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特許拒絶査定不服審判

2024-000433

一対の導管を含むトレンチを充填するための方法、およびこのような充填されたトレンチ

審判番号
2024-000433
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-519794
請求日
2024年01月11日
審決日
2024年11月20日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】関根 毅
  • 【請求人代理人】赤岡 明
  • 【請求人代理人】出口 智也
審判長/審判官
  • 審判長 平城 俊雅
  • 審判官 中屋 裕一郎
  • 審判官 内田 博之
分類
P18 .121-Z (F16L) / P18 .575-Z (F16L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2021-519794「一対の導管を含むトレンチを充填するための方法、およびこのような充填されたトレンチ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日国際公開、WO2020/078891、令和 4年 1月13日国内公表、特表2022-504671〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)10月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年10月15日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 6月 9日付け :拒絶理由通知 令和5年 8月28日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年11月 8日付け :拒絶査定 令和6年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月11日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。 「 【請求項1】 充填されたトレンチであって、 1つまたは複数の地域熱エネルギー分配システムの一対の導管(3a、3b)であって、前記一対の導管(3a、3b)は、それぞれの導管(3a、3b)において異なる温度の流体を送達するように構成され、前記一対の導管(3a、3b)は、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において粒子状の充填材料で囲まれている、前記一対の導管(3a、3b)と、 第1の種類の粒子状の充填材料(4a)で充填された第1の部分(5a)であって、前記充填されたトレンチの前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている、前記第1の部分(5a)と、 第2の種類の粒子状の充填材料(4b)で充填された第2の部分(5b)とを含み、 前記一対の導管(3a、3b)の両方が前記第2の部分(5b)に囲まれ、 前記第1の種類の前記充填材料(4a)が、第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の前記充填材料(4b)が、第2の熱伝導係数を有し、前記第1の熱伝導係数は、前記第2の熱伝導係数よりも小さいものであり、 前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されており、 前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている、充填されたトレンチ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年8月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 充填されたトレンチであって、 1つまたは複数の地域熱エネルギー分配システムの一対の導管(3a、3b)であって、前記一対の導管(3a、3b)は、それぞれの導管(3a、3b)において異なる温度の流体を送達するように構成され、前記一対の導管(3a、3b)は、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において粒子状の充填材料で囲まれている、前記一対の導管(3a、3b)と、 第1の種類の粒子状の充填材料(4a)で充填された第1の部分(5a)であって、前記充填されたトレンチの前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている、前記第1の部分(5a)と、 第2の種類の粒子状の充填材料(4b)で充填された第2の部分(5b)とを含み、 前記一対の導管(3a、3b)の両方が前記第2の部分(5b)に囲まれ、 前記第1の種類の前記充填材料(4a)が、第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の前記充填材料(4b)が、第2の熱伝導係数を有し、前記第1の熱伝導係数は、前記第2の熱伝導係数よりも小さい、充填されたトレンチ。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一対の導管(3a、3b)」について、「前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されており、 前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている」と限定するものである。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献1の記載事項及び引用発明 ア.原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(西独国特許出願公開第3112175号明細書)には、次の記載がある([ ]内の日本語は当審訳;下線は当審が付したものである。)。 (ア)「 [図:0001422083000001.jpg] [本発明は、好ましくは流れ温度が373度K未満の、フローラインとリターンラインを備えた地域熱伝達システムに関する。]」(第4頁第6~8行;ただし空白行は行数に加味していない(以下同じ)。) (イ)「 [図:0001422083000002.jpg] [都市部の熱供給には、火力発電所の使用が増加している。火力発電所は、場合によっては中間ステーションや貯蔵施設を介して、パイプインシステムにより消費者に接続されている。]」(第4頁第9~13行) (ウ)「 [図:0001422083000003.jpg] [本発明の目的は、効果的な熱輸送が可能であり、その製造コストが従来よりも大幅に低い、上述のタイプの地域熱伝達システムを提供することである。]」(第5頁18~22行) (エ)「 [図:0001422083000004.jpg] [本発明は、温かいフローラインが拡散抵抗の低いバルク断熱材に埋め込まれ、地表水の浸入からカバーで保護され、冷たいリターンラインがフローラインの下方に距離を置いて配置されることにより達成される。]」(第5頁23~28行) (オ)「 [図:0001422083000005.jpg] [このコンセプトにより、冷たいリターンラインの助けを借りて、ルートの領域の蒸気圧は、拡散によって、温かいフローラインの断熱材の効果的な乾燥が達成できる程度まで低下する。 断熱材の領域から来る湿気(なお、地表水はカバーフィルムによって遮断されている。)は、冷たいリターンライン上、またはその前のバルク断熱材の冷たい部分に凝縮する。]」(第6頁第1~8行) (カ)「 [図:0001422083000006.jpg] [この発明は一つの図を用いてさらに詳細に説明される。 この図は地中のフローラインとリターンラインの配置を示している。 図によれば、ルートは既存の地盤材料1内に配置されており、温かいフローライン2は、例えば、拡散抵抗の低いバルク断熱材6(砂またはスラグ)に埋め込まれている。温かいフローライン2の上には、好ましくはプラスチックフィルムで作られたカバー4があり、地表水の侵入を防止する。冷たいリターンライン3は、フローライン2の下方に間隔を置いて配置されている。本発明によれば、冷たいリターンライン3は、フローライン2の断熱領域の蒸気圧を低く保つために使用される。冷たいリターンライン3は一時的に安全に地下水5に入れることもできる。リターンライン3のすぐ近くの蒸気圧は露点温度に相当する。通常の地盤条件においては、浸透した湿気は冷たいパイプの表面に拡散し、そこで凝結する。]」(第6頁第9~27行) (キ)「 [図:0001422083000007.jpg] [回路内の水質は、高い品質であり、飲料水に近い水質である。衛生的に懸念がある細菌の増殖やスライムの形成を防ぐために、水は可能な限り高い酸素含有量とされる(なお、これは腐食の理由で高酸素含有量が必要な場合は受け入れらない、従来のよく知られたシステムとは対象的である。)。地域熱ラインは飲料水集水域に建設される必要があるため、制御されない浸透の可能性を考慮して、衛生的に安全な水質が不可欠です。これは、本発明による地域熱伝達システムを用いて容易に達成することができる。]」(第7頁第10~22行) (ク)「 [図:0001422083000008.jpg] 」(第9頁) イ.上記(カ)には「地中のフローラインとリターンラインの配置」、「温かいフローライン2は、例えば、拡散抵抗の低いバルク断熱材6(砂またはスラグ)に埋め込まれている」、「冷たいリターンライン3は、フローライン2の下方に間隔を置いて配置されている」との記載があり、上記(ク)の図からは、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3が地中に埋設されている様子がみてとれるところ、引用文献1には、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造が記載されていると認められる。そして、上記ア.の各記載から、引用文献1には、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造について、次の事項が記載されていると認められる。 (ケ)地中埋設構造における温かいフローライン2と冷たいリターンライン3は、地域熱伝達システムに用いられるものである(上記(ア)及び(イ)参照)。温かいフローライン2と冷たいリターンライン3には、水が流されるようにされている(上記(キ)参照)。温かいフローライン2に流れる水が温かいこと、冷たいリターンライン3に流れる水が冷たいことは、それぞれ自明である。 (コ)地中埋設構造の垂直断面図で見た場合に、温かいフローライン2は全周囲が砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6により囲まれている(上記(オ)、(カ)及び(ク)参照)。また、地中埋設構造の垂直断面図で見た場合に、冷たいリターンライン3は全周囲がバルク断熱材6と地盤材料1とにより囲まれている(上記(カ)及び(ク)参照)。 (サ)上記(ク)の地中埋設構造の垂直断面図から、バルク断熱材6が占める領域が、温かいフローライン2を取り囲むように形成されており、そのバルク断熱材6が占める領域の一部が温かいフローライン2と冷たいリターンライン3との間に介在している点が看て取れる。また、同じく上記(ク)の地中埋設構造の垂直断面図から、地盤材料1が占める領域が、温かいフローライン2、バルク断熱材6が占める領域、及び冷たいリターンライン3を取り囲むように存在している点が看てみ取れる。 (シ)上記(ク)の地中埋設構造の垂直断面で見た場合、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3とが垂直方向に並んで配置され、冷たいリターンライン3は、温かいフローライン2の下方に間隔を置いて配置されている(上記(カ)及び(ク)参照)。 ウ.上記イ.を総合すると、引用文献1には、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造に係る次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造であって、 地域熱伝達システムに用いられる温かいフローライン2と冷たいリターンライン3を備え、温かいフローライン2には温かい水が流されるようにされ、冷たいリターンライン3には冷たい水が流されるようにされ、地中埋設構造の垂直断面図で見た場合に、温かいフローライン2は全周囲が砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6により囲まれ、冷たいリターンライン3は全周囲がバルク断熱材6と地盤材料1とにより囲まれており、 バルク断熱材6が占める領域が、温かいフローライン2を取り囲むように形成されており、そのバルク断熱材6が占める領域の一部が温かいフローライン2と冷たいリターンライン3との間に介在しており、 地盤材料1が占める領域が、温かいフローライン2、バルク断熱材6が占める領域、及び冷たいフローライン3を取り囲むように存在しており、 地中埋設構造の垂直断面で見た場合、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3とが垂直方向に並んで配置され、冷たいリターンライン3は、温かいフローライン2の下方に間隔を置いて配置されている、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造。 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア. 引用発明の「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」には、「バルク断熱材6が占める領域」や「地盤材料1が占める領域」が存在し、これらの領域は、「バルク断熱材6」や「地盤材料1」が充填された領域であるから、引用発明の「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」は「充填され」ている点において、本件補正発明の「充填されたトレンチ」と共通する。そうすると、引用発明の「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」と本件補正発明との「充填されたトレンチ」とは、「充填された構造」という限りにおいて一致する。 イ. 引用発明の「地域熱伝達システム」は、本件補正発明の「1つまたは複数の地域熱エネルギー分配システム」に相当する。引用発明の「温かいフローライン2」と「冷たいリターンライン3」との2つを合わせたものが、本件補正発明の「一対の導管(3a、3b)」に相当する。引用発明の温かいフローライン2を流れる「温かい水」と冷たいリターンライン3を流れる「冷たい水」が、本件補正発明の「異なる温度の流体」に相当する。引用発明の「温かいフローライン2には温かい水が流されるようにされ、冷たいリターンライン3には冷たい水が流されるようされ」ることは、本件補正発明の「前記一対の導管(3a、3b)は、それぞれの導管(3a、3b)において異なる温度の流体を送達するように構成され」ることに相当する。 ウ. 引用発明の「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」と「地盤材料1」とは、ともに粒子状であり、地中埋設構造における空いた空間を埋めるもの、すなわち空間に充填されるものであるから、本件補正発明の「粒子状の充填材料」に相当する。 引用発明の「埋設構造の垂直断面図で見た場合に」「全周囲が」「囲まれ」ていることは、本件補正発明の「垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において」「囲まれている」ことに相当する。 したがって、引用発明の「埋設構造の垂直断面図で見た場合に、温かいフローライン2は全周囲が砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6により囲まれ、冷たいリターンライン3は全周囲がバルク断熱材6と地盤材料1とにより囲まれて」いることは、本件補正発明の「前記一対の導管(3a、3b)は、」「垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において粒子状の充填材料で囲まれている」ことに相当する。 エ. 引用発明の「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」は本件補正発明の「第1の種類の粒子状の充填材料(4a)」に相当し、引用発明の「バルク断熱材6が占める領域」が、本件補正発明の「第1の種類の粒子状の充填材料(4a)で充填された第1の部分(5a)」に相当する。そして、引用発明において、バルク断熱材6が占める領域の一部が、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3との「間に介在」する以上、必然的にバルク断熱材6が占める領域の一部が、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3との「間の空間を占め」ることになる。そうすると、引用発明の「そのバルク断熱材6が占める領域の一部が温かいフローライン2と冷たいリターンライン3との間に介在」することは、本件補正発明の「前記充填されたトレンチの前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている」こととの対比において、「前記充填された構造の前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている」という限りにおいて一致する。 引用発明の「地盤材料1」は本件補正発明の「第2の種類の粒子状の充填材料(4b)」に相当し、引用発明の「地盤材料1が占める領域」が、本件補正発明の「第2の種類の粒子状の充填材料(4b)で充填された第2の部分(5b)」に相当する。 そして、引用発明の「地盤材料1が占める領域が、温かいフローライン2、バルク断熱材6が占める領域、及び冷たいフローライン3を取り囲むように存在して」いることは、本件補正発明の「前記一対の導管(3a、3b)の両方が前記第2の部分(5b)に囲まれ」ていることに相当する。 オ. 引用発明の「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」は、所定の熱伝導係数を有していることが明らかであり、このように引用発明の「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」が所定の熱伝導係数を有することが、本件補正発明の「前記第1の種類の前記充填材料(4a)が、第1の熱伝導係数を有」することに相当する。同様に、引用発明の「地盤材料1」も、所定の熱伝導係数を有していることが明らかであり、このように引用発明の「地盤材料1」が所定の熱伝導係数を有することが、本件補正発明の「第2の種類の前記充填材料(4b)が、第2の熱伝導係数を有」することに相当する。 カ. 引用発明の冷たいリターンライン3が温かいフローライン2の「下方に間隔を置いて」配置される状態は、冷たいリターンライン3と温かいフローライン2とが「垂直方向に」「互いに離れている」という状態ともいえる。そうすると、引用発明の「埋設構造の垂直断面で見た場合」、「冷たいリターンライン3は、温かいフローライン2の下方に間隔を置いて配置されている」ことは、本件補正発明の「前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている」こととの対比において、「前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填された構造の垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている」という限りおいて一致する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点1~3で相違する。 [一致点] 充填された構造であって、 1つまたは複数の地域熱エネルギー分配システムの一対の導管であって、前記一対の導管は、それぞれの導管において異なる温度の流体を送達するように構成され、前記一対の導管は、前記充填された構造の垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において粒子状の充填材料で囲まれている、前記一対の導管と、 第1の種類の粒子状の充填材料で充填された第1の部分であって、前記充填された構造の前記第1の充填された部分は、前記一対の導管の間の空間を占めている、前記第1の部分と、 第2の種類の粒子状の充填材料で充填された第2の部分とを含み、 前記一対の導管の両方が前記第2の部分に囲まれ、 前記第1の種類の前記充填材料が、第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の前記充填材料が、第2の熱伝導係数を有し、 前記一対の導管の前記導管が、前記充填された構造の垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている、充填された構造。 [相違点1] 「充填された構造」に関し、本件補正発明は、充填された「トレンチ」であるのに対し、引用発明の「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」が「トレンチ」であるか否か、明らかでない点。 [相違点2] 本件補正発明は、「前記第1の熱伝導係数は、前記第2の熱伝導係数よりも小さい」のに対して、引用発明は「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」の熱伝導係数と「地盤材料1」の熱伝導係数との大小関係が明らかでない点。 [相違点3] 本件補正発明は、「前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されており」という構成を有するのに対し、引用発明は温かいフローライン2と冷たいリターンライン3とがそのような配置関係を有するのか否か、明らかでない点。 (4)判断 以下、上記相違点について検討する。 ア. 相違点1について まず、「トレンチ」とは、一般的に「深い溝の意」であり(出典:デジタル大辞泉)、本件補正発明においては、その中に一対の導管を敷設するための「溝」ということができる。 これに対し、引用発明は、「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」であるところ、地中に「温かいフローライン2」と「冷たいリターンライン3」を埋設するためには、それらを地中に埋設するための「溝」を地面に堀ることは必須であり、「溝」を掘らなければ地中に埋設することができない。すなわち、引用発明の「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」は、地面に掘った「溝」に温かいフローライン2と冷たいリターンライン3を敷設していることは、当業者にとって自明な事項であるといえる。 したがって、引用発明も「溝」を掘った上で、温かいフローライン2と冷たいリターンライン3を敷設したものであり、「トレンチ」を有する構造となっている点においては本件補正発明と差異はなく、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 仮に、上記相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用発明の「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の地中埋設構造」を実現するために、「溝」を堀り、その「溝」に「温かいフローライン2と冷たいリターンライン3」とを敷設する構成とし、「トレンチ」を有する構造とすることは、当業者が容易になし得る事項である。 イ. 相違点2について 引用発明における「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」は、温かいフローライン2を、その名のとおり「断熱」するために用いられるものである。「地盤材料1」の熱伝導係数が小さければ、フローライン2の周囲に「バルク断熱材6」を設ける必要はない。すなわち、引用発明において温かいフローライン2と冷たいリターンライン3の周囲を占める材料として、「地盤材料1」とは別にわざわざ「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」を設けた主旨は「地盤材料1」では十分な断熱ができないからであり、「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」が「断熱」の効果を発揮するよう、「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」の熱伝導係数を「地盤材料1」よりも小さくすることは当然のことである。また、引用文献1には「冷たいリターンラインの助けを借りて、ルートの領域の蒸気圧は、拡散によって、温かいフローラインの断熱材の効果的な乾燥が達成できる程度まで低下する。」(上記(2)ア.(オ)参照)との記載があるところ、引用発明の「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」を乾燥させることが意図されている。一般的に、湿った場合に比べ、乾燥させた場合の方が、砂は熱伝導係数が小さくなることが技術常識であることにかんがみれば、引用発明の「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」を乾燥させることで、その熱伝導係数は湿った場合にくらべて小さくなっている。したがって、引用発明において、「砂またはスラグ砂からなるバルク断熱材6」の熱伝導係数を、「地盤材料1」の熱伝導係数よりも小さくすることは、当業者が容易になし得た事項である。 ウ. 相違点3について 複数のパイプを敷設する際に、それらを平行に敷設することはごく普通に行われていることであり、引用発明において「地中埋設構造の垂直断面で見た場合、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とが垂直方向に並んで配置して」敷設するとき、そのように垂直方向に並んだ状態で、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とを互いに平行に敷設することは、当業者が適宜なし得る事項である。 そして、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とが垂直方向に並んだ状態で、それらを互いに平行に敷設した場合に、それらを水平断面で上方から見ると、“冷たいフローライン3が温かいフローライン2の下に隠れ、温かいフローライン2が見える”状態となる。逆に、もし温かいフローライン2と冷たいフローライン3とが平行でなければ、冷たいフローライン3がいずれかの場所で、温かいフローライン2からはみ出て見えることとなる。すなわち、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とが垂直方向に並んだ状態で、それらを互いに平行に敷設した場合に、それらを水平断面で上方から見ると、“冷たいフローライン3が温かいフローライン2の下に隠れ、温かいフローライン2が見える”状態となり、いずれの場所でも、冷たいフローライン3が温かいフローライン2の下に隠れ、温かいフローライン2が上に見えることをもって、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とが互いに平行に敷設されていることを確認できるといえる。 さらに、上記ア.で検討したとおり、引用発明も「トレンチ」を有する構造となっているといえるから、引用発明について水平断面を想定すると、その水平断面は、本件補正発明の「充填されたトレンチ の水平上面断面図」に相当するといえる。 そうすると、引用発明において、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とが垂直方向に並んだ状態で、温かいフローライン2と冷たいフローライン3とを互いに平行に敷設することで、上記相違点3に係る本件補正発明の「前記一対の導管の前記導管が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置され」るという構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 エ. 作用効果について 以上の相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ. 審判請求人(出願人)の主張 審判請求人は審判請求書の(3)(c)において、次のとおり主張している。 「ここで、この引用文献1に関しては、異なる熱伝導率を有する充填材料によってそれぞれ囲まれた高温および低温の導管は示されていないものと思料する。 この引用文献1において、熱導管が砂または他の断熱材料である充填材料(6)によって囲まれていることは明らかである。しかしながら、この点に関しては、低温導管が高温導管の下にそこから離れて配置され得ること以外には、低温導管については何も言及されていない。 また、この引用文献1の唯一の図からも、高温導管 (2) の周囲の充填材料(6)が低温導管(3)と接触していることが明らかである。 したがって、低温導管(3)は、高温導管(1)とは異なる熱伝導率を有する充填材料によって囲まれていない。 このように、この引用文献1(特に特許請求の範囲、明細書及び図面)では、前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されており、前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れていることについての記載および示唆すらされていない。」(以下、「ここで、この引用文献1に関しては、」~「充填材料によって囲まれていない。」までの主張を「前段の主張」といい、「このように」以降を、「後段の主張」という。) 前段の主張において、「引用文献1に関しては、異なる熱伝導率を有する充填材料によってそれぞれ囲まれた高温および低温の導管は示されていない」、「低温導管(3)は、高温導管(1)とは異なる熱伝導率を有する充填材料によって囲まれていない」と主張しているが、本件補正発明は、「前記一対の導管(3a、3b)は、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において粒子状の充填材料で囲まれている」こと、「第1の種類の粒子状の充填材料(4a)で充填された第1の部分(5a)であって、前記充填されたトレンチの前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている」こと、「前記一対の導管(3a、3b)の両方が前記第2の部分(5b)に囲まれ」ること(なお「第2の部分(5b)」は「第2の種類の粒子状の充填材料(4b)で充填された第2の部分(5b)」。)を特定しているものの、本件補正発明は、一対の導管のうち一方の導管を第1の種類の粒子状の充填材料で取り囲み、他方の導管を第2の種類の粒子状の充填材料で取り囲むことは特定していない。すなわち、前段の主張は本件補正後の請求項1の特定事項に基づかない主張であり、採用することはできない。 後段の主張のうち「このように、この引用文献1(特に特許請求の範囲、明細書及び図面)では、前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されて」いること「についての記載および示唆すらされていない」との主張については、上記ウ.で述べたとおりであり、後段の主張のうち「前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れていることについての記載および示唆すらされていない」との主張については、上記(3)カ.のとおりである。したがって、後段の主張も採用することはできない。 カ. 小括 上記ア.~オ.のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法だ第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和6年1月11日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年8月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、理由2(進歩性)の概要は、次のとおりである。 この出願の請求項1~7、9、13、15及び16に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に記載された事項に基づいて、この出願の請求項8~14及び17に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:西独国特許出願公開第3112175号明細書 引用文献2:特開昭49-21748号公報 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は、上記第2[理由]2.(2)の引用文献1と同じであり、引用文献1に記載された事項は、上記第2[理由]2.(2)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]2.で検討した本件補正発明から、「一対の導管(3a、3b)」に係る限定事項である、「前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されており、 前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている」という事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-000433

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