特許拒絶査定不服審判
2016-009893
冷却装置および装置
- 審判番号
- 2016-009893
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-064069外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月01日
- 審決日
- 2017年10月16日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 64069「冷却装置および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月20日出願公開、特開2016-184658〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成27年3月26日の出願であって、同年12月17日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月6日付けで拒絶査定されたところ、同年7月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年3月31日付けで拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、同年6月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年6月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「 基板の第1の面上に実装された発熱部品に熱結合される複数の放熱部と、
熱伝導性を有し、前記放熱部が配置される複数の開口部を有するフレームと、
熱伝導性及び柔軟性を有し、複数の前記放熱部および前記フレーム間をそれぞれ熱接続する接続部と、
を備え、
前記発熱部品の少なくとも一つはプロセッサであること
を特徴とする冷却装置。」
2.引用発明・公知技術
(1)引用発明
当審拒絶理由に引用された国際公開2014/148026号(平成26年9月25日公開、以下「引用文献1」という。)には、「ヒートシンク構造、半導体装置及びヒートシンク搭載方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.「[0001] 本発明は、ヒートシンク構造及びその搭載方法に関し、特に、複数の発熱部品を収容する電子機器の放熱技術に関する。
・・・・・・・・・・
[0007] 本発明のヒートシンク構造は、第一のヒートシンクと、側面下部に突出部を有する第二のヒートシンクと、第一のヒートシンクの側面と第二のヒートシンクの側面とに挟まれる熱伝導物質と、第一のヒートシンクの底面と突出部の上面とに挟まれる柔軟性を持った緩衝材とを有する。」
イ.「[0012] 図1は、第1の実施例において第二の発熱部品が高背である場合の断面図である。第一の発熱部品2および第二の発熱部品5は、ベース9に固定されたプリント基板8に表面実装されている。なお、この図では発熱部品の高さのバラつきにより、第二の発熱部品5の方が、第一の発熱部品2よりも高背であった場合について説明する。
[0013] 第一の発熱部品2は、第一のヒートシンク1からゲル状の熱伝導物質であるサーマルコンパウンド3を介して、プリント基板8へ押し付ける向きに力を受けている。同様に、第二の発熱部品5は、第二のヒートシンク4からサーマルコンパウンド3を介して、プリント基板8へ押し付ける向きに力を受けている。
・・・・・・・・
[0015] 第二のヒートシンク4は、第一のヒートシンク1から柔軟性を持つ緩衝材6を介して、ベース9へ押し付ける向きに力を受けている。また、第一のヒートシンク1と第二のヒートシンク4とはサーマルコンパウンド7を介して熱的に接続されている。ここで、サーマルコンパウンド7はシリコーン入りのゲル状の熱伝導物質である。また緩衝材6の一例としてはゴム材がある。一般に、熱伝導性はヒートシンク、サーマルコンパウンド、緩衝材の順に高い。
[0016] 図2は第一のヒートシンクと第二のヒートシンクの接合部の部分拡大図である。図に示すように、第二のヒートシンク4の接合面下部に突出部13を設ける。また、突出部13の上面に乗るように緩衝材6を取り付ける。また、第一のヒートシンク1の側面と第二のヒートシンク4の側面との間にはサーマルコンパウンド7が挟まれる。
[0017] 図3は第一のヒートシンクと第二のヒートシンクの平面関係の一例を示す図である。この図で示すように、第一のヒートシンク1に設けられる開口部11に、挿入部4が挿入され、両者の間にサーマルコンパウンド7が挟まれる。その結果、第一のヒートシンク1と第2のヒートシンクとがサーマルコンパウンド7を介して密着し、熱的接続が実現している。なお、開口部11、第1のヒートシンク1、第2のヒートシンク4の形状はこの図に示される形状に限定されるものではなく、発熱部品の形状や大きさ、部材成型の容易さ、その他の目的等に応じて変更してよい。例えば、ヒートシンクの接合部分が一本の直線で形成されていても良い。
[0018] 図4は緩衝材6の平面図である。緩衝材6は額縁形状であり、開口14を有する。開口14を第一のヒートシンクが通るように、緩衝材6の内寸は第二のヒートシンクの寸法より大きくする。また、緩衝材6の外寸は突出部13と近い寸法とする。緩衝材6の外寸は、突出部13の寸法より大きくても小さくても良い。また、緩衝材6の内寸は突出部13の寸法より小さい。
・・・・・
[0025] 最後に、第一のヒートシンク1をバネ10でベース9に固定する。これにより、ヒートシンク全体がプリント基板8に押し付けられて固定される。 なお、サーマルコンパウンド3及びサーマルコンパウンド7の塗布の方法は、手付けであってもよいし、ディスペンサを使用しても、予め制作した専用の治具を使用してもよい。」
ウ.「[0029] ここでは発熱部品が2つの場合について説明したが、上述の第二のヒートシンク4を2つ以上設ける構成とすることにより、本発明は3つ以上の発熱部品に対しての放熱性を確保することができる。」
エ.図1~3として以下の図面が記載されている。
上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.上記イ.の[0012]の記載及び図1によれば、「第二の発熱部品5」は「プリント基板8」に表面実装されており、[0013]の記載によれば「第二の発熱部品5は、第二のヒートシンク4からサーマルコンパウンド3を介して、プリント基板8へ押し付ける向きに力を受けている」から、「第二のヒートシンク4」は「第二の発熱部品5」に熱結合されているといえる。
したがって、引用文献1は、プリント基板8に表面実装された第二の発熱部品5に熱結合された第二のヒートシンク4を有しているといえる。
b.上記イ.の[0017]、図1、及び図3の記載によれば、「第一のヒートシンク1」には「開口部11」が設けられ、当該「開口部11」には「第二のヒートシンク4」が挿入されている。また、「第一のヒートシンク1」はヒートシンクとして機能することから、熱伝導性を有することは明らかである。
したがって、引用文献1は、熱伝導性を有し、第二のヒートシンク4が挿入される開口部11を有する第一のヒートシンク1を含んでいるといえる。
また、上記イ.の[0012]~[0018]、[0025]の記載及び図1によれば、「第一のヒートシンク1」は「プリント基板8」を固定する「ベース9」に固定されており、緩衝材を介して「第二のヒートシンク4」を「第二の発熱部品5」に付勢しているといえる。
c.上記イ.の[0015][0016]及び図2の記載によれば、引用文献1は、第一のヒートシンクと第二のヒートシンクの接合部に、柔軟性を持つ緩衝材6を有しているといえる。
d.上記ア.の記載によれば、引用文献1はヒートシンク構造に関するものといえる。
したがって、上記摘記した引用文献1の記載及び図面を総合すると、引用文献1には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「 プリント基板8に表面実装された第二の発熱部品5に熱結合された第二のヒートシンク4を有し、
熱伝導性を有し、前記第二のヒートシンク4が挿入される開口部11を有する第一のヒートシンク1を含み、
前記第一のヒートシンク1はベース9に固定され、緩衝材6を介して前記第二のヒートシンク4を前記第二の発熱部品5に付勢するものであり、
前記第一のヒートシンク1と前記第二のヒートシンク4の接合部に、前記柔軟性を持つ前記緩衝材6を有する、
ヒートシンク構造。」
(2)公知技術
当審拒絶理由に引用された特開平10-70383号公報(平成10年3月10日公開、以下「引用文献2」という。)には、「ヒートシンクの実装構造」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント基板に搭載された複数個の集積回路から放射される電磁波を遮断し、且つ各々の集積回路を効率良く放熱させるヒートシンクの実装構造に関し、特にCPU、キャシュメモリー等の複数のLSIからの電磁波を遮断すると共にLSIを放熱させるヒートシンクの実装構造に関する。」
イ.「【0013】図1~図3を参照すると、本実施の形態ではプリント基板1にCPU2及びCPU2の周辺の複数のキャシュメモリー等のLSI3が実装されている。プリント基板1はCPU2及びLSI3を取り囲むようにグランドパッド9を有し、グランドパッド9上には導電性補強片10が実装され、補強片10はプリント基板1に設けられた穴を通るネジ11により固定されている。・・・・・・・
【0014】LSI用ヒートシンク13はCPU用ヒートシンク5のLSI3の上側の部分に設けられた穴18を挿通してCPU用ヒートシンク5に各々独立して取り付けられており、LSI用ヒートシンク13は爪15によりCPU用ヒートシンク5の穴18からの脱落が防止される。・・・・・・」
ウ.図1として以下の図面が記載されている。
上記イ.に記載されたLSIは発熱部品であることは明らかである。
そうすると、上記ア.~ウ.の摘記事項によれば、引用文献2には次の技術事項(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。
(公知技術)
「ヒートシンクの実装構造であって、複数の発熱部品に対応して複数のヒートシンクを設け、当該複数のヒートシンクに対応して、当該ヒートシンクが挿通する複数の穴を全体を覆うヒートシンクに設けること。」
3.対比
本願発明を引用発明と対比すると、
a.引用発明の「プリント基板8」、「第二の発熱部品5」は、それぞれ本願発明の「基板」、「発熱部品」に相当する。また、引用発明において、第二の発熱部品5を表面実装するプリント基板8の面が、本願発明の基板の「第1の面」に相当する。
さらに、引用発明の「第二のヒートシンク4」は、第二の発熱部品5に熱結合されているから、複数存在することは明示されていないものの、本願発明において発熱部品に熱結合される「放熱部」に対応する。
b.引用発明の「第一のヒートシンク1」は、ベース9に固定され、緩衝材6を介して前記第二のヒートシンク4を前記第二の発熱部品5に付勢するものであるから、第二のヒートシンク4を支持するフレームとしての機能を果たしているということができる。
そして、本願発明の「フレーム」は「熱伝導性を有し、前記放熱部が配置される複数の開口部を有する」ものである。そうしてみると、引用発明において、熱伝導性を有し、第二のヒートシンク4(本願発明の「放熱部」に相当)が挿入される開口部11(本願発明の「開口部」に相当)を有する「第一のヒートシンク1」が、開口部を複数有さない点で相違するものの、本願発明の「フレーム」に対応する。
c.引用発明の「緩衝材6」が熱伝導性を有し、第一のヒートシンクと第二のヒートシンク間を熱接続しているかは明らかではない。また、引用発明では複数の第一のヒートシンクと第二のヒートシンク間の接続であることも明示されていない。しかしながら、引用発明の「緩衝材6」は柔軟性を有しており、第二のヒートシンク4と第一のヒートシンク1を接続しているといえることから、柔軟性を有し、放熱部およびフレーム間をそれぞれ接続する接続部といえる点で本願発明と引用発明とは共通する。
d.引用発明は「ヒートシンク構造」に係る発明であるが、これは「冷却装置」に含まれるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違するものと認められる。
(一致点)
「 基板の第1の面上に実装された発熱部品に熱結合される放熱部と、
熱伝導性を有し、前記放熱部が配置される開口部を有するフレームと、
柔軟性を有し、前記放熱部および前記フレーム間をそれぞれ接続する接続部と、
を備えること
を特徴とする冷却装置。」
(相違点1)
一致点の「基板の第1の面上に実装された発熱部品に熱結合される放熱部」に関し、本願発明では放熱部は複数存在し、それに伴い一致点の「熱伝導性を有し、前記放熱部が配置される開口部を有するフレーム」に関し、本願発明は開口部を複数有するものであり、さらに、一致点とした「柔軟性を有し、前記放熱部および前記フレーム間をそれぞれ接続する接続部」に関しても、本願発明は複数の放熱部およびフレーム間を接続する接続部であるのに対して、引用発明では、「放熱部」及び「開口部」が複数あることが明らかにされていない点。
(相違点2)
一致点の「柔軟性を有し、前記放熱部および前記フレーム間をそれぞれ接続する接続部」に関し、本願発明では接続部は熱伝導性を有し、放熱部および前記フレーム間をそれぞれ熱接続するのに対して、引用発明では当該事項が明らかでない点
(相違点3)
「発熱部品」に関して、本願発明では「前記発熱部品の少なくとも一つはプロセッサである」のに対して、引用発明は当該事項が明らかでない点。
4.当審の判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1には第二のヒートシンク4を2つ以上設けることについて示唆されており(「2.(1)ウ.」参照。)、上記「2.(2)」のとおり「ヒートシンクの実装構造であって、複数の発熱部品に対応して複数のヒートシンクを設け、当該ヒートシンクに対応して、当該複数のヒートシンクが挿通する複数の穴を全体を覆うヒートシンクに設けること」は公知技術であるから、引用発明において、上記公知技術を適用し、第二のヒートシンクとそれに対応する開口部を複数とすることは、当業者が容易になし得た技術事項にすぎない。
したがって、相違点1とした本願発明に係る特定事項は、当業者が引用発明、及び公知技術に基づいて容易に想到できた事項にすぎない。
上記相違点2について検討する。
引用発明の緩衝材について、引用文献1に「・・・緩衝材6の一例としてはゴム材がある。一般に、熱伝導性はヒートシンク、サーマルコンパウンド、緩衝材の順に高い・・・」(上記「2.(1)イ.」[0015]段落参照)と記載されているように、緩衝材として使われるゴム材は、熱伝導性を有しており、熱接続しているということができるから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。また、熱伝導性の良好な熱伝導性ゴムも知られているから、より高い熱伝導性が必要であれば、これを適宜採用し得る。
上記相違点3について検討する。
プロセッサは、動作に際して熱を発生する発熱部品であり、基板に表面実装されることは技術常識であるから、引用発明において第二の発熱部材としてプロセッサを採用することは、当業者が設計に応じて適宜なし得た事項にすぎない。
なお、本願明細書には、放熱部からフレームに伝導した熱がどのように放熱されるのかについては記載がなく、最終的にフレームそのものから放熱するのか、フレームを介して他の放熱部から放熱するのか定かではないが、引用発明はフレームそのものをヒートシンクとして放熱するものであり、また、相違点1として検討した複数の「放熱部」を有する場合には、フレームを介して他の放熱部から放熱されることも、自明の効果といえる。そうすると、本願発明と引用発明には作用効果に格別の差異はない。
5.むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用発明、公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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