特許拒絶査定不服審判
2025-004528
樹脂管及び樹脂管の製造方法
- 審判番号
- 2025-004528
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-135789
- 請求日
- 2025年03月24日
- 審決日
- 2026年02月18日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】積水化学工業株式会社
- 【請求人代理人】西澤 和純
- 【請求人代理人】川越 雄一郎
- 【請求人代理人】大槻 真紀子
- 【請求人代理人】山口 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 岩瀬 昌治
- 審判官 中屋 裕一郎
- 分類
- P18 .121-Z (F16L) / P18 .55 -Z (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-135789「樹脂管及び樹脂管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年10月26日出願公開、特開2023-157990〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月8日(優先権出張 平成30年2月9日)に出願した特願2019-22063号の一部を令和5年8月23日に新たな出願(特願2023-135789号)としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 7月11日付け 拒絶理由通知書
令和6年11月13日 意見書・手続補正書の提出
令和6年12月16日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和7年 3月24日 審判請求書・手続補正書の提出
第2 令和7年3月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年3月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の独立請求項である請求項1に基づき、「帯状部」、「露出面」及び「指標」について限定し、特に「指標」の内容について更に限定して補正後の請求項1とする補正と、前記補正前の請求項1に基づき、「帯状部」、「露出面」及び「指標」について限定し、特に「帯状部」の周方向の長さの寸法について更に限定して補正後の請求項1とは別の独立請求項である補正後の請求項2とする補正を含むものである。
そこで、事案に鑑み、本件補正のうち、補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る補正について、以下検討する。
1 本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項2の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項2】
電気融着継手に接続される管本体と、
前記管本体の外周面に、前記管本体の全長にわたって延びるように形成された帯状部と、
前記管本体の外周面のうち前記帯状部に覆われていない露出面のみに前記管本体の全長にわたって延びるように設けられた指標と、
を備え、
前記管本体及び前記帯状部が、共押出成形体であり、
前記帯状部の周方向の長さよりも、前記露出面の周方向の長さのほうが長く、
前記帯状部の1本あたりの周方向の長さが4mm以上50mm以下である、樹脂管(ただし、前記帯状部の周方向の長さよりも、前記指標の周方向の長さのほうが長いものを除く)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和6年11月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
電気融着継手に接続される管本体と、
前記管本体の外周面に、前記管本体の全長にわたって延びるように形成された帯状部と、
前記管本体の外周面のうち前記帯状部に覆われていない露出面、及び前記帯状部の外面のいずれか一方のみに、前記管本体の全長にわたって延びるように設けられた指標と、
を備え、
前記管本体及び前記帯状部が、共押出成形体である、樹脂管。」
2 補正の適否
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る補正の目的について
本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「帯状部」、「露出面」及び「指標」のそれぞれについて、上記のとおり限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加の有無について
本件補正後の請求項2について、本件補正により「前記帯状部の1本あたりの周方向の長さが4mm以上50mm以下である」との事項を追加したことについて検討する。
まず、「帯状部」とは「前記管本体の外周面に、前記管本体の全長にわたって延びるように形成された」ものであるところ、「管」とは「気体・液体などの輸送に用いる長い中空円筒。」(広辞苑第7版)であるから、「前記帯状部の1本あたりの周方向の長さ」とは、「帯状部」の周方向端部間を結ぶ円弧の長さであるものと理解される。
この理解を前提として、「4mm以上50mm以下」という寸法に着目すると、当初明細書等には「帯状部13の径方向の幅は、管本体11の外径に応じて適宜決定され、4mm以上50mm以下とされ、8mm以上40mm以下が好ましい。」(【0016】)、「なお、帯状部13の径方向の幅は、例えば図7に示すように、公知のノギス71を使用して測定することができる。」(【0017】)と記載されている。
ここで、「ノギス」とは「主尺と副尺とにある嘴(はし)で物を挟んだり物の内側に当てたりして、物の長さ・厚さ、球や穴の直径を測る。」(広辞苑第7版)ものであり、2点間をつなぐ曲線に沿った距離は測るものではないから、本件明細書等に記載された上記寸法は、「帯状部」の周方向端部間を結ぶ直線の長さであり、「帯状部」の周方向端部間を結ぶ円弧の長さではないことが理解される。そして、この理解は、図7の図示内容と矛盾しない。
そうすると、当初明細書等に記載されていた「帯状部」の周方向端部間を結ぶ直線の長さ(換言すれば円弧の弦の長さ)が「4mm以上50mm以下」であることは、「帯状部」の周方向端部間を結ぶ円弧の長さが「4mm以上50mm以下」であることを意味しない。
そして、同一円弧における弦の長さは弧の長さよりも短いことは当業者のみならず、広く一般の者も知る常識であるから、本件補正に追加された上記「前記帯状部の1本あたりの周方向の長さが4mm以上50mm以下である」は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、本件補正は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、
「補正後の請求項2(以下、「新請求項2」と言います)は、今回の補正直前の請求項1を、本願明細書の段落〔0016〕,〔0018〕,〔0023〕の記載、図2に記載された事項に基づいて補正した請求項です。」との主張をしているが、本件補正により「帯状部」について「帯状部の1本あたりの周方向の長さが4mm以上50mm以下である」と限定したことについては、上記(2)に示したとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。
3 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年11月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1の記載は上記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対するものは、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
1.特開2001-324063号公報
2.実願昭57-172141号(実開昭59-75983号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
3.特表2016-513222号公報(周知技術を示す文献)
4.登録実用新案第3004297号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2004-156668号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献1の記載事項
(1)引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当審合議体が付した。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂管に関し、詳しくは、用途別の着色や遮光性を得るための着色が施された合成樹脂管に関する。」
イ 「【0006】
【発明の実施の形態】図1及び図2は、本発明の合成樹脂管の第1形態例を示すもので、図1は端面方向の正面図、図2は断面側面図である。この合成樹脂管は、ナチュラルレジンからなる内層11と、カラーコンパウンドからなる外層12との二層構造に一体形成されている。外層12は、厚さTが0.1~0.2mm程度の極めて薄い層で形成されている。外層12の色調や樹脂組成は、用途、機能等に応じて任意に選択することができ、例えば、ガス用ならば黄色、水道用ならば青色にすればよい。
【0007】このように、外層12として厚みの薄い着色層を形成することにより、着色合成樹脂管における着色用顔料の使用量を削減できるので、着色合成樹脂管の製造コストを低減できる。そして、ポリエチレン管と電気融着継手とを融着接合する場合のように、接合面の酸化膜によって接合強度が低下するものの場合は、接合前にあらかじめ接合面をスクレープして酸化膜を除去する必要があるが、内層11が露出する程度にスクレープすることにより、外層12の有無によってスクレープの完了を知ることができ、酸化膜を確実に除去することができる。」
ウ 「【0012】図4は本発明の合成樹脂管の第3形態例を示す斜視図である。この合成樹脂管は、ナチュラルレジンからなる管本体21の外周に、カラーコンパウンドからなる着色線22を管軸線方向に一体に設けたものである。
【0013】この着色線22は、主に用途を示すものであって、ガス用ならば黄色、水道用ならば青色のカラーコンパウンドが使用される。このような着色線22によって用途を表示することにより、高価な顔料の使用量を大幅に削減することができる。このような、着色線22の幅や厚み(深さ)は、管の口径や肉厚に応じて適当に設定することができ、視認性とコストとを勘案して選択すればよい。また、着色線22は、1本に限らず、取扱性、視認性等を考慮して2本以上設けておくこともできる。
【0014】なお、各形態例に示す合成樹脂管は、2色押出成形によって容易に一体成形することが可能であり、生産性を損なうこともない。」
エ 「【図4】
[図:0001434993000001.jpg]
」
オ 上記イ及びウによれば、第1形態例及び第3形態例の合成樹脂管は、いずれも、その用途としてガス及び水道を予定しているものであり、用途別の着色に係る構成以外は同様の構成を備えているものと考えられるから、第3形態例の合成樹脂管管本体21は電気融着継手に融着接合されることが予定されていると理解される。
カ 上記ウ、エから、合成樹脂管管本体21の外周に、用途を表示する着色線22を管軸線方向に一体に設けたものであると理解される。
キ 上記ウによれば、前記管本体21と前記着色線22が、2色押出成形によって一体成形されることが予定されていると理解される。
(2) 上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電気融着継手に融着接合される管本体21に、
前記管本体21の外周に、用途を表示する着色線22を管軸線方向に一体に設け、
前記管本体21と前記着色層22が、2色押出成形によって一体成形される、合成樹脂管」
4 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「合成樹脂管」は、本願発明の「樹脂管」に相当する。
引用発明の「電気融着継手」、「融着接合される」及び「管本体21」は、それぞれ本願発明の「電気融着継手」、「接続される」及び「管本体」に相当する。
引用発明の「外周に」及び「着色線22」は、それぞれ本願発明の「外周面に」及び「帯状部」に相当するから、引用発明の「前記管本体21の外周に、」「管軸線方向に一体に設け」た「着色線22」と本願発明の「前記管本体の外周面に、前記管本体の全長にわたって延びるように形成された帯状部」は、「前記管本体の外周面に、前記管本体に形成された帯状部」という点で共通する。
引用発明の「合成樹脂管」において「管本体21の外周に」「着色線22を」「設け」たことは、本願発明の「樹脂管」が「管本体と」「帯状部と」「指標と」「を備え」たこととは、「樹脂管」が「管本体と」「帯状部と」「を備え」た点で共通する。
引用発明の「2色押出成形によって一体成形される」ものは、本願発明の共押出成形体」に相当する。
以上によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「電気融着継手に接続される管本体と、
前記管本体の外周面に、前記管本体に形成された帯状部と、
を備え、
前記管本体及び前記帯状部が、共押出成形体である、樹脂管。」
[相違点1]
「前記管本体の外周面に、前記管本体に形成された帯状部」に関し、本願発明は「前記管本体の全長にわたって延びるように形成され」であるのに対し、引用発明はその点が不明である点。
[相違点2]
本願発明は「前記管本体の外周面のうち前記帯状体に覆われていない露出面、及び前記帯状部の外面のいずれか一方のみに、前記管本体の全長にわたって延びるように設けられた指標」を備えているのに対し、引用発明はその点が不明である点。
5 判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明の「着色層22」は、上記3(1)ウによれば、「取扱性、視認性等を考慮して」設けるものなのであるから、「合成樹脂管」の「管軸線方向」のいずれの箇所においても視認可能とし、「合成樹脂管」の取扱が容易になるように、相違点1に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が引用発明を具体化するにあたり、設計上適宜なし得たことであって、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
(2)相違点2について
合成樹脂管において、管本体の外周面のうち帯状部に覆われていない露出面、及び前記帯状部の外面のいずれか一方のみに、前記管本体の全長にわたって延びるように設けられた指標を設けることは、当業者に周知である(以下「周知技術」という。必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(【0011】~【0017】、図1~2)、引用文献5(【0008】~【0016】、図1~2)、新たに引用する実公昭45-28517号公報(1欄30行~2欄8行、第1~3図)を参照。)。
そして、引用発明の「合成樹脂管」においては、「取扱性、視認性等を考慮して」いるのであるから、上記周知技術を付加する程度のことは、「合成樹脂管」の指標に係る公知技術・周知技術の寄せ集めと言い得ることであるし、その際、「着色線22」と同様に、「合成樹脂管」の「管軸線方向」のいずれの箇所においても視認可能とし、「合成樹脂管」の取扱が容易になるように、全長にわたって延びるようにすることは、当業者が設計上適宜になし得たことであるから、相違点2に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
(3)本願発明が奏する効果について
上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する「管本体の露出面及び帯状部の外面のいずれか一方のみに指標が設けられるため、管本体の露出面及び帯状部の外面の両方に跨って指標が設けられることなく、指標を見やすくできる。」(本願明細書【0008】)という作用効果は、引用発明及び周知技術が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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