特許異議申立
2022-701283
電算機室用空気調和装置
- 審判番号
- 2022-701283
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-141389
- 登録番号
- 7121293
- 請求日
- 2022年12月21日
- 審決日
- 2023年05月15日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【異議申立人】伊藤 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 西村 泰英
- 分類
- P1651.113-Y (F24F) / P1651.121-Y (F24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7121293号発明「電算機室用空気調和装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7121293号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7121293号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、令和元年7月31日に出願され、令和4年8月9日にその特許権の設定登録がされ、令和4年8月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし7に係る特許に対し、令和4年12月21日に特許異議申立人 伊藤裕美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7121293号の請求項1ないし7の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電算機室に設置されて用いられる電算機室用空気調和装置(1)であって、
吸込口(51a)と、底部に設けられた吹出口(52a、52b)と、を有する筐体(50)と、
前記筐体の内部に収容された熱交換器(18)と、
前記熱交換器よりも低い高さ位置において前記筐体の内部に収容された圧縮機(11)と、
前記熱交換器よりも低い高さ位置において前記筐体の内部に収容された送風機(20)と、
を備え、
前記送風機は、送風部(21、22)と、前記送風部を駆動させるモータ(23)と、前記モータから延びた回転軸(23x)と、を有しており、
前記回転軸(23x)は、正面視において左右方向に延びており、
前記モータは、正面視において、前記圧縮機と一部が重なるように配置されている、
電算機室用空気調和装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、第1熱交換部(18a)と第2熱交換部(18b)とを有しており、
前記第1熱交換部と前記第2熱交換部とは、上方に向かうにつれて互いに離れる姿勢で配置されている、
請求項1に記載の電算機室用空気調和装置。
【請求項3】
前記送風機の回転軸(23x)は、前記筐体の底部(52)に沿って延びている、
請求項1または2に記載の電算機室用空気調和装置。
【請求項4】
前記送風部(21、22)は、ターボファンである羽根車(61、71)と、前記羽根車を覆うファンケーシング(60、70)と、を有しており、
前記ファンケーシングは、前記熱交換器を通過した空気を前記送風機の回転軸方向から内部に導き、前記羽根車が遠心方向に吹き出した空気を前記吹出口に導く、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電算機室用空気調和装置。
【請求項5】
前記モータは、両軸モータである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電算機室用空気調和装置。
【請求項6】
前記筐体の内部のうち、前記圧縮機よりも高い高さ位置に配置される油分離器(15a、15b)と、
前記筐体内において前記吸込口から前記吹出口に向けて空気が流れる通風路から前記油分離器を隔離する第1仕切部(57)と、
をさらに備えた、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電算機室用空気調和装置。
【請求項7】
前記筐体内において前記吸込口から前記吹出口に向けて空気が流れる通風路から、前記圧縮機を隔離する第2仕切部(57)をさらに備えた、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電算機室用空気調和装置。」
第3 申立理由の概要
申立人が申し立てた特許異議申立ての理由は、概略以下のとおりである。
1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))
本件発明1ないし3及び7は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1ないし3及び7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
本件発明1ないし7は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:特許第4779915号公報
甲第2号証:特開2014-119126号公報
甲第3号証:特開2005-76925号公報
第4 各甲号証に記載の事項等
1 甲第1号証について
甲第1号証(特許第4779915号公報、以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同様。)
(1)「【0026】
<第1実施形態>
〔空調システムの全体構成〕
本発明の第1実施形態に係る室内ユニット2を有する空調システム1は、電算機室内の空気を冷却するために用いられる冷房専用の空調システムである。」
(2)「【0033】
室内ユニット2のケーシング40は、略直方体形状を有しており、主として、正面板40aと、左側面板40bと、右側面板40cと、背面板40dと、天板40eと、底板40fとから構成されている。」
(3)「【0035】
左側面板40bは、正面板40a側から見て正面板40aの左側に位置しており、右側面板40cは、正面板40a側から見て正面板40aの右側に位置している。天板40eには、電算機室内の空気をケーシング40の内部に吸い込むための多数のスリットが形成されている。底板40fには、2台のファンロータ15b,15bの下方に開口が形成されており、この開口は、ケーシング40の内部の空間をフリーアクセスの床下の空間に連通させている。
【0036】
ケーシング40の内部の空間は、3段構成となっており、仮想的に上下方向に並ぶ3つの空間A1~A3に分割される。各空間A1~A3は、上下方向におおよそ同じ長さを有している。上段の空間A1には、蒸発器11、ドレンパン17および電装品箱16が配置されており、中段の空間A2には、ファンモータ15aおよびファンロータ15bが2台ずつおよび電装品箱43が配置されており、下段の空間A3には、インバータ圧縮機10aおよび定速圧縮機10bが2台ずつ配置されている。なお、図1中の圧縮機10は、インバータ圧縮機10aと定速圧縮機10bとを組み合わせたものである。」
(4)「【0039】
(3)ファンモータおよびファンロータ
ファンモータ15aおよびファンロータ15bは、2台ずつ正面板40a側から見て左右方向に交互に並べられており、最左にファンロータ15bが配置されている。2台のファンロータ15b,15bは、いずれもシロッコファンである。ファンモータ15a,15aは、右側面板40c側から見て中央付近に配置されており、ファンロータ15b,15bは、右側面板40c側から見て背面板40dよりに配置されている。中段の空間A2は、仕切板42により正面板40a側から見て手前側の空間と奥側の空間とに仮想的に分割されている。ファンモータ15a,15aおよびファンロータ15b,15bは、奥側の空間に配置されており、電装品箱43は、手前側の空間に配置されている。なお、図2においては、仕切板42および電装品箱43は省略されている。
【0040】
室内側ファン15,15が駆動されると、ケーシング40の内部には気流が形成され、天板40eに形成されているスリットから吸い込まれた空気が底板40fに形成されている開口を介して吹き出されるようになる。より詳細には、天板40eに形成されているスリットから吸い込まれた空気は、クロスフィンチューブ式の蒸発器11を通り抜けながら冷媒との間で熱交換を行い冷却される。冷却された空気は、ファンロータ15b,15bに吸い込まれるようにして中断の空間A3のうち主に奥側の空間に流れ込む。ファンロータ15b,15bから真下に向けて吹き出された空気は、ケーシング40の底板40fに形成されている開口を介してフリーアクセスの床下の空間に流れ込むことになる。仕切板42は、手前側の空間に蒸発器11において冷却された空気が流れ込むことを抑制しており、電装品箱43が過度に冷却され電装品箱43において結露などの現象が発生しないようにしている。
【0041】
図4は、ファンモータ15aとファンロータ15bとの接続構造を示す図である。ファンモータ15aの正面板40a側から見て左側から水平方向に突出している軸部材18aは、ファンロータ15bの羽根の軸受け部18bまで延びており、この軸受け部18bに挿入されている。そして、この軸部材18aと軸受け部18bとの接続により、ファンモータ15aの回転がファンロータ15bの羽根へと伝えられることになる。」
(5)「【0054】
(D)
上記実施形態においては、正面板40a側から見て左右方向に延びる軸に2台のファンモータ15a,15aを投影した2本の線分と、2台のインバータ圧縮機10a,10aを投影した2本の線分との合計4本の線分が、互いに重ならないようになっている。しかしながら、これらの4本の線分のうちいくつかの線分の一部と一部とが互いに重なるようになっていてもよい。
【0055】
すなわち、図5に示すように、正面板40a側から見て配線60~63が交差しない限り、左側のインバータ圧縮機10aと左側の定速圧縮機10bとが逆に配置されており、左右方向に延びる軸に左側のインバータ圧縮機10aを投影した線分の一部と、左側のファンモータ15aを投影した線分の一部とが互いに重なるようになっていてもよい。また、これらの2本の線分のうち一方が、他方に完全に含まれるようになっていてもよい。」
(6)【図2】
[図:0001398292000001.jpg]
(7)【図3】
[図:0001398292000002.jpg]
(8)【図4】
[図:0001398292000003.jpg]
上記(1)ないし(8)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「電算機室内の空気を冷却するために用いられる空調システム1の室内ユニット2であって、
主として、正面板40aと、左側面板40bと、右側面板40cと、背面板40dと、天板40eと、底板40fとから構成され、天板40eに形成されているスリットと、底板40fに形成されている開口と、を有するケーシング40と、
ケーシング40の内部の空間は3段構成となっており、上段の空間A1には、蒸発器11、が配置されており、中段の空間A2には、ファンモータ15aおよびファンロータ15bが配置されており、下段の空間A3には、インバータ圧縮機10aおよび定速圧縮機10bが配置されており、
前記ファンモータ15aの正面板40a側から見て左側から水平方向に突出している軸部材18aは、ファンロータ15bの羽根の軸受け部18bまで延びており、この軸受け部18bに挿入されて、この軸部材18aと軸受け部18bとが接続されている、
空調システム1の室内ユニット2。」
2 甲第2号証について
甲第2号証(特開2014-119126号公報、以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0010】
図1において、1は、電子計算機室等のフリーアクセスフロア11に設置する床置形空気調和装置であり、空気吸込口12と、空気吹出口2と、V字状の熱交換器13と、ドレンパン14と、駆動軸31aを水平にしたターボファン3と、本体ケーシング15とを備えている。
図1(a)はフリーアクセスフロア内に空気を吹出す底面吹出であり正面吹出を行わない場合、図1(b)は正面吹出であり底面吹出を行わない場合である。」
(2)「【0026】
以下、実施の形態1又は実施の形態2と同様な構成については、同一の符号を付して説明を省略ないし簡略にし、実施の形態1又は実施の形態2と相違する構成について詳細に説明する。
図8において、ターボファンユニット4aは2基のターボファン3を1基の両軸の駆動軸31bを有するファンモータ31の両軸の前記駆動軸31bに直結して直方体状のユニットケーシング5aに内蔵している。」
(3)【図8】
[図:0001398292000004.jpg]
3 甲第3号証について
甲第3号証(特開2005-76925号公報、以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0021】
以下、本発明にかかる室外ユニットの電装品ユニット及び及びそれを備えた空気調和装置の室外ユニットの実施形態について、図面に基づいて説明する。
(1)室外ユニットの全体構造
図1は、本発明にかかる室外ユニットの電装品ユニット及び及びそれを備えた空気調和装置の室外ユニットの一実施形態が採用された室外ユニット1を示す斜視図(ユニットケーシングの右前板、天板、ファングリル及び室外ファンを取り除いて図示)である。また、図2は、図1の室外ユニット1から左前板22、左側板23、右側板24及び熱交換器31を除いて示した図である。図3は、図2の室外ユニットを左側面側から見た斜視図である。この室外ユニット1は、空調室外に設置されており、略直方体箱状のユニットケーシング2の内部が鉛直に延びる仕切板25及び熱交換器31の管板26により送風機室S1と機械室S2とに分割されたトランク型の構造を有するものである。この室外ユニット1は、空調室内に配置される室内ユニット(図示せず)に冷媒連絡配管(図示せず)を介して接続されている。」
(2)「【0024】
天板は、室外ユニット1の上面部分を構成する横長の略長方形状の金属製の板状部材である。
左前板22は、主に、ユニットケーシング2の左前面部分を構成する金属製の板状部材であり、その下部が底板21にネジ等により固定されている。左前板22には、室外ファンによってユニットケーシング2の背面側及び左側面側から内部に取り込まれた空気を外部に吹き出すための吹出口22aが設けられている。吹出口22aは、本実施形態において、上下に並んで2つ設けられている。また、各吹出口22aには、ファングリル(図示せず)が設けられている。
【0025】
左側板23は、主に、ユニットケーシング2の左側面部分を構成する金属製の板状部材であり、その下部が底板21にネジ等により固定されている。この左側板は、室外ファンによってユニットケーシング2内に吸入される空気の吸入口としても機能できるようになっている。
右前板は、主に、ユニットケーシング2の右前面部分及び右側面の前側部分を構成する金属製の板状部材であり、その下部が底板21にネジ等により固定されている。また、右前板は、その左側部が左前板23の右側部にネジ等により固定されている。」
(3)「【0027】
仕切板25は、底板21に対して鉛直に延びる金属製の板状部材であり、ユニットケーシング2の内部空間を左右2つの空間に仕切るように配置されている。仕切板25は、その下部が底板21にネジ等により固定されている。また、左前板22の右側部は、仕切板25のユニットケーシング前面側の端部にネジ等により固定されている。
管板26は、ユニットケーシング2の左側面から背面に沿うように配置された略L字形状の熱交換器31の背面側の端面に対応するように設けられた金属製の板状部材であり、その下部が底板21にネジ等により固定されている。そして、管板26のユニットケーシング前面側の端部と仕切板25のユニットケーシング背面側の端部とは、互いにネジ等により固定されている。また、右側板24の背面側の端部は、管板26のユニットケーシング背面側の端部にネジ等により固定されている。」
(4)「【0034】
油分離器36は、機械室S2内において四路切換弁34の左側に配置されている。油分離器36は、圧縮機32の吐出側に接続されており、圧縮機32から吐出される高圧のガス冷媒に混入する冷凍機油をガス冷媒中から分離して圧縮機32の吸入側に戻すための機器である。
閉鎖弁37、38は、本実施形態の室外ユニット1においては、ユニットケーシング2の機械室S2内において右前板の近傍に配置されている。具体的には、閉鎖弁37、38は、右前板の角部近傍の位置、すなわち、レシーバ33の前側に配置されている。そして、本実施形態の室外ユニット1では、冷媒連絡配管がユニットケーシング2内において、閉鎖弁37、38に接続されるようになっている。また、閉鎖弁37、37の上側には、右前板の内面に沿うように、空間S4が設けられており、電装品ユニット5の下部電装品ユニット52(後述)が配置されている。さらに、閉鎖弁37、38の下側には、閉鎖弁37、38に接続された冷媒連絡配管をユニットケーシング2内から前面側、底面側及び側面側から取り出すための空間S5が設けられている。」
(5)【図1】
[図:0001398292000005.jpg]
(6)【図2】
[図:0001398292000006.jpg]
(7)【図3】
[図:0001398292000007.jpg]
(8)【図4】
[図:0001398292000008.jpg]
(9)【図5】
[図:0001398292000009.jpg]
第5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「電算機室内の空気を冷却するために用いられる空調システム1の室内ユニット2」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「電算機室に設置されて用いられる電算機室用空気調和装置(1)」に相当し、以下同様に、「蒸発器11」は「熱交換器(18)」に、「インバータ圧縮機10a及び定速圧縮機10b」は「圧縮機(11)」に、「ファンロータ15b及びファンモータ15a」は「送風機(20)」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「天板40eに形成されているスリット」は、本件発明1の「吸込口(51a)」に相当し、同様に、「底板40fに形成されている開口」は、本件発明1の「底部に設けられた吹出口(52a、52b)」に相当する。よって、甲1発明の「主として、正面板40aと、左側面板40bと、右側面板40cと、背面板40dと、天板40eと、底板40fとから構成され、天板40eに形成されているスリットと、底板40fに形成されている開口と、を有するケーシング40」は、本件発明1の「吸込口(51a)と、底部に設けられた吹出口(52a、52b)と、を有する筐体(50)」に相当する。
甲1発明の「ケーシング40の内部の空間は、3段構成となっており、上段の空間A1には、蒸発器11、が配置されており、中段の空間A2には、ファンモータ15aおよびファンロータ15bが配置されており、下段の空間A3には、インバータ圧縮機10aおよび定速圧縮機10bが配置されて」いることは、本件発明1の「筐体の内部に収容された熱交換器(18)と、前記熱交換器よりも低い高さ位置において前記筐体の内部に収容された圧縮機(11)と、前記熱交換器よりも低い高さ位置において前記筐体の内部に収容された送風機(20)と、を備え」ていることに相当する。
甲1発明の「前記ファンモータ15aの正面板40a側から見て左側から水平方向に突出している軸部材18aは、ファンロータ15bの羽根の軸受け部18bまで延びており、この軸受け部18bに挿入されて、この軸部材18aと軸受け部18bとが接続されている」ことは、本件発明1の「前記送風機は、送風部(21、22)と、前記送風部を駆動させるモータ(23)と、前記モータから延びた回転軸(23x)と、を有しており、前記回転軸(23x)は、正面視において左右方向に延びて」いることに相当する。
よって、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
〔一致点〕
「電算機室に設置されて用いられる電算機室用空気調和装置であって、
吸込口と、底部に設けられた吹出口と、を有する筐体と、
前記筐体の内部に収容された熱交換器と、
前記熱交換器よりも低い高さ位置において前記筐体の内部に収容された圧縮機と、
前記熱交換器よりも低い高さ位置において前記筐体の内部に収容された送風機と、
を備え、
前記送風機は、送風部と、前記送風部を駆動させるモータと、前記モータから延びた回転軸と、を有しており、
前記回転軸は、正面視において左右方向に延びている、
電算機室用空気調和装置。」
〔相違点〕
本件発明1は、「モータは、正面視において、圧縮機と一部が重なるように配置されている」のに対して、甲1発明は、そのような事項を備えていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲1発明は、「ケーシング40の内部の空間は3段構成となっており、上段の空間A1には、蒸発器11、が配置されており、中段の空間A2には、ファンモータ15aおよびファンロータ15bが配置されており、下段の空間A3には、インバータ圧縮機10aおよび定速圧縮機10bが配置されて」ているものであるから、ファンモータ15aは、正面視において、インバータ圧縮機10aおよび定速圧縮機10と一部が重なるように配置されているものではない。
申立人は、次のように主張している。
「(a)上記発明特定事項H1に関する段落0054及び0055の記載について、正面板40aから視て、かつ、段落0054に記載の4本の線分を図示した参考図Aを下記に示す。
[図:0001398292000010.jpg]
段落0054にも記載のように、参考図Aでは、「正面板40a側から見て左右方向に延びる軸に2台のファンモータ15a,15aを投影した2本の線分と、2台のインバータ圧縮機10a,10aを投影した2本の線分との合計4本の線分が、互いに重ならない」。具体的には、ファンモータ15a,15aを投影した2本の線分(以下、線分Aという)と、2台のインバータ圧縮機10a,10aを投影した2本の線分(以下、線分Bという)とは、異なる高さ位置に存在する。また、2本の線分A同士は、同じ高さ位置に存在するが、左右方向位置が異なる。2本の線分B同士も同様であり、同じ高さ位置に存在するが、左右方向位置が異なる。
一方で、段落0055の特に3~4行目には、「左右方向に延びる軸に左側のインバータ圧縮機10aを投影した線分の一部と、左側のファンモータ15aを投影した線分の一部とが互いに重なるようになっていてもよい。」と記載されている。即ち、この記載から、左側の線分Bの一部と、左側の線分Aの一部とが、互いに重なることが読み取れる。
上記のように、線分A及び線分Bは、それぞれ、ファンモータ15a及びインバータ圧縮機10aの左右方向に延在する軸への投影線である。このため、線分A及び線分Bは、正面視において、それぞれ、ファンモータ15a及びインバータ圧縮機10aに含まれる。従って、段落0055に記載の「線分Aの一部と線分Bの一部とは重なる」ということは、正面視において、ファンモータ15aの一部と、インバータ圧縮機10aの一部とが重なるということと同義である。即ち、段落0054及び段落0055において、「ファンモータ15aは、正面視において、インバータ圧縮機10aと一部が重なるように配置される」ことは、記載されているに等しい事項である。」(申立書11ないし12ページ)
上記主張について検討する。
甲1の段落【0054】及び【0055】の記載は、「インバータ基板50,50とインバータ圧縮機10a,10aとを接続する配線60,62と、インバータ基板51,51とファンモータ15a,15aとを接続する配線61,63とが、正面板40a側から見て互いに交差しないように配線されている」(段落【0049】)限りにおいて、図5に示されるように「正面板40a側から見て左右方向に延びる軸に」「2台のファンモータ15a,15aを上下方向に投影した2本の線分と、2台のインバータ圧縮機10a,10aを上下方向に投影した2本の線分との合計4本の線分のうちいくつかの線分の一部と一部とが互いに重なるようになっていてもよいとの意味に解するのが合理的であって、ファンモータ15aは、正面視において、インバータ圧縮機10aと一部が重なるように配置されていることを意味するものではなく、示唆するものでもない。
したがって、申立人の上記主張は、当を得ない。
よって、上記相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1発明において、ファンモータ15aを、正面視において、インバータ圧縮機10aと一部が重なるように配置されるように構成することが、単なる設計的事項であるとか、当業者が適宜なし得る事項であるとする根拠や証拠はない。
甲2は、申立理由において、本件発明4で新たに特定する事項に対して引用されたものであって、その記載事項は、上記第4(2)のとおりであり、他の記載箇所を見ても、モータを、正面視において、圧縮機と一部が重なるように配置することについては、記載も示唆もない。
甲3は、申立理由において、本件発明6で新たに特定する事項に対して引用されたものであって、その記載事項は、上記第4(3)のとおりであり、他の記載箇所を見ても、モータを、正面視において、圧縮機と一部が重なるように配置することについては、記載も示唆もない。
よって、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、本件発明1は、甲1発明、甲2の記載事項及び甲3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7は、本件発明1の発明特定事項を全て含んでいる。したがって、本件発明2ないし7は、(1)で述べたものと同様の理由により、甲1発明、甲2の記載事項及び甲3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701283