特許拒絶査定不服審判
2016-015551
発光装置のための基板に反射性被覆を供給する方法
- 審判番号
- 2016-015551
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-558543外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月18日
- 審決日
- 2017年07月26日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-558543「発光装置のための基板に反射性被覆を供給する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日国際公開、WO2012/127349、平成26年 4月10日国内公表、特表2014-509086〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)3月9日(パリ条約による優先権主張 2011年(平成23年)3月18日(以下、「優先日」という。)欧州)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 3月 3日 手続補正書の提出
平成27年12月 7日付け 拒絶理由の通知
平成28年 2月 5日 意見書、手続補正書の提出
平成28年 7月 8日付け 拒絶査定(同年同月12日送達)
平成28年10月18日 審判請求、手続補正の提出
第2 平成28年10月18日付け手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成28年10月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、そのうち特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(平成28年2月5日付けの手続補正書)の請求項1に、
「第1の表面材料を具備する第1の表面部分と前記第1の表面材料とは異なる第2の表面材料を具備する第2の表面部分とを持つ基板を供給するステップと、
前記第2の表面部分における反射性化合物と前記基板との間の接着よりも強い前記第1の表面部分における基板との接着を形成するために、前記第1の表面材料に付着する前記反射性化合物を付与するステップと、
前記第1の表面部分における反射性被覆と前記基板との間の接着を有する前記反射性被覆を形成するために、前記反射性化合物を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
前記反射性被覆を前記第1の表面部分上に残したまま、前記第2の表面部分の少なくとも一部から前記反射性被覆を除去する強さの機械的処理を前記基板に施すステップと、
を有する、発光装置のための基板に反射性被覆を供給する方法。」
とあったものを、
「第1の表面材料を具備する第1の表面部分と前記第1の表面材料とは異なる第2の表面材料を具備する第2の表面部分とを持つ基板を供給するステップと、
前記第2の表面部分における反射性化合物と前記基板との間の接着よりも強い前記第1の表面部分における基板との接着を形成するために、前記第1の表面材料に付着する前記反射性化合物を前記第1の表面材料および前記第2の表面材料に付与するステップと、
前記第1の表面部分における反射性被覆と前記基板との間の接着を有する前記反射性被覆を形成するために、前記反射性化合物を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
前記反射性被覆を前記第1の表面部分上に残したまま、前記第2の表面部分の少なくとも一部から前記反射性被覆を除去する強さの機械的処理を前記基板に施すステップであって、前記機械的処理は前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する、ステップと、
を有する、発光装置のための基板に反射性被覆を供給する方法。」
と補正することを含むものである(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。
2 補正の適否
補正前の「反射性化合物を付与するステップ」について、「反射性化合物を前記第1の表面材料および前記第2の表面材料に付与するステップ」と限定する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に本件補正後の請求項1として記載されたとおりのものである。
(2)先願の記載事項、先願発明
ア 先願の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前の他の特許出願(以下、「先願」という。)であって、本願の出願後に公開されたPCT/JP2011/065634(国際公開第2012/002580号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、図面とともに次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。)。
(ア)
「図1は、LED光源装置1の概略断面図である。
LED光源装置1は、基材10の上面上(発光面側)に形成された電極14a及び14b、基材10の下面上(例えば、マザー基材に実装される側)に形成された電極14c及び14d、電極14a上に形成されたNiメッキ層15a及びAgメッキ層16a、電極14b上に形成されたNiメッキ層15b及びAgメッキ層16b、白色無機レジスト層30、電極14bと接合されたLED素子40、LED素子40と電極14aとを接続するワイヤ41、LED素子40と電極14bとを接続するワイヤ43、LED素子40、ワイヤ41及び43、及び基材10の上面側を覆うように配置された封止体50等から構成されている。」(第7頁第14行~第24行)
(イ)
「基材10は、ガラスクロスと無機フィラーにより熱安定性、寸法安定性を強化したエポキシ樹脂(ガラスエポキシ樹脂)によって構成されている。しかしながら、基材10は、絶縁性、耐熱性を持った他の素材、例えば、一般的なプリン配線基板用基材であるベークライト、通常のエポキシ樹脂よりも耐熱性に優れているBTレジンを用いたBTレジン基材やシリコーン基材、セラミックス基材である窒化アルミなどにより構成されたものであっても良い。特に、白色無機レジスト層30が基材10の発光面側全体に形成されることから、反射率の低い、アイボリー色等の一般的な有色系エポキシ樹脂、シリコーン、窒化アルミ(反射率40%程度)や、透明なガラス等も利用することが可能である。
・・・
なお、白色無機レジスト層30は、上記の材料に限定されるものではなく、無機バインダに白色のフィラーが分散されたものであれば、他のものを利用することが可能である。例えば、無機バインダとしては、アルカリシリケート、コロイダルシリカ、水性シリカゾル、オルガノシリカゾル等の珪素化合物、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニア等の無機コロイド、アルキルシリケート等の多価金属アルコキシドを利用することができる。また、白色フィラーとしては、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ白、タルクを利用することができる。」(第8頁第1行~第9頁第5行)
(ウ)
「LED光源装置1では、LED素子40及び封止体50に含まれる蛍光体から下方に向かう光は、白色無機レジスト層30によって反射され、封止体50を通過して外部へ向けて出射される。白色無機レジスト層30は、基材10上において、電極14a及び14b以外の全ての領域を覆っているので、半導体発光素子1の反射率を非常に高く維持することが可能となる。また、同時に、白色無機レジスト層30は、LED素子40から発せられる熱を基材10全体に伝える放熱効果が高い。したがって、白色無機レジスト層30及び基材10の一部に熱が集中して材質が変性、変色又は分解を起こすことを防止する効果もある。
以下図2及び図3を用いて、LED光源装置1の製造方法について説明する。
最初に、図2(a)に示す様な両面に銅箔13を張り合わせたアイボリー色の両面銅貼りBTレジンから構成される基材10に、図2(b)に示す様に、スルーホール11を2箇所形成する。
次に、図2(c)に示す様に、上面と下面の電極を導通させるためにスルーホール内を銅メッキ法によりCu12を充填する。
次に、図2(d)に示す様に、フォトリソシ用レジスト20を、基材10上に形成する。なお、後述する電極形成の為に、レジスト20形成前に、基材10に下地処理を行うようにしてもよい。
次に、図2(e)に示す様に、フォトリソ法を用い、配線パターンに応じてレジストを露光後、部分的にレジスト20を除去し、図2(f)に示すように露出したCu面をエッチング後、図2(g)に示すように残りのレジスト20を除去することによりCuから構成される電極14を形成する。電極14は、スルーホール11を介して、基材10の上下で導通されている。電極14の厚さは30~45μmである。
次に、図3(a)に示す様に、基材10の図中の上部側に、基材10の上部側表面及び電極14を全て覆う様に、白色無機レジストをスクリーン印刷によって配置する。その後、150℃の雰囲気下で硬化させ、白色無機レジスト層31を形成する。前述したように、電極14の厚さが30~45μmであるので、白色無機レジスト層31の厚さは、35~50μm程度であることが好ましい。なお、白色無機レジストは、無機バインダとして機能するシリカゾルに白色顔料である酸化チタンのフィラーと硬化収縮を防止するためのシリカフィラーを分散したものである。
次に、図3(b)に示す様に、電極14の上部表面が露出する程度まで、白色無機レジスト層31をバフ研磨して、白色無機レジスト層30を形成する。したがって、白色無機レジスト層30の厚さは、電極14の厚さに等しい。」(第10頁第2行~第11頁第14行)
(エ)
「
」
イ 先願発明
これらのことから、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「LED光源装置1の製造方法であって、
基材10の上面上及び下面上に形成され、基材10の上下で導通されており、Cuから構成される電極14を形成し、
基材10の上部側表面及び電極14を全て覆う様に、白色無機レジストをスクリーン印刷によって配置し、その後、150℃の雰囲気下で硬化させ、白色無機レジスト層31を形成し、
電極14の上部表面が露出する程度まで、白色無機レジスト層31をバフ研磨して、白色無機レジスト層30を形成し、
基材10は、セラミックス基材などにより構成され、
白色無機レジスト層30は、無機バインダに白色のフィラーが分散され、無機バインダとしては、アルキルシリケートを利用するものであり、
白色無機レジスト層30は、基材10上において、電極14a及び14b以外の全ての領域を覆っているので、半導体発光素子1の反射率を非常に高く維持するものである、
LED光源装置1の製造方法。」
(3)対比
ア 本件補正発明と先願発明とを対比する。
先願発明の「基材10」、「基材10の上部側表面」は、それぞれ本件補正発明の「基板」、「第1の表面材料を具備する第1の表面部分」に相当し、また、先願発明の「基材10」に形成される「電極14の上部表面」は、本件補正発明の「前記第1の表面材料とは異なる第2の表面材料を具備する第2の表面部分」に相当する。
そして、先願発明の「基材10の上面上」に形成され」「Cuから構成される電極14を形成」することは、本件補正発明の「第1の表面材料を具備する第1の表面部分と前記第1の表面材料とは異なる第2の表面材料を具備する第2の表面部分とを持つ基板を供給するステップ」に相当する。
先願発明において、「白色無機レジスト層30は、基材10上において、」「半導体発光素子1の反射率を非常に高く維持するものである」から、先願発明の「白色無機レジスト」は本件補正発明の「反射性化合物」に相当する。
先願発明の「基材10の上部側表面及び電極14を全て覆う様に、白色無機レジストをスクリーン印刷によって配置」することは、本件補正発明の「前記第1の表面材料に付着する前記反射性化合物を前記第1の表面材料および前記第2の表面材料に付与するステップ」に相当する。
先願発明の「その後、150℃の雰囲気下で硬化させ、白色無機レジスト層31を形成」することは、本件補正発明の「前記第1の表面部分における反射性被覆と前記基板との間の接着を有する前記反射性被覆を形成するために、前記反射性化合物を少なくとも部分的に硬化させるステップ」に相当する。
先願発明の「電極14の上部表面が露出する程度まで、白色無機レジスト層31をバフ研磨して、白色無機レジスト層30を形成」することは、本件補正発明の「前記反射性被覆を前記第1の表面部分上に残したまま、前記第2の表面部分の少なくとも一部から前記反射性被覆を除去する強さの機械的処理を前記基板に施すステップ」に相当する。
先願発明の「LED光源装置1」は、本件補正発明の「発光装置」に相当し、先願発明は、「白色無機レジスト層30は、基材10上において、電極14a及び14b以外の全ての領域を覆っている」ものとする方法を含んでいるから、先願発明の「LED光源装置1の製造方法」は、本件補正発明の「発光装置のための基板に反射性被覆を供給する方法」であるといえる。
イ 以上のことから、本件補正発明と先願発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア)一致点
「第1の表面材料を具備する第1の表面部分と前記第1の表面材料とは異なる第2の表面材料を具備する第2の表面部分とを持つ基板を供給するステップと、
前記第1の表面材料に付着する前記反射性化合物を前記第1の表面材料および前記第2の表面材料に付与するステップと、
前記第1の表面部分における反射性被覆と前記基板との間の接着を有する前記反射性被覆を形成するために、前記反射性化合物を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
前記反射性被覆を前記第1の表面部分上に残したまま、前記第2の表面部分の少なくとも一部から前記反射性被覆を除去する強さの機械的処理を前記基板に施すステップと、
を有する、発光装置のための基板に反射性被覆を供給する方法。」
(イ)相違点1
「前記第1の表面材料に付着する前記反射性化合物を前記第1の表面材料および前記第2の表面材料に付与するステップ」について、本件補正発明は、「前記第2の表面部分における反射性化合物と前記基板との間の接着よりも強い前記第1の表面部分における基板との接着を形成するために」付与するのに対し、先願発明では、白色無機レジストを配置することについて、その点に直接触れた特定がない点。
(ウ)相違点2
機械的処理を基板に施すステップについて、本件補正発明は、「前記機械的処理は前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する」のに対し、先願発明では、バフ研磨(機械的処理)して、電極14の上部表面(第2の表面部分)を露出することについて、「接着を克服する」点に直接触れた特定がない点。
(4)判断
ア 相違点1について
本願明細書には、「【0008】本発明の一実施形態によれば、反射性化合物は、ゾルゲルバインダを有していてもよい。・・・また、ゾルゲルベースのバインダは、第2の表面部分の金属よりも、第1の表面部分のセラミック基板によりよく接着するように構成されてもよく、このことは、第2の表面部分からの被覆の除去を更に簡単にする。
【0009】
さらに、ゾルゲルバインダは、少なくとも部分的に加水分解されたシランモノマーを有していてもよい。当該モノマーは、二量体、三量体、又は、より一般的な、より高い分子量のオリゴマーを形成するために、部分的に凝結されてもよい。・・・さらに、シランモノマーが少なくとも部分的に加水分解される場合、凝結後、それらは、ケイ酸網又はアルキルシリケート網を形成する。かかるケイ酸網又はアルキルシリケート網は、基板の第2の表面部分よりも基板の第1の表面部分によく接着する材料組成を有する。」との記載がある。
この記載によれば、第2の表面部分が金属であり、第1の表面部分がセラミック基板であり、反射性化合物のバインダーがアルキルシリケート網を形成すると、基板の第2の表面部分よりも基板の第1の表面部分によく接着するものであるといえる。
一方、先願発明において、「電極14」は、「Cuから構成され」、「基材10は、セラミックス基材などにより構成され、」「白色無機レジスト層30」の「無機バインダとしては、アルキルシリケートを利用するものであ」る。ここで、一般にバインダとして用いられるアルキルシリケートは加熱硬化により鎖状結合し網構造となるから、先願発明における、「白色無機レジスト層30」と金属(Cu)から構成される「電極14」の接着強さと、「白色無機レジスト層30」と「セラミックス基材」の接着強さとの関係は、本件補正発明と同様の接着強さの関係を有するといえる。
したがって、相違点1は、実質的に相違点ではない。
イ 相違点2について
本件補正発明における、「前記機械的処理は前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する」との特定事項について、発明の詳細な説明には、記載されていない。
ところで、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0011】・・・ケイ酸網又はアルキルシリケート網を有する反射性被覆は、比較的脆く、従って、反射性被覆は、基板の第1及び第2の表面部分の端部において比較的容易に壊れるため、基板の第2の表面部分からの被覆の選択的な除去が高められる。」
「【0036】
ここで、上記方法の第5のステップ、即ち、金属製の接続パッド106及び金属トラック108からの反射性被覆114の除去を図示している図5を参照する。この段階では、基板104は、流体の圧力噴射などの機械的処理に晒され、これにより、金属製の接続パッド106及び金属トラック108から反射性被覆114が除去される。しかしながら、上記のような、反射性被覆114のゾルゲルバインダとセラミック基板104との間の化学的な接着のために、反射性被覆114は、上記機械的処理を施されたとしても、セラミック基板104からは除去されない。従って、図5に示されるように、セラミック基板104は、反射性被覆114で被覆される一方、金属製の接続パッド106及び金属トラック108は、基板104に接続される発光装置112に所望の電気的接続を供給するための「綺麗な(何もない)」表面を有する。」
「【0038】
・・・さらに、金属製の接続パッドから反射性被覆を除去するための機械的処理は、ブラッシング、グラインディング、ジェッティング、又は、超音波洗浄、又は、メガソニック洗浄などを有していてもよい。」
これらの記載から、アルキルシリケート網を有する反射性被覆は、比較的脆く、比較的容易に壊れるものであり、除去された後の、金属製の接続パッド106及び金属トラック108は、綺麗な(何もない)表面を有し、機械的処理とは、流体の圧力噴射、ブラッシング、グラインディング、ジェッティング、又は、超音波洗浄、又は、メガソニック洗浄などである。
これらの記載を踏まえ、本件補正発明における、「前記機械的処理は前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する」との特定事項を考察するに、流体の圧力噴射、ブラッシング、グラインディング、ジェッティング、又は、超音波洗浄、又は、メガソニック洗浄などの機械的処理により、反射性被覆は、比較的容易に壊れ、金属製の接続パッド106及び金属トラック108は、綺麗な(何もない)表面となることが、「前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する」ことであるといえる。
一方、先願発明における「バフ研磨」は、本願明細書で機械的処理として例示されている「グラインディング」に相当する。
また、先願発明において、「無機バインダとしては、アルキルシリケートを利用するものであ」る「白色無機レジスト層」は、150℃の雰囲気下で硬化されることにより鎖状結合し網構造を有するものである。つまり、本願明細書に記載されている、比較的脆く、比較的容易に壊れるアルキルシリケート網を有するものである。
そして、先願発明は、「バフ研磨」により「電極14の上部表面が露出する」ことから、本願明細書に記載されているように綺麗な(何もない)表面となるものである。
してみると、先願発明においても、機械的処理により、「白色無機レジスト層」は、比較的容易に壊れ、「電極14の上部表面」は綺麗な(何もない)表面となるから、本件発明の「前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する」構成を有しているといえる。
したがって、相違点2は、実質的に相違点ではない。
ウ 請求人の主張について
審判請求書において、請求人は、「本願発明では、第2の表面部分における基板との接着を克服するような強さの一回の機械的処理において第2の表面部分(たとえば電極)の上のすべての化合物が「突然」除去されます。
これに関し、本願明細書0011は「ケイ酸網又はアルキルシリケート網を有する反射性被覆は、比較的脆く、従って、反射性被覆は、基板の第1及び第2の表面部分の端部において比較的容易に壊れるため、基板の第2の表面部分からの被覆の選択的な除去が高められる。」と記載しています。このように、本願発明では、反射性層は、徐々にバフ研磨で除去されるのではなく、反射性被覆の接着を克服するような強さの機械的処理によって除去されます。そのような機械的処理は、基板の第1及び第2の表面部分の端部において反射性被覆を壊します。」と主張している((d)本願発明と引用発明との対比(2)参照。)。
しかしながら、「本願発明では、第2の表面部分における基板との接着を克服するような強さの一回の機械的処理において第2の表面部分(たとえば電極)の上のすべての化合物が「突然」除去されます。」ということは、本願明細書には、記載されておらず、また、本願明細書の記載に基づく「そのような機械的処理は、基板の第1及び第2の表面部分の端部において反射性被覆を壊します。」との主張、つまり、機械的処理は、基板の第1及び第2の表面部分の端部(一部)を壊すとする主張とも矛盾する主張である。
したがって、請求人の「請求人は、「本願発明では、第2の表面部分における基板との接着を克服するような強さの一回の機械的処理において第2の表面部分(たとえば電極)の上のすべての化合物が「突然」除去されます。」との主張は採用できない。
また、「そのような機械的処理は、基板の第1及び第2の表面部分の端部において反射性被覆を壊します。」の主張の根拠は、本願明細書0011の「ケイ酸網又はアルキルシリケート網を有する反射性被覆は、比較的脆く、従って、反射性被覆は、基板の第1及び第2の表面部分の端部において比較的容易に壊れるため」との記載である。
しかるに、先願発明において、「無機バインダとしては、アルキルシリケートを利用するものであ」る「白色無機レジスト層」は、150℃の雰囲気下で硬化されることにより鎖状結合し網構造を有するものである。つまり、本願明細書に記載されている、比較的脆く、比較的容易に壊れるアルキルシリケート網を有するものである。
よって、先願発明の「白色無機レジスト層」は、「端部において比較的容易に壊れる」との主張と同様のものである。
エ 判断のまとめ
したがって、本件補正発明と先願発明とは、実質的な相違点はなく、同一であり、しかも、この本件補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、またこの特許出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、本件補正発明は、特許法29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年10月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年2月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1に本件補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。
2 先願の記載事項、先願発明
原査定の拒絶の理由で引用された先願明細書に記載された事項及び先願発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
3 対比、判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「反射性化合物を前記第1の表面材料および前記第2の表面材料に付与するステップ」の下線部及び「前記機械的処理は前記第2の表面部分における前記基板との接着を克服する」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)(4)に記載したとおり、先願発明と同一であるから、本願発明も、同様の理由により、先願発明と同一である。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-015551