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特許異議申立

2016-700415

ブロー成形装置

審判番号
2016-700415
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-081296
登録番号
特許第5829566号(P5829566)
請求日
2016年05月12日
審決日
2017年02月06日
公報発行日
2017年07月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社吉野工業所
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】塚中 哲雄
  • 【権利者代理人】片岡 憲一郎
  • 【異議申立人】小坂 美智子
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 健史
  • 審判官 井上 雅博
  • 審判官 瀬良 聡機
分類
P1651.121-ZC (B29C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5829566号発明「ブロー成形装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5829566号の請求項1、3に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5829566号の請求項1~3に係る特許についての出願は,平成24年3月30日に出願されたものであって,平成27年10月30日に特許権の設定登録がされ,同年12月9日にその特許公報が発行され,平成28月5月12日に,その請求項1~3に係る発明の特許に対し,小坂美智子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 5月12日  特許異議申立書 同年 7月29日  取消理由通知 同年 9月28日  意見書(特許権者) 同年11月 7日  取消理由通知(決定の予告) そして,上記取消理由通知(決定の予告)では,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,特許権者からは何らの応答もなかった。 第2 本件発明 特許第5829566号の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」という。)は,それぞれ,特許登録時の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 ブロー成形用の金型(1)と、有底筒状のプリフォーム(31)の口筒部(32)に密に連通するブローノズル(4)を有し、該ブローノズル(4)を介してプリフォーム(31)内に圧力媒体となる液体(L)を供給するブロー成形装置であって、 前記ブローノズル(4)は下端部に前記口筒部(32)に挿入する嵌入筒片(5)を延設したものであり、 前記嵌入筒片(5)の延設長さを、ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)の下端に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出するとともに壜体(41)の肩部に賦形される領域にまで達する長さとしたブロー成形装置。 【請求項2】 ブローノズル(4)の外周壁に下方に向かって縮径する周段部(6)を周設し、該周段部(6)と口筒部(32)の上端面のシール部材(7a)を介した当接により、前記ブローノズル(4)を口筒部(32)に密に連通する構成とした請求項1記載のブロー成形装置。 【請求項3】 縦延伸用の延伸ロッド(8)をブローノズル(4)に挿通、配設する構成とした請求項1または2記載のブロー成形装置。 第3 取消理由 1 特許異議申立人が申し立てた取消理由 特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。 本件発明1~3は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1~4号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,本件発明1~3に係る特許は,同法第29条の規定に違反してなされたものであり,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 甲第1号証:実公平8-1849号公報 甲第2号証:米国特許第6485670号明細書 甲第3号証:特表2011-506130号公報 甲第4号証:実公平1-33315号公報 2 当審が通知した取消理由 当審が取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 本件発明1,3は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1,3,4号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,本件発明1,3に係る特許は,同法第29条の規定に違反してなされたものであり,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 甲第1号証:実公平8-1849号公報 甲第3号証:特表2011-506130号公報 甲第4号証:実公平1-33315号公報 第4 当審の判断 当審は,取消理由通知(決定の予告)のとおり,本件発明1,3は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1,3,4号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。 また,本件発明2は,特許異議申立人が申し立てた取消理由によっては,取り消すことができないものと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 本件発明1,3について (1)刊行物の記載事項 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には,以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】分割金型間に配置したパリスン内に打込んで口部内径を規制するとともに加圧流体を吹込む吹込ノズルと、この吹込ノズルに嵌装される口部形成リングとによって構成される、水平状に形成されたフランジ部とそのフランジ部から上方に突出する立上り部とを備える口部を有する中空容器のブロー成形用吹込装置において、上記吹込ノズルまたは口部形成リングには、口部の立上り部を形成する凹部と、この凹部内の空気を外部に逃がすための通気路を有してなることを特徴とするブロー成形用吹込装置。」(特許請求の範囲) (1b)「本考案は、食品、化粧品、薬品等を収納するプラスチック製の中空容器をブロー成形によって製造するのに用いるブロー成形用吹込装置に関するものである。」(第1頁左欄第14行~右欄第1行) (1c)[考案が解決しようとする課題] ところで、胴部の一端に筒状の口部を一体に延設した形状のプラスチック製の中空容器においては、口部に水平状に形成されたフランジ部を有し、かつそのフランジ部から上方に突出する立上り部を形成したものがある。このような口部には立上り部を有するものをブロー成形するには、口部を形成する部材に凹部を設けて、ブロー成形時に口部の樹脂を凹部に流入させればよいが、口部形成部材の凹部には空気が溜っているので、樹脂を流入させる過程でその空気により樹脂の流れが妨げられて、凹部内全体に樹脂が流入せず、その結果、口部の立上り部の形状が一定せず、また、その肉厚が均一にならない等の不都合が生じている。 本考案は、上記のような不都合を解消しようとするものであって、吹込ノズルまたは口部形成リングを、立上り部形成のための凹部から外部に通じる通気路を有するものとしたことにより、ブロー成形時に凹部に樹脂が圧入される過程で、その凹部に溜っていた空気を通気路を経て外部に逃がして、空気の圧縮圧による樹脂の流れの妨げを解消し、凹部内全体に樹脂が流入するようにして、口部に常に形状が一定であり、かつ肉厚が均一な立上り部を形成することができるブロー成形用吹込装置を提供することを目的とするものである。」(第1頁右欄第8行~第2頁左欄第14行) (1d)「[実施例] 本考案の実施例を図面を参照して説明する。 第1図において、1,1は中空容器をブロー成形する分割金型であり、分割金型1,1間にはパリスンが配置され、中空容器2がブロー成形される。このブロー成形過程において、分割金型1,1の上部からパリスン内には、中空容器2の口部3の内径を規制するとともに加圧流体を吹込む吹込ノズル4と、この吹込ノズル4に嵌装される口部形成リング5とによって構成された吹込装置が打込まれ、吹込ノズル4の導通部6からパリスン内に加圧流体が吹込まれる。」(第2頁左欄第40行~末行) (1e)「第1図に示した構成の装置により、ブロー成形が行われると、第2図に示すように、胴部12の上端に口部3が延設され、かつ、口部3にはフランジ部7および立上り部8が形成された中空容器2が得られる。」(第2頁右欄第14~17行) (1f)「 」(図1) イ 甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には,以下の事項が記載されている。 (3a)「【請求項1】 容器の形成および充填を同時に行うシステムであって、 内面を画定し、プリフォームを受け入れるように構成される金型キャビティと、 前記プリフォームを殺菌する殺菌装置と、 入口、チャンバ、および前記入口を通して液体を前記チャンバに引き込む第1の方向、および前記プリフォームに向かって前記液体を押し出す第2の方向に前記チャンバ内で動作可能なピストン状デバイスを有する圧力源と、 前記圧力源から前記液体を受け、一定の圧力で前記液体を前記プリフォーム内に送出し、それによって前記プリフォームを前記金型キャビティの前記内面に向かって膨張させ、結果として得られる容器を作成するように構成されるブローノズルと、 を備え、前記液体が最終製品として前記容器内に残るシステム。」 (3b)「【請求項14】 前記プリフォーム内に延在し、前記液体が前記プリフォーム内に押し出される前に前記プリフォームを機械的に延伸させるように構成される延伸ロッドをさらに備える、請求項1に記載の容器の形成および充填を同時に行うシステム。」 (3c)「【0006】 従来のブロー成形および充填は、2つの独立した工程として開発されており、多くの場合、異なる会社によって行われている。ボトルの充填のコスト効果を上げるために、一部の充填業者はブロー成形を社内で行ない、多くの場合でブロー成形機をその充填ラインに直接統合している。・・・それ故、1つの操作で容器の形成および充填を実行するのに適切な液体または液圧ブロー成形システムに対する要求がある。」 (3d)「【0013】 最初に図1および図2を参照して、金型ステーション10を詳細に説明する。金型ステーション10は、一般に、金型キャビティ16と、圧力源20と、ブローノズル22と、延伸ロッド26とを含む。図示された例示的金型キャビティ16は、金型半体30、32を含み、これらは協働して、ブロー成形される容器の所望の外部輪郭に対応する内面34を画定する。金型キャビティ16は、プリフォーム12の支持リング38が金型キャビティ16の上端に捕捉されるように、開位置(図1)から閉位置(図2)へと動作可能にすることができる。プリフォーム12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル材料で形成し、当業者には周知であるように、ほぼ円筒形の断面、および典型的にはその結果として得られる容器Cの高さの約50%の長さの試験管に類似した形状を有することができる。支持リング38は、製造の様々な段階においてプリフォーム12を担持または配向するために使用することができる。例えば、プリフォーム12を支持リング38で担持することができ、支持リング38は、金型キャビティ16内でプリフォーム12の位置決めを補助するために使用することができ、または製造された後、消費者がプラスチック容器Cを携行するために支持リング38を使用することができる。」 (3e)「【0020】 特に図5を参照すると、次にピストン状デバイス40が、充填シリンダ、マニホールドまたはチャンバ42からプリフォーム12への液体商品Lの迅速な送出を開始するために、下方向に駆動し始めることができる(駆動相)。この場合も、ピストン状デバイス40は、空気圧、機械的圧力および/または液圧などの任意の適切な手段で作動させることができる。一例では、プリフォーム12内の液圧は約100PSIから600PSIに到達してもよい。液体商品Lは、プリフォーム12を金型キャビティ16の内面34に向かって膨張させる。残留空気は、延伸ロッド26内に画定された通路70を通して排気することができる(図5)。図6に示すように、ピストン状デバイス40は、その駆動相を終了し、それにより適切な体積の液体商品Lを新しく形成されたプラスチック容器Cに完全に送出する。次に、残留空気を排気し続けている間に、延伸ロッド26を金型キャビティ16から後退させることができる。延伸ロッド26は、金型キャビティ16から後退する時に所定の体積の液体商品Lを移動させることによって結果として得られるプラスチック容器C内で液体商品Lの所望の充填レベルを可能にするように設計することができる。一般に、所望の充填レベルは、プラスチック容器Cの支持リング38のレベルに、またはその付近に相当する。」 (3f)「 」(図1) (3g)「 」(図5) ウ 甲第4号証の記載事項 (4a)「更に、従来の把持装置では、口元部に環状の突起部を有するパリソン又は中空成形品しかつかむことができず、またつかみ力が強すぎる場合には口元部にきずが付くことがあつた。」(第2頁左欄第17~20行) (4b)「(第2実施例) 第3図に本考案の第2実施例を示す。この実施例は、本考案を延伸ブロー成形部の把持装置に適用したものである。延伸ブロー成形部では、延伸ロツドによつてパリソンを延伸させると共にパリソン内部にに高圧空気が吹き込まれる。このため第3図に示す第2実施例では、ガイドピン36′を中空として、この中空部を延伸ロツド72が通過可能とすると共に中空部により高圧空気の通路を形成している。」(第3頁左欄第42行~右欄第7行) (4c)「 」(図3) (2)刊行物に記載された発明(甲1発明) 甲第1号証には, 「分割金型間に配置したパリスン内に打込んで口部内径を規制するとともに加圧流体を吹込む吹込ノズルと、この吹込ノズルに嵌装される口部形成リングとによって構成される、水平状に形成されたフランジ部とそのフランジ部から上方に突出する立上り部とを備える口部を有する中空容器のブロー成形用吹込装置」が記載されており(摘記1a参照),そして,吹込ノズルは中空容器に形成されるフランジ部とその上方に突出する立上り部とを備える口部の内径を規制するものである(摘記1a、1d参照)から,パリソンの口部となる部分には,吹込ノズルが内側に嵌められた状態で存在しており,吹込ノズルの出口は,口部が存在するフランジ部よりも下方にあることは明かである。 そうすると,甲第1号証には, 「分割金型間に配置したパリスン内に打込んで口部内径を規制するとともに加圧流体を吹込む吹込ノズルと、この吹込ノズルに嵌装される口部形成リングとによって構成される、水平状に形成されたフランジ部とそのフランジ部から上方に突出する立上り部とを備える口部を有する中空容器のブロー成形用吹込装置において,吹込ノズルの出口がフランジ部よりも下方にあるブロー成形用吹込装置」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (3)対比・判断 (3-1)本件発明1に対して ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「分割金型」,「パリソン」,「口部」,「吹込ノズル」,「加圧流体」,「フランジ部」,「ブロー成形用吹込装置」は,それぞれ,本件発明1の「ブロー成形用の金型」,「有底筒状のプリフォーム」,「口筒部」,「ブローノズル」,「圧力媒体」,「ネックリング」,「ブロー成形装置」に相当する。 そして,甲1発明の「吹込ノズル」は,「パリスン内に打込んで口部内径を規制する」もので,パリソンの口部となる部分に吹込ノズルが内側に嵌められたものであるから,本件発明1の「口筒部に密に連通する」ものに相当し,また,甲1発明の「吹込ノズル」は,その筒状に下方に延びる構造を有しており,その出口(下端)はフランジ部分よりも下方に存在するので,本件発明1の「ブローノズルは下端に口筒部に挿入する嵌入筒片を延設したものであり」かつ,「嵌入筒片の延設長さを、ブローノズルを口筒部に連通した状態で嵌入筒片の口筒部に周設されるネックリングよりも下方に延出する」ことに相当する。 そうすると,本件発明1と甲1発明とは, 「ブロー成形用の金型(1)と、有底筒状のプリフォーム(31)の口筒部(32)に密に連通するブローノズル(4)を有し、該ブローノズル(4)を介してプリフォーム(31)内に圧力媒体を供給するブロー成形装置であって、 前記ブローノズル(4)は下端部に前記口筒部(32)に挿入する嵌入筒片(5)を延設したものであり、 前記嵌入筒片(5)の延設長さを、ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出するブロー成形装置。」である点で一致し,以下の点で相違している。 (1-i)本件発明1では「圧力媒体」が「液体」であるのに対して,甲1発明では「加圧流体」が「液体」に特定されていない点 (1-ii)本件発明1では「ネックリング」が「口筒部の下端に周設される」のに対して,甲1発明では「フランジ部」が「口部」の周設されているものの,その位置が特定されていない点 (1-iii)本件発明1では「嵌入筒片の下端が」「壜体の肩部に賦形される領域にまで達する長さとした」のに対して,甲1発明では「吹込ノズル」の出口と「中空容器」の肩部に相当する部分との位置関係が明確でない点 イ 相違点の検討 (ア)相違点(1-i)について まず,甲第1号証には,「加圧流体」として「液体」を使用することは記載されていないが,「気体」であることも記載されておらず,「流体」には,通常,気体と液体が存在すること,また,本件出願日前に頒布された乙第2号証には,気体に替えて液体を導入する構成を採用するだけで,ブロー成形装置がそのまま作動することを示唆する記載もある(【0019】参照)ことからすれば,本件出願時の技術常識を有する当業者が甲第1号証の記載に接したときには,「加圧流体」には,「気体」のみならず「液体」も含まれ得るものであると理解するのが自然であるといえる。 次に,甲第3号証には,従来、ブロー成形および充填は、2つの独立した工程として開発されていたが,コスト効果を上げるために,1つの操作で容器の形成および充填を実行するのに適切な液体または液圧ブロー成形システムが求められていたところ(摘記3c参照), 「容器の形成および充填を同時に行うシステムであって、 内面を画定し、プリフォームを受け入れるように構成される金型キャビティと、 ・・・プリフォームに向かって前記液体を押し出す第2の方向に前記チャンバ内で動作可能なピストン状デバイスを有する圧力源と、 前記圧力源から前記液体を受け、一定の圧力で前記液体を前記プリフォーム内に送出し、それによって前記プリフォームを前記金型キャビティの前記内面に向かって膨張させ、結果として得られる容器を作成するように構成されるブローノズルと、 を備え、前記液体が最終製品として前記容器内に残るシステム。」が提供されたことが記載されており(摘記3a参照),これは甲1発明と同様に加圧流体をプリフォーム(パリソン)に吹き込んで成形するブロー成形装置であって(摘記3e参照),液体を加圧流体として使用することで,コスト効果を上げるために「容器の形成および充填を同時に行う」との課題を解決したものであるといえる。 そうすると,甲1発明は,「食品、化粧品、薬品等を収納するプラスチック製の中空容器」をブロー成形する装置であって(摘記1b参照),「食品、化粧品、薬品等を収納するプラスチック製の中空容器」は主に液体を収納するものであるから,甲第3号証の記載に接した当業者であれば,甲1発明のブロー成形装置においても,同様に,コスト効果を上げるために容器の形成および液体の充填を同時に行うとの課題があることを認識し,その課題は,甲1発明の「加圧流体」として「液体」を選択することによって解決できることを容易に想到することができたものといえる。 よって,甲1発明において相違点(1-i)を構成することは当業者が容易になし得たことと認められる。 (イ)相違点(1-ii)について 甲第1号証には,成形される中空容器の口部とフランジ部について,フランジ部の上方に立ち上がり部が存在するとの記載(摘記1a参照)のほか,中空容器の胴部の上端に口部が存在し,図面にも,フランジ部の下方にさらに口部が存在することが記載されている(摘記1d,1e参照)。 ところで,甲1発明は,胴部の一端に筒状の口部を一体に延設した形状のプラスチック製の中空容器の口部に水平状に形成されたフランジ部を有し,そのフランジ部から上方に突出する立上り部を形成したものをブロー成形するには,口部を形成する部材に凹部を設けるが,そこには空気が溜って口部の立上り部の形状が一定しないという不都合があるため,吹込ノズルまたは口部形成リングを,立上り部形成のための凹部から外部に通じる通気路を有することで,空気の圧縮圧による樹脂の流れの妨げを解消することを目的とするものである(摘記1c参照)。 そうすると,甲1発明の目的とするところは,口部の立ち上がり部の成形を良好にするものであって,口部上方に立ち上がり部がある中空容器の形状であれば,上述のフランジ部の下にも口部があるものに限らず,甲1発明のブロー成形の対象とし得るものであって,そのような中空容器の形状は,甲1発明の分割金型の構造を適宜設計変更することで成形可能であることは当業者であれば十分に理解できるといえる。 一方,甲第3号証には,その図面等からみて,ブロー成形される容器として,支持リング(本件発明1の「ネックリング」,甲1発明の「フランジ部」に相当する)を備え,支持リングの下には口部が存在しない形状の中空容器(本件発明1の「口筒部の下端に周設されるネックリング」がある「壜体」)が記載されているといえる(摘記3d~3g参照)。 また,甲第4号証にも,図3等からみて,中空容器の口元部に環状の突起部(本件発明1の「ネックリング」,甲1発明の「フランジ部」に相当する)を有するものであって,その環状突起部の下からパリソンが延伸されて中空容器に成形されるものが記載されており(摘記4a~4c参照),この中空容器は甲第3号証と同様に,環状突起部の下には口部が存在しない形状の中空容器(本件発明1の「口筒部の下端に周設されるネックリング」がある「壜体」)が記載されているといえる。 そうすると,本件発明1の「口筒部の下端に周設されるネックリング」がある「壜体」は,本件出願前において,ごく一般的な形状の中空容器であったということができる。 してみると,このような一般的な形状の容器である「口筒部の下端に周設されるネックリング」がある「壜体」を成形するために,甲1発明において,分割金型の形状をその中空容器に対応するように設計変更をすることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。 よって,甲1発明において相違点(1-ii)を構成することも当業者が容易になし得たことと認められる。 (ウ)相違点(1-iii)について 上記(イ)で述べたとおり,甲1発明において,フランジ部の下に口部が存在しない形状の中空容器を成形すれば,フランジ部の下から直ちに中空容器の肩部が形成されることになり,甲1発明の吹込ノズルの出口はフランジ部の下にあるから,必然的に,本件発明1の「嵌入筒片の下端が」「壜体の肩部に賦形される領域にまで達する長さとした」構成となる。 してみると,甲1発明において,相違点(1-iii)を構成することも当業者が容易になし得たことと認められる。 ウ 本件発明1の効果について 本件発明1の効果は,本件特許明細書の記載(【0015】)からみて,壜体を賦形する際に肩部に賦形される領域からの胴部から底部に賦形される領域のへの肉廻りの低下を抑制し,胴部から底部にかけての領域での周壁の肉厚を想定の範囲に収め,想定した重量で,必要とされる剛性や座屈強度を有する壜体を提供することができることにあるものと認める。 ところで,この本件発明1の効果については,プリフォーム内に噴出する液体がネックリング直下近傍に位置する周壁に衝突することを抑制し,それによって当該周辺領域での温度の急激な低下を抑制,緩和することにより生じるものであるから,甲1発明において,加圧流体として液体を使用し,「口筒部の下端に周設されるネックリング」がある「壜体」を成形した場合には,吹込ノズルの出口がフランジ部の下方の中空容器の肩部まで存在することで,本件発明1の作用効果は必然的に得られるものであるといえる。 そうすると,本件発明1の効果は格別顕著なものであるということができない。 (3-2)本件発明3について ア 対比 本件発明3と甲1発明とを対比すると,上記(3-1)アで述べたとおり, 相違点(1-i)~(1-iii)に加えて以下の点でも相違している。 (1-iv)本件発明3は「縦延伸用の延伸ロッドをブローノズルに挿通、配設する構成とした」のに対して,甲1発明では,そのような延伸ロッドを備えてない点 イ 相違点の検討 甲第3号証には,「プリフォーム内に延在し、前記液体が前記プリフォーム内に押し出される前に前記プリフォームを機械的に延伸させるように構成される延伸ロッド」が記載されており(摘記3b参照),この延伸ロッドは,図面からみても,その作用からみても明らかにブローノズルに挿通,配設する構成となっているといえる(摘記3f,3g参照)。 そして,このような延伸ロッドは,甲第3号証だけではなく,甲第4号証にも記載されており(摘記4b,4c参照),ブロー成形装置において,ブロー成形する際に,延伸ロッドを使用して縦方向にプリフォームを延伸することは本件出願前において周知技術であったということができる。 そうすると,甲1発明の「パリソン」を成形する際に縦方向に延伸するため,吹込ノズルに挿通,配設される縦延伸用の延伸ロッドを備えることは当業者が容易に想到することができたものといえる。 よって,相違点(1-i)~(1-iii)に加えて,甲1発明において,相違点(1-iv)を構成することも当業者が容易になし得たことと認められる。 (4)特許権者の主張 ア 特許権者の主張の概要 特許権者は,意見書において概ね以下の主張をしている。 (ア)甲1発明における加圧媒体としての液体の選択について 甲1発明において,ブロー成形の圧力媒体として気体に替えて液体を用いることによって,本件発明1には到達できない。すなわち,気体を加圧流体とするブロー成形装置に,気体に替えて液体を採用しようとしても,気体と液体では,比重,圧縮率,比熱等の条件が極めて大きく相違するので,単に,圧縮気体に替えて液体を導入してもブロー成形装置は作動しない。 (イ)甲1発明を主引例とした点について 甲第1号証の出願時には,ブロー成形において圧力媒体として気体を使用するのが技術常識(乙第2,3号証)で,液体を使用することはなく,甲第1号証の「加圧流体」は「気体」を使用することを前提とするブロー成形用吹込装置である。 したがって,甲第1号証に接した本件出願時の当業者が,当時周知である多数の「ブロー成形用吹込装置」から,あえて,甲1発明のブロー成形装置を選択し,気体に替えて液体を加圧流体として使用するために,気体と液体の比重,圧縮率,比熱等の違いを考慮して,装置の諸元や操作条件を変えず,甲第3号証,乙第1,2号証に記載される液体を加圧流体とするブロー成形技術をさらに改良するのが自然である。 これに対して,本件発明1は,甲3発明等の液体を加圧媒体として使用するブロー成形装置において,「液体の温度によってはプリフォームの周壁における温度が部分的に低下し,延伸斑が発生し,成形される壜体の周壁では,延伸倍率および肉厚分布が不均一になり,また残留歪みが発生するため,壜体の剛性,座屈強度,耐熱性が低下する,成形後に壜体が変形する等の問題が発生する場合がある。」との新たな課題を見出し,この課題を解決するために,本件発明1では,「嵌入筒片(5)の延設長さを、ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)の下端に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出するとともに壜体(41)の肩部に賦形される領域にまで達する長さ」との構成を採用し,「壜体を賦形する際に肩部に賦形される領域からの胴部から底部に賦形される領域のへの肉廻りの低下を抑制し,胴部から底部にかけての領域での周壁の肉厚を想定の範囲に収め,想定した重量で,必要とされる剛性や座屈強度を有する壜体を提供することができる。」という本件発明1に特有の作用効果を奏するものである。 (ウ)甲第1号証の記載について 取消理由通知では,本件発明1の特徴である「嵌入筒片(5)の延設長さを、ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)の下端に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出するとともに壜体(41)の肩部に賦形される領域にまで達する長さ」との構成に相当する構成が甲第1号証に記載されていると指摘するが,甲第1号証に記載されているのは本件発明1とは加圧流体が異なる気体を加圧媒体とするブロー成形用吹込装置であり,しかも上記構成は図面から読み取れるだけであり,そのような構成を選択する技術的意義は一切記載されていない。 このような甲1発明に基づいて,これまで知られていなかった課題を見出し,この課題を解決し得る構成を創作した本件発明1の進歩性を否定できない。 甲第1号証では,「吹込ノズル」と記載されているが,「吹き込む」との用語は,空気などの「気体」に用いる表現である(乙第3号証)から,当該記載からも甲1発明が「加圧流体」として「気体」を用いることを意図したものであることが解る。 イ 特許権者の主張の検討 (ア)甲1発明における加圧媒体としての液体の選択について 特許権者は,気体を加圧流体とするブロー成形装置に,気体に替えて液体を採用しようとしても,気体と液体では,比重,圧縮率,比熱等の条件が極めて大きく相違するので,単に,圧縮気体に替えて液体を導入してもブロー成形装置は作動しないと主張するが,液体を加圧媒体として使用するブロー成形装置を記載した乙第2号証には,「かくして、本発明による方法は、特に既存の容器製造プラント、たとえば従来型のPETボトル製造装置から実施可能である。その場合、従来のブロー成形装置の様々な金型に結合されるブロー成形ノズルが、ガス流体の取入口ではなく本発明による液体射出手段に接続されるように、プラントを修正するだけでよい。」(【0019】参照)と記載されており,これは,圧縮気体に替えて液体を導入する構成を採用するだけで,ブロー成形装置はそのまま作動するものと解されるから,特許権者の主張は採用できない。 (イ)甲1発明を主引例とした点について 特許権者の主張は,要するに,甲1発明はブロー成形において圧力媒体として気体を使用するものであるから,本件出願時の当業者であれば,甲1発明のブロー成形装置を主引用例とすることはせずに,甲第3号証に記載される圧力媒体として気体を使用するブロー成形装置を主引用例とすべきことを主張するものと解される。 しかしながら,特許法第29条第2項の進歩性を判断するにあたって,本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明でありさえすれば,その主引用例とすることを何ら妨げるものではないから,特許権者の主張はその前提において誤りである。 そして,特許権者の主張は,甲第3号証に記載された発明を先行発明として捉えた場合に,その課題とそれを解決する構成を備えた本件発明1に到達できないことを述べたにすぎず,取消理由通知で指摘した甲1発明を主引用例として,甲第3号証に記載された発明を組み合わせることの想到容易性を否定する根拠とはならない。 (ウ)甲第1号証の記載について 特許権者は,本件発明1の特徴である「嵌入筒片(5)の延設長さを、ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)の下端に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出するとともに壜体(41)の肩部に賦形される領域にまで達する長さ」との構成に相当する構成が甲第1号証には図面以外に記載がないと主張しているが,上記(2)で述べたとおり,甲1発明が,本件発明1の「ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出する」に相当する構成を備える点については,甲第1号証の「パリスン内に打込んで口部内径を規制するとともに加圧流体を吹込む吹込ノズル」との記載(摘記1a参照)からも,必然的に導かれる構成であって,図面のみを認定の根拠としたものではない。 次に,本件発明1の「口筒部(32)の下端に」「ネックリング(33)」が周設される点,及び「嵌入筒片の下端が」「壜体の肩部に賦形される領域にまで達する長さとした」点については,本件発明1と甲1発明との対比において,それぞれ,相違点(1-ii),相違点(1-iii)として認定した上で,その容易性について述べている。 したがって,上記特許権者の主張は,取消理由通知の指摘を正解しないもので,誤りというほかはない。 次に,本件発明1の上記構成を選択する技術的意義については,甲第1号証については記載されていないものの,本件発明1の「嵌入筒片(5)の延設長さを、ブローノズル(4)を口筒部(32)に連通した状態で該嵌入筒片(5)の下端が口筒部(32)に周設されるネックリング(33)よりも下方に延出する」構成に対応する構成が甲第1号証に記載されているのであるから,その技術的意義が記載されていないとしても,そのような構成を有する甲1発明を認定することを妨げるものではない。 さらに,甲1発明は加圧媒体が気体であるから,このような甲1発明に基づいて,未知の課題を見出し,この課題を解決し得る構成を創作した本件発明1の進歩性を否定できないとの主張に関して検討すると,この未知の課題とは,甲第3号証を先行発明とした場合の課題であって,甲1発明を主引用例とした場合において,そのような課題は存在せず,甲1発明(主引用例)に甲第3号証に記載される液体を圧力媒体として使用する構成を適用するとともに,一般的な形状の容器である「口筒部の下端に周設されるネックリング」がある「壜体」を成形するために,分割金型の形状を設計変更して,本件発明1に対応する構成とするは当業者が容易になし得たことであって,この構成によって,上記の課題も解決できる以上,甲第3号証を先行発明とした場合の課題を当業者が認識していなかったとしても,甲1発明を主引用例とする進歩性の判断が否定されることにはならない。 なお,甲第1号証の「吹込ノズル」について,「吹き込む」との用語は,空気などの「気体」に用いる表現であるから,甲1発明が「加圧流体」として「気体」を用いることを意図したものであるの主張については,「吹込ノズル」は,ブロー成形機のおける「ブローノズル」を意味するものであり,「吹込ノズル」との用語を使用しているからといって,気体を導入するもののみに限定して解釈する必要はない。実際,甲第3号証,乙第1号証においては,「ブローノズル」から液体を導入している(摘記3d,3e,乙第1号証【0013】参照)ことからも,気体に限定して解する必要がないことが理解できる。 仮に,甲1発明の「加圧媒体」が「気体」であるとしても,相違点(1-i)の検討で述べたとおり,加圧流体として液体を選択できる以上,「気体」を「液体」に置き換えることも当業者が容易になし得たことであるから,この点はいずれにしろ結論を左右しない。 よって,特許権者の主張は採用できない。 (5)小括 以上のとおり,本件発明1,3は,甲第1,3,4号証に記載された発明に基いて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 本件発明2について (1)刊行物の記載事項 甲第1,3,4号証の記載事項は上記1(1)に記載したとおりである。 また,本件出願前に頒布された甲第2号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。 (2a)「図1に示すように、本発明のブロー成形装置は、一般に、ブロー成形金型12と、ネックリング13と、ブローコアアセンブリ14と、延伸ロット16と、加熱要素18とを有するブロー成形ステーション10を備えている。」(第3欄第63~66行) (2b)「ブローコアアセンブリ14は、プラスチック製のプリフォーム22への流体媒体の注入を可能にするために、プラスチック製のプリフォーム22の上端に係合している。この機能を実現するために、アセンブリ14は、従来方法のように、ブローシール31が装着されたブローコアマニホールド15を備えている。ブローシール31は、環状チャンネル32を区画し、以下で述べるように、環状チャンネル32は第1の入口ポート24と第2の入口ポート26とを連通する。」(第4欄第37~44行) (2c)「図1、3に示すように、第1の入口ポート24は、高圧導管38と連結され、高圧導管38に高圧ガス源39から高圧ガス38が供給される。高圧ガス38は、金型キャビティ20に対してプラスチック製のプリフォーム22を拡張し、それによって一般にブロー成形と呼ばれるプロセスにおいて、二軸延伸プラスチック容器40を形成する機能を発揮する。」(第4欄第61~67行) (2d)「図1に示すように、ブローシールのカラー33がプラスチック製のプリフォーム22の仕上がり部か首部の内側に位置し、フランジ37がプラスチック製のプリフォーム22の上端に係合するように、ブローコアアセンブリ14はプラスチック製のプリフォーム22内に下げられる。」(第6欄第29~33行) (2e)「 」(図1) (2)刊行物に記載された発明 ア 甲第1号証に記載された発明(甲1発明) 甲第1号証には,上記1(2)で述べたとおりの甲1発明が記載されている。 イ 甲第2号証に記載された発明(甲2発明) 甲第2号証には,ブロー成形装置が「ブロー成形金型12と、ネックリング13と、ブローコアアセンブリ14と、延伸ロット16と、加熱要素18とを有する」こと(摘記2a参照),「ブローコアアセンブリ14は、プラスチック製のプリフォーム22への流体媒体の注入を可能にするために、プラスチック製のプリフォーム22の上端に係合し・・・アセンブリ14は・・・ブローシール31が装着されたブローコアマニホールド15を備え」ること(摘記2b参照),「ブローシール31は、環状チャンネル32を区画し・・・環状チャンネル32は第1の入口ポート24と第2の入口ポート26とを連通する」ことも記載されている(摘記2b参照)。 そして,甲第2号証には,「第1の入口ポート24は、高圧導管38と連結され」,「高圧ガス38は、金型キャビティ20に対してプラスチック製のプリフォーム22を拡張し、それによって一般にブロー成形」が行われること(摘記2c参照),「ブローシールのカラー33がプラスチック製のプリフォーム22の・・・内側に位置し、フランジ37がプラスチック製のプリフォーム22の上端に係合する」こと(摘記2d参照)が記載されている。 そうすると,甲第2号証には, 「ブロー成形金型と,ネックリングと,ブローコアアセンブリと,延伸ロッドと,加熱エレメントを有するブロー成形装置であって, ブローコアアセンブリは,プラスチックプリフォームへの流体媒体の導入を可能にするため,その上端に係合しており,ブローシールが装着されたブローコアマニホールドを有し,ブローシールで区画された環状チャンネルは第1の入口ポートと第2の入口ポートとを連通し,第1の入口ポートは高圧ガス源からの高圧ガスを供給する高圧導管と連通して,高圧ガスが金型キャビティに対してプラスチックプリフォームを拡張してブロー成形し,ブローシールのカラーがプラスチックプリフォームの内側に位置し,ブローコアセンブリのフランジがプラスチックプリフォームと係合した構造を有するブロー成形装置」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 (3)対比・判断 (3-1)甲1発明を主引例とした場合 ア 対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると,上記1(3)(3-1)アで述べたとおり,相違点(1-i)~(1-iii)に加えて以下の点でも相違している。 (1-v)本件発明2は「ブローノズルの外周壁に下方に向かって縮径する周段部を周設し、該周段部と口筒部の上端面のシール部材を介した当接により、前記ブローノズルを口筒部に密に連通する構成としている」のに対して,甲1発明はそのような構成を有していない点 イ 相違点の検討 甲1発明は,胴部の一端に筒状の口部を一体に延設した形状のプラスチック製の中空容器の口部に水平状に形成されたフランジ部を有し,そのフランジ部から上方に突出する立上り部を形成したものをブロー成形するには,口部を形成する部材に凹部を設けるが,そこには空気が溜って口部の立上り部の形状が一定しないという不都合があるため,吹込ノズルまたは口部形成リングを,立上り部形成のための凹部から外部に通じる通気路を有することで,空気の圧縮圧による樹脂の流れの妨げを解消することを目的とするものである(摘記1b参照)。 そうすると,相違点(1-v)におけるブローノズルを「周段部と口筒部の上端面のシール部材を介した当接により、前記ブローノズルを口筒部に密に連通する構成」とすることは,甲1発明において,凹部からの通気路をなくすことになるので,甲第4号証に当該構成が記載されているとしてもそのような構成を採用する動機付けがない。 したがって,甲1発明において,相違点(1-i)~(1-iii)の構成を採用することが容易か否かにかかわらず,相違点(1-v)に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たとはいえない以上,本件発明2は,甲1発明(主引用例)及び甲第1~4号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (3-2)甲2発明を主引例とした場合 ア 対比 本件発明2と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「ブロー成形金型」,「プラスチックプリフォーム」は,それぞれ,本件発明2の「ブロー成形用の金型」,「有底筒状のプリフォーム」に相当する。 また,甲2発明のブローコアアセンブリは,流体媒体が通過する環状チャンネルを有し,プリフォームの首部に係合しているので,本件発明1の「有底筒状のプリフォームの口筒部と密に連通するブロー」のための構造であるといえる。 そうすると,本件発明2と甲2発明とは, 「ブロー成形用の金型と、有底筒状のプリフォームの口筒部に密に連通するブロー構造を有し、該ブロー構造を介してプリフォーム内に圧力媒体を供給するブロー成形装置」である点で一致し,以下の点で相違している。 (2-i)ブロー構造が,本件発明1では,「ブローノズル」であって,「ブローノズルは下端部に口筒に挿入する嵌入筒片を延設したものであり、前記嵌入筒片の延設長さを、ブローノズルを口筒部に連通した状態で該嵌入筒片の下端が口筒部に周設されるネックリングよりも下方に延出する」のに対して,甲2発明では,ブローシールで区画された環状チャンネルであって,ブローシールのカラーがプラスチックプリフォームの内側に位置するものである点 (2-ii)「圧力媒体」が本件発明2では「液体」であるのに対して,甲2発明では「高圧ガス」である点 (2-iii)本件発明2では「ネックリング」が「口筒部の下端に周設される」のに対して,甲2発明では「ネックリング」が存在するか明確でない点 (2-iv) 本件発明2では,「ブローノズルの外周壁に下方に向かって縮径する周段部を周設し、該周段部と口筒部の上端面のシール部材を介した当接により、前記ブローノズルを口筒部に密に連通する構成としている」のに対して,甲2発明はそのような構成を有していない点 イ 相違点の検討 (ア)相違点(2-i)について 甲2発明の「環状チャンネル」は,環状チャンネルの外周部分にカラーが存在しているが,環状チャンネルの内周部にはマニホールドが存在する。一方,本件発明2の「ブローノズル」は「嵌入筒片」からなるものであるから,少なくとも内部にマニホールドが存在する点において,甲2発明の「環状チャンネル」は,本件発明1の「ブローノズル」とその構造を異にするものといえる。 そして,甲2発明の「環状チャンネル」を区画するブローシールのカラーが,プラスチックプリフォームの内側に位置するので,部分的にみれば,本件発明2の「口筒部に挿入する嵌入筒片」と同様に機能するともいえるが,「ブローノズル」と「環状チャンネル」の構造全体をみれば,上述のとおり,異なる構造であって,環状チャンネルは内部にマニホールドを存在させることを前提としたものであるから,マニホールドが存在しない本件発明2の「嵌入筒片」で構成される「ブローノズル」にその構造を変える動機付けが存在しない。 (イ)相違点(2-iv)について 甲第2号証には,ブローコアアセンブリがブローシールが装着されたブローコアマニホールドを備えること(摘記2b参照),環状チャンネルを区画するブローシールのカラーが存在すること(摘記2d参照)は記載されているといえるが,カラーを含むブローシールの外周構造は不明であって,図1において,周段部を形成しているように見える部分37はフランジである(摘記2d参照)。そして,フランジは,プラスチック製のプリフォームの上端に係合するものであるから,仮に,甲2発明の「フランジ」が本件発明2の「周段部」に相当するとしても,本件発明2の「口筒部の上端面のシール部材を介した当接」はされていないことになる。 そして,甲2発明は,上述のカラーを含むブローシールによって,環状チャンネルを形成するものであるから,フランジとプラスチック製のプリフォームとの間に別途シール部材を配置する必要があるとはいえず,甲第4号証に「ブローノズルの外周壁に下方に向かって縮径する周段部を周設し、該周段部と口筒部の上端面のシール部材を介した当接により、前記ブローノズルを口筒部に密に連通する」構成が記載されていたとしても,これと組み合わせる動機付けがあるとはいえない。 ウ まとめ したがって,甲2発明において,相違点(2-ii),(2-iii)の構成を採用することが容易か否かにかかわらず,相違点(2-i),(2-iv)に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たとはいえない以上,本件発明2は,甲2発明(主引用例)及び甲第1~4号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから,本件発明2は,甲第1,2号証に記載された発明のいずれを主引用例としても,甲第1~4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 第6 むすび 以上のとおり,本件発明1,3に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してなされたものであり,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 本件発明2に係る特許は,特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては取り消されるべきものとはいえない。 よって,結論のとおり決定する。

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2016-700415

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