特許拒絶査定不服審判
2016-008522
光源装置及びプロジェクター
- 審判番号
- 2016-008522
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-250712外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月08日
- 審決日
- 2017年07月20日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セイコーエプソン株式会社
- 【請求人代理人】志賀 正武
- 【請求人代理人】佐伯 義文
- 【請求人代理人】大浪 一徳
- 分類
- P18 .121-WZ (G03B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-250712「光源装置及びプロジェクター」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月30日出願公開、特開2013-105143〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
平成23年11月16日 特許出願
平成27年 8月25日 拒絶理由通知(同年9月1日発送)
平成27年10月30日 意見書・手続補正書
平成28年 3月11日 拒絶査定(同年3月15日送達)
平成28年 6月 8日 審判請求書・手続補正書
平成28年 9月 5日 上申書
平成29年 3月17日 拒絶理由通知(同年3月21日発送、
以下「当審拒絶理由通知」という。)
平成29年 5月19日 意見書・手続補正書
2 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明は、平成29年5月19日付け手続補正により補正された請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「発散光を射出する光源と、前記発散光が入射するレンズと、前記レンズの光入射面に設けられた反射防止膜と、を備えた光源装置であって、
前記光源は、複数の励起光源素子と、基板と、該基板上の所定の領域に設けられるとともに該複数の励起光源素子から射出された光の照射により前記発散光を発する蛍光体と、を備え、
前記レンズの周辺部において前記光入射面に第1の入射角で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率と、前記レンズの光軸位置において前記光入射面に該第1の入射角よりも小さな第2の入射角で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率との差が減少するように、前記レンズの周辺部において前記光入射面に垂直に入射する光に対する前記反射防止膜の反射率が、前記レンズの光軸位置において前記光入射面に垂直に入射する光に対する前記反射防止膜の反射率よりも大きく設定されていることを特徴とする光源装置。」(以下「本願発明」という。)
3 当審拒絶理由通知
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本件出願の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(注:平成28年6月8日付け手続補正により補正された請求項1~7に係る発明である。)は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明と技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用する刊行物
特開2011-197212号公報(以下「刊行物1」という。)
特開2011-191466号公報(以下「刊行物2」という。)
特開2004-341105号公報(以下「刊行物3」という。)
特開昭50-46142号公報(以下「刊行物4」という。)
4 刊行物の記載等
(1)刊行物1
ア 刊行物1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を射出する光源装置と、
モーターにより回転可能な円板に、前記励起光の一部又は全部を2以上の色光を含む蛍光に変換する単一の蛍光層が前記円板の周方向に沿って連続して形成されてなる回転蛍光板とを備えることを特徴とする照明装置。」
(イ)「【0045】
実施形態1に係るプロジェクター1000は、図1に示すように、照明装置100、色分離導光光学系200、光変調装置としての3つの液晶光変調装置400R,400G,400B、クロスダイクロイックプリズム500及び投写光学系600を備える。
【0046】
照明装置100は、固体光源装置10、集光光学系20、回転蛍光板30、モーター50、コリメート光学系60、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130、偏光変換素子140及び重畳レンズ150を備える。
【0047】
光源装置10は、励起光としてレーザー光からなる青色光(発光強度のピーク:約445nm、図2(a)参照。)を射出するレーザー光源からなる。図2(a)において、符号Bで示すのは、光源装置10が励起光(青色光)として射出する色光成分である。なお、光源装置は、1つのレーザー光源からなるものであってもよいし、多数のレーザー光源からなるものであってもよい。また、445nm以外の波長(例えば、460nm)の青色光を射出する光源装置を用いることもできる。
【0048】
集光光学系20は、第1レンズ22及び第2レンズ24を備える。集光光学系20は、光源装置10から回転蛍光板30までの光路中に配置され、全体として青色光を略集光した状態で蛍光層42(後述)に入射させる。第1レンズ22及び第2レンズ24は、凸レンズからなる。
【0049】
回転蛍光板30はいわゆる透過型の回転蛍光板であり、図1及び図3に示すように、モーター50により回転可能な円板40の一部に、単一の蛍光層42が円板40の周方向に沿って連続して形成されてなる。蛍光層42が形成されている領域は、青色光が入射する領域を含む。回転蛍光板30は、青色光が入射する側とは反対の側に向けて赤色光及び緑色光を射出するように構成されている。
回転蛍光板30は、使用時において7500rpmで回転する。詳しい説明は省略するが、回転蛍光板30の直径は50mmであり、回転蛍光板30に入射する青色光の光軸が回転蛍光板30の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、回転蛍光板30は、青色光の集光スポットが約18m/秒で蛍光層42上を移動するような回転速度で回転する。
…
【0051】
光源装置10からの青色光は、円板40側から回転蛍光板30に入射するように構成されている。
蛍光層42は、青色光を透過し赤色光及び緑色光を反射するダイクロイック膜44を介して円板40上に形成されている。ダイクロイック膜44は、例えば、誘電体多層膜からなる。
蛍光層42は、光源装置10からの青色光の一部を赤色光及び緑色光を含む光に変換し、かつ、青色光の残りの一部を変換せずに通過させる。具体的には、蛍光層42は、波長が約445nmの青色光によって効率的に励起され、光源装置10が射出する青色光の一部を、図2(b)に示すように、赤色光及び緑色光を含む黄色光(蛍光)に変換して射出する。図2(b)において、符号Rで示すのは、蛍光層42が射出する光のうち赤色光として利用可能な色光成分である。また、符号Gで示すのは、蛍光層42が射出する光のうち緑色光として利用可能な色光成分である。蛍光層42は、例えば、YAG系蛍光体である(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceを含有する層からなる。
なお、蛍光層として、赤色光及び緑色光を含む蛍光を射出する他の蛍光体を含有する層を用いてもよい。また、蛍光層として、励起光を赤色光に変換する蛍光体と、励起光を緑色に変換する蛍光体との混合物を含有する層を用いてもよい。
【0052】
コリメート光学系60は、図1に示すように、回転蛍光板30からの光の拡がりを抑える第1レンズ62と、第1レンズ62からの光を略平行化する第2レンズ64とを備え、全体として、回転蛍光板30からの光を略平行化する機能を有する。第1レンズ62及び第2レンズ64は、凸レンズからなる。
…
【0071】
また、実施形態1に係る照明装置100によれば、集光光学系20を備えるため、小さな領域で蛍光を発光させることが可能となり、その結果、光利用効率を高くすることが可能となる。
…
【0073】
また、実施形態1に係る照明装置100によれば、光源装置10がレーザー光源からなるため、電源投入後すぐに投写画像を投写することが可能となる。
また、実施形態1に係る照明装置100によれば、集光性の高いレーザー光源を光源装置として用いているため、一層小さな領域で蛍光を発光させることが可能となり、その結果、光利用効率を一層高くすることが可能となる。」(注:下線は当審が付加した。以下同様である。)
(ウ)図1は、以下のとおりである。
イ 刊行物1に記載された発明
上記アの記載によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「固体光源装置、集光光学系、回転蛍光板、モーター、コリメート光学系、第1レンズアレイ、第2レンズアレイ、偏光変換素子及び重畳レンズを備える照明装置であって、
前記固体光源装置は、励起光としてレーザー光からなる青色光を射出する多数のレーザー光源からなり、
前記回転蛍光板は、前記モーターにより回転可能な円板の一部に、単一の蛍光層が円板の周方向に沿って連続して形成されてなり、
前記集光光学系は、前記固体光源装置から前記回転蛍光板までの光路中に配置され、全体として青色光を略集光した状態で前記蛍光層に入射させ、
前記蛍光層は、前記固体光源装置からの青色光の一部を赤色光及び緑色光を含む光に変換し、かつ、青色光の残りの一部を変換せずに通過させ、
前記コリメート光学系は、前記回転蛍光板からの光の拡がりを抑える第1レンズと、前記第1レンズからの光を略平行化する第2レンズとを備え、
前記集光光学系を備えるため、また、集光性の高いレーザー光源を前記固体光源装置として用いているため、一層小さな領域で蛍光を発光させることができる、
照明装置。」(以下「引用発明」という。)
(2)刊行物4
ア 刊行物4の記載事項
(ア)「2.特許請求の範囲
(1) 光軸に関し回転対称な光学部品の少くとも一つの面に施される反射防止膜において、その反射防止膜を構成する一部の層、又は全部の層の膜厚を光軸からの距離に依存して異ならしめたことを特徴とする反射防止膜。」(第1頁左下欄第4行~同欄第9行)
(イ)「本発明はレンズ系の反射防止膜及びその製法に関するものである。
一般にレンズはレンズ表面での反射光を少くし、ゴースト・フレアを除くとともに、レンズの透過率を上げるため反射防止膜が蒸着される。この場合、レンズ系を構成する曲率の表面には従来のレンズ系では曲率の全面に均一な膜厚で蒸着膜がほどこされている。ところで光軸に対し大きな角度をもって入射或るいは、射出する光線については、光線がレンズの表面に入射或るいは射出する点でレンズ表面に立てた法線と光線とのなす角度、いわゆる入射角あるいは射出角が非常に大きくなるが如き曲率をもつレンズ系がある。このような曲率をもつ面に、反射防止膜を従来行われているように入射角(或るいは射出角)が0°の光線に対し透過率および分光特性が最良になるような膜厚で全面に均一な膜厚で反射防止膜をほどこした場合、入射角(或るいは射出角)が増すにつれて表面反射率は増大し、しかも分光特性も極めて悪くなり、このような曲率を有するレンズ系では像面の中心部と周辺部で分光特性が異なり、しかも像面の周辺部では極めて分光特性の悪いものになる。」(第1頁左下欄第18行~同頁右下欄第20行)
(ウ)「本発明は、このような従来の反射防止膜の欠点を改良するため、反射防止膜の膜厚を、光線の入射角或るいは射出角に対応して、光軸からの距離に応じて変化せしめることにより像面の周辺部においても分光特性をよくし、しかも反射率を低くしたものである。」(第2頁左上欄1行~同欄第6行)
イ 刊行物4に開示された技術事項
上記アによれば、刊行物4には、以下の技術事項が記載されている。
「光軸に関し回転対称な光学部品の少くとも一つの面に施される反射防止膜において、光線がレンズの表面に入射或るいは射出する点でレンズ表面に立てた法線と光線とのなす角度、いわゆる入射角あるいは射出角が非常に大きくなるレンズの表面に形成する反射防止膜の膜厚を、光線の入射角或るいは射出角に対応して、光軸からの距離に応じて変化せしめることにより反射率を低くする技術事項。」(以下「刊行物4に開示された技術事項」という。)
5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「発散光を射出する光源と、前記発散光が入射するレンズと、前記レンズの光入射面に設けられた反射防止膜と、を備えた光源装置」と、引用発明の「固体光源装置、集光光学系、回転蛍光板、モーター、コリメート光学系、…を備える照明装置」であって、「前記コリメート光学系は、前記回転蛍光板からの光の拡がりを抑える第1レンズと、…を備える」ことを対比する。
ア 引用発明が「前記コリメート光学系は、前記回転蛍光板からの光の拡がりを抑える第1レンズと、…」との特定事項を備えることに照らせば、回転蛍光板の円板の一部に形成された蛍光層が発する光は、拡がりを持つ光である。ここで、引用発明の「拡がりを持つ光」は、本願発明の「発散光」に相当する。そうすると、引用発明の「固体光源装置、集光光学系、回転蛍光板」は、一体として本願発明の「発散光を射出する光源」に相当する。
イ 引用発明の「前記回転蛍光板からの光の拡がりを抑える第1レンズ」は、本願発明の「前記発散光が入射するレンズ」に相当する。
ウ 引用発明の「照明装置」は、本願発明の「光源装置」に相当する。
エ 以上によれば、両者は、「発散光を射出する光源と、前記発散光が入射するレンズと、」「を備えた光源装置」の点で一致する。
(2)本願発明の「前記光源は、複数の励起光源素子と、基板と、該基板上の所定の領域に設けられるとともに該複数の励起光源素子から射出された光の照射により前記発散光を発する蛍光体と、を備え」ることと、引用発明の「前記固体光源装置は、励起光としてレーザー光からなる青色光を射出する多数のレーザー光源からなり」、「前記回転蛍光板は、前記モーターにより回転可能な円板の一部に、単一の蛍光層が円板の周方向に沿って連続して形成されてなり」、「前記蛍光層は、前記固体光源装置からの青色光の一部を赤色光及び緑色光を含む光に変換し、かつ、青色光の残りの一部を変換せずに通過させ」ることを対比する。
(ア)引用発明の「固体光源装置」と「回転蛍光板」は、上記(1)アで検討したとおり、「集光光学系」とともに一体として、本願発明の「前記光源」に相当する。
(イ)引用発明の「前記固体光源装置」が「励起光としてレーザー光からなる青色光を射出する多数のレーザー光源からな」ることは、本願発明の「前記光源は、複数の励起光源素子」を備えることに相当する。
(ウ)引用発明の「円板」は、本願発明の「基板」に相当する。そして、引用発明の「蛍光層」が「円板の周方向に沿って連続して形成されてな」ることは、本願発明の「蛍光体」が「該基板上の所定の領域に設けられる」ことに相当し、引用発明の「蛍光層」が「光源装置からの青色光の一部を赤色光及び緑色光を含む光に変換」することは、本願発明の「蛍光体」が「励起光源素子から射出された光の照射により前記発散光を発する」ことに相当する。
(エ)してみると、両者は相当関係にある。
(3)以上によれば、両者は、
「発散光を射出する光源と、前記発散光が入射するレンズと、を備えた光源装置であって、
前記光源は、複数の励起光源素子と、基板と、該基板上の所定の領域に設けられるとともに該複数の励起光源素子から射出された光の照射により前記発散光を発する蛍光体と、を備える光源装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明は、「前記レンズの光入射面に設けられた反射防止膜」を備え、「前記レンズの周辺部において前記光入射面に第1の入射角で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率と、前記レンズの光軸位置において前記光入射面に該第1の入射角よりも小さな第2の入射角で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率との差が減少するように、前記レンズの周辺部において前記光入射面に垂直に入射する光に対する前記反射防止膜の反射率が、前記レンズの光軸位置において前記光入射面に垂直に入射する光に対する前記反射防止膜の反射率よりも大きく設定されている」のに対し、引用発明は、コリメート光学系の第1レンズの光が入射する面に反射防止膜を設ける旨の特定を有していない点。
6 判断
(1)はじめに、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項の技術的な意味について、発明の詳細な説明を参酌して検討する。
ア 本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0048】
上記の構成を備えた本実施形態の光源装置100Aでは、ピックアップレンズ41の光入射面41bに形成された反射防止膜45が、図3及び図4に示した膜厚分布を有している。これにより、光入射面41bのうち光軸位置から離れた位置に大きな入射角で入射する発散光に対する反射防止膜45の反射率R1と光入射面41bのうち光軸位置の近傍に小さな入射角で入射する発散光に対する反射防止膜45の反射率R2との差を小さくすることができる。従って、反射率R1を反射率R2と同様に低減することができるため、光入射面41bのうち光軸位置から離れた位置においても光入射面41bによる反射光を低減することができる。なお、入射角は、光入射面41bの法線と入射光の光軸とのなす角度である。
…
【0052】
上記のように入射角度が大きい領域で反射率が大きくなるのは、反射防止膜に入射した光が、反射防止膜の厚さ方向に対して斜め方向に進行するために、反射防止膜の実質的な膜厚が大きくなり、反射防止膜の干渉条件からずれてしまうためである。
【0053】
これに対して、本実施形態の光源装置100Aでは、ピックアップレンズ41に形成された反射防止膜45の膜厚が、光軸Lの位置から外周に向かって漸次薄くなるように形成されている。これにより、蛍光体32から照射され反射防止膜45に入射した発散光の光路長が、反射防止膜45の各位置において一定の長さ(光軸Lの位置における膜厚d)となる。その結果、発散光が反射防止膜45に対して斜めに入射する外周部においても、反射防止膜45の干渉条件から外れにくくなり、反射率R1の上昇を抑えることができる。
【0054】
このように、本発明に係る反射防止膜45を光入射面41bに設けることによって、反射率R1を反射率R2と同様に低減することができる。これにより、蛍光体32から発せられた蛍光光が効率的にピックアップレンズ41に取り込まれる光源装置を実現できる。」
イ 上記アの記載によれば、
(ア)光軸位置の近傍に小さな入射角で入射する光に対し、反射防止膜は干渉条件を満たし、反射率が小さいこと、
(イ)光軸位置から離れた位置に大きな入射角で入射する光に対し、反射防止膜は干渉条件を満たし、反射率が小さいこと、
(ウ)上記(ア)と(イ)の反射率の差は小さいこと、
が理解できる。そして、技術常識(反射防止膜は、干渉条件からずれると反射率が大きくなること)を踏まえれば、
(エ)光軸位置から離れた位置に小さな入射角で入射する光(入射面に垂直に入射する光)に対し、反射防止膜は干渉条件からずれ、反射率が大きいこと、
が理解できる。
ウ 上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のうち、「前記レンズの周辺部において前記光入射面に第1の入射角で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率と、前記レンズの光軸位置において前記光入射面に該第1の入射角よりも小さな第2の入射角で入射する光に対する前記反射防止膜の反射率との差が減少する」ことは、上記イ(ア)~(ウ)を意味するものと解される。
また、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のうち、「前記レンズの周辺部において前記光入射面に垂直に入射する光に対する前記反射防止膜の反射率が、前記レンズの光軸位置において前記光入射面に垂直に入射する光に対する前記反射防止膜の反射率よりも大きく設定されている」ことは、上記イ(ア)、(ウ)、(エ)を意味するものと解される。
(2)上記(1)を踏まえて、上記相違点について検討する。
引用発明は、「一層小さな領域で蛍光を発光させ」、「コリメート光学系は、前記回転蛍光板からの光の拡がりを抑える第1レンズと…を備え」るから、引用発明は、「一層小さな領域で」「発光」した光が拡がりながら「第1レンズ」に入射し、該「第1レンズ」が光の拡がりを抑えるものと認められる。ここで、一般に、光が入射するレンズ面での反射を低減して光の利用効率を高める目的で、レンズ面に反射防止膜を設けることは、当業者が普通に採用することであるから、引用発明の第1レンズの光入射面に、反射防止膜を設けることは当業者が適宜なし得る程度の事項である。そしてその際、引用発明の第1レンズ面には、上記のとおり、光が拡がりながら入射するから、前記第1レンズの光軸近傍と周辺部とでは光の入射角が相違すること(光軸近傍では光の入射角が小さく、周辺部では光の入射角が大きいこと)が明らかであることを踏まえ、上記刊行物4に開示された技術事項を採用し、レンズの表面に形成する反射防止膜の膜厚を、光線の入射角に対応して、光軸からの距離に応じて変化せしめて反射率を低減するように、前記第1レンズ表面において、光の入射角の小さい光軸近傍と光の入射角の大きい周辺部で、それぞれ反射率が小さくなるような膜厚とすることに困難性はない。そして、引用発明に上記刊行物4に開示された技術事項を採用したものは、上記イ(ア)及び(イ)に相当する事項を備え、さらに上記イ(ウ)及び(エ)に相当する事項を備えることは明らかであるから、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を備えるものである。
(3)作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び刊行物4に開示された技術事項に基づいて、当業者が容易に予測しうるものである。
(4)請求人の主張について
請求人は、平成29年5月19日付け意見書の「5.」において、刊行物4は、撮影装置に関する技術を開示し、プロジェクター用光源装置とは技術分野が異なり、刊行物4に開示された技術事項を組み合わせる動機がない旨主張するので、以下、検討する。
反射防止膜は、「反射率を減らし、透過率を増すため、光学部品の表面に付ける薄層膜」(小柳修爾著 オプトロニクス光技術用語辞典第3版 平成17年11月21日 (株)オプトロニクス社 p279)であるから、光が反射したり透過する光学部品であれば、種々の光学部品に用いられるものである。そして、引用発明の「第1レンズ」と刊行物4に開示された技術事項の「レンズ」は、何れも、光が反射したり透過する光学部品である点で共通し、引用発明に刊行物4に開示された技術事項を組み合わせる動機はあるものと認められる。よって、請求人の上記主張は採用できない。
(5)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物4に開示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物4に開示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
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2016-008522