特許拒絶査定不服審判
2016-007702
ドレッシング内の滲出液の有無を電気的に検出するためのシステムおよび方法
- 審判番号
- 2016-007702
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-520759外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月26日
- 審決日
- 2017年12月18日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人北青山インターナショナル
- 分類
- P18 .121-WZ (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-520759「ドレッシング内の滲出液の有無を電気的に検出するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日国際公開、WO2012/012286、平成25年 9月12日国内公表、特表2013-535260〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、2011年(平成23年)7月15日(パリ条約による優先権主張:2010年(平成22年)7月19日、アメリカ合衆国;2010年(平成22年)10月27日、アメリカ合衆国;2010年(平成22年)12月1日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年1月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年5月26日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされた。その後、平成29年5月25日付けで当審から拒絶の理由が通知され、平成29年8月30日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成29年8月30日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項7の記載は以下のとおりである。(以下請求項7に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項7】
減圧を用いて患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に配置されて、減圧に応答して前記組織部位から流体を受け取るように構成された吸収層と;
前記吸収層と前記患者の表皮の一部とを覆ってシールを形成するシール部材と;
前記吸収層に流体的に結合されて前記吸収層に減圧をもたらすように構成された減圧源と;
異なる材料から形成される第1の電極および第2の電極を有するガルバニ電池であって、前記第1の電極および前記第2の電極が、基材に結合されるとともに、前記基材上で互いに間隔を空けて配置され、かつ、前記第1の電極および前記第2の電極が、前記吸収層と接触してガルバニ電池を形成するように構成され、前記第1の電極および前記第2の電極が、前記吸収層において、組織部位からの流体を最後に受け取るように構成された箇所に配置されている、ガルバニ電池と;
前記吸収層が組織部位からの流体で実質的に飽和状態となったときに前記ガルバニ電池により生成される電流を受信するように、前記第1の電極および前記第2の電極に電気的に結合された監視ユニットであって、前記吸収層が飽和状態であることを示す監視ユニットと
を含むことを特徴とする、システム。」
第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成29年5月25日付の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。
刊行物1:特表2009-536851号公報
刊行物2:特開平7-19933号公報
1 刊行物1
(1)刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「外傷治療用装置及び方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
(ア) 特許請求の範囲
「・・・
【請求項49】
外傷の少なくとも一部を覆うハウジングと、
前記ハウジングと液体が流れることができるように連通した真空源と、
前記ハウジング内に配置され、外傷と連通した多孔性の液体捕集部であって、複数の流路を形成し、外傷の浸出液を保持するとともに、同時に前記真空源によって発生させられた陰圧を前記流路を介して外傷に供給する液体捕集部と、
前記液体捕集部と前記真空源との間に配置された液体バリアと、
外傷と前記液体捕集部との間に配置された外傷接触部と、
前記ハウジングによって外傷の周囲の皮膚を気密にするシールと、
を備えたことを特徴とする外傷治療用装置。
・・・」
(イ)「【0001】
本発明は、主に、感染による外傷、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、火傷、切開による外傷、外科的外傷等の様々な種類の慢性的でかつ痛みを伴う外傷を治療することが可能な外傷治療用装置及び方法に関する。特に、本発明は、陰圧治療法を利用する外傷治療用装置及び方法に関する。」
(ウ)「【0014】
図1及び図2に外傷治療用装置10を示す。図1は、患者の体の表面に取り付けられて外傷の少なくとも一部を覆う外傷治療用装置の斜視図である。図2は、図1の矢線2-2に沿った側断面図である。装置10は、外傷の少なくとも一部を覆うハウジング20を備える。ハウジング20は、内部空間22を画定する。一の実施形態においては、内部空間22には、真空チャンバ24と、液体バリア36によって分離された液体保持チャンバ40とが含まれる。液体保持チャンバ40は、外傷の浸出液またはその他の液体を捕集する液体捕集部(図示せず)を備える。ハウジングは、真空源(図示せず)と液体が流れることができるように連通している。液体捕集部は、外傷の浸出液を保持するとともに、同時に真空源によって発生させられた陰圧を外傷に供給する。・・・」
(エ)「【0025】
液体捕集部は、真空源と外傷との間で液体捕集部を介して液体が流れることを許容する複数の流路を含む少なくとも一つの多孔性部材から構成される。液体捕集部は、外傷からの液体を保持するための構造体及び/または部材を備える。かかる構造体及び/または部材としては、スポンジ、発泡体、繊維、ウィッキング(wicking)繊維、中空繊維、気泡、布、ガーゼ、超吸収性重合体を含む超吸収性部材、吸収性発泡体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(sodium carboxy methyl cellulose)等のゲル剤、充てん材料、あるいは、それらの組み合わせが挙げられる。かかる構造体または部材は、気体が流れることを許容するとともに、外傷に真空または陰圧を供給する流路を備える。かかる構造体または部材は、外傷から液体を吸収して保持する。外傷からの浸出液としての液体は、細胞残屑や、その他外傷からの浸出液に典型低に含まれる固体を含んでいることは、当業者にとって明らかである。」
(オ)「【0032】
液体捕集部は、液体保持チャンバ40内に配置されたり、あるいは、液体保持チャンバ40を構成する構造体の一部であってもよい。ここで、「液体を保持する」または「液体を保持」という語については、実質的に液体を保持することを意味する。ある実施形態では、液体保持チャンバ自体が、真空状態でハウジング内またはハウジングを通る真空路を開いたままにする、必要とされる構造的支持体を構成する。従って、装置は、真空状態でこの装置の機能を維持するための十分な構造体を有する。以下で詳細に説明するように、充てんインジケータが、ユーザに対し、所定の液体捕集部飽和点を報知する。」
(カ)「【0053】
次に、図6を参照して、別の実施形態に係る外傷治療用装置210を、図2と同様に側断面で示す。図6の装置210は、上述した実施形態と同様に、内部空間を画定するハウジング220を備える。しかしながら、この実施形態の外傷治療用装置210は、真空源234と、陰圧を真空チャンバ224に供給するアダプタ232とを含む陰圧源230を内蔵している。真空源234は、電源238に接続されて駆動され、図示するようにともに装置210の内部に配置されている。さらに、図6では、真空源234及び電源238がハウジング220の内で補助チャンバ226内に配置されるように図示しているが、かかる装置はハウジング220の外部に配置されていてもよく、必要に応じて取り外されて交換される装置210のモジュール部分内に配置されていてもよい。」
(キ)「【0055】
動作の際、外傷治療用装置210は、最初に、患者の体の表面上に配置され、少なくとも部分的に外傷領域を覆う。上述したように、装置210は、この装置210単体の吸引により、または、当業者にとって知られた技術のうちから選択されたシール228により、体の表面を気密にする。図6に示すシール228は、保管の際には、任意でプルタブ218を備えるカバー216によって覆われている接着性のあるシールである。装置210は、さらに、上述したとおり外傷接触部241を備える。
【0056】
患者に装置210を取り付けることに続き、真空源234を駆動し、装置210の内部の圧力を減少させる。陰圧が生成されると、液体が外傷から装置210の液体保持チャンバ240内に吸引され、液体バリア236により、真空チャンバ224または陰圧源230へと流れこむことが防止される。上述した実施形態と同様に、液体バリア236は、当業者にとって知られた技術のうちから選択されたものであり、これらに限定されるものではないが、例えば、多孔性かつ疎水性のフィルム、膜、及び多孔性かつ疎水性の構造体、例えばスポンジや発泡体から構成される。」
(ク)「【0060】
さらに他の実施形態においては、装置210は、液体保持チャンバ240が所定の吸収レベルに達したことを示す充てんインジケータを備える。充てんインジケータ270は、当業者に知られた様々な方法に応じて動作することができる。かかるインジケータは、視認できるもの(例えば、色を変化させたりするもの、またはLED)または音を出すものを含む。充てんインジケータ270は、ハウジング220の外壁上または真空源234の近傍に配置されると有益である。充てんインジケータ270は、ハウジングの内部に配置されて電気的または機械的に充てんインジケータと接続されたセンサを備える。かかるセンサは、液体保持チャンバ240と液体バリア236との間、または、外傷接触部241と反対側の液体保持チャンバの壁に取り付けられる。あるセンサは、液体保持チャンバ240内に自由水分があることを検出することにより動作し、これは、液体保持チャンバが所定の吸収レベルに達したことを示唆する。あるいは、充てんインジケータのセンサは、液体保持チャンバ240の一部の電気導電性を利用して、その領域に水分が到達したことを検出し、真空源230を停止させるための信号を出力する。その他当業者に知られたセンサ、例えば、物質の水分量に応じて色を変化させる技術、物理的特性または特徴を変化させる技術、真空の変化を検出する真空センサ、ガルバニ式、電位差式、容量式のもの、を装置とともに用いても好適である。装置210は、さらに、真空接続部用のフロートバルブ等から構成されるオーバーフロー弁を備えていてもよく、これにより、液体が真空源に流れ込むことを防止する。」
(ケ) 「【図面の簡単な説明】・・・
【図9】図9(a)及び図9(b)は、装置構成としてモジュールの態様を採用した外傷治療用装置の概略図である。」
(2)刊行物1発明
(コ)上記記載事項(キ)に「陰圧が生成されると、液体が外傷から装置210の液体保持チャンバ240内に吸引され」とあることなどから、上記記載事項(カ)の「陰圧源230」は、“液体保持チャンバ240に流体的に結合されて前記保持チャンバ240に陰圧をもたらすように構成された陰圧源230”ということができる。
(サ)上記記載事項(キ)に「シール228により、体の表面を気密にする」とあるところ、該記載を図6に示される「シール228」、「ハウジング220」、「液体保持チャンバ240」及び「液体バリア236」の配置に照らせば、これらを整理して、「外傷治療用装置210」は、“液体保持チャンバ240と体の表面の一部とを覆ってシールを形成するシール228及びハウジング220、並びにハウジング220内に設けられ液体保持チャンバ240の上部を画定する液体バリア236”を含むということができる。
そこで、刊行物1の上記記載事項(ア)ないし(ケ)並びに上記認定事項(コ)及び(サ)を図面を参照しつつ、特に図6(記載事項(カ))に記載された実施形態に着目して整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「刊行物1発明」という。)
「陰圧を用いて患者の外傷を治療する外傷治療用装置210において、
外傷領域に配置されて、複数の流路を形成し外傷の浸出液を保持するとともに前記流路を介して陰圧を外傷に供給する液体捕集部を備える液体保持チャンバ240と;
液体保持チャンバ240と前記患者の体の表面の一部とを覆ってシールを形成するシール228及びハウジング220、並びにハウジング220内に設けられ液体保持チャンバ240の上部を画定する液体バリア236;
前記液体保持チャンバ240に流体的に結合されて前記液体保持チャンバ240に陰圧をもたらすように構成された陰圧源230と;
充てんインジケータのガルバニ式のセンサであって、液体保持チャンバ240と液体バリア236との間の壁に取り付けられる充てんインジケータのガルバニ式のセンサとを含み、
前記充てんインジケータのガルバニ式のセンサは、液体保持チャンバ240の一部の電気導電性を利用して、センサ付近の領域に水分が到達したことを検出し、陰圧源230を停止させるための信号を出力する、
外傷治療用装置210。」
2 刊行物2
(1)刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「液体及び液面検知器」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】 一対の異なる金属より成る電極1,2と、上記一対の異なる金属より成る電極1,2間に生じた起電力による電流を増幅する電流増幅手段3より成り、上記電流増幅手段3によって増幅された電流に基づき液体及び液面を検知することを特徴とする液体及び液面検知器。
・・・」
(イ)「【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づき詳細に説明する。図1に示した様に、本発明の液体及び液面検知器は、一対の異なる金属より成る電極1,2と、上記一対の異なる金属より成る電極1,2間に生じた起電力による電流を増幅する電流増幅手段3より成り、上記一対の異なる金属より成る電極1,2は、結線4によって接続されていると共に、電流増幅手段3に接続されており、さらに上記電流増幅手段3は接続ケーブル6によって報知手段5に接続されているものである。」
(ウ)「【0011】そして、上記一対の異なる金属より成る電極1,2は、図2,図3,図4に示した様に、絶縁体7によって絶縁された主電極11a,12aと副電極11b,12bより成り、上記主電極11aと副電極11bは接続ピン13で、上記主電極12aと副電極12bは接続ピン14でそれぞれ接続されており、上記主電極11aと副電極11bによって電極1を成し、上記主電極12aと副電極12bによって電極2を成す様に構成されているものであり、上記一対の異なる金属より成る電極1,2の先端面Eと上下面A,B及び左右面C,Dの五面で液体及び液面の検知が可能となる様構成されている。また、上記一対の異なる金属より成る電極1,2として、本実施例では亜鉛(電極1)と銅(電極2)を用いた。」
(エ)「【0012】そして、上記主電極11a,12a及び副電極11b,12bによって構成された一対の異なる金属より成る電極1,2間に液体が存在しない場合には一対の異なる金属より成る電極1,2間に電位差は生じず、結線4に電流が流れることはなく、よって液体の存在の検知及び報知は行われず、また、一対の異なる金属より成る電極1,2間に液体が存在した場合には一対の異なる金属より成る電極1,2間に電池作用による起電力が生じ、亜鉛で形成された電極1(主電極11a,副電極11b)を+極、銅で形成された電極2(主電極12a,副電極12b)を-極として結線4に電流が流れるものであり、この電流を電流増幅手段3によって増幅した後、接続ケーブル6を介して報知手段5に伝えることにより液体の存在の検知及び報知が行われるものである。」
(オ)「【0013】そして、上記一対の異なる金属より成る電極1,2を構成する主電極11a,12a及び副電極11b,12bと、それらに挟まれた絶縁体7とをフィルム状と成すと共に小型の電極と成し、痴呆症の高齢者や高度障害者等が着用しているおむつとおむつカバーとの間へ挿入することによって、おむつの濡れの検知及び報知ができ、痴呆症の高齢者や高度障害者等のおむつの交換が効率よく行えるものであり、しかも上記おむつの濡れの検知、即ち、液体の検知は一対の異なる金属より成る電極1,2間の起電力によって生じる電流の有無によって行われるので容易にしかも確実に液体の検知が行え、しかも液体の検知の為に電極を活電状態にしておく必要がなく、人体に密着するおむつに利用しても安全である。」
(2)刊行物2事項
(カ)上記記載事項(エ)の「一対の異なる金属より成る電極1,2間に液体が存在した場合には一対の異なる金属より成る電極1,2間に電池作用による起電力が生じ、亜鉛で形成された電極1(主電極11a,副電極11b)を+極、銅で形成された電極2(主電極12a,副電極12b)を-極として結線4に電流が流れるものであり」等の記載を図2ないし図4に示された電極の表裏の配置と照らして合理的に考えれば、“第1の電極1及び第2の電極2が、絶縁体7に結合されるとともに、絶縁体7上で互いに間隔を空けて配置され”ているものと認められる。
(キ)上記記載事項(イ)に「一対の異なる金属より成る電極1,2と、上記一対の異なる金属より成る電極1,2間に生じた起電力」とあり、また、上記記載事項(ウ)に「一対の異なる金属より成る電極1,2は、・・・上記一対の異なる金属より成る電極1,2として、本実施例では亜鉛(電極1)と銅(電極2)を用いた」とあることから、技術常識を踏まえれば、刊行物2記載の「起電力」を「生じ」る「一対の異なる金属より成る電極1,2」は、“ガルバニ電池”を構成するものと認められる。
刊行物2の上記記載事項(ア)ないし(オ)並びに認定事項(カ)及び(キ)を技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「刊行物2事項」という。)
「異なる材料から形成されるガルバニ電池の第1の電極1及び第2の電極2が、絶縁体7に結合されるとともに、絶縁体7上で互いに間隔を空けて配置され、かつ、第1の電極1および第2の電極2が、おむつの濡れの液体と接触して電池作用による起電力が生じるように構成され、接続ケーブル6を介して報知手段5に伝えることにより液体の存在の検知及び報知が行われる液体検知器。」
第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「陰圧」「を用いて」は本願発明の「減圧」「を用いて」に相当することは、その機能及び構成に照らして明らかであり、以下同様に技術常識も踏まえると、「患者の」「外傷」は「患者の」「組織部位」に、「治療する」「外傷治療用装置210」は「治療する」「システム」に、「浸出液」は「流体」に、「液体捕集部を備える液体保持チャンバ240」及び「液体保持チャンバ240」はいずれも「吸収層」に、「体の表面」は「表皮」に、「陰圧源230」は「減圧源」に相当することも明らかである。
また、刊行物1発明の「シール228及びハウジング220」については、「シール228」と「ハウジング220」とで気密性及び液密性が保たれるものであるから、これらを併せて、本願発明の「シール部材」に対応することとなる。
また、刊行物1発明の「外傷領域に配置されて、複数の流路を形成し外傷の浸出液を保持するとともに前記流路を介して陰圧を外傷に供給する液体捕集部を備える液体保持チャンバ240」は、上記対応関係を踏まえ“組織部位に配置されて、複数の流路を形成し組織部位の流体を保持するとともに前記流路を介して減圧を組織部位に供給する吸収層”と言い改められるところ、さらにこれは、本願発明の「組織部位に配置されて、減圧に応答して前記組織部位から流体を受け取るように構成された吸収層」に相当するといえる。
次に、刊行物1発明の「充てんインジケータのガルバニ式のセンサ」と、本願発明の「異なる材料から形成される第1の電極および第2の電極を有するガルバニ電池」とは、“ガルバニ式の装置”である限りにおいて共通する。
また、刊行物1発明の「充てんインジケータのガルバニ式のセンサは、液体保持チャンバ240の一部の電気導電性を利用して、センサ付近の領域に水分が到達したことを検出し、陰圧源230を停止させるための信号を出力する」ことは、上記対応関係を踏まえ、“ガルバニ式の装置は、吸収層の一部の電気導電性を利用して、センサ付近の領域に水分が到達したことを検出し、減圧源を停止させるための信号を出力する” と言い改められるところ、これは、本願発明の
「吸収層が組織部位からの流体で実質的に飽和状態となったときにガルバニ電池により生成される電流を受信するように、第1の電極および第2の電極に電気的に結合された監視ユニットであって、吸収層が飽和状態であることを示す監視ユニットを含む」ことと、
“ガルバニ式の装置は、少なくとも所定量の流体が吸収されたことを検出し信号を出力する”ことである限りにおいて共通する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「減圧を用いて患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に配置されて、減圧に応答して前記組織部位から流体を受け取るように構成された吸収層と;
前記吸収層と前記患者の表皮の一部とを覆ってシールを形成するシール部材と;
前記吸収層に流体的に結合されて前記吸収層に減圧をもたらすように構成された減圧源と;
ガルバニ式の装置とを含み、
前記ガルバニ式の装置は、少なくとも所定量の流体が吸収されたことを検出し信号を出力する、
システム。」
そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の3点で少なくとも形式的に相違している。
<相違点1>
ガルバニ式の装置に関し、本願発明は、異なる材料から形成される第1の電極および第2の電極を有するガルバニ電池であるのに対し、刊行物1発明は、(充てんインジケータの)ガルバニ式のセンサである点。
<相違点2>
本願発明においては、ガルバニ式の装置(ガルバニ電池)の第1の電極および第2の電極が、基材に結合されるとともに、基材上で互いに間隔を空けて配置され、かつ、第1の電極および前記第2の電極が、吸収層と接触してガルバニ電池を形成するように構成され、第1の電極および第2の電極が、吸収層において、組織部位からの流体を最後に受け取るように構成された箇所に配置されているのに対し、
刊行物1発明においては、ガルバニ式の装置(充てんインジケータのガルバニ式のセンサ)は、液体保持チャンバ240と液体バリア236との間の壁に取り付けられるものの、センサの配置と構造の詳細が明らかでない点。
<相違点3>
ガルバニ式の装置は、少なくとも所定量の流体が吸収されたことを検出し信号を出力することに関し、
本願発明は、(i)”所定量”として、吸収層が流体で実質的に飽和状態となったときと特定し、(ii)また、その際に、ガルバニ式の装置(ガルバニ電池)により生成される電流を受信するように、第1の電極および第2の電極に電気的に結合された監視ユニットであって、吸収量が所定量であることを示す監視ユニットを含むのに対し、
刊行物1発明は、センサ付近の領域に水分が到達したことを検出し陰圧源230を停止させるための信号を出力するものの、(i)「センサ付近の領域に水分が到達したことの検出が、吸収層(液体保持チャンバ240)の”飽和”の検出か明らかでなく、また、(ii)そのような、ガルバニ式の装置の第1の電極および第2の電極に電気的に結合された監視ユニットを含むものか明らかでない点。
第5 相違点の検討
1 <相違点1>について
相違点1について検討する。刊行物1発明におけるガルバニ式のセンサは、「液体保持チャンバ240の一部の電気導電性を利用して、その領域に水分が到達したことを検出」するものであるから、技術常識を踏まえれば、ガルバニ式のセンサが液体保持チャンバ240内の水分に接することによって起電力を発生するものと認められ、ガルバニ電池である蓋然性がきわめて高い。したがって、相違点1は実質的な差異ではない。仮に実質的な差異であるとしても、液体検知のためのガルバニ電池は、上記第3の2(2)で示した刊行物2事項も備えるように従来周知の事項であり、これを刊行物1発明に適用することは何ら困難なことではない。
2 <相違点2>について
相違点2につき検討する。
(ア)刊行物1発明のガルバニ式の装置(充てんインジケータのガルバニ式のセンサ)は、「液体保持チャンバ240と液体バリア236との間の壁に取り付けられる」ものであるところ、「液体保持チャンバ240と液体バリア236との間の壁」が「液体保持チャンバ240」の上部を画定する壁であることに鑑みれば、該ガルバニ式の装置は、実質的に、外傷の浸出液を最後に受け取るように構成された箇所に配置されているということができる。
(イ)次に、上記第3の2(2)にて示したように、刊行物2事項は、「異なる材料から形成されるガルバニ電池の第1の電極1及び第2の電極2が、絶縁体7に結合されるとともに、絶縁体7上で互いに間隔を空けて配置され、かつ、第1の電極1および第2の電極2が、おむつの濡れの液体と接触して電池作用による起電力が生じるように構成され、接続ケーブル6を介して報知手段5に伝えることにより液体の存在の検知及び報知が行われる液体検知器。」というものであるところ、これを本願発明の用語で表現すれば、刊行物2事項の「第1の電極1」は「第1の電極」と表現でき、以下同様に、「第2の電極2」は「第2の電極」と、「絶縁体7」は「基材」と、(液体と)「接触して電池作用による起電力が生じるように構成され」は「接触してガルバニ電池を形成するように構成され」と、「接続ケーブル6を介して報知手段5に伝えることにより液体の存在の検知及び報知が行われる」は「監視ユニットに」「電気的に結合された」と表現できる。また、刊行物2事項の「おむつの濡れの液体」と本願発明の「吸収層」とは、“湿り成分”である点において共通する。
したがって、刊行物2事項は、「異なる材料から形成されるガルバニ電池の第1の電極及び第2の電極が、基材に結合されるとともに、基材上で互いに間隔を空けて配置され、かつ、第1の電極および第2の電極が、湿り成分と接触してガルバニ電池を形成するように構成され、監視ユニットに電気的に結合された液体検知器。」と言い改めることができる。
ここで、刊行物1発明と刊行物2事項は、いずれも、医療・介護用の液体成分検知手段である点で技術分野が共通しており、刊行物2に接した当業者が、これを刊行物1発明に適用することを試みることに格別困難性はない。そうした場合、刊行物2事項を適用した刊行物1発明は、上記(ア)の検討も併せ考えれば、相違点2に係る本願発明の構成に対応するものとなる。
3 <相違点3>について
まず、相違点3に係る本願発明の構成のうち、(i)”所定量”として、吸収層が流体で実質的に飽和状態となったときと特定していることについては、上記2(ア)にて説示したように、刊行物1発明のガルバニ式の装置(充てんインジケータのガルバニ式のセンサ)は、実質的に、外傷の浸出液を最後に受け取るように構成された箇所に配置されていることから、本願発明と同様、”所定量”として、吸収層が流体で実質的に飽和状態となったことを検出し信号を出力することとなり、この点は上記2(ア)の検討と同様、実質的な差異ではない。
次に、相違点3に係る本願構成のうち、その余の、ガルバニ式の装置(ガルバニ電池)により生成される電流を受信するように、第1の電極および第2の電極に電気的に結合された監視ユニットであって、吸収量が所定量であることを示す監視ユニットを含む点につき検討する。
刊行物1発明は、「センサ付近の領域に水分が到達したことを検出し、陰圧源230を停止させるための信号を出力するもの」であるところ、「検出し」「停止させるための信号を出力する」ものであるから、実質的には“監視装置”を備えていると言い得る。また、刊行物1発明は「ガルバニ式のセンサ」を用いるものである以上、技術常識を踏まえれば、2つの電極を有し、それらが該“監視装置”と電気的に結合していると考えるのが合理的である。そうしてみると、相違点3のその余の点も、実質的な差異ではないと考えられる。
仮に相違点3のその余の点に係る、2つの電極を有しそれらが監視装置と電気的に結合していることが、実質的な差異であるとしても、上記第3の2(2)にて示したように、刊行物2事項は、「・・・ガルバニ電池の第1の電極1及び第2の電極2が、・・・液体と接触して電池作用による起電力が生じるように構成され、接続ケーブル6を介して報知手段5に伝えることにより液体の存在の検知及び報知が行われる液体検知器。」というものであるところ、刊行物2事項の「報知手段5」は、“監視装置”とも言い得る。そして、刊行物2事項を刊行物1発明に適用して相違点3のその余の点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
4 請求人の主張について
請求人は、上記平成29年8月30日提出の意見書にて、刊行物2記載の「おむつの場合には、一般に、おむつ内の液体の量を最小限に抑えて、健康への悪影響をもたらす可能性のある過度の飽和や発疹を防ぐことが重要であると考えられ」刊行物2「の電極は、液体をなるべく早く検出するように、液体がおむつに最初に接触する箇所に配置するのが望ましい」、これは、「本願発明の“組織部位からのイオン流体を最後に受け取る箇所”とは全く逆になり」刊行物2には、本願発明の技術とは「反対の教示がなされていると考えます」と主張する。
しかしながら、上記2(ア)にて指摘したように、外傷の浸出液を最後に受け取るように構成することは、刊行物1発明が実質的に備えているのだから、仮に、刊行物2記載の液体検知器が液体と最初に接触する箇所に電極を配置するものであるとしても、請求人の上記主張は結論を左右するものではないというべきである。
5 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-007702