特許拒絶査定不服審判
2022-015003
フランジ継手及び該フランジ継手を備えた配管材
- 審判番号
- 2022-015003
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-164849
- 請求日
- 2022年09月01日
- 審決日
- 2024年01月05日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ユーテック
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-WZ (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-164849「フランジ継手及び該フランジ継手を備えた配管材」拒絶査定不服審判事件〔平成31年3月7日出願公開、特開2019-35499〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月10日の出願であって、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。
令和 3年 4月26日付け:拒絶理由通知書
同 年 9月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同 年11月26日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 5月27日付け:拒絶査定
同 年 9月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 6月15日付け:拒絶理由通知書
同 年 8月 3日 :意見書、手続補正書(以下、「本件補正」という。)の提出
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
鉄系材料からなる管部材と、前記管部材の端部に結合された鉄系材料からなるフランジ継手とを備えている、油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材であって、
前記管部材は、横断面が円形の外周面及び内周面を有するように形成され、かつ前記フランジ継手と結合される部分では直管状に形成され、
前記フランジ継手は、互いに背向する第1フランジ面及び第2フランジ面と、前記第1フランジ面に開口する一方該フランジ継手の厚み方向に伸びる円柱形の大径孔と、前記第2フランジ面に開口する一方該フランジ継手の厚み方向に伸びて前記大径孔と連通する前記大径孔より小径の円柱形の小径孔とを有し、前記大径孔の内径は前記管部材の外径とほぼ同一であり、前記小径孔の内径は前記管部材の内径と同一であり、前記小径孔の孔長は前記大径孔の孔長より短く、
前記小径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がり前記大径孔の周面に達する円錐台状の小径孔面取り部が形成され、
前記大径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がり前記第1フランジ面に開口する円錐台状の大径孔面取り部が形成され、これにより前記管部材の外周面と前記大径孔面取り部の間に、前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され、
前記管部材のフランジ継手側の端部は、該管部材の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面を有し、前記管部材は前記大径孔に挿入されて、前記環状端面が前記小径孔面取り部の第1フランジ面側の端部と当接し、これにより前記環状端面と前記小径孔面取り部の間に前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され、
前記小径孔面取り部と前記環状端面とが溶接され、
前記大径孔面取り部と前記管部材の外周部とが溶接されていることを特徴とする配管材。」
第3 拒絶の理由
令和5年6月15日付けの拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:韓国登録実用新案第20-0429819号公報
引用文献2:特開平7-103374号公報
引用文献3:実願昭54-177544号(実開昭56-93587号)のマイクロフィルム
第4 引用文献
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載等
引用文献1には、以下の記載、図面及び認定事項がある。なお、翻訳文は、当審で作成した。(下線は、参考のために当審が付した。以下同様。)
ア 「
[図:0001407231000001.jpg]
」(第2ページ第34行~第36行)
<翻訳文>
「一般的に水道やガスの配管工事では、施工設計によって様々な長さのパイプを切断・連結して施工することになり、このとき、パイプの端部にパイプ接続口を結合し、このパイプ接続口をパッキンのような気密部材を具備して相互結合することにより、パイプを接続することになる。」
イ 「
[図:0001407231000002.jpg]
」(第3ページ第15行~第18行)
<翻訳文>
「本考案は、上記のような従来技術の問題点を解決するためのものであり、その目的は、パイプの挿入及び水平維持が容易で、一定かつ忠実な溶接が行われるようにし、パイプが一定深さだけ挿入されるようにし、正確な長さのパイプが施工されるようにするとともに、パイプとパイプ接続口の内径を同じにし、内部を移動する流体が円滑に移動できるようにするパイプ接続口を提供することにある。」
ウ 「
[図:0001407231000003.jpg]
[図:0001407231000004.jpg]
」(第3ページ第41行~第4ページ第12行)
<翻訳文>
「本考案によるパイプ接続口(100)は、本体(110)の中央に形成された挿入口(120)及び前記挿入口(120)の外側に多数貫通された結合孔(111)を含む。
前記本体(110)は金属材で構成され、好ましくは前記パイプ(1)と同じ材質で構成される。
上記挿入口(120)は、上記パイプ(1)が挿入されて溶接結合されるが、上記パイプ(1)が容易に挿入されるように案内する案内部(121)と、挿入された上記パイプ(1)が安定的に安着するようにする安着端(122)と、上記パイプ(1)の内径と上記挿入口(120)の内径が同一に溶接されるように傾斜面(123)を形成してできた内溶接部(124)及び上記パイプ(1)が忠実で一定の溶接になるようにする外溶接部(125)を含む構成である。
前記案内部(121)は、前記挿入口(120)の外側から内側に内径が小さくなるように所定の勾配を持って挿入される前記パイプ(1)が、作業者の特別な努力がなくても上記装置本体(110)の中央に挿入されるようにする。
上記安着端(122)は、上記案内部(121)を通して挿入される上記パイプ(1)が上記本体(110)に垂直に挿入されるようにし、上記パイプ(1)が一定の深さまでしか挿入されないようにしたもので、上記案内部(121)の前方を上記挿入口(120)の中心と水平になるように延長し、先端に端を形成するが、上記パイプ(1)の内径と上記挿入口(120)の内径が同じになるようにする。
上記傾斜面(123)は、上記安着端(122)の前方に形成され、上記安着端(122)の一部を面取りすることで構成される。
上記内溶接部(124)は、上記傾斜面(123)によって形成された空間、すなわち、挿入される上記パイプ(1)の端部と上記傾斜面(123)の間に溶接が行われるようにしたもので、溶接が完了しても上記挿入口(120)と上記パイプ(1)が同じ内径を持つようにする。
上記外溶接部(125)は、上記案内部(121)の外側端部と上記パイプ(1)の間に形成される空間に溶接が行われるようにした構成である。」
エ 「
[図:0001407231000005.jpg]
」(図2)
オ 「
[図:0001407231000006.jpg]
」(図3)
カ 「
[図:0001407231000007.jpg]
」(図4)
キ 上記イ及びウから、引用文献1には、金属材で構成されたパイプ(1)と、パイプ(1)と同じ材質で構成されてパイプ(1)の端部に溶接されたパイプ接続口(100)とを備えている、内部を移動する流体が円滑に移動できるようにするパイプ接続口(100)とパイプ(1)との構造体が記載されているといえる。
ク 上記エから、パイプ(1)は、横断面が円形の外周面及び内周面を有するように形成されることが看取され、上記エ~カから、パイプ(1)は、パイプ接続口(100)と溶接される部分では直管状に形成されることが看取される。
ケ 上記エ~カから、パイプ接続口(100)は、パイプ(1)を挿入する側の面(以下「第1の面」という。)と、第1の面と反対側の面(以下「第2の面」という。)とを有し、第1の面と第2の面とが互いに背向することが看取される。
コ 上記エ~カから、パイプ接続口(100)は、挿入口(120)のパイプ(1)を挿入する孔(以下「第1の孔」という。)と、挿入口(120)の第1の孔と連通する第1の孔より小径の孔(以下「第2の孔」という。)とを有することが看取される。
そして、上記ウの「上記パイプ(1)の内径と上記挿入口(120)の内径が同一に溶接される」こと及び上記エ~カから、第1の孔は、第1の面に開口する一方パイプ接続口(100)の厚み方向に伸びる円柱形の孔であり、第2の孔は、第2の面に開口する一方パイプ接続口(100)の厚み方向に伸びる円柱形の孔であり、第1の孔の内径はパイプ(1)の外径とほぼ同一であり、第2の孔の内径はパイプ(1)の内径と同一であることも把握される。
サ 上記オから、第2の孔の第1の面側の端部に第1の面側に向かって広がり安着端(122)に達する円錐台状の傾斜面(123)が形成されることが看取される。
シ 上記ウの「上記外溶接部(125)は、上記案内部(121)の外側端部と上記パイプ(1)の間に形成される空間に溶接が行われるようにした」こと及び上記エ~カから、第1の孔の第1の面側の端部に第1の面側に向かって広がり第1の面に開口する円錐台状の案内部(121)が形成され、これによりパイプ(1)の外周面と案内部(121)の間に、第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成されることが把握される。
ス 上記ウの「上記パイプ(1)の内径と上記挿入口(120)の内径が同一に溶接される」こと、上記ウの「上記内溶接部(124)は、上記傾斜面(123)によって形成された空間、すなわち、挿入される上記パイプ(1)の端部と上記傾斜面(123)の間に溶接が行われるようにした」こと及び上記エ~カから、パイプ(1)のパイプ接続口(100)側の端部は、パイプ(1)の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面を有し、パイプ(1)は第1の孔に挿入されて、環状端面が傾斜面(123)の第1の面側の端部と当接し、これにより環状端面と傾斜面(123)の間に第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成されることが把握される。
(2) 引用発明
上記(1)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「金属材で構成されたパイプ(1)と、パイプ(1)と同じ材質で構成されてパイプ(1)の端部に溶接されたパイプ接続口(100)とを備えている、内部を移動する流体が円滑に移動できるようにするパイプ接続口(100)とパイプ(1)との構造体であって、
パイプ(1)は、横断面が円形の外周面及び内周面を有するように形成され、かつパイプ接続口(100)と溶接される部分では直管状に形成され、
パイプ接続口(100)は、互いに背向する第1の面及び第2の面と、第1の面に開口する一方パイプ接続口(100)の厚み方向に伸びる円柱形の第1の孔と、第2の面に開口する一方パイプ接続口(100)の厚み方向に伸びて第1の孔と連通する第1の孔より小径の円柱形の第2の孔とを有し、第1の孔の内径はパイプ(1)の外径とほぼ同一であり、第2の孔の内径はパイプ(1)の内径と同一であり、
第2の孔の第1の面側の端部に第1の面側に向かって広がり安着端(122)に達する円錐台状の傾斜面(123)が形成され、
第1の孔の第1の面側の端部に第1の面側に向かって広がり第1の面に開口する円錐台状の案内部(121)が形成され、これによりパイプ(1)の外周面と案内部(121)の間に、第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成され、
パイプ(1)のパイプ接続口(100)側の端部は、パイプ(1)の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面を有し、パイプ(1)は第1の孔に挿入されて、環状端面が傾斜面(123)の第1のフランジ面側の端部と当接し、これにより環状端面と傾斜面(123)の間に第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成され、
挿入されるパイプ(1)の端部と傾斜面(123)の間に溶接が行われる内溶接部(124)と、
案内部(121)の外側端部とパイプ(1)の間に形成される空間に溶接が行われる外溶接部(125) とを備えているパイプ接続口(100)とパイプ(1)との構造体。」
2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載等
引用文献2には、以下の記載、図面及び認定事項がある。
ア 「【0005】一方、図5に示すようなフランジも公知である。即ち、フランジ11は管12が挿入される挿入孔13が設けられた筒部14と、該筒部14の外周に円板状に一体形成された鍔部15とからなっている。鍔部15には複数のボルト孔16が開口設置されている。以上までは図4で説明したフランジと同一構造であるが、この公知例では筒部14に設けられた挿入孔13の一方の端部及び他方の端部付近の内部に開先17A、17Bが形成されている。一方の開先17Aは挿入穴13の一方の端部を円弧状に削るように形成され、他方の開先17Bは挿入穴13の内周面から円弧状にせりだして形成されている。尚、ここでも筒部は必ずしも必要な構成ではなく、平円板状のフランジ構造となっているものも含まれるものである。
【0006】図5に示すフランジ11に管12を溶接して固定する作業は以下のようにしてなされる。先ず、フランジ11の挿入孔13に管12を圧入させる。この場合、管12の先端が開先17Bとの間に溶接幅hが形成されるように間隔をあけて挿入される。そして、フランジ11の面Hに垂直となるように管12を固定し、開先17A、開先17Bを溶接Wして固定する。」
イ 「【図5】
[図:0001407231000008.jpg]
」
ウ 上記イから、フランジ11は、管12を挿入する挿入孔13と、挿入孔13と連通する挿入孔13より小径の孔とを有し、挿入孔13より小径の孔の孔長は挿入孔13の孔長より短いことが看取される。
(2) 引用文献2に記載された技術
上記(1)から、引用文献2には、以下の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2に記載された技術>
「管12と、管12の端部に溶接Wして固定されたフランジ11とを備え、
フランジ11は、管12を挿入する挿入孔13と、挿入孔13と連通する挿入孔13より小径の孔とを有し、挿入孔13より小径の孔の孔長は、挿入孔13の孔長よりも短いこと。」
3 引用文献3
(1) 引用文献3の記載等
引用文献3には、以下の記載、図面及び認定事項がある。
ア 「従来より内面に塩化ビニル樹脂等の合成樹脂が被覆された金属管(以下ライニング管と云う)は広く用いられており、そして該ライニング管を同じ管若しくは他の管と接続するには管端にフランジを溶接し、このフランジ同志をつなぎ合せることが行われている。」(明細書第2ページ第8行~第13行)
イ 「図中1は鋼材等の金属で製せられたフランジ、2は該フランジを他のフランジに取付けるためのボルト穴、3は該フランジに溶接されるライニング管に接続されるフランジ穴である。次に第2図は第1図のA-A線による切断面を示す断面図にして、フランジ穴3は、ライニング管が接続される側に設けられた径大のフランジ穴31とその反対側に上記フランジ穴31と同心円上に設けられたそれよりも径小となされたフランジ穴32とから構成されて段付きのフランジ穴となされている。」(明細書第4ページ第6行~第16行)
ウ 「しかして第2図において5はフランジ穴3における径大穴31と径小穴32との境界面である。次に第3図は本考案溶接フランジの径大のフランジ穴31に合成樹脂被覆層62で内面がコーテイングされたライニング管6を嵌合せしめた際の状態を示す断面図であるが、本考案においては前記境界面5をライニング管6の管軸方向に対し斜め方向の面によつて形成せしめ、それによつて、ライニング管を第3図の如く嵌合した際、上記境界面5とライニング管の管端面61との間に、断面略三角形の溶接溝51が形成させるのが好ましく、この溶接溝51の存在によつてライニング管6とフランジ1とを確実に溶接することが出来る。」(明細書第5ページ第5行~第18行)
エ 「
[図:0001407231000009.jpg]
」(第3図)
オ 上記エから、境界面5のフランジ穴31側の端部は、フランジ穴31の周面に達していることが看取される。
(2) 引用文献3に記載された技術
上記(1)から、引用文献3には、以下の技術(以下、「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献3に記載された技術>
「金属管であるライニング管6と、ライニング管6の端部に溶接されて鋼材等の金属で製せられたフランジ1とを備え、
ライニング管6が接続される側に設けられた径大のフランジ穴31と、フランジ穴31よりも径小となされたフランジ穴32との境界面5をライニング管6の管軸方向に対し斜め方向の面によって形成し、境界面5のフランジ穴31側の端部がフランジ穴31の周面に達しており、境界面5とライニング管6の管端面61との間に、断面略三角形の溶接溝51を形成し、この溶接溝51の存在によってライニング管6とフランジ1とを確実に溶接すること。」
4 文献4及び文献5
(1) 文献4の記載等
周知技術の例証として引用する実願昭55-141850号(実開昭57-65778号)のマイクロフィルム(以下、「文献4」という。)には、以下の記載、図面及び認定事項がある。
ア 「第2,3図において、5はステンレス製フランジ、6はステンレス製パイプである。」(明細書第3ページ第8行~第9行)
イ 「上記フランジ5とパイプ6とは次のようにして接続する。まず、上記フランジ5の管状部10内にパイプ6の先端部20を密に嵌め込むと共に、該パイプ6の先端をフランジ6のテーパ面14に当接させて、パイプ6の位置決めを行こなう。次いで、管状部10の端面23とパイプ6の外周面とを溶接して、フランジ5とパイプ6とを接続する。」(明細書第4ページ第6行~第13行)
ウ 「
[図:0001407231000010.jpg]
」(第2図)
エ 上記ウから、フランジ5は、パイプ6の端部に溶接されていることが看取される。
(2) 文献5の記載等
周知技術の例証として引用する特開2001-227689号公報(以下、「文献5」という。)には、以下の記載及び図面がある。
ア 「【0026】先ず、図1には、本発明の一実施形態としてのフランジ付管体10が示されている。このフランジ付管体10は、管本体12と、管本体12の軸方向両端部に固設された一対の連結用のフランジ部14,14を備えている。
【0027】より詳細には、管本体12は、円形断面の中空パイプ形状を有しており、ステンレス鋼から形成されている。一方、フランジ部14は、ステンレス鋼によって管本体12とは別体形成されており、図2~3に示されているように、厚肉の円環板形状を有していると共に、その軸方向一方の面に対して、チタニウム又はその合金から形成された被覆材18が被着されている。また、このフランジ部14においては、被覆材18で覆われた軸方向一方の面が、管本体12の軸方向外側に向かう突き合わせ面20とされている。」
イ 「【0043】具体的には、例えば、図1に示されているように、フランジ部14を、突き合わせ面20と反対側の面、即ち被覆材18が被着されていない側の面である、フランジ部14の軸方向内側面26を、管本体12の開口端面27重ね合わせて、それらフランジ部14と管本体12を同一中心軸上に保持する。そして、管本体12の開口端面27とフランジ部14の内周面24を、アーク溶接等により隅肉溶接する。」
ウ 「【図1】
[図:0001407231000011.jpg]
」
(3) 文献4及び文献5に記載された周知技術
上記(1)及び(2)から、文献4及び文献5に記載された以下の技術は、周知技術(以下、「文献4~5に記載された周知技術」という。)であると認められる。
<文献4~5に記載された周知技術>
「ステンレスからなるパイプの端部にステンレスからなるフランジを溶接すること。」
5 文献6及び文献7
(1) 文献6の記載等
周知技術の例証として引用する特開2002-188175号公報(以下、「文献6」という。)には、以下の記載、図面及び認定事項がある。
ア 「【0006】ここで、コントロールバルブは、油圧ポンプ、下部走行体の走行用油圧モータ、旋回装置の旋回用油圧モータ、作業装置の油圧アクチュエータ等に油圧配管を介してそれぞれ接続されている。そして、コントロールバルブは、油圧ポンプから供給される圧油を、キャブ内の操作レバー等の操作に応じて下部走行体、作業装置等に分岐して供給することにより、これらを作動するものである。
【0007】また、油圧配管には、可撓性を有するホース配管と、剛性を有する金属配管とがある。ホース配管は、任意の方向に自由に曲げることができるものの、急激な曲げには対応することができず、ホースの径寸法が大きくなるほど、ホース配管の最小曲げ半径は大きくなる。これに対し、金属配管は、予め接続のための加工が必要になるが、ホース配管よりも小さな曲げ半径を得ることができ、しかも、エルボと呼ばれるL字状の継手等を使用することにより直角に曲げることも可能である。」
イ 「【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来技術によるものでは、油圧配管を構成する金属配管は、一方がコントロールバルブに取付フランジを介して接続され、他方がクランプを用いて旋回フレームに固定的に支持されている。」
ウ 「【0013】このことから、従来技術では、汎用の安価な取付フランジを用いることができず、図11、図12に示す如く、金属配管101の先端部にブロックフランジと呼ばれる取付フランジ102(以下、ブロックフランジ102という)を溶接手段によって固着し、該ブロックフランジ102をコントロールバルブ103に直接的にボルト止めする構成とすることにより、振動等に対する耐久性を高めている。」
エ 「【図12】
[図:0001407231000012.jpg]
」
エ 上記ウから、取付フランジ102は、金属配管101に溶接されるものであるから、溶接に関する技術常識を踏まえると、取付フランジ102も金属製であることが明らかである。
(2) 文献7の記載等
周知技術の例証として引用する特開2010-203565号公報(以下「文献7」という。)には、以下の記載、図面及び認定事項がある。
ア 「【0002】
油圧駆動ユニット等の装置に金属製管路の配管を溶接施工する場合、通常、現合作業が必要である。図4は、本発明の実施例を説明するものであるが、ここでは、従来の適用箇所を説明するため図4(a)の一部を引用する。
【0003】
例えば、図4(a)に示される油圧駆動ユニットとしての油圧ウィンチ装置10の油圧ブロック18と16の間に管路26、28を配管接続する場合、油圧ブロック18と16へのフランジ20、24(ここでは図5のフランジFLに相当する)の取付け面は空間的に図面指示どおり精度よく組付けられていることは稀であり、組付け現場での調整作業が必要である。
【0004】
したがって、配管作業者は、予め、所定寸法に形成された配管部材20、26、22、28、24を当該装置の組付け場所とは別のところで、一体化、ユニット化したものを当該装置に組付けるということはせず、当該装置10の油圧ブロック18と16の間に実際に管路28、26を接続し、各フランジと管路を仮付け溶接したものを当該装置10とは別の場所で本溶接しユニット化したものを、当該装置に組付けるようにしている。
【0005】
図5は従来配管作業に使用されているストレート型のフランジFLを例示しており、(a)はその正面図、(b)は(a)のA-A線断面図で右側の取付面にO-リング溝が設けられている。なお、(c)は、前記O-リング溝の設けられていないもので配管部材22相当部分で(b)とセットで利用されるものである。図(b)に示されるように、管路PとフランジFLの接続は、管路Pの右端部を溶接部WDにより溶接結合されるようになっている。また図示しないが、前記フランジFLにはストレート型でなくエルボ型のフランジもある。(非特許文献1)」
イ 「【図4】
[図:0001407231000013.jpg]
」
ウ 「【図5】
[図:0001407231000014.jpg]
」
エ 上記アから、フランジFLは、金属製の管路Pに溶接されるものであるから、溶接に関する技術常識を踏まえると、フランジFLも金属製であることが明らかである。
(3) 文献6及び文献7に記載された周知技術
上記(1)及び(2)から、文献6及び文献7に記載された以下の技術は、周知技術(以下、「文献6~7に記載された周知技術」という。)であると認められる。
<文献6~7に記載された周知技術>
「金属製の配管の端部に金属製のフランジを溶接した構造によって、油圧アクチュエータの油圧回路を構成すること。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用発明の「パイプ(1)」は、本願発明の「管部材」に相当し、引用発明の「パイプ接続口(100)」は、本願発明の「フランジ継手」に相当する。
そうすると、引用発明の「金属材で構成されたパイプ(1)と、パイプ(1)と同じ材質で構成されてパイプ(1)の端部に溶接されたパイプ接続口(100)とを備えている」ことと、本願発明の「鉄系材料からなる管部材と、前記管部材の端部に結合された鉄系材料からなるフランジ継手とを備えている」こととは、「金属材料からなる管部材と、前記管部材の端部に結合された金属材料からなるフランジ継手とを備えている」ことの限りにおいて一致する。
(2) 引用発明の「パイプ接続口(100)とパイプ(1)との構造体」は、その「内部を移動する流体」を輸送するために使用されることが明らかであるところ、上記第4の1(1)ア(引用文献1の第2ページ第34行~第36行)のとおり、パイプの端部に結合されたパイプ接続口をパッキンのような気密部材を具備して相互結合することによりパイプを接続し、水道やガスの配管を構成することが従来から一般的に行われていることを加味すると、引用発明の「内部を移動する流体が円滑に移動できるようにするパイプ接続口(100)とパイプ(1)との構造体」と、本願発明の「油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材」とは、「流体をパイプ輸送する配管系統を構成する配管材」の限りにおいて一致する。
(3) 引用発明の「パイプ(1)は、横断面が円形の外周面及び内周面を有するように形成され、かつパイプ接続口(100)と溶接される部分では直管状に形成され」ることは、本願発明の「前記管部材は、横断面が円形の外周面及び内周面を有するように形成され、かつ前記フランジ継手と結合される部分では直管状に形成され」ることに相当する。
(4) 引用発明の「第1の面」、「第2の面」、「第1の孔」及び「第2の孔」は、それぞれ、本願発明の「第1フランジ面」、「第2フランジ面」、「大径孔」及び「小径孔」に相当する。
そうすると、引用発明の「パイプ接続口(100)は、互いに背向する第1の面及び第2の面と、第1の面に開口する一方パイプ接続口(100)の厚み方向に伸びる円柱形の第1の孔と、第2の面に開口する一方パイプ接続口(100)の厚み方向に伸びて第1の孔と連通する第1の孔より小径の円柱形の第2の孔とを有」することは、本願発明の「前記フランジ継手は、互いに背向する第1フランジ面及び第2フランジ面と、前記第1フランジ面に開口する一方該フランジ継手の厚み方向に伸びる円柱形の大径孔と、前記第2フランジ面に開口する一方該フランジ継手の厚み方向に伸びて前記大径孔と連通する前記大径孔より小径の円柱形の小径孔とを有」することに相当する。
(5) 引用発明の「第1の孔の内径はパイプ(1)の外径とほぼ同一であり、第2の孔の内径はパイプ(1)の内径と同一であ」ることは、本願発明の「前記大径孔の内径は前記管部材の外径とほぼ同一であり、前記小径孔の内径は前記管部材の内径と同一であ」ることに相当する。
(6) 引用発明の「傾斜面(123)」は、本願発明の「小径孔面取り部」に相当する。
そうすると、引用発明の「第2の孔の第1の面側の端部に第1の面側に向かって広がり安着端(122)に達する円錐台状の傾斜面(123)が形成され」ることと、本願発明の「前記小径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がり前記大径孔の周面に達する円錐台状の小径孔面取り部が形成され」ることとは、「前記小径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がる円錐台状の小径孔面取り部が形成され」ることの限りにおいて一致する。
(7) 引用発明の「案内部(121)」は、本願発明の「大径孔面取り部」に相当する。
本願発明の「これにより前記管部材の外周面と前記大径孔面取り部の間に、前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され」るという発明特定事項における「小容量の環状溝」は、本願の発明の詳細な説明の段落【0017】の「大径孔に管部材が挿入されたときに、管部材の外周面と大径孔面取り部との間に、大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である、比較的小容量の環状溝が形成される。そして、この環状溝に適量の溶接材を用いて、管部材の外周部と大径孔面取り部とを溶接することにより、管部材の外周部とフランジ継手の大径孔面取り部とを強固に結合させることができる。」という記載及び段落【0032】の「管部材20の外周面と大径孔面取り部25との間に、大径孔16の円周方向に伸び断面がV字谷状である(V字の谷底は右側に位置する。)、比較的小容量の環状溝が形成される。そして、この環状溝に適量(少量)の溶接材を供給し、管部材20の外周部と大径孔面取り部25とを溶接して溶接部26を形成する。その結果、管部材20の外周部とフランジ継手11Bの大径孔面取り部25とが強固に結合する。」という記載から、「管部材の外周部と大径孔面取り部とを溶接する」ために「適量の溶接材」が供給できる程度の容量を有する「環状溝」と解される。
引用発明は、「これによりパイプ(1)の外周面と案内部(121)の間に、第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成され」ること及び「案内部(121)の外側端部とパイプ(1)の間に形成される空間に溶接が行われる外溶接部(125)」を備え、上記「環状溝」にパイプ(1)の外周面と案内部(121)とを溶接するための溶接材が供給されるものである。そして、この溶接が適当になされるよう溶接材の供給量が決定される、すなわち、上記「環状溝」に適量の溶接材が供給されることは、溶接に関する技術常識から明らかである。
そうすると、引用発明の「パイプ(1)の外周面と案内部(121)の間」に形成される「環状溝」は、パイプ(1)の外周面と案内部(121)とを溶接するために適量の溶接材が供給できる程度の容量を有するものであるから、本願発明の「前記管部材の外周面と前記大径孔面取り部の間」に形成される「小容量の環状溝」に相当する。
したがって、引用発明の「第1の孔の第1の面側の端部に第1の面側に向かって広がり第1の面に開口する円錐台状の案内部(121)が形成され、これによりパイプ(1)の外周面と案内部(121)の間に、第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成され」ることは、本願発明の「前記大径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がり前記第1フランジ面に開口する円錐台状の大径孔面取り部が形成され、これにより前記管部材の外周面と前記大径孔面取り部の間に、前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され」ることに相当する。
(8) 引用発明の「環状端面」は、本願発明の「環状端面」に相当する。そして、上記(7)と同様に、引用発明の「環状端面と傾斜面(123)の間」に形成される「環状溝」は、本願発明の「前記環状端面と前記小径孔面取り部の間」に形成される「小容量の環状溝」に相当する。
そうすると、引用発明の「パイプ(1)のパイプ接続口(100)側の端部は、パイプ(1)の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面を有し、パイプ(1)は第1の孔に挿入されて、環状端面が傾斜面(123)の第1のフランジ面側の端部と当接し、これにより環状端面と傾斜面(123)の間に第1の孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である環状溝が形成され」ることは、本願発明の「前記管部材のフランジ継手側の端部は、該管部材の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面を有し、前記管部材は前記大径孔に挿入されて、前記環状端面が前記小径孔面取り部の第1フランジ面側の端部と当接し、これにより前記環状端面と前記小径孔面取り部の間に前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され」ることに相当する。
(9) 引用発明の「挿入されるパイプ(1)の端部と傾斜面(123)の間に溶接が行われる内溶接部(124)」を備えていることは、本願発明の「前記小径孔面取り部と前記環状端面とが溶接され」ることに相当する。
(10) 引用発明の「案内部(121)の外側端部とパイプ(1)の間に形成される空間に溶接が行われる外溶接部(125)」を備えていることは、本願発明の「前記大径孔面取り部と前記管部材の外周部とが溶接されている」ことに相当する。
上記(1)~(10)から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「金属材料からなる管部材と、前記管部材の端部に結合された金属材料からなるフランジ継手とを備えている、流体をパイプ輸送する配管系統を構成する配管材であって、
前記管部材は、横断面が円形の外周面及び内周面を有するように形成され、かつ前記フランジ継手と結合される部分では直管状に形成され、
前記フランジ継手は、互いに背向する第1フランジ面及び第2フランジ面と、前記第1フランジ面に開口する一方該フランジ継手の厚み方向に伸びる円柱形の大径孔と、前記第2フランジ面に開口する一方該フランジ継手の厚み方向に伸びて前記大径孔と連通する前記大径孔より小径の円柱形の小径孔とを有し、前記大径孔の内径は前記管部材の外径とほぼ同一であり、前記小径孔の内径は前記管部材の内径と同一であり、
前記小径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がる円錐台状の小径孔面取り部が形成され、
前記大径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がり前記第1フランジ面に開口する円錐台状の大径孔面取り部が形成され、これにより前記管部材の外周面と前記大径孔面取り部の間に、前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され、
前記管部材のフランジ継手側の端部は、該管部材の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面を有し、前記管部材は前記大径孔に挿入されて、前記環状端面が前記小径孔面取り部の第1フランジ面側の端部と当接し、これにより前記環状端面と前記小径孔面取り部の間に前記大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され、
前記小径孔面取り部と前記環状端面とが溶接され、
前記大径孔面取り部と前記管部材の外周部とが溶接されている配管材。」
<相違点1>
「管部材」及び「フランジ継手」の材料に関して、本願発明は、これらが「鉄系材料からなる」ものであるのに対して、引用発明は、これらが「金属材で構成された」ものである点。
<相違点2>
「配管系統」の用途に関して、本願発明は、「油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する」ものであるのに対して、引用発明は、「内部を移動する流体が円滑に移動できるようにする」ものである点。
<相違点3>
本願発明は、「前記小径孔の孔長は前記大径孔の孔長より短く」形成されるものであるのに対して、引用発明は、当該事項を有しない点。
<相違点4>
「小径孔面取り部」に関して、本願発明は、「第1フランジ面側に向かって広がり前記大径孔の周面に達する」ものであるのに対して、引用発明は、「第1の面側に向かって広がり安着端(122)に達する」ものであり、第1の孔の周面に達するものではない点。
2 判断
(1) 相違点1について検討する。
文献4~5に記載された周知技術は、パイプ及びフランジが鉄系材料であるステンレスからなるものである。
引用発明と文献4~5に記載された周知技術とは、パイプとパイプの端部に溶接されたフランジとを備える構造に関するものである点で共通し、パイプ及びフランジが金属材料からなるものである点でも共通するから、引用発明のパイプ(1)及びパイプ接続口(100)を、文献4~5に記載された周知技術に基いてステンレスからなるものとして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(2) 相違点2について検討する。
文献6~7に記載された周知技術は、金属製の配管及びフランジによって油圧アクチュエータの油圧回路を構成するものである。
引用発明と文献6~7に記載された周知技術とは、パイプとパイプの端部に溶接されたフランジとを備える構造に関するものである点で共通し、パイプ及びフランジが金属材料からなるものである点でも共通する。そして、パイプとフランジとを備え、流体をパイプ輸送する配管系統を構成する配管構造は、各種の用途に用いられており、汎用性を有するものであることを合わせて考慮すると、引用発明を、文献6~7に記載された周知技術に基いて油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統に適用するものとし、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(3) 相違点3について検討する。
引用文献2に記載された技術は、挿入孔13より小径の孔の孔長が挿入孔13の孔長より短く形成されるものであるから、小径孔の孔長が大径孔の孔長より短く形成されているといえる。
引用発明と引用文献2に記載された技術とは、パイプとパイプの端部に溶接されたフランジとを備える構造に関するものである点で共通する。そして、引用発明において、第1の孔(本願発明の「大径孔」に相当)の孔長を長くするほど溶接前のパイプ(1)を安定的に保持することが可能であることは、当業者に明らかであるから、第1の孔の孔長を長くする動機付けが存在するといえる。
そうすると、引用発明において、引用文献2に記載された技術に基いて、第1の孔の孔長を第2の孔(本願発明の「小径孔」に相当)の孔長よりも長く形成し、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(4) 相違点4について検討する。
引用文献3に記載された技術は、境界面5のフランジ穴31側の端部がライニング管6を嵌合せしめるフランジ穴31の周面に達するものであるから、小径孔面取り部がライニング管6の挿入側に向かって広がり大径孔の周面に達するものであるといえる。
引用発明と引用文献3に記載された技術とは、パイプとパイプの端部に溶接されたフランジとを備える構造に関するものである点で共通する。そして、引用文献3に記載された技術のライニング管6とフランジ1とを確実に溶接することは、引用発明にも当然に内在する課題であるから、両者の解決しようとする課題も共通する。
そうすると、引用発明において、引用文献3に記載された技術に基いて、傾斜面(123)(本願発明の「小径孔面取り部」に相当)を第1の面(本願発明の「第1フランジ面」に相当)側に向かって広がり第1の孔(本願発明の「大径孔」に相当)の周面に達するものに変更し、相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(5) そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術、引用文献3に記載された技術、文献4~5に記載された周知技術及び文献6~7に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術、引用文献3に記載された技術、文献4~5に記載された周知技術及び文献6~7に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 審判請求人の主張について
令和5年8月3日に提出された意見書において、審判請求人は、本願発明に関して、以下のとおり主張する。
「第4 本願発明の構成上の特徴
補正後の請求項1に係る発明(以下「本発明」という。)は、下記発明特定事項A、B、Cを備えている点に、とくに構成上の特徴があります。
発明特定事項A: 管部材のフランジ継手側の端部は、管部材の伸びる方向と垂直な平面状の環状端面であり、管部材は大径孔に挿入されて、環状端面が小径孔面取り部の第1フランジ面側の端部と当接し、これにより環状端面と小径孔面取り部の間に大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され、この環状溝で小径孔面取り部と環状端面とが溶接されている(以下、この溶接部を「第1溶接部」という。)。
発明特定事項B: 大径孔の第1フランジ面側の端部に第1フランジ面側に向かって広がり第1フランジ面に開口する円錐台状の大径孔面取り部が形成され、これにより管部材の外周面と大径孔面取り部の間に、大径孔の円周方向に伸び断面がV字谷状である小容量の環状溝が形成され、この環状溝で大径孔面取り部と管部材の外周部とが溶接されている(以下、この溶接部を「第2溶接部」という。)。
発明特定事項C:油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材である。」(第2ページ第31行~第45行)
そして、同意見書において、審判請求人は、発明特定事項A~Cと引用文献1~3に記載された発明との関係に関して、以下のとおり主張する。
<発明特定事項Aと引用文献1~3に記載された発明との関係>
「さらに、引用発明では、小径孔面取り部は大径孔の周面に達するものではなく、安着端122に達するものです。したがって、引用文献1に記載された発明は本発明の発明特定事項Aを備えていないものと思量します。」(第3ページ第15行~第17行)
「また、引用文献2に記載された発明は、円錐台状の小径孔面取り部や大径孔面取り部を備えておらず、本発明の発明特定事項A、Bを備えていないものと思量します。」(第3ページ第23行~第24行)
「さらに、引用文献3に記載された発明は、そもそも円柱状の小径孔を備えておらず、したがって引用文献3に記載された発明は本発明の発明特定事項Aを備えていないものと思量します。」(第3ページ第32行~第34行)
(以下、これらの主張をまとめて「主張A」という。)
<発明特定事項Bと引用文献1~3に記載された発明との関係>
「また、引用文献1に記載された発明では、パイプ1の外周面とパイプ接続口100の案内部121の間に形成された環状溝は比較的大容量(本発明に比べて)であるので、本発明の発明特定事項Bを備えていないものと思量します。」(第3ページ第12行~第14行)
「また、引用文献2に記載された発明は、円錐台状の小径孔面取り部や大径孔面取り部を備えておらず、本発明の発明特定事項A、Bを備えていないものと思量します。」(第3ページ第23行~第24行)
「また、引用文献3に記載された発明は、円錐台状の大径孔面取り部を備えておらず、本発明の発明特定事項Bを備えていないものと思量します。」(第3ページ第30行~第31行)
(以下、これらの主張をまとめて「主張B」という。)
<発明特定事項Cと引用文献1~3に記載された発明との関係>
「引用文献1に記載された発明は、水道やガスの配管工事のための配管材です。これに対して、本発明は油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材です(発明特定事項C)。したがって、引用文献1に記載された発明は本発明とは技術分野が全く異なります。」(第3ページ第8行~第11行)
「引用文献2に記載された発明は、使用される配管系統が何ら特定されておらず、したがって、油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材とは考えられません。したがって、引用文献2に記載された発明は本発明とは技術分野が異なるものと思量します。」(第3ページ第19行~第22行)
「引用文献3に記載された発明は、使用される配管系統が何ら特定されておらず、したがって、油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材とは考えられません。したがって、引用文献3に記載された発明は本発明とは技術分野が異なるものと思量します。」(第3ページ第26行~第29行)
(以下、これらの主張をまとめて「主張C」という。)
審判請求人の主張Aについて検討する。
発明特定事項Aについては、上記1及び2(4)で検討したとおりである。
上記第4の1(1)ウ(引用文献1の第3ページ第41行~第4ページ第12行)のとおり、引用発明の安着端(122)は、「上記案内部(121)を通して挿入される上記パイプ(1)が上記本体(110)に垂直に挿入されるようにし、上記パイプ(1)が一定の深さまでしか挿入されないように」するという機能を有するものであるところ、上記2(4)のように変更を施した構成は、少なくとも「上記パイプ(1)が一定の深さまでしか挿入されない」ものであると認められる。そして、上記第4の1(1)ウのとおり、「上記案内部(121)の前方を上記挿入口(120)の中心と水平になるように延長」した部分が存在することで、上記2(4)のように変更を施した構成においても、「上記案内部(121)を通して挿入される上記パイプ(1)が上記本体(110)に垂直に挿入される」ことが明らかである。
したがって、引用発明の傾斜面(123)(本願発明の「小径孔面取り部」に相当)を第1の面(本願発明の「第1フランジ面」に相当)側に向かって広がり第1の孔(本願発明の「大径孔」に相当)の周面に達するものに変更し、発明特定事項Aに相当する構成とすることに阻害要因が存在するとは認められない。
審判請求人の主張Bについて検討する。
上記1(7)のとおり、引用発明は、発明特定事項Bに相当する構成を備えるものである。
審判請求人の主張Cについて検討する。
発明特定事項Cについては、上記2(2)で検討したとおりである。
引用文献1には、実施例の用途を特定のものに限定する旨の記載はない。そして、上記2(2)のとおり、パイプとフランジとを備えた配管構造により構成された配管系統によって、流体をパイプにより輸送することは、汎用性を有し、各種の用途に用いられるものである。
したがって、引用発明の用途を「油圧アクチュエータに対して作動油をパイプ輸送で給排する配管系統を構成する配管材」にすることに阻害要因が存在するとは認められない。
よって、審判請求人の主張は、いずれも採用することができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015003