特許拒絶査定不服審判
2016-012535
レイノー病を治療する方法および組成物
- 審判番号
- 2016-012535
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-504039外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月19日
- 審決日
- 2018年09月25日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ネクスメッド ホールディングス,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】高岡 亮一
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-504039「レイノー病を治療する方法および組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日国際公開、WO2012/139033、平成26年 4月24日国内公表、特表2014-510156〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2012年 4月 6日(パリ条約による優先権主張 2011年 4月 7日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とするものであって、平成27年12月10日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月7日付けで拒絶査定され、同年8月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。その後、当審において平成30年2月20日付けで拒絶理由が通知され、平成30年8月27日に意見書及び手続補正書が提出された。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(「本願発明」という。)は、平成30年8月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
0.025重量%~10重量%の、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE1のC1~C4エステルおよびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択されるプロスタグランジンE1化合物と、
0.025重量%~40重量%の、N,N-ジ(C1~C8)アルキルアミノ置換(C4~C18)アルキル(C2~C18)カルボン酸エステルおよびそれらの薬学的に許容される酸付加塩からなる群より選択される皮膚浸透促進剤と、
を含む、レイノー現象を治療するための医薬組成物であって、
前記組成物は、半固形であり、局所投与用に製剤化されている、
医薬組成物。」
第3 当審で通知した拒絶理由の概要
当審において平成30年2月20日付けで通知した拒絶理由は、本件出願の請求項1~13、15~18に係る発明は、引用文献4および5、または引用文献4,5および3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
第4 当審の判断
(1)引用文献に記載の事項
当審における拒絶理由で引用した引用文献4,5,3には、それぞれ下記の事項が記載されている。
・引用文献4:特開平8-283160号公報
(4a)
「【請求項1】 血小板凝集抑制作用および/または血管拡張作用を有するプロスタグランジン類と、10~30重量部の高級パラフィン系炭化水素と、2~10重量部の高級アルコール類と、0.01~1.0重量部の脂肪酸エステルと、界面活性剤と、水相成分とを含んで成るプロスタグランジン類含有乳剤性組成物。
・・・(略)・・・
【請求項6】 血小板凝集抑制作用および/または血管拡張作用を有するプロスタグランジン類が下記式[3]
【化3】
[式中、Rは水素原子、またはC1~C4のアルキル基を表す。]で表されるプロスタグランジンE1類である請求項1~3のいずれかに記載のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物。」(特許請求の範囲)
(4b)
「【0003】皮膚適用の製剤には半固形剤(軟膏剤、クリーム剤)、貼付剤、ローション剤等がある。プロスタグランジン類の皮膚適用製剤については対象が局所的な潰瘍部位の場合、刺激性の小さな油脂性軟膏剤が適しているが、軟膏基剤が白色ワセリン等であるため塗布した後が油っぽく、べとつき感を避けることはできない。一方、レーノー症、熱傷、凍傷など適用皮膚が比較的広範囲にわたる場合にはべとつき感のなく衣服への付着もないクリーム剤が適している。」(段落【0003】)
(4c)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明が解決しようとする課題は、褥瘡などの、末梢循環不良に基づく皮膚疾患一般、なかでも、比較的広い範囲の皮膚に塗布する必要のある、レイノー症、熱傷、凍傷などに対して適する、べとつかず、使用感が良好で、かつ経皮吸収性が良好であり、更に主薬の安定性に優れたプロスタグランジン類含有乳剤性組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、プロスタグランジン類の薬理活性および安定性は、成分中の油相部分を構成する成分の種類と組成に著しく依存することを見いだした。そしてクリーム剤の特定の構成成分の、特定の組み合わせを選択することによって、前記式[1]で表されるプロスタグランジン類の薬理活性と、クリーム中の主薬の安定性の優れた乳剤性組成物が得られることをを見いだし、本発明を完成した。」(段落【0005】~【0006】)
(4d)
「【0073】プロスタグランジン類の軟膏剤全量に対する濃度は治療効果のある量であればいくらでもよいが、例えば0.000001%~0.1%の範囲が挙げられる。好ましい範囲としては0.00001%~0.01%が挙げられる。」(段落【0073】)
(4e)
「【0081】また上記基剤及び有効成分以外にも必要に応じて、上記以外の油分、界面活性剤、乳化助剤、水相成分、可溶化剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。また増粘剤、香料、色素等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。」(段落【0081】)
(4f)
「【0083】上記のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物は振動病、バージャー病、およびレーノー病等の末梢循環不全の治療剤として使用することができる。また皮膚潰瘍、例えば褥瘡、熱傷潰瘍、血管障害性潰瘍、糖尿病性潰瘍、末梢循環障害、膠原病を伴う潰瘍、およびその他の潰瘍に使用することができる。」(段落【0083】)
(4g)
「【0084】
【実施例】以下本発明を、比較例とともに記載した実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、以降、9(O)-メタノ-Δ6(9α)-プロスタグランジンI1 メチルエステルを化合物aと、(11R,12S,13E,15S,17R)-9-ブチリルオキシ-11,15-ジヒドロキシ-17,20-ジメチル-7-チアプロスタ-8,13-ジエン酸メチルを化合物bと、プロスタグランジンE1メチルエステルを化合物cと、2-[(1S,3R,5S,6R,7R)-7-ヒドロキシ-6-[(1E)-(3S,5S)-3-ヒドロキシ-5-メチル-1-ノネニル]ビシクロ[3.3.0]オクタ-3-イル]エトキシ酢酸メチルを化合物dと、それぞれ略記する。
【0085】[実施例1]化合物aの400mgをアジピン酸ジイソプロピル100gに溶解させた。この溶液の0.25gを、80℃に加温して溶液とした固形パラフィン13g、白色ワセリン8g、ステアリルアルコール4g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.4g、ポリオキシエチレンセチルエーテル0.4g、グリセリンモノステアレート1.2g、ヒドロキシ安息香酸メチル0.1g、ヒドロキシ安息香酸プロピル0.1gの混合物に添加した。この溶液に、80℃に加温したプロピレングリコール10gと水62.6gの混合液を添加し、撹拌混合し乳化した後、室温まで冷却して白色のクリーム剤(実施例1)100gを得た。
【0086】[実施例2~11]実施例1の方法に従い表1に示した成分含有比(重量%)の全量100gのクリーム剤を調製した。(なお表1には実施例1の成分含量比もあわせて記載した。)
【0087】
【表1】
」(段落【0084】~【0087】)
(4h)
「【0097】[実施例13] 皮膚部位血流量試験
本発明のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物の皮膚局所における効力を確認するために、投与部位の皮膚血流量を測定した。
【0098】実施例1~11、および比較例1~6で得た組成物を、それぞれウレタンにより麻酔したヘアレスラットの大腿部の1cm×1cmに23mgずつ非密閉塗布した。塗布90分後にレ-ザ-ドップラ-血流量計にて投与部位の皮膚血流量を測定した。結果はプロスタグランジン類含有乳剤性組成物塗布前後の差を血流量増加値として求めた。結果を表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】この結果より、本発明のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物には、比較例と比較して顕著な血流量増加作用が認められた。」(段落【0097】~【0100】)
(4i)
「【0101】
【発明の効果】本発明のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物は、組成物中で主薬が安定に存在する。さらに、これによれば顕著な皮膚血流量の増加が認められる。これは本発明の乳剤性組成物が、主薬の安定性に優れており、皮膚部位より速やかに吸収され、薬効を発現したことを十分に裏付けるものであり、製剤処方上このうえないものである。
【0102】このように本発明のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物は、バ-ジャ-病、レーノー病、潰瘍性皮膚疾患等の末梢循環不全の治療薬としての使用が期待できるものである。」(段落【0101】~【0102】)
・引用文献5:特開平3-88925号公報
(5a)
「・・・(略)・・・
2.プロスタグランジンE1、飽和脂肪アルコール類、グリコール類、吸収促進剤からなる組成物に安定化剤として有機酸を配合することを特徴とするプロスタグランジンE1含有の外用製剤。
・・・(略)・・・
5、プロスタグランジンE110.0001~10重量%、飽和脂肪アルコール類15~45重量%、グリコール類50~85重量%及び有機酸0.005~1.0重量%からなり、この組成物のpH値が3.0~5.0に調整されたことを特徴とする請求項1のプロスタグランジンE11含有の外用製剤。」(特許請求の範囲)
(5b)
「またPGE1は微量で種々の薬理作用を有し、特に血管拡張作用においては強力な作用を示し、血栓治療剤、血圧降下剤、褥瘡治療剤、皮膚潰瘍治療剤、乾癬治療剤、発毛剤等に利用される可能性を有している。」(2頁左上欄3~9行)
(5c)
「実施例1
飽和脂肪アルコールとしてステアリルアルコールを0.95g、セチルアルコールを0.8g、ベヘニルアルコールを0.9g、グリコール類としてプロピレングリコールを0.704g、1,3-ブチレングリコールを6.335g、吸収促進剤としてラウリルアルコールを0.3g、安定化剤として乳酸を0.01g加え、油浴上95℃にて溶解攪拌後、密封して室温にて攪拌しながら冷却する。この基剤にPGE11mgを加え攪拌混合し組成物を得た。
実施例2
飽和脂肪アルコールとしてステアリルアルコールを0.949g、セチルアルコールを0.8g、ベヘニルアルコールを0.9g、グリコール類としてプロピレングリコールを0.703g、1,3-ブチレングリコールを6.333g、吸収促進剤としてラウリルアルコールを0.3g、安定化剤として乳酸を0.01g加え、油浴上95℃にて溶解攪拌後、密封して室温にて攪拌しながら冷却する。この基剤にPGE15mgを加え撹拌混合し組成物を得た。
実施例3
飽和脂肪アルコールとしてステアリルアルコールを0.949g、セチルアルコールを0.799g、ベヘニルアルコールとして0.899g、グリコール類としてプロピレングリコールを0.702g、1,3-ブチレングリコールを6.331g、吸収促進剤としてラウリルアルコール0.3g、安定化剤として乳酸を0.01g加え、油浴上95℃で溶解攪拌後、密封して室温にて攪拌しながら冷却する。この基剤にPGE1 10mgを加え、攪拌混合し組成物を得た。」(3頁右下欄5行~4頁左上欄下から3行)
(5d)
「実施例6
飽和脂肪アルコールとしてステアリルアルコールを1.0g、セチルアルコールを0.5g、グリコール類としてプロピレングリコールを0.67g、1,3-ブチレングリコールを6.42g、可塑剤としてPEG-6000を0.5g、1,2,6-ヘキサントリオールを0.3g、カップリング剤としてソルビタンモノステアレートを0.2g、吸収促進剤として1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンを0.3g、安定化剤として乳酸を0.01g加え、油浴上95℃にて溶解攪拌後、密封して室温にて攪拌しながら冷却する。この基剤にPGE1を100mg加え攪拌混合し組成物を得た。」(4頁右上欄最終行~左下欄12行)
(5e)
「実験例2 皮膚血流量試験
本発明軟膏製剤の局所における効力を確認するために、皮膚血流量を測定した。
実施例1,2,3および比較例3で得た組成物をそれぞれウレタンにより麻酔したヘアレスマウス背部皮膚1×1cm2に5mgずつ非密封塗布した。塗布前及び塗布後0.5,1,2,3時間にレーザードップラー血流計にて皮膚血流量を測定した。結果は軟膏塗布前後の差をΔνとして求めた。結果を図1に示す。
試験結果により、本発明の軟膏製剤はPGE1を含有していない比較例3と比較して、顕著な皮膚血流量の増加が認められ、かつ塗布後3時間までその作用が持続することが明らかとなり、本発明の軟膏製剤は充分に経皮より吸収され、かつ充分な薬効を有することが判明した。」(6頁右上欄5行~左下欄6行)
(5f)
「〔発明の作用・効果〕
・・・(略)・・・また皮膚血流量試験では顕著な皮膚血流量の増加が見られ、また数時間にわたりその作用が持続されることが明らかとなったが、これは本発明の軟膏製剤が経皮よりすみやかに吸収され、薬効発現するに至ったことを充分に裏付けるものであり、製剤処方上このうえないものである。
また皮膚透過試験においても、顕著な皮膚透過性を示し、軟膏処方の相違により皮膚透過性が著しく影響されることが明らかとなり、本発明の軟膏における製剤処方がいかに優れているかを如実に示すものである。
このように本発明の軟膏製剤はPGE1の安定性、薬理作用発現性および経皮吸収性の点で大変優れており、局所適用を目的とした軟膏製剤として、レイノー病、褥瘡、皮膚潰瘍、乾癬、動脈硬化症等の治療、または発毛剤としての使用が期待できるものである。
・・・(略)・・・」(6頁右下欄1行~7頁左上欄7行)
・引用文献3:特表2002-544240号公報
(3a)
「【請求項1】 局所用組成物であって、
プロスタグランジンE1;
アルキル-2-(N、N-二置換アミノ)-アルカノエート、(N、N-二置換)-アルカノールアルカノエート、およびそれらの混合物から成る群から選択される皮膚浸透強化剤;
多糖ガムまたはポリアクリル酸ポリマー;
脂肪族C1~C8アルコール、脂肪族C8~C30エステル、およびそれらの混合物から成る群から選択される親油性化合物;および
酸性緩衝剤系;
を含んで成る局所用組成物。
【請求項2】 該浸透強化剤が、式:
【化1】
[式中、
nは、約4~約18の整数であり;
Rは、水素、C1~C7アルキル、ベンジルおよびフェニルから成る群から選択され;
R1およびR2は、水素およびC1~C7アルキルから成る群から選択され;および
R3およびR4は、水素、メチルおよびエチルから成る群から選択される。]で示されるアルキル-2-(N、N-二置換アミノ)-アルカノエートである請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項3】 該浸透強化剤が、C4~C18アルキル-(N、N-二置換アミノ)-アセテートである請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項4】 該浸透強化剤が、ドデシル-(N、N-ジメチルアミノ)-アセテートである請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項5】 該浸透強化剤が、ドデシル-2-(N、N-ジメチルアミノ)-プロピオネートである請求項1に記載の局所用組成物。
・・・(略)・・・
【請求項22】 組成物の全重量に基づいて、0.5~5重量%のイナゴマメガム、0.5~25重量%のドデシル-2-(N、N-ジメチルアミノ)-プロピオネート、0.5~80重量%のエタノール、および0.5~80重量%のミリスチン酸イソプロピルを含有する請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項23】 局所用医薬投与形態の製造用の組成物の全重量に基づいて、0.5~5重量%のイナゴマメガム、0.5~5重量%のドデシル-2-(N、N-ジメチルアミノ)-プロピオネート、0.5~25重量%のエタノール、および0.5~25重量%のラウリン酸エチルを含有する請求項1に記載の局所用組成物。
・・・(略)・・・」(特許請求の範囲)
(3b)
「【0003】
プロスタグランジンE1は、血管を開放に維持し、従って、特に末梢血管疾患の治療に有効な、血管拡張薬である。プロスタグランジンE1の経皮運搬によって得られる潜在的利益は以前から認識されているが、プロスタグランジン運搬用の局所用組成物を開発する努力は充分に成果を上げていない。」(段落【0003】)
(3c)
「【0008】
本発明は、プロスタグランジンE1の比較的迅速な持続運搬のための半固体耐分離性組成物を提供することによって、これらの課題を解決する。
【0009】
(発明の概要)
局所投与に好適な医薬組成物は、プロスタグランジンE1、浸透強化剤、多糖ガム、親油性化合物および酸性緩衝剤系を含んで成る。浸透強化剤は、アルキル-2-(N、N-二置換アミノ)-アルカノエートエステル、(N、N-二置換アミノ)-アルカノールアルカノエート、またはこれらの混合物である。・・・(略)・・・
【0010】
本発明の組成物は、局所投与に好適な半固体形態をとることができる。局所用薬剤としての使用において、これらの組成物は、浪費的過配合プロスタグランジン濃度を必要とせずに、比較的高いプロスタグランジン浸透性および生物学的利用能を示す。組成物は、減少した皮膚刺激、過敏性および損傷も示す。」(段落【0009】~【0010】)
(3d)
「【0016】
本発明の医薬組成物中のプロスタグランジンE1の量は、治療有効量であり、必然的に、使用するプロスタグランジンE1の望む投与量、投与形(例えば坐剤または局所)、および具体的な形に従って変化する。組成物は、一般に、組成物の全重量に基づいて、0.1%ないし1%、好ましくは0.3%から0.5%のプロスタグランジンE1を含む。」(段落【0016】)
(3e)
「【0017】
本発明の重要な成分は、浸透強化剤である。浸透強化剤は、アルキル-2-(N、N-二置換アミノ)-アルカノエート、(N、N-二置換アミノ)-アルカノールアルカノエートまたはこれらの混合物である。・・・(略)・・・」(段落【0017】)
(3f)
「【0019】
好ましいアルキル(N、N-二置換アミノ)-アルカノエートは、C4~C18アルキル(N、N-二置換アミノ)-アセテートおよびC4~C18アルキル(N、N-二置換アミノ)-プロピオネートである。具体的なアルキル-2-(N、N-二置換アミノ)-アルカノエートの例は、ドデシル2-(N、Nジメチルアミノ)-プロピオネート(DDAIP);
・・・(略)・・・
およびドデシル2-(N、N-ジメチルアミノ)-アセテート(DDAA);
・・・(略)・・・
を含む。」(段落【0019】)
(3g)
「【0026】
本発明の適切な浸透強化剤の中で、DDAIPが一般に好ましい。」(段落【0026】)
(3h)
「【0062】
」
(段落【0062】、【表1】)
(3i)
「【0065】
【表3】
」
(段落【0065】、【表3】)
(3j)
「
」
(【図2】)
(2)引用発明
摘記(4a)より、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「血小板凝集抑制作用および/または血管拡張作用を有するプロスタグランジン類と、10~30重量部の高級パラフィン系炭化水素と、2~10重量部の高級アルコール類と、0.01~1.0重量部の脂肪酸エステルと、界面活性剤と、水相成分とを含んで成るプロスタグランジン類含有乳剤性組成物であって、血小板凝集抑制作用および/または血管拡張作用を有するプロスタグランジン類が、下記式[3]
【化3】
[式中、Rは水素原子、またはC1~C4のアルキル基を表す。]で表されるプロスタグランジンE1類であるプロスタグランジン類含有乳剤性組成物。」
(3)対比・検討
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の式[3]で表されるプロスタグランジンE1類は、置換基Rの構造からみて「プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE1のC1~C4エステル」であるから、本願発明の「プロスタグランジンE1化合物」に相当する。そうすると、本願発明と引用発明とは、「プロスタグランジンE1化合物を含む組成物」である点で一致し、次の各点で相違する。
相違点1:本願発明の組成物は「レイノー現象を治療するための医薬組成物であって、前記組成物は、半固形であり、局所投与用に製剤化されている、医薬組成物」であるのに対し、引用発明では「乳剤性組成物」である点
相違点2:本願発明はプロスタグランジンE1化合物の含有量が「0.025重量%~10重量%」であるのに対し、引用発明は含有量を特定しない点
相違点3:本願発明は「0.025重量%~40重量%の、N,N-ジ(C1~C8)アルキルアミノ置換(C4~C18)アルキル(C2~C18)カルボン酸エステルおよびそれらの薬学的に許容される酸付加塩からなる群より選択される皮膚浸透促進剤」を含有するのに対し、引用発明はそのように特定されない点
以下、相違点について検討する。
まず相違点1について見ると、引用文献4にはプロスタグランジン類含有組成物が「レーノー病」を含む末梢循環不全の治療剤として使用できること(摘記(4f)、(4i))、「レーノー症」または「レイノー症」(当審注:先の「レーノー病」も含め、いずれも一般に「レイノー」と呼ばれる症状を指すと認める。)、熱傷、凍傷などに適した製剤であること(摘記(4b)、(4c))、投与部位の皮膚血流量を増加させたこと(摘記(4h))が記載されている。本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】によれば、本願発明の「レイノー現象」は、「レイノー」と呼ばれる症状のうち、他の疾患に続発する二次性レイノーに限定して特定すると認められるが、「レイノー」と呼ばれる末梢循環不全の症状は、二次性の場合も原因が明らかでない原発性の場合も同様のものであって、引用発明は二次性の「レイノー現象」も当然にその適用対象としているといえる。そして、本願発明の実施結果を見ても、「レイノー」のうち二次性のものに対して特有の効果を示すという根拠は見出せない。また、本願発明の「半固形」が具体的にどのような性状のものをいうのか、本願明細書の発明の詳細な説明にも明確には記載されていないが、局所製剤としてクリーム、ゲル、軟膏などの形態とすることが記載され(段落【0025】、【0027】、【0058】、【0060】)、実施例として示される例もクリーム剤のみである。一方、引用発明の「乳剤性組成物」が皮膚疾患に局所適用するためのクリーム剤を想定していることは摘記(4b)、(4c)より明らかであり、(4g)、(4h)にはクリーム剤として局所適用したことが記載されている。そうしてみると、相違点1は実質的な相違点ではない。
次に、相違点2のプロスタグランジンE1化合物の含有量であるが、引用文献4では「治療効果のある量であればいくらでもよい」としつつ、「例えば0.000001%~0.1%」を挙げ、さらに「好ましい範囲としては0.00001%~0.01%が挙げられる。」と記載している(摘記(4d))。「好ましい範囲」として挙げられる「0.00001%~0.01%」は本願発明の範囲と異なるが、これは例示であって、「治療効果のある量であればいくらでもよい」ことを前提とする文脈からみても引用発明のプロスタグランジンE1化合物含有量を限定するものとはいえない。
一般に、主薬の含有量は当業者が条件に応じて適宜調整するものであるところ、例えば引用文献5には外用製剤においてプロスタグランジンE1を0.0001~10重量%含有することが記載されている(摘記(5a))。引用文献5の実施例1~3はPGE1(当審注:1頁右下欄下から2~1行によればプロスタグランジンE1の略記である。)をそれぞれ1mg、5mg、10mg含有し(摘記(5c))、各組成物において構成成分の含有量を合計した総重量10gに対する重量%に直すとそれぞれ0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%である。実施例1~3の組成物は局所投与で血流を改善したことも記載されている(摘記(5e))。引用文献5には実施例6としてPGE1を100mg含有する組成物を調製したことも記載され(摘記(5d))、これは1重量%に相当する。また、引用文献3には半固体である局所用プロスタグランジンE1組成物(摘記(3a)、(3c))において、プロスタグランジンE1の含有量を0.1%~1%、好ましくは0.3~0.5%のプロスタグランジンE1を含むこと(摘記(3d))、実施例としてプロスタグランジンE1含有量が0.1~0.5重量%の組成物を調製したことが記載されている(摘記(3h)【表1】)。
そうすると、引用発明において、引用文献5および引用文献3を参照し、プロスタグランジンE1化合物の含有量として0.1から10重量%程度の範囲を採用することは当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得たものといえる。
相違点3の「0.025重量%~40重量%の、N,N-ジ(C1~C8)アルキルアミノ置換(C4~C18)アルキル(C2~C18)カルボン酸エステルおよびそれらの薬学的に許容される酸付加塩からなる群より選択される皮膚浸透促進剤」を含有することは、引用文献4には記載されていない。しかし、皮膚の最外層には外部からの異物侵入に対する障壁となる角質層が存在するため、経皮送達用の製剤において必要に応じ皮膚への浸透を促進する添加剤を用いることは周知慣用の技術であるところ、引用文献4には各種の成分を適宜配合できることが記載されており(摘記(4e))、添加剤を適宜用いることを排除するものではない。そして、引用文献3には局所投与に好適な半固体形態の組成物におけるプロスタグランジンE1の浸透強化剤として式【化1】で示されるアルキル-(N,N-二置換アミノ)-アルカノエートが記載され(摘記(3a)請求項2、(3b)、(3c)、(3e))、式【化1】中、エステル部分におけるアルコール由来のアルキル基の炭素数が4~18であるとき、この化合物は本願発明のN,N-ジ(C1~C8)アルキルアミノ置換(C4~C18)アルキル(C2~C18)カルボン酸エステルに相当する。特に0.5~25重量%のドデシル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピオネート、0.5~5重量%のドデシル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-アセテートを含有すること(摘記(3a)請求項22,23、摘記(3f)、(3g))が記載され、実施例にはドデシル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピオネート(DDAIP)を5重量%含有する組成物を調製したこと、蛇皮モデルにおけるプロスタグランジンE1皮膚透過性が改善したことが示されている(摘記(3h)~(3j))。相違点3に係る本願発明の皮膚浸透促進剤の含有量範囲は「0.025重量%~40重量%」と非常に広く、引用文献3に記載される浸透強化剤の含有量はいずれもこの範囲内である。
そうすると、引用発明において、主薬であるプロスタグランジンE1化合物に適した添加剤として引用文献3に記載の浸透強化剤を採用し、その含有量を本願発明の範囲とすることは、当業者が容易に想到するものである。
次に、本願発明の効果について検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明を参照しても、実施結果として具体的に示されているのは、ラット尾部に適用した場合に寒冷刺激時の尾部血流量の増加が見られたこと(実施例1)のみである。他方、引用文献4には、実施例No.10としてプロスタグランジンE1メチルエステルである化合物cを含有する組成物をヘアレスラットの大腿部に塗布し、塗布90分後に投与部位の血流量が増加したことが記載されている(摘記(4g)、(4h))。「レイノー現象」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】によれば他の疾患に続発する二次性の症状であり、その原因疾患は結合組織障害、閉塞性動脈疾患、神経性病変など多岐にわたるが、それらの多様な疾患を原因とする「レイノー現象」に対して本願発明の組成物が実際に効果を奏するのか、本願明細書の発明の詳細な説明からは明らかでない。
結局、本願発明の効果は、引用発明の効果から予測できる程度のものに過ぎないといわざるを得ない。
また、引用文献4において実際に血流量の増加を確認した結果が記載されるプロスタグランジンE1類はプロスタグランジンE1メチルエステル(化合物c)のみであり、他のプロスタグランジンE1化合物による効果は確認できない。しかしながら、引用文献5には、(エステル化されていない)プロスタグランジンE1を含有する外用製剤を塗布したヘアレスマウスにおいて塗布部の血流量が増加したこと(摘記(5e))、レイノー病への使用を期待できること(摘記(5f))が記載されており、引用発明の「プロスタグランジンE1類」のうち、プロスタグランジンE1についても外用製剤で局所適用した場合に投与部位の血流量増加効果が期待できるといえる。
したがって、本願発明は、引用発明、および、引用文献3~5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求人の主張について
請求人は、当審で通知した拒絶理由のうち、特許法第29条第2項に関するものについて、平成30年8月27日提出の意見書において次の旨を主張する。
すなわち、手続補正により、拒絶の対象とされていなかった補正前の請求項14に記載の技術的特徴を請求項1に組み込んだ。引用文献3~5のいずれも、補正後の請求項1に記載される特定の組成物を開示も示唆もしておらず、特に、皮膚浸透促進剤や、各成分の含有量の範囲については開示も示唆もない。さらに、引用文献4には「このように本発明のプロスタグランジン類含有乳剤性組成物は、バージャー病、レーノー病、潰瘍性皮膚疾患等の末梢循環不全の治療薬としての使用が期待できるものである」と記載されるが、このような包括的な記載からでは、当業者であっても、補正後の請求項1で特定されるような各成分の含有量の範囲について何ら予測することはできず、従って、当業者が引用文献3~5を閲覧したとしても、補正後の請求項1に係る発明を容易に想到できたとは考えられない。よって、本願発明は、引用文献3~5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、進歩性を有する、というものである。
請求人の上記主張について検討する。
本願発明は、確かに補正前の請求項14,すなわち平成28年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項14に記載された事項のうち、その一部である、プロスタグランジンE1化合物とその含有量、特定の皮膚浸透促進剤とその含有量に関する事項により特定される。しかしながら、補正前の請求項14は「0.025重量%~40重量%の、多糖ガム、化学修飾多糖ガムから選択される増粘剤」と「0.025重量%~40重量%の、(C1~C4)-アルキル(C8~C22)カルボン酸エステル」とを同時に含むことが記載され、さらに、請求項7を引用して記載されているから、補正前の請求項7に記載の「レイノー病またはレイノー現象に罹患した身体部位の表面への投与が、12~24時間にわたって別々に投与するレジメンで投与される、2~4つの用量に分割されたプロスタグランジンE1化合物の総1日量0.5mg~5.7mgを含む、局所半固形組成物」という事項によっても特定されるものである。
これに対して本願発明は、補正前の請求項7の「12~24時間にわたって別々に投与するレジメンで投与される、2~4つの用量に分割されたプロスタグランジンE1化合物の総1日量0.5mg~5.7mgを含む」という点も、補正前の請求項14における増粘剤と(C1~C4)-アルキル(C8~C22)カルボン酸エステルを特定の量で同時に含む点も、いずれも特定されておらず、先の拒絶理由を通知されていなかった補正前の請求項14に係る発明を特定するための事項を全て含む発明ではない。
よって、拒絶理由の対象外であった補正前の請求項14に記載の技術的特徴を組み込んだので進歩性が明確になった、という請求人の主張はその根拠がない。
また、引用文献3~5におけるプロスタグランジンE1化合物含有組成物の組成やレイノー現象への適用に関する開示や示唆については、上で述べたとおり、引用文献3~5に開示も示唆も全くないというものではなく、この点に関しても請求人の主張は根拠を欠く。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第5 結び
以上のとおり、本願発明は、引用文献4、および引用文献5、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2~15について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-012535