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特許異議申立

2016-700284

太陽電池裏面保護シート及びそれを用いた太陽電池モジュール

審判番号
2016-700284
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2009-245335
登録番号
特許第5805366号(P5805366)
請求日
2016年04月07日
審決日
2017年02月03日
公報発行日
2017年05月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】凸版印刷株式会社
  • 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
  • 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 森 竜介
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 伊藤 昌哉
分類
P1651.113-ZB (H01L) / P1651.121-ZB (H01L) / P1651.851-ZB (H01L) / P1651.853-ZB (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5805366号発明「太陽電池裏面保護シート及びそれを用いた太陽電池モジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5805366号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5805366号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成21年10月26日に特許出願され、平成27年9月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 特許業務法人 朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により請求項1ないし8に対して特許異議の申立て(2件)がされ、平成28年6月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月5日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年9月9日に申立人から意見書が提出され、同年10月3日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年12月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正」という。また、同本件訂正請求に伴う訂正請求書を以下「訂正請求書」という。)がされ、同年12月16日付け(発送日 同年同月21日)で訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月17日に意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、特許第5805366号の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」と呼ぶ。)の特許請求の範囲の、 「【請求項1】 耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層と、太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され、 該絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であり、かつ着色剤として酸化チタンまたは硫酸バリウムからなる白色顔料を2重量%以上配合されていることを特徴とする太陽電池裏面保護シート。 【請求項2】 耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層と、太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され、 該絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であり、かつ着色剤としてカーボンブラックからなる黒色顔料を1重量%以上配合されていることを特徴とする太陽電池裏面保護シート。 【請求項3】 前記絶縁・易接着樹脂層が、酢酸ビニル(VA)含有率が2~20重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池裏面保護シート。 【請求項4】 前記絶縁層が100℃以上の耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池裏面保護シート。 【請求項5】 前記絶縁層の厚さが前記絶縁・易接着樹脂の厚さに比べ相対的に薄いことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池裏面保護シート。 【請求項6】 前記耐候層、前記絶縁層、前記絶縁・易接着層の各層間を接着する接着剤が、耐加水分解性の高いポリカーボネート系接着剤、ゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤の一液または硬化剤或いは架橋剤を併用する二液硬化型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池裏面保護シート。 【請求項7】 前記耐候層と前記絶縁層との間にバリア層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池裏面保護シート。 【請求項8】 少なくとも充填材により太陽電池セルを固定する充填層と、該充填層の太陽光入射側に積層される表面保護シートと、その反対面側に積層される裏面保護シートとを備えてなる太陽電池モジュールであって、請求項1~7のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを前記裏面保護シートに用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。」 を、訂正明細書のとおり(下線は、特許権者が付与したとおりである。)、 「【請求項1】 耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層と、太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され、 該絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であり、かつ着色剤として酸化チタンまたは硫酸バリウムからなる白色顔料を2重量%以上配合されている太陽電池裏面保護シートの製造方法であって、 前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成することを特徴とする太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項2】 耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層と、太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され、 該絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であり、かつ着色剤としてカーボンブラックからなる黒色顔料を1重量%以上配合されている太陽電池裏面保護シートの製造方法であって、 前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成することを特徴とする太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項3】 前記絶縁・易接着樹脂層が、酢酸ビニル(VA)含有率が2~20重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項4】 前記絶縁・易接着樹脂層が、酢酸ビニル(VA)含有率が2~20重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項5】 前記絶縁層が100℃以上の耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項6】 前記絶縁層が100℃以上の耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムであることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項7】 前記絶縁層の厚さが前記絶縁・易接着樹脂の厚さに比べ相対的に薄いことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項8】 前記絶縁層の厚さが前記絶縁・易接着樹脂の厚さに比べ相対的に薄いことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項9】 前記耐候層、前記絶縁層、前記絶縁・易接着層の各層間を接着する接着剤が、耐加水分解性の高いポリカーボネート系接着剤、ゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤の一液または硬化剤或いは架橋剤を併用する二液硬化型であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項10】 前記耐候層、前記絶縁層、前記絶縁・易接着層の各層間を接着する接着剤が、耐加水分解性の高いポリカーボネート系接着剤、ゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤の一液または硬化剤或いは架橋剤を併用する二液硬化型であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項11】 前記耐候層と前記絶縁層との間にバリア層を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項12】 前記耐候層と前記絶縁層との間にバリア層を有することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池裏面保護シートの製造方法。 【請求項13】 少なくとも充填材により太陽電池セルを固定する充填層と、該充填層の太陽光入射側に積層される表面保護シートと、その反対面側に積層される裏面保護シートとを備えてなる太陽電池モジュールの製造方法であって、請求項1,3,5,7,9,11のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを前記裏面保護シートに用いたことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。 【請求項14】 少なくとも充填材により太陽電池セルを固定する充填層と、該充填層の太陽光入射側に積層される表面保護シートと、その反対面側に積層される裏面保護シートとを備えてなる太陽電池モジュールの製造方法であって、請求項2,4,6,8,10,12のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを前記裏面保護シートに用いたことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。」 に訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(訂正請求書 表紙より2頁目の20行ないし最下行)。 (1)訂正事項1 本件明細書の請求項1を「太陽電池裏面保護シート」から「太陽電池裏面保護シートの製造方法」に変更すると共に、「前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成する」との発明特定事項を直列的に付加する。 なお、これに伴い、本件明細書の請求項3~8について、請求項1を引用する請求項と引用しない請求項とに分離して、請求項1を引用する請求項を請求項3,5,7,9,11,13とし、これらの請求項をいずれも「製造方法」に変更する。 (2)訂正事項2 本件明細書の請求項2を「太陽電池裏面保護シート」から「太陽電池裏面保護シートの製造方法」に変更すると共に、「前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成する」との発明特定事項を直列的に付加する。 なお、これに伴い、本件明細書の請求項3~8について、請求項2を引用する請求項と引用しない請求項とに分離して、請求項2を引用する請求項を請求項4,6,8,10,12,14とし、これらの請求項をいずれも「製造方法」に変更する。 2 訂正の適否の検討 (1)訂正請求書における請求人の主張(訂正請求 表紙より3頁目の下から11行ないし5頁目の21行) 「(2)訂正の理由 (a)訂正事項1について ・・・途中省略・・・ イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 a 訂正の目的について 訂正の目的「訂正後の請求項1は、そのカテゴリーを『太陽電池裏面保護シート』から『太陽電池裏面保護シートの製造方法』に変更すると共に、『前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成する』との発明特定事項を直列的に付加することにより、訂正後の請求項1に係る発明の『耐候層』を具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項但し書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 前記aの理由から明らかなとおり、訂正事項1は、そのカテゴリーを『物』から『製造方法』に変更すると共に、『耐候層』という発明特定事項を概念的に下位に限定するものであり、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する 訂正事項1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3~8の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記aの理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。」 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、明細書の段落番号0028に基づくものである。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ・・・途中省略・・・ (a)訂正事項2について ・・・途中省略・・・ イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 a 訂正の目的について 訂正後の請求項2はそのカテゴリーを「太陽電池裏面保護シート」から「太陽電池裏面保護シートの製造方法」に変更すると共に、「前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成する」との発明特定事項を直列的に付加することにより、訂正後の請求項1に係る発明の「耐候層」を具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項但し書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 前記aの理由から明らかなとおり、訂正事項2は、そのカテゴリーを「物」から「製造方法」に変更すると共に、「耐候層」という発明特定事項を概念的に下位に限定するものであり、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 訂正事項2は、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3~8の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記aの理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、明細書の段落番号0028に基づくものである。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。」 (2)当審の判断 ア 訂正の目的について (ア)訂正事項1は、物である「太陽電池裏面保護シート」の発明であった訂正前の本件明細書の請求項1に、「製造方法」を付加して、方法の発明とするものである。 しかしながら、物の発明の構成に「製造方法」を付加しても、特許請求の範囲を減縮することとはならないことは明らかである。 よって、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」に該当しないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的とするものに該当しない。 訂正事項2も同様である。 (イ)訂正前の本件明細書の請求項1の記載は、「~を特徴とする太陽電池裏面保護シート。」であるから、訂正前の本件明細書の請求項1に係る発明の対象は、「太陽電池裏面保護シート」という「物」であることは明らかである。 そして、訂正前の本件明細書の請求項1には、「耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層と、太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され、該絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であり、かつ着色剤として酸化チタンまたは硫酸バリウムからなる白色顔料を2重量%以上配合されている」と特定されていることから、「太陽電池裏面保護シート」という「物」の構成が記載されている。 これに対して、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。 そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前の本件明細書の請求項1には、「太陽電池裏面保護シート」という「物」の構造及び特性が記載され、「物」の製造方法が記載されているとは認められないから、上記判事事項の「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合」に該当しない。 また、他に訂正前の本件明細書の請求項1に、発明が明確でないという理由もない。 そうすると、訂正事項1は、「発明が明確であること」という要件を欠くことのない「明瞭な」訂正前の本件明細書の請求項1を訂正するものであって、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当しない。 (ウ)また、訂正事項1は、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」にも該当しないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる目的とするものに該当しない。 訂正事項2も同様である。 イ 本件訂正事項について 訂正前の本件明細書の請求項1の記載は、「~されていることを特徴とする太陽電池裏面保護シート。」であるところ、訂正事項1は、「~されている太陽電池裏面保護シートの製造方法であって、前記耐候層を、接着剤層を介することなく、溶剤キャスト法により塗工して形成することを特徴とする太陽電池裏面保護シートの製造方法。」である。 この訂正は、発明の属するカテゴリーを物の発明から方法の発明に変更しており、発明の属するカテゴリーを変更するものである。 よって、訂正事項1は、「実質上特許請求の範囲を・・・変更するもの」に該当するから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に違反するものである。 訂正事項2も同様である。 3 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる目的とするものに該当しない。 また、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に違反するものである。 よって、本件訂正を認めることはできない。 第3 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 1 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、項番号に対応して、「本件発明1」などという。)は、上記「第2」「1」で、「本件明細書の特許請求の範囲」として示した請求項1~8に記載されたとおりのものである。 2 引用刊行物及び引用発明 ・刊行物1 米国特許出願公開第2006/0234038号明細書 ・刊行物2 「Next Generation Tedlar* PVF Film for Photovoltaic Module Backsheets」、DUPONT、2012年10月7日発行 URL:http://www.chipscalereview.com/legacy/www.ea-nrw.de/pv/workshop2007/5Roekens_PVF.pdf ・刊行物3 特開2008-85294号公報 (1)刊行物1 本願の出願前に頒布された刊行物(異議申立人提出の甲第1号証)である刊行物1には、以下の記載がある(訳は、異議申立書に基づいて、当審が付した。)。 ア 「[0005] ・・・The cells are spaced from one another in front of the back sheet, so that incident light passing through the front cover sheet and between the cells is reflected by the back cover sheet back to the transparent front cover sheet.」 ([0005]セルは、フロントカバーシートを通り、セル間を通過する入射光がバックカバーシートによって反射されて、透明なフロントカバーシートに戻されるように、バックシートの前でそれぞれ間隔があけられる。) イ 「[0010] The present invention provides laminates that can be used in electronic devices such as photovoltaic (PV) modules,・・・」 ([0010]本発明は、太陽電池(PV)モジュール等の電子デバイスに用いられ得る積層体であって、上記の要求を満たす積層体を提供する、・・・) ウ 「[0030] Preferred adhesives include (I) formulations comprising 600 parts by weight of polyester adhesive blend, 100 parts by weight of methylethyl ketone (MEK), and 100 parts by weight of toluene; and (11) formulations comprising 535 parts by weight of polyurethane adhesive blend, 200 parts by weight of MEK, 200 parts by weight of toluene, and 0.22 parts by weight of hydrolytic stabilizer.」 ([0030]好ましい接着剤としては(I)ポリエステル接着剤ブレンド600重量部、メチルエチルケトン(MEK)100重量部およびトルエン100重量部を含む処方および(II)ポリウレタン接着剤ブレンド535重量部、MEK200重量部、トルエン200重量部及び加水分解性安定剤0.22重量部を含む処方があげられる。(なお、上記英文中(11)は、(II)の誤記と認められる。)) エ 「[0034] According to the first step of the process of fabricating a laminate of the present invention, a preferred adhesive of either formulation I or II described above is applied to the first outer layer using either a comma coater・・・」 (本発明の積層体の加工方法の第1工程によれば、上記の処方IまたはIIのいずれかの好ましい接着剤が・・・第1の外層に塗工される。) オ 「[0042] The laminates of the present invention can be used as simple and cost-effective protective backing sheets for photovoltaic modules, as opposed to solar batteries.・・・The EVA in the second outer layer provides especially good bond strength to the encapsulants typically used for photovoltaic cells.」 ([0042]本発明の積層体は、ソーラーバッテリーに対して、簡単で費用効果の高い、太陽電池モジュール用のバックシートとして用いることができる。・・・第2の外層におけるEVA(エチレン酢酸ビニル)は、典型的には太陽電池セルに用いられる封入剤に特にすぐれた接着強度を提供する。) カ 「[0051] In Example 1, a laminate of the present invention is prepared having a first outer layer of PVF having a thickness of 22.5 micrometers. An adhesive of formulation I described above is applied to the first outer layer of PVF using a comma coater. The adhesive is controlled to 9 grams per square meter dry. The coated first outer layer is then dried to remove the solvent. A layer of polyethylene terephthalate having a thickness of 2 mils is then laminated to the PVF. The resulting intermediate laminate is then reprocessed according to the above and laminated to a second outer layer of EVA having a vinyl acetate content of thickness of 4 mils to obtain a laminate of the present invention. The EVA layer contained 5.5 weight % titanium dioxide pigment, and was substantially opaque to ultraviolet light. A cross section of the laminate of Example 1 is shown in FIG. 1.」 ([0051]実施例1では、厚みが22.5μmのPVFの第1の外層を有する本発明の積層体が、作製される。上記の処方Iの接着剤が、コンマコーターを用いてPVFの第1の外層に塗工される。接着剤は、乾燥後に1平方メートルにつき9グラムとなるように調整される。被覆された第1の外層は次に溶媒を取り除くために乾燥される。次に、厚みが2ミルのポリエチレンテレフタレートの層がPVFに積層される。作製された中間層は次に上記のとおりに再加工され、厚みが4ミルの酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層に積層されて、本発明の積層体が得られる。EVA層は、5.5重量%の二酸化チタン顔料を含み、紫外光に対してほぼ不透明であった。実施例1の積層体の断面を図1に示す。) キ 「1. A laminate comprising, and bonded together in the order specified, (a) a first outer layer of weatherable film; (b) at least one mid-layer selected from at least one of the group consisting of (i) poly(chlorotrifluoro ethylene), (ii) polymeric film coated on one or both surfaces with liquid crystal polymer,(iii) liquid crystal polymers; (iv) metal foil; and (v) polyester; and (c) a second outer layer having a reflectivity of at least about 75.0%. 2. A laminate of claim 1 wherein the second outer layer consists essentially of ethylene vinyl acetate having about from 3 to 15 weight % white opacifying pigment.・・・ 15. A laminate of claim 14 wherein the ethylene vinyl acetate comprises about from 2 to 33 percent by weight of vinyl acetate. 16. A laminate of claim 15 wherein the ethylene vinyl acetate comprises about from 2 to 8 percent by weight of vinyl acetate. ・・・ 19. A laminate of claim 1 wherein the middle layer consists essentially of polyester film coated on one or both surfaces with polyvinylidene chloride.・・・ 22. A solar panel comprising a plurality of photovoltaic cells and a laminate of claim 1.」 (請求項1 以下の順に互いに接着された積層体、 (a)耐候性フィルムからなる第1の外層; (b)以下の群から1つ以上選択される一層以上の中間層(i)ポリ(クロロトリフルオロ エチレン)、(ii)片面または両面が液晶高分子で被覆された高分子フィルム、(iii)液晶高分子;(iv)金属箔;及び(v)ポリエステル;及び (c)少なくとも約75.0%の反射性を持つ第2の外層。 請求項2 前記第2の外層が本質的に、約3~15重量%の白色不透明顔料を有するエチレン酢酸ビニルからなる請求項1記載の積層体。・・・ 請求項15 前記エチレン酢酸ビニルが、約2~33重量%の酢酸ビニルを含む請求項14記載の積層体。 請求項16 前記エチレン酢酸ビニルが、約2~8重量%の酢酸ビニルを含む請求項15記載の積層体。・・・ 請求項19 前記中間層が本質的に、片面または両面がポリ塩化ビニリデンで塗布されたポリエステルフィルムからなる請求項1記載の積層体。 請求項22 複数の太陽電池セルおよび請求項1の積層体を含むソーラーパネル。) ク 図1は次のものである。 (2)刊行物2 同じく、「Next Generation Tedlar* PVF Film for Photovoltaic Module Backsheets」(太陽電池モジュールのバックシートに用いる次世代TedlarPVFフィルム)と題する(異議申立人提出の甲第2号証である)刊行物2には、以下の記載がある。 「Typical Tedlar(R) Film Properties …UL 746B RTI, Mechanical (Impact Str), ℃ 120,125」(第6頁) (一般的なテドラーフィルム(R)の特性 UL746Bに準じた相対温度指数、機械特性(衝撃強度)℃ 120,125(なお、(R)は丸付きRである。)。) (3)刊行物3 同じく、(異議申立人提出の甲第3号証である)刊行物3には、以下の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、太陽電池の構成ユニットである太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールに関し、詳細には充填剤層との接着性、耐加水分解性、耐電圧性、ガスバリア性、耐熱性、耐候性、耐久性、堅牢性及びその他の諸特性に優れ、かつ良好な製造性及び低コスト性を有する太陽電池モジュール用バックシートに関するものである。」 イ 「【0009】 本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、耐候性、耐久性、耐水性、耐熱性、ガスバリア性、堅牢性等の諸特性に優れ、特に充填剤層との接着性、耐加水分解性及び耐電圧性に優れており、かつ良好な製造性及び低コスト性を有する太陽電池モジュール用バックシート及びこれを用いた太陽電池モジュールの提供を目的とするものである。」 ウ 「【0022】 上記表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有するとよい。このように表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有することで、表面側樹脂フィルムひいては当該太陽電池モジュール用バックシートの耐熱性、熱的寸法安定性、耐候性、強度、経年劣化防止性等を向上することができる。また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、最表面側に配設される表面側樹脂フィルム中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を太陽電池セル側に反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。」 エ 「【0032】 表面側樹脂フィルム2中に顔料を分散含有するとよい。このように表面側樹脂フィルム2中に顔料を分散含有することで、表面側樹脂フィルム2ひいては当該太陽電池モジュール用バックシート1の耐熱性、耐候性、耐久性、熱的寸法安定性、強度等の諸特性を向上することができる。また、表面側樹脂フィルム2中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。さらに、表面側樹脂フィルム2中に黒色顔料等を分散含有し、表面側樹脂フィルム2を種々の色に着色することで、太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。 【0033】 この白色顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸鉛、硫酸バリウムなどを使用することができる。中でも、合成樹脂層を形成する樹脂材料中への分散性に優れ、合成樹脂層の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が比較的大きい炭酸カルシウムが好ましい。この炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、バテライトなどの結晶タイプがあり、どの結晶タイプでも使用できる。この炭酸カルシウムは、ステアリン酸、ドデジシルベンゼンスルホン酸ソーダ、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等で表面処理されていてもよく、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の不純物が10%以下程度含まれていてもよい。その他の顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料、ウルトラマリン,紺青等の青色顔料、べんがら(酸化鉄赤),カドミウムレッド,モリブデンオレンジ等の赤色顔料、メタリック光沢を与える金属粉顔料などが挙げられ、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する。 【0034】 上記顔料の平均粒子径は、100nm以上30μm以下が好ましく、300nm以上3μm以下が特に好ましい。顔料の平均粒子径が上記範囲より小さいと、凝集等によりフィルム中への均一な分散が困難になるおそれがあ。一方、顔料の平均粒子径が上記範囲を超えると、上述の表面側樹脂フィルム2に対する耐熱性等の諸特性向上効果が低下するおそれがある。 【0035】 上記顔料の含有量としては、8質量%以上30質量%以下が好ましい。顔料の含有量が上記下限より小さいと、表面側樹脂フィルム2の耐久性、耐熱性、強度等の向上効果が小さくなる。一方、顔料の含有量が上記上限を超えると、フィルム中での顔料の分散性が低下し、表面側樹脂フィルム2の強度の低下を招来するおそれがある。」 3 理由1(特許法第29条第1項第3号) (1)上記2(1)によれば、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「厚みが22.5μmのPVFの第1の外層に接着剤が被覆され、 好ましい接着剤としては(I)ポリエステル接着剤ブレンド600重量部、メチルエチルケトン(MEK)100重量部およびトルエン100重量部を含む処方および(II)ポリウレタン接着剤ブレンド535重量部、MEK200重量部、トルエン200重量部及び加水分解性安定剤0.22重量部を含む処方があげられ、 厚みが22.5μmのPVFの第1の外層に、上記の処方(I)の接着剤が被覆され、前記第1の外層に、厚みが2ミルのポリエチレンテレフタレートの層が積層され、作製された中間層は、厚みが4ミルの酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層に積層され、EVA層は、5.5重量%の二酸化チタン顔料を含む、以下(a)ないし(c)順に互いに接着された積層体であって、 (a)耐候性フィルムからなる第1の外層; (b)以下の群から1つ以上選択される一層以上の中間層(i)ポリ(クロロトリフルオロ エチレン)、(ii)片面または両面が液晶高分子で被覆された高分子フィルム、(iii)液晶高分子;(iv)金属箔;及び(v)ポリエステル;及び (c)少なくとも約75.0%の反射性を持つ第2の外層、 前記第2の外層が本質的に、約3~15重量%の白色不透明顔料を有し、 前記エチレン酢酸ビニルが、約2~33重量%または約2~8重量%の酢酸ビニルを含み、 前記中間層が本質的に、片面または両面がポリ塩化ビニリデンで塗布されたポリエステルフィルムからなる、 太陽電池モジュール用のバックシートとして用いる積層体。」 (2)本件特許発明と証拠に記載された発明との対比・判断 ア 本件特許発明1と引用発明との対比・判断 (ア)本件特許発明1の「耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層」は、本件特許明細書に、「耐候層22は、耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である、強度、耐候性、耐熱性、耐水性、防湿性等に優れ、その経時的な耐久性を有する耐候性フィルムとして、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)・・・などがあり・・・」(段落【0027】)と記載されているとおり、好ましくはポリフッ化ビニル樹脂(PVF)である。なお、相対温度指数(RTI)が120℃、125℃であるPVFは刊行物2(上記2(2)参照)に記載されているとおり一般的なものである。そのため、引用発明の「PVFの第1の外層」は、本件特許発明1の「耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層」に相当する。 (イ)本件特許発明1の「太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層」は、本願明細書に「絶縁層21は、・・・ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、」(本願明細書段落【0029】)と記載されているとおり、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムであるから、引用発明の「厚みが2ミルのポリエチレンテレフタレートの層が積層され、作製された中間層」は、本件特許発明1の「太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層」に相当する。 (ウ)本件特許発明1の「絶縁・易接着樹脂層」は、本願明細書に「絶縁・易接着樹脂層23は、・・・エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂がよい。」(本願明細書段落【0030】)と記載されているとおり、絶縁・易接着樹脂層23は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂がよく、引用発明の「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、本件特許発明1の「絶縁・易接着樹脂層」に相当する。 また、引用発明の「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、「厚みが4ミル」であるところ、当該4ミルは101.6μmであるから、本件特許発明1の「絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であ」る点と、「絶縁・易接着樹脂層は膜厚が101.6μm以上であ」る点で一致する。 さらに、引用発明の「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、「5.5量%の酸化チタン顔料を含む」から、本件特許発明1の「着色剤として酸化チタンまたは硫酸バリウムからなる白色顔料を2重量%以上配合されている」点と、「着色剤として酸化チタンからなる白色顔料を5.5重量%以上配合されている」点で一致する。 (エ)そして、引用発明の「太陽電池モジュール用のバックシートとして用いる積層体」は、 「 (a)耐候性フィルムからなる第1の外層; (b)以下の群から1つ以上選択される一層以上の中間層(i)ポリ(クロロトリフルオロ エチレン)、(ii)片面または両面が液晶高分子で被覆された高分子フィルム、(iii)液晶高分子;(iv)金属箔;及び(v)ポリエステル;及び (c)少なくとも約75.0%の反射性を持つ第2の外層」 が(a)ないし(c)順に互いに接着された積層体であるから、本件特許発明1の「・・・耐候層と、・・・絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され」る「太陽電池裏面保護シート」に相当する。 (オ)以上より、引用発明は、本件特許発明1の構成要件をすべて具備する。 したがって、本件特許発明1は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当する。 イ 本件特許発明1を引用する本件特許発明3と引用発明との対比・判断 (ア)本件特許発明1を引用する本件特許発明3は、「前記絶縁・易接着樹脂層が、酢酸ビニル(VA)含有率が2~20重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である」点を規定することにより、本件特許発明1をさらに限定している。 (イ)一方、上記「ア」「(ウ)」で検討したとおり、引用発明における「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、本件特許発明1の「絶縁・易接着樹脂層」に相当する。 また、引用発明は、当該「第2の外層」が、「本質的に、約3~15重量%の白色不透明顔料を有し、前記エチレン酢酸ビニルが、約2~33重量%または約2~8重量%の酢酸ビニルを含」む」ものである。 (ウ)以上より、引用発明は、本件特許発明3の構成要件をすべて具備する。 したがって、本件特許発明3は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当する。 ウ 本件特許発明1を引用する本件特許発明4と引用発明との対比・判断 (ア)本件特許発明4は、「絶縁層が100℃以上の耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである」点を規定することにより、本件特許発明1をさらに限定している。 (イ)一方、引用発明は、上記「ア」「(イ)」で検討したとおり、「中間層として厚みが2ミルのポリエチレンテレフタレートの層」を備える積層体である。 また、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが100℃以上の耐熱性を有することは一般的である。 (ウ)以上より、引用発明は、本件特許発明4の構成要件をすべて具備する。 したがって、本件特許発明4は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当する。 エ 本件特許発明1を引用する本件特許発明5と引用発明との対比・判断 (ア)本件特許発明5は、「前記絶縁層の厚さが前記絶縁・易接着樹脂の厚さに比べ相対的に薄い」点を規定することにより、本件特許発明1をさらに限定している。 (イ)一方、引用発明は、上記アで検討したとおり、「厚みが22.5μmのPVFの第1の外層」、「中間層として厚みが2ミルのポリエチレンテレフタレートの層」及び「厚みが4ミルの酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」が積層された積層体である。 ここで、2ミルは50.8μmに相当し、4ミルは、101.6μmに相当する。 また、上記アで検討したとおり、引用発明の「第2の外層」は本件特許発明5の「絶縁・易接着樹脂層」に相当し、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートの層」は本件特許発明5の「絶縁層」に相当する。 (ウ)そうすると、引用発明における厚さが50.8μmの「ポリエチレンテレフタレートの層(絶縁層)」は、厚さが101.6μmの「第2の外層(絶縁・易接着樹脂層)」に比べて相対的に薄い。 (エ)以上より、引用発明は、本件特許発明5の構成要件をすべて具備する。 したがって、本件特許発明5は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当する。 オ 本件特許発明1を引用する本件特許発明6と引用発明との対比・判断 (ア)本件特許発明6は、「前記耐候層、前記絶縁層、前記絶縁・易接着層の各層間を接着する接着剤が、耐加水分解性の高いポリカーボネート系接着剤、ゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤の一液または硬化剤或いは架橋剤を併用する二液硬化型である」点を規定することにより、本件特許発明1をさらに限定している。 (イ)ここで、引用発明は、「好ましい接着剤としては、(I)ポリエステル接着剤ブレンド600重量部、メチルエチルケトン(MEK)100重量部およびトルエン100重量部を含む処方および(II)ポリウレタン接着剤ブレンド535重量部、MEK200重量部、トルエン200重量部及び加水分解性安定剤0.22重量部を含む処方があげられ」るものであるから、引用発明は、接着剤として「処方Iのポリエステル接着剤」だけでなく、「処方IIのポリウレタン接着剤」も使用されるものである。 (ウ)以上より、引用発明は、本件特許発明6の構成要件をすべて具備する。 したがって、本件特許発明6は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当する。 カ 本件特許発明1を引用する本件特許発明7と引用発明との対比・判断 (ア)本件特許発明7は、「前記耐候層と前記絶縁層との間にバリア層を有する」点を規定することにより、本件特許発明1をさらに限定している。 (イ)一方、引用発明は、上記「ア」「(イ)」で検討したとおり、引用発明1の中間層が、本件特許発明1の絶縁層に相当し、引用発明の第1の外層が、本件特許発明1の耐候層に相当する。 そして、引用発明は、「作製された中間層は、厚みが4ミルの酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層に積層され、・・・前記中間層が本質的に、片面または両面がポリ塩化ビニリデンで塗布されたポリエステルフィルムからなる」ものであって、中間層と第1の外層との間には、ポリ塩化ビニリデンからなる層が形成されるところ、当該ポリ塩化ビニリデンからなる層は、本件特許発明7の、「前記耐候層と前記絶縁層との間にバリア層を有する」に相当する。 (ウ)以上より、引用発明は、本件特許発明7の構成要件をすべて具備する。 したがって、本件特許発明7は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当する。 キ 本件特許発明1を引用する本件特許発明8と刊行物1に記載された発明との対比・判断 (ア)引用発明の「太陽電池モジュール用のバックシートとして用いる積層体」について、刊行物1には、「第2の外層におけるEVA(エチレン酢酸ビニル)は、典型的には太陽電池セルに用いられる封入剤に特にすぐれた接着強度を提供する」(上記「2」「(1)」「オ」)ことが開示されている。 また、刊行物1には、「セルは、フロントカバーシートを通り、セル間を通過する入射光がバックカバーシートによって反射されて、透明なフロントカバーシートに戻されるように、バックシートの前でそれぞれ間隔があけられる」(上記「2」「(1)」「ア」)ことが開示されている。 さらに、太陽電池モジュールの構成として、複数の太陽電池セルがフロントカバーシートとバックシートの間に封入剤によって封入される構成が一般的であることは、当業者の技術常識である。 これらによれば、引用発明の「太陽電池モジュール用のバックシートとして用いる積層体」は、「太陽電池モジュール」として用いるに際して、封入剤によって太陽電池セルを封入する構成となることは明らかである。 よって、刊行物1には、「引用発明の積層体をバックシートとして用いた太陽電池モジュールであって、複数の太陽電池セルがフロントカバーシートとバックシートの間に封入剤によって封入された、太陽電池モジュール。」の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 (イ)刊行物1記載の発明は、「複数の太陽電池セルがフロントカバーシートとバックシートの間に封入剤によって封入された」ものであるところ、封入剤は層をなし、複数の太陽電池セルを固定するものであることは明らかであるから、本件特許発明8の「充填材により太陽電池セルを固定する充填層」との構成を備える。 (ウ)刊行物1記載の発明の「フロントカバーシートとバックシート」は、それぞれ、封入剤の太陽光入射側に積層される表面保護のためのシート、及び、その反対面側に積層される裏面保護のためのシートであることは明らかであるから、本件特許発明8の「該充填層の太陽光入射側に積層される表面保護シートと、その反対面側に積層される裏面保護シート」に相当する。 (エ)刊行物1記載の発明は「引用発明の積層体をバックシートとして用いた太陽電池モジュールであ」るから、本件特許発明8の「請求項1~7のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを前記裏面保護シートに用いた」「太陽電池モジュール」に相当する。 (オ)以上の検討によれば、本件特許発明8と刊行物1記載の発明は、 「充填材により太陽電池セルを固定する充填層と、該充填層の太陽光入射側に積層される表面保護シートと、その反対面側に積層される裏面保護シートとを備えてなる太陽電池モジュールであって、請求項1~7のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを前記裏面保護シートに用いた太陽電池モジュール。」の全ての構成で一致し、相違するところはない。 (カ)したがって、本件特許発明8は、刊行物1記載の発明である。 (3)小括 本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし8は、特許法第29条第1項第3号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当し、特許を受けることができないものである。 4 理由2(特許法第29条第2項) 上記3で検討したとおり、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし7は引用発明であり、また、本件特許発明8は刊行物1記載の発明であるが、仮に、そうでないとしても、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし7は引用発明より、また、本件特許発明8は刊行物1記載の発明より、容易に発明することができたものであるといえる。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 5 理由3(特許法第29条第2項) (1)本件特許発明と証拠に記載された発明との対比・判断 ア 本件特許発明2について (ア)対比 a 本件特許発明2の「相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層」は、本件特許明細書に、「耐候層22は、耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である、強度、耐候性、耐熱性、耐水性、防湿性等に優れ、その経時的な耐久性を有する耐候性フィルムとして、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)・・・などがあり・・・」(段落【0027】)と記載されているとおり、好ましくはポリフッ化ビニル樹脂(PVF)である。なお、相対温度指数(RTI)が120℃、125℃であるPVFは刊行物2(上記「2」「(2)」参照)に記載されているとおり一般的なものである。そのため、引用発明の「PVFの耐候性フィルムからなる第1の外層」は、本件特許発明2の「相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層」に相当する。 b 本件特許発明2の「太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層」は、本願明細書に「絶縁層21は、・・・ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、」(本願明細書段落【0029】)と記載されているとおり、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムであるから、引用発明の「中間層として厚みが2ミルのポリエチレンテレフタレートの層」は、本件特許発明2の「太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層」に相当する。 c 本件特許発明2の「絶縁・易接着樹脂層」は、本願明細書に「絶縁・易接着樹脂層23は、・・・エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂がよい。」(本願明細書段落【0030】)と記載されているとおり、絶縁・易接着樹脂層23は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂がよく、引用発明1の「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、本件特許発明2の「絶縁・易接着樹脂層」に相当する。 また、引用発明の「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、「厚みが4ミル」であるところ、当該4ミルは101.6μmであるから、本件特許発明2の「絶縁・易接着樹脂層は膜厚が30μm以上であ」る点と、「絶縁・易接着樹脂層は膜厚が101.6μm以上であ」る点で一致する。 d 上記aないしcでの検討によれば、本件特許発明2と引用発明は、 「耐加水分解性を有し、相対温度指数(RelativeThermal Index)が100℃以上である耐候層と、太陽電池セルからの放電を外部への放電を防止する絶縁層と、絶縁・易接着樹脂層と、がこの順で積層され、該絶縁・易接着樹脂層は膜厚が101.6μm以上である太陽電池裏面保護シート。」の点で一致し、 本件特許発明2の「絶縁・易接着樹脂層」は、「着色剤としてカーボンブラックからなる黒色顔料を1重量%以上配合されている」のに対して、引用発明の「酢酸ビニルを含むEVAの第2の外層」は、「約3~15重量%の白色不透明顔料を有し」ている点で相違する(以下「相違点」という。)。 (イ)判断 a 刊行物3には、「上記表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有するとよい。このように表面側樹脂フィルム中に顔料を分散含有することで、表面側樹脂フィルムひいては当該太陽電池モジュール用バックシートの耐熱性、熱的寸法安定性、耐候性、強度、経年劣化防止性等を向上することができる。また、当該太陽電池モジュール用バックシートは、最表面側に配設される表面側樹脂フィルム中に白色顔料を分散含有することで、太陽電池セルを透過した光線を太陽電池セル側に反射させる機能が付加され、より発電効率を高めることができる。」(上記「2」「(3)」「ウ」「段落【0022】」)と記載される。 また、刊行物3には、「表面側樹脂フィルム2中に顔料を分散含有するとよい。このように表面側樹脂フィルム2中に顔料を分散含有することで、表面側樹脂フィルム2ひいては当該太陽電池モジュール用バックシート1の耐熱性、耐候性、耐久性、熱的寸法安定性、強度等の諸特性を向上することができる。・・・さらに、表面側樹脂フィルム2中に黒色顔料等を分散含有し、表面側樹脂フィルム2を種々の色に着色することで、太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。」(上記「2」「(3)」「エ」「段落【0032】」)と記載される。 さらに、刊行物3には、「その他の顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料、ウルトラマリン,紺青等の青色顔料、べんがら(酸化鉄赤),カドミウムレッド,モリブデンオレンジ等の赤色顔料、メタリック光沢を与える金属粉顔料などが挙げられ、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する。」(上記「2」「(3)」「エ」「段落【0033】」)、及び、「上記顔料の含有量としては、8質量%以上30質量%以下が好ましい。」(上記「2」「(3)」「エ」「段落【0035】」)ことが開示されている。 b そうすると、刊行物3には、より発電効率を高めるために白色顔料を分散含有すること、及び、各種特性や意匠性等を向上させるために所定量の黒色顔料を用いることが開示されているといえる(以下「刊行物3に開示の事項」という。)。 また、引用発明と刊行物3に開示の事項とは、いずれも太陽電池モジュールのバックシートとして利用される点において技術分野が共通する。 そして、太陽電池モジュールにおいて意匠性等の向上が求められることは周知の事項である。 したがって、引用発明において「各種特性や意匠性等を向上させるために所定量の黒色顔料を用いる」こととなし、あわせて、「その他の顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料・・・などが挙げられ、太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する。」点、及び、「上記顔料の含有量としては、8質量%以上30質量%以下が好ましい。」点(刊行物3に開示の事項)を採用して上記相違点に係る本件特許発明2の構成となすことに格別の困難性はない。 c よって、本件特許発明2は、引用発明に刊行物3に開示の事項を組み合わせることにより容易に発明することができたものである。 イ 本件特許発明2を引用する本件特許発明3ないし8について 上記アで検討したとおり、本件特許発明2は引用発明に刊行物3に開示の事項を組み合わせることにより容易に想到され得るものである。 また、上記「3」「(2)」「イ」ないし「カ」で検討したとおり、本件特許発明3ないし7において付加される発明特定事項は、引用発明の構成である。 さらに、上記「3」「(2)」「キ」で検討したとおり、本件特許発明1を引用する本件特許発明8は、刊行物1記載の発明である。 そうすると、上記アでの検討及び上記「3」「(2)」「イ」ないし「キ」での検討を踏まえれば、本件特許発明2を引用する本件特許発明3ないし8も、上記「3」「(2)」「イ」ないし「キ」での検討と同様に、引用発明または刊行物1記載の発明に、刊行物1に記載された事項及び刊行物3に開示の事項を組み合わせることにより容易に発明することができたものである。 (2)小括 特許法第29条第2項について 本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明3ないし8は、引用発明または刊行物1記載の発明に、刊行物1に記載された事項及び刊行物3に開示の事項を組み合わせることにより容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし8は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に該当するから、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし8は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 また、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし8は、引用発明または刊行物1記載の発明より容易に発明することができたものであるといえるから、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 さらに、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明3ないし8は、引用発明または刊行物1記載の発明に、刊行物1に記載された事項及び刊行物3に開示の事項を組み合わせることにより容易に発明することができたものであるから、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明3ないし8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700284

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