特許拒絶査定不服審判
2016-013342
太陽光発電端子ボックスおよびコネクタ用成形組成物
- 審判番号
- 2016-013342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-512868外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月06日
- 審決日
- 2018年02月19日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
- 【請求人代理人】森下 賢樹
- 分類
- P18 .121-WZ (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-512868「太陽光発電端子ボックスおよびコネクタ用成形組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日国際公開、WO2012/161999、平成26年 9月 4日国内公表、特表2014-522430〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)5月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月26日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成27年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年4月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月24日付けで再度拒絶理由が通知され、同年12月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年10月19日付けで前置報告がされ、平成29年7月10日付けで当審から拒絶理由が通知されたところ、同年10月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年10月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「 【請求項1】
他に明記されない限り組成物の合計質量に対して、
68~73質量%のポリ(アリーレンエーテル)と、
ホモポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、3~12質量%のスチレン系ポリマーと、
有機リン酸エステルと、選択的に、窒素含有難燃剤、金属水酸化物およびこれらの混合物から構成される群から選択された補助難燃剤と、から成る10~20質量%の難燃剤と、
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーであって、その質量に対して、ポリ(アルケニル芳香族)含量が10~45質量%である、3~10質量%の水素化ブロックコポリマーと、
0.06~0.15質量%のポリテトラフルオロエチレンと、
0.5~1.5質量%の直鎖状低密度ポリエチレンと、を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレンは、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンを含み、
ポリアミドの含有量が5質量%以下であり、
ASTM D256-10に準拠し、3.2mm厚の棒と2フィート重量ポンド(2.71J)ハンマーを用い、温度23℃で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも200J/mであることを特徴とする組成物。」
第3 当審から通知した拒絶理由
当審が平成29年7月10日付けで通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「(理由1)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(理由2)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・・・
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2010-123933号公報(拒絶査定における引用文献3)
引用文献2:特開平11-5879号(当審において新たに引用する文献)
引用文献3:特開2010-186517号公報(同上)
引用文献4:特開2004-307797号公報(同上)
引用文献5:国際公開2009/134554号
(特表2011-5229047号公報参照)(同上)
引用文献6:特開2004-197100号公報(同上)
先願:特願2010-286344号(特開2012-134385号)
(拒絶査定における引用文献5) 」
なお、引用文献5の公表公報の番号は、「特表2011-522904号公報」の誤記である。
第4 当審の判断
当審は、以下に述べるように、当審で通知した拒絶理由の理由1について、その理由があり、補正された請求項1に記載された発明(本願発明)は、依然として、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、4ないし6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることはできないものであって、他の請求項について検討するまでもなく、本願発明は拒絶すべきもの、と判断する。
1 引用文献の記載等
(1) 引用文献1に記載された事項
ア-1 「【請求項1】
太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールに接続するためのケーブルと、を少なくとも中継する太陽光発電モジュール用接続構造体であって、
長期耐熱性の指数として、厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度(RTI:Relative thermal index)が115℃以上であり、かつ、-40℃におけるシャルピー衝撃強度が6.5kJ/m2以上である、熱可塑性樹脂組成物を含む太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)スチレン系樹脂と、(C)水添ブロック共重合体と、を含み、
前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の合計100質量部において、
前記(A)の含有量は65~98質量部であり、
前記(B)の含有量は1~25質量部であり、
前記(C)の含有量は1~20質量部である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物の前記定格温度が、120℃以上である、請求項1又は2に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるシャルピー衝撃強度が、7.5kJ/m2以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度が、3.0J以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項6】
90℃・飽和水蒸気環境下で500時間静置後の前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度が、前記静置前の前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度に対して、70%以上の保持率である、請求項1~5のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項7】
前記太陽光発電モジュール用接続構造体が、太陽光発電モジュール用ジャンクションボックスである請求項1~6のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項8】
平均肉厚が、1mm以上2.5mm以下である、請求項7に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項9】
前記太陽光発電モジュール用接続構造体が、太陽光発電モジュール用コネクタである請求項1~6のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項10】
平均肉厚が、0.5mm以上2.5mm以下である、請求項9に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。」
イ-1 「【0001】
本発明は、太陽光発電モジュール用接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽の光エネルギーを電気に変換する太陽光発電モジュール(以下、単に「モジュール」という場合がある)には、その電気を有用な形で取り出すため、モジュール間のケーブルを接続するためのジャンクションボックスやコネクタが、モジュール毎に設けられている。ジャンクションボックス内には、バイパスダイオード等が配置されていて、太陽光発電モジュールの表面に部分的な影がかかったり,電池セルが故障してモジュールの出力が低下したりする場合でも、その影響を最小限に抑える工夫がなされている。この場合、バイパスダイオードは発熱するため、ジャンクションボックス全体が耐熱性を有することが求められる。かかる発熱対策には、ダイオードの数を増やしたり、金属製の放熱板をバイパスダイオードに取り付けることで熱伝導させたり、ジャンクションボックスの容積を大型化したりすることで放熱する方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ジャンクションボックスは、太陽光発電モジュールの付属部品として、屋根上等の屋外に設置されることもあるため、飛来物に対する耐衝撃性を有することが求められ、特に低温時においても耐衝撃性を有することが求められる。ジャンクションボックスの耐衝撃性を向上させるために、製品肉厚を厚くしたり、ボックスを大型化したりすることが行われている。太陽光発電モジュール用コネクタについてもジャンクションボックスと同様に耐衝撃性が求められている。
・・・
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、薄肉化・小型化をしても長期耐熱性に優れ、かつ耐低温衝撃性に優れる太陽光発電モジュール用接続構造体を提供することを主な目的とする。
・・・
【0009】
本発明によれば、薄肉化・小型化をしても長期耐熱性に優れ、かつ耐低温衝撃性に優れる太陽光発電モジュール用接続構造体を提供することができる。」
ウ-1 「【0029】
熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)スチレン系樹脂と、(C)水添ブロック共重合体と、を含み、前記(A)、前記(B)及び前記(C)の合計100質量部において、前記(A)の含有量は65~98質量部であり、前記(B)の含有量は1~25質量部であり、前記(C)の含有量は1~20質量部であることが好ましい。上記(A)~(C)成分を上記比率で含有することにより、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性をより向上させることができ、接続構造体の長期耐熱性及び耐低温衝撃性をより一層優れたものにできる。
・・・
【0037】
熱可塑性樹脂組成物中の(A)ポリフェニレンエーテルの含有量は、特に限定されないが、上記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、65~98質量部の範囲であることが好ましく、70~95質量部がより好ましく、75~93質量部がさらに好ましく、80~90質量部がよりさらに好ましい。上記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部におけるポリフェニレンエーテルの含有量が65質量部以上であれば、耐熱温度が低くなり過ぎず、長期耐熱性を優れたものにできる。また、上記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部におけるポリフェニレンエーテルの含有量が98質量部以下であれば、押出し時の溶融粘度が高くなり過ぎず、生産性をより安定させることができる。
【0038】
(B)スチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、又はスチレン系化合物と前記スチレン系化合物に共重合可能な化合物とを、ゴム質重合体存在下又は非存在下で、重合して得られる重合体をいう。スチレン系化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリフェニレンエーテルとの相溶性の観点から、スチレンが好ましい。
・・・
【0041】
スチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、ゴム補強ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム補強スチレン-アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)、その他のスチレン系共重合体等が挙げられる。
【0042】
熱可塑性樹脂組成物中のスチレン系樹脂(B)の含有量は、特に限定されないが、前記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、1~25質量部の範囲であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。特に長期耐熱性が要求される条件下で接続構造体が用いられる場合、前記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部におけるポリスチレンの含有量が1~25質量部の範囲であることが好ましい。
【0043】
(C)水添ブロック共重合体とは、スチレンとジエン化合物とを少なくとも共重合させて得られるブロック共重合体の水添ブロック共重合体である。水添ブロック共重合体には、その性能に影響を与えない範囲で、その他のモノマーが共重合されていてもよい。ジエン化合物由来の不飽和結合の水添率は60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上である。ここで、水添率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
・・・
【0045】
(C)水添ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックが、全共重合体に占める割合は、特に限定されないが、耐衝撃性の観点から、25~80質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。
・・・
【0047】
熱可塑性樹脂組成物中の(C)水添ブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、上記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、1~20質量部の範囲であることが好ましく、3~10質量部がより好ましく、3~8質量部がさらに好ましい。水添ブロック共重合体の含有量が1質量部以上とすることで、十分な衝撃強度を得ることができる。また、20質量部以下とすることで、優れた耐衝撃性とできるだけでなく、耐熱エージング後の耐衝撃性保持率の低下を防止できる。
【0048】
本実施の形態おいて、熱可塑性樹脂組成物は、(D)リン酸エステルをさらに含むことが好ましい。(D)リン酸エステルを含むことで、難燃性を向上させることができる。リン酸エステルとしては、特に限定されず、(A)ポリフェニレンエーテルの難燃剤として通常用いられる有機リン酸エステルを用いることができる。それらの中でも、下記式(III)又は式(IV)で表される縮合リン酸エステルが好ましい。縮合リン酸エステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
【0050】
式(III)及び式(IV)中、Q1,Q2,Q3及びQ4は、各々置換基であって、各々独立して、炭素数1~6のアルキル基を表し、R7及びR8は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表す。nは1以上の整数を表し、n1及びn2は、各々独立して、0~2の整数を表し、m1,m2,m3及びm4は、各々独立して、0~3の整数を表す。
【0051】
式(III)及び式(IV)で表される縮合リン酸エステルにおいて、それぞれ、nは1以上の整数であり、好ましくは1~3の整数である。
【0052】
これらの中で、式(III)において、m1,m2,m3,m4,n1及びn2が全て0であって、R7及びR8がメチル基である縮合リン酸エステル、及び式(III)において、Q1,Q2,Q3,Q4,R7及びR8が全てメチル基であり、n1及びn2が0であり、m1,m2,m3及びm4が、各々独立して、1~3の整数である、縮合リン酸エステルであって、nの範囲は1~3であることが好ましい。これらの中でも、特に、nが1であるリン酸エステルを(D)成分中に50質量%以上含むものが、より好ましい。これらの難燃剤は、市販品を用いることもでき、例えば、大八化学社製の商品名「CR-741」、「CR733S」、「PX-200」等が挙げられる。リン酸エステルとして、具体的には、ビスフェノールAビスジフェニルフォスフェート、レゾルシンビスジキリルフォスフェートが、特に好ましい。
【0053】
熱可塑性樹脂組成物中の(D)リン酸エステルの含有量は、特に限定されず、接続構造体に所望する難燃性レベルにより異なるが、上記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、3~30質量部の範囲であることが好ましく、5~25質量部がより好ましく、5~20質量部がさらに好ましい。リン酸エステルの含有量が3質量部以上であれば、十分な燃焼性を得ることができる。また、30質量部以下であれば、難燃性だけでなく、十分な耐熱性も得ることができ、優れた物性バランスを得ることができる。
【0054】
本実施の形態において、熱可塑性樹脂組成物は、(E)ポリオレフィンをさらに含むことが好ましい。ポリオレフィンを含むことで、耐熱性をさらに向上させることができる。(E)ポリオレフィンとしては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、低密度ポリエチレン及びエチレン-プロピレン共重合体が好ましい。エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体は、一般に、非晶性又は低結晶性の共重合体である。これらの共重合体には、その性能に影響を与えない範囲で、その他のモノマーが共重合されていてもよい。エチレンと、プロピレン、ブテン又はオクテンと、の成分比率は、特に限定されないが、通常、共重合体中におけるプロピレン、ブテン又はオクテンの成分比率は、それぞれ5~50モル%の範囲である。これらのポリオレフィンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
・・・
【0056】
熱可塑性樹脂組成物中の(E)ポリオレフィンの含有量は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分への分散性の観点から、上記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、0.5~5質量部の範囲であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましく、0.5~2質量部であることがさらに好ましい。
【0057】
熱可塑性樹脂組成物には、ガラス繊維、ガラスフレーク、カオリンクレー、タルク等の無機充填剤、その他の繊維状補強剤等を配合することで、流動性と耐熱性がさらに優れた高強度材料とすることができる。また、熱可塑性樹脂組成物には、他の特性をさらに付与するため、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、他の添加剤を添加することができる。ここで、他の添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、各種安定剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、その他の樹脂等が挙げられる。また、従来公知の、他の難燃剤及び難燃助剤を配合することで、難燃性をさらに向上させることもできる。他の難燃剤及び難燃助剤としては、例えば、結晶水を含有する水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の水酸化物;ホウ酸亜鉛化合物;スズ酸亜鉛化合物;シリカ、カオリンクレー、タルク等の無機ケイ素化合物等が挙げられる。」
エ-1 「【0071】
接続構造体の一般的な製法としては、射出成形、厚板からの切削による成形等があるが、量産性の観点から射出成形が好ましい。特に、ジャンクションボックスとした場合は、射出成形において溶融樹脂が複数方向から合流する際に発生するウェルドラインが少なく、爪部や薄肉部といった流動末端や流動しづらい部分にも十分に圧力がかかった状態で充填できるような樹脂充填ゲート位置を選定することが、耐衝撃性・寸法精度の観点から、好ましい。また、コネクタその他の部品との勘合・接合を確実なものにするために、接続構造体の表面平滑性や寸法精度を損なうヒケやソリが生じにくい形状にすることが、防水性や太陽光発電モジュールへの取り付けの観点から、好ましい。
【0072】
コネクタとした場合も、ジャンクションボックスと同様に、射出成形が製法として好ましく、少ないウェルドや樹脂充填ゲート位置の適切な選定を施した構造・製法が、耐衝撃性・寸法精度の観点から、好ましく、特に防水性や絶縁性確保の観点から、ソリやヒケが生じにくい形状が好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0074】
(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)粉体
30℃、クロロホルム溶液で測定した、還元粘度が0.48dL/gであるポリ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル。
【0075】
(B)スチレン系樹脂
(B-1)ポリスチレン(GPPS)
ポリスチレン:PSジャパン社製、商品名「685」
(B-2)ゴム補強ポリスチレン(HIPS)
ハイインパクトポリスチレン:PSジャパン社製、商品名「H9405」
【0076】
(C)水添ブロック共重合体
数平均分子量41,000のスチレンブロック鎖を2個有し、1,2-ビニル構造が33%のS-B-S-B構造、スチレン重合体ブロック33質量%、ブタジエンユニットの水素添加率99%、数平均分子量約250,000の水添スチレンブロック共重合体。
【0077】
(D)リン酸エステル
縮合リン酸エステル:大八化学社製、商品名「CR-741」
【0078】
(E)ポリオレフィン
低密度ポリエチレン:旭化成ケミカルズ社製、商品名「M2004」
【0079】
(F)熱安定剤
(F-1)ヒンダードフェノール系熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名「IRGANOX565」
(F-2)ホスファイト系酸化防止剤:ADEKA社製、商品名「PEP36」
(F-3)リン系熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGFOS168」
【0080】
(G)ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名[ノバレックス7025R]
(H)複合ゴム系グラフト共重合体:三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンSRK200」
(I)ポリフェニレンサルファイド樹脂:溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重2MPa、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値)が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.4重量%、-SX基量が29μmol/gである直鎖状構造を有するポリフェニレンサルファイド。
(J)繊維状強化充填剤:日本板硝子社製、商品名「RES03-TPO15」
(K)衝撃改良剤:住友化学社製、商品名「ボンドファースト2C」
【0081】
<実施例1>
表1に記載の押出し条件にて熱可塑性樹脂組成物を得た。使用した材料は以下の通りである。
(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)粉体:87質量部
30℃、クロロホルム溶液で測定した、還元粘度が0.48dL/gであるポリ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル。
(B-1)ポリスチレン(GPPS):7質量部
ポリスチレン:PSジャパン社製、商品名「685」。
(C)水添ブロック共重合体:6質量部
数平均分子量約41,000のスチレンブロック鎖を2個有し、1,2-ビニル構造が33%のS-B-S-B構造、スチレン重合体ブロック33質量%、ブタジエンユニットの水素添加率99%、数平均分子量約250,000の水添スチレンブロック共重合体。
(D)リン酸エステル:14質量部
縮合リン酸エステル:大八化学社製、商品名「CR-741」
(E)ポリオレフィン:0.1質量部
低密度ポリエチレン:旭化成ケミカルズ社製、商品名「M2004」
(F-1)「IRGANOX565」:0.6質量部
ヒンダードフェノール系熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX565」
(F-2)「PEP36」:0.6質量部
ホスファイト系酸化防止剤、ADEKA社製、商品名「PEP36」
・・・
【0084】
(耐熱エージング測定を用いたRTI)
ASTM D1822に基づいて作製した1.5mm肉厚の引張り衝撃試験片を、160℃、150℃、140℃、130℃、120℃にそれぞれ設定した空気循環オーブン内に放置し、同規格に従って引張衝撃強度が初期値の50%に達するまでのエージング時間を測定した。そして、標準サンプルとして、「ザイロン(TM)SZ800」を用いた。標準サンプルについて、150℃、140℃、130℃、120℃で、引張衝撃の初期値が50%に達する時間をプロットし、UL 746Bで規定された既知のRTI(110℃)まで外挿したエージング時間における温度を求め、これをRTIとした。
【0085】
(低温シャルピー衝撃)
シャルピー衝撃試験規格であるISO179/1eAに準拠して測定した。安田精機社製、シャルピー衝撃試験機「258-PLA」を用いて、-40℃環境下で測定した。
【0086】
(低温ダート衝撃試験)
-40℃の恒温槽に5時間静置した、射出成形された試験片(縦70mm×横70mmで、厚みが1mm)を、ROSAND社製、IFW落下衝撃試験機「5H.V.」を用いて測定した。試験片を直径50mmの円筒に挟みこんで固定し、1.9mの高さから、直径10mm、重さ3.2kgのストライカーを平板中央に垂直に落下させ、その破壊エネルギーを測定した。
【0087】
(耐湿性評価)
射出成形された試験片(縦70mm×横70mmで厚みが3mm)を、90℃の飽和湿度環境下に500時間静置する前後について、それぞれダート衝撃試験を行い、その保持率を評価した。まず、静置前の試験片の-40℃におけるダート衝撃強度を、低温ダート衝撃試験と同様にして測定した。続いて、プレッシャークッカー(協真エンジニアリング社製)を用いて90℃の飽和湿度環境とし、そこに上記試験片を500時間静置した。その後、低温ダート衝撃試験と同様の条件で、静置後の試験片の-40℃におけるダート衝撃強度を測定した。さらに、静置前の試験片の-40℃におけるダート衝撃強度に対する、静置後の試験片の-40℃におけるダート衝撃強度の割合(保持率、%)を、求めた。
【0088】
(ボックス評価)
天面に1点のサイドゲート(5mm×1mm)が形成されたボックス形状(高さ10mm×幅70mm×長さ110mm、肉厚2mm)の成形品を、射出成形により得た。プレッシャークッカー(協真エンジニアリング社製)を用いて、120℃、飽和湿度の環境とし、そこに上記成形品を100時間静置した。その後、成形品の寸法とダート衝撃強度を測定した。寸法については、静置前後での長さ、幅及び高さを測定し、いずれかの寸法変化率が1%未満である場合を「A」と評価し、1~5%である場合を「B」と評価し、5%より大きい場合を「C」と評価した。低温ダート衝撃試験については、フィルムインパクトテスター(東洋精機製作所社製)を用いて、-40℃において3Jのエネルギーを直径13mmの鉄製ストライカーに与えて、上記成形品の天面に打突させて試験した。3サンプルについて同様の条件で試験を行い、夫々の破壊形態を評価した。3サンプル全てが、変形した、又は生じたクラックが貫通していない場合を「A」と評価し,3サンプルのうち一つでもクラックが貫通した場合を「B」と評価し、3サンプル全てについてクラックが貫通した場合を「C」と評価した。
【0089】
<実施例2~5>
表2に示す配合とした点以外は、実施例1と同様にしてペレットを作製し、その物性を試験した。
・・・
【0099】
【表2】
・・・
【0101】
以上より、本実施例によれば、本実施の形態に係る太陽光発電モジュール用接続構造体は、薄肉化・小型化をしても長期耐熱性に優れ、かつ耐低温衝撃性に優れることが示された。」
(2) 引用文献2に記載された事項
ア-2 「【請求項1】 (A)スチレン系樹脂1~99重量部、(B)ポリフェニレンエーテル99~1重量部からなる樹脂成分100重量部に対して、(C)難燃剤1~100重量部、(D)フッ素系樹脂0.001~0.09重量部からなるフッ素系樹脂含有滴下型難燃樹脂組成物。
【請求項2】 (C)難燃剤が芳香族系リン酸エステルであるフッ素系樹脂含有滴下型難燃樹脂組成物。」(請求項1、2)
イ-2 「【0130】
(ハ)リン系難燃剤
(1)1,3-フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)(FR-1)
市販の、レゾルシン由来の芳香族縮合リン酸エステル{大八化学工業(株)製、商品名 CR733S(以下、FR-1と称する)}を用いた。また、上記芳香族縮合リン酸エステルは、GPC分析によると、下記式(18)で表わされるTPPダイマー(n=1)とTPPオリゴマー(n≧2)とからなり、重量比でそれぞれ65/35であった。
【0131】
【化17】
・・・
【0136】
(4)ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)(FR-4)
市販の、ビスフェノールA由来の芳香族縮合リン酸エステル{大八化学工業(株)製、商品名 CR741(以下、FR-4と称する)}を用いた。また、上記芳香族縮合リン酸エステルは、GPC分析によると、下記式(20)で表わされるTPP-A-ダイマー(n=1)とTPP-A-オリゴマー(n≧2)とトリフェニルホスフェート(TPP)からなり、重量比でそれぞれ84.7/13.0/2.3であった。
【0137】
【化19】
」
ウ-2 「【0143】
【0144】
表1によると、PTFEが0.001~0.09重量部含有する場合のみ、火種の落下延焼がなく、かつ外観の優れた成形体が得られることが分かる。また、ノボラック樹脂の添加により流動性と耐熱性が向上することが判明した。」
エ-2 「【0151】
【発明の効果】本発明は、フッ素系樹脂を含有した滴下型難燃性を有するスチレン系樹脂組成物に関する。」
(3) 引用文献4に記載された事項
ア-4 「【請求項1】
ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との組み合わせより成る樹脂(A)成分、ヒンダードアミン光安定剤(B)成分、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(C)成分、エポキシ化合物(D)成分および必要に応じて用いられるリン酸エステル(E)成分からなる耐光性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との重量比が10/90~95/5の樹脂(A)成分および必要に応じて用いられる(E)成分との合計量100重量部、(B)成分0.03~5重量部、(C)成分0.01~3重量部および(D)成分0.01~3重量部からなる請求項1に記載の耐光性樹脂組成物。」(請求項1、2)
イ-4 「【0033】
本発明組成物には必要に応じて、ドリップ防止剤を含んでいてもよい。このドリップ防止剤とは、燃焼の際に、ドリップ(滴下)を抑制する働きのある添加剤であり、公知のものが使用できる。ドリップ防止剤は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂(回収スチレン系樹脂、バージン材も含む)との合計100重量部に対し、0.01~5重量部、好ましくは0.05~3重量部の範囲で添加される。
【0034】
本発明では、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などに代表される変性PPE樹脂中でフィブリル構造を形成するものがドリップの抑制効果が高いので好適である。このようなドリップ防止剤が含まれる樹脂組成物は特に難燃性に優れている。このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の中でも、分散性に優れたもの、たとえば水などの溶液にPTFEを乳化分散させたもの、またアクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等でPTFEをカプセル化処理したものは、変性PPE樹脂からなる成形体に、よい表面外観を与えるので好ましい。」
ウ-4 「【0044】
【実施例1~7、比較例1~5】
各成分を表1および2に示す割合で配合した。上記組成物中には、その他に、安定剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを0.3重量部、着色剤として二酸化チタンを3重量部、難燃補助剤としてポリテトラフルオロエチレンを0.15重量部配合した。これらの配合組成のものを、加熱シリンダーの最高温度を320℃に設定したスクリュー直径25mmの二軸押出機に供給して、スクリュー回転数300rpmで溶融混練りし、ストランドを冷却細断して樹脂組成物ペレットを得た。次に、得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形により加熱筒240℃、金型温度50℃にて50mm×90mm×2.5mmの平板を成形し、上記試験法により耐光性試験を行い、表1および2の結果を得た。」
(4) 引用文献5に記載された事項
引用文献5は英語で記載されているので、訳文を対応日本語公報である特表2011-522904号公報の記載を参考に作成した。
ア-5 「請求の範囲
1 一部が、少なくとも10cmの第1の寸法と、
少なくとも10cmの第2の寸法と、
1cm未満の第3の寸法と、を有し、
クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3~0.55dL/gの、30~60質量%のポリ(アリーレンエーテル)と、
20~60質量%のゴム変性ポリスチレンと、
1気圧下、25~50℃の範囲の少なくとも1つの温度で液体である、10~20質量%のリン酸トリアリールと、を含有する射出成形組成物の製品であり、
質量%はすべて、前記射出成形組成物の全質量に対するものであり、
ASTM D3835に準じて、せん断速度が100秒-1および10,000秒-1、温度が260~300℃の条件で測定した前記射出成形組成物のせん断速度依存指数が6~17である、ことを特徴とする射出成形品。」(対応日本語公報請求項1)
イ-5 「[0024]一部の実施形態では、前記射出成形組成物は、必要なものとしてまたは任意的なものとして上述していない、いかなる成分も含まない。例えば、一部の実施形態では、該射出成形組成物が2質量%までの高分子離型剤および/または、例えば、一般にはアクロニムTSANと呼ばれるポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化および/またはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンなどの0.5質量%までのフルオロポリマー含有添加剤を含むことができるならば、該射出成形組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とゴム変性ポリスチレンと任意的な非水素化ブロック共重合体以外の、いかなるポリマーも含まない。一部の実施形態では、該射出成形組成物は充填材を含まない。一部の実施形態では、該射出成形組成物は、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィンホモポリマー類、ポリ(アルケニル芳香族)ホモポリマー類、ポリ(フェニレンスルフィド)類、およびアルケニル芳香族と共役ジエンとの水素化ブロック共重合体類を含まない。」(対応日本語公報【0026】)
ウ-5 「[0080]表1に記載の材料を用いて射出成形組成物を調製した。
表1
」(対応日本語公報【0082】ないし【0083】)
エ-5 「[0091]表2および3の特性に関し、実施例1~4の射出成形組成物からは、0.48~0.66%という驚くほど低い成形収縮値の物品が得られた。観察されたこれらの成形収縮値は、0.74%という比較例1の成形収縮値より予想外に低かった。また、実施例1~4の組成物の熱変形温度は81~98℃であり、比較例1の80℃と比較して優れていた。また、実施例1~4の組成物のせん断速度依存指数は、比較例1と比べて低減されていた。具体的には、比較例1のせん断速度依存指数17.9に対して、実施例1~4のそれは1-2.5~14.8であった。特定の理論に拘束されることを願っている訳ではないが、本発明者は、100~10,000秒-1における粘度から求められるせん断速度依存指数によって、電槽などの大型で薄肉の物品の成形可能性が予測できると考える。射出成形ではせん断速度が1000~10,000秒-1における溶融粘度が重要だと考えられていたことからすると、これは驚くべきことである。このように、100~10,000秒-1における粘度を基に求めたせん断速度依存指数は、大型で薄肉の物品をポリ(アリーレンエーテル)組成物から成形するための、以前には認識されていなかった有効変数であると思われる。
表2
」(対応日本語公報【0096】ないし【0097】)
(5) 引用文献6に記載された事項
ア-6 「【請求項1】
組成物の全重量を基準とした重量百分率で表示して、
約20~80重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂、
約80~20重量%のゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、及び
約2~15重量%の不飽和耐衝撃性改良剤
を含んでなるブロー成形用組成物。
【請求項5】
さらに、カプセル封入フルオロポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記カプセル封入フルオロポリマーがスチレン-アクリロニトリルでカプセル封入されたポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
さらに、組成物の全重量の約5~40重量%のホモポリスチレンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
さらに、ポリオレフィンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
組成物の全重量を基準とした重量百分率で表示して、
約20~80重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂、
約80~20重量%のゴム改質ポリ(アルケニル芳香族)樹脂、
約0.005~2重量%のカプセル封入フルオロポリマー、及び
約2~15重量%の不飽和耐衝撃性改良剤
を含んでなるブロー成形用組成物。
【請求項13】
当該組成物の直径約25cm、肉厚約0.1cmの押出チューブが長さ30cmから75cmまで垂れ下がる懸垂時間が約4~90秒である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記懸垂時間が約5~30秒である、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記カプセル封入フルオロポリマーがスチレン-アクリロニトリルコポリマーでカプセル封入されたポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
さらに、ポリオレフィンを含む、請求項12記載の組成物。」(請求項1ないし8、12ないし16)
イ-6 「【0029】
カプセル封入フルオロポリマー中のフルオロポリマーは、融点が約320℃以上のフルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレンを含有する。カプセル封入フルオロポリマーとしては、スチレン-アクリロニトリルコポリマーでカプセル封入されたポリテトラフルオロエチレン(すなわちTSAN)が好ましい。TSANは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水性分散液の存在下でスチレンとアクリロニトリルを共重合することにより製造できる。TSANは、例えば、カプセル封入フルオロポリマーの全重量に基づいて、約50重量%のPTFEと約50重量%のスチレン-アクリロニトリルコポリマーとを含有し得る。スチレン-アクリロニトリルコポリマーは、例えば、コポリマーの全重量に基づいて約75重量%のスチレンと約25重量%のアクリロニトリルとを含有し得る。TSANはポリテトラフルオロエチレンと比べて有意な利点を有する。すなわちTSANはポリ(アリーレンエーテル)樹脂へ極めて容易に分散する。
【0030】
カプセル封入フルオロポリマーは、存在する場合、組成物の全重量の約0.005重量%以上、好ましくは約0.05重量%以上、さらに好ましくは約0.1重量%以上を占める。カプセル封入フルオロポリマーは、存在する場合、組成物の全重量の約2.0重量%以下、好ましくは約1.0重量%以下、さらに好ましくは約0.7重量%以下を占める。」
ウ-6
「【0035】
本組成物に適宜配合し得るポリオレフィンは、一般構造CnH2nで表され、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンなどを含み、ホモポリマーとしてはポリエチレン、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)及びアイソタクチックポリプロピレンが好ましい。この一般構造のポリオレフィン樹脂及びその製造方法は当業界で周知であり、例えば米国特許第2933480号、第3093621号、第3211709号、第3646168号、第3790519号、第3884993号、第3894999号、第4059654号、第4166055号及び第4584334号に記載されている。
【0036】
ポリオレフィンとしては、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。線状低密度ポリエチレンはよく知られた材料であり、例えばExxon社から登録商標ESCORENEにて、またDow Chemicals社から登録商標DOWLEXにて市販されている。或いは、米国特許第4128607号、第4354009号及び第4076698号及び欧州特許出願第4645号(1979年10月17日公開)に記載されている方法など、現在採用できる重合方法により簡単に製造できる。これらのポリマーは密度が約0.89~0.96g/ml、好ましくは約0.915~0.945g/mlである。線状低密度ポリエチレンポリマーは、エチレンと少量、代表的には約20モル%未満の、好ましくは約15モル%未満の、炭素原子数3~18、好ましくは炭素原子数3~10、特に好ましくは炭素原子数4~8のα-オレフィンとのコポリマーである。存在する場合、ポリオレフィンは、組成物の全重量の約0.2重量%以上、好ましくは約0.4重量%以上、さらに好ましくは約0.6重量%以上を占める。ポリオレフィンは、組成物の全重量の約4.0重量%以下、好ましくは約3.0重量%以下、さらに好ましくは約2.0重量%以下を占める。」
エ-6 「【0046】
【表1】
表1
【0047】
表2に示す添加剤は、線状低密度ポリエチレン(Petrothene、Equistar Chemical社製)、酸化防止剤(Ultranox626、GE Plastics社製)及びカーボンブラック(Monarch800、Cabot社製)である。
【0048】
これらの成分を表2に示す重量割合で混合し、温度260~340℃で押出した。
【0049】
曲げ弾性率及び曲げ降伏強さはASTM D790に準じて測定した。加熱変形温度(HDT)はASTM D648に準じて246psi及び66psiで測定した。引張降伏強さ及び伸び(%)はASTM D638に準じて測定した。ノッチ付きアイゾッド衝撃強さはASTM D256に準じて成形衝撃試験片(厚さ3.2mm)につき23℃及び-30℃で測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
表2
【0051】
表2のデータからわかるように、固有粘度0.33dl/gのポリ(アリーレンエーテル)及び順次増加する量のTSANを含有する組成物は、懸垂時間が、固有粘度0.46dl/gのポリ(アリーレンエーテル)を含有し、TSANを含有しない組成物と同等であるか長い。固有粘度0.33dl/gのポリ(アリーレンエーテル)及びTSANを含有する組成物の懸垂時間は、TSANを含有しない同様の組成物の懸垂時間より2倍から30倍以上長い。さらに、固有粘度0.33dl/gのポリ(アリーレンエーテル)及びTSANを含有する組成物は、TSANを含有しない同様の組成物よりサンダー加工性に優れる。溶融強度とサンダー加工性との釣り合いが良いので、これらの組成物はブロー成形用途に特に有用である。
【0052】
カプセル封入フルオロポリマーを使用することで、フルオロポリマーを組成物中に一層均一に分散させることができる。非カプセル封入ポリテトラフルオロエチレンから形成した組成物は、ポリテトラフルオロエチレンのポリ(アリーレンエーテル)への分散性が悪いため、特性のばらつきが大きい。カプセル封入フルオロポリマーで実現される高度分散の結果として、ほぼ均一な特性の組成物が得られる。」
(6) 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、摘記事項ア-1ないしエ-1の記載、特に、摘記事項ア-1の請求項1~2、エ-1の【0071】、【0072】及び実施例4の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「下記の組成からなる熱可塑性樹脂組成物であって、
長期耐熱性の指数として、厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度(RTI)が116℃であり、かつ、-40℃におけるシャルピー衝撃強度が9kJ/m2である、組成物。
(A)ポリフェニレンエーテル:81質量部(70.3質量%)、
(B-1)ポリスチレン:10質量部(8.7質量%)、
(C)スチレンブロック鎖を2個有し、スチレン重合体ブロック33質量%、数平均分子量250,000の水添スチレンブタジエンブロック共重合体:9質量部(7.8質量%)
(D)縮合リン酸エステル:14質量部(12.1質量%)
(E)低密度ポリエチレン:0.1質量部(0.087質量%)
(F-1)ヒンダードフェノール系熱安定剤:0.6質量部(0.5質量%)
(F-2)ホスファイト系酸化防止剤:0.6質量部(0.5質量%) 」(以下「引用発明1」という。括弧内の数値は、組成物全体を100重量%とした場合の含有量である。)
2 対比・判断
(1) 対比
引用発明1の「(A)ポリフェニレンエーテル:81質量部(70.3質量%)」、「(B-1)ポリスチレン:10質量部(8.7質量%)」、「(D)縮合リン酸エステル:14重量部(12.1質量%)」、「(C)スチレンブロック鎖を2個有し、スチレンブロック33質量%、数平均分子量250,000の水添スチレンブタジエンブロック共重合体:9重量部(7.8質量%)」は、それぞれ本願発明1の「68~73質量%のポリ(アリーレンエーテル)」、「ホモポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、3~12質量%のスチレン系ポリマー」、「有機リン酸エステルと、選択的に、窒素含有難燃剤、金属水酸化物およびこれらの混合物から構成される群から選択された補助難燃剤と、から成る10~20質量%の難燃剤」、「アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーであって、その質量に対して、ポリ(アルケニル芳香族)含量が10~45質量%である、3~10質量%の水素化ブロックコポリマー」に相当する。
引用発明1の「熱可塑性樹脂組成物」は、本願発明の「組成物」に相当する。
また、引用発明1は、ポリアミドを含まないから、「ポリアミドの含有量が5質量%以下」である点で、本願発明と一致する。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「他に明記されない限り組成物の合計質量に対して、
68~73質量%のポリ(アリーレンエーテル)と、
ホモポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、3~12質量%のスチレン系ポリマーと、
有機リン酸エステルと、選択的に、窒素含有難燃剤、金属水酸化物およびこれらの混合物から構成される群から選択された補助難燃剤と、から成る10~20質量%の難燃剤と、
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーであって、その質量に対して、ポリ(アルケニル芳香族)含量が10~45質量%である、3~10質量%の水素化ブロックコポリマーと、
ポリアミドの含有量が5質量%以下である、組成物。」
である点で一致し、次の点において相違する。
<相違点1>
本願発明は、「0.06~0.15質量%のポリテトラフルオロエチレン」を含み、かつ、「前記ポリテトラフルオロエチレンは、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレン」を含むのに対し、引用発明1は、当該成分を含まない点。
<相違点2>
本願発明は、「ASTM D256-10に準拠し、3.2mm厚の棒と2フィート重量ポンド(2.71J)ハンマーを用い、温度23℃で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも200J/mである」ことが特定されているのに対して、引用発明1は、引張衝撃強度の定格温度とシャルピー衝撃強度が特定されているものの、当該ノッチ付アイゾット衝撃強度の数値は特定されていない点。
<相違点3>
本願発明は、「0.5~1.5質量%の直鎖状低密度ポリエチレン」を含むのに対し、引用発明1は「低密度ポリエチレンを0.1質量部(0.087質量%)」で含んでいるものの、本願発明で特定する直鎖状低密度ポリエチレンを特定量で含まない点。
(2) 判断
上記相違点について、相違点1、3、2の順で検討する。
ア 相違点1について
a ポリテトラフルオロエチレンとして、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンを用いる点について
引用文献1には、「熱可塑性樹脂組成物には、他の特性を付与するため、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、他の添加剤を添加することができる。・・・また、従来公知の、他の難燃剤及び難燃助剤を配合することで、難燃性をさらに向上させることもできる。」(摘記事項ウ-1【0057】)と記載され、引用発明1の効果、すなわち、薄肉化・小型化をしても長期耐熱性に優れ、かつ耐低温衝撃性に優れるという効果(摘記事項イ-1【0009】)を損なわない範囲で、従来公知の難燃助剤を配合することで、難燃性をさらに向上させることができることが記載されているといえる。
他方、引用発明1と同様に、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物において、難燃性を向上させるためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加することは周知であり(引用文献2:摘記事項ア-2、引用文献4:摘記事項イ-4、引用文献5:摘記事項イ-5ないしウ-5等参照)、また、市販されている「TSAN」等のポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンも周知である(引用文献5摘記事項ウ-5の表1、引用文献4摘記事項イ-4【0034】(特に第9頁第11ないし13行)、引用文献6摘記事項ア-6、エ-6表1)。そして、「TSAN」は、ポリフェニレンエーテルに分散しやすいことが知られているから(引用文献6摘記事項イ-6【0029】)、引用発明1において、ポリフェニレンエーテルに分散しやすい「TSAN」等のポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンを、難燃性を向上させるために添加することは、当業者が容易になし得たことである。
b ポリテトラフルオロエチレンとしての配合量について
上記aで述べたように、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物において、難燃性を向上させるためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加することは周知であるところ、その添加量を、他の物性を損なわない程度の「0.06~0.15質量%」の範囲内の数値とすることも一般的である(引用文献2:摘記事項ウ-2実施例3(約0.079質量%(0.09÷114.09))、引用文献4:摘記事項イ-4【0033】、実施例1~7(約0.14質量%(0.15÷(101.5+0.3+3+0.15))、引用文献5:実施例1~4(TSANとして約0.11~0.34質量%、PTFEとして、表1のPTFEの配合量(47~53質量%)より約0.05~0.18質量%)、引用文献6:実施例2~6(TSANとして約0.1~0.5質量%、PTFEとして表1の割合から0.05~0.25質量%)等参照。注:括弧内の数値は組成物全体を100質量%として計算した数値である。)。
また、「TSAN」におけるPTFEの配合量として検討しても、引用文献5(実施例1~4(TSANとして約0.11~0.34質量%、PTFEとして、表1のPTFEの配合量(47~53質量%)より約0.05~0.18質量%))、引用文献6(実施例2~6(TSANとして約0.1~0.5質量%、PTFEとして表1の割合から0.05~0.25質量%))の記載によれば、これらの「TSAN」におけるPTFEの配合範囲と本願発明で規定する「0.06~0.15質量%」の範囲とは大部分が重複するから、本願発明のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の配合量の範囲は一般的なものといえる。
上記a,bでの検討を踏まえると、引用発明1において、さらに難燃性を向上させるための周知の難燃助剤である「TSAN」等のポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンを配合し、他の物性や効果を損なわない範囲で、ポリテトラフルオロエチレンとして「0.06~0.15質量%」という一般的な範囲内の数値を採用することに、特段の創意工夫を要したとはいえない。
イ 相違点3について
引用文献1には、(A)、(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、(E)ポリオレフィンを0.5~2質量部添加することが好ましいこと、及び、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレン等を用いることができることが記載されている(摘記事項ウ-1【0054】、【0056】)。
したがって、引用発明1において、低密度ポリエチレンに代えて、線状ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンに相当)を組成物全体に対して0.5~1.5質量%程度添加することは、当業者が容易になし得た事項にすぎない。
ウ 相違点2について
本願明細書の発明の詳細な説明の記載、特に実施例1と比較実施例1~4の記載からてみて、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレン以外の組成が本願発明1の組成を満たせば、ノッチ付アイゾット衝撃強度は少なくとも200J/mとなり、それにポリテトラフルオロエチレンを0.06~0.15質量%の範囲内で添加しても当該衝撃強度には影響しないことが理解できる。 また、本願明細書の段落【0045】に、配合できるポリオレフィンとして、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンがともに列挙されていること、また、ポリオレフィンの配合量が0.5~0.15重量%と少量であることからみて、本願発明と引用発明1とのポリオレフィンの差異、つまり、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンの添加の差異により、衝撃強度に大きな影響があるようには解されない。
そうすると、引用発明1は、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンと、オレフィンとして低密度ポリエチレンを配合している点以外の組成は、本願発明の組成を満たしており、さらに、配合されるポリオレフィンの差異及び量比により、アイゾット衝撃強度等の効果に大きな影響を与えるものとは認識できないことから、引用発明1のノッチ付アイゾット衝撃強度は少なくとも200J/m程度であると推認されるものである。
さらに、引用発明1においても、耐衝撃強度が必要なことは指摘され(摘記事項イ-1【0003】、【0006】)、異なる測定法によるものではあるが耐衝撃強度が測定されていることや、ASTM D256は周知の耐衝撃強度の指標であることを踏まえれば、その一つであるASTM D256-10に準拠したノッチ付アイゾット衝撃強度(23℃)の耐衝撃性に関する指標において、引用発明1において、ポリテトラフルオロエチレン添加の前後のノッチ付アイゾット衝撃強度(23℃)の数値を測定し、少なくとも200J/mとすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
エ 本願発明の効果について
難燃性の効果について、上記ア(相違点1について)で述べたように、引用発明1に、難燃性を向上させる周知の成分であるポリテトラフルオロエチレンを0.06~0.15質量%の範囲内となるように「TSAN」等のポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンを添加したことにより、他の物性をそれほど損なわず難燃性が向上することは、当業者が予測可能な程度のものといえる。
そして、本願発明1に対応する実施例1が、(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリフルオロエチレンを含まない以外は実施例1と類似の組成を有する比較実施例1に比べ、他の物性はそれほど損なわずに、垂直難燃性試験における「5VA/5VB最小厚み」が3.2mm超から2.5mmまで低下したことは、前述のように難燃性が向上したことによるものであり、引用発明1および周知技術から予測される効果に比べ、格別顕著なものということはできない。
また、耐衝撃性の効果についても、上記ウで述べたとおりであり、本願発明の効果が引用発明1に比して格別なものと認めることはできない。
オ 審判請求人の主張
審判請求人は、平成29年10月10日に提出した意見書において、
『本願の請求項1に係る発明は、
「他に明記されない限り組成物の合計質量に対して、
68~73質量%のポリ(アリーレンエーテル)と、
ホモポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、3~12質量%のスチレン系ポリマーと、
有機リン酸エステルと、選択的に、窒素含有難燃剤、金属水酸化物およびこれらの混合物から構成される群から選択された補助難燃剤と、から成る10~20質量%の難燃剤と、
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーであって、その質量に対して、ポリ(アルケニル芳香族)含量が10~45質量%である、3~10質量%の水素化ブロックコポリマーと、
0.06~0.15質量%のポリテトラフルオロエチレンと、
0.5~1.5質量%の直鎖状低密度ポリエチレンと、を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレンは、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)でグラフト化およびまたはコーティングされたポリテトラフルオロエチレンを含み、
ポリアミドの含有量が5質量%以下であり、
ASTM D256-10に準拠し、3.2mm厚の棒と2フィート重量ポンド(2.71J)ハンマーを用い、温度23℃で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも200J/mであることを特徴とする組成物」です。
・・・
これに対し、引用文献1には上述した構成について開示も示唆もされていません。
ここで、審判官殿は、ポリフェニレンエーテル組成物の難燃性を向上させるためにポリテトラフェニレンエーテル(合議体注:「ポリテトラフルオロエチレン」の誤記と思われる。)(PTFE)を添加することは周知である旨言及されています。
しかしながら、たとえ難燃性を向上させることが自明だとしても、他の重要な特性を実質的に損なわずに成形性と難燃性を向上できることは自明ではありません。
本願の組成物の技術的効果は、少量のPTFEを含む本願の実施例1で見られます。本願の実施例1の組成物の性能は、すべての目標を超えており、これは、本願の請求項に係る組成物によって達成される有利な効果を実証しています。PTEE量がこのように少ない、主要成分の投入量範囲で達成されたこの優れた結果は、予想外のものです(本願明細書の表2、段落【0081】参照)。
さらに、PTFEを含まない本願の比較実施例1-4ではそれぞれ、少なくとも1つの重大な性能不足が見られました(本願明細書段落【0082】-【0086】参照)。したがって、極少量のPTFEを組成物に添加することで、予想外の有利な技術的効果が得られます。
それ故に、本願の請求項1,6に係る発明は、特性バランスを向上させるという本願の目的を解決するものです。
引用文献1に記載の組成物はPTFEを含みません。したがって、難燃性を向上し得る成分としてPTFEが周知であるとしても、請求項1,6で特定されるように、少量のPTFEを添加することで、他の重要な特性を損なわずに、成形性と難燃性が向上した組成物が得られることは、引用文献1および周知技術に基づいて、当業者が予測できたものではありません。
以上より、請求項1,6に係る発明は、当業者が引用文献1および周知技術に基づいて容易に想到しうるものでなく、特許法第29第2項の規定に該当するものではありません。』
と主張している。
しかしながら、実施例1に対して、PTFE以外の成分及びその配合量がほぼ同等であるのは、比較実施例1のみであり、これらの効果を比較し、実施例1で向上しているのは難燃性のみ(上記主張における「少なくとも1つの重大な性能不足」に相当)であり、成形性は該成分の添加により向上しているわけではないから、当該成分による難燃性の効果については、予想外のものではない。また、組成物に難燃剤を添加する際に、難燃性以外の主要な特性(成形性等)を大きく損なわないように配慮することは、通常試みられていることであるから、成形性が損なわれないようにすることも予想外の効果には当たらない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
カ まとめ
よって、本願発明は、引用発明1、すなわち、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、4ないし6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、4ないし6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることはできない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013342