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特許拒絶査定不服審判

2016-018360

卵加工食品及びその調製方法

審判番号
2016-018360
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-123308外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年12月06日
審決日
2018年05月08日
公報発行日
2018年08月31日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-123308「卵加工食品及びその調製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-247870〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年5月30日の出願であって、平成28年8月29日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成28年12月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成29年6月13日に上申書が提出され、その後、当審より平成29年12月19日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成30年2月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める(以下「本願発明」という。)。 「発酵セルロースを0.01~0.6質量%の含有量で含有することを特徴とする、卵焼き若しくは薄焼き卵、又はオムレツ若しくはスクランブルエッグである、卵加工食品(但し、卵白、乳清及び増粘多糖類を含有し、卵白及び乳清の蛋白質が一部凝集して重合体を形成しており、比重0.3~0.7、粘度(20℃)10~90Pa・sである気泡入り加工食品と、卵黄とを含む焼成用材料を焼成する気泡入り焼成卵加工品並びに卵白、乳清及び増粘多糖類を含有し、比重0.3~0.7、粘度(20℃)10~90Pa・sである気泡入り加工食品であって、該気泡入り加工食品にトランスグルタミナーゼを添加した気泡入り加工食品を除く)。」 第3 平成29年12月19日付け拒絶理由の概要 平成29年12月19日付け拒絶理由には、以下の理由が含まれている。 (進歩性) 本願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用例1:特開2012-95610号公報 引用例2:特開平11-178520号公報 引用例3:食品と科学,2008年,第50巻、2号,p.77-82 第4 特許法第29条第2項について 1 引用例に記載された事項及び発明 (1)引用例1記載事項 引用例1には、以下の記載がある。 ア「【0001】 本発明は、ふわふわした食感で口溶けのよい気泡入り焼成卵加工品の製造方法、及びそれにより得られる気泡入り焼成卵加工品に関する。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上述の従来技術に対し、本発明は、ふわふわした食感を有し、口溶けがよく、かつ一般人でも簡便に製造することのできる気泡入り焼成卵加工品を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、卵白、乳清及び増粘多糖類を含有するスラリーがメレンゲ様に泡立ち、かつ卵白と乳清の蛋白質がそれぞれ一部凝集して重合体を形成している気泡入り加工食品は、卵白を泡立てたメレンゲのような優れた口溶け感を有すること、また、耐冷耐熱性を有し、レトルト処理を施してもその泡を維持して優れた口溶け感を有すること、そして、この気泡入り加工食品を気泡入り焼成卵加工品の焼成用材料に混合して焼成すると、ふわふわした食感で口溶けのよい気泡入り焼成卵加工品を極めて簡便に製造できることを見出した。」 ウ「【0031】 一方、本発明で使用する気泡入り加工食品において、増粘多糖類は、スラリーの泡立ちを向上させると共に、泡の押圧に対して潰れにくくするために配合されている。増粘多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、発酵セルロース、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギナン、タラガム、ジェランガム、タマリンドシードガム等を使用することができる。中でも、スラリーの撹拌時の剪断抵抗を減少させて泡立ちを向上させる点からシュードプラスチック性を有するキサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギナン、タラガム、ジェランガム等が好ましく、特にキサンタンガムが好ましい。 【0032】 気泡入り加工食品において、増粘多糖類の含有量は、0.3~2%とすることが好ましい。増粘多糖類が少なすぎると泡と液状部分とが分離する場合があり、多すぎると口溶けが悪く、ねとねとした粘稠性の食感が強くなる。」 エ「【実施例】 【0050】 以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。 実施例1~10及び比較例1~9 (1)気泡入り加工食品の製造 表1に示す組成で各原料を脱気機能付き撹拌ミキサーで撹拌混合し、真空度0.1MPaで脱気撹拌を行い、スラリーを得た。 このスラリーを撹拌ミキサーに投入し、空気を吹き込みながら撹拌し、泡立てた。次いで、チューブ式熱交換器に通し、表1に示す加熱条件で加熱した。こうして得られた気泡入り加工食品を熱可塑性のポリエチレン製容器に充填し、さらに-20℃に冷凍した。 【0051】 (2)卵液の調製 表1に示す原料を、撹拌ミキサーを用いて混合して卵液とした。 【0052】 (3)気泡入り焼成卵加工品の製造 ホイッパーに、(1)の凍結前の気泡入り加工食品100gと(2)で得た卵液100gとを量り取り、1分間撹拌して焼成用材料を調製した。これを90℃に保温された角型のホットプレートに流し込み、2分間焼成して気泡入り焼成卵加工品(厚焼き卵)を得た。 (4)評価 (1)で得た気泡入り加工食品、又は(3)で得た気泡入り焼成卵加工品を試料とし、それらの性状を次のように測定し、評価した。これらの結果を表1に示す。」 オ「【0061】 また、(3)で得た気泡入り焼成卵加工品を喫食して次の基準で口溶け感を評価した。 〔気泡入り焼成卵加工品の食感の評価基準〕 A:焼成しているにもかかわらず、ふわふわとした食感を有し、口溶けがよい。 B:若干ざらついた食感があるが、ふわふわした食感もあり、口溶けがよい。 C:ふわふわした食感が得られず、口溶けも劣っている」 カ「【0062】 【表1】 」 (2)引用例1記載の発明 引用文献1の比較例4、5には、「還元水飴10%、トレハロース5%、卵白(固形分換算)2%、乳清(固形分換算)5%、キサンタンガム(増粘多糖類)0.5%、アルギン酸Na(増粘多糖類)0.4%、乳酸Ca0.3%、クエン酸0.35%、清水を原料とする比重0.1又は0.2の気泡入り加工食品100gと卵液100gとからなる焼成用材料を焼成した厚焼き卵。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3)引用例2記載事項 引用例2には、以下の記載がある。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、乳原料及びゲル化剤を含有する食品及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、内容成分が均質で「荒れる」という現象が生じておらず、より好ましくはきめが細かく舌触りのよい食感を有する食品、好適にはプリン、ムース、ババロア、ゼリーまたは杏仁豆腐等のチルドデザートに関する。」 イ「【0013】また、更なる研究によって、本発明者らは、従来「荒れ」の問題がなかった乳原料及びゲル化剤を含む食品であっても、発酵セルロースを配合することによって、乳原料等の内容成分がより均質にかつ安定に分散されてより、一層きめ細かになり舌触りのよい食感を呈するようになることを確認した。これにより、乳原料及びゲル化剤を含む食品、特に食感の良さが求められる食品への広い応用が期待される。」 ウ「【0023】本発明が対象とする食品は、上に例示する乳原料を含む内容成分がゲル化剤の作用に基づいて固化してなるものであるが、好適には半固形状物、より好ましくは更にきめ細かでつるりとした滑らかな舌触り・食感が要求されるものである。具体的にはプリン、ムース、ババロア、ゼリー、杏仁豆腐などのいわゆるチルドデザートが例示される。好ましくはプリン、より好ましくはミルクプリンである。」 エ「【0056】 【表1】 」 (3)引用例3記載事項 引用例3には、以下の記載がある。 ア「はじめに 食品業界では近年、消費者ニーズの多様化、人口の減少による市場の飽和といった点から、今まで以上に特徴のある商品の開発が重要となり、飲料やデザート分野においても多種多様な商品が続々と開発されている。他の商品との差別化は、味だけでなくテクスチャーや見た目も欠かせない要素であり、商品設計における多糖類の使いこなしがポイントとなっている。本稿では、これらの分野への利用が可能な新規素材として、固形分の分散や組織の安定化に優れた発酵セルロース製剤と濃厚感やコク味を付与でき、脂肪代替素材としても有用な新規デキストリン製剤の概要を説明し、飲料・デザートへの応用例を紹介する。」(77頁1~2段) イ「発酵セルロース製剤のセルロース自身は・・・。また、従来の多糖類のように粘度やゲル化といった特性を利用しているわけでないので、高温でも固形物の分散効果を維持するという優れた特徴を持っている。」(78頁1段、「・・・」は省略を意味する。) ウ「二、発酵セルロース製剤の応用例 発酵セルロース製剤の良好な分散性や安定性は、食品への幅広い利用が期待でき、飲料・デザート分野においても有効である。」(78頁3~4段) 2 対比 本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「厚焼き卵」は、卵焼きであるから、本願発明の「卵焼き若しくは薄焼き卵、又はオムレツ若しくはスクランブルエッグである、卵加工食品」に相当する。 また、引用発明の厚焼き卵に用いる気泡入り加工食品の「比重」は、「0.1又は0.2」であるから、本願発明の「卵加工食品(但し、卵白、乳清及び増粘多糖類を含有し、卵白及び乳清の蛋白質が一部凝集して重合体を形成しており、比重0.3~0.7、粘度(20℃)10~90Pa・sである気泡入り加工食品と、卵黄とを含む焼成用材料を焼成する気泡入り焼成卵加工品並びに卵白、乳清及び増粘多糖類を含有し、比重0.3~0.7、粘度(20℃)10~90Pa・sである気泡入り加工食品であって、該気泡入り加工食品にトランスグルタミナーゼを添加した気泡入り加工食品を除く)」を満たすものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「卵焼き若しくは薄焼き卵、又はオムレツ若しくはスクランブルエッグである、卵加工食品(但し、卵白、乳清及び増粘多糖類を含有し、卵白及び乳清の蛋白質が一部凝集して重合体を形成しており、比重0.3~0.7、粘度(20℃)10~90Pa・sである気泡入り加工食品と、卵黄とを含む焼成用材料を焼成する気泡入り焼成卵加工品並びに卵白、乳清及び増粘多糖類を含有し、比重0.3~0.7、粘度(20℃)10~90Pa・sである気泡入り加工食品であって、該気泡入り加工食品にトランスグルタミナーゼを添加した気泡入り加工食品を除く)。」 <相違点> 本願発明では、「発酵セルロースを0.01~0.6質量%の含有量で含有する」のに対して、引用発明では、気泡入り加工食品100gにキサンタンガム(増粘多糖類)0.5%、アルギン酸Na(増粘多糖類)0.4%含有する点。 3 判断 以下、上記相違点について検討する。 <相違点について> 引用例1の【0031】には、増粘多糖類が、泡立ちを向上させるとともに、泡の押圧に対して潰れにくくするために配合されることが記載され、具体例として、アルギン酸ナトリウム、発酵セルロース、キサンタンガムと列挙されており、同じく【0007】には、増粘多糖類を含有することで、ふわふわした食感で口溶けのよい気泡入り焼成卵加工品を極めて簡便に製造できることが記載されている。 そうすると、引用発明において用いる増粘多糖類として、上述の【0031】及び【0007】の示唆を参照して、キサンタンガム又はアルギン酸Naに換えて、発酵セルロースを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、引用例2には、半固形状物、より好ましくは更にきめ細かでつるりとした滑らかな舌触り・食感が要求される食品を念頭において(段落【0023】参照)、“発酵セルロース”を含有させると、乳原料等の内容成分がより均質にかつ安定に分散されて、より一層きめ細やかになることが記載されており(段落【0013】参照)、また、“発酵セルロース”を含有させることによって口溶けの悪さが回避できることも示されている(段落【0056】【表1】参照)。 さらに、引用例3は、発酵セルロースについて説明するものであって、発酵セルロースが各種食品用増粘安定剤として好適であり、高温でも固形分の分散効果が良好で組織の安定化に優れていることが記載されている(上記1(3)ア、イ参照。)。 そうすると、引用発明においても、「ふわふわした食感を有し、口溶けがよい」「気泡入り焼成卵加工品」(【0006】)とするものであり、成分が均質で安定していることは当然の課題であって、発酵セルロースが当該課題に貢献するものであることは引用例2、3に示唆されているから、引用発明において、増粘多糖類として用いられているキサンタンガム又はアルギン酸Naに換えて、増粘多糖類として引用例1の【0031】に挙げられている発酵セルロースを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、引用発明の「ふわふわした食感で口溶けのよい」(【表1】「(評価)食感(ふわふわ))厚焼き卵に用いられるキサンタンガム(増粘多糖類)又はアルギン酸Na(増粘多糖類)の量(厚焼き卵中に合わせて0.45%)を踏まえれば、発酵セルロースを用いる際の量を上記相違点に係る本願発明の程度とすることは、当業者が通常の創作能力をもって採用し得た程度のものにすぎない。 ここで、請求人は、引用例2、3は、チルドデザートに係るものであるから、引用発明の厚焼き卵とは異なり、引用発明において、キサンタンガムに換えて発酵セルロースを用いることは、当業者が容易に想到し得たことでない旨主張する(平成30年2月19日付け意見書「[3]拒絶理由3.(進歩性)について」の項参照。)。 しかし、上記のとおり、引用例2、3には、増粘多糖類である発酵セルロースが原料成分の分散性及び安定性に優れることが記載されており、引用発明の厚焼き卵において発酵セルロースを用いた際に、原料成分の分散性及び安定性に優れ、焼成した厚焼き卵においても分散性及び安定性の向上が期待できることは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。 <本願発明が奏する効果について> 本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用例2、3記載の事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 3 むすび よって、本願発明は、引用発明に基いて、又は引用発明及び引用例2、3記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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