特許拒絶査定不服審判
2016-015538
管状連結器
- 審判番号
- 2016-015538
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-260106外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月18日
- 審決日
- 2017年04月28日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-Z (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-260106号「管状連結器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日出願公開、特開2015-111003号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成20年2月29日(パリ条約による優先権主張 2007年3月3日 ドイツ)に出願した特願2008-51160号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年9月6日に新たな特許出願とした特願2013-184806号の一部をさらに平成26年12月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成27年11月19日付け 拒絶理由通知
平成28年 5月25日 意見書、手続補正書の提出
6月17日付け 拒絶査定
10月18日 審判請求書及び手続補正書の提出
10月20日 手続補正書の提出
(審判請求書の請求の理由を補充)
2.平成28年10月18日の手続補正について
平成28年10月18日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は特許請求の範囲を補正するものであり、補正前の請求項1を引用する請求項2のみを引用する請求項3を、補正後の請求項1とし、補正前の請求項1を引用する請求項4のみを引用する請求項5を、補正後の請求項2とするものであり、補正前の引用形式であった請求項3、5を独立形式に改めて補正後の請求項1、2としたものである。
そうすると、本件補正は、補正前の請求項1、2及び4を削除する補正であり、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除に該当するものであり、同条第3項、第4項に適合するものでもあるので、適法なものである。
3.本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、上記の本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「管の端部間のギャップの封止に利用され、弾性材料からなる環状のスリーブと、互いに平行に配置される2つの緊定ネジを有して前記スリーブを緊定するための緊定装置とを備え、2本の管の隣接する端部を連結する管状連結器において、
前記スリーブ(28)が、区間ごとに成形筐体(29)によって取り囲まれており、
前記緊定装置の少なくとも1つの緊定要素(30、35)が、前記成形筐体(29)で担持され、
前記緊定装置が、前記成形筐体(29)を介して前記スリーブ(28)を緊定し、
前記緊定装置の前記緊定要素または前記各緊定要素(30)が緊定ベルトとして形成されており、
前記緊定ベルトまたは前記各緊定ベルト(30)が前記成形筐体(29)の外側で担持され、
前記緊定ベルトまたは前記各緊定ベルト(30)の端部が、ループを形成し、
前記ループが、各緊定ネジ(33)がそれを通って延びる、それぞれ1つの緊定ボルト(32)を取り囲み、
前記緊定ベルトまたは各緊定ベルト(30)が、ポリマー化合物で形成されることを特徴とする管状連結器。」
なお、請求項1には「前記スリーブ(28)」と図番を付した記載がなされているが、本願の明細書の発明の詳細な説明には次のとおり記載されている。
「【0025】
図5および6は、本発明の第2の実施形態による本発明に係る管状連結器27の例示的な実施形態を示すものであり、この管状連結器27は、やはり2本の管の隣接する端部の連結に利用され、管状連結器27のスリーブが、互いに連結される管の隣接する端部間のギャップを封止する。このスリーブは、やはり弾性材料、好ましくはゴム弾性材料から形成される。スリーブは、図5、6には示されておらず、スリーブがその緊定の際に径方向外側に逃げることを阻止するカバー要素28が示されている。」
当該段落の記載によれば、図番「28」は「カバー要素」に付されるものであるので、請求項1の「前記スリーブ(28)」との記載は「前記スリーブ」の誤記と認める。
4.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭55-47074号(実開昭56-149184号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。
ア
「ゴム質又はそれに準じた材質より成る環状のパッキングと金属板をプレス成形した分割ハウジング部体より成り、前記パッキングには内腔を形成すると共に該内腔の両側に接続すべき管体の外周面に接合すべき唇先部を対設し、前記分割ハウジング部体の外面には弾性金属帯片の中間部を溶接によって接着し、該弾性金属帯片の両端部に夫々回動筒を包容して取付ける装着部を折返して形成し、これら回動筒の一方に緊締杆を取付けると共に他方には該緊締杆を挿通する緊締座を形成したことを特徴とする管接手機構。」(明細書1頁4~16行、「2 実用新案登録請求の範囲 (1)」)
イ
「本考案は管接手機構の考案に係り、・・・
管路を形成するための管端相互を連結、接続するために管接手は不可欠のものであり、」(明細書2頁13~18行)
ウ
「・・・ゴム質又はそれに準じた材質より成る環状パッキング1と金属板をプレス成形した分割ハウジング2、2より成り、環状パッキング1には内腔11を形成すると共に分割ハウジング部材2、2の外面には弾性金属帯片3の中間部を溶接4によって接着し、このような弾性金属帯片3の両端部は折返して夫々回動筒5、5aの装着部30となし、該装着部30の中間に開口部31を形成すると共に前記のようにして装着された一方の回動筒5に緊締杆6を取付け、又他方の回動筒5aに該緊締杆6を挿通する緊締座7を形成したものであり、・・・」(明細書4頁15行~5頁7行)
エ
「上記したような本考案によるものの管体10に対する装着状態は第2、3図に示される通りであって接続すべき両管体10、10の端部を対向させた状態で前記したようなパッキング1を覆着し、これを上述したハウジング2、2により覆装して弾性金属帯片3をその緊締杆6と緊締座7で締着するものであり、緊締杆6を緊締座7の内孔に挿入し、その螺条部61にナット62を螺合することにより第2図に実線で示し、又第3図に示すような安定が得られることは明かである。・・・」(明細書6頁8~18行)
なお、引用文献1中の「パツキング」、「~によつて」、「~であつて」、「ナツト」との記載は、「パッキング」、「~によって」、「~であって」、「ナット」として上記ア~エに記載した。
上記ア~エの記載内容及び第1図~第3図の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「ゴム質又はそれに準じた材質より成る環状パッキング1と、環状パッキング1を覆う金属板をプレス成形した分割ハウジング部材2、2より成り、分割ハウジング部体2、2の外面には弾性金属帯片3の中間部を溶接4によって接着し、該弾性金属帯片3の両端部に夫々回動筒5、5aを包容して取付ける装着部30を折返して形成し、一方の回動筒5に緊締杆6を取付けると共に他方の回動筒5aには該緊締杆6を挿通する緊締座7を形成し、
接続すべき両管体10、10の端部を対向させた状態で環状パッキング1を覆着し、これを分割ハウジング部材2、2により覆装して弾性金属帯片3をその緊締杆6と緊締座7で締着するものであり、緊締杆6を緊締座7の内孔に挿入し、緊締杆6の螺条部61にナット62を螺合するものである、管端相互を連結、接続する、管接手機構。」
(2)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-82418号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
オ
「【0014】
【発明の実施の形態】図1~3に示すクランプは管継手として使用され、次のように構成されている。鋼板から曲げられて不完全なリングを形成するクランプ条片1は、その軸方向の端部に半径方向の内向きに曲がった端面壁2を有し、その内径は、クランプによって軸方向に連結しようとする円滑な管3(図3)の直径よりも大きい。クランプ条片1は円周方向に中断され、間隙を限定する端部において締付けジョー4(図1)を備えている。締付けジョー4は、クランプ条片1の外側にそれぞれの丸ボルト5、6の周りに曲げられたクランプ条片1のループとして形成され、これらはプロジェクション溶接によって連結されている。クランプ条片1のループは各々、それぞれの丸ボルト5、6の周りに部分的に延びる2つのスロットを有する。丸ボルト6は横貫通孔を有し、ボルト6の周りに曲げられたループの各スロット区域には内側ねじはない。丸ボルト5もまた横貫通孔を有するが、他のループの各スロット区域には内側ねじを備えている。ループにおけるスロットと丸ボルト5、6の横孔には締付けボルト9が貫通し、締付けボルト9の頭部10は6角形のソケットを有し、丸ボルト6の貫通孔を広げる盲孔の肩部で止まっている。」
5.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア
後者の「ゴム質又はそれに準じた材質より成る環状パッキング1」は、前者の「弾性材料からなる環状のスリーブ」に相当する。
イ
後者の「螺条部61」を有した「緊締杆61」は、前者の「互いに平行に配置される2つの緊定ネジ」と、「緊締ネジ」である限りにおいて一致する。
ウ
(ア) 後者の「弾性金属帯片3」は、その中間部が「分割ハウジング部体2、2の外面に」「溶接4によって接着」されるものであるとともに、その一端に設けた緊締杆6の螺条部61を利用して締着し、分割ハウジング部材2、2を介して環状パッキング1を締め付けるものである。
そうすると、後者の「弾性金属帯片3」は、前者の「緊定ネジを有してスリーブを緊定するための緊定装置」、「成型筐体(29)で担持」された「緊締装置の少なくとも1つの緊締要素(30、35)」及び「成形筐体(29)を介してスリーブ(28)を緊定」する「緊定装置」に相当する。
(イ) また、後者の「弾性金属帯片3」は、帯状であるのでベルト状といえ、前者の「緊定装置の緊定要素または各緊定要素(30)が緊定ベルトとして形成され」ることを備えている。
(ウ) さらに、上述のとおり、後者の「弾性金属帯片3」は、その中間部が「分割ハウジング部体2、2の外面に」「溶接4によって接着」されるものであるので、前者の「緊定ベルトまたは各緊定ベルト(30)が成形筐体(29)の外側で担持され」る構成を備えている。
エ
後者の「金属板をプレス成形した分割ハウジング部材2、2」は、各分割ハウジング部材2がパッキング1を覆うものであるので、前者の「区間ごとに」スリーブ(28)を取り囲む「成形筐体(29)」に相当する。
オ
(ア) 後者の「弾性金属帯片3の両端部に」「装着部30を折返して形成」することは、前者の「緊定ベルトまたは前記各緊定ベルト(30)の端部が、ループを形成」することに相当する。
(イ) また、後者の「回動筒5、5a」は、「一方の回動筒5に緊締杆6を取付けると共に他方の回動筒5aには該緊締杆6を挿通する緊締座7を形成」されるものであり、回動筒5、5aは緊締杆6が通っているものといえる。
そうすると、後者の弾性金属帯片3の両端部に折返して形成された装着部30に「包容して取付け」られる「回動筒5、5a」は、前者の「ループが」取り囲む「各緊定ネジ(33)がそれを通って延びる、それぞれ1つの緊定ボルト(32)」と、「緊定ネジ(33)がそれを通って延びる、それぞれ1つの部品」である限りにおいて一致する。
カ
後者の「管端相互を連結、接続する、管接手機構」は、前者の「管の端部間のギャップの封止に利用され」、「2本の管の隣接する端部を連結する管状連結器」に相当する。
そうすると、両者は、
「管の端部間のギャップの封止に利用され、弾性材料からなる環状のスリーブと、緊定ネジを有して前記スリーブを緊定するための緊定装置とを備え、2本の管の隣接する端部を連結する管状連結器において、
前記スリーブが、区間ごとに成形筐体によって取り囲まれており、
前記緊定装置の少なくとも1つの緊定要素が、前記成形筐体で担持され、
前記緊定装置が、前記成形筐体を介して前記スリーブを緊定し、
前記緊定装置の前記緊定要素または前記各緊定要素が緊定ベルトとして形成されており、
前記緊定ベルトまたは前記各緊定ベルトが前記成形筐体の外側で担持され、
前記緊定ベルトまたは前記各緊定ベルトの端部が、ループを形成し、
前記ループが、緊定ネジがそれを通って延びる、それぞれ1つの部品を取り囲む、管状連結器。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
本願発明は、「緊締ネジ」に関して「互いに平行に配置される2つ」であると特定するとともに、ループが取り囲む「各緊定ネジ(33)がそれを通って延びる」それぞれ1つの部品に関して「緊定ボルト(32)」と特定しているのに対して、引用発明は、「緊締杆6」及び「回動筒5、5a」は、そのように特定されていない点。
〔相違点2〕
「緊締ベルト」に関して、本願発明は、「ポリマー化合物で形成される」と特定されているのに対して、引用発明は、「弾性金属帯片3」である点。
上記各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
2本の管の隣接する端部を連結する管状連結器において、緊定装置を構成する緊定ネジの数を何本にするのかは、緊定装置のサイズ(幅)等に応じて、当業者が適宜設定し得る設計的事項であり、互いに平行に配置される2つの緊定ネジを用いることは周知の事項といえる(必要であれば、拒絶査定時に引用した特開2003-120868号公報の【図1】、【図2】の「締付ボルト4」、同じく特開平11-257560号公報の【図1】、【図2】の「締め付けねじ9」を参照)。
そうすると、引用発明における弾性金属帯片3の締着に要する緊締杆6を、「互いに平行に配置される2つ」とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。
また、引用文献2には、管継手において、
「締付けジョー4は、クランプ条片1の外側にそれぞれの丸ボルト5、6の周りに曲げられたクランプ条片1のループとして形成され」、
「丸ボルト6は横貫通孔を有し、ボルト6の周りに曲げられたループの各スロット区域には内側ねじはない。丸ボルト5もまた横貫通孔を有するが、他のループの各スロット区域には内側ねじを備え」、
「ループにおけるスロットと丸ボルト5、6の横孔には締付けボルト9が貫通し」
と記載されており(上記4.(2)オを参照)、クランプ条片1のループとして形成された締付けジョー4に囲まれた丸ボルト5、6に締付けボルト9が貫通することが記載されている。(また、上述の特開平11-257560号公報の段落【0009】及び【図1】、【図2】にも「ボルト5、6」と「締め付けねじ9」に関して同様の事項が記載されている。)
引用文献2に記載に記載された、「丸ボルト5、6」と「締付けボルト9」とからなる、クランプ条片1の締め付けに用いられる構造は、管継手において一般に用いられているものと認められる。
そうすると、引用発明の「緊締杆6」及び「回動筒5、5a」に換えて、引用文献2に記載の「丸ボルト5、6」及び「締付けボルト9」を採用することは、当業者が容易になし得ることといえる。
以上のとおりであるので、引用発明を相違点1に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。
〔相違点2について〕
管の接続部に用いられる帯状締具を、金属または合成樹脂で形成することは周知の事項といえる(必要であれば、実願昭52-109166号(実開昭54-36126号)のマイクロフィルムの明細書4頁8~12行及び第1図、第3図の「ストラップ2」に関する記載を参照)。
周知の材料からなる部品の中から、必要とする強度やコストを勘案しつつ、好適な部品を選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、当業者が適宜になし得ることといえる。
そうしてみると、引用発明の弾性金属帯片3を、合成樹脂製のものに換えることは、当業者が適宜になし得ることといえる。
したがって、引用発明を相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。
そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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