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特許異議申立

2016-700106

経編地及びその製造方法

審判番号
2016-700106
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2010-294542
登録番号
特許第5762736号(P5762736)
請求日
2016年02月10日
審決日
2017年02月14日
公報発行日
2017年05月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】セーレン株式会社
  • 【権利者代理人】蔦田 正人
  • 【権利者代理人】中村 哲士
  • 【権利者代理人】富田 克幸
  • 【権利者代理人】有近 康臣
  • 【権利者代理人】前澤 龍
  • 【権利者代理人】水鳥 正裕
  • 【権利者代理人】蔦田 璋子
  • 【異議申立人】森 茂喜
審判長/審判官
  • 審判長 千葉 成就
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 渡邊 豊英
分類
P1651.113-YAA(D04B) / P1651.121-YAA(D04B) / P1651.536-YAA(D04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5762736号発明「経編地及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5762736号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-11〕について訂正することを認める。 特許第5762736号の請求項1、3~6、8、11に係る特許を維持する。 特許第5762736号の請求項2、7、9、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5762736号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成22年12月29日に特許出願され、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人森茂喜(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年3月30日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年6月6日(受付日)に意見書の提出及び訂正の請求がされ、申立人から平成28年7月26日(受付日)に意見書が提出され、平成28年9月28日付けで取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成28年11月14日(受付日)に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、申立人から平成28年12月26日(受付日)に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)~(24)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「少なくとも2枚の筬を備える経編機により編成されてなり、フロント筬から給糸される地糸によりデンビー編組織またはコード編組織が形成され、フロント筬より後方の筬から給糸される挿入糸により挿入組織が形成される経編地であって、経編地のシンカーループ側表面に挿入糸が経方向に断続的に露出せしめられてなることを特徴とする経編地。」とあるのを、 「少なくとも2枚の筬を備える経編機により編成されてなり、フロント筬から給糸された地糸がデンビー編組織またはコード編組織を形成し、フロント筬より後方の筬から給糸された挿入糸が挿入組織を形成した経編地であって、挿入糸が、地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップすることにより、経編地のシンカーループ側表面に複数コースにわたって露出した部分と、挿入糸が、アンダーラップせずに複数コースにわたって経方向に挿入された部分とが、経方向に交互に繰り返され、経編地のシンカーループ側表面において、挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえたことによる凹凸が形成され、地糸のシンカーループの頂点が挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くなっていることを特徴とする経編地。」に訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0012】に 「上記の課題を解決する本発明の経編地は、少なくとも2枚の筬を備える経編機により編成されてなり、フロント筬から給糸される地糸によりデンビー編組織またはコード編組織が形成され、フロント筬より後方の筬から給糸される挿入糸により挿入組織が形成される経編地であって、経編地のシンカーループ側表面に挿入糸が経方向に断続的に露出せしめられてなることを特徴とする。特には、前記挿入糸が、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップして編成されることにより、経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出せしめられてなるものである。」とあるのを、 「上記の課題を解決する本発明の経編地は、少なくとも2枚の筬を備える経編機により編成されてなり、フロント筬から給糸された地糸がデンビー編組織またはコード編組織を形成し、フロント筬より後方の筬から給糸された挿入糸が挿入組織を形成した経編地であって、挿入糸が、地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップすることにより、経編地のシンカーループ側表面に複数コースにわたって露出した部分と、挿入糸が、アンダーラップせずに複数コースにわたって経方向に挿入された部分とが、経方向に交互に繰り返され、経編地のシンカーループ側表面において、挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえたことによる凹凸が形成され、地糸のシンカーループの頂点が挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くなっていることを特徴とする。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の経編地」とあるのを、「請求項1に記載の経編地」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項に記載の経編地」とあるのを、「請求項1又は3に記載の経編地」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の経編地」とあるのを、「請求項1、3又は4のいずれか1項に記載の経編地」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許明細書の段落【0026】の【図9】の説明に「本発明の経編地のさらに他の実施例」とあるのを「参考例の経編地」に訂正し、【図11】の説明に「本発明の経編地のさらに他の実施例」とあるのを「他の参考例の経編地」に訂正し、【図13】の説明に「本発明の経編地のさらに他の実施例」とあるのを「さらに他の参考例の経編地」に訂正し、【図14】の説明に「本発明の経編地のさらに他の実施例」とあるのを「さらに他の参考例の経編地」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許明細書の段落【0079】に「[実施例4]」とあるのを、「[参考例1]」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許明細書の段落【0083】に「[実施例5]」とあるのを、「[実施例4]」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許明細書の段落【0087】に「[実施例6]」とあるのを、「[参考例2]」に訂正する。 (11)訂正事項11 特許明細書の段落【0091】に「[実施例7]」とあるのを、「[実施例5]」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許明細書の段落【0095】に「[実施例8]」とあるのを、「[参考例3]」に訂正する。 (13)訂正事項13 特許明細書の段落【0099】に「[実施例9]」とあるのを、「[参考例4]」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許明細書の段落【0105】の【表1】に「実施例4」「実施例5」「実施例6」「実施例7」「実施例8」「実施例9」とあるのを、「参考例1」「実施例4」「参考例2」「実施例5」「参考例3」「参考例4」に訂正する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項6に 「少なくとも2枚の筬を備える経編機により、フロント筬により地糸を給糸してデンビー編組織またはコード編組織を編成し、フロント筬より後方の筬により挿入糸を給糸して挿入組織を編成し、この挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて編成することにより、挿入糸を経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出させることを特徴とする経編地の製造方法。」とあるのを、 「少なくとも2枚の筬を備える経編機により、フロント筬により地糸を給糸してデンビー編組織またはコード編組織を編成し、フロント筬より後方の筬により挿入糸を給糸して挿入組織を編成し、この挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて編成することにより、挿入糸を経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出させ、挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて挿入する部分を複数コースと、アンダーラップさせずに経方向に挿入する部分を複数コースとを、経方向に交互に繰り返して編成し、挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえることにより経編地のシンカーループ側表面に凹凸を形成し、地糸のシンカーループの頂点を挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くすることを特徴とする経編地の製造方法。」に訂正する。 (16)訂正事項16 特許明細書の段落【0016】に 「また、本発明は、前記の経編地の製造方法として、少なくとも2枚の筬を備える経編機により、フロント筬により地糸を給糸してデンビー編組織またはコード編組織を編成し、フロント筬より後方の筬により挿入糸を給糸して挿入組織を編成し、この挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて編成することにより、挿入糸を経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出させることを特徴とする。」とあるのを、 「また、本発明は、前記の経編地の製造方法として、少なくとも2枚の筬を備える経編機により、フロント筬により地糸を給糸してデンビー編組織またはコード編組織を編成し、フロント筬より後方の筬により挿入糸を給糸して挿入組織を編成し、この挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて編成することにより、挿入糸を経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出させ、挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて挿入する部分を複数コースと、アンダーラップさせずに経方向に挿入する部分を複数コースとを、経方向に交互に繰り返して編成し、挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえることにより経編地のシンカーループ側表面に凹凸を形成し、地糸のシンカーループの頂点を挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くすることを特徴とする。」に訂正する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (18)訂正事項18 特許明細書の段落【0017】を削除する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項8に「請求項7に記載の経編地の製造方法」とあるのを、「請求項6に記載の経編地の製造方法」に訂正する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (21)訂正事項21 特許明細書の段落【0019】を削除する。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (23)訂正事項23 特許明細書の段落【0020】を削除する。 (24)訂正事項24 特許請求の範囲の請求項11に「請求項6~10のいずれか1項に記載の経編地の製造方法」とあるのを、「請求項6又は8に記載の経編地の製造方法」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1)訂正事項1について 訂正事項1の訂正は、訂正前の請求項1の「経編地のシンカーループ側表面に挿入糸が経方向に断続的に露出せしめられてなる」を、挿入糸がどのようにして経編地のシンカーループ側表面に露出しているかについて、挿入糸が露出するコース数及び挿入糸がアンダーラップせずに挿入されるコース数について、挿入糸の露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえたことによる凹凸の有無について、及び地糸のシンカーループの頂点と挿入糸との高低差について、それぞれ特定するものであり、また、訂正前の請求項1の「少なくとも2枚の筬を備える経編機により編成されてなり、フロント筬から給糸される地糸によりデンビー編組織またはコード編組織が形成され、フロント筬より後方の筬から給糸される挿入糸により挿入組織が形成される経編地であって」を、経編地としての状態を示して構造又は特性を特定するものであるから、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 訂正前の請求項2、特許明細書の段落【0032】、【0034】~【0038】、【0040】、【0046】、【0047】の記載からみて、訂正事項1の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2の訂正は、訂正事項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3の訂正は、請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、訂正事項3の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4~6について 訂正事項4~6の各訂正は、訂正事項3で請求項2を削除することに伴い、請求項3~5が引用する請求項の引用関係を整理するものであり、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項7~14について 訂正事項7~14の各訂正は、訂正事項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、一部の実施例について参考例と記載するように訂正し、他の実施例について実施例番号を整理したものであり、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項15について 訂正事項15の訂正は、訂正前の請求項6の「挿入糸を経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出させる」を、挿入糸をフロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて挿入するコース数及び挿入糸をアンダーラップさせずに経方向に挿入するコース数について、経編地のシンカーループ側表面に挿入糸の露出部分と地糸のシンカーループのふくらみとによる凹凸を形成するか否かについて、凹凸を形成するとしてどのような方法で形成するかについて、地糸のシンカーループの頂点と挿入糸との高低差について、それぞれ特定するものであり、訂正事項15の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1の訂正と同様に、訂正事項15の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (7)訂正事項16について 訂正事項16の訂正は、訂正事項15の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項17、20、22について 訂正事項17、20、22の各訂正は、請求項7、9、10を削除するものであり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、訂正事項17、20、22の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項18、21、23について 訂正事項18、21、23の各訂正は、訂正事項17、20、22の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (10)訂正事項19、24について 訂正事項19、24の各訂正は、訂正事項17、20、22で請求項7、9、10を削除することに伴い、請求項8、11が、それぞれ引用する請求項の引用関係を整理するものであり、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (11)一群の請求項について 訂正前の請求項2~5は請求項1を引用するものであり、訂正事項1~14に係る各訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 また、訂正前の請求項7~11は請求項6を引用するものであり、訂正事項15~24に係る各訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 第3 特許異議の申立てについて 1.請求項1、3~6、8、11に係る発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、3~6、8、11に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、3~6、8、11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも2枚の筬を備える経編機により編成されてなり、フロント筬から給糸された地糸がデンビー編組織またはコード編組織を形成し、フロント筬より後方の筬から給糸された挿入糸が挿入組織を形成した経編地であって、 挿入糸が、地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップすることにより、経編地のシンカーループ側表面に複数コースにわたって露出した部分と、挿入糸が、アンダーラップせずに複数コースにわたって経方向に挿入された部分とが、経方向に交互に繰り返され、 経編地のシンカーループ側表面において、挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえたことによる凹凸が形成され、地糸のシンカーループの頂点が挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くなっていることを特徴とする経編地。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 挿入糸の経方向の露出部分が、編幅方向の所要間隔毎に1もしくは複数列で経方向に並列して、かつ1もしくは複数列毎に交互に位置をずらせて形成されてなる請求項1に記載の経編地。 【請求項4】 挿入糸が地糸とは色違いの糸であり、その露出部分がシンカーループ側表面において柄模様として表現されてなる請求項1又は3に記載の経編地。 【請求項5】 前記挿入糸を給糸する筬より後方の筬により給糸される別の地糸により鎖編組織、デンビー編組織又はコード編組織の少なくとも1種の編組織が形成され、挿入糸のシンカーループ側表面に露出していない部分が、フロント筬により給糸される地糸により形成される編組織と後方の筬により給糸される別の地糸により形成される編組織とに挟まれている請求項1、3又は4のいずれか1項に記載の経編地。 【請求項6】 少なくとも2枚の筬を備える経編機により、フロント筬により地糸を給糸してデンビー編組織またはコード編組織を編成し、フロント筬より後方の筬により挿入糸を給糸して挿入組織を編成し、この挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて編成することにより、挿入糸を経編地のシンカーループ側表面に経方向に断続的に露出させ、 挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて挿入する部分を複数コースと、アンダーラップさせずに経方向に挿入する部分を複数コースとを、経方向に交互に繰り返して編成し、 挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえることにより経編地のシンカーループ側表面に凹凸を形成し、地糸のシンカーループの頂点を挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くすることを特徴とする経編地の製造方法。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 挿入糸を、アンダーラップさせて挿入する部分の前後のコースで編目形成して編成係止して、アンダーラップさせずに経方向に挿入する部分に連続させる請求項6に記載の経編地の製造方法。 【請求項9】(削除) 【請求項10】(削除) 【請求項11】 前記挿入糸を給糸する筬より後方の筬により別の地糸を給糸して、鎖編組織、デンビー編組織又はコード編組織の少なくとも1種の編組織を形成するように編成し、挿入糸のシンカーループ側表面に露出していない部分を、フロント筬により給糸される地糸により形成される編組織と後方の筬により給糸される別の地糸により形成される編組織とで挟んで保持するように編成する請求項6又は8に記載の経編地の製造方法。 2.取消理由の概要 特許権者に通知した平成28年3月30日付け及び平成28年9月28日付けの取消理由の概要は以下のとおりである。なお、特許異議申立書に記載された取消理由は、全て通知された。 [新規性、進歩性] 本件特許の請求項1~8,10,11に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本件特許の請求項1~11に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:独国実用新案第29622399号明細書 甲第2号証:Kettenwirk Praxis 4/88、(独)、Karl Mayer Textilmaschinen fabrik GmbH、1988年、p.89 甲第3号証:特開昭63-315651号公報 甲第4号証:Kettenwirk Praxis 3/87、(独)、Karl Mayer Textilmaschinen fabrik GmbH、1987年、p.74 甲第5号証:日本マイヤー株式会社、経編全集、株式会社繊維技術ジャーナル、昭和57年10月1日、p.55-56 甲第6号証:特開平9-13253号公報 甲第7号証:特許第4902421号公報 本件特許の請求項1ないし8、10、11に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証または甲第5号証に記載された発明である。 本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明、および甲第6、7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 [記載不備] 本件特許の請求項10には、「この2枚の筬のそれぞれにより挿入糸を編幅方向で交互に給糸して挿入組織を編成し」と記載されているが、本件特許の明細書には、「編幅方向で交互に給糸」する構成について具体的説明は記載されておらず、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 3.判断 (1)新規性、進歩性の取消理由について ア 本件訂正発明1は、経編地において、「挿入糸が、地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップすることにより、経編地のシンカーループ側表面に複数コースにわたって露出した部分と、挿入糸が、アンダーラップせずに複数コースにわたって経方向に挿入された部分とが、経方向に交互に繰り返され」ているのに対し、このような事項は、甲第1号証ないし甲第7号証のいずれにも記載されていない。 本件訂正発明1の経編地は、これにより、「経編地のシンカーループ側表面において、挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえたことによる凹凸が形成され、地糸のシンカーループの頂点が挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くなって」おり、特許明細書(段落【0023】)に記載された「シンカーループ側表面に断続的に露出する挿入糸の露出部分が地糸のシンカーループのふくらみを部分的に押さえることになり、経編地の表面に微凹凸が形成されることになる。」、「本発明の経編地を、例えば座席の表皮材としてシンカーループ側表面を表にして使用した場合において、着座時における人体との接触面積が小さくなって通気性が向上し、発汗時におけるべたつきや蒸れを解消できる。」との効果を奏するものである。 よって、本件訂正発明1は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証または甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明および甲第6、7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものでもない。 イ また、本件訂正発明6は、経編地の製造方法において、「挿入糸を、フロント筬による地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップさせて挿入する部分を複数コースと、アンダーラップさせずに経方向に挿入する部分を複数コースとを、経方向に交互に繰り返して編成」しているのに対し、このような事項は、甲第1号証ないし甲第7号証のいずれにも記載されていない。 そして、これにより、本件訂正発明6の経編地の製造方法は、「挿入糸の前記露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえることにより経編地のシンカーループ側表面に凹凸を形成し、地糸のシンカーループの頂点を挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高くすること」ができ、格別の効果を奏することは、前記アで述べたとおりである。 よって、本件訂正発明6は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証または甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明および甲第6、7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものでもない。 ウ 本件訂正発明3~5、8、11は、いずれも本件訂正発明1又は本件訂正発明6の全ての発明特定事項を有するものであり、本件訂正発明3~5、8、11は甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証または甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明および甲第6、7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものでもない。 エ 申立人は、甲第8号証(Kettenwirk Praxis 3/81、(独)、Karl Mayer Textilmaschinen fabrik GmbH、1981年、p.68)を新たに提出して、本件訂正請求により特定された事項について、甲第8号証には、「挿入糸が、地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップすることにより、経編地のシンカーループ側表面に複数コースにわたって露出した部分」が存在するようにしたことが記載されており、甲第2号証に記載された発明と組み合わせることにより、本件訂正発明1が容易に想到することができた旨主張(平成28年12月26日(受付日)提出の意見書)している。 しかし、この甲第8号証にも、本件訂正発明1の「挿入糸が、地糸のアンダーラップと同方向に同針数分アンダーラップすることにより、経編地のシンカーループ側表面に複数コースにわたって露出した部分」と「挿入糸が、アンダーラップせずに複数コースにわたって経方向に挿入された部分とが、経方向に交互に繰り返され」るようにして、「経編地のシンカーループ側表面において、挿入糸の露出部分で地糸のシンカーループのふくらみを押さえたことによる凹凸が形成され、地糸のシンカーループの頂点が挿入糸の前記露出部分より0.1mm以上高く」なるようにすることは記載されておらず、甲第2号証に記載された発明と組み合わせても、本件訂正発明1を想到することができたものとはいえない。 (2)記載不備の取消理由について 訂正前の請求項10は、本件訂正請求により削除され、記載不備に係る取消理由の対象となる請求項が存在しない。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件訂正請求により訂正された請求項1、3~6、8、11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1、3~6、8、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正請求により、請求項2、7、9、10に係る特許は削除されたため、請求項2、7、9、10に対して申立人がした特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700106

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