの屈折率は、JISK-7105に準拠して測定される20℃の屈折率をいう。この発明のウエルディングカーテン材は、所定の幅、長さに裁断したものを衝立方式や吊り下げ方式のカーテンとして使用されるものであるから、柔軟性があって屈曲性に富み、二次加工性がよいことが好ましい。このため、難燃性熱硬化性樹脂組成物に柔軟剤や難燃性可塑剤を添加するのが好ましい。」
(カ)「【0022】【実施例】以下、この発明のウエルディングカーテン材の実施例について説明する。
(実施例1)光線透過性を有する無機繊維の織物として、屈折率1.5555のガラスヤーン平織りクロス(幅500mm、厚さ100μm、目付け100g/m2)を用い……低粘度の予備含浸液に浸漬含浸させ、十分に水切りした。
【0023】この予備含浸液を含浸させた平織りガラスヤーンクロスに、テトラブロモビスフェノールA-ビスアクリレート(臭素含有率42重量%)100重量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート40重量部、ビスフェノールA-エポキシアクリレート(SP-2500、昭和高分子社製)20重量部、ジフェニル-2-メタクロイルオキシエチルホスフェート(燐含有率8.6重量%)20重量部、トリスジクロロプロピルホスフェート(難燃性可塑剤:燐含有率7.2重量%、塩素含有率48.6重量%)20重量部、光重合剤(ダロキュアー1173、メルク社製)2重量部からなる基本難燃性熱硬化性樹脂組成物を、クロス100gに対してほぼ280gの割合で塗布含浸させ、ローラーでよく予備含浸液と混ぜ合わせた。次いで、その両面に125μm厚さのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムを被覆し、これを0.5mm間隔のローラー間に通して脱泡するとともに平滑化した後、紫外線を照射して硬化した。」
(キ)「【0036】このシートについて、JIS-K-7105に準拠して測定した、全光線透過率、平行光線透過率、平行光線透過率/全光線透過率及び像解明度(くし幅0.5mm)、並びにJIS-A-1323に準拠して行った難燃性試験(B種試験:鋼板厚さ4.4mm、C種試験:鋼板厚さ3.2mm)の結果は表1に示すとおりであった。」
(ク)段落0037の表1には、「実施例1」のウエルディングカーテン材について、ガラス繊維の屈折率が1.5555、熱硬化性樹脂組成物硬化シートの屈折率が1.5557、繊維強化熱硬化性樹脂シート(ウエルディングカーテン材)が透明であること、全光線透過率が91.8%、平行光線透過率が78.6%、JIS-A-1323に準拠して行った難燃性試験のB種試験及びC種試験のいずれにも適合していること、が記載されている。
(ケ)甲10の実施例1の繊維強化熱硬化性樹脂シートは、難燃性で透明性を有する(上記(ウ))から、「透明難燃性シート」と呼ぶことができる。また、上記(カ)から、この「透明難燃性シート」が、「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む」ことは、当業者に明らかである。
(コ)甲16の356頁に「(c)ビニルエステル樹脂 エポキシ当量の大きなエポキシ樹脂……にアクリル酸(メタクリル酸)を反応させて二重結合を導入した構造が基本である。」と記載され、甲17の16頁に「3.3ビニルエステル樹脂……代表的なものはビスフェノールAタイプである.ベースとなるのはbis-A EPのエポキシ部分をアクリル化したもので,エポキシアクリレート樹脂とも呼ばれていた…….Bis-A EPに不飽和一塩基酸を反応させて,エポキシ基に代えて,末端に二重結合>C=C<を導入した構造とする.不飽和一塩基酸としては図10に示すアクリル酸あるいはメタクリル酸が代表的なものである.」と記載されているように、ビニルエステル樹脂とは、エポキシ樹脂にアクリル酸(メタクリル酸)を反応させて二重結合を導入した構造が基本となっている樹脂である。
甲10の実施例1において、「基本難燃性熱硬化性樹脂組成物」は、「テトラブロモビスフェノールA-ビスアクリレート」及び「ビスフェノールA-エポキシアクリレート」を含んでおり(上記(カ))、これらはいずれも重合してビニルエステル樹脂となる化合物であるから、前記「基本難燃性熱硬化性樹脂組成物」が硬化してなる硬化樹脂は、「ビニルエステル樹脂」といえる。
(サ)上記(ク)から甲10の実施例1の「透明難燃性シート」では、ガラス繊維の屈折率と、熱硬化性樹脂組成物硬化シートの屈折率との差が0.0002であることが分かる。また、上記(ク)からヘーズが約14%であることが分かる(審判請求書42頁9~16行参照)。
イ.甲10発明
これら開示事項からみて甲10に開示されている発明を、本件発明1に照らして整理すれば、甲10には次の発明が記載されている。(以下、「甲10発明」という。)
《甲10発明》
a10.透明難燃性シートからなる吊り下げ方式のウエルディングカーテン
であって、
b10.前記透明難燃性シートが少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記
ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明難燃性シートで
あり、
c10.前記硬化樹脂がビニルエステル樹脂であり、
f10.前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記
一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.0002
であり、
h10.全光線透過率が91.8%であり、ヘーズが約14%であり、
i10.JIS-A-1323に準拠して行った難燃性試験のB種試験及び
C種試験のいずれにも適合している透明難燃性シートである、
k10.ウエルディングカーテン。
2.無効理由1(甲1による進歩性欠如)について
(1)本件発明1と甲1発明との対比、一致点及び相違点
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「建築物の屋根デッキの下側から垂下された煙封じ込めカーテン」は、本件発明1の「防煙垂壁」に相当する。
本件発明1の構成要件Bの「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シート」は、「樹脂で被覆したガラス繊維織物」の一形態であることが当業者に明らかである。したがって、甲1発明の「樹脂で被覆したガラス繊維織物」と本件発明1の「透明不燃性シート」とは、「樹脂で被覆したガラス繊維織物」である限りにおいて相当する。
甲1発明の「樹脂で被覆したガラス繊維織物」は、その文言から「少なくとも1枚のガラス繊維織物」を含み、ガラス繊維織物の少なくとも一方の表面を被覆する樹脂層を有することが、当業者に明らかである。すると、本件発明1の「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シート」と、甲1発明の「樹脂で被覆したガラス繊維織物」とは、「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物の少なくとも一方の表面を被覆する樹脂層と、を含む」限りにおいて相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
《本件発明1と甲1発明との一致点》
A1’.樹脂で被覆したガラス繊維織物からなる防煙垂壁であって、
B1’.該樹脂で被覆したガラス繊維織物が、少なくとも1枚のガラス繊維
織物と、前記ガラス繊維織物の少なくとも一方の表面を被覆する樹脂層
と、を含む
K. 防煙垂壁。
《相違点1-1》
構成要件A1、Iに関し、本件発明1は、「樹脂で被覆したガラス繊維織物」が「透明不燃性シート」であり「輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」ものであるのに対し、
甲1発明では、「樹脂で被覆したガラス繊維織物」について、このような特定がされていない点。
《相違点1-2》
構成要件F、G、H、Jに関し、本件発明1は、「透明不燃性シート」の「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」と「一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物」との「屈折率の差が0.02以下」で、「アッベ数の差が30以下」であり、透明不燃性シートの「全光線透過率が80%以上」であり、かつ、「ヘーズが20%以下」であり、「屈折率の値は、JIS K 7142に従って測定される測定値」であるのに対し、
甲1発明では、「樹脂で被覆したガラス繊維織物」の「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」と「樹脂層を構成する樹脂組成物」との「屈折率の差」及び「アッベ数の差」が特定されておらず、かつ「樹脂で被覆したガラス繊維織物」の「全光線透過率」及び「ヘーズ」の値が特定されておらず、「屈折率」の測定方法が特定されていない点。
《相違点1-3》
構成要件B、C、Dに関し、本件発明1は、透明不燃性シートが「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む」ものであり、「ガラス繊維織物を挟む一対の樹脂層」の「樹脂」が「ビニルエステル樹脂」であり、「ガラス繊維織物が30~70重量%であり、一対の硬化樹脂層が70~30重量%」であるのに対し、
甲1発明では、樹脂で被覆したガラス繊維織物が「ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層」を含むこと、「樹脂」が「ビニルエステル樹脂」であること、及び「ガラス繊維織物と樹脂層との重量比」が特定されていない点。
《相違点1-4》
構成要件Oに関し、本件発明1は、ガラス繊維がEガラスであるのに対し、甲1発明ではそのように特定していない点。
(2)本件発明1と甲1発明との相違点の検討(1)-甲10の適用について
ア.相違点1-1の検討
(ア)防煙垂壁における周知の課題-不燃性と透明性
(ア-1)甲15の343頁5~8行に天井面から下方に突出した防煙用の垂れ壁を「不燃材料」で造ることが記載されていることなどから、防煙垂壁を不燃性にするという課題は、本件特許の出願前に周知であったといえる。
(ア-2)甲2の2欄(1頁右欄)32~37行の「平常時についてみると、防煙区画用垂れ壁が上述のように透明体であることにより、これが不透明体であるものに比し照明による光を透過せしめて照明効果の低下を少なくできると共に、防煙区画用垂れ壁を透して向側を広く見透せ、空間を広く感じさせ得る利点がある。」という記載、甲3の段落0011の「垂れ壁本体5は、例えば、無色透明の板ガラス5aで構成する。このような板ガラス5aを用いれば、居住者に防煙垂れ壁の存在を意識させることがなく、天井1の近傍の見通しが確保できて圧迫感を生じさせない。」という記載、甲4の1欄(1頁左欄)34~35行の「美観を損い或いは照明効果を阻害しないように壁板として硝子を用いるのが一般的である」という記載、甲5の1欄(1頁左欄)33~34行の「従来防煙用垂れ壁としては室内の美観を損なわないため通常ガラス板が用いられている」という記載、甲6の1欄(1頁左欄)24~30行の「この発明は……防煙用仕切り壁の取付け構造の改良に関する。上記した仕切り壁は天井下面に垂設されるものなので、通常は透明なガラス板を用いて室内の美観を損ねないようにしている。」という記載(甲7の1欄(1頁左欄)22~28行にも同じ記載がある。)からみて、照明効果や美観を損なわず防煙垂壁の存在を意識させることがないように、防煙垂壁を透明で、かつ無色、すなわち透過光の色付きを抑えたものにすることが好ましいという課題は、本件特許の出願前に周知であったといえる。
(イ)不燃性の要件-発熱性試験
(イ-1)甲18の段落0002~0003には、不燃材料の性能について、「平成12年6月1日施行された改正建築基準法に伴い、防火材料の性能規定化がなされ、不燃材料については、加熱開始後20分間、(1)燃焼しないものであること、(2)防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること、(3)避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること、と定められた。さらに、前記(1)と(2)に関しては、さらに細かく発熱性試験が定められ、輻射電気ヒ-タ-から基材の表面に50kW/m2の輻射熱を照射し、i)加熱開始後の20分間の総発熱量が8MJ/m2以下、ii)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がないこと、iii)加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないこと、と定められた。」(当審注:引用文中の(1)等の両括弧付き数字は、原文では丸囲み数字である。)と記載され、甲22の46頁、甲23の段落0004にも同様の内容が記載されている。これらの記載からみて、本件発明1の構成要件Iの発熱性試験における性能規定を含む上記i)~iii)の技術的事項は、不燃の要件として本件特許の出願前に周知であったといえる。
「平成12年6月1日施行された改正建築基準法」でいう「不燃」とは、「加熱開始後20分間、燃焼しないものであること」と定められていることなどから、完全に「不燃」であることを意味するのではなく、上記要件i)~iii)及び上記要件(3)を満足するものを意味していることが明らかである。すなわち、「難燃性」が高度で上記要件i)~iii)を満たし、かつ、「避難上有害な煙又はガスを発生しないもの」ものを「不燃」と呼んでいることが明らかである。
(イ-2)ここで、甲18のi)及びiii)は、本件発明1の構成要件Iの規定に相当する。
本件特許明細書段落0042の「本発明の透明不燃性シートは、輻射電気ヒ-タ-から透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないことが好ましい。本発明の透明不燃性シートが、具体的にどの程度不燃性であるかを建築基準法における評価法に基づいて数値で示したものである。」(下線は当審で付与)という記載からみて、本件発明1の構成要件Aにおける「透明不燃性シート」という要件のうちの「不燃性」は、甲18のii)を満たすことまでは意味していないと認められるが、念のため、以下の検討においては、甲10に開示された発明等が、本件発明1の構成要件Iの規定(甲18の「i)」及び「iii)」に相当)を満たすかを検討するだけでなく、甲18のii)を満たすかについても検討する。
(ウ)甲10の「ウエルディングカーテン材」の不燃性
(ウ-1)甲10の「ウエルディングカーテン材」は、「難燃性であって、溶接や溶断作業等において発生する高温の火花が貫通することなく、火災発生を予防できる。」(甲10段落0039)ものであるから、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、相違点1-1に係る本件発明1の構成要件Iを含む甲18に記載された発熱性試験のi)~iii)を満たし、本件発明1の構成要件である「不燃性」を満たしている蓋然性が高い。これは、請求人が甲10の実施例1の樹脂を再現して、甲18に記載された発熱性試験と同等の「不燃性試験」を行った結果、発熱性試験の要件i)~iii)のすべてを満たすことを確認した甲35によって支持されている。
(ウ-2)用途等に応じて必要な「難燃性」の程度が異なることは周知であり、必要とされる「難燃性」の程度を満たすようにすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。仮に、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」が上記不燃性の要件i)~iii)を満さないとしても、「難燃性」の程度を高めることにより、上記不燃性の要件i)~iii)を満たすようにすることは、次のa)、b)に示すように単なる設計的事項である。
a)「防水・不燃性膜材」の発明が記載された甲40の7頁の表1、表2に、ガラス繊維織布の両面に塩化ビニル樹脂をコーティングした実施例1~5は「塩化ビニル樹脂と可塑剤の合計乾燥質量」が約350g/m2であり、甲18の段落0003に記載したのと同様の燃焼性試験(甲40の7欄(5頁左欄)31~44行)を行った結果「合格」であったが、比較例5は、「塩化ビニル樹脂と可塑剤の合計乾燥質量」が約450g/m2であり、同燃焼性試験に「不合格」であったこと、甲40の13欄(8頁左欄)6~10行に「比較例5においては防水性樹脂被覆層に占める、塩化ビニル樹脂と可塑剤の合計量が400g/cm2を超えているため、総発熱量が8MJ/m2を超え、更に、最高発熱速度も10秒超えて200kW/m2を超えていた。」と記載されていることなどからみて、ガラス繊維織布に樹脂を被覆した膜材、すなわちガラス繊維織布と樹脂とからなる複合材である膜材では、可燃物である樹脂の量を減少させると、不燃性能が向上することが本件特許の出願前に周知であったといえる。
したがって、仮に甲10の実施例1のウエルディングカーテン材が、本件発明1の構成要件I(甲18の発熱性試験の要件「i)」及び要件「iii)」)を満たしていないとしても、樹脂の量を減少させることなどにより、本件発明1の構成要件Iを満たすようにすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項である。
b)甲18に記載された発熱性試験のii)については、甲37の「Q54」に「膜構造に使われる材料のように裏面側に可燃物がないことが明らかである場合には、0.5?(当審注:「?」は「mm」の文字化けと認める。)四方以下の孔であれば、貫通していても所定の性能を有するものとして取り扱われます」という記載や、甲38の防火2-4頁左欄27~30行の「今回生じたこの程度の微細な穴(0.5×0.5mm)は、炎を通さない上、膜材料は通常裏面側に空間が設けられているため、その様な使い方であれば、防火上問題無いと考えられた。」という記載からみて、裏面側に可燃物がない場合には、「0.5mm四方」よりも大きい孔が生じないことを意味するものと認められる。
『日本工業規格 ガラスクロス JIS R 3414-1992』(元併合事件の甲18)の表2に、無アルカリ平織ガラスクロスのたて糸及びよこ糸の25mm当たりの密度が、それぞれ50本を超えるものが複数示されていることなどからみて、たて糸及びよこ糸間の隙間が「0.5mm四方以下」であるガラス繊維織物は、本件特許の出願前に周知であったといえる。ガラス繊維織物それ自体は不燃であるから、たて糸及びよこ糸間の隙間が「0.5mm四方以下」である上記周知のガラス繊維織物に、樹脂を含浸又は被覆したシートを用いれば、甲18に記載した前記発熱性試験においてii)の要件を満たすと認められる。
甲18には「ガラス繊維織物の少なくとも片面に樹脂層を設けた不燃シート材であり、該ガラス繊維織物の経糸および緯糸の密度合計が、59本/25mm以上であり、該経糸または緯糸の撚数が4回/25mm以下であり、且つ該ガラス繊維織物の通気性が7cm3×cm-2×s-1以下であれば、火災で発生した炎・煙・有毒ガス等がガラス繊維織物を介して、ほとんど反対側に通過しないことを見出し、発明を完成するに到った。すなわち、該ガラス繊維織物の通気性が最大で7cm3×cm-2×s-1であれば、ほとんど反対側に通過しないのである。」(段落0016)との記載がある。甲18には、経糸及び緯糸の間の隙間や、経糸及び緯糸の太さについては記載されていないため、経糸及び緯糸の間の隙間がどの程度あるかは不明である。しかし、甲18のガラス繊維織物の通気性が7cm3×cm-2×s-1以下であり、一方、本件特許明細書段落0081に「隣接する経糸の間の隙間、及び、隣接する緯糸の間の隙間は、0.1mm以下である」と記載された本件発明の実施例1~3の通気度は「42cm3/cm2/s」である。通気度(通気性)は、経糸及び緯糸の間の隙間の面積におおむね比例すると考えられるところ、甲18の通気度(通気性)が、本件発明の実施例1~3の通気度(通気性)の「6分の1以下」であることになるから、甲18の「隣接する経糸の間の隙間、及び、隣接する緯糸の間の隙間」は、少なくとも「0.1mm以下である」といえる。そうすると、「経糸および緯糸の密度合計が、59本/25mm」程度の糸密度であっても、経糸及び緯糸間の隙間が「0.5mm四方以下」であるようにすることは、格別な技術的事項ではなく、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項といえる。
したがって、仮に、甲10のウエルディングカーテン材が甲18に記載された発熱性試験のii)を満たしていないとしても、たて糸及びよこ糸間の隙間が「0.5mm四方以下」である上記周知のガラス繊維織物を用いること等により、発熱性試験のii)を満たすようにすることは、当業者が通常行う設計的事項によって適宜なし得る事項といえる。
(エ)甲10を適用する動機付け
甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、上記(ウ)で検討したとおり、防煙垂壁に求められる「不燃性」を備えている蓋然性が高く、仮に「不燃性」を備えていないとしても、「不燃性」を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項である。
さらに、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、透明でもある(甲10段落0037の表1)。
したがって、甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記(ア)で述べた、防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、甲1発明の「煙封じ込めカーテン」の素材である「樹脂で被覆した繊維織物」に代えて、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、必要に応じてガラス繊維織物の構成や樹脂の量等を適宜調整して、防煙垂壁に求められる「不燃性」を備えるようにすること、すなわち本件発明1の構成要件Iを含む甲18の発熱性試験のi)~iii)を満たす「透明不燃性シート」にすることには、動機付けがある。
(オ)小活
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)の素材として甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、必要に応じて適宜の調整をして、相違点1-1に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ.相違点1-2の検討
(ア)甲10の「ウエルディングカーテン材」の透明性
(ア-1)甲10の段落0022~0025及び段落0037の表1には「ウエルディングカーテン材」の発明の実施例1として、「屈折率1.5555のガラスヤーン平織りクロス」に、「基本難燃性熱硬化性樹脂組成物と予備含浸液」とを含浸させ紫外線硬化させたシートで、「基本難燃性熱硬化性樹脂組成物と予備含浸液との全組成物を硬化させた硬化物の屈折率」が、「1.5557」であるシートが、「透明」であり、「全光線透過率」が「91.8%」であり、「平行光線透過率」が「78.6%」であることが記載されている。「全光線透過率91.8%、平行光線透過率78.6%」は、ヘーズ値約14%を意味する(審判請求書42頁9~16行参照)。
すると、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、相違点1-2に係る本件発明1の構成のうち、構成要件H(「全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下」)を満たしている。また、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.0002(1.5557-1.5555)であるから、構成要件F(「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下」)を満たしている。
(ア-2)甲11の「樹脂とガラスとのアッベ数が近いと広い波長領域において両者の屈折率が一致し、広い波長領域で高い光線透過率が得られる。」(8頁16~18行)という記載、甲12の「PC樹脂とガラス繊維のアッベ数が大きく異なると……。……PC樹脂とガラス繊維の界面で光線が散乱し、このため樹脂成形体に色付きが発生する。」(段落0011~0012)という記載などからみて、樹脂とガラス繊維とからなる複合体の技術分野において、樹脂とガラスとのアッベ数の差を小さくすると、広い波長領域で高い光線透過率が得られて透明性が高まり、色付きが抑えられることが、本件特許の出願前に周知の技術的事項であったといえる。また、カーテンや板材を通して向こう側を視認する場合には、向こう側の物に色付きが生じて見える場合よりも、色付きが生じないで見える場合の方を、無色であり透明性が高いと評価することが一般的であるといえる。色付きが少ない状態を、無色の程度が高く透明性が高いとすることは一般的に周知の事項といえる。
さらに、甲19の「図1に,無機系光学ガラスとともに有機ポリマーの屈折率(nd)とアッベ数(νd)を示した.両者とも全体的には高屈折率は低アッベ数の傾向であるが,無機ガラスは高屈折率の領域に広く分布している.」(806頁右欄10~14行)という記載及び図1(同807頁)、甲20の「無機ガラスが比較的自由に屈折率が1.45~1.95、アッベ数が25~80と広い範囲の特性を持つ材料を設計できる」(524頁右欄19~21行)という記載などからみて、ガラスの屈折率とアッベ数とを所望の値に調整することは、本件特許の出願前に周知の技術的事項であったといえる。また、同図1には、樹脂のアッベ数が20~70程度の範囲に分布しており、Eガラス繊維の屈折率とされている屈折率1.558付近の屈折率を有する樹脂のアッベ数は25~55程度の範囲に分布していることが示されている。樹脂のアッベ数がこのように分布していることは、本件特許の出願前に周知の技術的事項であったといえる。
(ア-3)甲10には、実施例1の「ウエルディングカーテン材」が本件発明1の構成要件G(「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下」)を満たしている旨の記載はない。しかし、甲10のウエルディングカーテン材が「透明」(段落0037の表1)であること、及び上記(ア-2)で述べたように樹脂とガラスとのアッベ数の差を小さくすると透明性が高まり、色付きが抑えられることが本件特許の出願前に周知の技術的事項であったことを考慮すると、甲10のウエルディングカーテン材が構成要件G(「アッベ数の差が30以下」)を満たしている蓋然性が高く、仮に構成要件Gを満たしていないとしても、上記(ア-2)で述べた、樹脂とガラスとのアッベ数の差が小さいと透明性が高まるという周知の技術的事項、ガラスの屈折率とアッベ数とを所望の値に調整するという周知の技術的事項、及び樹脂のアッベ数が20~70程度の範囲に分布しており、Eガラス繊維の屈折率とされている屈折率1.558付近の屈折率を有する樹脂のアッベ数は25~55程度の範囲に分布しているという周知の技術的事項を考慮すれば、甲10のウエルディングカーテン材を無色に近づけ、透明性を高めるために、樹脂組成物とガラス繊維組成物とのアッベ数の差が30以下になるようにし、構成要件Gを満たす構成とすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項といえる。
(ア-4)屈折率の測定方法としてJIS K 7142は、周知である。測定試料の作製の容易性、測定精度、測定の容易性等を考慮して、屈折率の測定方法としてJIS K 7142を採用し、構成要件Jを満たす構成とすることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
(イ)小活
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記ア(ア)で述べた、防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、必要に応じて適宜の調整をして、相違点1-2に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ.相違点1-3の検討
(ア)甲10の「ウエルディングカーテン材」の層構成及び樹脂
甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、ガラスヤーン平織りクロスに低粘度の予備含浸液を含浸させた後、基本難燃性熱硬化性樹脂組成物をクロス100gに対してほぼ280gの割合で塗布含浸させローラーでよく予備含浸液と混ぜ合わせ、次いで脱泡するとともに平滑化した後、紫外線を照射して硬化したものである(段落0022~0024参照)から、本件発明1の構成要件Bの「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む」を満たしていることが、当業者に明らかである。
甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」の樹脂は、「硬化樹脂」である「ビニルエステル樹脂」である(上記1(4)ア(カ)、同(コ)及び甲10発明のc10参照)から、本件発明1の構成要件Cを満たしている。
(イ)ガラス繊維織物と樹脂との重量比
(イ-1)甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」のガラスヤーン平織りクロスの重量(目付け)は、100g/m2(段落0022)、基本難燃性熱硬化性樹脂組成物はガラスクロス100gに対してほぼ280gの割合(段落0023)である。甲10には予備含浸液の重量が示されていないが、「低粘度の予備含浸液に浸漬含浸させ、十分に水切りした。」(段落0022)と記載されていることから、予備含浸液の重量はさほど多くないものと推認される。したがって、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」のガラス繊維織物(ガラスヤーン平織りクロス)と樹脂との重量比は、ガラス繊維織物26.3%(=100/(100+280))、樹脂73.7%(=100-26.3)より、ガラス繊維織物の割合が小さいものの、これに比べて極端に小さいものではないといえるが、本件発明1の構成要件Dである「ガラス繊維織物が30~70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層が70~30重量%であり」との要件を満たしてはいない。
(イ-2)しかし、ガラス繊維織物の量や樹脂の量を増やしシートの厚さを増加させるとシートの強度が増加することが一般的に周知の技術的事項であること、上記ア(ウ)(ウ-2)a)で述べたように、可燃物である樹脂の量を減少させると、不燃性能が向上することが本件特許の出願前に周知であったことなどを考慮すると、強度や不燃性の程度等を考慮して樹脂の重量及びガラス繊維織物と樹脂との重量比を適宜調整することは、本件特許の出願前に周知であったといえる。
また、例えば、甲18の実施例1ではガラス繊維織物が340g/m2で樹脂が440g/m2(段落0020)で、ガラス繊維織物が約44重量%、樹脂が約56重量%であることなどからみて、ガラス繊維織物が30~70重量%であり、かつ樹脂層が70~30重量%である要件を満たす重量比とすることは、技術的に格別な事項ではなく当業者が通常行う単なる設計的事項によって適宜なし得ることといえる。
したがって、強度や不燃性の程度等を考慮して甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」のガラス繊維織物と樹脂との重量比を適宜調整し、本件発明1の構成要件Dを満たすようにすることは、当業者が容易になし得ることといえる。
(ウ)小活
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記ア(ア)で述べた防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、「煙封じ込めカーテン」の素材として甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、必要に応じて適宜の調整をして、相違点1-3に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
エ.相違点1-4の検討
相違点1-4について検討する。樹脂と複合化するガラス繊維としてEガラスを用いることは周知である(甲11の8頁19行~9頁6行、甲18段落0009)から、ガラス繊維としてEガラスを用いることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
オ.被請求人の主張について
(ア)被請求人は、「本件発明は、被請求人が『透明で、着色が抑えられ、不燃性で、落下して割れることが防止できるという、従来品では、同時に満たすことができなかった優れた特性を同時に実現できる防煙垂壁を得る』というユニークな課題を設定し、当該課題を解決する手段を本件特許の特許出願において開示したものである」と主張する(平成27年5月18日付け上申書28頁10行~32頁下から3行、平成27年8月6日付け上申書35頁1行~39頁2行)。
しかし、防煙垂壁におけるこれら個々の課題は、いずれも周知又は公知である。ある物について複数の課題が存在する場合、それら全てを同時に解決することが望ましいのは当然である。被請求人が設定した課題は、当業者であれば当然考慮する事項にすぎず、ユニークな課題とはいえない。上で検討したとおり、甲10発明は、これら全ての課題を同時に解決するものである蓋然性が高く、仮に、これら全ての課題を同時に解決するものでなかったとしても、適宜の設計変更を行うことによりこれら全ての課題を同時に解決することができるものである。被請求人の主張は採用できない。
(イ)被請求人は、「透過光の色付きを抑えたものにすることが好ましい」という課題は、屈折率が異なる材質を複合させたものではない板ガラスよりなる甲2~7から把握されることは不可能であると主張する(平成27年5月18日付け上申書32頁下から2行~34頁9行)。確かに、染料等を含有して透明体が固有の色を有するいわゆる「有色透明」とは異なるが、透過光を見ると色付きが生じて見える性質を有する「屈折率が異なる材質を複合させた」透明体についての記載は、甲2~7にはない。
しかし、例えば、甲3の段落0011に「無色透明の板ガラス」と記載されていることなどから、防煙垂壁が「無色」であることが好ましいという課題は、本件特許の出願前に周知であった。透明体を通して向こう側の物体を見たときに色付きが生じてしまうのであれば、当該透明体が「無色」ではないとするのは通常のことであるから、「無色であるのが好ましい」という課題は、「透過光の色付きを抑えたものにすることが好ましい」という課題を内在している。被請求人の主張は採用できない。
(ウ)被請求人は、甲1発明の「煙封じ込めカーテン」と甲10の「ウエルディングカーテン」とは用途も技術分野も異なるから適用の動機付けはないと主張する(平成27年5月18日付け上申書34頁10行~35頁1行)。
しかし、上で検討したとおり、両者は「カーテン」という用途、形態ないしは技術分野が共通し、かつ、「樹脂で被覆したガラス繊維織物」という構成ないしは形態が共通する。被請求人の主張は採用できない。
(エ)被請求人は、甲10のウエルディングカーテンは「目の保護のため、染料などの着色剤を添加」したりするものであるから、「透過光の色付きを抑えたものにする動機付けがない旨主張する(平成27年5月18日付け上申書35頁8行~36頁1行)。
しかし、上記相違点1-2の検討では、「ウエルディングカーテン」を「無色、すなわち透過光の色付きを抑えたものにする」動機付けがあると述べているのではなく、甲1発明の煙封じ込めカーテンの素材として甲10のウエルディングカーテン材を採用した際に、「透明でかつ無色にすることが好ましい」という防煙垂壁における周知の課題に適合させるため、必要に応じてアッベ数を調整して「透過光の色付きを抑えたものにする」ことに動機付けがあると述べているのである。甲10のウエルディングカーテンは、本件発明1の構成要件G「アッベ数差が30以下」を満たしている蓋然性が高く、仮に満たしていないとしても、必要に応じてアッベ数を調整し「無色、すなわち透過光の色付きを抑えたものにする」ことが単なる設計的事項であることは、上記イ(相違点1-2の検討)で述べたとおりである。被請求人の主張は採用できない。
オ.補足-甲1に従来例として開示された発明について
甲1には、「煙閉じ込めカーテン20」に関する発明が従来例として開示されている。この従来例からは、甲1発明に類似した構成を有し、「樹脂含浸ガラス繊維織物」を用いた「煙閉じ込めカーテン」の発明(以下、「甲1発明の2」という。)が把握される。この「甲1発明の2」と本件発明1とを対比すると、その一致点及び相違点は、上で検討した甲1発明と本件発明1との一致点及び相違点とほぼ同様であり、それら相違点は、上で検討したのと同様の理由で、当業者が容易に想到し得たことである。本件発明1は、「甲1発明の2」、甲10の記載事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。
カ.甲10の適用についての結論
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記ア(ア)で述べた防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、「煙封じ込めカーテン」の素材として甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して適宜の調整をし、相違点1-1ないし1-4に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。本件発明1の奏する作用効果も格別顕著なものではなく、甲1発明、甲10に記載された技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測可能なものである。
本件発明1は、甲1発明、甲10に記載された技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明1と甲1発明との相違点の検討(2)-甲9の適用について
ア.相違点1-1の検討
(ア)防煙垂壁における周知の課題-不燃性と透明性
上記(2)ア(ア)で述べたように、防煙垂壁を不燃性にするという課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという課題は、本件特許の出願前に周知であった。
(イ)甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の不燃性
甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」(エスロンUTシート)は、「用途としては単にカーテン類に留まらず種々考えられる。」(上記1(3)ア(ウ))ものであり、かつ、「難燃性である。溶接等の火花を貫通させない。」ものであり「建築用薄物材料の難燃性試験 JIS-A-1322 防炎1級 に合格」及び「建築工事用シートの溶接及び溶断火花に対する難燃性試験JIS-A-1323C種に合格」(上記1(3)ア(カ))しているものである。したがって、甲9のガラスクロス補強透明難燃シートは、相違点1-1に係る本件発明1の構成要件Iを含む、甲18に記載された発熱性試験のi)~iii)を満たしている蓋然性が高く、仮に、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」がこれら要件i)~iii)を満たしていないとしても、これら要件を満たすようにすることは、上記(2)ア(ウ)(ウ-2)で述べたのと同様の理由により、単なる設計的事項である。
(ウ)甲9を適用する動機付け
甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」は、用途の代表例としてカーテン類が示されており(上記1(3)ア(ウ))、かつ、上記(イ)で述べたとおり、防煙垂壁に求められる「不燃性」(上記要件i)~iii))を備えている蓋然性が高く、仮に備えていないとしても、当該「不燃性」を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項である。甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」は、「建築用薄物材料の難燃性試験 JIS-A-1322 防炎1級 に合格」(上記1(3)ア(カ))しており、「建築用薄物材料」として用いることが想定されている。甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」は透明でもある(上記1(3)ア(キ))。
したがって、甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記(ア)で述べた、防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、甲1発明の「煙封じ込めカーテン」の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、「建築用薄物材料」として用いることが想定されている甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」を採用し、必要に応じてガラス繊維織物の構成や樹脂の量等を適宜調整して、防煙垂壁に求められる「不燃性」を備えるようにすること、すなわち甲18の発熱性試験のi)~iii)を満たす「透明不燃性シート」にすることには、動機付けがある。
(エ)小活
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)の素材として甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」を採用し、必要に応じて適宜の調整をし、相違点1-1に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ.相違点1-2の検討
(ア)甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の透明性
(ア-1)甲9には「ガラスクロス補強透明難燃シート(エスロンUTシート)」について、「透明である。……ヘイズ値20~30……無着色シートで全光線透過率89%」(上記1(3)ア(キ))と記載され、また、「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.005未満」である構成が開示されている(上記1(3)ア(セ))。
甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」でヘイズ値20であるものは、相違点1-1に係る本件発明1の構成のうち、構成要件H(「全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下」)を満たしている。また、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」で、「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.005未満」であるものは、構成要件F(「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下」)を満たしている。
(ア-2)甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」が、構成要件G(「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下」)を満たしているかは不明である。
しかし、この「ガラスクロス補強透明難燃シート」が「透明である」(上記1(3)ア(キ))こと、及び上記(2)イ(ア)(ア-2)で述べたように樹脂とガラスとのアッベ数の差を小さくすると色付きが抑えられ、透明性が高まることが本件特許の出願前に周知の技術的事項であったことを考慮すると、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」が構成要件Gを満たしている蓋然性が高く、仮に構成要件Gを満たしていないとしても、上記(2)イ(ア)(ア-2)で述べた、樹脂とガラスとのアッベ数の差が小さいと透明性が高まるという周知の技術的事項、ガラスの屈折率とアッベ数とを所望の値に調整するという周知の技術的事項、及び樹脂のアッベ数が20~70程度の範囲に分布しており、Eガラス繊維の屈折率とされている屈折率1.558付近の屈折率を有する樹脂のアッベ数は25~55程度の範囲に分布しているという周知の技術的事項を考慮すれば、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の透明性を高めるために、樹脂組成物とガラス繊維組成物とのアッベ数の差が30以下になるようにし、構成要件Gを満たす構成のものとすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項といえる。
(ア-3)上記(2)イ(ア)(ア-4)で述べたとおり、屈折率の測定方法としてJIS K 7142を採用し、構成要件Jを満たす構成とすることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
(イ)小活
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記ア(ア)で述べた、防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、甲1発明の「煙封じ込めカーテン」の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、「建築用薄物材料」として用いることが想定されている甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」を採用し、その際、透明性を高めることを考慮し、樹脂とガラス繊維とのアッベ数の差が30以下になるようにして、相違点1-2に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ.相違点1-3の検討
(ア)甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の樹脂
甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の樹脂は、硬化樹脂である(上記1(3)ア(エ))が、ビニルエステル樹脂であるか否かは不明である。
しかし、ビニルエステル樹脂硬化物が、耐熱性、透明性等に優れること、及びビニルエステル樹脂硬化物の強化剤としてガラス繊維を用いることは、例えば甲13の請求項9、段落0002、0012に記載されており、本件特許の出願前に周知の技術的事項であった。さらに、甲10の実施例1には、難燃性で透明な熱硬化性樹脂組成物硬化シートであって、硬化樹脂としてビニルエステル樹脂を用いたものが記載されている。
したがって、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の樹脂として、硬化樹脂であるビニルエステル樹脂を採用することは、当業者が適宜なすべき単なる設計的事項である。
(イ)ガラス繊維織物と樹脂との重量比
甲9に「使用したガラスヤーンクロスの厚み0.1mmである。」と記載され、シートの厚みが0.17mm~0.38mmの6種類が例示されていること(上記1(3)ア(コ))からみて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」は、耐寒性能等の要求に応じて、ガラス繊維織物と樹脂との重量比を適宜調整することが予定されているといえる。
また、ガラス繊維織物の量や樹脂の量を増やしシートの厚さを増加させると、シートの強度が増加することが一般的に周知の技術的事項であること、上記(2)ア(ウ)(ウ-2)で述べたように、可燃物である樹脂の量を減少させると、不燃性能が向上することが本件特許の出願前に周知であったことなどを考慮すると、強度や不燃性の程度等を考慮してガラス繊維織物と樹脂との重量比を適宜調整することは、本件特許の出願前に周知であったといえる。
そして、例えば、甲18の実施例1ではガラス繊維織物が340g/m2で樹脂が440g/m2(段落0020)であり、ガラス繊維織物が約44重量%、樹脂が約56重量%であることなどからみて、ガラス繊維織物が30~70重量%であり、かつ樹脂層が70~30重量%である要件を満たす重量比とすることは、技術的に格別な事項ではなく当業者が通常行う単なる設計的事項によって適宜なし得ることといえる。
(ウ)小活
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記ア(ア)で述べた防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、「煙封じ込めカーテン」の素材として、「建築用薄物材料」として用いることが想定されている甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」を採用し、その際、強度や不燃性の程度等を考慮して、硬化樹脂であるビニルエステル樹脂を使用し、ガラス繊維織物と樹脂との重量比及び樹脂の重量等を適宜調整して、相違点1-3に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
エ.相違点1-4の検討
相違点1-4について検討する。樹脂と複合化するガラス繊維としてEガラスを用いることは周知である(甲11の8頁19行~9頁6行、甲18段落0009)から、ガラス繊維としてEガラスを用いることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
オ.被請求人の主張について
(ア)被請求人は、甲9のガラスクロス補強透明難燃シートは、ハロゲンを含んでいるから、防煙垂壁に用いるという動機付けに対して阻害要因がある旨主張する(審判事件答弁書29頁9~18行、平成26年6月27日付け要領書31頁1~4行、及び平成26年9月17日付け要領書(第3回)15頁下から2行~16頁下から2行)。
しかし、本件特許明細書の段落0030には、難燃剤として、含ハロゲン物質であるクロロエチルホスフェートを硬化樹脂層に配合できることが記載されているから、本件発明1も、ハロゲンを含むガラス繊維強化樹脂シートを防煙垂壁として使用する形態を含むものである。さらに、甲46には、防煙垂壁に適用される不燃性膜材料(段落0006)に、難燃材として有機ハロゲン化合物を配合できることが記載されている(段落0022、0025)し、甲47~甲49から、ハロゲンである塩素を含む塩化ビニールフィルムとガラス繊維基布で構成される商品名「ダンクリア」なる不燃性ガラスクロスシートが、不燃材料認定番号NM-2670を取得し、防煙垂壁として実際に使用されていることが了知できる。
被請求人の主張は、客観的根拠に基づいておらず、むしろ客観的事実に反する。被請求人の主張は採用できない。
(イ)被請求人は、甲9の「カーテン類」に甲1の「煙閉じこめカーテン」ないし「煙封じ込めカーテン」が入っていないことは明らかであるから、甲1発明に甲9を適用する動機付けはないと主張する(平成27年5月18日付け上申書36頁10行~37頁7行)。確かに、甲9の記載からは、甲9の筆者が「カーテン類」に「煙閉じこめカーテン」や「煙封じ込めカーテン」が含まれると意識していたか否かは明確でない。
しかし、甲1及び甲9の記載内容を把握した当業者は、甲1の「煙閉じこめカーテン」及び「煙封じ込めカーテン」並びに甲9の「カーテン類」は、いずれも「カーテン類」であると理解するといえる。甲1発明の「煙封じ込めカーテン」と甲9の「カーテン類」は、「カーテン類」という用途、形態ないしは技術分野で一致するし、甲9は「建築用薄物材料」として用いることが想定されている(上記1(3)ア(カ))。甲1発明に甲9を適用する動機付けはあるといえる。被請求人の主張は採用できない。
(ウ)被請求人は、「防煙垂壁を透明でかつ透過光の色付きを抑えたものにすることが好ましい」という課題は「周知の課題」ではなく(平成27年5月18日付け上申書37頁9~21行)、したがって、甲1発明に甲9を適用した際に、アッベ数を調整し構成要件Gを満たすようにする動機付けはないと主張する(同上申書38頁11行~39頁3行)。
しかし、上記(2)エ(イ)及び同(エ)で述べたのと同様の理由で、被請求人の主張は採用できない。
(エ)被請求人は、甲9には「ヘーズが20%」であるものと、「屈折率の差が0.005未満」であるものが独立に示されているだけで、これらを同時に満たすものは示されていないと主張する(平成27年5月18日付け上申書37頁22行~38頁10行)。確かに、甲9には「ヘーズが20%」でかつ「屈折率の差が0.005未満」であるものが明示されてはいない。
しかし、ヘーズは、屈折率の異なる透明体同士の界面で光が散乱することによって生じる現象であり、屈折率の差が小さいほどヘーズも小さくなることが一般的に知られているし、甲8、甲10、甲11にもそれを示唆する記載がある。さらに、請求人が行った実験でも、屈折率差が大きくなるにつれてヘーズの値も大きくなることが示されている(甲55)。「屈折率の差が0.005未満」で小さい場合には、ヘーズも小さいといえるから、甲9に「ヘーズが20%」でかつ「屈折率の差が0.005未満」である構成が示唆されているとすることは合理的である。現に、甲10には、屈折率の差が0.0002でヘーズが約14%であるものが実施例1として開示されている(上記(2)イ(ア)(ア-1))。また、仮に、甲9には「ヘーズが20%」でかつ「屈折率の差が0.005未満」である構成が開示されていないとしても、屈折率差を小さくし、脱泡を完全にすること等により、ヘーズが20%以下の構成とすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項といえるから、本件発明1が容易になし得たものであるとの結論を左右するものではない。
オ.補足-甲1に従来例として開示された発明について
上記(2)オで述べたように、甲1の従来例から「甲1発明の2」が把握され、「甲1発明の2」と本件発明1との一致点及び相違点は、上で検討した甲1発明と本件発明1の一致点及び相違点とほぼ同様である。そして、それら相違点は、上で検討したのと同様の理由で当業者が容易に想到し得たことである。本件発明1は、「甲1発明の2」、甲9の記載事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。
カ.甲9の適用についての結論
甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)を、上記ア(ア)で述べた防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、「煙封じ込めカーテン」の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」を採用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して適宜の調整をし、相違点1-1ないし1-4に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。本件発明1の奏する作用効果も格別顕著なものではなく、甲1発明、甲9に記載された技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測可能なものである。
本件発明1は、甲1発明、甲9に記載された技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明1と甲1発明との相違点の検討の結論
本件発明1は、甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」又は甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂の種類、ガラス繊維織物と樹脂との重量比、樹脂層の重量等を適宜調整することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求人が主張する無効理由1は、本件発明1について理由がある。
(5)本件発明2について
ア.本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記(1)で述べた《本件発明1と甲1発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点1-1ないし1-4に加え、次の相違点1-5及び1-6でも相違する。
《相違点1-5》
構成要件J2に関し、本件発明2は、「屈折率の値は、JIS K 7142のB法に従って測定される測定値」であるのに対し、甲1発明では、このように特定されていない点。
《相違点1-6》
構成要件Lに関し、本件発明2は、透明不燃性シートが「ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の隙間が0.5mm以下であり、又は、ガラス繊維織物中の隣接する緯糸の間の隙間が0.5mm以下である」のに対し、甲1発明では、これらが特定されていない点。
イ.本件発明2と甲1発明との相違点の検討
(ア)相違点1-1ないし1-4は、上記(2)~(4)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点1-5は、上記(2)イ(ア)(ア-4)で述べたのと同様の理由で、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
(ウ)相違点1-6について検討する。上記(2)ア(ウ)(ウ-2)b)で述べたように、甲18に記載された「不燃材料の性能」のii)を満たすようにすることを考慮して、たて糸(経糸)及びよこ糸(緯糸)間の隙間が「0.5mm四方以下」である周知のガラス繊維織物を用いることは、当業者が適宜なし得ることである。
ウ.小括
本件発明2は、本件発明1について検討したのと同様に、甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」又は甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂の種類、ガラス繊維織物と樹脂との重量比、樹脂層の重量等を適宜調整することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求人が主張する無効理由1は、本件発明2についても理由がある。
(6)本件発明3について
ア.本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点
本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲1発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点1-1ないし1-4に加え、次の相違点1-7及び1-8でも相違する。
《相違点1-7》
構成要件Eに関し、本件発明3は、「透明不燃性シートが1m2当たり、一対の硬化樹脂層の重量が15~500gの範囲である」のに対し、甲1発明では、このように特定されていない点。
《相違点1-8》
構成要件J4に関し、本件発明3は、「屈折率の値は、JIS K 7142に従って少なくとも小数第3位まで測定される測定値」であるのに対し、甲1発明では、このように特定されていない点。
イ.本件発明3と甲1発明との相違点の検討
(ア)相違点1-1ないし1-4は、上記(2)~(4)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点1-7について検討する。甲9には、「ガラスクロス補強透明難燃シート」の「1m2当たり」の重量が「375g/m2」である構成が開示されている(上記1(3)ア(シ)及び同(ス))。この「ガラスクロス補強透明難燃シート」の「1m2当たり」の樹脂の重量は「375g/m2」より小さい。甲9には、樹脂の重量の下限値は示されていないが、ガラスクロス補強透明難燃シートを「透明」にするために、ガラスクロスの空隙を樹脂で完全に埋める(上記1(3)ア(オ))ものであるから、ある程度の樹脂量が必要なことは当業者に自明である。したがって、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」の「1m2当たり」の樹脂の重量を「15~500gの範囲」を満たす重量とすることは、技術的に格別な事項ではなく当業者が通常行う設計的事項によって適宜なし得ることである。
甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」のガラスヤーン平織りクロスの重量(目付け)は、100g/m2(段落0022)、基本難燃性熱硬化性樹脂組成物はガラスクロス100gに対してほぼ280gの割合(段落0023)である。甲10には予備含浸液の重量が示されていないが、「低粘度の予備含浸液に浸漬含浸させ、十分に水切りした。」(段落0022)と記載されていることから、予備含浸液の重量はさほど多くないものと推認される。したがって、甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」の樹脂の重量は、1m2当たり15~500gの範囲との要件を満たしている蓋然性が高く、仮に、満たしていないとしても「1m2当たり」の樹脂の重量を「15~500gの範囲」を満たす重量とすることは、技術的に格別な事項ではなく当業者が通常行う設計的事項によって適宜なし得ることである。
(ウ)相違点1-8について検討する。上記(2)イ(ア)(ア-4)で述べたとおり、屈折率の測定方法としてJIS K 7142は周知であり、必要とする精度を考慮して、屈折率を少なくとも小数第3位まで測定することは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
ウ.小括
本件発明3は、本件発明1について検討したのと同様に、甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」又は甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂の種類、ガラス繊維織物と樹脂との重量比、ガラス繊維織物の重量、樹脂層の重量等を適宜調整することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求人が主張する無効理由1は、本件発明3についても理由がある。
(7)本件発明7について
ア.本件発明7と甲1発明との一致点及び相違点
本件発明7と甲1発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲1発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点1-1ないし1-4並びに相違点1-6及び1-7に加え、次の相違点1-9ないし1-11でも相違する。
《相違点1-9》
構成要件G1に関し、本件発明2は、ガラス組成物と樹脂組成物のアッベ数が、それぞれ有効数字を少なくとも2桁で求めたものであるのに対し、甲1発明では、これらが特定されていない点。
《相違点1-10》
構成要件J3に関し、本件発明7は、「硬化樹脂層の屈折率の値は、JIS K 7142のB法に従って少なくとも小数第3位まで測定される測定値」であり、「ガラス繊維織物を構成するガラス組成物の屈折率の値はJIS K 7142のB法におけるプラスチックをガラスに替えた方法に従って少なくとも小数第3位まで測定される測定値」であるのに対し、甲1発明では、このように特定されていない点。
《相違点1-11》
構成要件I1及びPに関し、本件発明7は、構成要件B、C、D、F、G1(G)、H及びI1(I)を満たす透明不燃性シートのうちから、構成要件E、J3、L及びOを満たす透明不燃性シートから選択されるものであることを特定しているのに対し、甲1発明ではそのようなことを特定していない点。
イ.本件発明7と甲1発明との相違点の検討
(ア)相違点1-1ないし1-4は、上記(2)~(4)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点1-6及び1-7は、上記(5)イ(ウ)、上記(6)イ(イ)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点1-9について検討する。アッベ数の有効数字を2桁又は3桁で求めることは、一般的に行われている(甲12段落0016の表1、甲12段落0020の表1)。アッベ数の有効数字を2桁又は3桁で求め、相違点1-9に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
(ウ)相違点1-10について検討する。上記(2)イ(ア)(ア-4)で述べたとおり、屈折率の測定方法としてJIS K 7142は周知であり、必要とする精度を考慮して、屈折率を少なくとも小数第3位まで測定することは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
(エ)相違点1-11について検討する。本件発明7は、「防煙垂壁」という「物」の発明であるから、構成要件B、C、D、E、F、G、H、I、J3及びOを満たすと特定しても、構成要件B、C、D、F、G、H及びIを満たすもののうちから構成要件E、J3、L及びOを満たすものを選択すると特定しても、「物」である「防煙垂壁」の構成が変わることはない。相違点1-11は、表現上の相違であって、実質的な相違ではない。
ウ.小括
本件発明7は、本件発明1について検討したのと同様に、甲1発明の防煙垂壁(煙封じ込めカーテン)の素材である「樹脂で被覆したガラス繊維織物」に代えて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」又は甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂の種類、ガラス繊維織物と樹脂との重量比、ガラス繊維織物の重量、樹脂層の重量等を適宜調整することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求人が主張する無効理由1は、本件発明7についても理由がある。
(8)無効理由1についての検討の結論
請求人が主張する無効理由1は、本件発明1ないし3及び7のいずれについても理由がある。本件発明1ないし3及び7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。
3.無効理由2(甲8による進歩性欠如)について
(1)本件発明1と甲8発明との対比、一致点及び相違点
本件発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明の「天井から主に垂直方向に下に伸びている」「カーテン煙幕組立品」は、本件発明1の「防煙垂壁」に相当する。
甲8発明の「透明シート」と、本件発明1の「透明不燃性シート」とは、「透明シート」である限りにおいて相当する。
また、甲8発明の「プラスチック」と、本件発明1の「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シート」とは、「樹脂製品」である限りにおいて相当する。
したがって、本件発明1と甲8発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
《本件発明1と甲8発明との一致点》
A8’.透明シートからなる防煙垂壁であって、
B8’.該透明シートが、樹脂製品である
K. 防煙垂壁。
《相違点8-1》
構成要件A1、Iに関し、本件発明1は、「透明シート」が「透明不燃性シート」であり「輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」ものであるのに対し、
甲8発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点8-2》
構成要件F、G、H、Jに関し、本件発明1は、「透明不燃性シート」の「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」と「一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物」との「屈折率の差が0.02以下」で、「アッベ数の差が30以下」であり、透明不燃性シートの「全光線透過率が80%以上」であり、かつ、「ヘーズが20%以下」であり、「屈折率の値は、JIS K 7142に従って測定される測定値」であるのに対し、
甲8発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点8-3》
構成要件B、C、Dに関し、本件発明1は、「透明不燃性シート」が「少なくとも1枚のガラス繊維織物と、ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む」ものであり、「硬化樹脂がビニルエステル樹脂」であり、「ガラス繊維織物が30~70重量%であり、一対の硬化樹脂層が70~30重量%」であるのに対し、
甲8発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点8-4》
構成要件Oに関し、本件発明1は、ガラス繊維がEガラスであるのに対し、甲8発明ではそのように特定していない点。
(2)本件発明1と甲8発明との相違点の検討
ア.当審の判断
相違点8-1ないし8-4は、上記相違点1-1ないし1-4と同様である。上記2(2)~(4)で検討したのと同様の理由により、防煙垂壁を不燃性にするという周知の課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという周知の課題に適合させるため、甲8発明の「透明シート」に代えて、甲9の「ガラスクロス補強透明難燃シート」又は甲10の実施例1の「ウエルディングカーテン材」を採用し、その際、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂層の重量、ガラス繊維織物と樹脂との重量比等を適宜調整し、相違点8-1ないし8-4に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由2は、本件発明1について理由がある。
イ.被請求人の主張について
(ア)被請求人は、「甲8には透明シートが開示されているとしても板ガラスのことであって樹脂製品ではない」旨主張する(平成27年5月18日付け上申書39頁17行~40頁下から6行)。
しかし、甲8には、カーテン煙幕組立品12がシート状に形成されている煙シールド14を有すること(上記1(2)ア(ア))、煙シールド14は好ましくはガラス製であるがプラスチック製でもよいこと(上記1(2)ア(イ))及び煙シールド14は実質的に透明であること(上記1(2)ア(ウ))が記載されている。透明なプラスチックは周知である。甲8の記載内容を把握した当業者は、甲8には、煙シールド14としてプラスチック(樹脂)製の透明シートを採用することが示唆されていると理解するといえる。被請求人の主張は採用できない。
(イ)被請求人は、「甲8に開示された発明は木材を材料とする場合もあり得るから『防煙垂壁は不燃材料又は不燃材料覆われたものでなければならない』という建築基準法等の規定に反している。したがって、甲8に開示された発明は防煙垂壁ではない」旨主張する(平成27年5月18日付け上申書40頁下から5行~41頁6行)。
しかし、建築基準法等は、日本で用いる「防煙垂壁」は「不燃材料又は不燃材料覆われたもの」でなければ、当該建築基準法等の規定に適合しないことを定めているにすぎず、「不燃材料又は不燃材料覆われたもの」でなけれれば、「防煙垂壁」という技術的内容に該当しないことを定めているものではない。甲8には、カーテン煙幕は火災時に煙が建物内に広がることを防ぐものであることが記載されている(カラム1の10~13行)から、甲8のカーテン煙幕は、「防煙垂壁」であることが明らかである。
被請求人の主張は、技術的内容と、建築物の安全を目的とした日本の法令の規定とを混同したものである。被請求人の主張は採用できない。
(ウ)被請求人は、「防煙垂壁を透明でかつ透過光の色付きを抑えたものにすることが好ましい」という課題は「周知の課題」ではなく、甲8発明に甲10を適用した際に、構成要件Gを満たすようにする動機付けはないと主張する(平成27年5月18日付け上申書41頁7行~42頁11行、42頁12行~43頁23行)。
しかし、上記2(2)エ(イ)及び同(エ)で述べたのと同様の理由で、被請求人の主張は採用できない。
(3)本件発明2について
本件発明2と甲8発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲8発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点8-1ないし8-4に加え、上記相違点1-5及び1-6における「甲1発明」を「甲8発明」に置き換えたものである相違点8-5及び8-6でも相違する。
相違点8-1ないし8-4は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点8-5及び8-6は、上記2(5)イで検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由2は、本件発明2についても理由がある。
(4)本件発明3について
本件発明3と甲8発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲8発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点8-1ないし8-4に加え、上記相違点1-7及び1-8における「甲1発明」を「甲8発明」に置き換えたものである相違点8-7及び8-8でも相違する。
相違点8-1ないし8-4は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことであり、相違点8-7及び8-8は、上記6(6)イで検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由2は、本件発明3についても理由がある。
(5)本件発明7について
本件発明7と甲8発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲8発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点8-1ないし8-4に加え、上記相違点1-6及び1-7、並びに1-9ないし1-11における「甲1発明」を「甲8発明」に置き換えたものである相違点8-6及び8-7、並びに8-9ないし8-11でも相違する。
相違点8-1ないし8-4は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことであり、相違点8-6及び8-7、並びに8-9ないし8-11は、上記6(7)イで検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由2は、本件発明7についても理由がある。
(6)無効理由2についての検討の結論
請求人が主張する無効理由2は、本件発明1ないし3及び7のいずれについても理由がある。本件発明1ないし3及び7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。
4.無効理由3(甲9による進歩性欠如)について
(1)本件発明1と甲9発明との対比、一致点及び相違点
甲1や甲8に示されるように、防煙垂壁は「カーテン」と呼ばれることがある。したがって、甲9発明の「カーテン類」と本件発明1の「防煙垂壁」とは、「カーテン類」である限りにおいて相当する。
甲9発明の「透明難燃シート」と本件発明1の「透明不燃性シート」とは、「透明シート」である限りにおいて相当する。
甲9発明の「ガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.005未満」であるから、本件発明1の「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下」を満たす。
甲9発明の「ヘーズが20%」は、本件発明1の「ヘーズが20%以下」との要件を満たす。
したがって、本件発明1と甲9発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
《本件発明1と甲9発明との一致点》
A9’.透明シートからなるカーテン類であって、
B9’.該透明シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラ
ス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明シートであり、
F. 前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記
一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下
であり、
H. 全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であ
る、
K9’. カーテン類。
《相違点9-1》
構成要件A1、Jに関し、本件発明1は、「防煙垂壁」であるのに対し、甲9発明は「防煙垂壁」であることが特定されていない点。
《相違点9-2》
構成要件A1、Iに関し、本件発明1は、「透明シート」が「透明不燃性シート」であり「輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」ものであるのに対し、
甲9発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点9-3》
構成要件G、Jに関し、本件発明1は、「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」と「一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物」との「アッベ数の差が30以下」であり、「屈折率の値は、JIS K 7142に従って測定される測定値」であるのに対し、
甲9発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点9-4》
構成要件C、Dに関し、本件発明1は、硬化樹脂が「ビニルエステル樹脂」であり、「ガラス繊維織物が30~70重量%であり、一対の硬化樹脂層が70~30重量%」であるのに対し、
甲9発明では、硬化樹脂が「ビニルエステル樹脂」であるとは特定されておらず、かつ、ガラス繊維織物と一対の硬化樹脂層の重量比が特定されていない点。
《相違点9-5》
構成要件Oに関し、本件発明1は、ガラス繊維がEガラスであるのに対し、甲9発明ではそのように特定していない点。
(2)本件発明1と甲9発明との相違点の検討
ア.相違点9-1の検討
(ア)防煙垂壁における周知又は公知の課題及び構成
防煙垂壁においては、上記2(2)ア(ア)で述べたように、防煙垂壁を不燃性にするという課題、及び防煙垂壁を透明でかつ無色にすることが好ましいという課題は、本件特許の出願前に周知であった。
甲2~甲7に示されるように、防煙垂壁をガラスによって構成することが一般的であったといえるが、甲1及び甲8に示されるように、防煙垂壁を樹脂製品で構成することも、本件特許の出願前に公知であった。
ガラス防煙垂壁は、地震の際に破損落下が生じたため、それに対する対策が必要であるという課題が本件特許の出願前に公知であり(甲42~45)、甲42の082頁には、「割れたガラスが天井から落下するのはたいへん危険だ。絶対に防がなければならない」から、ガラス防煙垂壁に対して(1)ガラス防煙垂壁を揺れにくくする、(2)揺れてもガラスが壁などに強くぶつからないようにする、(3)ガラスが割れても落ちないようにする、などの対策をとるべきであり、「これら対策でも、ガラスの破損や落下が心配になるなら、ガラスを使うのをやめるしかないだろう」と記載され、ガラスに代えて破損や落下のおそれがない材料を使うことが示唆されている。
また、建築の施行を容易にすることは、建築技術における一般的かつ周知の課題であり、建築材料が軽ければ取り付け等の施行が容易になることは、建築技術において周知の技術的事項である。
(イ)甲9発明を防煙垂壁として使用する動機付け
甲9発明は、柔軟で透明かつ難燃性を有するシートである(上記1(3)ア(イ))から、地震で揺れたり、壁などにぶつかったとしても、破損しない又は破損のおそれが極めて小さいことが、当業者に明らかである。甲5の「ガラスクロス補強透明難燃シート」は、「建築用薄物材料の難燃性試験 JIS-A-1322 防炎1級 に合格」(上記1(3)ア(カ))しており、「建築用薄物材料」として用いることが想定されている。したがって、上記(ア)で指摘した「防煙垂壁における周知又は公知の課題及び構成」を了知している当業者は、甲9発明を防煙垂壁として使用する動機付けがあるから、甲9発明を防煙垂壁として使用し、相違点9-1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
また、建築材料が軽ければ、取り付け等の施行が容易になることが周知であるから、防煙垂壁の取り付け施行を容易にすることを考慮し、防煙垂壁の材料として従来周知の板ガラスに代えて、より重量の軽い甲9発明を使用することにも動機付けがある。防煙垂壁の取り付け施行を容易にすることを考慮して、甲9発明を防煙垂壁として使用し、相違点9-1に係る本件発明1の構成にすることも、当業者が容易に推考し得たことである。
イ.相違点9-2ないし9-5の検討
相違点9-2及び9-5は、上記相違点1-1及び1-4と同様であり、相違点9-3及び9-4は、上記相違点1-2及び1-3の一部と同様である。相違点9-2ないし9-5は、上記2(3)ア~エで検討したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たことである。
ウ.被請求人の主張について
(ア)被請求人は、甲9の「カーテン類」に甲1の「煙閉じこめカーテン」ないし「煙封じ込めカーテン」が含まれないし、防煙垂壁が含まれる事実もないから、「カーテン類」は一致点ではなく、「ヘーズが20%以下である」点に付いても一致していない、さらに、「透過光の色付きを抑えたものにすることが好ましい」という課題は周知でなく、甲9発明に構成要件Gを採用する動機付けもないと主張する(平成27年5月18日付け上申書44頁9~18行、同書45頁11~15行、同書47頁8~10行)。
しかし、上記2(2)エ(イ)、同(エ)、上記2(3)エ(イ)、同(エ)で述べたのと同様な理由により、被請求人の主張は採用できない。
(イ)被請求人は、甲42からは「ガラスに代えて破損や落下のおそれがない材料を使うこと」という示唆は読み取れない旨主張する(平成27年5月18日付け上申書44頁18行~47頁2行)。
しかし、一定規模以上の建築物に防煙垂壁が必要であることは、本件特許の出願時点における建築技術分野の常識であったこと、及び、甲42はガラス製の防煙垂壁に「ガラスの破損や落下」という問題があることについて記載したものであることを考慮すれば、甲42の「これら対策でも、ガラスの破損や落下が心配になるなら、ガラスを使うのをやめるしかないだろう」という記載が、「防煙垂壁の設置をやめる」のではなく、防煙垂壁の材料として「ガラスに代えて破損や落下のおそれがない材料を使うこと」を示唆していることは、当業者に明らかである。被請求人の主張は採用できない。
エ.本件発明1と甲9発明との相違点の検討の結論
甲9発明を防煙垂壁として使用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂の種類、樹脂層の重量、ガラス繊維織物と樹脂との重量比等を適宜調整し、相違点9-1ないし9-5に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由3は、本件発明1について理由がある。
(3)本件発明2について
本件発明2と甲9発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲9発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点9-1ないし9-5に加え、上記相違点1-5及び1-6における「甲1発明」を「甲9発明」に置き換えたものである相違点9-6及び9-7でも相違する。
相違点9-1ないし9-5は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点9-6及び9-7は、上記2(5)で検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由3は、本件発明2についても理由がある。
(4)本件発明3について
本件発明3と甲9発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲9発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点9-1ないし9-5に加え、上記相違点1-7及び1-8における「甲1発明」を「甲9発明」に置き換えたものである相違点9-8及び9-9でも相違する。
相違点9-1ないし9-5は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点9-8及び9-9は、上記2(6)で検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由3は、本件発明3についても理由がある。
(5)本件発明7について
本件発明7と甲9発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲9発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点9-1ないし9-5に加え、上記相違点1-6及び1-7、並びに1-9ないし1-11における「甲1発明」を「甲9発明」に置き換えたものである相違点9-7及び9-8、並びに9-10ないし9-12でも相違する。
相違点9-1ないし9-5は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点9-7及び9-8、並びに9-10ないし9-12は、上記2(7)で検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由3は、本件発明7についても理由がある。
(6)無効理由3についての検討の結論
請求人が主張する無効理由3は、本件発明1ないし3及び7のいずれについても理由がある。本件発明1ないし3についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。
5.無効理由4(甲10による進歩性欠如)について
(1)本件発明1と甲10発明との対比、一致点及び相違点
甲1や甲8に示されるように、防煙垂壁は「カーテン」と呼ばれることがある。したがって、甲10発明の「吊り下げ方式のウエルディングカーテン」と本件発明1の「防煙垂壁」とは、「カーテン」である限りにおいて相当する。
甲10発明の「透明難燃性シート」と本件発明1の「透明不燃性シート」とは、「透明シート」である限りにおいて相当する。
甲10発明の「前記ガラス繊維織物中のガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.0002」は、本件発明1の「前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であり」との要件を満たす。
甲10発明の「全光線透過率が91.8%であり、ヘーズが約14%であり」は、本件発明1の「全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であり」との要件を満たす。
したがって、本件発明1と甲10発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
《本件発明1と甲10発明との一致点》
A10’.透明シートからなるカーテンであって、
B10’.該透明シートが、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス
繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明シートであり、
C. 前記硬化樹脂がビニルエステル樹脂であり、
F. 前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記
一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下
であり、
H. 全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であ
る、
K10’.カーテン。
《相違点10-1》
構成要件A1、Jに関し、本件発明1は、「防煙垂壁」であるのに対し、甲10発明は「吊り下げ方式のウエルディングカーテン」である点。
《相違点10-2》
構成要件A1、Iに関し、本件発明1は、「透明シート」が「透明不燃性シート」であり「輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」ものであるのに対し、
甲10発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点10-3》
構成要件G、Jに関し、本件発明1は、「透明不燃性シート」の「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下」であり、「屈折率の値は、JIS K 7142に従って測定される測定値」であるのに対し、
甲10発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点10-4》
構成要件Dに関し、本件発明1は、「透明不燃性シート」が「ガラス繊維織物が30~70重量%であり、一対の硬化樹脂層が70~30重量%」であるのに対し、
甲10発明では、「透明シート」についてそのようなことが特定されていない点。
《相違点10-5》
構成要件Oに関し、本件発明1は、ガラス繊維がEガラスであるのに対し、甲9発明ではそのように特定していない点。
(2)本件発明1と甲10発明との相違点の検討
ア.相違点10-1の検討
上記4(2)アで検討したのと同様の理由により、甲10発明を防煙垂壁として使用し、相違点10-1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
イ.相違点10-2ないし10-5の検討
相違点10-2及び10-5は、上記相違点1-1及び1-4と同様であり、相違点10-3及び10-4は、それぞれ上記相違点1-2及び相違点1-3の一部と同様である。上記2(2)ア~エで検討したのと同様の理由により、相違点10-2ないし10-5に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ.被請求人の主張について
被請求人は、上記4(2)ウ(ア)及び同(イ)で述べたのと同様の主張している。しかし、同(ア)及び同(イ)で述べたのと同様の理由により、被請求人の主張は採用できない。
エ.本件発明1と甲10発明との相違点の検討の結論
甲10発明を防煙垂壁として使用し、透明性、強度、不燃性等を考慮して、アッベ数の差、樹脂層の重量、ガラス繊維織物と樹脂との重量比等を適宜調整し、相違点10-1ないし10-5に係る本件発明1の構成要件を満たす発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由4は、本件発明1について理由がある。
(3)本件発明2について
本件発明2と甲10発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲10発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点10-1ないし10-5に加え、上記相違点1-5及び1-6における「甲1発明」を「甲10発明」に置き換えたものである相違点10-6及び10-7でも相違する。
相違点10-1ないし10-5は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点10-6及び10-7は、上記2(5)で検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由4は、本件発明2についても理由がある。
(4)本件発明3について
本件発明3と甲10発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲10発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点10-1ないし10-5に加え、上記相違点1-7及び1-8における「甲1発明」を「甲10発明」に置き換えたものである相違点10-8及び10-9でも相違する。
相違点10-1ないし10-5は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点10-8及び10-9は、上記2(6)で検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由4は、本件発明3についても理由がある。
(5)本件発明7について
本件発明7と甲10発明とを対比すると、上記《本件発明1と甲10発明との一致点》で一致する。そして、上記相違点10-1ないし10-5に加え、上記相違点1-6及び1-7、並びに1-9ないし1-11における「甲1発明」を「甲10発明」に置き換えたものである相違点10-7及び10-8、並びに10-10ないし10-12でも相違する。
相違点10-1ないし10-5は、上記(2)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。相違点10-7及び10-8、並びに10-10ないし10-12は、上記2(7)で検討したのと同様な理由により、当業者が容易になし得たことである。
請求人が主張する無効理由4は、本件発明7についても理由がある。
(6)無効理由4についての検討の結論
請求人が主張する無効理由4は、本件発明1ないし3及び7のいずれについても理由がある。本件発明1ないし3についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。
6.無効理由5(実施可能要件違反)について
訂正請求により、本件発明は、各構成要件が、いずれも並列的に発明を規定するものであり、各構成要件間に主従関係のような関係を有するものではないことが明らかになったといえる。したがって、ある構成要件の数値が特定の値である場合に、他の構成要件の数値限定範囲の全範囲を満たさない場合が生じるからといって、実施可能要件違反であるとまではいうことができない。
「着色を抑える」という課題及び効果については、アッベ数が30を超える場合に比較して、アッベ数が30以下である場合の方が「着色を抑える」効果があるといえるから、本件発明が実施可能要件違反であるとまではいうことができない。
本件特許明細書に開示された実施例は、屈折率差が0で、アッベ数差が7.5の場合のみであるものの、本件特許出願前の刊行物である甲9、甲10などから、本件特許明細書に開示された実施例以外であっても、本件発明の課題を解決できることが理解できる。この点でも、本件発明が実施可能要件違反であるとまではいうことができない。
また、ガラス組成物の屈折率の測定方法が特定されたことから、屈折率及びアッベ数が一義的に特定できるものとなったといえる。この点でも、本件発明が実施可能要件違反であるとまではいうことができない。
請求人が主張するその他の理由も、本件発明が実施可能要件違反であることを示す理由になるとまではいえない。
請求人が主張する無効理由5には理由がない。
7.無効理由6(サポート要件違反)について
上記6で述べたのと同様な理由により、請求人が主張する無効理由6には理由がない。
8.無効理由7(明確性要件違反)について
上記6で述べたのと同様な理由により、請求人が主張する無効理由7には理由がない。
9.当審無効理由について
口頭審尋において当審が通知した無効理由は、アッベ数の規定が明確でないことを理由として特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び同条同項第2号違反を指摘した当審無効理由1と、本件発明が屈折率差0.02以下、アッベ数差30以下という広い数値範囲を規定する発明であるにもかかわらず、実施例で示されたものは屈折率差0、アッベ数差7.5という1点のみであり、かつ、本件発明が規定する広い数値範囲にわたって本件発明の課題(構成要件H、Iが規定する透明及び不燃性)を解決できる技術的根拠がないことを理由として特許法第29条柱書違反を指摘した当審無効理由2からなっている。(当審無効理由3が対象とした請求項4ないし6は訂正により削除された。)
当審無効理由1が主な根拠とした点は、平成26年8月20日付け意見書の釈明により解消された。
当審無効理由2は、訂正請求により、各構成要件が、いずれも並列的に発明を規定するものであることが明らかになったから、もはや理由があるとはいえない。
当審無効理由1、2に理由はない。
10.備考
本件発明1ないし3及び7は、いずれも、訂正前の請求項1ないし3に係る発明を減縮した(技術的限定を付け加えた)発明である。したがって、仮に、訂正請求が不適法で認めるべきでないとしても、本件発明1ないし3及び7から技術的限定を除去した発明である、訂正前の請求項1ないし3に係る発明は、いずれも、上記1~5で述べたのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。訂正前の請求項1ないし3に係る発明についても、無効理由1ないし4はいずれも理由がある。
第7.むすび
以上のとおり、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりの訂正を認める。
本件発明1ないし3及び7に対して請求人が主張する無効理由1ないし4は、いずれも理由がある。本件発明1ないし3及び7についての特許は、これら無効理由のいずれによっても、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定に従って、結論記載のとおりの負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2014-800037