特許異議申立
2016-700420
米糖化物並びに米油及び/又はイノシトールを含有する食品
- 審判番号
- 2016-700420
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-043376
- 登録番号
- 特許第5813262号(P5813262)
- 請求日
- 2016年05月13日
- 審決日
- 2018年07月27日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】築野食品工業株式会社
- 【権利者代理人】岩谷 龍
- 【異議申立人】足立 道子
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 藤原 直欣
- 審判官 窪田 治彦
- 分類
- P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5813262号発明「米糖化物並びに米油及び/又はイノシトールを含有する食品」の特許異議申立事件についてされた平成29年5月8日付け異議の決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消しの判決(平成29年(行ケ)第10129号、平成30年5月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5813262号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第5813262号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
(1)平成29年5月8日付け異議の決定までの経緯
特許第5813262号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成27年3月5日(優先権主張 平成27年2月4日)の出願であって、平成27年10月2日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人足立道子より特許異議の申立てがされ、平成28年7月12日付けで取消理由が通知され、平成28年9月13日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成28年9月30日に上申書の提出がされ、平成28年11月14日に特許異議申立人から意見書の提出がされ、その後、平成29年1月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成29年3月27日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年5月8日付けで、訂正することを認める並びに特許を取り消す旨の異議の決定(以下、「一次決定」という。)がされたものである。
(2)一次決定後の経緯
平成29年6月14日 決定取消訴訟提起(平成29年(行ケ)第10129号)
平成30年5月24日 判決言渡(一次決定取消)
平成30年6月4日 上申書(異議申立人)
2 訂正の請求についての判断
(1)訂正の内容
平成29年3月27日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5813262号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項1に「γ-オリザノールを1~40質量%含有する」とあるのを、「γ-オリザノールを1~5質量%含有する」に訂正し、「当該米油を0.1~10質量%含有する」とあるのを、「当該米油を0.5~5質量%含有する」に訂正する。
(2)訂正の適否
ア 訂正の目的
上記訂正事項は、米油におけるγ-オリザノールの含有量について、「1~40質量%」から「1~5質量%」へと数値範囲を狭め、米油の含有量について、「0.1~10質量%」から「0.5~5質量%」へと数値範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、本件特許明細書の段落【0013】に「本発明における米油は、例えば、γ-オリザノールを・・・、1~5質量%含有していてもよく、」(「・・・」は省略を意味する。以下同じ。)、段落【0015】に「例えば、米油を・・・0.5~5質量%含有していてもよく」、及び段落【0031】~【0039】の試験例2に米胚芽油を、0.50%、1%、3%、5%含有したライスミルクが記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~4についての訂正を認める。
3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、「本件発明1~4」、総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された以下の事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
米糖化物、及びγ-オリザノールを1~5質量%含有する米油を含有するライスミルクであって、当該米油を0.5~5質量%含有するライスミルク。
【請求項2】
さらにイノシトールを含有する請求項1に記載のライスミルク。
【請求項3】
イノシトールを0.01~0.5質量%含有する請求項2に記載のライスミルク。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のライスミルクを含有する食品。」
4 当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について(特許法第36条第6項第1号)
ア 取消理由の概要
平成28年7月12日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
本件特許明細書において、実際に製造され評価されたライスミルクに用いられた「γ-オリザノールを1~40質量%含有する米油」は、「米胚芽油(米胚芽油PRO-15、築野食品工業株式会社製、γ-オリザノール1.5重量%、米油の1種)」のみである。
そうすると、「γ-オリザノールを1~40質量%含有する米油」として、γ-オリザノールを1~40質量%の範囲であれば、どの量を含有するものを用いても、本件特許発明の課題(「こく、甘味、美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供する」)が解決できるのか、当業者が認識できない。 よって、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 取消理由についての判断
本件判決は、本件発明は「コク、甘味、美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」を課題とするものであることが明確に読み取ることができる旨(判決28及び29頁)、並びに本件発明は発明の詳細な説明の記載から「コク、甘味、美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供する」という課題を解決することができると認識可能な範囲のものである旨(判決29ないし35頁)についてそれぞれ判示する。
そして、これらの判示事項は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当審を拘束する。
したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(ア)特許法第36条第4項第1号について
本件発明は、「コク(ミルク感)」という用語の意味が明確でないから、その特許は特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(イ)特許法第29条第2項について
本件発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 上記異議申立理由についての判断
(ア)特許法第36条第4項第1号について
「こく」、「ミルク感」は、それぞれ乙第2~7号証、乙第8~9号証に示されるように、それぞれ「深みのある味わい、濃い味わい」、「乳の風味」という意味で一般的に用いられている用語であって、本件発明においては、「コク(ミルク感)」が乳の風味の濃い味わいを示していることは、当業者であれば十分に認識できる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。
したがって、異議申立人の主張は理由がない。
(イ)特許法第29条第2項について
甲第1号証には、「米油を2%含有するライスミルク。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
本件発明と甲1発明とを対比すると、本件発明は米油について「γ-オリザノールを1~5質量%含有する米油」と特定されているのに対し、甲1発明は、そのような米油と特定されていない点で少なくとも相違する。
そこで、該相違点について検討すると、甲第1号証には甲1発明の米油を他の米油に変更することについての記載ないし示唆はない。
他方、甲第2号証及び甲第3号証には、ライスミルクに利用することについての記載ないし示唆はない。
したがって、甲第4ないし7号証に記載された事項を踏まえても、甲1発明に甲第2、3号証記載の米油を採用する理由がない。
以上から、本件発明は、甲1発明及び甲第2ないし7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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