特許拒絶査定不服審判
2016-008496
浄水のための還元されたグラフェン酸化物ベースの複合体
- 審判番号
- 2016-008496
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-526567外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月08日
- 審決日
- 2017年04月18日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-Z (C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-526567号「浄水のための還元されたグラフェン酸化物ベースの複合体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月8日国際公開、WO2012/028964、平成25年11月21日国内公表、特表2013-542053号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
I.手続の経緯
本願は、2011年9月2日(パリ条約に基づく優先権主張2010年9月3日 (IN)インド)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月1日付けで手続補正書及び上申書が提出され、平成27年4月14日付けの拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成28年2月3日付けで拒絶査定がなされ、そして、同年6月8日付けで審判請求書及び手続補正書が提出され、さらに、同年7月25日付けで手続補正書(方式)が提出されたものである。
II.本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年6月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のものである。
なお、当該請求項1の記載と、平成27年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載とは、同一である。
「 【請求項1】
部分的に酸化されている還元型グラフェン酸化物(RGO)と、金属および金属の酸化物のうちの少なくとも1つのナノ粒子とを含むナノ複合体であって、前記金属が、金、銀、白金、パラジウム、コバルト、マンガン、鉄、テルル、ロジウム、ルテニウム、銅、イリジウム、モリブデン、クロムおよびセリウムの少なくとも1つを含む、ナノ複合体。」
III.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、「平成27年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された『Vimlesh Chandra, Jaesung Park, Young Chun, Jung Woo Lee, In-Chul Hwang and Kwang S. Kim, "Water-Dispersible Magnetite-Reduced Graphene Oxide Composites for Arsenic Removal", ACS NANO, June 2010, Vol.4, No.7, p3979-3986』に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」旨を理由の一つにするものである。
IV.引用文献の記載事項
「Vimlesh Chandra, Jaesung Park, Young Chun, Jung Woo Lee, In-Chul Hwang and Kwang S. Kim, "Water-Dispersible Magnetite-Reduced Graphene Oxide Composites for Arsenic Removal", ACS NANO, June 2010, Vol.4, No.7, p3979-3986」(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「Results and Discussion
For the use of arsenic removal from water, we synthesized GO via Hummer's method,22 and GO was exfoliated in water to produce a suspension of GO sheets. The mixed water solution of FeCl3 and FeCl2 was added slowly to the GO solution, and ammonia solution was added quickly to precipitate Fe2+/Fe3+ ions for synthesis of magnetite(Fe3O4) nanoparticles. GO is reduced to RGO by hydrazine hydrate which was added slowly and stirred for 4h at 90℃. The dark-black colored solution was filtered and washed with water/ethanol and dried in vacuum at 70℃. In this reaction process(Scheme 1), we synthesized Fe3O4-RGO(M-RGO)composites with different magnetite concentration. Here, we discuss M1-RGO(0.7g of GO, 0.4055g of Fe3+and 0.1584g of Fe2+) and M2-RGO(0.7g of GO,3.2442g of Fe3+and 1.2675g of Fe2+) having low and high concentrations of magnetite, respectively.」(P3979中段下から18行~P3980左欄4行)
「結果および検討
水中のヒ素の除去のために、我々は、まず、ハマーの方法によってGOを形成し、このGOを水中で薄葉化(シート化)することにより、GOシートを含む溶液を形成した。GOシートを含む溶液に、FeCl3とFeCl2の両方を含む溶液をゆっくりと加え、そして、マグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子の形成のために、アンモニア溶液を急速に加えることで、Fe2+/Fe3+イオンをGOシートに付着させた。GOは、ヒドラジンハイドレートによって還元されてRGOとなり、このヒドラジンハイドレートは、ゆっくりと加えられ、90℃で4時間攪拌される。ろ過によりダークブラック溶液が除去され、シートは水/エタノールで洗浄され、70℃真空下で乾燥される。我々は、この形成方法(スキーム1)を用いることにより、マグネタイト(Fe3O4)だけではない、マグネタイト(Fe3O4)-RGO(M-RGO)複合体を得ることができた。我々は、M1-RGO(0.7g of GO,0.4055g of Fe3+and 0.1584g of Fe2+) とM2-RGO(0.7g of GO,3.2442g of Fe3+ and 1.2675g of Fe2+) のそれぞれについて、マグネタイト(Fe3O4)がもっている低いおよび高いピークについて検討する。」(当審による訳。以下、同じ。)
(イ)「Deconvolution of the C1s peak(Figure 1d) of graphene oxide shows the presence of different oxygen containing functional groups of (a) the non-oxygenated C at 284.8 eV, (b) the carbon in C- O at 286.2 eV, (c) the carbonyl carbon (C=O) at 287.9 eV, and (d) the caboxylate carbon (O-C=O) at 289.0 eV. The C1s spectra of M-RGO show mainly the nonoxygenated carbon (284.8 eV) and the carbon in C-O (286.2 eV).」(P3980右欄下から5行~P3981左欄4行)
「グラフェン酸化物のC1sのピーク(図 1d)は、(a)酸素がないCでは284.8電子ボルトであり、(b)C-Oの炭素では286.2電子ボルトであり、(c)C=Oの炭素では287.9電子ボルトであり、(d)O-C=Oの炭素では289.0電子ボルトであり、酸素の結合状態によって異なっている。M-RGOのC1sスペクトルは、主に、酸素がないC(284.8電子ボルト)とC-Oの炭素(286.2電子ボルト)を示している。」
(ウ)「Guo et al. also observed such type of adsorption for As(III) on cellulose loaded with iron oxyhydroxide.47」(p3984右欄15~17行)
「Guoらは、また、セルロース(担持体)に鉄オキシ水酸化物を担持させた吸着剤へのAs(III)の吸着を観察した。」
(エ)「Conclusion
To get rid of arsenic from water, we have employed magnetite-reduced graphene oxide (M-RGO) composites via a chemical reaction with magnetite particle size average of ~10 nm.」 (p3984右欄下から12行~同8行)
「結論
我々は、平均サイズが~10nmであるマグネタイト粒子による化学反応を介した、マグネタイト-還元されたグラフェン酸化物(M-RGO)複合体による水中のヒ素の除去を実現することができる。」
(オ)「
」
「図1.エックス線光電子分光(XPS)スペクトル:(a)広い走査,(b)Fe2p スペクトル,(c)O1s スペクトル,および(d)グラフェン酸化物(GO)、M1-RGOおよびM2-RGOのC1sスペクトル。」
V.引用例に記載された発明
(カ)引用例には、上記(ア)からして、GOがヒドラジンハイドレートによって還元されてRGOとなること、マグネタイト(Fe3O4)-RGO(M-RGO)複合体のM1-RGOには、GOが0.7g、Fe3+が0.4055g、Fe2+が0.1584g含まれていること、および、同M2-RGOには、GOが0.7g、Fe3+が3.2442g、Fe2+が1.2675g+含まれていることの記載がある。また、上記(オ)からして、グラフェン酸化物(GO)にあるC1sスペクトルのC-Oのピークが、M1-RGOおよびM2-RGOにもあることの記載があることからして、M1-RGOおよびM2-RGOにおけるRGOが、GO(グラフェン酸化物)の還元により形成されたものであるとしても、還元によって、すべてのGOが還元されるのではなく、一部のGOは還元されずにGOとして存在しているということができる。よって、引用例には、「部分的に還元されているグラフェン酸化物」、つまり、「部分的に酸化されている還元型グラフェン酸化物(RGO)」が示されているということができる。
(キ)引用例には、上記(ア)からして、マグネタイト(Fe3O4)がナノ粒子であること、および、水中のヒ素を除去するために、マグネタイト(Fe3O4)-RGO(M-RGO)複合体を用いることの記載があることからして、引用例には、「マグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子を含むマグネタイト(Fe3O4)-還元されたグラフェン酸化物(M-RGO)複合体を用いて、水中のヒ素を除去する」ことが示されているということができる。
上記(カ)および(キ)からして、引用例には、
「部分的に酸化されている還元型グラフェン酸化物(RGO)と、マグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子とを含む、マグネタイト(Fe3O4)-還元されたグラフェン酸化物(M-RGO)複合体。」(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
VI.対比・判断
引用例記載の発明と本願発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「マグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子」は、本願発明の「金属および金属の酸化物のうちの少なくとも1つのナノ粒子」に相当する。
○引用例記載の発明の「マグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子」における「Fe」は、本願発明の「金、銀、白金、パラジウム、コバルト、マンガン、鉄、テルル、ロジウム、ルテニウム、銅、イリジウム、モリブデン、クロムおよびセリウムの少なくとも1つを含む」「金属」に相当する。
○引用例記載の発明の「マグネタイト(Fe3O4)-還元されたグラフェン酸化物(M-RGO)複合体」は、マグネタイト(Fe3O4)がナノ粒子であることからして、本願発明の「ナノ複合体」に相当する。
上記からすると、本願発明と引用例記載の発明とは、「部分的に酸化されている還元型グラフェン酸化物(RGO)と、金属および金属の酸化物のうちの少なくとも1つのナノ粒子とを含むナノ複合体であって、前記金属が、金、銀、白金、パラジウム、コバルト、マンガン、鉄、テルル、ロジウム、ルテニウム、銅、イリジウム、モリブデン、クロムおよびセリウムの少なくとも1つを含む、ナノ複合体。」という点で一致し、相違点を見いだすことができない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。
VII.請求人提示の補正案について
請求人は、審判請求書の手続補正書(方式)において、特許請求の範囲の補正案を提示しており、この補正案における請求項1の記載は以下のとおりである。なお、下線は請求人が付与した。
「(請求項1)
部分的に酸化されている還元型グラフェン酸化物(RGO)と、金属および金属の酸化物のうちの少なくとも1つのナノ粒子とを含むナノ複合体であって、前記金属が、金、銀、白金、パラジウム、コバルト、マンガン、鉄、テルル、ロジウム、ルテニウム、銅、イリジウム、モリブデン、クロムおよびセリウムの少なくとも1つを含み、前記ナノ粒子が約1nm~100nmの直径を有し、該ナノ複合体が担持材料に結合している、ナノ複合体。」(以下、当該請求項1に係る発明を「本願補正案発明」という。)
本願補正案発明の特許性について、以下、進歩性の観点より検討する。
引用例には、上記(エ)からして、マグネタイト(Fe3O4)-還元されたグラフェン酸化物(M-RGO)複合体におけるグラフェン酸化物の平均サイズが~10nmであることの記載があり、この「~10nmの平均サイズ」は、本願補正案発明の「ナノ粒子が約1nm~100nmの直径を有」することにおける「約1nm~100nmの直径」と、同等である場合を包含するものであるというべきである。
また、引用例には、上記(ウ)からして、As(III)吸着剤の鉄オキシ水酸化物をセルロースに担持させることの記載があり、また、上記(ア)からして、水中のヒ素を除去するために、マグネタイト(Fe3O4)-RGO(M-RGO)複合体を用いることの記載があり、これらからして、引用例記載の発明の「マグネタイト(Fe3O4)-RGO(M-RGO)複合体」について、これを、例えばセルロース(担持体、担持材料)に担持させた上で、水中のヒ素の除去に用いることは、当業者であれば容易に想起し得ることである。
したがって、請求人提示の補正案を採用したとしても、本願補正案発明に進歩性(特許性)があると認めることはできない。
VIII.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であることからして、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものである。
それ故、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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