特許異議申立
2016-700253
天井設置型室内機
- 審判番号
- 2016-700253
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-287441外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月28日
- 審決日
- 2017年01月25日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】小谷 悦司
- 【権利者代理人】小谷 昌崇
- 【権利者代理人】玉串 幸久
- 【異議申立人】青木 眞理
- 分類
- P1652.113-YAA(F24F) / P1652.121-YAA(F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5786849号発明「天井設置型室内機」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5786849号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,3,6〕,2,4,5について訂正することを認める。
特許第5786849号の請求項1,3,6に係る特許を維持する。
特許第5786849号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立を却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5786849号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は,平成24年12月28日に出願され,平成27年8月7日にその特許権の設定登録がされ,その後,特許異議申立人青木眞理により請求項1~3,6に対して特許異議の申立てがされ,平成28年5月24日付けで取消理由が通知され,同年7月25日付けで意見書の提出があり,同年9月2日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ,同年11月2日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ,同年12月16日付けで特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正について
1 訂正の内容
平成28年11月2日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,本件特許の明細書及び特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって,具体的な訂正事項は以下のとおりである。
(1)訂正事項1-1
訂正前の請求項1に
「前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備える天井設置型室内機。」
とあるのを,
「前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備え、
前記剥離誘発面(54)は、前記案内面(53)との境界部である一端と、前記下面(33)との境界部である他端と、を有し、
前記剥離誘発面(54)は、前記一端と前記他端とを結ぶ線分よりも前記吹出口(6)から遠ざかる側に全体が位置している天井設置型室内機。」
と訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。
(2)訂正事項1-2
訂正前の段落【0009】の末尾に,以下の記載を追加する。
「前記剥離誘発面(54)は、前記案内面(53)との境界部である一端と、前記下面(33)との境界部である他端と、を有する。前記剥離誘発面(54)は、前記一端と前記他端とを結ぶ線分よりも前記吹出口(6)から遠ざかる側に全体が位置している。」
(3)訂正事項2-1
訂正前の請求項2を削除する。
(4)訂正事項2-2
訂正前の段落【0011】を削除する。
(5)訂正事項3
訂正前の請求項3に「請求項1又は2に記載の天井設置型室内機。」とあるのを,「請求項1に記載の天井設置型室内機。」と訂正する。
(6)訂正事項4-1
訂正前の請求項4に
「前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分において、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)とのなす角度(θ)が鋭角である、請求項1~3の何れか1項に記載の天井設置型室内機。」
とあるのを,
「空気を吹き出す吹出口(6)が下部に設けられた天井設置型室内機において、
互いに間隔をあけて対向し、水平方向に長い吹出流路(5)を形成する第1壁面(51)及び第2壁面(52)と、
前記第1壁面(51)の下端に接続され、室内に露出する下面(33)と、を備え、
前記第1壁面(51)は、
空気を下方に案内する案内面(53)と、
前記案内面(53)と前記下面(33)の間に介在し、前記第1壁面(51)において気流の剥離が生じる高さ方向の位置を前記吹出流路(5)の長手方向において揃える凹状の剥離誘発面(54)と、を備え、
前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備え、
前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分において、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)とのなす角度(θ)が鋭角である、天井設置型室内機。」
と訂正する。
(7)訂正事項4-2
訂正前の段落【0014】に
「(4)前記天井設置型室内機では、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分において、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)とのなす角度(θ)が鋭角である形態が例示でき、この場合には、鋭角の接続部分に剥離ポイントを位置させることができる。」
とあるのを,
「(4)本発明は、空気を吹き出す吹出口(6)が下部に設けられた天井設置型室内機に関する。前記天井設置型室内機は、互いに間隔をあけて対向し、水平方向に長い吹出流路(5)を形成する第1壁面(51)及び第2壁面(52)と、前記第1壁面(51)の下端に接続され、室内に露出する下面(33)と、を備える。前記第1壁面(51)は、空気を下方に案内する案内面(53)と、前記案内面(53)と前記下面(33)の間に介在し、前記第1壁面(51)において気流の剥離が生じる高さ方向の位置を前記吹出流路(5)の長手方向において揃える凹状の剥離誘発面(54)と、を備える。前記天井設置型室内機は、前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備える。前記天井設置型室内機では、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分において、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)とのなす角度(θ)が鋭角である。この場合には、鋭角の接続部分に剥離ポイントを位置させることができる。」
と訂正する。
(8)訂正事項5-1
訂正前の請求項5に
「前記剥離誘発面(54)は、前記吹出口(6)から遠ざかる方向に凹む凹曲面(55)を含み、
前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分は、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)の湾曲する方向が変わる変曲部(54a)である、請求項1~3の何れか1項に記載の天井設置型室内機。」
とあるのを,
「空気を吹き出す吹出口(6)が下部に設けられた天井設置型室内機において、
互いに間隔をあけて対向し、水平方向に長い吹出流路(5)を形成する第1壁面(51)及び第2壁面(52)と、
前記第1壁面(51)の下端に接続され、室内に露出する下面(33)と、を備え、
前記第1壁面(51)は、
空気を下方に案内する案内面(53)と、
前記案内面(53)と前記下面(33)の間に介在し、前記第1壁面(51)において気流の剥離が生じる高さ方向の位置を前記吹出流路(5)の長手方向において揃える凹状の剥離誘発面(54)と、を備え、
前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備え、
前記剥離誘発面(54)は、前記吹出口(6)から遠ざかる方向に凹む凹曲面(55)を含み、
前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分は、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)の湾曲する方向が変わる変曲部(54a)である、天井設置型室内機。」
と訂正する。
(9)訂正事項5-2
訂正前の段落【0015】に
「(5)前記天井設置型室内機において、前記剥離誘発面(54)は、前記吹出口(6)から遠ざかる方向に凹む凹曲面(55)を含み、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分は、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)の湾曲する方向が変わる変曲部(54a)である形態が例示できる。この場合には、変曲部(54a)又はその近傍に剥離ポイントを位置させることができる。」
とあるのを,
「(5)本発明は、空気を吹き出す吹出口(6)が下部に設けられた天井設置型室内機に関する。前記天井設置型室内機は、互いに間隔をあけて対向し、水平方向に長い吹出流路(5)を形成する第1壁面(51)及び第2壁面(52)と、前記第1壁面(51)の下端に接続され、室内に露出する下面(33)と、を備える。前記第1壁面(51)は、空気を下方に案内する案内面(53)と、前記案内面(53)と前記下面(33)の間に介在し、前記第1壁面(51)において気流の剥離が生じる高さ方向の位置を前記吹出流路(5)の長手方向において揃える凹状の剥離誘発面(54)と、を備える。前記天井設置型室内機は、前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備える。前記天井設置型室内機において、前記剥離誘発面(54)は、前記吹出口(6)から遠ざかる方向に凹む凹曲面(55)を含み、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)との接続部分は、前記案内面(53)と前記剥離誘発面(54)の湾曲する方向が変わる変曲部(54a)である。この場合には、変曲部(54a)又はその近傍に剥離ポイントを位置させることができる。」
と訂正する。
(10)訂正事項6
訂正前の請求項6に「請求項1~3の何れか1項に記載の天井設置型室内機。」とあるのを,「請求項1又は3に記載の天井設置型室内機。」と訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1-1及び1-2について
訂正事項1-1は,請求項1に記載された「剥離誘発面(54)」に対して,さらに「前記案内面(53)との境界部である一端と、前記下面(33)との境界面である他端と、を有し、」「前記一端と前記他端とを結ぶ線分よりも前記吹出口(6)から遠ざかる側に全体が位置している」との限定事項を付加するものである。よって,訂正事項1-1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,請求項1を直接又は間接に引用する請求項3,6についても,同様に特許請求の範囲を減縮するものである。そして,訂正事項1-2は,明細書を訂正事項1-1と整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,本件特許明細書には,「第1実施形態」として「剥離誘発面54の両端部を結ぶ線分よりも吹出口6から遠ざかる側(図4(A)では右斜め上方側)に、剥離誘発面54の全体が位置している。剥離誘発面54の両端のうちの一端は、剥離誘発面54と案内面53との境界部(変曲部54a)であり、前記両端のうちの他端は、剥離誘発面54と下面33との境界部54bである。」(段落【0047】)と記載されていることから,訂正事項1-1及び1-2は,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(2)訂正事項2-1及び2-2について
訂正事項2-1は,請求項2を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,訂正事項2-2は,明細書を訂正事項2-1と整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項2-1及び2-2は,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(3)訂正事項3及び6について
訂正事項3及び6は,それぞれ請求項3及び6について,請求項2の削除に伴うものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項3及び6は,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(4)訂正事項4-1及び4-2並びに5-1及び5-2について
訂正事項4-1及び5-1は,それぞれ請求項4及び5について,請求項1を引用しないものとし,独立形式請求項へ改めるものであるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。そして,訂正事項4-2及び5-2は,明細書をそれぞれ訂正事項4-1及び5-1と整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また,訂正事項4-1及び4-2並びに5-1及び5-2は,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
3 むすび
したがって,本件訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1,3,6〕,2,4,5について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1,3,6に係る発明(以下それぞれ「本件発明1,3,6」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1,3,6に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
【請求項1】
空気を吹き出す吹出口(6)が下部に設けられた天井設置型室内機において、
互いに間隔をあけて対向し、水平方向に長い吹出流路(5)を形成する第1壁面(51)及び第2壁面(52)と、
前記第1壁面(51)の下端に接続され、室内に露出する下面(33)と、を備え、
前記第1壁面(51)は、
空気を下方に案内する案内面(53)と、
前記案内面(53)と前記下面(33)の間に介在し、前記第1壁面(51)において気流の剥離が生じる高さ方向の位置を前記吹出流路(5)の長手方向において揃える凹状の剥離誘発面(54)と、を備え、
前記吹出流路(5)内に配置され、前記剥離誘発面(54)に取り付けられた水保持部材(61)をさらに備え、
前記剥離誘発面(54)は、前記案内面(53)との境界部である一端と、前記下面(33)との境界部である他端と、を有し、
前記剥離誘発面(54)は、前記一端と前記他端とを結ぶ線分よりも前記吹出口(6)から遠ざかる側に全体が位置している天井設置型室内機。
【請求項3】
前記案内面(53)は、平面又は前記第2壁面(52)側に凸の凸曲面により構成されている、請求項1に記載の天井設置型室内機。
【請求項6】
前記剥離誘発面(54)は、
前記案内面(53)の下端部に接続され、前記第2壁面(52)から遠ざかる方向に延びる第1平面(541)と、
上端部が前記第1平面(541)の端部に接続され、前記下面(33)に向かって延びる第2平面(542)と、を含む、請求項1又は3に記載の天井設置型室内機。
2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~3,6に係る特許に対して平成28年5月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,次のとおりである。
(1)取消理由1
請求項1~3に係る発明は,実質的に甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)取消理由2
請求項1~3に係る発明は,甲第1号証に記載された発明と周知技術に基いて,請求項6に係る発明は,甲第1号証に記載された発明と甲第2~4号証記載の発明に基いて,それぞれその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 刊行物
甲第1号証:特開2008-57843号公報
甲第2号証:特開2009-264637号公報
甲第3号証:特開2001-147041号公報
甲第4号証:実願昭54-158135号(実開昭56-75627号)
のマイクロフィルム
イ 甲第1号証に記載された発明
取消理由で通知した甲第1号証には,図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「図1(A)および図1(B)に示すように、本発明による天井埋込型の空気調和機は、被空調室の天井面Aの上部に本体Bが図示しない吊下部材によって吊下設置されるとともに、前記本体Bの下面に被着されたパネル6が前記天井面Aに沿うように配置されている。」(段落【0013】)
(イ)「パネル6には、被空調室の空気を吸い込む吸込口1と、同吸込口1の周囲に近接して配置された吹出口5とを備えており、これら吸込口1と吹出口5とを結ぶ空気通路には、同吸込口1に臨ませるように設けられた送風ファンCと、同送風ファンCの周囲を囲むように配置された熱交換器Dとを備えている」(段落【0014】)
(ウ)「前記吸込口1から吸い込まれた空気が前記熱交換器Dによって熱交換されたのち、前記吹出口5から吹き出されて被空調室が空気調和されるようになっている。」(段落【0015】)
(エ)「パネル6は、同パネル6(天井面)を見上げた時に視認される表面側が、合成樹脂製の成形品からなるパネル部材2で構成され、同パネル部材2の背面側が発泡成形品からなる断熱部材3で構成されている。」(段落
【0017】)
(オ)「前記吹出口5は、図1(B)に示すように、凹面状に形成された一側が前記断熱部材3によって構成される一方、凸面状に形成された他側が、接合部aとして示した前記断熱部材3と前記パネル部材2との接合位置から下面にかけて同パネル部材2で構成されるとともに、他側上端部が前記断熱部材3の一部を前記吹出口5に突出させた突起部3aで構成されている。」(段落【0018】)
(カ)「前記突起部3aは、前記パネル部材2に対し面一状に連続形成された構成であってもよく、また、前記パネル部材2よりも前記吹出口5(送風部)側に少許突出するように形成された構成であってもよい。」(段落【0019】)
(キ)「例えば前記熱交換器Dによって熱交換された冷気が前記吹出口5を流通する際、前記パネル部材2と前記突起部3aとが当接した接合部aにおいて、これらパネル部材2と断熱部材3との材質の違いや表面形状の違いとして、例えば合成樹脂製のパネル部材2と発泡スチロール製の断熱部材3とで構成されることにより、また、前記パネル部材2に対し前記突起部3aを突出させたことにより剥離して、このままでは、その下部となる前記パネル部材2の表面に、室内空気を巻き込むことで生じた温度差によって結露が生じることになるが、ここに、例えば植毛シートからなる断熱シート7を貼着することで結露が発生しないようになる。」(段落【0020】)
(ク)「吹出空気流に剥離を起こさせるための前記突起部3aおよび前記接合部aが、前記風向偏向板4の枢支部4aよりも上流側に設けられたことで、そのままでは結露が生じてしまうことになる前記接合部aの下部であって、使用者が視認できない前記吹出口5の奥まった位置となる前記パネル部材2に前記断熱シート7を貼着した構成になっており、これによって、結露が生じる位置を前記吹出口5の奥まった位置(送風部)に設定した上で、視認できない該位置に結露の発生を防止するための断熱シート7を貼着した天井埋込型の空気調和機を提供できる。」(段落【0022】)
(ケ)【図1】の記載から,パネル6に備えられた吹出口5が空気調和機の下部に設けられていること,吹出口5を形成する側及び一側が,互いに間隔をあけて対向していること,パネル部材2で構成される下面が被空調室に面することが読み取れる。
また,【図1】(B)を参照すれば,パネル部材2で構成される下面は,凸面状に形成された他側の一部と同じパネル部材2で構成されており,該下面と該他側は一続きになっている。よって,該下面は該他側の下端に接続されていると認められる。
さらに,【図1】(B)からは,突起部3aが,鉛直方向に延びる面と,その下端から水平方向に延びる面とをもつものであることが読み取れる。このうち鉛直方向に延びる面は,吹出口5を流れる空気を下方に案内すると認められる。
上記(ア)~(ケ)に記載された事項を総合すると,甲第1号証には次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明」という。)。
「空気を吹き出す吹出口5が下部に設けられた天井埋込型の空気調和機において,
互いに間隔をあけて対向し,吹出口5を形成する,断熱部材3並びにパネル部材2で構成される凸面状に形成された他側,及び断熱部材3で構成される凹面状に形成された一側と,
他側の下端に接続され,被空調室に面する下面と,を備え,
他側は,
空気を下方に案内する面と,
吹出空気流に剥離を起こさせるための突起部3a及び接合部aと,を備え,
吹出口5内に配置され,接合部aの下部となるパネル部材2の表面に貼着された植毛シートからなる断熱シート7をさらに備える天井埋込型の空気調和機。」
ウ 対比・判断
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると,甲1発明における「吹出口5」,「天井埋込型の空気調和機」,「断熱部材3並びにパネル部材2で構成される凸面状に形成された他側」,「断熱部材3で構成される凹面状に形成された一側」,「被空調室に面する下面」,「空気を下方に案内する面」「吹出空気流」は,本件発明1における「吹出口」,「天井設置型室内機」,「第1壁面」,「第2壁面」,「室内に露出する下面」,「空気を下方に案内する案内面」,「気流」にそれぞれ相当する。
そして,甲1発明において上記「他側」と「一側」が空気を吹き出すための流路を形成していることは明らかであり,このことは本件発明1の「第1壁面」と「第2壁面」が「吹出流路を形成する」ことに相当する。
また,甲1発明の「接合部a」は,「パネル部材2と」「突起部3aとが当接した」部分であって(上記イ(キ)),「突起部3a」とともに「吹出空気流に剥離を起こさせるための」ものである(上記イ(ク))から,剥離を誘発する機能をもつ。そして,該剥離は「パネル部材2に対し」「突起部3aを突出させたことにより」起こるとされている(上記イ(キ))から,「接合部a」,「突起部3a」の水平方向に延びる面,「接合部aの下部となるパネル部材2の表面」を合わせたものは,本件発明1の「案内面と下面との間に介在」する「剥離誘発面」に相当し,「空気を下方に案内する面」及び「被空調室に面する下面」との境界部を両端としている。
また,甲1発明の「断熱シート7」は,本件発明1の「水保持部材」と,「吹出流路内に配置され,剥離誘発面に取り付けられた部材」という限りにおいて一致する。
(イ)一致点
したがって,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で一致している。
「空気を吹き出す吹出口が下部に設けられた天井設置型室内機において,
互いに間隔をあけて対向し,吹出流路を形成する第1壁面及び第2壁面と,
第1壁面の下端に接続され,室内に露出する下面と,を備え,
第1壁面は,
空気を下方に案内する案内面と,
案内面と下面の間に介在する剥離誘発面と,を備え,
吹出流路内に配置され,剥離誘発面に取り付けられた部材をさらに備え,
剥離誘発面は,案内面との境界部である一端と,下面との境界部である他端と,を有する天井設置型室内機。」
(ウ)相違点
そして,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で相違している。
相違点1
本件発明1は,吹出流路が「水平方向に長い」のに対し,甲1発明は,そのような構成を有しているかが明らかでない点
相違点2
本件発明1は,剥離誘発面が,「第1壁面において気流の剥離が生じる高さ方向の位置を吹出流路の長手方向において揃える」のに対し,甲1発明はそのような構成を有しているか否か明らかでない点
相違点3
本件発明1では,剥離誘発面に取り付けられる部材が「水保持部材」であるのに対し,甲1発明では断熱シートである点
相違点4
本件発明1は,剥離誘発面が,凹状であって,一端と他端とを結ぶ線分よりも吹出口から遠ざかる側に全体が位置しているのに対し,甲1発明はそのような構成を有しているか否か明らかでない点
(エ)判断
A 取消理由1(特許法第29条第1項第3号)について
本件発明1と甲1発明とは,上記相違点1~4において相違し,少なくとも下記Bにて検討する相違点4は実質的な相違点であるから,本件発明1は特許法第29条第1項第3号に該当しない。本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件発明3も同様に,特許法第29条第1項第3号に該当しない。
B 取消理由2(特許法第29条第2項)について
相違点4について検討する。
甲1発明において,少なくとも「断熱シート7」が貼着された「パネル部材2の表面」は,本件発明1の「剥離誘発面」に相当する。しかし,「剥離誘発面」が「凹状」であることや,「一端と他端とを結ぶ線分よりも吹出口から遠ざかる側に全体が位置している」ことについては,甲第1号証に記載も示唆もない。したがって上記相違点4は実質的な相違点である。
ここで,相違点4に係る本件発明1の構成は,剥離誘発面により形成される凹み空間を大きくする意義を有するところ,甲1発明においては「突起部3a」と「パネル部材2」の段差は必須とされておらず(上記イ(カ)),剥離は「パネル部材2と断熱部材3との材質の違いや表面形状の違い」によっても起こり得るとされている(上記イ(キ))ことから,甲1発明において,「接合部a」の近傍の凹み空間を大きくしようとする動機付けは見いだせない。よって,上記相違点4に係る本件発明1の構成は,甲第2~4号証に記載された技術事項を考慮しても,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって,本件発明1は,甲第2~4号証に記載された技術事項を考慮しても,甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件発明3,6も同様に,甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,平成28年12月16日付けの意見書において,新たに提出した参考資料1及び2,並びに甲第2号証及び甲第3号証を根拠として,本件訂正によって本件発明1に新たに付加された構成が周知の技術であったとし,したがって本件発明1,3,6は,甲1発明に周知の技術を単に適用したものであるから,特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により,特許を受けることができないと主張している。
しかし,特許異議申立人が述べる構成が周知の技術であったとしても,既に十分に剥離を誘発することのできる甲1発明に,さらに当該周知の技術を適用する動機付けを見いだすことはできない(上記(エ)B参照)。特許異議申立人の意見は採用できない。
(2)むすび
以上のとおり,取消理由によっては,請求項1,3,6に係る特許を取り消すことはできない。また,他に請求項1,3,6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項2に係る特許は,本件訂正により削除されたため,特許異議申立人の請求項2に係る特許についての特許異議の申立は,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2016-700253