特許拒絶査定不服審判
2022-004611
計器取付部材、および計器の取付方法
- 審判番号
- 2022-004611
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-186438
- 請求日
- 2022年03月30日
- 審決日
- 2022年10月19日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】積水化学工業株式会社
- 【請求人代理人】西澤 和純
- 【請求人代理人】川越 雄一郎
- 【請求人代理人】大槻 真紀子
- 【請求人代理人】山口 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 松下 聡
- 審判官 丹治 和幸
- 分類
- P18 .121-Z (F16L) / P18 .575-Z (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-186438号「計器取付部材、および計器の取付方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月18日出願公開、特開2019- 60432〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 3月24日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 6月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月13日付け:拒絶理由通知書
令和 3年10月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月27日付け:拒絶査定
令和 4年 3月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年3月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年3月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管における周方向の一部に接続される樹脂製の基部と、
前記基部から突出し、内側が前記本管と連通可能な樹脂製の連通管と、
前記連通管の先端部の内側に嵌合されて前記連通管の先端部に固定され、前記連通管とは異なる材質で形成されたねじ部材と、を備え、
前記連通管および前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の径方向に沿って延び、
前記ねじ部材の先端部における、前記本管の外周面からの突出量は170mm以下であり、
前記基部において、前記本管の径方向の内側を向く内周面を、前記本管の外周面に当接させた状態で、前記基部に埋設された電熱線に通電させることで発熱させ、前記基部の内周面のうち、前記電熱線の周囲に位置する部分の樹脂、および前記本管の外周面表層を溶融させることで、前記基部と前記本管とが接続されることを特徴とする計器取付部材。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和3年10月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管における周方向の一部に接続される樹脂製の基部と、
前記基部から突出し、内側が前記本管と連通可能な樹脂製の連通管と、
前記連通管の先端部に固定され、前記連通管とは異なる材質で形成されたねじ部材と、を備え、
前記基部において、前記本管の径方向の内側を向く内周面を、前記本管の外周面に当接させた状態で、前記基部に埋設された電熱線に通電させることで発熱させ、前記基部の内周面のうち、前記電熱線の周囲に位置する部分の樹脂、および前記本管の外周面表層を溶融させることで、前記基部と前記本管とが接続されることを特徴とする計器取付部材。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「ねじ部材」に対して「前記連通管の先端部の内側に嵌合され」ることを限定し、「連通管」及び「ねじ部材」に対して「前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の径方向に沿って延び」ることを限定し、さらに、「ねじ部材」に対して「先端部における、前記本管の外周面からの突出量は170mm以下であ」ることを限定する補正であって、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載等
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である特開2002-228073号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「計測機器接続用継手」に関して、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。また、「・・・」は省略を表す。以下同様。)。
(ア)引用文献2の記載事項
1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管路に計測機器を設置する際に好適に使用される計測機器接続用継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、熱可塑性樹脂管からなる管路に、圧力計、温度計、サンプル用バルブ等の計測機器を設置する場合、例えば、図5(a)に示すような熱可塑性樹脂製の水栓チーズaを用いることがある。この水栓チーズaは、両端部にスリーブ型の主管受口b,cを有し、中央部に計測機器を螺合接続できる枝管受口dを有するものである。
【0003】
・・・
【0004】又、例えば、図6(a)に示すような熱可塑性樹脂製の水栓ソケットfを用いることがある。この水栓ソケットfは、一端部に計測機器を螺合接続できる受口gを有するものである。・・・」
1b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の如き従来の問題点を解消し、管路を切断することなく、管路に、管路の管軸と傾斜する管軸を有し、計測機器を螺合接続可能な受口を容易に形成することができる計測機器接続用継手を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1に記載の発明(本発明1)は、熱可塑性樹脂製であって、管路を形成する熱可塑性樹脂管の外周面に沿う鞍状をなし、計測口を有するサドル部と、該サドル部の計測口の周壁より外方に向けて、前記管路の管軸と傾斜する管軸を有し、計測機器を螺合接続可能な受口を備えた計測機器接続部が一体的に設けられている計測機器接続用継手である。
【0007】本願の請求項2に記載の発明(本発明2)は、前記サドル部の内周壁部に電熱線が埋設されている本発明1の計測機器接続用継手である。」
1c)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の計測機器接続用継手の一例の説明図であり、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。図1に示すように、この計測機器接続用継手1は、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂製であって、サドル部11と計測機器接続部12とが一体的に設けられたものからなる。
【0012】サドル部11は、管路を形成する熱可塑性樹脂管2の外周面に沿う鞍状をなしており、略中央部に計測口111を有している。サドル部11には、その内周壁部に電熱線112が埋設されており、電熱線112に通電することにより、その内周部を熱可塑性樹脂管2の計測機器を接続する部分の外周部に溶融接合できるようにされている。113は電熱線112に通電するためのターミナルである。」
1d)「【0013】計測機器接続部12は、サドル部11の計測口111の周壁より外方に向けて一体的に設けられている。計測機器接続部12には、管路の管軸に対して、角度θにて傾斜する管軸を有し、内周面に図示しない計測機器を螺合接続できる雌ねじを有する受口121が設けられている。尚、受口121の管軸の方向は、管路の管軸と同一平面を形成できるような方向とされている。受口121の管路の管軸に対する傾斜角度θとしては、例えば、60°,45°,30°等が挙げられる。」
1e)「【0014】次に、図1に示す計測機器接続用継手1の使用状態の一例を、図2を参照して説明する。まず、熱可塑性樹脂管2の計測機器を接続すべき頂部に、削孔機を用いて管壁に貫通孔21をあける。尚、この貫通孔21は、計測機器接続部12の管軸の傾斜方向に一致するようにあける。次に、熱可塑性樹脂管2上に計測機器接続用継手1を載置する。そのとき、サドル部11の計測孔21を貫通孔21に対して一致させるように、サドル部11を熱可塑性樹脂管2の貫通孔21を設けた頂部の周囲の外周面上に跨がらせるようにする。
【0015】そして、計測機器接続用継手1のターミナル113より電熱線112に通電することにより、サドル部11の内周壁部を、熱可塑性樹脂管2の貫通孔21の周囲の外周部に溶融接合するようにして、熱可塑性樹脂管2に計測機器接続用継手1を接続する作業を終了する。この接続部では、両者の樹脂が溶融接合されて一体的に接合されるので、その接合強度が強くて、破損するおそれがない。最後に、この計測機器接続用継手1の計測機器螺合接続部12の受口121に、適宜シール材を介して、計測機器3を螺合するように接続し、熱可塑性樹脂管2の所定部分への計測機器3を設ける作業を終了する。」
1f)図1
[図:0001392938000001.jpg]
1g)図2
[図:0001392938000002.jpg]
1h)図5
[図:0001392938000003.jpg]
1i)図6
[図:0001392938000004.jpg]
(イ)上記(ア)から把握される技術事項
1j)熱可塑性樹脂管2の管路は、上記(ア)1a)において「水栓チーズa」、「水栓ソケットf」の用語が用いられていることから、水などの流体が流れるものと解される。
1k)計測機器接続部12は、熱可塑性樹脂製であって、サドル部11から外方に向けて一体的に設けられ、管路の管軸に対して、角度θにて傾斜する管軸を有する(上記1c)、1d)、1f)、及び1g))。
1l)計測機器を螺合接続可能な受口121は、サドル部11の計測口111の周壁より外方に向けて設けられている(上記1b)、1d)、1f)、及び1g))。
1m)サドル部11には、その内周壁部に電熱線112が埋設されており、電熱線112に通電することにより、サドル部11の内周部を、熱可塑性樹脂管2の外周部に溶融接合するようにして、熱可塑性樹脂管2に計測機器接続用継手1を接続する(上記1c)、及び1e))。
(ウ)引用発明
上記(ア)、(イ)の記載を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「水などの流体が流れる熱可塑性樹脂管2の管路の外周面に沿う鞍状をなす熱可塑性樹脂製のサドル部11と、
サドル部11から外方に向けて一体的に設けられた熱可塑性樹脂製の計測機器接続部12と、
計測機器接続部12の先端部に設けられ、内周面に計測機器を螺合接続できる雌ねじを有する受口121と、を備え、
受口121の管路の管軸に対する傾斜角度θは、60°、45°、30°等であり、
計測機器を螺合接続可能な受口121は、サドル部11の計測口111の周壁より外方に向けて設けられており、
サドル部11には、その内周壁部に電熱線112が埋設されており、電熱線112に通電することにより、サドル部11の内周部を、熱可塑性樹脂管2の外周部に溶融接合するようにして、熱可塑性樹脂管2に接続する計測機器接続用継手1。」
(3)周知例の記載等
ア 周知例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である実願昭57-18008号(実開昭58-119686号)のマイクロフィルム(以下、「周知例1」という。)には、「メタルねじ継手付合成樹脂製長尺パイプ」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(ア)周知例1の記載
2a)第2図は本考案の長尺パイプを示す断面図で長尺パイプの受口側拡径部A内面に受口用メタル雌ねじ2を挿設すると共に、挿口側B外周面に挿口用メタル雄ねじ2aを被挿している。そして雌ねじ2及び雄ねじ2aには複数条の凹凸環18が設けられ受口部Aの樹脂材と雌ねじ2並びに挿口部Bの樹脂材と雄ねじ2aの夫々の嵌合一体性を高めている。従つて長尺管14に前述した機器類のねじ部を接続するに際しては当該受口部Aにねじ部を直接螺合することができるので、従来の様なソケットを必要とせず、その接合作業を簡略化することができる。(明細書第3ページ第17行ないし第4ページ第8行)
2b)
[図:0001392938000005.jpg]
(イ)周知例1記載事項
(ア)の記載を総合すると、周知例1には、「合成樹脂製長尺パイプの受口内面に機器類のねじ部を螺合するための受口用メタルねじ2(金属の雌ねじ)を挿設すること。」(以下、「周知例1記載事項」という。)が記載されている。
イ 周知例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された中国特許出願公開1880826号明細書(以下、「周知例2」という。)には、「シラン架橋ポリエチレン管の無架橋熱可塑性チューブ端フランジおよび接続パイプネット」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(ア)周知例2の記載
3a)
[図:0001392938000006.jpg]
(明細書第9ページ第7ないし10行)
(当審訳:実施例6
図6は本発明実施例6の構造説明図である。本実施例6は基本的に実施例3と同じであり、異なった点はシラン架橋ポリエチレン配管外面において保温層8があるとともに、プラスチックフランジ2中に連結ねじを含む金属インサート9があることによって機器あるいは配管機械との接続ができることである。)
3b)図6
[図:0001392938000007.jpg]
(イ)周知例2記載事項
(ア)の記載を総合すると、周知例2には「配管におけるプラスチックフランジ2の端部に雌ねじを含む金属インサート9を設けること。」(以下、「周知例2記載事項」という。)が記載されている。
ウ 周知例3
当審で新たに引用した、本願の出願前に頒布された特開2012-137147号公報(以下、「周知例3」という。)には、「分岐サドル継手、およびインサート部材」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(ア)周知例3の記載
4a)「【0030】
図2および図3に示すように、サドル12は、合成樹脂からなり、この実施例では、ポリエチレンによって形成されている。サドル12は、本管100の外径曲率と同じ内径曲率を有する板状体であり、その軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば10mmである。
【0031】 ただし、この実施例における「軸方向」とは、分岐サドル継手10を本管100に取り付けたときの本管100の管軸方向を意味し、「周方向」とは、本管100の周方向を意味する。
【0032】
図4および図5に示すように、サドル12の中央部には、平面視略真円形の分岐孔14が形成される。そして、分岐孔14の周縁部には、分岐孔14からサドル12の径方向外側(つまり、図4でいう上側)に向けて延びる短管状の分水栓接続口16が形成される。
【0033】
分水栓接続口16の上部には、インサート部材18が一体的に埋め込まれている。
【0034】
図6および図7に示すように、インサート部材18は、砲金等の金属からなる金属体(本体)20を含む。金属体20は、図8に示すように、旋盤等による切削加工によって筒状に形成され、その軸方向の長さは、たとえば30mmである。金属体20は、上下に連続する本体上部22と本体下部24とからなり、本体下部24が、本体上部22よりも小径な形状になるように形成されている。本体上部22の外径は、たとえば60-70mmであり、本体下部24の外径は、たとえば40-50mmである。」
4b)
[図:0001392938000008.jpg]
(イ)周知例3記載事項
(ア)の記載を総合すると、周知例3には、「合成樹脂製の分岐サドル12と一体となった分水栓接続口16に雌ネジが形成された金属製のインサート部材18を設けること。」(以下、「周知例3記載事項1」という。)が記載されているとともに、
「分岐サドル継手10の径方向外側に向けて短管状の分水栓接続口16が形成されること。」(以下、「周知例3記載事項2」という。)が記載されている。
エ 周知例4
当審で新たに引用した、本願の出願前に頒布された特開2015-215044号公報(以下、「周知例4」という。)には、「分岐サドル継手」に関して、図面とともに以下の記載がある。
(ア)周知例4の記載
5a)「【0024】
以下、図1-図3を適宜参照して、分岐サドル継手10の全体構成について説明する。図1-図3に示すように、分岐サドル継手10は、本管100と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成される、サドル部12、分岐部本体14および分岐管接続部16などを備える。この実施例では、サドル部12、分岐部本体14および分岐管接続部16のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。
【0025】
サドル部12は、本管100の外径曲率とほぼ同じ内径曲率を有する半円筒状の板状体であり、その中央部には、平面視略真円形の分岐孔18が形成される。サドル部12の内径は、たとえば85mmである。また、サドル部12の軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば8mmである。
【0026】
サドル部12の内周面側、すなわち本管100との接合面側には、分岐孔18を中心にして渦巻き状または葛折り状などの任意の形状に配置された電熱線20が埋設される。電熱線20の両端部は、サドル部12の表面から突出して形成される電源接続端子22に接続されており、この電源接続端子22を電源に接続して電熱線20に電流を流すことによって、サドル部12および本管100の接合面の樹脂が加熱溶融される。
【0027】
また、分岐孔18の周縁部には、サドル部12の径方向外側(上方)に向かって立ち上がる短管状の分岐部本体14が形成される。分岐部本体14の軸方向長さは、たとえば110mmであり、その内径は、たとえば30mmである。分岐部本体14の軸方向における略中央部には、側方に突出する短管状の分岐管接続部16が形成される。この分岐管接続部16には、継手などを介して分岐管102が接続される。分岐管接続部16の内径は、たとえば22mmである。」
5b)
[図:0001392938000009.jpg]
(イ)周知例4記載事項
(ア)の記載を総合すると、周知例4には、「分岐サドル継手10のサドル部12の径方向外側(上方)に向かって立ち上がる短管状の分岐部本体14が形成されること。」(以下、「周知例4記載事項1」という。)が記載されているとともに、
「分岐サドル継手の分岐部本体14の軸方向長さは、110mmであること。」(以下、「周知例4記載事項2」という。)が記載されている。
(4)周知技術について
ア 周知技術1
上記(3)において示した周知例1記載事項、周知例2記載事項、及び周知例3記載事項1から、「流体が流れる樹脂製の配管や継手における接続部において、接続部の強度を補うために、必要に応じて強度を有する金属などの異なる材質で当該接続部のねじ部材を形成すること」は、周知の技術(以下、「周知技術1」という。)であると認められる。
イ 周知技術2
上記(3)において示した「周知例3記載事項2」及び「周知例4記載事項1」から、「分岐サドル継手において、分岐部分を本管の径方向に沿って延ばすこと」は、周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であると認められる。
(5)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本件補正発明における「冷温水」は、冷水か温水かという温度を問わない「水」を意味すると解されるから、引用発明の「水などの流体」は、本件補正発明における「冷温水」は、実質的に、本件補正発明の「冷温水」に相当する。
そうすると、引用発明における「水などの流体が流れる熱可塑性樹脂管2の管路」は、本件補正発明の「冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管」に相当する。
そして、引用発明の「サドル部11」は、本件補正発明の「基部」に相当し、以下同様に、「外周面に沿う鞍状をなす」ことは、「周方向の一部に接続される」ことに、「熱可塑性樹脂製」は「樹脂製」に、それぞれ相当するから、引用発明の「水などの流体が流れる熱可塑性樹脂管2の管路の外周面に沿う鞍状をなす熱可塑性樹脂製のサドル部11」は、本件補正発明における「冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管における周方向の一部に接続される樹脂製の基部」に相当する。
イ 引用発明における「サドル部11から外方に向けて一体的に設けられた熱可塑性樹脂製の計測機器接続部12」は、その内側が引用発明の管路と連通可能であることが明らかであり、「計測機器接続部12」が「連通管」に相当するものであるから、本件補正発明における「前記基部から突出し、内側が前記本管と連通可能な樹脂製の連通管」に相当する。
ウ 引用発明における「計測機器接続部12の先端部に設けられ、内周面に計測機器を螺合接続できる雌ねじを有する受口121」は、「雌ねじを有する受口121」が「ねじ部材」に相当するものであり、本件補正発明における「前記連通管の先端部の内側に嵌合されて前記連通管の先端部に固定され、前記連通管とは異なる材質で形成されたねじ部材」とは、「前記連通管の先端部の内側に形成されたねじ部材」であるという限りにおいて一致するものである。
エ 引用発明の「受口121の管路の管軸に対する傾斜角度θは、60°、45°、30°等であり」は、本件補正発明における「前記連通管および前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の径方向に沿って延び」と、「前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の所定の方向に沿って延び」ているという限りにおいて一致するものである。
オ 引用発明の「計測機器を螺合接続可能な受口121は、サドル部11の計測口111の周壁より外方に向けて設けられており」は、「計測機器を螺合接続可能な受口121」の先端部が「ねじ部材の先端部」といえるものであるから、本件補正発明の「前記ねじ部材の先端部における、前記本管の外周面からの突出量は170mm以下であり」と、「前記ねじ部材の先端部は前記本管の外周面から所定量突出し」ているという限りにおいて一致するものである。
カ 引用発明における「電熱線112」は、本件補正発明における「電熱線」に相当し、引用発明における「計測機器接続用継手1」は、本件補正発明における「計器取付部材」に相当する。
そして、引用発明における「サドル部11には、その内周壁部に電熱線112が埋設されており、電熱線112に通電することにより、サドル部11の内周部を、熱可塑性樹脂管2の外周部に溶融接合するようにして、熱可塑性樹脂管2に接続する計測機器接続用継手1」は、サドル部11の内周部を、熱可塑性樹脂管2の外周部に溶融接合するため、サドル部11の内周部の内側を向く部分が熱可塑性樹脂管2の外周部に当接すること、及び電熱線112の周囲に位置する部位の樹脂と、熱可塑性樹脂管2の外周面の表層が溶融することによりサドル部11と熱可塑性樹脂管2とが接続されることが上記(2)ア(ア)1e)、1f)及び1g)の記載からみて明らかであるから、本件補正発明における「前記基部において、前記本管の径方向の内側を向く内周面を、前記本管の外周面に当接させた状態で、前記基部に埋設された電熱線に通電させることで発熱させ、前記基部の内周面のうち、前記電熱線の周囲に位置する部分の樹脂、および前記本管の外周面表層を溶融させることで、前記基部と前記本管とが接続される計器取付部材」に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管における周方向の一部に接続される樹脂製の基部と、
前記基部から突出し、内側が前記本管と連通可能な樹脂製の連通管と、
前記連通管の先端部の内側に形成されたねじ部材と、を備え、
前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の所定の方向に沿って延び、
前記ねじ部材の先端部は前記本管の外周面から所定量突出し、
前記基部において、前記本管の径方向の内側を向く内周面を、前記本管の外周面に当接させた状態で、前記基部に埋設された電熱線に通電させることで発熱させ、前記基部の内周面のうち、前記電熱線の周囲に位置する部分の樹脂、および前記本管の外周面表層を溶融させることで、前記基部と前記本管とが接続される計器取付部材。」
[相違点1]
「連通管の先端部の内側に形成されたねじ部材」について、本件補正発明においては、「前記連通管の先端部の内側に嵌合されて前記連通管の先端部に固定され、前記連通管とは異なる材質で形成されたねじ部材」であるのに対して、引用発明においては、「計測機器接続部12の先端部に設けられ、内周面に計測機器を螺合接続できる雌ねじを有する受口121」であり、雌ねじを有する受口121が、計測機器接続部12とは異なる材質で形成されているか、及び計測機器接続部12の先端部の内側に嵌合されて固定されるものか明らかでない点。
[相違点2]
「前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の所定の方向に沿って延び」ている点について、本件補正発明においては、「前記連通管および前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の径方向に沿って延び」ているのに対し、引用発明においては、「受口121の管路の管軸に対する傾斜角度θは、60°、45°、30°等であ」るとともに、「計測機器接続部12」が「熱可塑性樹脂管2」の径方向に沿って延びるものであるか不明である点。
[相違点3]
「前記ねじ部材の先端部は前記本管の外周面から所定量突出し」ている点について、本件補正発明においては、「前記ねじ部材の先端部における、前記本管の外周面からの突出量は170mm以下であ」るのに対し、引用発明においては、「計測機器を螺合接続可能な受口121は、サドル部11の計測口111の周壁より外方に向けて設けられて」いるものの、その突出量については明らかでない点。
以下、相違点について検討する。
[相違点1について]
流体が流れる樹脂製の配管や継手における接続部において、接続部の強度を補うために、必要に応じて強度を有する金属などの異なる材質で当該接続部のねじ部材を形成することは周知技術1であり、別部材を取り付けるためのねじを設けるにあたり、強度や耐久性を考慮することは一般的な課題であるから、引用発明における「受口121」において雌ねじを形成するにあたり、前記の一般的課題を考慮して周知技術1を適用し、金属などの異なる材質のねじ部材を計測機器接続部12の先端部の内側に嵌合して設けることにより、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
[相違点2について]
「前記ねじ部材は、前記基部が前記本管に接続された状態で、前記本管の所定の方向に沿って延び」ている点について、計器取付部材の連通管およびねじ部材は、その基部が本管に接続された状態で、本管に対してどのような方向に沿って延ばすかは、計器の測定対象(水、空気、ガス、油など)、物理量(圧力、温度など)、設置する際の周辺の環境などに応じて適宜決定する設計的事項というべきであり、計器取付部材の連通管およびねじ部材を本管の径方向に沿って設けた例や傾斜して設けた例が、引用文献2の上記(2)ア(ア)1a)、1h)図5、及び1i)図6に記載されていることからも上記設計的事項であることが裏付けられる。
さらに、本管の流体を分岐して計器で測定するか、分岐して流すかの違いはあるものの、本件補正発明の計器取付部材と基本的構造が類似する分岐サドル継手において、分岐部分を本管の径方向に沿って延ばすことは、周知技術2でもあるから、引用発明において、「計測機器接続部12」及び「受口121」を、上記周知技術2を参照しつつ、「熱可塑性樹脂管2」の径方向に沿って延びるようにすることにより、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
[相違点3について]
相違点3について検討するに、上記「前記ねじ部材の先端部は前記本管の外周面から所定量突出し」ている点について、ねじ部材の先端部おける本管の外周面からの突出量をどの程度にするかは、本管の外径や計器取付部材の形状、構造などに基いて当業者が決定する設計的事項であり、本件補正発明において、引用発明と異なる特殊な形状や構造を工夫したものでもない。
この点について、本願の明細書の段落【0034】及び【0035】には、作用効果の検証結果が示されているが、実施例1及び実施例2は、本管の外径が50mm~200mmについての突出量Lを測定し、その結果が105mm~169mmとなったものであり、確かに突出量Lは170mm以下になっているものの、本管の外径が50mm~200mmの範囲での結果に過ぎず、普遍的なものといえるものではない。さらに、同段落【0039】には「上記各実施形態においては、ねじ部材12の先端部における、本管15の外周面からの突出量Lが170mm以下である構成を示したが、このような態様に限られない。すなわち、雌ねじ部の先端部における前記突出量は170mmより大きくてもよい。」との記載があり、本件補正発明には、本管の外径は特定されていないことからも、上記の170mmが普遍的に得られる特有の数値であるとはいえない。
また、本件補正発明の計器取付部材と基本的構造が類似する分岐サドル継手において、分岐部本体14の軸方向長さが110mmであることが上記周知例4記載事項2により例示されていることから、本件補正発明が上記突出量を170mm以下としたことが、従来見られなかったような寸法を実現したものではないといえる。
したがって、引用発明に適宜設計変更を加えて上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明は、全体としてみても引用発明及び周知技術1、2から予想される以上の格別の効果を奏するものではない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
1 本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和3年10月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
請求項1について、原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
・請求項1に対して引用文献1~4
記
<引用文献一覧>
2.特開2002-228073号公報
5.実願昭57-18008号(実開昭58-119686号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
6.中国特許出願公開第1880826号明細書(周知技術を示す文献)
7.中国実用新案第201386864号明細書(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項、及び周知技術1の周知例として提示する文献である引用文献5、6及び特開2012-137147号公報の記載内容は、前記第2 2(2)及び(3)アないしウに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 本願発明における「冷温水」は、冷水か温水かという温度を問わない「水」を意味すると解されるから、引用発明の「水などの流体」は、本願発明における「冷温水」は、実質的に、本件補正発明の「冷温水」に相当する。
そうすると、引用発明における「水などの流体が流れる熱可塑性樹脂管2の管路」は、本願発明の「冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管」に相当する。
そして、引用発明の「サドル部11」は、本願発明の「基部」に相当し、以下同様に、「外周面に沿う鞍状をなす」ことは、「周方向の一部に接続される」ことに、「熱可塑性樹脂製」は「樹脂製」に、それぞれ相当するから、引用発明の「水などの流体が流れる熱可塑性樹脂管2の管路の外周面に沿う鞍状をなす熱可塑性樹脂製のサドル部11」は、本願発明における「冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管における周方向の一部に接続される樹脂製の基部」に相当する。
イ 引用発明における「サドル部11から外方に向けて一体的に設けられた熱可塑性樹脂製の計測機器接続部12」は、その内側が引用発明の管路と連通可能であることが明らかであり、「計測機器接続部12」が「連通管」に相当するものであるから、本願発明における「前記基部から突出し、内側が前記本管と連通可能な樹脂製の連通管」に相当する。
ウ 引用発明における「計測機器接続部12の先端部に設けられ、内周面に計測機器を螺合接続できる雌ねじを有する受口121」は、「雌ねじを有する受口121」が「ねじ部材」に相当するものであり、本願発明における「前記連通管の先端部に固定され、前記連通管とは異なる材質で形成されたねじ部材」とは、「前記連通管の先端部に形成されたねじ部材」であるという限りにおいて一致するものである。
エ 引用発明における「電熱線112」は、本願発明における「電熱線」に相当し、引用発明における「計測機器接続用継手1」は、本願発明における「計器取付部材」に相当する。
そして、引用発明における「サドル部11には、その内周壁部に電熱線112が埋設されており、電熱線112に通電することにより、サドル部11の内周部を、熱可塑性樹脂管2の外周部に溶融接合するようにして、熱可塑性樹脂管2に接続する計測機器接続用継手1」は、サドル部11の内周部を、熱可塑性樹脂管2の外周部に溶融接合するため、サドル部11の内周部の内側を向く部分が熱可塑性樹脂管2の外周部に当接すること、及び電熱線112の周囲に位置する部位の樹脂と、熱可塑性樹脂管2の外周面の表層が溶融することによりサドル部11と熱可塑性樹脂管2とが接続されることが上記(2)ア(ア)1e)、1f)及び1g)の記載からみて明らかであるから、本願発明における「前記基部において、前記本管の径方向の内側を向く内周面を、前記本管の外周面に当接させた状態で、前記基部に埋設された電熱線に通電させることで発熱させ、前記基部の内周面のうち、前記電熱線の周囲に位置する部分の樹脂、および前記本管の外周面表層を溶融させることで、前記基部と前記本管とが接続される計器取付部材」に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「冷温水配管を構成し、かつ内側に液体が流れる樹脂製の本管における周方向の一部に接続される樹脂製の基部と、
前記基部から突出し、内側が前記本管と連通可能な樹脂製の連通管と、
前記連通管の先端部に形成されたねじ部材と、を備え、
前記基部において、前記本管の径方向の内側を向く内周面を、前記本管の外周面に当接させた状態で、前記基部に埋設された電熱線に通電させることで発熱させ、前記基部の内周面のうち、前記電熱線の周囲に位置する部分の樹脂、および前記本管の外周面表層を溶融させることで、前記基部と前記本管とが接続されることを特徴とする計器取付部材。」
[相違点4]
「前記連通管の先端部に形成されたねじ部材」に関して、本願発明においては、「前記連通管の先端部に固定され、前記連通管とは異なる材質で形成されたねじ部材」であるのに対して、引用発明においては、「計測機器接続部12の先端部に設けられ、内周面に計測機器を螺合接続できる雌ねじを有する受口121」であって、雌ねじを有する受口121が、計測機器接続部12とは異なる材質で形成されているか不明である点で相違(以下、「相違点4」という。)する。
上記相違点4について検討すると、上記相違点1についての検討と同様、流体が流れる樹脂製の配管や継手における接続部において、接続部の強度を補うために、必要に応じて強度を有する金属などの異なる材質で当該接続部のねじ部材を形成することは周知技術1であり、別部材を取り付けるためのねじを設けるにあたり、強度や耐久性を考慮することは一般的な課題であるから、引用発明における「受口121」において雌ねじを形成するにあたり、前記の一般的課題を考慮して周知技術1を適用し、金属などの異なる材質のねじ部材を計測機器接続部12の先端部に設けることにより、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004611