特許拒絶査定不服審判
2022-014061
金属管継手
- 審判番号
- 2022-014061
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-254800
- 請求日
- 2022年09月07日
- 審決日
- 2023年06月26日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社セントラルユニ
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】南山 知広
- 【請求人代理人】森本 有一
- 【請求人代理人】小川 剛孝
- 【請求人】株式会社タブチ
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】南山 知広
- 【請求人代理人】森本 有一
- 【請求人代理人】小川 剛孝
- 審判長/審判官
- 審判長 西村 泰英
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 審判官 間中 耕治
- 分類
- P18 .121-Z (F16L) / P18 .575-Z (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-254800「金属管継手」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月22日出願公開、特開2019-120309〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月28日の出願であって、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。
令和 3年 9月16日付け:拒絶理由通知書
同 年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出
同 年11月24日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 4年 2月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 6月27日付け:令和4年2月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
同 年 9月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
同 年 9月13日 :手続補正書の提出(委任状の提出)
令和 5年 1月24日 :上申書の提出
第2 令和4年9月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
金属管を接続する金属管継手であって、
前記金属管が挿入される挿入孔が形成された胴部と、
前記胴部内に同軸線上に内蔵される環状のロックリングであって、内方に突出して前記金属管の引き抜きを規制する規制片を複数備える、ロックリングと、
前記金属管が挿通する筒状の押え部であって、前記胴部の前記挿入孔に装着され、前記ロックリングを前記胴部に固定する押え部と、
前記押え部内に同軸線上に内蔵され、前記金属管が挿通されたときに前記金属管の管外面に接するよう設けられる環状の1つ又は複数の第1シール部材と、
前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材と、
を備え、
前記ロックリングは、前記規制片の外周側に形成された円板面と、前記円板面に連続して形成され、前記挿入孔の軸線方向に対して平行に形成されたフランジと、前記フランジの端部を前記ロックリングの径方向内側へ向けて直角に折り曲げて形成された垂直部と、を備え、
1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている、ことを特徴とする、金属管継手。
【請求項2】
前記ロックリングは2つ以上設けられている、請求項1に記載の金属管継手。
【請求項3】
前記第1シール部材はフッ素ゴムからなる、請求項1又は請求項2に記載の金属管継手。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和3年11月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
金属管を接続する金属管継手であって、
前記金属管が挿入される挿入孔が形成された胴部と、
前記胴部内に同軸線上に内蔵される環状のロックリングであって、内方に突出して前記金属管の引き抜きを規制する規制片を複数備える、ロックリングと、
前記金属管が挿通する筒状の押え部であって、前記胴部の前記挿入孔に装着され、前記ロックリングを前記胴部に固定する押え部と、
前記押え部内に同軸線上に内蔵され、前記金属管が挿通されたときに前記金属管の管外面に接するよう設けられる環状の第1シール部材と、
を備え、
前記ロックリングは、前記規制片の外周側に形成された円板面と、前記円板面に連続して形成され、前記挿入孔の軸線方向に対して平行に形成されたフランジと、前記フランジの端部を前記ロックリングの径方向内側へ向けて直角に折り曲げて形成された垂直部と、を備えることを特徴とする、金属管継手。
【請求項2】
前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材を備える、請求項1に記載の金属管継手。
【請求項3】
前記ロックリングは2つ以上設けられている、請求項1又は2に記載の金属管継手。
【請求項4】
前記第1シール部材は2つ以上設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の金属管継手。
【請求項5】
前記第1シール部材はフッ素ゴムからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の金属管継手。」
2 補正の適否
(1) 補正事項
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明に対して、「第1シール部材」について「1つ又は複数の」との事項を追加し(以下「補正事項1」という。)、「金属管継手」が「備え」る部材として「前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材」を追加し(以下「補正事項2」という。)、「金属管継手」に「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」との事項を追加する(以下「補正事項3」という。)ものである。
(2) 新規事項の追加の有無について
ア 補正事項1について検討する。
「第1シール部材」の数について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0018】には、「押え部2の内部に設けられる第1シール部材4は1つだけでもよく、 また3つ以上設けられてもよい。」と記載されており、図2からは、押え部2の内部に2つの第1シール部材4を設けることが看取される。
そうすると、「第1シール部材」の数が「1つ又は複数」であることは、当初明細書等に記載された事項であるから、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
イ 補正事項2について検討する。
「第2シール部材」の配置について、当初明細書等の請求項2には、「前記胴部の挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材を備える、請求項1に記載の金属管継手。」と記載されており、段落【0014】には、「そのため第2シール部材5は、胴部1の挿入孔1aの内側において、胴部1と押え部2との間に配置されるようになる。」と記載されており、図2からは、金属管継手10が胴部1の挿入孔1aの内側において胴部1と押え部2との間に配置される第2シール部材5を備えることが看取される。
そうすると、「金属管継手」が「前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材」を「備え」ることは、当初明細書等に記載された事項であるから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
ウ 補正事項3について検討する。
補正事項3は、本件補正前の請求項1に記載された発明について、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材と」が「該金属管継手の軸線方向」において特定の位置関係にあることを追加するものである。
当初明細書等のうち、これらの部材の位置関係について記載されているものは、次の図2のみである。
「
[図:0001401334000001.jpg]
」
ここで、特許出願における機械要素の構成を示す図面には、一般的な設計図とは異なり、機械要素の各部の寸法、縮尺等を正確に反映させることが要求されない。そのため、図面に何らかの基準点からの距離が付されていたり、補助線を付すことで複数の部材が同じ位置に揃えられていることを確認できる等の特別な描写がなされていない限り、図面は、機械要素の各部の正確な配置を示す根拠には、なり得ないというべきである。
この観点から補正事項3について検討すると、図2には、左側の第1シール部材4(「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材」に対応)と第2シール部材5(「前記第2シール部材」に対応)とが挿入孔1a(「前記挿入孔」に対応)の入り口側において金属管継手10(「該金属管継手」に対応)の軸線方向でほぼ似通った並びで描写されている。また、図2には、左側の第1シール部材4及び第2シール部材5と何らかの基準点との間の距離を示すもの、左側の第1シール部材4と第2シール部材5とが金属管継手10の軸線方向で同じ位置に揃えられていることを示す補助線等の特別な描写がなされていない。
そうすると、当初明細書等は、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材と」の位置関係について、「前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向」で似通った位置に配置されることを開示するものにとどまり、当該「軸線方向位置が同じになるように配置されている」ことまで開示するものではない。そして、このようなシール部材の配置が技術常識ではないことを参酌すると、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」ことは、当業者であっても当初明細書等から想定することができない事項である。
以上のことから、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」ことは、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等に記載された事項から自明でもないから、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえない。
エ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
(3) 本件補正についての小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
(4) 独立特許要件について
ア 仮に、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」という発明特定事項が、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材」の少なくとも一部と「前記第2シール部材」の少なくとも一部とが「前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向」で重なるように「配置されている」ことを意味するのであれば、補正事項3を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであるといえる。
補正事項3が当初明細書等の全体から見て記載されていると扱うべき合理的な事情があるとした場合、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満足し、同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると扱われるため、予備的に、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
イ 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるものである。
ウ 引用文献の記載事項
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2000-249268号公報(平成12年9月12日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、参考のために当審で付した。以下同様。)
a 「【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1及び図2に示すように、パイプ11は、軟質の金属材料としての銅により円筒状に形成され、水道の配管等に使用される。前記パイプ11を接続するための継手本体12は、真鍮又は青銅により筒状に形成され、その一端外周には第1雄ねじ部13が形成され、図1の2点鎖線に示すように、水道配管等の管体14に螺合可能になっている。」
b 「【0014】継手本体12の他端側内周には第1雌ねじ部16が形成されている。継手本体12内奥部には当接面17が、継手本体12の軸線と直交するように円環状に設けられ、その当接面17に連なる内周面の外端縁には、傾斜面18がその内径が第1雌ねじ部16に向うに従い大きくなるように形成されている。その傾斜面18の外周縁には、円環状をなす受け面19が継手本体12の軸線と直交するように形成されている。」
c 「【0016】図1~図3に示すように、前記受け面19上に係合される一対のロックリング25a、25bはステンレス鋼をプレス成形法により成形され、環状をなすベースリング26と、そのベースリング26から内方へ同一長さで突出する複数の規制片27とより構成されている。」
d 「【0019】そのため、ロックリング25a、25bにパイプ11が挿入されたとき、規制片27の食い込み部27aはパイプ11の外面に食い込みやすくなっている。その結果、規制片27の基端部側から先端部側へパイプ11を挿入しやすくなっているとともに、一対のロックリング25a、25bにより挿入されたパイプ11が抜け出るのを規制するようになっている。」
e 「【0023】図1及び図2に示すように、前記継手本体12に螺合される押圧体31は、真鍮又は青銅により形成された円筒部32と前記継手本体12のナット部15の外形より小さく形成された把持部33とより構成され、その中心には把持部33及び円筒部32を貫通して貫通孔34が形成されている。前記円筒部32の外周面には第2雄ねじ部35が形成され、前記継手本体12の第1雌ねじ部16に螺合可能になっている。」
f 「【0025】把持部33の基端側に位置する円筒部32の外周面中央には外周溝部37が形成され、ゴムにより円環状に形成されたシールリング38が嵌着されている。そして、押圧体31を継手本体12に螺合したとき、シールリング38が、押圧体31と継手本体12との隙間をシールするようになっている。押圧体31の貫通孔34の内周面には第1内周溝部20が形成され、断面円形状の第1シールリング21が嵌着されている。また、第1内周溝部20より把持部33側の貫通孔34の内周面には第2内周溝部39が形成され、断面円形状の第2シールリング40が嵌着されている。」
g 「【0027】そして、押圧体31の第2雄ねじ部35を、継手本体12の第1雌ねじ部16に螺合させ、スパナ等を係止部36に係止して押圧体31を継手本体12に螺合する。その結果、継手本体12と押圧体31とにより継手10を構成するとともに、押圧体31の貫通孔34から継手本体12の当接面17にかけてパイプ接続口41が構成されるようになっている。
【0028】そして、ロックリング25a、25bが、それらの間にスペーサ30を介した状態で、押圧体31の円筒部32の先端部により軸方向及び周方向に移動不能に位置決め固定され、継手10内に規制手段を備えることができるとともに、シールリング38により、継手本体12と押圧体31との隙間がシールされるようになっている。」
h 「【図1】
[図:0001401334000002.jpg]
」
i 「【図2】
[図:0001401334000003.jpg]
」
j 「【図3】
[図:0001401334000004.jpg]
」
(イ) 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 継手本体12は、パイプ11が挿入される孔が形成されたものである(【図1】、【図2】)。
b ロックリング25a、25bは、継手本体12の内面の一部である受け面19に同軸線上に係合され、環状をなすベースリング26から内方へ同一長さで突出する複数の規制片27を備え、ロックリング25a、25bにパイプ11が挿入されたとき、規制片27の食い込み部27aがパイプ11の外面に食い込み、挿入されたパイプ11が抜け出るのを規制するものである(【0014】、【0016】、【0019】、【図3】)。
c 押圧体31は、中心を貫通する貫通孔34にパイプ11が挿入される筒状の部材であって、継手本体12のパイプ11が挿入される孔に形成された第1雌ねじ部16に螺合され、ロックリング25a、25bを継手本体12に軸方向及び周方向に移動不能に位置決め固定するものである(【0014】、【0023】、【0027】、【0028】、【図1】、【図2】)。
d 第1シールリング21及び第2シールリング40は、押圧体31の貫通孔34の内周面に形成された第1内周溝部20及び第2内周溝部39に同軸線上にそれぞれ嵌着され、貫通孔34にパイプ11が挿入されたときにパイプ11の管外面に接するよう設けられる環状の部材である(【0025】、【図1】)。
e シールリング38は、継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔と押圧体31との隙間をシールする部材である(【0025】、【図1】)。
f 第2シールリング40の少なくとも一部と、シールリング38の少なくとも一部とは、継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔の入り口側において継手10の軸線方向で重なるように配置されている(【図1】)。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「銅により形成されるパイプ11を接続するための継手10であって、
パイプ11が挿入される孔が形成された継手本体12と、
継手本体12の内面の一部である受け面19に同軸線上に係合されるロックリング25a、25bであって、環状をなすベースリング26から内方へ同一長さで突出し、ロックリング25a、25bにパイプ11が挿入されたとき、規制片27の食い込み部27aがパイプ11の外面に食い込み、挿入されたパイプ11が抜け出るのを規制する複数の規制片27を備える、ロックリング25a、25bと、
貫通孔34にパイプ11が挿入される筒状の押圧体31であって、継手本体12のパイプ11が挿入される孔に形成された第1雌ねじ部16に螺合され、ロックリング25a、25bを継手本体12に軸方向及び周方向に移動不能に位置決め固定する押圧体31と、
押圧体31の貫通孔34の内周面に形成された第1内周溝部20及び第2内周溝部39に同軸線上にそれぞれ嵌着され、貫通孔34にパイプ11が挿入されたときにパイプ11の管外面に接するよう設けられる環状の第1シールリング21及び第2シールリング40と、
継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔と押圧体31との隙間をシールするシールリング38と、
を備え、
ロックリング25a、25bは、環状をなすベースリング26から内方へ同一長さで突出する複数の規制片27を備え、
第2シールリング40の少なくとも一部と、シールリング38の少なくとも一部とは、継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔の入り口側において継手10の軸線方向で重なるように配置されている、継手10。」
(エ) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-223544号公報(平成28年12月28日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る金属管継手の上半断面図である。同図中、1は継手本体、2はキャップ、3はロックリングである。継手本体1は、その中空内部が、金属管Pの接続側から奥端側に向けて、雌ねじ部1a、シール部1b、差込規制部1cの順で形成されている。これら環状の中空部は、環状の段差1d~1fによって、奥端側にいくほど縮径するように構成している。」
b 「【0020】
次に、ロックリング3の詳細を、それ単体で示した図2・3にしたがって説明する。このロックリング3は、図2に示すように、金属製の円板3aの中心に、孔周囲に複数の爪3bを有した金属管Pの挿通孔3cが形成されている。この挿通孔3cは、元々、図3に示したように、爪3bの形に打ち抜いただけであって、その後の工程で、該爪3bが金属管Pの挿通方向に向かって傾斜するように折り曲げ加工したものである。その際、爪3bの先端同士を結ぶ仮想円C(図面上の二点鎖線)が、接続しようとする金属管Pの外径よりも僅かに小径となるように爪3bを折り曲げ加工している。これによって、金属管Pの挿通時には爪3bが弾性的に拡径して金属管Pの挿通が許容される一方、挿通後は、金属管Pに引き抜き方向の力が加われば、爪3bの先端が金属管Pの外表面に食い込んで、当該引き抜きを規制する。即ち、本発明は、金属管Pを所定長差し込むだけで引き抜きを規制するワンタッチ継手である。
【0021】
このような爪3bからなる挿通孔3cを形成した円板3aについて、その外周縁には、挿通孔3cの軸線S(図面上の一点鎖線)と平行する水平なフランジ3dが連続して設けられている。このフランジ3dも、元々は、図3に示すように、垂直であったものを、その後の折り曲げ加工によって形成したものである。また、この実施形態では、フランジ3dの先端部をさらに半径方向内向き90度に折り曲げて、円板3aの板面と平行する垂直部3eを形成している。」
c 「【図1】
[図:0001401334000005.jpg]
」
d 「【図2】
[図:0001401334000006.jpg]
」
(オ) 上記(エ)から、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2に記載された技術>
「金属管Pの引き抜きを規制する爪3bを複数備える、ロックリング3を備え、
ロックリング3は、爪3bの外周側に形成された円板3aと、円板3aの外周縁に連続して設けられ、挿通孔3cの軸線S(図面上の一点鎖線)と平行する水平なフランジ3dと、フランジ3dの先端部をさらに半径方向内向き90度に折り曲げて、円板3aの板面と平行する垂直部3eと、を備える、金属管継手のロックリング。」
エ 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「パイプ11」は、銅により形成されるものであるから、本件補正発明の「金属管」に相当し、引用発明の「継手10」は、金属管を接続するための継手であるから、本件補正発明の「金属管継手」に相当する。そうすると、引用発明の「銅により形成されるパイプ11を接続するための継手10」は、本件補正発明の「金属管を接続する金属管継手」に相当する。
引用発明の「継手本体12」は、本件補正発明の「胴部」に相当し、引用発明の「パイプ11が挿入される孔」は、引用発明の「パイプ11」が本件補正発明の「金属管」に相当するから、本件補正発明の「前記金属管が挿入される挿入孔」に相当する。
引用発明の「ロックリング25a、25b」は、本件補正発明の「ロックリング」に相当し、引用発明の「規制片27」は、本件補正発明の「規制片」に相当する。また、引用発明の「ロックリング25a、25b」は、「環状をなすベースリング26」を備えるから、「環状」を呈するものである。そうすると、引用発明の「継手本体12の内面の一部である受け面19に同軸線上に係合されるロックリング25a、25b」は、引用発明の「継手本体12」が本件補正発明の「胴部」に相当するから、本件補正発明の「前記胴部内に同軸線上に内蔵される環状のロックリング」に相当し、引用発明の「環状をなすベースリング26から内方へ同一長さで突出し、ロックリング25a、25bにパイプ11が挿入されたとき、規制片27の食い込み部27aがパイプ11の外面に食い込み、挿入されたパイプ11が抜け出るのを規制する複数の規制片27を備える」ことは、引用発明の「パイプ11」が本件補正発明の「金属管」に相当するから、本件補正発明の「内方に突出して前記金属管の引き抜きを規制する規制片を複数備える」ことに相当する。
引用発明の「押圧体31」は、本件補正発明の「押え部」に相当する。そうすると、引用発明の「貫通孔34にパイプ11が挿入される筒状の押圧体31」は、引用発明の「パイプ11」が本件補正発明の「金属管」に相当するから、本件補正発明の「前記金属管が挿通する筒状の押え部」に相当する。
引用発明の「継手本体12のパイプ11が挿入される孔に形成された第1雌ねじ部16に螺合され」ることは、引用発明の「継手本体12」が本件補正発明の「胴部」に相当するから、本件補正発明の「前記胴部の前記挿入孔に装着され」ることに相当する。
引用発明の「ロックリング25a、25bを継手本体12に軸方向及び周方向に移動不能に位置決め固定する」ことは、引用発明の「ロックリング25a、25b」が本件補正発明の「ロックリング」に相当するから、本件補正発明の「前記ロックリングを前記胴部に固定する」ことに相当する。
引用発明の「環状の第1シールリング21及び第2シールリング40」は、本件補正発明の「環状の1つ又は複数の第1シール部材」に相当し、引用発明の「押圧体31の貫通孔34の内周面に形成された第1内周溝部20及び第2内周溝部39に同軸線上にそれぞれ嵌着され」ることは、引用発明の「押圧体31」が本件補正発明の「押え部」に相当するから、本件補正発明の「前記押え部内に同軸線上に内蔵され」ることに相当し、引用発明の「貫通孔34にパイプ11が挿入されたときにパイプ11の管外面に接するよう設けられる」ことは、引用発明の「パイプ11」が本件補正発明の「金属管」に相当するから、本件補正発明の「前記金属管が挿通されたときに前記金属管の管外面に接するよう設けられる」ことに相当する。
引用発明の「シールリング38」は、本件補正発明の「第2シール部材」に相当し、「隙間をシール」することは、「間に配置される」ことに相当する。そして、引用発明の「継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔と押圧体31との隙間をシールする」ことは、引用発明の「継手本体12」が本件補正発明の「胴部」に相当し、引用発明の「パイプ11が挿入される孔」が本件補正発明の「挿入孔」に相当し、引用発明の「押圧体31」が本件補正発明の「押え部」に相当するから、本件補正発明の「前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される」ことに相当する。
引用発明の「ベースリング26」は、本件補正発明の「円板面」に相当する。そして、引用発明の「ロックリング25a,25bは、環状をなすベースリング26から内方へ同一長さで突出する複数の規制片27を備え」ることは、「環状をなすベースリング26」が「複数の規制片27」の外周側に配置されているのであるから、本件補正発明の「前記ロックリングは、前記規制片の外周側に形成された円板面と、前記円板面に連続して形成され、前記挿入孔の軸線方向に対して平行に形成されたフランジと、前記フランジの端部を前記ロックリングの径方向内側へ向けて直角に折り曲げて形成された垂直部と、を備え」ることと、「前記ロックリングは、前記規制片の外周側に形成された円板面」を備えるという限りにおいて一致する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「金属管を接続する金属管継手であって、
前記金属管が挿入される挿入孔が形成された胴部と、
前記胴部内に同軸線上に内蔵される環状のロックリングであって、内方に突出して前記金属管の引き抜きを規制する規制片を複数備える、ロックリングと、
前記金属管が挿通する筒状の押え部であって、前記胴部の前記挿入孔に装着され、前記ロックリングを前記胴部に固定する押え部と、
前記押え部内に同軸線上に内蔵され、前記金属管が挿通されたときに前記金属管の管外面に接するよう設けられる環状の1つ又は複数の第1シール部材と、
前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材と、
を備え、
前記ロックリングは、前記規制片の外周側に形成された円板面を備える、金属管継手。」
<相違点1>
「ロックリング」の構成に関して、本件補正発明は、「前記規制片の外周側に形成された円板面と、前記円板面に連続して形成され、前記挿入孔の軸線方向に対して平行に形成されたフランジと、前記フランジの端部を前記ロックリングの径方向内側へ向けて直角に折り曲げて形成された垂直部と、を備え」ることを特定するものであるのに対して、引用発明は、「環状をなすベースリング26から内方へ同一長さで突出する複数の規制片27」を備えることを特定するのみである点。
<相違点2>
本件補正発明は、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」ものであるのに対して、引用発明は、「第2シールリング40の少なくとも一部と、シールリング38の少なくとも一部とは、継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔の入り口側において継手10の軸線方向で重なるように配置されている」ものである点。
オ 判断
(ア) 相違点1について検討する。
引用文献2に記載された技術において、ロックリング3は、金属管Pの引き抜きを規制する爪3bの外周側に形成された円板3aと、円板3aに連続して設けられ、挿通孔3cの軸線Sと平行するフランジ3dと、フランジ3dの先端部をさらに半径方向内向き90度に折り曲げた垂直部3eと、を備えるものであるから、規制片の外周側に形成された円板面と、前記円板面に連続して形成され、金属管Pの挿入孔の軸線方向に対して平行に形成されたフランジと、前記フランジの端部をロックリング3の径方向内側へ向けて直角に折り曲げて形成された垂直部と、を備えるものであるといえる。
引用発明と引用文献2に記載された技術とは、金属管継手と金属管継手のロックリングという関連する技術分野に属するものであり、引用発明のロックリング25a、25bと引用文献2に記載された技術のロックリング3とは、金属管の引き抜きを規制するという共通の機能を有するものであるから、引用発明のロックリングを、金属管の引き抜きを規制する爪の外周側に形成された円板と、円板に連続して形成され、挿入孔の軸線方向に対して平行に形成されたフランジと、前記フランジの端部を前記ロックリングの径方向内側へ向けて直角に折り曲げて形成された垂直部と、を備えるものにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(イ) 相違点2について検討する。
上記2(2)に記載したとおり、本件補正発明の「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」ことは、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等に記載された事項から自明でもない。しかし、上記2(4)アに記載したとおり、当該発明特定事項が「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材」の少なくとも一部と「前記第2シール部材」の少なくとも一部とが「前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向」で重なるように「配置されている」ことを意味するのであれば、当初明細書等に記載された事項であるといえる。
そこで、本件補正発明の「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」は、「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材の少なくとも一部と、前記第2シール部材の少なくとも一部とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向で重なるように配置されている」ものとして、以下、検討する。
上記エに記載したとおり、引用発明の「環状の第1シールリング21及び第2シールリング40」が本件補正発明の「環状の1つ又は複数の第1シール部材」に相当し、引用発明の「第2シールリング40」は、上記ウ(ア)hの図1から、複数の第1シール部材のうちパイプ11の挿入孔の入り口に最も近いものであることが看取されるので、本件補正発明の「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材」に相当する。そして、上記エに記載したとおり、引用発明の「シールリング38」は、本件補正発明の「第2シール部材」に相当し、引用発明の「継手10」は、本件補正発明の「金属管継手」に相当する。
そうすると、引用発明において「第2シールリング40の少なくとも一部と、シールリング38の少なくとも一部とは、継手本体12に形成されたパイプ11が挿入される孔の入り口側において継手10の軸線方向で重なるように配置されている」ことは、本件補正発明の用語で表現すると、複数の第1シール部材のうち挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材の少なくとも一部と、第2シール部材の少なくとも一部とが前記挿入孔の入り口側において金属管継手の軸線方向で重なるように配置されていることになるから、相違点2に係る本件補正発明の構成と相違しない。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
(ウ) そして、相違点1及び相違点2を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(エ) したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではなく、その目的が同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するとしても、本件補正発明は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定にも違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年9月7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年11月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)の請求項1に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1(上記「引用文献1」と同一の文献である。)及び引用文献2(上記「引用文献2」と同一の文献である。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開2000-249268号公報
引用文献2:特開2016-223544号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された技術は、上記第2[理由]2(4)ウに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で補正の適否を検討した本件補正発明から、「1つ又は複数の」、「前記胴部の前記挿入孔の内側において前記胴部と前記押え部との間に配置される第2シール部材と」及び「1つ又は複数の前記第1シール部材のうち前記挿入孔の入り口に最も近い前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、前記挿入孔の入り口側において該金属管継手の軸線方向位置が同じになるように配置されている」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014061