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特許拒絶査定不服審判

2016-017087

超音波振動装置

審判番号
2016-017087
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-220779外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年10月27日
審決日
2017年06月26日
公報発行日
2017年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B06B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-220779「超音波振動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日出願公開、特開2015- 98023〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年10月12日(優先権主張平成25年10月17日)の出願であって、平成28年7月28日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し同年10月27日付けで本件審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年10月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年10月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 管材の壁面を振動させる超音波振動装置であって、 少なくとも1つの周波数の超音波を発生する振動子と、 少なくとも1つの前記振動子が取り付けられ、該振動子の振動を前記管材に伝達するように前記管材の外周面に着脱可能に装着される装着手段と、 前記振動子を駆動する駆動信号を発生するための駆動手段とを備え、 前記駆動手段は、所定の周波数範囲において、接続された前記振動子、前記装着手段及び前記管材を含む振動系のインピーダンスに応じて、該振動系の共振周波数又はその近くの周波数の駆動信号を発生し前記振動子を駆動するように構成され、 前記装着手段は、前記管材の外壁の一部に対応する円弧状凹部を有する二つの取り付け金具を備え、前記円弧状凹部の両側にそれぞれスリットが設けられ、前記二つの取り付け金具のすくなくとも一方に振動子が設けられ、前記円弧状凹部と前記振動子の装着面間の最小厚さは、1~6mmであり、 前記装着手段に取り付けられた振動子を覆うためのカバーを取り付ける取付手段を有し、前記取付手段は、カバーを螺合する雄ネジ部を設けて構成されていることを特徴とする超音波振動装置。」 と補正された。 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「円弧状凹部を有する二つの取り付け金具」及び「装着手段」について、それぞれ「前記円弧状凹部の両側にそれぞれスリットが設けられ」と限定する補正、及び「前記装着手段に取り付けられた振動子を覆うためのカバーを取り付ける取付手段を有し、前記取付手段は、カバーを螺合する雄ネジ部を設けて構成されている」と限定する補正を含むものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 (1)刊行物1 ア.原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-199253号公報(以下「刊行物1」という。)には、「超音波液体処理装置」に関し、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与。)。 (ア)「【0002】 従来、反応容器の外部から超音波を反応溶液に照射することができる超音波反応装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 この場合、この超音波反応装置は、反応容器の外壁に複数の超音波振動子を配置され、上述の複数の振動子は、例えば反応容器の底面外部、または反応容器の側面外部に配置される。これらの振動子の放射面から超音波を放射し、反応容器内の反応溶液に照射する。 ・・・ 【0003】 上述したように、反応容器の外壁、例えば反応容器の底面外部、または反応容器の側面外部に振動子を配置する場合、振動子により発生した超音波を反応容器の底面、または反応容器の側面を介して反応容器内部の液体に照射するため、超音波エネルギーの利用効率が低い、特に大型の反応容器の場合、反応容器の底面または側面がある程度の厚さが必要とされ、これにより反応容器内部への超音波エネルギーの利用率が低下する問題があった。そのため、連続処理できる管状超音波反応容器が期待されている。また、特許文献1の場合は、振動子の交換が不便である。 【0004】 そこで、この発明は、管状処理容器の内部または外部でより均一な超音波音場を形成することでき、液体処理の効率を向上することができるようにした超音波液体処理装置を提供することを目的とする。」 (イ)「【0008】 以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態の超音波液体処理装置について説明する。 図1は、本発明の実施の形態の超音波液体処理装置100の構成を示す図である。図1に示すように、超音波液体処理装置100は、管状処理容器11と、超音波振動子12と、クランプ13と、超音波発振器14とを備えている。 【0009】 管状処理容器11は、例えば薄壁円筒状容器である。被処理液15はこの管状処理容器11の中に装填され、またはこの管状処理容器11を通過するようになされる。 超音波振動子12は、クランプ13に脱着可能に取り付けられる。また、この超音波振動子12は超音波発振器14に接続される。超音波発振器14からの電気信号は超音波振動子12を駆動し、機械振動に変換され、クランプ13介して管状処理容器を超音波放射体として内、外表面から超音波を放射させ、液体に超音波を照射する。 【0010】 クランプ13は、管状処理容器の外壁を嵌め込む凹部を有する二つの金属板13a、13bを備え、金属板13a、13bは、管状処理容器11の外壁に凹部を対向して配置されるようになされる。図2は、クランプ13の構成を示す図である。図2に示すように、金属板13a、13bは、中部に管状処理容器11の外壁を嵌め込む凹部A1、A2の外側にそれぞれ二つの小さい凹部B1、B2が設けられる。また、金属板13a、13bは、ネジにより管状処理容器11の外壁に取り付けられる。」 (ウ)「【0012】 このように本実施の形態においては、超音波液体処理装置100において、管状処理容器11と、超音波を発生する振動子12と、該振動子12が取り付けられ、管状処理容器11の外面を挟み込む可能なクランプ13とを備え、このクランプ13は、振動子12が発生する振動を管状処理容器11に伝達し、管状処理容器11を超音波放射体として内、外表面から超音波を放射させるようになされる。 【0013】 これにより、超音波液体処理装置100において、管状処理容器11の中でより均一な超音波音場を形成でき、化学反応の促進、乳化、廃水処理等の液体処理の効率を向上することができる。 また、クランプ13は、管状処理容器11の外壁を嵌め込む凹部を有する二つの金属板を備え、二つの金属板13a、13bは、管状処理容器11の外壁に凹部を対向して配置されるようになされる。これにより、振動子12の交換を容易にでき、超音波液体処理装置100のメンテナンスが容易になる。 また、管状処理容器11の長さ方向に所定間隔で複数のクランプ13が配置されることにより、管内の流動液体の超音波照射時間を長くすることができる。 【産業上の利用可能性】 【0014】 以上のように、この発明に係る液体処理装置は、化学反応の促進、物質の分散、乳化、抽出、廃水処理等処理過程を強化する目的に適用でき、特に、工業化大量処理する場合に利用できる。」 (エ)図1及び(イ)の「超音波振動子12は、クランプ13に脱着可能に取り付けられる。」との記載などから、金属板13aに超音波振動子12が脱着可能に取り付けられることが理解できる。 また、図1、図2並びに(イ)の「クランプ13は、管状処理容器の外壁を嵌め込む凹部を有する二つの金属板13a、13bを備え、金属板13a、13bは、管状処理容器11の外壁に凹部を対向して配置されるようになされる。」及び「また、金属板13a、13bは、ネジにより管状処理容器11の外壁に取り付けられる。」との記載などから、クランプ13は管状処理容器11の外壁に着脱可能に装着されることが理解できる。 また、図1、図2には、二つの小さい凹部B1、B2が「小さい円弧状凹部」であることが示されている。 イ.引用発明 そうすると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているといえる。 「超音波液体処理装置100であって、 管状処理容器11と、 超音波を発生する超音波振動子12と、 前記超音波振動子12が取り付けられ、該超音波振動子12が発生する振動を管状処理容器11に伝達するように前記管状処理容器11の外面を挟み込み管状処理容器11の外壁に着脱可能に装着されるクランプ13と、 超音波発振器14とを備え、 前記超音波発振器14からの電気信号は超音波振動子12を駆動し、 前記クランプ13は、前記管状処理容器11の外壁を嵌め込む凹部A1、A2を有する二つの金属板13a、13bを備え、前記凹部A1、A2の外側にそれぞれ二つの小さい円弧状凹部B1、B2が設けられ、金属板13aに超音波振動子12が脱着可能に取り付けられており、 さらに、前記クランプ13は、振動子12が発生する振動を管状処理容器11に伝達し、管状処理容器11を超音波放射体として内、外表面から超音波を放射させるようになされている 超音波液体処理装置100」 (2)刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-164300号公報(以下「刊行物2」という。)には、「配管系」に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 (ア)「【0013】 【課題を解決するための手段】プラントの機器を結び、液体が流れる配管に、固定、又は移動可能な加振装置を1個又は複数個とりつけ、配管の固有振動数で振動モードの腹の部分を加振する。この時、堆積した粒子は振動の節に集まる。これを、あらかじめ、節に設けておいたドレン抜きを開放することにより、取り出す。 【0014】同様の装置で、多くの周波数成分を持つ波で加振する。その際、振動モードの節を加振しないよう注意する。この時、多くの振動モードが重なって生じるため、粒子は浮上したままの状態を続ける。これを配管内を流れる液体で流し去る。 【0015】固定又は移動可能な加振装置の他に振動を検出するセンサを取付け、周波数を変えて加振するか、又は多くの周波数成分を持つ波(広帯域ランダム波)で加振し、周波数分析により固有振動数を求める。これを、以前に求めた固有振動数と比較して、変化があれば、堆積物が生成されていることになる。 【0016】定期的・自動的に上記のものを実施することにより、過大な堆積物を防止する。このため、タイマ,自動記録・分析装置及び加振制御装置を用いる。必要に応じ警報装置も備える。」 (イ)「【0017】 【実施例】振動する物体上の粒子は、固有振動数で加振された場合、振動モードの節に集まり、静止する。一方、多くの周波数成分(広帯域)を持つランダム波で加振すると、多くの振動モードが励起されるため、明確な節は生ぜず、粒子は上下に運動する。この二つの現象を利用する。 【0018】図1は、配管系の一例であり、配管1に加振装置2がとりつけられ、ある固有振動数で加振された状態を示している。加振装置は移動可能であり、動力はケーブルあるいは無線により供給される。堆積物4は振動モードの節に集まり、ドレン抜き3により、取り出される。 【0019】図2は、配管1にとりつけた加振装置により、広帯域のランダム波で加振した場合を示す。振動のパターン6には明確な節はなく、堆積物4は、振動により上,下に運動する。さらに、配管内の流れが存在することにより、堆積していた粒子は液体とともに適当な処理槽へと運ばれる。」 (ウ)「【0020】図3の5は、振動を検出するセンサで、ケーブルあるいは無線で信号をとり込む。加振装置の加振周波数を変えた加振(スイープ)、あるいは広帯域の周波数成分を持つランダム波を用いた加振より生じた配管の応答を検出する。加振力と応答から、振動分析装置8が備えている標準的な手法により、伝達関数が求められる。この伝達関数から固有振動数が得られる。一方、固有振動数は次の式から計算できる。堆積物が無い時の質量をM、堆積物の質量をΔMとすると、次式の関係が成り立つ。 【0021】 【数1】・・(略)・・ 【0022】もし、固着性の強い堆積物が増加した場合、数1から配管系の固有振動数が低下する。定期的に、上記の方法で固有振動数を調べることにより、固着性の堆積物の増加の有無を検知できる。」 (エ)「【0023】定期的・自動的に図1,図2の方法を実施する。このため、図4の制御装置8を備え、タイマにより自動的に加振するとともに、振動センサからの信号及び加振装置からの加振力の信号などのデータ集録・分析装置8の分析結果を取り込む。一定の振動レベルを満たさない場合は、加振力の増加,加振周波数の変化,加振位置,加振方向を加振装置に指令し、配管が所定の振動応答レベルに達するように制御する。」 3.本願補正発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 ア.引用発明の「管状処理容器11」は、本願補正発明の「管材」に相当する。 また、引用発明の「超音波液体処理装置100」の「超音波振動子12」「クランプ13」「超音波発振器14」の部分(「管状処理容器11」以外の部分)は、「振動子12が発生する振動を管状処理容器11に伝達」させるための機器群であるので、本願補正発明の「管材の壁面を振動させる超音波振動装置」に相当する。 イ.引用発明の「超音波を発生する超音波振動子12」は、本願補正発明の「少なくとも1つの周波数の超音波を発生する振動子」に相当する。 ウ.引用発明の「前記超音波振動子12が取り付けられ、該超音波振動子12が発生する振動を管状処理容器11に伝達するように前記管状処理容器11の外面を挟み込み管状処理容器11の外壁に着脱可能に装着されるクランプ13」は、本願補正発明の「少なくとも1つの前記振動子が取り付けられ、該振動子の振動を前記管材に伝達するように前記管材の外周面に着脱可能に装着される装着手段」に相当する。 エ.引用発明の「超音波発振器14」は、「超音波発振器14からの電気信号は超音波振動子12を駆動」するものであるので、本願補正発明の「振動子を駆動する駆動信号を発生するための駆動手段」に相当する。 オ.引用発明の「管状処理容器11の外壁を嵌め込む凹部A1、A2を有する二つの金属板13a、13b」は、本願補正発明の「管材の外壁の一部に対応する円弧状凹部を有する二つの取り付け金具」に相当する。 カ.引用発明の「凹部A1、A2の外側にそれぞれ二つの小さい円弧状凹部B1、B2が設けられ」ること、本願補正発明の「円弧状凹部の両側にそれぞれスリットが設けられ」ることとは、「円弧状凹部の両側にそれぞれ小さい凹部が設けられ」る点で共通する。 キ.引用発明の「金属板13aに超音波振動子12が脱着可能に取り付けられ」ていることは、本願補正発明の「二つの取り付け金具のすくなくとも一方に振動子が設けられ」ることに相当する。 (2)両発明の一致点 「管材の壁面を振動させる超音波振動装置であって、 少なくとも1つの周波数の超音波を発生する振動子と、 少なくとも1つの前記振動子が取り付けられ、該振動子の振動を前記管材に伝達するように前記管材の外周面に着脱可能に装着される装着手段と、 前記振動子を駆動する駆動信号を発生するための駆動手段とを備え、 前記装着手段は、前記管材の外壁の一部に対応する円弧状凹部を有する二つの取り付け金具を備え、前記円弧状凹部の両側にそれぞれ小さい凹部が設けられ、前記二つの取り付け金具のすくなくとも一方に振動子が設けられている、超音波振動装置。」 (3)両発明の相違点 相違点1:駆動手段が、本願補正発明は「所定の周波数範囲において、接続された前記振動子、前記装着手段及び前記管材を含む振動系のインピーダンスに応じて、該振動系の共振周波数又はその近くの周波数の駆動信号を発生し前記振動子を駆動するように構成され」たものであるのに対して、引用発明は超音波発振器14が発生する電気信号(駆動信号)の周波数を特定していない点。 相違点2:円弧状凹部の両側にそれぞれ設けられる小さい凹部が、本願補正発明は「スリット」であるのに対して、引用発明は「小さい円弧状凹部」である点。 相違点3:本願補正発明は「円弧状凹部と前記振動子の装着面間の最小厚さは、1~6mmであ」るのに対して、引用発明は最小厚さを「1~6mm」と特定していない点。 相違点4:本願補正発明は「装着手段に取り付けられた振動子を覆うためのカバーを取り付ける取付手段を有し、前記取付手段は、カバーを螺合する雄ネジ部を設けて構成されている」のに対して、引用発明はカバーを備えていない点。 4.容易想到性の検討 (1)相違点1について ア.エネルギーを効率よく利用することは、機械技術分野において一般的かつ周知の課題である。 そして、振動系を効率よく超音波振動させるために、振動系を固有共振周波数又はその近傍の周波数で駆動すること及び、振動系のインピーダンスに応じて振動系の固有共振周波数を求めることは、例えば、特開平8-243494号公報(拒絶査定の周知技術を示す文献)に「【0002】【従来の技術】超音波発振装置により効率よく超音波を発生させるには、アクチュエータ振動系の固有共振周波数fMと超音波発振装置の発振周波数fCとを一致させる必要がある。fMとfCとを一致させるには、次の二通りがある。従来技術○1(審決注:○中に1)・・fMにfCが自動的に一致するように,fMを検出しつつfCを変化させる周波数自動追尾機能を、超音波発振装置に持たせる。」「【0024】・・アクチュエータ振動系12のインピーダンスZのデータが得られる。このデータをマイクロコンピュータ161のメモリから読み出し、共振点を求めることにより固有共振周波数fMが得られる。」と記載されているように、本願優先日前における周知技術である。 さらに、刊行物2の【0017】~【0019】(上記2(2)(イ)参照)などに、配管系に加振装置を取付け、配管系の固有振動数(すなわち、共振周波数)で加振することが記載されていることなどからみても、配管系おいても共振周波数で加振することに、特段の阻害要因は認められない。 そうすると、引用発明において、超音波エネルギーを効率よく利用するために、上記周知技術を用いて、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ.請求人は、審判請求書7頁23行~8頁2行において、「引用文献2の『固定可能な加振装置』は、取り付け金具がなく、一般的にネジ止めで固定、又は接着で固定することである(相違点4)。そのため、引用文献2には、取り付け金具からなる装着手段を含む振動系に応じて、該振動系の共振周波数の駆動信号を発生し振動子を駆動するように構成されている振動装置が記載されているとは言えない。また、引用文献2の図1~4から『配管系1(配管1)は、加振装置2を含まれておらず、当然、装着手段も含まれていないので、『配管系1の固有振動数』とは、配管のみの固有振動数であり、振動子、装着手段(取り付け金具)及び管材を含む振動系の固有振動数ではないことは、明らかである(相違点5)。」旨主張している。 しかし、刊行物2は、「配管系1の固有振動数」が、配管のみの固有振動数であると明記したものではなく、逆に「【0011】・・堆積物が配管に固着することにより質量が増えて、固有振動数が低下する。」「【0015】固定又は移動可能な加振装置の他に振動を検出するセンサを取付け、周波数を変えて加振・・し、周波数分析により固有振動数を求める。」「【0020】図3の5は、振動を検出するセンサで、・・加振より生じた配管の応答を検出する。加振力と応答から、振動分析装置8が備えている標準的な手法により、伝達関数が求められる。この伝達関数から固有振動数が得られる。」との記載を考慮すると、「配管系1の固有振動数」は、配管のみの固有振動数ではなく、配管系全体の固有振動数(すなわち、共振周波数)と解するのが相当であり、請求人の主張は採用できない。 (2)相違点2について ア.刊行物1には、二つの小さい凹部B1、B2を設けることの技術的意義(作用効果等)は記載されていないが、構造上、金属板13a及び13bの管状処理容器11を嵌め込む場所と、ネジ止め箇所との間に弾性の大きい領域を形成する作用を生じる(すなわち、振動を阻止しない)ものと認められる。 そして、上記作用は、これら凹部の形状が「小さい円弧状」である場合に限らず、他の凹型形状や溝部等、弾性の大きい領域を形成する形状でも生じることは、技術常識であるので、引用発明の二つの小さい円弧状凹部B1、B2を、凹型形状や溝部の一態様で有る「スリット」とすることは、当業者が適宜なし得る設計上の選択事項であって、当業者が容易になし得ることである。 なお、本願当初明細書中の「スリット」なる記載は、「【0029】・・なお、円弧状凹部C1、C2の外側(両側)にそれぞれ小さい円弧状凹部(又はスリット)を設けてもよい。これにより、管材Pへの振動伝達効率を向上することができる。」のみであるので、「スリット」は、「【0021】・・また、装着手段20Aは、円弧状凹部A1、A2の外側(両側)にそれぞれ小さい円弧状凹部B1、B2が設けられる。これにより、管材Pへの振動伝達効率を向上することができる。」と説明された、「小さい円弧状凹部」と同様の振動伝達効率を向上する作用効果を意図したものと解するべきものであって、当業者が予測し難い格別の作用効果を生ずるものと解することは出来ない。 (3)相違点3について 引用発明のクランプ13(本願補正発明の「装着手段」に相当するもの)の形状選択は、管状処理容器11の太さや、超音波振動子12の大きさ、管状処理容器11をクランプする力の大きさ、超音波の伝達効率等を考慮して、当業者が適宜選択すべき事項であって、その管状処理容器11(本願補正発明の「管材」に相当するもの)の外壁を嵌め込む凹部A1、A2(本願補正発明の「外壁の一部に対応する円弧状凹部」に相当するもの)と、超音波振動子12(本願補正発明の「振動子」に相当するもの)の装着面間との最小厚さをどの程度にするかについてもそのことは変わらない。 また、引用発明において、最小厚さを決定するに当たり、その厚さを「1~6mm」の範囲内のものとすることに特段の阻害要因が存在するとも認められないし、その厚さを「1~6mm」の範囲内のものとすることにより格別顕著な作用効果を奏するものとも認められない。 そうすると、引用発明において、管状処理容器11の外壁を嵌め込む凹部A1、A2と、超音波振動子12の装着面間との最小厚さとして「1~6mm」の範囲のものを選択することは、当業者が適宜なし得る設計上の選択事項であって、当業者が容易になし得ることである。 (4)相違点4について 超音波を発生する振動子を適宜のカバーで覆うこと(例えば、特開2012-16911号公報の「【0027】・・ランジュバン型超音波振動子38は、溶剤等から保護するためのカバー40によって覆われている。」図2、特開2005-186321号公報図2のカバー24、特開2004-121712号公報図1の超音波振動子20及び超音波振動ホーン21を覆う筐体11参照。)、及びカバーを取り付ける取付手段を、カバーを螺合する雄ネジ部を備えるものとすること(例えば、登録実用新案第3150914号公報図1~3の雄ねじ1021を備えた発光部102、特開2011-108587号公報図1~4の雄ねじ49を備えたグローブ用取付部47参照。)は、本願優先日前における周知技術である。 そして、引用発明において、超音波振動子12の汚損防止や、超音波振動子12に人間が直接接触することを防止すること等を考慮して、超音波振動子12をカバーで覆うと共に、カバー取付手段に、カバーを螺合する雄ネジ部を設けたもの採用して、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (5)総合判断 そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本件出願の請求項1に係る発明 平成28年10月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成28年5月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 管材の壁面を振動させる超音波振動装置であって、 少なくとも1つの周波数の超音波を発生する振動子と、 少なくとも1つの前記振動子が取り付けられ、該振動子の振動を前記管材に伝達するように前記管材の外周面に着脱可能に装着される装着手段と、 前記振動子を駆動する駆動信号を発生するための駆動手段とを備え、 前記駆動手段は、所定の周波数範囲において、接続された前記振動子、前記装着手段及び前記管材を含む振動系のインピーダンスに応じて、該振動系の共振周波数又はその近くの周波数の駆動信号を発生し前記振動子を駆動するように構成され、 前記装着手段は、前記管材の外壁の一部に対応する円弧状凹部を有する二つの取り付け金具を備え、前記二つの取り付け金具のすくなくとも一方に振動子が設けられ、前記円弧状凹部と前記振動子の装着面間の最小厚さは、1~6mmであることを特徴とする超音波振動装置。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1~2とその記載事項は、前記の「第2 2」の「(1)」~「(2)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明の発明特定事項を全て含むとともに、本願発明の発明特定事項に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」~「4.」に記載したとおり、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-017087

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