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特許拒絶査定不服審判

2016-011866

遊技機

審判番号
2016-011866
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-269388外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年08月05日
審決日
2017年03月27日
公報発行日
2017年07月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-269388「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開、特開2014-140685〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成16年8月18日を出願日とする特願2004-238190号の一部を平成23年4月8日に新たな特許出願である特願2011-91888号とし、その一部を平成24年5月28日に新たに特許出願である特願2012-120787号とし、さらにその一部を平成25年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成26年11月12日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年1月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年9月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年11月5日付けで意見書が提出され、平成28年5月6日付け(発送日:平成28年5月10日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成28年8月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成28年10月26日付けで前置報告がなされたものである。 第2 平成28年8月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年8月5日付けの手続補正(以下、本件補正という)を却下する。 [理由] 1.本件補正の概要 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、 補正前(平成27年1月16日付け手続補正)の 「【請求項1】 識別情報が表示される表示部を備える遊技機において、 前記表示部の奥側を透過し易い第1状態と、当該第1状態よりも前記表示部の奥側を透過し難い第2状態とを生じさせる透過手段と、 該透過手段によって前記第1状態とされた場合に、所定期間前記表示部の奥側にて所定の演出を行い、前記所定の演出が終了される場合に、前記所定期間の終了時まで行われている前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる手段と、を備える ことを特徴とする遊技機。」 から、 補正後(本件補正である平成28年8月5日付け手続補正)の 「【請求項1】 A 識別情報が表示される表示部を備える遊技機において、 B 前記表示部の奥側を透過し易い第1状態と、当該第1状態よりも前記表示部の奥側を透過し難い第2状態とを生じさせる透過手段と、 C 該透過手段によって前記第1状態とされた場合に、予め定められた所定期間前記表示部の奥側にて所定の演出を行い、前記所定の演出が終了される場合に、前記所定期間の終了時まで行われている前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる手段と、を備える ことを特徴とする遊技機。」 へ補正された(分説するため記号A-Cは当審で付した。下線は補正箇所を示す)。 2.補正の適否 上記補正事項は、補正前の請求項1における「前記表示部の奥側にて所定の演出を行」う「所定期間」を、「予め定められた」と限定したものである。 また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)原査定の拒絶の理由において提示された、本願の出願遡及日以前に頒布された特開2004-105296号公報には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ) (ア) 「【0026】 本実施形態に示す遊技機1は、設置場所たる遊技店の所謂「島」に固定される外枠3と、この外枠3に一側を保持され且つ外枠3に対して開閉自在に設けられた表枠4と、表枠4の前面上部に於いて開閉自在に設けられた窓枠5と、を備え、遊技機1を構成する主要構成部品の略全ては表枠4に集約して設けられている。」 (イ) 「【0035】 遊技盤6は、図2に示されるように略正方形状をなす合板からなり、表枠4の裏面側に形成された遊技盤収納枠(図示せず)に収納固定されている。また、その前面には、円形うず巻き状に形成された誘導レール13が設けられ、その誘導レール13によって囲まれた領域で所定遊技領域(以下、単に遊技領域と称す)が構成されている。 【0036】 遊技領域には、遊技盤6上に打ち出された遊技球の落下停留を変化させる釘23や風車24等の障害物14、遊技球を受け入れる複数の入賞装置15、遊技機1の最下方に設けられ入賞装置15に入らなかった遊技球を遊技領域外に排出するアウト口16、を備えている。また、遊技領域の略中央には、種々の図柄を演出を交えて変動表示および停止表示させる図柄表示装置17が設けられている。また、本実施の形態では、この図柄表示装置17によって本発明に係る表示手段が構成されている。・・・ 【0039】 また、本実施の形態に示す遊技機1では、上記入賞装置15の一つである大入賞装置100の配置に於いて図柄表示装置17の背後にこの大入賞装置100を設置している。」 (ウ) 「【0062】 また、本実施の形態では、図柄表示装置17として、自発光型フラットパネルディスプレイに分類される表示装置、より好ましくはELD(Electoroluminescent Display)と呼ばれる表示装置を採用している。 【0063】 この表示装置は、例えば、図4に示すように透明電極及び発光層等を備えたELガラス200、透明電極に交流電圧を印可するためのEL制御基板201、ELガラス200及びEL制御基板201の表面を保護するアクリル板203、を備えている。・・・ 【0070】 そして、本実施の形態では、このELガラス200を透かす等の制御を図柄制御装置61にて実行し、図柄表示装置17背後に隠蔽された大入賞装置100内を遊技領域内において見え隠れさせている。」 (エ) 「【0071】 続いて、遊技機1の制御系、並びにその制御系にて処理する各種制御について図6及び図7を参照して説明する。 まず、図6のブロック図を参照して、主制御装置60および各種副制御装置について説明する。なお、ここで副制御装置とは、先で述べた図柄制御装置61、ランプ制御装置62、音声制御装置63、払出制御装置64、発射制御装置65、入賞装置用制御装置67などに相当する。」 (オ) 「[大入賞領域制御処理] 【0104】 まず、主制御装置60は、特別図柄制御処理(S105)等で得られる遊技に係る進行状態を示す情報に基づき、通常大当り状態、確率変動付き大当り状態等、有利な遊技状態に当選しているか否かを検知する(S201)。続いて、主制御装置60は、有利な遊技状態の当選を受け、図柄表示装置17の透過処理を行う(S202)。また、ステップ201の処理において、未だ有利な遊技状態に当選していない場合には、本処理ルーチンを一旦抜ける。 【0105】 また、上記で「透過処理」とは、ELガラス200の発光を抑えてELガラス200を透かす処理等であり、この透過処理によってELガラス200越しに大入賞装置100にて構成される遊技球処理部材に基づく遊技球の処理が把握可能になる。また、勿論、この透過処理として、諸情報の表示態様すなわち画像の配置や画像の表示濃度を変更してELガラス200を透かしてもよい。 【0106】 より詳細には、図柄制御装置61にて、発光層の消灯制御、若しくは表示すべきドット数を減らす減光制御、また画像表示位置の変更制御、等を実行してELガラス200の透明度を高める。なお、ELガラス200減光制御を行うには、発光させるべきドット数を減らす等の制御にて減光制御が可能である。」 (カ)「【0108】 続いて、主制御装置60は、遊技球振分処理(可動片動作処理)および入賞振分処理(シーソー動作制御処理)を大入賞装置100用の制御装置に実行させるための制御信号を出力し、大入賞装置100用の制御装置を介して大入賞装置100のソレノイド等を制御する(S203,S204)。 【0109】 まず、遊技球振分処理では、大入賞装置100の第1通過口105に設けられた可動片106を操作するソレノイドに対して電源を供給し、可動片106を作動させる。すなわち、遊技球振分処理では、第1通過口105を開閉する可動片106の制御において、始動入賞装置26への入賞などの所定条件を契機として行われる遊技の進行に係る電気的抽選(例えば、乱数抽出判定)において、大当り状態及び確率変動付き大当り状態等、遊技者にとって有利な遊技状態の当選を受け、第1通過口105を開放するように可動片106を制御する。また、可動片106の作動パターンは、任意に設定可能であるが、例えば、所定周期毎に第1通過口105を閉じるなどの作動パターンが好ましい。 【0110】 また、シーソー動作制御処理では、大入賞装置100内に設けられた入賞振分可動板110を操作する電動モータに対して電源を供給し、入賞振分可動板110を作動させる。なお、入賞振分可動板110の作動パターンは、任意に設定可能であるが、例えば、所定周期毎に傾斜方向を逆転する等の作動パターンが好ましい。」 (キ)「【0111】 続いて、主制御装置60は、上記入力管理処理(S102)にて把握した第1検知センサの出力信号を読み込み、第1通過口105に遊技球が入ったか否かを検知する(S205)。また、遊技球の通過が確認されたときには、先の払出制御処理において払出装置66に賞球の払い出しを指示する(S206)。また、遊技球の通過が確認されなかったときには、続くステップ207に移る。 【0112】 また、主制御装置60は、上記入力管理処理(S102)にて把握する第2検知センサの出力信号を読み込み、入賞口121に遊技球が入ったか否かを検知する(S207)。また、入賞口121に遊技球が入ったときには、払出制御処理において払出装置66に賞球の払い出しを指示する(S208)。 【0113】 続いて、主制御装置60は、上記ステップ206での賞球の払い出しを受けてその賞球の払出数をカウントするカウンタチェック処理を開始し(S209)、カウント数が設定値に達したことを受け(S210)、可動片106の停止処理を大入賞装置100用の制御装置に実行させる(S211)。なお、本実施の形態では、第1通過口105での入賞を受けて払出された賞球(第1賞球)が300球に達したことを受け、可動片106の停止制御を実施し、第1通過口105を閉鎖する。」 【0114】 そして、主制御装置60は、可動片106の停止処理後、大入賞装置100内の遊技球が検知センサの情報に基づいて全て処理を終了させたとなったらELガラス200の透過戻し処理を図柄制御装置61を介して実行する(S212)。ここで「透過戻し処理」とは、上記ステップ202の透過処理にて透明度が高まったELガラス200に再び画像を表示する、及び発光層の光度を高める等の制御であり、この透過戻し処理にて大入賞装置100を図柄表示装置17の後方に隠蔽する。」 (ク) (オ)の記載事項から、刊行物には「主制御装置60は、有利な遊技状態の当選を受け、図柄制御装置61にてELガラス200の透明度を高める透過処理を行い(S202)、ELガラス200越しに大入賞装置100にて構成される遊技球処理部材に基づく遊技球の処理を把握可能とし」ていることが記載されているものといえる。 また(カ)の記載事項から、刊行物には「主制御装置60は」、「遊技球振分処理で第1通過口105を開放」していること、及び、「大入賞装置100内に設けられた入賞振分可動板110を作動させ」ることが記載されているものといえる。 ここで、「大入賞装置100内に設けられた入賞振分可動板110」は「大入賞装置100にて構成される遊技球処理部材」の一種であるといえるから、刊行物には「主制御装置60は、有利な遊技状態の当選を受け、図柄制御装置61にてELガラス200の透明度を高める透過処理を行い(S202)、ELガラス200越しに大入賞装置100にて構成される入賞振分可動板110の処理を把握可能とし、第1通過口105を開放し」ていることが記載されているものと認められる。 (ケ) さらに、【図6】から主制御装置という矩形領域に数字60が、図柄制御装置61という矩形領域に数字61があることが看取できることから、遊技機1が主制御装置60及び図柄制御装置61を備えることは明らかである。 上記(ア)~(キ)の記載事項及び(ク)(ケ)の認定事項から、上記刊行物には、 「a 表枠4を備え、表枠4の裏面側に形成された遊技盤収納枠に収納固定された遊技盤6の前面に構成された遊技領域の略中央に設けられ、種々の図柄を演出を交えて変動表示及び停止表示させる図柄表示装置17と、図柄表示装置17の背後に大入賞装置100を設置している遊技機1(記載事項(ア)、(イ))において、 b 図柄表示装置17に備えられたELガラス200を透かす等の制御を実行し、図柄表示装置17背後に隠蔽された大入賞装置100内を遊技領域内において見え隠れさせている図柄制御装置61と(記載事項(ウ))、 c 有利な遊技状態の当選を受け、図柄制御装置61にてELガラス200の透明度を高める透過処理を行い(S202)、ELガラス200越しに大入賞装置100にて構成される入賞振分可動板110の処理を把握可能とし、第1通過口105を開放し(認定事項(ク))、賞球の払出数をカウントするカウンタチェック処理を開始し(S209)、カウント数が設定値に達したことを受け(S210)、第1通過口105を閉鎖し、大入賞装置100内の遊技球が検知センサの情報に基づいて全て処理を終了させたとなったら、透明度が高まったELガラス200に再び画像を表示するELガラス200の透過戻し処理を図柄制御装置61を介して実行し(S212)、大入賞装置100を図柄表示装置17の後方に隠蔽する、主制御装置60を備える(記載事項(キ))、 遊技機1」 という発明(以下、刊行物記載の発明という)が記載されているものと認める(記号a-cは分説して本件補正発明と対比するため当審で付与した)。 (2)対比 本件補正発明と刊行物記載の発明とを対比する(なお、本件補正発明の構成A~Cに対応して、当審で見出し(A)から(C-4)を付与した)。 (A)刊行物記載の発明における「種々の図柄を演出を交えて変動表示及び停止表示させる図柄表示装置17」は、本件補正発明の「識別情報が表示される表示部」に相当する。 (B)刊行物記載の発明における「図柄制御装置61」は、「図柄表示装置17の背後に隠蔽された大入賞装置100を見え隠れさせている」ことから、「識別情報が表示される表示部」である「図柄表示装置17の背後」が「見える状態」と「隠れた状態」とを生じさせているものといえ、該「見える状態」「隠れた状態」が、本件補正発明の「表示部の奥側を透過し易い第1状態」「当該第1状態よりも前記表示部の奥側を透過し難い第2状態」に相当する。 そうすると、刊行物記載の発明における「図柄制御装置61」は、本件補正発明の「前記表示部の奥側を透過し易い第1状態と、当該第1状態よりも前記表示部の奥側を透過し難い第2状態とを生じさせる透過手段」に相当する。 (C)刊行物記載の発明における主制御装置60が行う処理について検討する。 (C-1) 刊行物記載の発明における、「図柄制御装置61にてELガラス200の透明度を高める透過処理を行」った場合は、本件補正発明の「透過手段によって、前記第1状態とされた」場合に相当する。 (C-2) 本件補正発明の「前記表示部の奥側にて所定の演出を行」うことの一態様として、本件明細書段落【0257】には「「上をねらってね よーい! 3」の表示がされている下部は、透明(図では斜線部)となり、第1図柄表示部414の裏側にある貯留部404(左側貯留部405および右側貯留部406)が見える状態となる」と記載されているから、本件補正発明の「所定の演出」とは、「第1図柄表示部の裏の貯留部404が見える状態」を示すものである。 そうすると、刊行物記載の発明において、「透過処理を行」った状態で、「ELガラス200越しに大入賞装置100にて構成される入賞振分可動板110の処理を把握可能とし」ているとき、図柄表示装置17のELガラス200越しに、図柄表示装置17の背後の入賞振分可動板110は見える状態であるから、本件補正発明の「前記表示部の奥側にて所定の演出を行」うことに相当する。 (C-3) 刊行物記載の発明は、「透過処理を行」ってから「第1通過口を開放し」「遊技球の通過が確認されたときには賞球の払い出しを指示し、賞球の払出数をカウントするカウンタチェック処理を開始」して「カウント数が設定値に達したことを受け」、「第1通過口を閉鎖」し「大入賞装置100内の遊技球が」「全て処理を終了させた」時点まで、ELガラス200越しに入賞振分可動板110は見える状態である。 そうすると、刊行物記載の発明において、「透過処理を行」ってから、上記の「全て処理をさせた」時点までに経過した時間と、本件補正発明における「予め定められた所定期間」とは、「透過手段によって、前記第1状態とされた」場合に「前記表示部の奥側にて所定の演出を行」っている点で共通している。 (C-4) 刊行物記載の発明における「ELガラスの透過戻し処理を実行」した時、「大入賞装置100を図柄表示装置17の後方に隠蔽する」ことで、大入賞装置100にて構成される入賞振分可動板110が見えなくなるが、これは本件補正発明の「所定の演出」、すなわち「第1図柄表示部の裏の貯留部404が見える状態」、が終了することに相当する。 また、刊行物記載の発明における「透明度が高まったELガラス200に再び画像を表示するELガラス200の透過戻し処理を図柄制御装置61を介して実行」することは、後方が見える状態だった図柄表示装置17を後方が隠れた状態に切り替えて、図柄表示装置17に画像を表示することで図柄を表示できるようにすることであるから、本件補正発明の「透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる」ことに相当する。 そうすると、刊行物記載の発明における「透明度が高まったELガラス200に再び画像を表示するELガラス200の透過戻し処理を図柄制御装置61を介して実行し(S212)、大入賞装置100を図柄表示装置17の後方に隠蔽する」「主制御装置60」は、本件補正発明の「前記所定の演出が終了される場合に」、「前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる手段」に相当する。 以上のことから、本件補正発明と刊行物記載の発明は 「A 識別情報が表示される表示部を備える遊技機において、 B 前記表示部の奥側を透過し易い第1状態と、当該第1状態よりも前記表示部の奥側を透過し難い第2状態とを生じさせる透過手段と、 C’ 該透過手段によって前記第1状態とされた場合に、前記表示部の奥側にて所定の演出を行い、前記所定の演出が終了される場合に、前記所定の演出を終了させ、前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる手段と、を備える ことを特徴とする遊技機。」 という点(本件補正発明の構成に合わせて記号A、B、C’を当審で付与した)で一致する。 一方、両者は以下の点で相違する。 (相違点) 表示部の奥側にて行う所定の演出について、本件補正発明は、予め定められた所定期間であるのに対して、刊行物記載の発明は、第1通過口105を開放し、賞球の払出数をカウントするカウンタチェック処理を開始し、カウント数が設定値に達したことを受け、第1通過口105を閉鎖し、大入賞装置100内の遊技球が検知センサの情報に基づいて全て処理を終了するまでとした点、すなわち、大入賞装置100の第1通過口105が開放されてから閉鎖されるまでの期間である点。 (3)相違点に対する判断 上記相違点について検討する。 遊技機において、有利な遊技状態に当選した場合、一回分の入賞口の開放は、所定時間か、所定の入球数によって定められているのが通常である。そして、該「所定の入球数」は、一回分の入賞で払い出す賞球数と対応しており、該「所定時間」は「予め定められた期間」といえる。 そして、刊行物記載の発明は上記「第1通過口を開放し」てから「閉鎖される」までに、賞球数が「設定値」になるまで払い出すが、その間に上記「所定の入球数」だけ入球するといえる。 そうすると、表示部の奥側にて行う所定の演出を、刊行物記載の発明における、「第1通過口を開放し」てから「閉鎖される」まで、すなわち「所定の入球数」だけ入球するまで、行うことに替えて、上記「所定時間」、すなわち「予め定められた期間」、行うとすることで、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者ならば容易になしえたものである。 また、本件補正発明の作用効果は刊行物発明及び技術常識からみて格別なものではない。 (4)審判請求人の主張について 審判請求人は平成28年8月5日付け審判請求書の(7)本願発明の請求項1と引用例との比較において、次の主張をしている。 「(7)本願発明の請求項1と引用例との比較 (7-1)相違点 引用例1は、少なくとも次の点で請求項1に係る発明と相違しています。 ・・・ <相違点1> 本願発明の構成要件(C)「該透過手段によって前記第1状態とされた場合に、予め定められた所定期間前記表示部の奥側にて所定の演出を行い、前記所定の演出が終了される場合に、前記所定期間の終了時まで行われている前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる手段」に相当する構成を引用例1が備えない点。 (7-1-1)相違点1の詳細(相違点1A及び相違点1B)について 確かに、構成要件(C)における透過手段によって第1状態とされた場合に表示部の奥側にて行われる「所定の演出」は、引用例1の図柄表示装置17の透過処理(ELガラス200を透かす処理)が実行された場合に、ELガラス200の奥側で行われるシーソー動作制御処理による「シーソー動作」に対比させることができます。 しかしながら、引用例1の「シーソー動作」は、構成要件(C)の「・・・予め定められた所定期間・・・」のような予め定められた期間実行されるものである、とは言えません(以下、相違点1A)。また、引用例1の「シーソー動作」は、「シーソー動作」が終了される場合に、構成要件(C)の「・・・前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替える・・・」のような「シーソー動作」を終了させるとともに「透過戻し処理」が実行されるものである、とも言えません(以下、相違点1B)。・・・ (7-3)本願発明の作用効果 これに対して、本願発明は、透過手段によって第1状態(表示部の奥側を透過し易い状態)とされた場合に表示部の奥側にて行われる所定の演出が予め定められた所定期間行われるので、その所定の演出が終了される場合に、その所定期間の終了時まで行われている所定の演出の終了と、透過手段が生じさせた第1状態から第2状態(第1状態よりも表示部の奥側を透過し難い状態)へ切り替えることで、表示部へ識別情報を表示することとを、ともに行うことができます。その結果、所定の演出の終了と、透過手段が生じさせた第1状態から第2状態へ切り替えることで、表示部へ識別情報を表示することとが、ともに行われているという印象を遊技者に与えることができます。これにより、遊技者は、単に所定の演出が終了したという印象だけでなく、透過手段が生じさせた第1状態が第2状態に切り替わって、表示部に識別情報が表示されたという印象をともに持ちますので、所定の演出の終了を遊技者に強く印象付けることができます。 (7-4)小括 したがいまして、相違点1A及び相違点1Bに関して、本願発明の構成要件(C)に相当する構成は、引用例1に開示されておらず、引用例1の開示事項から容易に想起されるとは言えないものと思料します。」 そこで、上記主張について検討する。 ア 相違点1Aについて、上記(2)(C-2)において検討したように、「透過処理を行」った状態で、「ELガラス200越しに大入賞装置100にて構成される入賞振分可動板110の処理を把握可能とし」ていることは、本件補正発明の「前記表示部の奥側にて所定の演出を行」うことに相当する。 また、上記(3)における判断のとおり、「表示部の奥側で所定の演出を行う」「所定の時間」について、刊行物記載の発明における、「透過処理を行」ってから「全ての処理を終了させ」るまでの時間に替えて、「予め定められた所定期間が経過」するまでの間とすることで、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者ならば容易になしえたものである。 イ 相違点1Bについて、上記(2)(C-4)において対比したとおり、本件補正発明の「前記所定の演出を終了させる」「とともに」「前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替える」ということについて、刊行物記載の発明は「透明度が高まったELガラス200に再び画像を表示するELガラス200の透過戻し処理を図柄制御装置61を介して実行し(S212)、ELガラスの透過戻し処理を実行」することで「大入賞装置100を図柄表示装置17の後方に隠蔽」し、大入賞装置100にて構成される遊技球処理部材に基づく遊技球の処理が把握ができなくなるが、これは本件補正発明同様に「前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替える」処理であるといえる。 ウ 本願発明の作用効果について、上記(2)(C-4)において対比したとおり、刊行物記載の発明における「透明度が高まったELガラス200に再び画像を表示するELガラス200の透過戻し処理を図柄制御装置61を介して実行し(S212)、ELガラスの透過戻し処理を実行し、大入賞装置100を図柄表示装置17の後方に隠蔽する」ことは、本件補正発明の「前記所定の演出が終了される場合に」、「前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる」ことに相当することから、本件補正発明同様に、「所定の演出の終了と、透過手段が生じさせた第1状態から第2状態へ切り替えることで、表示部へ識別情報を表示することとが、ともに行われているという印象を遊技者に与えることができ」、「これにより、遊技者は、単に所定の演出が終了したという印象だけでなく、透過手段が生じさせた第1状態が第2状態に切り替わって、表示部に識別情報が表示されたという印象をともに持ち」、「所定の演出の終了を遊技者に強く印象付けることができ」るといえる。 ア~ウのとおりであるから審判請求人の主張は採用できない。 (5)小括 したがって、本件補正発明は、刊行物記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年1月6日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。 「【請求項1】 識別情報が表示される表示部を備える遊技機において、 前記表示部の奥側を透過し易い第1状態と、当該第1状態よりも前記表示部の奥側を透過し難い第2状態とを生じさせる透過手段と、 該透過手段によって前記第1状態とされた場合に、所定期間前記表示部の奥側にて所定の演出を行い、前記所定の演出が終了される場合に、前記所定期間の終了時まで行われている前記所定の演出を終了させるとともに前記透過手段が生じさせた前記第1状態を前記第2状態に切り替えることで、前記表示部に前記識別情報を表示させる手段と、を備える ことを特徴とする遊技機。」 2.拒絶理由通知の概要 平成27年9月2日付け拒絶理由通知は、本願発明は、上記刊行物である特開2004-105296号公報に記載の発明であるか、または刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 3.刊行物記載の発明 刊行物記載の発明の認定は前記「第2 平成28年8月5日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、本件補正発明における「前記表示部の奥側にて所定の演出を行」う「所定期間」について、前記第2の2.に記載したように「所定期間」から「予め定められた」という限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2に記載したとおり、刊行物記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-011866

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